これより図面を用いて、本発明に係る太陽電池用コンバータシステムを説明する。但し、本発明に係る太陽電池用コンバータシステムの構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、複数の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。各蓄電素子の容量も、それぞれ異なっていてよい。その他、以下の実施例における多段倍電圧整流回路は4段倍電圧整流回路として示されているが、本発明における多段倍電圧整流回路の段数、すなわち直列接続されるキャパシタの数nは2以上の任意の整数であってよい。したがって太陽電池モジュール鎖におけるモジュールの直列数nも任意の整数となる。
電流補償機能を有する本発明の太陽電池用コンバータシステムは、(コンバータ内)インダクタを備えたスイッチングコンバータ、中間インダクタ、及び多段倍電圧整流回路の3つの機能部を備えている。コンバータとして用いることが可能な代表例として、図3a〜図3fは、降圧型コンバータ、昇圧型コンバータ、反転型昇降圧コンバータ、SEPICコンバータ、Zetaコンバータ、Cukコンバータをそれぞれ示している。これらコンバータによって、入力電圧である太陽電池モジュール鎖の合計電圧を変換した上で出力することができるのであり、言い換えれば出力電圧を調整することにより太陽電池モジュール鎖の動作状態を制御できる。
図3a〜図3f中では、コンバータ内のスイッチングノードにおいて発生する矩形波状の電圧も併せて図示されている。後述のとおりコンバータの入力側に配置される中間インダクタに、これら矩形波状電圧の一部が印加されることにより、中間インダクタからの入力電圧で多段倍電圧整流回路を動作させて、最も電圧の低い太陽電池モジュールに補償電流を供給することが可能となる。すなわち、コンバータと多段倍電圧整流回路を、中間インダクタにより統合することで部分影補償器を構成する。
ここでは非絶縁型のPWM(Pulse Width Modulation)コンバータについて例を示したが、その他の非絶縁型コンバータ、共振形コンバータ等を用いることも可能である。
例として、図3a〜図3fのコンバータのうち、図3bの昇圧型コンバータの動作時における電流経路を図4a,図4bにそれぞれ示す。
スイッチQがオンとなる期間では、キャパシタCinからインダクタLに電圧が印加されることにより(入力電圧をVinとすればVinが印加される。)、インダクタLを流れる電流は直線的に増加する。このときスイッチQに印加されている電圧はゼロである(オン抵抗を無視した。)。スイッチQがオフとなる期間では、インダクタLを流れる電流はダイオードDoを介して負荷側へ流れる。インダクタLに印加される電圧は、−(Vout−Vin)であり(図4a,図4b中、矢印方向に電流を流す電圧を正とした。)、インダクタLを流れる電流は直線的に減少する。このように、スイッチング動作に伴い、インダクタLの電圧は矩形波状電圧となる。
図5に、多段倍電圧整流回路の一例が示されている。多段倍電圧整流回路は、直列接続されたキャパシタCout1〜Cout4の各々に対して、2つの直列接続されたダイオードD1,D2と、D3,D4と、D5,D6と、D7,D8と、をそれぞれ並列に接続し、更に、2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点に中間キャパシタC1〜C4をそれぞれ接続してなる。
多段倍電圧整流回路は、矩形波状や正弦波状の電圧等、交流電圧を入力することで動作する。図5の端子A−B間に矩形波状電圧が入力されるとき、入力される矩形波状電圧の変化に応じてキャパシタCout1〜Cout4に充放電電流が流れ、多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7と偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が交互に導通する。
具体的には、図5中、端子Bから端子Aへと(矢印方向)電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、図6aに示すとおりの経路を電流が流れて、図5中、端子Aから端子Bへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、図6bに示すとおりの経路を電流が流れる。
ここで、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとすれば、入力電圧V
SNの動作周波数が十分高い場合、キャパシタCout1,Cout2,Cout3,Cout4の電圧V
Cout1,V
Cout2,V
Cout3,V
Cout4は1サイクル前後において不変であるとみなすことができる。図6aのモード1におけるV
SNの大きさをEとし、モード1における中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1a,V
C2a,V
C3a,V
C4aとすれば、図6aの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(1)が得られる。
(1)
なお、VCout1〜VCout4については、図6a中でキャパシタCout2〜Cout4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とし、Vc1a〜Vc4a(及び、後述のVc1b〜Vc4b)については、図6a中で中間キャパシタC1〜C4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とした。
同様に、図6bのモード2におけるV
SNの大きさを0とし(例えば図3aの降圧型コンバータに含まれるインダクタLの電圧は正と負の値をとり、後述のとおり中間インダクタが分担する電圧も正負で変動するが、電圧の基準点を負側の電圧と取ることにより、モード2におけるV
SNをゼロとしてよい。)、中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1b,V
C2b,V
C3b,V
C4bとすれば、図6bの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(2)が得られる。
(2)
上記式(1),(2)より、中間キャパシタC1〜C4における、モード1とモード2の間での電圧変動△V
C1=V
C1b−V
C1a,△V
C2=V
C2b−V
C2a,△V
C3=V
C3b−V
C3a,△V
C4=V
C4b−V
C4aは以下のとおり計算される。
(3)
中間キャパシタC1〜C4の容量をそれぞれG1,G2,G3,G4とした場合、中間キャパシタC1〜C4からキャパシタCout1〜Cout4に流れる電流I
C1,I
C2,I
C3,I
C4は、電流=周波数×電荷量=周波数×容量×電圧変動という関係から、
(4)
となる。ここで、fは入力電圧V
SNの周波数である。ここで、オームの法則から、f×G1,f×G2,f×G3,f×G4はそれぞれ抵抗の逆数、つまりコンダクタンスの次元であることが分かる。
よって、上記式(4)から、図5の回路を図7のような等価回路に置き換えることができる。ここで等価電源Vdcは出力電圧Eの直流電源であり、等価抵抗R1〜R4は中間キャパシタC1〜C4の充放電動作を等価抵抗に置き換えたものであり、等価抵抗R1〜R4の抵抗値はそれぞれ、1/(f×G1),1/(f×G2),1/(f×G3),1/(f×G4)と表すことができる。G1〜G4が等しい場合、R1〜R4の値も等しくなるため、図7においてキャパシタCout1〜Cout4の各電圧が同じ場合は等価抵抗R1〜R4に流れる電流も等しくなる。つまりキャパシタCout1〜Cout4は均等に充電されることになる。
その結果、キャパシタCout1〜Cout4の電圧は定常状態で均等となる。定常状態におけるキャパシタCout1〜Cout4の各電圧はEとなる(ただし、ダイオードにおける電圧降下は無視する。以下同様。)。なお、G1〜G4が異なる場合、等価抵抗R1〜R4に流れる電流も異なることとなるが、最終的にキャパシタCout1〜Cout4の電圧が定常状態でEの均一値となることに変わりはない。また、仮にキャパシタCout1〜Cout4のうちいずれかの電圧が低い場合には、そのキャパシタに対して優先的に電流が供給されることがわかる。影のかかった太陽電池モジュール、すなわち「影モジュール」の電圧は、一般に影のかからないモジュール、すなわち「日照モジュール」より低い電圧となるため、後述の太陽電池用コンバータシステムにおいて影モジュールと並列接続されたキャパシタの電圧が低くなる。上記のとおり電圧の低いキャパシタに優先的に電流が供給され、これが補償電流として影モジュールに供給される。
なお、多段倍電圧入力回路に対して交流電圧を入力する位置は、図5で示した位置に限らず任意である。一例として、特許文献2の図7に示す位置から入力した場合の動作を、特許文献2の[0022]〜[0030]に従って説明する。
図8a,図8bに示すとおり、入力回路の端子A−B間には矩形波状電圧が入力される。このとき、入力される矩形波状電圧の変化に応じてキャパシタCout1〜Cout4に充放電電流が流れ、多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7と偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が交互に導通する。
具体的には、図8aに示すとおり端子Bから端子Aへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、図8aに示すとおりの経路を電流が流れて、図8bに示すとおり端子Aから端子Bへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、図8bに示すとおりの経路を電流が流れる。
ここで、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとすれば、入力電圧V
SNの動作周波数が十分高い場合、キャパシタCout1,Cout2,Cout3,Cout4の電圧V
Cout1,V
Cout2,V
Cout3,V
Cout4は1サイクル前後において不変であるとみなすことができる。モード1におけるV
SNの大きさをEとし、図8aのモード1における中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1a,V
C2a,V
C3a,V
C4aとすれば、図8aの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(5)が得られる。
(5)
なお、VCout1〜VCout4については、図8a中でキャパシタCout3を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とし、Vc1a〜Vc4a(及び、後述のVc1b〜Vc4b)については、図8a中で中間キャパシタC1〜C4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を負とした。
同様に、図8bのモード2におけるV
SNの大きさを0とし(電圧の基準点を負側の電圧と取ることにより、モード2におけるV
SNをゼロとしてよい。)、中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1b,V
C2b,V
C3b,V
C4bとすれば、図8bの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(6)が得られる。
(6)
上記式(5),(6)より、中間キャパシタC1〜C4における、モード1とモード2の間での電圧変動△VC1=VC1a−VC1b,△VC2=VC2a−VC2b,△VC3=VC3a−VC3b,△VC4=VC4a−VC4bは上記式(3)のとおり計算され、したがって図8a,図8bに示す位置から電圧が入力される場合であっても多段倍電圧整流回路の動作は図7の等価回路で説明できる。
図3bの昇圧型PWMコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第1の実施形態である太陽電池用コンバータシステムに、4直列の太陽電池ストリングPV1〜PV4を接続したシステムの回路図を図9に示す。Qはスイッチ、Dはダイオード、Lはコンバータ内インダクタ、Lrは中間インダクタ、Cin1〜Cin4は入力側キャパシタ、Coutは出力側キャパシタ、RLは負荷を表わし、多段倍電圧整流回路については図5で示したとおりである(図5中のCout1〜Cout4が図9中のCin1〜Cin4に対応)。図9に示すとおり、昇圧型コンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、後述のとおり中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている(以下、共振回路と多段倍電圧整流回路が接続されてなる回路を直列共振形倍電圧整流回路と呼ぶ。またスイッチングコンバータと直列共振形倍電圧整流回路等、後述の図21a〜図21dのような変形例の整流回路とを接続してなるコンバータシステムを、トランスレス均等化回路統合型コンバータと呼ぶ。)。なお、Rbiasは、各キャパシタの電圧値が不定値になるのを防止するためのバイアス抵抗である。
2つのインダクタL,Lrは、昇圧型PWMコンバータにおけるフィルタインダクタとして振る舞う。一方、中間インダクタLrは直列共振形倍電圧整流回路内で共振用インダクタとしても振る舞い、共振用キャパシタCrとの間で共振することで、直列共振形倍電圧整流回路において正弦波状電流を生成する。すなわち、中間インダクタLrは2つの回路部によって共有されており、2つの役割を担う。
実施例1のトランスレス均等化回路統合型コンバータにおいては、昇圧型PWMコンバータが太陽電池ストリング全体(直列接続された太陽電池モジュールPV1〜PV4)の電圧を変換する一方で、直列共振形倍電圧整流回路により、キャパシタCin1〜Cin4のうち最も電圧の低いキャパシタ(太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち影モジュールに並列接続されたキャパシタ)が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールに供給される。昇圧型PWMコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧V
in(すなわち太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧であるストリング電圧V
string)と出力電圧V
outの関係は、汎用的な昇圧型PWMコンバータと同様、スイッチの時比率(スイッチQのスイッチング1周期に対するオン期間の割合)をDとすると、インダクタにおける磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、以下の式(7)で表わされる。
(7)
スイッチQのスイッチングにより図9のシステムを動作させたときに各素子を流れる電流、電圧の動作波形を図10に、全キャパシタ電圧が均一時における、各動作モード1〜4における電流経路を図11a〜図11dにそれぞれ示す(影モジュールに並列接続されたキャパシタだけでなく、日照モジュールに並列接続されたキャパシタに流れうる電流経路も示した。)。図10中のTsはスイッチQのスイッチング周期である。なお、図10のグラフ中、各電流については、図9で示す向きを正とし、また共振用キャパシタCrの電圧VCrについては、図9に示す向きに電流iCrが流れることで充電される電圧を正とした。
図11aに示すモード1ではスイッチQがターンオンし、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrには、それぞれのインダクタンス値に応じた電圧が印加される。コンバータ内インダクタLのインダクタンスをLとし、中間インダクタLrのインダクタンスをL
rとすれば、インダクタL,Lrに印加される電圧値V
L、V
Lrはおおよそ次式で表される(図9中、i
L,i
Lrの矢印方向に電流を流す極性を正とする。)。
(8)
(9)
VLrにより共振タンク内で、すなわち中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧整流回路内では正弦波状の共振電流が流れる。コンバータ内インダクタLを流れる電流iLは、既に降圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に増加する(図10中、iLのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流iLrは、図9の電流経路からわかるとおり、iLと、共振用キャパシタCrの電流iCrとの和に相当するため、直線的に増加するiLに正弦波状電流iCrが重畳した(iLにiCrを足した)電流波形となる(図10中、iLrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4を流れる電流は奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流iCrが共振により正弦波状に変化してゼロとなったとき、動作はモード2へと移行する。
図11bに示すモード2においても依然としてスイッチQはオン状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード1の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード2においてはiL=iLrとなる。
スイッチQをターンオフさせると、インダクタL,Lrを流れていた電流がダイオードDへと転流し、図11cに示すモード3の電流経路が実現する。モード3においてインダクタLに印加される電圧V
Lと、インダクタLrに印加される電圧値V
Lrとは、ダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ次式で表される(極性の定義は式(8),(9)と同様)。
(10)
(11)
VLrにより共振タンク内で、すなわち中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が再び流れる。コンバータ内インダクタLを流れる電流iLは、既に昇圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に減少する(図10中、iLのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流iLrは、図9の電流経路からわかるとおり、iLと、共振用キャパシタCrの電流iCrとの和に相当するため、直線的に減少するiLに正弦波状電流iCrが重畳した(iLにiCrを足した)電流波形となる(図10中、iLrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4の電流は偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流iCrがゼロとなったとき、動作はモード4へと移行する。
図11dに示すモード4においても依然としてスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード3の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード4においてはiL=iLrとなる。
以上、図11a〜図11dの電流経路と式(8)〜(11)で示したとおり、中間インダクタLrの両端には、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrのインダクタンスの比に応じた電圧が発生する。中間インダクタLrの両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
Lr_p-pは式(9),(11)より次式で表される。
(12)
一般的に、共振タンクに流れる共振電流の波高値i
Cr-peakは印加電圧に比例し、
(13)
の形式で表わすことができる。ここで、Zrは共振タンクのインピーダンスである。式(12),(13)が示すとおり、本発明のトランスレス均等化回路統合型コンバータではインダクタL,Lrのインダクタンス比を任意に決定することでi
Cr-peakを抑えつつ、補償電流の供給を担う多段倍電圧整流回路を駆動することができる。
蓄電セル用均等化回路である直列共振形倍電圧整流回路による蓄電セル電圧均等化の原理については、特許文献2や非特許文献3で詳細な説明がなされており、また本明細書においても図5〜図8bを用いて詳細に説明したとおりである。ここで、図10の波形図で示すシステムの動作は4つのモードからなり、スイッチQのオン状態においてはモード1〜2が、スイッチQのオフ状態においてはモード3〜4が実現されるが、電流が矩形波状であっても、あるいは正弦波状であっても、中間キャパシタC1〜C4が奇数番号のダイオードを介して、そして偶数番号のダイオードを介して充放電されさえすれば、多段倍電圧整流回路はキャパシタCin1〜Cin4の電圧を均等化するよう動作する。すなわち、既に述べたとおりキャパシタCin1〜Cin4のうち電圧の低いキャパシタに優先的に電流が供給され、これが補償電流として影モジュールに供給される。具体的に、太陽電池モジュールPV1が影モジュールであれば、図11a〜図11dに示す電流経路のうち中間キャパシタC1を通る経路を電流が優先的に流れるし、あるいは太陽電池モジュールPV3が影モジュールであれば、電流経路のうちキャパシタ中間キャパシタC3を通る経路を電流が優先的に流れるのであり、その電流が補償電流として影モジュールに供給される。したがって、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの共振によって4モード動作となった場合であっても、モード1〜モード4に亘るスイッチングの1周期を通じて、奇数番号、偶数番号のダイオードを介して中間キャパシタC1〜C4が充放電されることにより、キャパシタCin1〜Cin4のうち影モジュールと並列接続されたキャパシタに優先的に電流が供給され、これが補償電流として影モジュールに供給されるのであり、定性的には上記式(1)〜(4)や図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。供給された補償電流を影モジュールが流すことにより、擬似的には日照モジュールと同様に大きな電流を出力することが可能となるのであり、したがって太陽電池ストリング全体として大きな出力を得ることが可能となる。
なお、図9のシステムが、共振タンクの共振周期よりもスイッチング1周期が短い連続モードで動作する場合、その動作は図11aと図11cで電流経路が表わされる2モード動作となるから、定性的には、上記式(1)〜(4)や図6a,図6b,図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。また図9の充電器から共振キャパシタCrを除き、共振キャパシタCrのあった部分を単なる導線とした場合(後述の図21b参照)も、その動作は図11aと図11cで電流経路が表わされる2モード動作となるから(共振タンクがないため上述の共振が起こらない)、上記式(1)〜(4)や図6a,図6b,図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
以上では昇圧型PWMコンバータと直列共振形倍電圧整流回路を組み合わせた例について説明したが、その他のコンバータと共振形倍電圧整流回路の組み合わせも可能である。一例として、図3aの降圧型PWMコンバータを用いた太陽電池用コンバータシステムについて説明する。なお、特に断りのない限り、以降の実施例においても実施例1と同様の参照符号、変数定義等を用いる。
図3aの降圧型コンバータの動作時における電流経路を図12a,図12bにそれぞれ示す。スイッチQがオンとなる期間では、キャパシタCin,CoutからインダクタLに電圧が印加されることにより(入力電圧をVin、出力電圧をVoutとすればVin−Voutが印加される。)、インダクタLを流れる電流は直線的に増加する。このときスイッチQに印加されている電圧はゼロである(オン抵抗を無視した。)。スイッチQがオフとなる期間では、インダクタLを流れる電流はダイオードDoを介して負荷側へ流れる。インダクタLに印加される電圧は、−Voutであり(図12a,図12b中、矢印方向に電流を流す電圧を正とした。)、インダクタLを流れる電流は直線的に減少する。このように、スイッチング動作に伴い、インダクタLの電圧は矩形波状電圧となる。
図3aの降圧型PWMコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第2の実施形態であるシステムに、4直列の太陽電池ストリングPV1〜PV4を接続したシステムの回路図を図13に示す。Qはスイッチ、Dはダイオード、Lはコンバータ内インダクタ、Lrは中間インダクタ、Cin1〜Cin4は入力側キャパシタ、Coutは出力側キャパシタ、RLは負荷を表わし、多段倍電圧整流回路については図5で示したとおりである。図13に示すとおり、降圧型コンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、実施例1の図9と同様に中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている。2つのインダクタL,Lrや共振用キャパシタCrの動作、役割は実施例1と同様である。
実施例2のトランスレス均等化回路統合型コンバータにおいては、降圧型PWMコンバータが太陽電池ストリング全体(直列接続された太陽電池モジュールPV1〜PV4)の電圧を変換する一方で、直列共振形倍電圧整流回路により、キャパシタCin1〜Cin4のうち最も電圧の低いキャパシタ(太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち影モジュールに並列接続されたキャパシタ)が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールに供給される。降圧型PWMコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧V
in(すなわち太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧であるストリング電圧V
string)と出力電圧V
outの関係は、汎用的な降圧型PWMコンバータと同様、スイッチの時比率(スイッチQのスイッチング1周期に対するオン期間の割合)をDとすると、インダクタにおける磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、以下の式(14)で表わされる。
(14)
スイッチQのスイッチングにより図13のシステムを動作させたときに各素子を流れる電流、電圧の動作波形を図14に、各動作モード1〜5における電流経路を図15a〜図15eにそれぞれ示す(影モジュールに並列接続されたキャパシタだけでなく、日照モジュールに並列接続されたキャパシタに流れうる電流経路も示した。)。図14のグラフ中、各電流については、図13で示す向きを正とし、また共振用キャパシタCrの電圧VCrについては、図13に示す向きに電流iCrが流れることで充電される電圧を正とした。
図14の動作波形に示すとおり、不連続モードにおいて図13のシステムは5つの動作モード(モード1〜5)を繰り返しつつ動作する。便宜上、モード2から説明を行う。
スイッチQがターンオンしているモード2(図15b)においては入出力電圧差V
in−V
outに相当する電圧によりコンバータ内インダクタLの充電が行われ、コンバータ内インダクタLを流れる電流i
Lは直線的に増加する。このとき、共振形倍電圧整流回路内に電流は流れていない。モード2においてインダクタL,Lrに印加される電圧値V
L,V
Lrは次式で表される。
(15)
(16)
図15cに示すモード3では、スイッチQをターンオフさせることでスイッチQを流れていた電流がダイオードDへと転流し、ダイオードDに電流i
Dが流れ始める。また中間インダクタLrを流れていた電流は、共振用キャパシタCrへと転流し、中間キャパシタC1〜C4に電流が流れ始める。モード3においてインダクタL,Lrに印加される電圧値V
L,V
Lrはダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ次式で表される。
(17)
(18)
中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では共振電流が流れ始める。コンバータ内インダクタLを流れる電流iLは、既に降圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に低下する(図14中、iLのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流iLrは、図15cの電流経路からわかるとおり、モード3においては正弦波電流iCrと等しい(図14中、iLrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4を流れる電流は偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流iCrが共振により正弦波状に変化してゼロとなり、電流極性が反転すると同時に、動作は次のモード4へと移行する。
図15dに示すモード4においてもスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加されている電圧はモード3の場合とほぼ同等である。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrは共振を続けており、モード4では正弦波状共振電流iCrの極性がモード3の場合とは逆のため、奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7が導通する。
図15eに示すモード5においても依然としてスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード3の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード5においてはiLr=0となる。
スイッチQをターンオンさせるとダイオードDがターンオフされ、図15aに示すモード1が始まる。コンバータ内インダクタLの電流iLはスイッチQを経由して流れ始める一方、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrにも電流が流れ始め、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの間で再び共振が始まる。モード1においてインダクタL,Lrに印加されている電圧はモード2の場合とほぼ同等である。
以上、図15a〜図15eの電流経路と式(15)〜(18)で示したとおり、中間インダクタLrの両端には、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrのインダクタンスの比に応じた電圧が発生する。中間インダクタLrの両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
Lr_p-pは式(16),(18)より次式で表される。
(19)
既に述べたとおり、一般的に、共振タンクに流れる共振電流の波高値iCr-peakは印加電圧に比例して上式(13)の形式で表わすことができるため、実施例2のトランスレス均等化回路統合型コンバータにおいても、インダクタL,Lrのインダクタンス比を任意に決定することでiCr-peakを抑えつつ、補償電流の供給を担う多段倍電圧整流回路を駆動することができる。
蓄電セル用均等化回路である直列共振形倍電圧整流回路による蓄電セル電圧均等化の原理については、実施例1等で詳細に説明したとおりである。ここで、図14の波形図で示すシステムの動作は5つのモードからなり、スイッチQのオン状態においてはモード1〜2が、スイッチQのオフ状態においてはモード3〜5が実現されるが、電流が矩形波状であっても、あるいは正弦波状であっても、中間キャパシタC1〜C4が奇数番号のダイオードを介して、そして偶数番号のダイオードを介して充放電されさえすれば、多段倍電圧整流回路はキャパシタCin1〜Cin4の電圧を均等化するよう動作する。すなわち、既に述べたとおりキャパシタCin1〜Cin4のうち電圧の低いキャパシタに優先的に電流が供給され、これが補償電流として影モジュールに供給される。具体的に、太陽電池モジュールPV1が影モジュールであれば、図15a〜図15dに示す電流経路のうち中間キャパシタC1を通る経路を電流が優先的に流れるし、あるいは太陽電池モジュールPV3が影モジュールであれば、電流経路のうちキャパシタ中間キャパシタC3を通る経路を電流が優先的に流れるのであり、その電流が補償電流として影モジュールに供給される。したがって、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの共振によって5モード動作となった場合であっても、モード1〜モード5に亘るスイッチングの1周期を通じて、奇数番号、偶数番号のダイオードを介して中間キャパシタC1〜C4が充放電されることにより、キャパシタCin1〜Cin4のうち影モジュールと並列接続されたキャパシタに優先的に電流が供給され、これが補償電流として影モジュールに供給されるのであり、定性的には上記式(1)〜(4)や図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。供給された補償電流を影モジュールが流すことにより、擬似的には日照モジュールと同様に大きな電流を出力することが可能となるのであり、したがって太陽電池ストリング全体として大きな出力を得ることが可能となる。
なお、図13のシステムが、共振タンクの共振周期よりもスイッチング1周期が短い連続モードで動作する場合、その動作は図15aと図15cで電流経路が表わされる2モード動作となるから、定性的には、上記式(1)〜(4)や図6a,図6b,図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。また図13の充電器から共振キャパシタCrを除き、共振キャパシタCrのあった部分を単なる導線とした場合(後述の図21b参照)も、その動作は図15aと図15cで電流経路が表わされる2モード動作となるから(共振タンクがないため上述の共振が起こらない)、上記式(1)〜(4)や図6a,図6b,図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
以上では昇圧型PWMコンバータおよび降圧型PWMコンバータと直列共振形倍電圧整流回路を組み合わせた実施例について説明を行ったが、その他のコンバータを基本回路として組み合わせることも可能である。一例として、図3eのZetaコンバータを用いたシステムについて説明する。
図3eのZetaコンバータの動作時における電流経路を図16a,図16bにそれぞれ示す。スイッチQの切り替えに伴い、既に説明した降圧型、昇圧型と同様にインダクタに流れる電流が直線的に増加又は減少する。インダクタL1,L2における磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、入出力電圧比は
(20)
と表わされる。
図3eのZetaコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第3の実施形態である太陽電池用コンバータシステムに、4直列の太陽電池ストリングPV1〜PV4を接続したシステムの回路図を図17に示す。図17に示すとおり、Zetaコンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、実施例1の図9と同様に中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている。インダクタL1,L2,Lrや共振用キャパシタCrの動作、役割は実施例1と同様である。
実施例3のトランスレス均等化回路統合型コンバータにおいては、Zetaコンバータが太陽電池ストリング全体(直列接続された太陽電池モジュールPV1〜PV4)の電圧を変換する一方で、直列共振形倍電圧整流回路により、キャパシタCin1〜Cin4のうち最も電圧の低いキャパシタ(太陽電池モジュールPV1〜PV4のうち影モジュールに並列接続されたキャパシタ)が充電され、その充電電流が補償電流として影モジュールに供給される。Zetaコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧Vin(すなわち太陽電池モジュールPV1〜PV4の電圧の合計電圧であるストリング電圧Vstring)と出力電圧Voutの関係は、上式(20)で表わされる。
スイッチQのオン、オフ切り替えに応じてコンバータ内インダクタL1,L2には矩形波状電圧が印加され、これに伴い中間インダクタLrにも矩形波状電圧が印加される。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrが共振回路を形成することにより、多段倍電圧整流回路には正弦波状電圧が入力される。以降、実施例1,2と同様の原理で、多段倍電圧整流回路の動作により影モジュールに補償電流が供給される。共振用キャパシタCrを除いた場合も実施例1,2と同様である(以降の実施例も同様)。
以上の実施形態では、フィルタ用のインダクタと共振形倍電圧整流回路用のインダクタLrが個別に必要であったため、回路全体としては少なくとも2つの磁性素子が必要であった。しかしながら、カップルドインダクタを用いることによりこれらの磁性素子を1つの素子として集約することも可能である。カップルドインダクタを用いて昇圧型PWMコンバータに共振形倍電圧整流回路を組み合わせた本発明の第5の実施形態である太陽電池用コンバータシステムに4直列の太陽電池ストリングPV1〜PV4を接続したシステムの回路図を図18に示す。
図18の回路構成は概ね図9のものと同様であるが、2つのインダクタ(図9中、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLr)が、同一のコアに対して巻回されることで一つの磁性素子(カップルドインダクタ)へと集約されている。図18中、LmgとLkgはそれぞれカップルドインダクタの励磁インダクタンスと漏洩インダクタンスを表わし、励磁インダクタンスLmgは昇圧型PWMコンバータにおけるフィルタインダクタL(図9参照)として振る舞う一方、漏洩インダクタンスLkgは直列共振形倍電圧整流回路用の共振用インダクタLrの機能を果たす。カップルドインダクタはトランスと同様で1つのコアに複数の巻線が施された磁性素子であり、各々の巻線に印加される電圧は巻線比(N1:N2)で決定される。漏洩インダクタンスLkgに印加される電圧は十分小さく無視できるため、スイッチQがオンの期間に一次巻線に印加される電圧V
N1、二次巻線に印加される電圧V
N2はおおよそ下式(21),(22)で表される(一次巻線の巻数をN1、二次巻線の巻数をN2とする。)。
(21)
(22)
V
N2により共振タンク、すなわち漏洩Lkgと共振用キャパシタCrの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が流れる。一方、スイッチQがオフの期間はダイオードDが導通する。一次巻線と二次巻線に印加される電圧値は、ダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ下式(23),(24)で表される。
(23)
(24)
スイッチQがオフの期間においてもVN2により共振タンク、すなわち漏洩インダクタンスLkgと共振用キャパシタCrの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が流れる。
以上、式(22),(24)で示したとおり、二次巻線の両端にはN1とN2の比に応じた電圧が発生する。二次巻線の両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
N2_p-pは式(22),(24)より次式で表される。
(25)
共振タンクに流れる共振電流の波高値i
Cr-peakは式(13)と同様で印加電圧に比例し、
(26)
の形式で表わすことができる。ここで、Zrは共振タンクのインピーダンスである。式(25),(26)式が示すように、カップルドインダクタを用いたトランスレス均等化回路統合型コンバータでは、N1とN2の比を任意に決定することでi
Cr-peakを抑えつつ、セル電圧の均等化機能を担う倍電圧整流回路を駆動することができる。なお、図19のシステムの動作原理も実施例1等と同様であり、上式(7)で表わされる昇圧型PWMコンバータの動作によって太陽電池ストリングPV1〜PV4の電圧を変換しつつ、共振タンクの共振電流によって多段倍電圧整流回路を動作させることにより影モジュールに補償電流を供給する。
実施例4では、昇圧型PWMコンバータに対してカップルドインダクタを用いつつ均等化回路を統合した例について示したが、その他のコンバータに対してもカップルドインダクタを用いた統合が可能である。一例として、降圧型PWMコンバータに対してカップルドインダクタを用いつつ均等化回路を統合した、本発明の第5の実施形態である太陽電池用コンバータシステムに4直列の太陽電池ストリングPV1〜PV4を接続したシステムの回路図を図19に示す。
図19の構成は、図13で示した降圧型コンバータのコンバータ内インダクタLと共振形倍電圧整流回路内の中間インダクタLrを、同一のコアに対して巻回することでカップルドインダクタにより集約した実施例に相当する。基本的な動作原理は図13に示したものと同様であり、上式(14)で表わされる降圧型PWMコンバータの動作によって太陽電池ストリングPV1〜PV4の電圧を変換しつつ、共振タンクの共振電流によって多段倍電圧整流回路を動作させることにより影モジュールに補償電流を供給する。図19を用いて説明した実施例5と同様の原理から、各巻線に発生する矩形波状電圧の振幅はカップルドインダクタの巻線比に依存するのであり、一次巻線と二次巻線の比を任意に決定することで共振電流の波高値iCr-peakを抑えつつ、セル電圧の均等化機能を担う倍電圧整流回路を駆動することができる。
その他の変形例
以上の各実施例においては、主には直列共振形の共振回路から共振電流を入力することで多段倍電圧整流回路を動作させる実施形態について説明を行ってきたが、非共振形の入力部や、その他の共振形の入力部からの入力電流により多段倍電圧整流回路を動作させることも可能である。
本発明の教示するトランスレス均等化回路統合型コンバータに用いることができる、入力部と多段倍電圧整流回路との構成例を図20a〜図20dに示す。図20aは直列共振形入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、これまで説明してきた各実施形態で用いている構成である。図20bは非共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、図20aの直列共振形の回路における共振用キャパシタCrを削除した形態と同等である。非共振形の入力部を用いる場合の多段倍電圧整流回路の動作は、図5〜図7等を用いて説明したとおりである。図20aの共振用キャパシタCrの容量を十分大きく設定した場合においても、図20bの非共振形と同等の動作波形や特性を得ることができる。
図20cは並列共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、図20dはLLC共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例である。これらの入力部を用いる場合であっても、多段倍電圧整流回路は共振電流により、上述の各実施例と同様に動作する。図20a〜図20dで示した各回路は一般的によく知られた共振・非共振回路方式を多段倍電圧整流回路に適用したものであり、その他の共振・非共振回路を多段倍電圧整流回路に適用することも可能である。