JP6628345B1 - ジルコニア成形体 - Google Patents
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Description
すなわち,従来から用いられている金属製の補綴物と比較して,歯科用ジルコニア成形体は機能性ならびに審美性に優れている。歯科用ジルコニアは金属製補綴物と比較すると高額ではあるものの,このような利点から広く使用されるようになってきており,金属製補綴物の座を奪いつつある。
すなわち,現在,用いられている歯科用ジルコニア成形体は,口腔内で使用した際に,天然歯と比較して色合いが強く出すぎて違和感を感じるものも多い。この要因として現在用いられている歯科用ジルコニア成形体は,天然歯と比較して透光性が十分でないと一般的には考えらており,そのため,より透光性の高い素材の開発が求められていると考えられる。
すなわち,高透光性の補綴物は,患者口腔内に装着した場合,口腔内特有の一方向からの入射光や舌側面の唾液の介在による透過性変化により,暗く仕上がる傾向にあると発明者は感じていた。このことは,歯科技工士などの製作者の感覚と,患者口腔内の色調適合感に差異をきたし,歯科補綴物の品質低下,再製作による作業者負担を増す要因となっていると発明者は考えていた。
すなわち,ジルコニア成形体を製造する際に,反射率や透過率,反射具合を確認・調整しながら製造を行うことにより,天然歯に近いジルコニア成形体を製造することを可能とするものである。
本発明の第一の構成は,2〜4%のイットリウムと,0.001〜10wt%の光拡散用物質を含むジルコニア成形体であって,前記ジルコニア成形体を焼結し厚さ1.2から2.4mmの板状として,これに可視光を垂直方向にあてたときに,反射光と透過光の比が,2.0から6.0であることを特徴とするジルコニア成形体である。
本発明の第二の構成は,光拡散用物質が,酸化アルミニウムである第一の構成に記載のジルコニア成形体である。
本発明の第三の構成は,さらに,反射光と透過光の比が,3.5から6.0である第一又は第二の構成に記載のジルコニア成形体である。
本発明の第五の構成は,前記板状ジルコニア成形体が2.4mmの厚さである第一から第四の構成いずれかに記載のジルコニア成形体である。
本発明の第七の構成は,さらに,Fe2O3,CeO2,Er2O3のいずれか又は複数を含んでなる第一から第六の構成いずれかに記載のジルコニア成形体である。
本発明の第九の構成は,前記反射光において,高輝度反射光を抽出して,半円状の反射検出の評価を行う第八の構成に記載のジルコニア成形体である。
本発明の第十の構成は,さらに,前記反射光が,尖度-2.0から-1.3である第一から第九の構成いずれかに記載のジルコニア成形体である。
本発明の第十二の構成は,第一から第十一の構成いずれかのジルコニア成形体を原料として用いるCAD/CAMシステムである。
本発明の第十三の構成は,第一から第十一の構成いずれかのジルコニア成形体の着色方法である。
本発明のジルコニア成形体は,2〜4%のイットリウムと,0.001〜10wt%の光拡散用物質を含むジルコニア成形体であって,前記ジルコニア成形体を焼結し厚さ1.2から2.4mmの板状として,これに可視光を垂直方向にあてたときに,反射光と透過光の比が,2.0から6.0であることを特徴とする。
すなわち,ジルコニア原料として,イットリア安定化ジルコニア粉末を用い,これに所定量の光拡散用物質を加え焼結することにより,ジルコニア成形体が形成される。また,色合いの調整等を目的として,必要に応じて,Fe2O3,CeO2,Er2O3などの粉末を加えることができる。これら各種成分については,表層部分に局在させたり,段階的な局在化を行い多層構造化してもよい。
光拡散用物質は,ジルコニア成形体において,入射光の内部散乱ないし反射を可能とする物質として定義され,種々の金属ないし金属酸化物を用いることができる。典型的には,酸化アルミニウムを用いることができる。
一例をあげると,イットリア安定化ジルコニア粉末を主成分として,酸化アルミニウムや各種調製用酸化物を均一に混合させた複数種の粉末を用意する。この粉末を,金型に充填して圧力を加えた後,850〜1550℃の温度で仮焼結又は本焼結することにより作製される。
すなわち,高透光性を有する5Y-TZPに,3Y-TZPと酸化アルミニウムを添加し,透光性を徐々に低下させながら,反射光/透過光比と反射光の好ましい性質を調整するものである。加えて,かかる3Y-TZPと酸化アルミニウムの添加により,ジルコニア成形体としての強度を高めるとともに,低温劣化を防止する効果を有するものである。
すなわち,可視光を用いて評価を行うことにより,透過光と反射光の様子を可視化するとともに,反射光の反射の様子が半円状に反射しているかや所定の尖度を有するかどうかの評価・判断を可能とするものである。また,反射光と透過光の比は,2.0から6.0の範囲内となるよう調整して,ジルコニア成形体を成形すればよく,より好ましくは3.0から6.0,最も好ましくは3.5から6.0の範囲とすればよい。
可視光としては,可視光である限り特に限定する必要はなく,種々の波長のものを用いることができるが,典型的には,波長620から750nmの赤色光を用いることができる。
実施例記載の方法は,下記一連の工程からなる。
(1) 板状ジルコニア成形体に,垂直に可視光を垂直にあてる(光照射工程)。
(2) 光照射工程の様子を,板状ジルコニア成形体の横方向から撮影を行う(撮影工程)。
(3) 撮影した画像の定性的ないし定量的な評価を行う(評価工程)。
典型的には,図1に示すように,縦20mm,横10mm,厚さが1.2,1.8,2.4mmのいずれかであるジルコニア成形体に対し,垂直に可視光(赤色レーザー光)をあてるなどすればよい。
典型的には,図2のように,板状ジルコニア成形体の透過ないし反射の様子全体が収まるように撮影を行えばよい。
すなわち,ジルコニア成形体を口腔内で使用した際,どの方向から見ても一定程度の視認性を有することの評価指標として,反射光が,半円状に反射する様子を定性的に評価するものである。
高輝度反射光としての抽出は,撮影状態や解析に用いるソフトなどを考慮して条件を適宜設定することができるが,一例をあげると,撮影した画像をグレースケール化し,最大輝度(明度)の値から50%以上,より好ましくは60%以上,最も好ましくは75%以上を高輝度として抽出を行うなどである。
すなわち,ジルコニア成形体を口腔内で使用した際,暗くなりすぎない適度な視認性を有することの評価指標として,反射光と透過光の比が適当な範囲にあるかどうかを評価するものである。
尖度評価としては,実験例のとおり,前記の明度カウント値をグラフ化し,反射光の部分の尖度を算出すればよい。かかる尖度について,典型的には-2.0から-1.1,好ましくは-1.8から-1.1,より好ましくは-1.6から-1.2,最も好ましくは-1.6から-1.4とすることができる。
すなわち,ジルコニア成形体の検査方法であって,ジルコニア成形体を焼結し厚さ1.2から2.4mmの板状として,これに可視光を垂直方向にあてたときに,反射光と透過光の比が,2.0から6.0であるかを評価することを特徴とするジルコニア成形体評価方法として発明を構成するものである。
1.実験方法を図1に示す。
2.5Y-TZPと3Y-TZP,酸化アルミニウムを原料として焼結し,酸化イットリウムとして3.5mol%,酸化アルミニウムとして0.05%を含むジルコニア成形体と,市販品の高透過型ジルコニア成形体をそれぞれ実施例と比較例として用いた。
3.それぞれのジルコニア成形体について,縦20mm,横10mm,厚さが1.2,1.8,2.4mm,それぞれ3種類のジルコニア成形体を用いて,これに垂直に赤色レーザー光(波長,700nm)をあてて,その様子を撮影した。
4.撮影した画像について,目視により定性的評価を行った。
5.また,撮影画像について,画像解析ソフトで,グレースケール化を行い,ピクセルごとの明度をカウント化した後,高輝度(最大輝度の60%以上)と超高輝度(最大輝度の75%以上)を抽出した画像を作成し,定性的評価と定量的評価を行った。
1.各実施例ならびに比較例における撮影の結果を,図2および図3に示す。
(1) いずれの厚さのサンプルにおいても,透過光については,比較例の方がより強く検出されており,反射光においては,実施例の方がより強く検出されていた(図2)。
(2) また,撮影画像中央部における検出値は,いずれの厚さにおいても比較例の方が大きな値となっていた(図3)。このことは,ジルコニア成形体に入射した光が,反射もせず透過もせず,内部散乱を経て横方向(図面の手前側)に散乱していることを示している。
(1) 比較例において,高輝度抽出ならびに超高輝度抽出いずれにおいても,三角のような形状の反射光を示しており,角度によって,視認性が異なってくることが推測された。
(2) 実施例においては,高輝度抽出ならびに超高輝度抽出いずれにおいても,丸みを帯びた半円状の反射光を示しており,いずれの角度においても視認性が類似してくることが推察された。
(3) また,発光強度のグラフを比較しても,比較例は,反射光ピークから鋭く落ちていくのに対し,実施例はこれと比較すると反射光ピークから緩やかで丸みを帯びて落ちていくことが分かった。
(4) 反射比(反射光カウント/透過光カウント)を測定したところ,実施例はそれぞれ3.6と5.7を示したのに対し,比較例は2.2と3.0であった。
(1) 実施例においてはそれぞれ-1.483,-1.570であった。一方,比較例ではそれぞれ-0.820と-1.090であった。
(2) このことから,実施例においては,比較例よりも緩やかなピーク形状を示していることが分かった。
(3) 加えて,この緩やかなピーク形状は,入射光に対する半円状の反射の様子を定量的に示していると考えられた。
Claims (8)
- 2〜4%のイットリウムと,0.001〜10wt%の光拡散用物質を含むジルコニア成形体の品質評価方法であって,
前記ジルコニア成形体を焼結し厚さ1.2から2.4mmの板状として,これに可視光を垂直方向にあてたときに,反射光と透過光の測定を行い,
前記反射光が,半円状に反射され検出されること,
前記反射光において,高輝度反射光を抽出して,高輝度反射光が半円状であり、
前記高輝度反射光について,
ジルコニア成形体表面からの垂直方向の距離と,
反射光強度とをグラフとして表し,
前記グラフに現れる反射光強度ピークの形状の尖度を分析することを特徴とするジルコニア成形体の品質評価方法。
- 2〜4%のイットリウムと,0.001〜10wt%の光拡散用物質を含むジルコニア成形体の製造方法であって,
前記ジルコニア成形体を焼結し厚さ1.2から2.4mmの板状として,これに可視光を垂直方向にあてたときに,反射光と透過光の測定を行い,
前記反射光が,半円状に反射され検出されること,
前記反射光において,高輝度反射光を抽出して,高輝度反射光が半円状であり、
前記高輝度反射光について,
ジルコニア成形体表面からの垂直方向の距離と,
反射光強度とをグラフとして表したとき,
前記グラフに現れる反射光強度ピークの形状の尖度が-2.0から-1.1であること,
これらの確認を経て製造されることを特徴とするジルコニア成形体の製造方法。
- 光拡散用物質が,酸化アルミニウムである請求項2に記載のジルコニア成形体の製造方法。
- さらに,反射光と透過光の比が,3.5から6.0である請求項2又は3に記載のジルコニア成形体の製造方法。
- 前記可視光が,波長620から750nmの赤色光である請求項2から4のいずれかに記載のジルコニア成形体の製造方法。
- 前記ジルコニア成形体において,5Y-TZP (5mol% Y2O3-Tetragonal Zirconia Polycrystal)を主成分として,これに3Y-TZPを加えてイットリウム含量を調整してなる請求項2から5のいずれかに記載のジルコニア成形体の製造方法。
- さらに,Fe2O3,CeO2,Er2O3のいずれか又は複数を含んでなる請求項2から6のいずれかに記載のジルコニア成形体の製造方法。
- 歯科用補綴物として用いられるジルコニア成形体である請求項2から7のいずれかに記載のジルコニア成形体の製造方法。
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