JP6629373B2 - 撥水性物品の製造方法およびレーザ加工装置 - Google Patents

撥水性物品の製造方法およびレーザ加工装置 Download PDF

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Description

本発明は、撥水性物品の製造方法およびレーザ加工装置に関する。
従来には、図19に示すように、マイクロ規模又はナノ規模の多数の突起部1を備えた超撥水性表面Sについての記載がある(特許文献1)。この場合、この突起部1を所定の接触線密度以上となるように配置するものであり、接触線密度を向上するために、図20に示すように、各突起部1に平面視でくぼみ2を設けたものである。
また、従来には、図21と図22に示すように、表面に独立した複数の凹部3を有する撥水撥油性物品5がある(特許文献2)。この場合、凹部3の深さの1/2の位置における凹部3の幅W1と、同位置における凹部3間の仕切壁4の幅W2との比率を3以上としている。
特表2006−525117号公報 特開2014−177072号公報
ところで、表面エネルギー低下により達成できる水の接触角は115°程度であるため、接触角が150°を超える超撥水の実現には表面粗さの導入が不可欠である。寸法オーダーの異なる粗さを複合化した階層構造は表面積倍率を効率的に大きくでき、撥水性単分子膜でコーティングすることで超撥水面の形成が可能である。
一方、工業的には静的撥水性(水滴が付着しにくい性質)よりも液滴の除去性など動的撥水性(水滴が転がりやすい性質、滑水性)が重要視されることが多くなっている。静的撥水性と動的撥水性に及ぼす因子が異なるため、高い接触角をもつ表面が必ずしも高い液滴の除去性能を示すとは限らない。液滴の除去性を高めるためには、凹部に空気が満たされたCassie-Baxter(C−B)状態に移行させることが有効である。一般的に固体・液体・気体の3相界面が短く、不連続であると液滴が滑落しやすくなるため、3相界面が不連続となる柱状構造を有する超撥水面は、低い滑落角(液滴が滑落する角度)を示す。また、細柱化による固液接触率の低減は、3相界面を短くできるため、滑落角低減に有効である。しかし、細柱化により固液接触率を小さくしすぎると、表面積倍率が稼げずC−B状態が崩壊してしまう。
これに対して、前記特許文献1及特許文献2においては、特許文献1の突起部1や特許文献2の凹部間の凸部全面が液体と接触し、固液接触率が高くなり、動的撥水性が不十分となる。
本発明は、上記課題に鑑みて、滑落角及び付着エネルギー(液体と固体の付着性評価指標)の低減効果が認められ、着液時に空気がトラップされて動的撥水性の向上を達成でき、固液接触率低減とC−B状態維持の両立が可能である撥水性物品、およびこのような物品の成形が可能なレーザ加工装置を提供する。
本発明の撥水性物品の製造方法により製造される撥水性物品は、撥水面構造を有する撥水性物品であって、前記撥水面構造は、複数の溝部で仕切られた柱状構造部を有し、前記溝部に微小の凹部と凸部とが交互に所定ピッチで配設されたグレーティング状の周期構造が形成され、前記柱状構造部の先端部は、外周壁部に囲まれた凹部を有するキャビティ構造になっているものである。
本発明の撥水性物品の製造方法により製造される撥水性物品によれば、溝部にグレーティング状の周期構造が形成されているので、表面積倍率を大きくすることができる。このため、キャビティ構造の凹部に空気が満たされたCassie-Baxter(C-B)状態への移行に有用となる。また,柱状構造部の先端部に設けられたキャビティ構造に着液時に空気をトラップできる。キャビティ構造は、表面積倍率の減少をともなう細柱化をすることなく固液接触率を小さくし、滑落角(滑落する角度)や液滴の付着エネルギー(単位面積当たりの引き離し仕事、単位長さ当たりの付着力)を低減できる。
前記溝部の溝幅が、100μm以下で、かつ、前記グレーティング状の周期構造のピッチの2倍以上であるのが好ましい。溝部の幅を100μm以下とすることで,液滴に対して1オーダー以上小さいものとなり、液滴が滴下された状態において、液滴は溝部よりも十分大きなものとなる。また、溝部の幅が周期構造のピッチの2倍以上とすることにより、溝部に周期構造を形成することができる。
前記周期構造の表面に、周期構造の凸部及び凹部よりも微小な100nm以下の粗さが内包されたものが好ましい。グレーティング状の周期構造内に100nm以下の粗さが内包されていることで、損傷が生じにくいアスペクト比の小さな形状で大きな表面積倍率を稼げる。このため、高い撥水性と耐久性を発揮することができる。
前記溝部および前記柱状構造部に、平滑面における水の接触角が100°以上、かつ、厚さが20nm以下となる撥水剤をコ−ティングするのが好ましい。このように、撥水剤をコ−ティングすることによって、撥水面構造の表面積倍率を低下させることなく、大気中由来の有機汚染膜よりも撥水性を向上することができる。撥水剤としては、例えば、撥水機能を有するフッ素系樹脂やシリコン系樹脂を選定することができる。
前記撥水面構造は、レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光し、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査し,前記溝部の形成と同時に前記グレーティング状の周期構造と前記キャビティ構造が形成されてなるものが好ましい。このように構成することによって、動的撥水性に優れた構造となる。
本発明のレーザ加工装置は、前記撥水性物品における撥水面構造を加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光させて、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査させる制御手段を備え、このレーザ光の走査により、前記溝部の形成と同時に前記グレーティング状の周期構造と前記キャビティ構造を形成するものである。
本発明のレーザ加工装置によれば、動的撥水性に優れた撥水面構造を効率的に得ることができる。
レーザ加工装置として、前記溝部の形成時に形成される加工噴出物が柱状構造部の上部に堆積して前記キャビティ構造を形成するような加工条件とするのが好ましい。このような加工条件に設定することによって、溝部の形成と同時に柱状構造部のキャビティ構造及び溝部内の周期構造を形成でき、短時間に安定して撥水面構造を生産することができる。
本発明では、キャビティ構造を有する柱状構造部には滑落角及び付着エネルギーの低減効果があり、また、キャビティ構造に着液時に空気がトラップされ、外周縁のみで液滴が支持される。キャビティ構造を有する柱状構造部は、固液接触率低減とC−B状態維持の両立に有効である。
本発明の撥水性物品の撥水面構造を示し、液滴を支持している状態の簡略断面図である。 撥水面構造の柱状構造部の簡略斜視図である。 1個の柱状構造部の簡略拡大斜視図である。 柱状構造部の断面プロファイル図である。 本発明の撥水性物品の製造方法を示し、(a)は撥水面構造の平面図であり、(b)は撥水面構造に設けられるグレーティング状の周期構造の拡大図である。 本発明に係るレーザ加工装置の簡略構成図である。 レーザ加工装置のブロック図である。 図6に示す方法で製造された撥水面構造の要部斜視図である。 撥水剤のコーティング方法を示す簡略図である。 液滴を支持した状態を示し、(a)は支持面が平坦面の場合の簡略断面図であり、(b)は支持面が凹部を有する場合の簡略断面図である。 柱状構造部にキャビティ構造を有さない撥水面構造を示し、(a)は撥水面構造の平面図であり、(b)は撥水面構造に設けられるグレーティング状の周期構造の拡大図である。 図11に示す撥水面構造の断面プロファイル図である。 キャビティ構造を有さない撥水面構造の簡略斜視図である。 キャビティ構造を有さない撥水面構造の画像図である。 前進角、後退角、および滑落角を説明するための簡略図である。 液滴量を変化させたときの滑落角を示すグラフ図である。 液滴量を変化させたときの付着エネルギーを示すグラフ図である。 液滴接触状態を示し、(a)はキャビティ構造を有する場合の液滴の画像図であり、(b)キャビティ構造を有さない場合の液滴の画像図である。 従来の撥水面構造の簡略斜視図である。 図19の撥水面構造の突起部の平面図である。 従来の他の撥水面構造の簡略平面図である。 図21の撥水面構造の簡略断面図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図18に基づいて説明する。図1は、本発明に係る撥水性物品Mを示し、この撥水性物品Mは、複数の溝部20で仕切られた柱状構造部21を有する撥水面構造24を備えるものである。この場合、溝部20は、図5(a)に示すように、所定ピッチで配設される複数の平行な第1溝20aと、この第1溝20aに直交するように配設される複数の平行な第1溝20bとを有する。柱状構造部21は断面正方形状に柱部からなる。なお、図1は撥水面構造24にて液滴Dを支持している状態である。
また、図1〜図3に示すように、各柱状構造部21の先端部(上端部)は外周壁部22に囲まれた凹部23を有するキャビティ構造25とされている。各柱状構造部21の寸法として、高さ寸法Hとして、例えば、8μmとなり、一辺の長さL1として、例えば、16μmとなり、キャビティ構造25の凹部23の一辺の長さL2として、12μmとなり、キャビティ構造25の凹部23の深さW2として、500nm(0.5μm)となるように設定できる。また、柱状構造部21が配置された配置面に対する占有率0.25に設定できる。なお、図1〜図3は、模式図であって、キャビティ構造25の凹部23の内壁を鉛直方向に延びるものとして、外周壁部22の肉厚を一定としているが、実際には、後述するように、撥水面構造24は、図6に示すようなレーザ加工装置にて成形されるものであるので、図4に示す柱状構造部の断面プロファイル図で示されるように、外周壁部22の肉厚は一定ではない。
また、溝部20に、図5(b)に示すように、微小の凹部31と凸部32とが交互に所定ピッチで配設されたグレーティング状の周期構造33が形成される。この周期構造33は、例えば、凹凸ピッチが約900nmとされ、凹部31の深さが約200nmとされるが、これらに限定されない。すなわち、後述するように、パルスレーザの走査にて形成されるグレーティング状の周期構造33であればよい。
ところで、撥水性物品Mの材質としては、炭素鋼、銅、アルミニウム、白金、超硬合金等の金属系であっても、炭化ケイ素や窒化ケイ素等のシリコン系セラミックスであっても、エンジニアプラスチック等であってもよい。
図6は、撥水面構造24を成形するためのレーザ加工装置26であり、このレーザ加工装置26は、レーザ発生器11と光学系10とを備えたレーザ加工装置を使用して形成する。図6に示すレーザ加工装置では、レーザ発生器11は、ミラー12により加工材料Wに向けて折り返され、メカニカルシャッタ13に導かれる。レーザ照射時はメカニカルシャッタ13を開放し、レーザ照射強度は1/2波長板14と偏光ビームスプリッタ16によって調整可能とし、1/2波長板15によって偏光方向を調整し、集光レンズ17によって、XYθステージ19上の加工材料W表面に集光照射することになる。
このレーザ加工装置26は図7に示すように制御手段27を備え、この制御手段27にて後述する加工条件等を制御することができる。制御手段27は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピュータである。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
次に、レーザ加工装置26を用いた、撥水面構造24を製造(成形)する方法を説明する。レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光させて、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査させ、このレーザ光の走査により、溝部20の形成と同時にグレーティング状の周期構造33とキャビティ構造25を形成する。
また、溝部を形成する際には、加工噴出物が形成溝(溝部20)の両サイドに土手状に堆積するよう加工条件を選択することができる。これによって、溝部20にて区切られてなる柱状構造部21の上部に、外周壁部22に囲まれた凹部23を有するキャビティ構造25を形成することができる。しかも、この制御によって、長軸方向に走査することで走査方向に緩やかなエネルギー分布となり、高フルエンスのビーム中央部で溝加工が進行し,低フルエンスのビーム後方で溝部20内に周期構造33(ピッチ約900nm,深さ約200nm)が形成される。なお、図8は、キャビティ構造25の画像図である。
これによって、例えば、一辺の長さが16μmで高さが8μmの複数の柱状構造部21が形成される。また、柱状構造部21の上端部には、例えば、凹部23の一辺の長さL2が12μmで、凹部23の深さW2が500nm(0.5μm)となるキャビティ構造25が形成される。なお、柱状構造部21が配置された配置面に対する占有率は0.25である。
ところで、図10(a)は、平坦な支持面50上に液滴Dを支持させた状態を示し、図10(b)は凹部51を有する支持面50上に液滴Dを支持させた状態を示している。工業的には静的撥水性よりも液滴除去など動的撥水性が重要である。動的撥水性向上には、図10(b)に示すように凹部51を設け、この凹部51への空気トラップが有効である。すなわち、液体との接触面積の低減が有効である。
表面積倍率を大きくすると凹部51に空気が満たされたC−B状態に移行する。Cassie-Baxter状態における接触角θCBは次の数1で表される。
このため、固液接触率(Φs)が小さいほど撥水性が強調される。しかしながら、固液接触率(Φs)を小さくし過ぎると表面積倍率が稼げず、C−B状態が崩壊する。このため、「異なるオーダーの粗さ」と「空気をトラップしやすいパターンニング」を複合することで、高表面積倍率と固接触率低減の両立が可能となる。
本願発明では、μmオーダーの粗さの溝部20を形成するとともに、この溝部20にサブミクロンのピッチと溝深さの周期構造33を上書きすることができる。これによって、オーダーの異なる粗さの複合化を達成でき、表面積倍率を大とすることができ、C−B状態移行が可能となった。また、各柱状構造部21には、凹部23を有するキャビティ構造25を有するものであり、着液時にキャビティ構造25内に空気をトラップできる。このキャビティ構造25は、表面積倍率の減少をともなう細柱化をすることなく固液接触率を小さくし、滑落角α(液滴Dが滑落する角度)(図15参照)や液滴Dの付着エネルギー(液体と固体の付着性評価指標)(単位面積当たりの引き離し仕事、単位長さ当たりの付着力)を低減できる。このため、固液接触率の低減とC−B状態維持の両立が可能となる。
このように、本撥水性物品Mの撥水面構造24は、キャビティ構造25を有する柱状構造部21には滑落角α及び付着エネルギーの低減効果があり、また、キャビティ構造25に着液時に空気がトラップされ、外周縁のみで液滴Dが支持される。キャビティ構造25を有する柱状構造部21は,固液接触率低減とC−B状態維持の両立に有効である。
特に、溝部20の幅を100μm以下とし、周期構造33のピッチの2倍以上とするのが好ましい。溝部20の幅を100μm以下とすることで,液滴Dに対して1オーダー以上小さいものとなり、液滴Dが滴下された状態において、液滴Dは溝部20よりも十分大きなものとなる。また、溝部20の幅が周期構造のピッチの2倍以上とすることにより、溝部20に周期構造33を形成することができる。
周期構造33の凸部32及び凹部31よりも微小な100nm以下の粗さが内包されたものが好ましい。グレーティング状の周期構造33内に100nm以下の粗さが内包されていることで、損傷が生じにくいアスペクト比の小さな形状で大きな表面積倍率を稼げる。このため、高い撥水性と耐久性を発揮することができる。
溝部20および柱状構造部21に、平滑面における水の接触角が100°以上、かつ、厚さが20nm以下となる撥水剤をコ−ティングすることができる。具体的には、図9に示すように、ディップコート法によりフッ素コーティングを行うことができる。ここで、ディップコート法とは、コーティング剤中にワーク(撥水性物品)を垂直に浸漬し、コーティング剤中に粘性力、表面張力及び重力による力と速度を調整して引上るコーティング方法である。
撥水剤をコ−ティングすることによって、撥水面構造24の表面積倍率を低下させることなく、大気中由来の有機汚染膜よりも撥水性を向上することができる。撥水剤としては、例えば、撥水機能を有するフッ素系樹脂やシリコン系樹脂を選定することができる。
本発明に係るレーザ加工装置は、撥水性物品Mにおける撥水面構造24を加工するレーザ加工装置であって、レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光させて、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査させる制御手段27を備え、このレーザ光の走査により、溝部20の形成と同時にグレーティング状の周期構造22とキャビティ構造25を形成するものであるので、動的撥水性に優れた撥水面構造を効率的に得ることができる。特に、制御手段27の制御によって、溝部20の形成時に形成される加工噴出物が柱状構造部21の上部に堆積してキャビティ構造25を形成するような加工条件とすることができ、このような加工条件とすれば、短時間に安定して撥水面構造Mをより効率的に生産することができる。
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、撥水性物品としては、各種機械の構成部品、工業用資材、産業用資材、又は物流資材等であってもよく、撥水剤をコ−ティングする方法として、一般に、スプレーコート、ロールコート、フローコート、カーテンコート、ナイフコート、スピンコート、バーコートなどがあり、これらの方法で採用できるものを用いることができる。照射するレーザとしては、例えばフェムト秒レーザを使用する。なお、フェムト秒レーザは、そのパルスの半値全幅がフェムト秒(「フェムト」は「10のマイナス15乗」の意)台であるレーザのことを示す。また、照射するレーザとしては、ピコ秒レーザであってもよい。「ピコ」は「10のマイナス12乗」の意である。
超短パルスレーザによる2次元格子溝形成時に溝20内への周期構造33形成と柱状構造21へのキャビティ構造25の同時形成を行い、キャビティ構造25を有する柱状構造部21の滑落角αおよび、付着エネルギーの低減効果を検証した。
まず、図1と図2に示すように、キャビティ構造25を有する柱状構造部21を備えた撥水面構造24を形成する。この場合、SUS304BA基板に対して、超短パルスレーザ(例えば、パルス幅が900fsで波長が1030nmのレーザ)を楕円状(長軸100μmで、短軸が16μm)に集光し、長軸方向に走査することで2次元格子溝部20(第1溝20aと第2溝20bとで構成される溝部)を形成する。溝部20は、その溝幅が16μmとし、溝深さが8μmとし、溝ピッチが32μmとする。この際、加工噴出物が形成溝(溝部20)の両サイドに土手状に堆積するよう加工条件を選択する。これによって、長軸方向に走査することで走査方向に緩やかなエネルギー分布となり、高フルエンスのビーム中央部で溝加工が進行し,低フルエンスのビーム後方で溝部20内に周期構造(ピッチ約900nm,深さ約200nm)が形成される。これによって、柱状構造部は縦横各16μm,高さ8μm,基板に対する占有率は0.25とした。なお、図8は、キャビティ構造25の画像図である。
また、このレーザ加工後に図9に示すディップコート法によりフッ素コーティングを行った。コーティング剤には,リン酸エステルを吸着基とする平滑面接触角112°(カタログ値)のものを使用した。この場合、1分間、フッ素コーティング剤に浸漬した後、速度500μm/Sで引き上げ、100℃−60分間の加熱乾燥を行い、その後、アルコール(エタノール)超音波洗浄を10分間行った。このキャビティ構造25の凹部の縦横辺が各12μmであり、深さが0.5μmとなった。柱状構造部21上面に対するキャビティ(凹部)占有率は0.5625となった。
比較例として、図11(a)(b)に示すように、キャビティ構造25を有さない柱状構造部21を有する撥水面構造24を形成した。SUS304BA基板に対して、超短パルスレーザ(例えば、パルス幅が900fsで波長が1030nmのレーザ)を楕円状(長軸100μmで、短軸が16μm)に集光し、長軸方向に走査することで2次元格子溝部20(第1溝20aと第2溝20bとで構成される溝部)を形成する。溝部20は、その溝幅が16μmとし、溝深さが8μmとし、溝ピッチが32μmとする。この際、加工噴出物が形成溝(溝部20)の両サイドに土手状に堆積されないような加工条件を選択する。また、高フルエンスのビーム中央部で溝加工が進行し,低フルエンスのビーム後方で溝部20内に周期構造33(ピッチ約900nm,深さ約200nm)が形成される。これによって、柱状構造は縦横各16μm,高さ8μm,基板に対する占有率は0.25とした。図12は図11に示すキャビティ構造を有さない撥水面構造24の断面プロファイル図であり、図13はキャビティ構造を有さない撥水面構造24の簡略斜視図であり、図14はキャビティ構造を有さない撥水面構造24の画像図である。
そして、キャビティ構造25を有する撥水面構造と、キャビティ構造25を有さない撥水面構造に対して、純水の滑落角α及び付着エネルギーを測定した。測定時の液滴量は、5μリットル、10μリットル、15μリットル、20μリットルとした。この測定には、Drop Master DM500(協和界面科学)を用いた。
図15に示すように、液体と固体の付着性評価指標である付着エネルギーは、mgsinα/2πrで表すことができる。ここで、mは液滴質量であり、rは着液半径である。図15において、θaは前進角であり、θrは後退角、αは滑落角である。
滑落角αの測定結果を図16に示す。キャビティ構造25を有する柱状構造部21の滑落角αは,キャビティ構造25を有さない柱状構造部21と比較して1/3程度に減少しており、キャビティ構造25に明確な滑落角αの低減効果が認められた。滑落方向に作用する力は液滴Dの体積に比例するのに対して,液滴Dの付着力は着液寸法に比例するため、液量の減少にともない、滑落角αの液量依存性は増大した。特にキャビティ構造25を有さない場合、5μリットルで滑落角αが急増した。キャビティ構造25を有する場合、5μリットルでは滑落角αの急増は認められなかった。着液量をさらに減少させると滑落角αは急増すると予測されるが、撥水性が高いため5μリットル未満では着液不可であった。なお、図16において、Flatとは、キャビティ構造25を有さない柱状構造部21を示し、Cabityとは、キャビティ構造25を有する柱状構造部21を示している。
付着エネルギーの算出結果を図17に示す。キャビティ構造25を有する柱状構造部21の付着エネルギーは,キャビティ構造25を有さないものと比較して1/2程度に減少しており、キャビティ構造25に明確な付着エネルギー低減効果が認められた。付着エネルギーは滑落角αと比較して液量依存性が少ないが、キャビティ構造25を有する柱状構造部21の付着エネルギーは着液量の減少にともない漸減した。要因として重力の影響低下による着液面積の減少、凹部周縁の液体接触域の減少が考えられる。なお、図16及び図17において、Flatとは、キャビティ構造25を有さない柱状構造部21を示し、Cabityとは、キャビティ構造25を有する柱状構造部21を示している。
確認
液滴接触状態を考察するため、着液量10μリットルにおける接触角を測定した。キャビティ構造25を有するもの(キャビティ付き柱状構造)は160°であり、キャビティ構造25を有さないもの(キャビティなし柱状構造)は148°であった。液滴Dの様子を図18(a)(b)に示す。図18(a)はキャビティ構造25を有する液滴の画像図であり、図18(b)はキャビティ構造25を有さない液滴の画像図
である。C−B状態における接触角θCBは前記数1から計算できる。
キャビティ構造25を有する柱状構造部21の場合、接触角θCBを160°(測定値)、平滑面の接触角θeを112°として、固液接触率Φsを演算する。演算式は次の数2となる。固液接触率Φsは、0.096となる。
また、キャビティ構造25を有さない柱状構造部21の場合、接触角θCBを148°(測定値)、平滑面の接触角θeを112°として、固液接触率Φsを演算する。演算式は次の数3となる。固液接触率Φsは、0.243となる。
柱状構造部21の占有率は0.25であるので,凹部23に空気がトラップされたことにより固液接触率が低減したと考えられる。着液時に空気をトラップできるキャビティ構造25を形成すると,固液接触率低減とC−B状態維持の両立が可能となった。柱状構造部21の占有率0.25,柱状構造部21の上面に対する凹部占有率0.5625(122/162)から,凹部23の外周縁の基板に対する占有率は0.25×(1−0.5625)=0.109となり,キャビティ構造25を有する柱状構造部21の固液接触率0.096とほぼ一致する。このことから、深さが0.5μmの凹部でも外周縁のみで液滴Dが支持されていることになる。
20 溝部
21 柱状構造部
22 外周壁部
23 凹部
24 撥水面構造
25 キャビティ構造
26 レーザ加工装置
27 制御手段
31 凹部
32 凸部
33 周期構造
M 撥水性物品

Claims (6)

  1. 複数の溝部で仕切られた柱状構造部を有し、前記溝部に微小の凹部と凸部とが交互に所定ピッチで配設されたグレーティング状の周期構造が形成され、前記柱状構造部の先端部は、外周壁部に囲まれた凹部を有するキャビティ構造になっている撥水面構造を有する撥水性物品の製造方法であって、
    前記撥水面構造は、レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光し、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査し,前記溝部の形成と同時に前記グレーティング状の周期構造と前記キャビティ構造が形成されてなることを特徴とする撥水性物品の製造方法。
  2. 前記溝部の溝幅が、100μm以下で、かつ、前記グレーティング状の周期構造のピッ
    チの2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性物品の製造方法
  3. 前記周期構造の表面に、周期構造の凸部及び凹部よりも微小な100nm以下の粗さが
    内包されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撥水性物品の製造方法
  4. 前記溝部および前記柱状構造部に、平滑面における水の接触角が100°以上、かつ、
    厚さが20nm以下となる撥水剤をコ−ティングしたことを特徴とする請求項1〜請求項
    3のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法
  5. 複数の溝部で仕切られた柱状構造部を有し、前記溝部に微小の凹部と凸部とが交互に所定ピッチで配設されたグレーティング状の周期構造が形成され、前記柱状構造部の先端部は、外周壁部に囲まれた凹部を有するキャビティ構造になっている撥水面構造を有する撥水性物品における撥水面構造を加工するレーザ加工装置であって、
    レーザ光を長軸長さが短軸長さの5倍以上となるように集光させて、長軸方向となす角が30°以内の方向に走査させる制御手段を備え、このレーザ光の走査により、前記溝部の形成と同時に前記グレーティング状の周期構造と前記キャビティ構造を形成することを特徴とするレーザ加工装置。
  6. 前記溝部の形成時に形成される加工噴出物が柱状構造部の上部に堆積して前記キャビティ構造を形成することを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工装置。
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