JP6623401B2 - 飼料原料及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、特定のリン脂質を含む飼料原料及びその用途に関し、より詳細には消化機能を改善する飼料原料及びその用途に関する。
家畜の消化管の機能を調節することは、消化機能を改善し、消化機能の低下による病気を予防し、その結果、畜産産物を効率的に生産するのに有効である。消化管での消化には、摂食物の消化管内の発酵が大きく影響する。そのため、発酵を制御する微生物製剤を家畜へ投与することがよく行われる。
ウシ等の反芻動物は、通常の動物で利用できないような繊維質をエネルギー源として利用するために、ルーメン(第一胃)という反芻胃を発達させている。ルーメン内は、摂取した飼料、唾液、発酵産物等によって恒常性が保たれ、微生物が棲息するのに適した環境となっている。
ルーメン発酵の経路を図1に示す。飼料には、セルロース、ヘミセルロース、デンプン等の炭水化物が大量に含まれる。炭水化物は、ルーメン内の微生物の酵素によって、酢酸、酪酸、プロピオン酸等の短鎖脂肪酸(VFAや揮発性脂肪酸ともいう)、乳酸、メタン、二酸化炭素、水素等に変換される。変換された短鎖脂肪酸の大部分は、ルーメン壁から吸収され、動物の主要なエネルギー源となる。この場合、特に酢酸、プロピオン酸の生成を促すことが好ましい。
ルーメン発酵経路の途中で生成する乳酸がプロピオン酸へ変換されないまま、ルーメン内に蓄積すると、反芻動物の生育に影響を及ぼす。非特許文献1によれば、ルーメンpHが5.8以下の状態を亜急性ルーメンアシドーシスという。亜急性ルーメンアシドーシスが続くと、家畜は、摂餌量の低下、下痢、ルーメン粘液の損傷、蹄葉炎、肝膿瘍等の疾病を発する。ルーメンアシドーシスは、ルーメン内でLactobacillus、Streptococcus bovis等の乳酸産生菌が増殖して、乳酸がルーメン内に蓄積し、ルーメン液のpH(以下、「ルーメンpH」という)が5以下となる状態をいう。ルーメンアシドーシスになると、家畜は、食欲喪失、乳量激減、横臥、起立不能等の臨床症状を示す。したがって、反芻動物のルーメン内の乳酸の蓄積を抑え、乳酸からプロピオン酸の変換を促進する手法が望まれる。一方、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換を促す手法も乳酸の蓄積量を抑制することから有効である。
動物の飼育においては、限られた穀物資源をより有効に利用することも重要な課題である。例えば、反芻動物では、飼料をルーメン内で発酵させて得られる短鎖脂肪酸が、乳腺で乳脂肪、乳糖及び乳タンパク質を合成するための原料となる。
乳成分の合成量は、乳腺に蓄えられるグルコース、アミノ酸、酢酸、酪酸、遊離脂肪酸、グリセリン、無機物類等の乳成分原料によって規定される。乳成分原料の生成量は、給与飼料中の炭水化物、タンパク質及び脂質の化学的特性(消化性や代謝・内分泌特性)とその配合比率によって大きく変動する。
非特許文献2によれば、乳牛に酢酸を給与することで、乳量の増加、乳脂肪濃度及び乳糖濃度が上昇し、プロピオン酸を給与することで、乳タンパク質濃度が上昇することが報告されている。
牛乳の乳脂率は、平均3.9%である。乳脂肪の主成分は、97〜98%を占めるトリグリセリド(TG)である。TGを構成するC4〜C16脂肪酸は、ルーメン内で生産された酢酸及び酪酸を用いて乳腺で合成される。C16〜C18脂肪酸は、飼料由来の脂肪や体脂肪から乳脂肪に取り込まれる。よって、乳脂率は、飼養管理によっても変動する。
非特許文献3(p91〜92)によれば、低脂肪乳の現象としては、濃厚飼料の給比率の上昇や粗飼料の給比率の減少によってルーメン内の発酵パターンが変化して、酢酸や酪酸の供給量が不足すること、同様の原因によりプロピオン酸の生産量やグルコース供給量が増加し、内分泌制御に起因する乳腺への脂肪供給不足が生じること、不飽和度の高い植物性脂肪の過給によりルーメン内の微生物叢が影響を受けること、乳腺におけるトランス型多価不飽和脂肪酸による乳脂肪酸合成が阻害されることなどが指摘されている。したがって、低乳脂肪の発生を防止するには、ルーメン内発酵を適切に維持し、ルーメン内でのVFA(特に酢酸及び酪酸)の生成を促進することが重要である。そして、ルーメン内を酢酸が優勢となる発酵状態に維持し、乳腺への酢酸供給量を増加させるためには、飼料の粗飼料配合量の適正化に加えて、繊維の消化性を改善することが重要である。よって、乳の生産量及び乳成分量を高めるために、飼料を特定の短鎖脂肪酸へ効率的に変換できることが望ましい。
反芻動物は、夏場の暑熱ストレスにより、飼料の摂取量が低下し、生体内のエネルギーが不足して乳量や乳成分量が低下することが知られている。泌乳初期には、摂食エネルギーよりも乳として排出されるエネルギーの方が多くなる。体内のエネルギーバランスがマイナスとなることと、代謝障害や繁殖障害の発生が多くなることが知られている(非特許文献3 p57−64)。
高泌乳牛やその他の家畜のエネルギー源として、特に暑熱時のエネルギー補給用に、脂肪酸カルシウムを配合した飼料を給与する方法が知られている。(非特許文献3 p91−92)。脂肪酸カルシウムは、ルーメン内では消化されず、第四胃以降で消化吸収されるため、エネルギーを効率良く補給できるとされる。
これらの従来方法は、不足しがちとなった生体内のエネルギーの補完を目的とするものであり、家畜の消化管内での発酵を促進するものではなかった。
三森真琴、「亜急性ルーメンアシドーシスにおけるルーメン微生物の動態」、日獣会誌、65、(2012)、p503−510 Brit.J.Nutr.,15、(1961)、p361−369 日本飼養標準「乳牛 2006年版」(中央畜産会、平成19年9月20日発行、p57−64、p91−92
そこで、本発明の課題は、動物の消化管内の発酵を促進することにより、消化を改善し、病気を予防し、飼料の利用効率を高め、そして少量の飼料で畜産産物を効率的に生産する技術を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を鋭意検討した結果、特定のリン脂質を特定量含む飼料原料を動物に給与することにより、前記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、菜種由来のリン脂質を2〜80質量%含む飼料原料を提供する。
上記飼料原料は、例えば消化管での短鎖脂肪酸産生を向上させるために使用される。
本発明は、また、上記飼料原料を、リン脂質の質量基準で0.1〜5質量%含む飼料を提供する。
上記飼料は、10質量%以上の粗飼料を含むことが好ましい。本明細書において、粗飼料という用語は、粗繊維含量が高く、可消化養分が少ない成分を意味する。
上記飼料は、特に反芻動物用である。
本発明は、また、上記飼料原料を、リン脂質の質量基準で8〜400g/日、動物に給与することを含む、動物の飼育方法を提供する。
本発明は、また、菜種由来のリン脂質を2〜80質量%含む、消化管での短鎖脂肪酸産生向上剤を提供する。
本発明は、また、上記短鎖脂肪酸産生向上剤を動物に給与することを含む、動物の消化管での短鎖脂肪酸の産生を向上させる方法を提供する。
本発明の菜種由来のリン脂質を含む飼料原料を飼料に添加すると、それを給餌された動物は、消化管の発酵が促進される。消化管の発酵促進は、飼料中に含まれる繊維質(セルロースやヘミセルロース)のような発酵し難い炭水化物を微生物が代謝しやすくする。
飼料が粗飼料(その主要成分は繊維質である)を例えば10質量%以上含む場合、本発明の飼料原料が、消化管での繊維質の発酵を顕著に促進し、繊維質から短鎖脂肪酸(VFA)への変換と導く。具体的には、VFAの総産生量(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸の全てを合わせたもの)が増大する。VFAの中でも、動物の主要なエネルギー源となり得る有益な酢酸、プロピオン酸及び酪酸の産生が特に促進される。
本発明の飼料原料は、VFAを定量的にも定性的にも優位に産生する結果として、飼料の利用効率を改善し、すなわち少量の飼料で畜産産物を効率的に生産することを可能とする。乳牛の場合には、乳量の増加、乳脂肪濃度、乳糖濃度及び乳タンパク濃度の上昇も可能である。肉牛の場合には、体重の増加と肉質の改善が可能である。
反芻動物のルーメン発酵経路の途中で生成する乳酸がルーメン内に蓄積すると、ルーメン液のpHが下がり、ルーメンアシドーシスになる。その結果、反芻動物は、食欲喪失、乳量激減、横臥、起立不能等の病気を招来しやすい。本発明の飼料原料をリン脂質の質量基準で8〜400g/日、動物に給与することを含む本発明の動物の飼育方法によれば、上記乳酸はプロピオン酸に変換されやすくなる。また、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換が促進することで乳酸の産生が抑制され酢酸産生量が増加する。したがって、反芻動物のルーメンアシドーシスやそれによる食欲喪失、乳量激減、横臥、起立不能等の病気を予防することができる。
ルーメン内でのVFAの増産、及びルーメンアシドーシスとそれに基づく病気の予防という効果は、飼料原料の形態のほかに、菜種由来のリン脂質を含む、消化管での短鎖脂肪酸産生向上剤という形態で動物に単独投与することによっても得られる。
反芻動物のルーメン発酵の経路図を示す。
本発明の飼料原料は、菜種由来のリン脂質(以下、「菜種リン脂質」という)を2〜80質量%含むことを必須とする。好ましくは2〜75質量%、より好ましくは3〜75質量%である。本明細書において、「リン脂質」とは、分子構造中にリン酸エステルを持った脂質を意味する。したがって、菜種リン脂質は、菜種から取得される分子構造中にリン酸エステルを持った脂質であり、その具体例は、ホスファチジルコリン(狭義のレシチン)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸及びホスファチジルグリセロール等である。
本発明の飼料原料は、少なくとも一種の上記リン脂質を含み、さらにトリグリセリド、糖脂質、オリゴ糖のような不純物を含み得る混合物からなる菜種レシチン(広義のレシチン)の形態であってもよい。
菜種レシチンは、製造方法又はリン脂質の純度に応じて、クルードレシチン(粗製レシチンともいう)、脱油レシチン(粉末レシチンともいう)、分別レシチン(精製レシチンともいう)、及び酵素処理レシチンに分別される。
クルード菜種レシチンは、菜種油の製造工程中の脱ガム工程で分離されるガム質を、通常、水分1%以下に乾燥することにより得られる。そのようなクルード菜種レシチンの組成は、通常、リン脂質30〜60質量%である。
脱油菜種レシチンは、クルード菜種レシチンを溶剤分別にかけて、脂質及びその他の微量成分を除去することにより得られる高純度レシチンである。この脱油菜種レシチンのアセトン可溶物含有量は、通常、10質量%以下でよく、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。そのような脱油菜種レシチンの組成は、リン脂質を、通常、40〜80質量%、好ましくは50〜75質量%含む。
分別菜種レシチンは、クルード菜種レシチン又は脱油菜種レシチンを、溶剤分別及びその他の分別技術により、個々のリン脂質濃度を一定以上まで高めたものである。
本発明の飼料原料に使用する菜種リン脂質は、好ましくは脱油菜種レシチンである。したがって、本発明の飼料原料に含まれる菜種由来のリン脂質は、全リン脂質中のホスファチジルコリン含量が、15〜60質量%、好ましくは25〜50質量%である。
飼料への菜種リン脂質を2〜80質量%含む飼料原料の配合量は、リン脂質の質量基準で、通常0.1〜5質量%でよく、好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
本発明の飼料原料には、菜種由来のリン脂質以外に、本発明の作用効果を阻害しない限り、保存安定性や酸化安定性向上を目的としたエトキシキン、BHT、BHA、TBHQ、トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート等の助剤を添加可能である。
本発明は、また、上記飼料原料を含む飼料を提供する。菜種由来のリン脂質以外の飼料原料として、生草、サイレージ、乾草、わら類;米、玄米、ライ麦、小麦、大麦、トウモロコシ、マイロ、大豆等の穀類;大豆粕、脱皮大豆粕、大豆蛋白濃縮物、分離大豆蛋白、大豆蛋白分離副産物、菜種粕、綿実粕、ルピナス種粕、コーングルテンミール、コーングルテンフィード、アルファルファ粉、ポテトプロテイン、ヒヨコマメ、エンドウマメ、インゲンマメ、レンズマメ、ブラックビーン等の植物性蛋白源;肉骨粉、血粉、フェザーミール、ポークミール、チキンミール、脱脂粉乳等の動物性蛋白源;植物性油脂、動物性油脂、粉末精製牛脂、肝油等の油脂類;バイオエタノール蒸留粕(DDGS)、ビール粕、焼酎粕、酒粕、ワイン粕、ウイスキー粕、醤油粕等の発酵残渣類;おから、茶抽出粕、野菜・果物抽出粕、コーヒー粕等の食品工業副産物類;リジン、メチオニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン等のアミノ酸類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸、ビタミンC、ビオチン、コリン等のビタミン類又はビタミン用作用物質;亜鉛、カルシウム、セレン、鉄、リン等のミネラル類;硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化コリン等の無機塩類;色素等を挙げられる。
乳牛、肉牛の飼料分野では、上記飼料原料が、可消化養分や粗繊維の含量によって、粗飼料と濃厚飼料とに大別される。粗飼料は、粗繊維含量が高く、可消化養分が少ない成分である。具体的には、生草、サイレージ、乾草、わら類等が含まれる。
濃厚飼料は、可消化養分が多く、粗繊維含量が低い成分である。具体的には、穀類、そうこう類、植物性油かす類、発酵副産物類等が含まれる。
反芻動物のルーメン内発酵を安定的に維持する基本的な栄養管理指標として、従来、粗飼料と濃厚飼料の比率(粗濃比)が採用されている。反芻動物へ与える飼料の粗濃比は、粗飼料給与比率で通常、10〜90質量%である。
VFA、特に酢酸は、一般的に、粗飼料を発酵した際に生産されるが、発酵性が悪いと言われている。本発明の飼料原料は、後述の実施例1及び2に示すように、粗飼料の発酵を促進することでVFAの産生を促している。したがって、本発明の飼料原料を給与することは、乳牛の場合には乳量の増加、乳成分量の増加が期待でき、肉牛の場合には増体、肉質の改善効果が期待できる。
本発明の飼料原料を含む飼料において、粗飼料の下限の割合は、通常、10質量%であり、好ましくは15質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。一方、粗飼料の上限の割合は、通常、90質量%であり、好ましくは80質量%であり、さらに好ましくは60質量%である。
本発明の飼料には、飼料の品質の低下防止、栄養成分の有効利用の促進等のために、栄養源以外の助剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で使用してもよい。そのような例には、抗酸化剤、防カビ剤、粘結剤、乳化剤、pH調整剤、抗菌剤、呈味料、着香料、酵素、生菌剤、有機酸等が挙げられる
本発明の飼料原料の適用対象は、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の反芻動物、ブタ、ウマ、ウサギ、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ガチョウ、アイガモ、キジ、魚類等の家畜動物や犬、猫等の愛玩動物である。好ましくは、ウシ、ヤギ、ヒツジ等の反芻動物であり、より好ましくはウシである。
菜種由来のリン脂質は、上記したとおり、消化管での短鎖脂肪酸産生を向上させる。本発明は、菜種由来のリン脂質を、飼料原料用途以外に、消化管での短鎖脂肪酸産生向上剤としての用途もまた提供する。本発明は、また、上記短鎖脂肪酸産生向上剤を動物に給与することを含む、動物の消化管での短鎖脂肪酸の産生を向上させる方法もまた、提供する。
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜2、比較例1〜2〕菜種由来リン脂質のin vitro試験(1)
in vitroのウシルーメン液を用いた発酵試験において、菜種リン脂質が添加されたときの、短鎖脂肪酸の生成に及ぼす影響を調べた。比較のため、菜種由来の脂質(菜種油)が添加されたときの発酵試験も行なった。
(1)飼料Aの作製
粗飼料としてイタリアンライグラス(乾草)と濃厚飼料として市販濃厚飼料(製品名:そよ風の薫り、日本配合飼料株式会社製)とを質量基準で1:1にて混合することにより飼料Aを得た。以下、粗飼料と濃厚飼料との比率(質量基準)を、粗濃比ということがある。市販濃厚飼料の表示を表1に示す。
(2)菜種リン脂質の準備
菜種油製造時の脱ガム工程で副生したガム質を、減圧乾燥することにより、クルード菜種レシチンを得た。このクルード菜種レシチンは、アセトン可溶物35〜40%を含む粘稠なペースト状であった。このクルード菜種レシチンを5倍量のアセトンに溶解し、静置分離にて下層を回収し、再び5倍量のアセトンに溶解した。この操作を5回繰り返した。得られた下層部を減圧乾燥することにより、アセトン可溶物が1.0質量%になるまで脱油された菜種レシチンを得た。リン脂質含量は60.2質量%だった。また、この菜種レシチンは、1.0質量%の水分を有し、粉末状であった。脱油菜種レシチンの組成を、表2に示す。
(3)ルーメン液採取
ルーメンフィステルを装着したF1ウシ(月齢40ヶ月)をルーメン液発酵試験に用いた。このウシを、コンクリート敷の牛房へ個体ごとに収容した。ウシに飼料Aを、1日当たり8kg(濃厚飼料4kg/日)、3週間、給与した。なお、試験3週間前及び試験中は、ウシに抗菌剤、その他薬剤を投与しなかった。
(4)発酵試験
飼料Aの3週間給与の翌朝(給餌前)に、ウシからルーメン液を約500mL採取した。採取したルーメン液500mLを4重ガーゼで濾過した。この濾液とMcDougall’s Bufferとを5:4の割合で混合することにより、ルーメン濾液を希釈した。得られたルーメン希釈液9mLを15mL容バイアル瓶に分注した。
McDougall’s Bufferに、1質量%のウシ血清アルブミン(BSA)及び上記菜種レシチン1質量%又は3質量%を加えた液を、超音波発生器にかけて、BSA乳化液を作製した。上記BSA乳化液1mLを、前記バイアル瓶に分注して、前記ルーメン希釈液9mLと混合することにより発酵試験液を得た。発酵試験液中の菜種レシチンの含有量は、0.1質量%又は0.3質量%となった(実施例1及び2)。
比較のため、上記McDougall’s Bufferに、1質量%のBSAのみを添加して作製した乳化液1mLを前記バイアル瓶に分注して、前記ルーメン希釈液9mLと混合して発酵試験液を得た(比較例1)。
さらに、上記McDougall’s Bufferに、1質量%のBSA及び3質量%の菜種油(製品名:さらさらキャノーラ油、株式会社J−オイルミルズ製)を添加して作製した乳化液1mLを前記バイアル瓶に分注して、前記ルーメン希釈液9mLと混合して発酵試験液を得た(比較例2)。発酵試験液中の菜種油の含有量は、0.3質量%となった。
上記発酵試験液を用いた発酵試験の発酵基質として、繊維質からなる炭水化物としてセルロース(濾紙)を採用した。具体的には、上記ルーメン希釈液及び上記BSA乳化液の入ったバイアル瓶内に、100mgの濾紙(製品名:ワットマンNo.1、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)を、投入した。その後、バイアル瓶中の気相を窒素ガスで置換し、ブチルゴム栓とアルミシールで密栓した。得られた混合液を、37℃で24時間、振とう培養した。1実験区につき、発酵実験を2反復で行った。
上記培養後の発酵試験液のVFA(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸)の濃度を以下の手順で測定した。ルーメン液0.5mLに対しヘキサン0.5mLを添加した。これを懸濁させた後、遠心分離(4℃、10,000rpm,5min)により、水層とヘキサン層に分けた。水層をVFA分析用サンプルとして回収した。回収したサンプルを、以下の条件のガスクロマトグラフィー(GC)にかけた。
〔GC条件〕
Injection temp.:250℃
Column:Nukol(Supelco Inc.),30m×0.25mm×0.25μm
Initial temp.:100℃
Program rate:15℃/min
Final temp.:185℃
Detector:FID(250℃)
Carrier flow rate:1.0mL/min
Carrier gas:He
上記培養後の発酵試験液の乳酸濃度は、F−キット乳酸(J.K.インターナショナル)を用いて測定した。測定結果を表3に示す。
表3に示したとおり、発酵基質をセルロースとするin vitro発酵試験において、発酵試験液への添加剤として菜種油を用いた比較例2の総VFA量は、無添加の発酵試験液(比較例1)と比べて悪化した。比較例1及び2の結果は、ルーメン発酵に脂質の添加が好ましくないことを示している。
一方、ルーメン発酵液に菜種由来のリン脂質を添加した実施例1及び2ともに、総VFA量が比較例1よりも有意に増大した。増大したVFAは、反芻動物の主要なエネルギー源となる有益なVFA(酢酸、プロピオン酸及び酪酸)であった。さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、VFAの増大は、添加量の高い実施例2の方が顕著であった。これらのことから、菜種リン脂質は、ルーメン液内で繊維質の発酵と有益なVFAの産生を濃度依存的に促進することが判明した。
〔実施例3、比較例3〕菜種由来リン脂質のin vitro試験(2)
発酵基質を繊維質からデンプンに変更した発酵試験を実施した。具体的には、実施例1、並びに比較例1及び2において、発酵基質として100mgのコーンスターチを用いた以外は、前記実施例等と同様の方法で、発酵試験を実施した。結果を表4に示す。
ルーメン液に菜種レシチン(菜種リン脂質)を添加した実施例3の総VFAは、比較例3(無添加のルーメン液)より若干増大した。デンプンは、繊維質に比べてルーメン発酵を受けやすい。したがって、ルーメン発酵におけるVFA産生量の増大は、繊維質のように顕著にならない。それでも、ルーメン内の発酵基質をデンプンとする発酵に、菜種レシチン(菜種リン脂質)が悪影響を及ぼさないことが確認された。
〔実施例4及び5、比較例4及び5〕in vivo試験
菜種レシチンを含む飼料を動物へ給餌したときの短鎖脂肪酸の産生に及ぼす影響を調べるため、in vivoでのウシルーメン液を用いる発酵試験を実施した。比較のため、菜種油が添加されたときの発酵試験も行なった。
ルーメンフィステルを装着したF1ウシ(メス)2頭(月齢33ヶ月)を投与試験に用いた。このウシを、コンクリート敷の牛房へ個体ごとに収容した。試験3週間前及び試験中は、抗菌剤、その他薬剤をウシへ投与しなかった。
(飼料Bの作製)
上記飼料Aに、実施例1に記載の菜種レシチンを、リン脂質質量基準で0.271質量%添加することにより、飼料Bを得た。
(飼料Cの作製)
上記粗飼料と上記濃厚飼料とを粗濃比1:4にて混合することにより、飼料Cを得た。
(飼料Dの作製)
上記飼料Cに、実施例1に記載の菜種レシチンを、リン脂質質量基準で0.433質量%添加することにより、飼料Dを得た。
飼料A〜Dを、1回当たり2kgの濃厚飼料を含む飼料量にて、1日2回、3日間給与した。これにより、飼料B又はDを与えたウシの菜種レシチン摂取量は、36g/日(リン脂質投与量21.7g/日)となった。
給与試験後の翌朝の給餌前に、ルーメンフィステルからルーメン液を約50mL採取した。このルーメン液を4重ガーゼでろ過し、5N−塩酸を用いてpH2に調整することで反応を停止させ、以下の分析まで冷蔵保管した。この液のVFA(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、及びイソ吉草酸)の濃度を、ガスクロマトグラフィーにて測定した。結果を表5に示す。
表5から以下のことがわかる。菜種レシチンを含む飼料を投与した実施例4では、総VFA量が菜種レシチンを含まない飼料を投与した比較例4よりも顕著に増大した。飼料の粗濃比を変えた実施例5でも、同様に、総VFA量が菜種レシチン無添加の比較例5よりも顕著に増大した。いずれの実施例でも、エネルギー源として有用な酢酸、プロピオン酸及び酪酸が増大した。
粗濃比が1:1(粗飼料50%)の実施例4と粗濃比が1:4(粗飼料20%)の実施5とを比べると、粗飼料の比率の高い実施例4の方が、VFA量の増大が大きかった。本発明の菜種由来リン脂質は、粗飼料を有効に発酵させることでVFA(特に酢酸)の産生を促している。したがって、菜種由来のリン脂質を含む本発明の飼料原料は、繊維質の発酵促進と有益なVFAの産生の点で、粗飼料比率の高い飼料に用いることが好ましいといえる。

Claims (9)

  1. 菜種由来のリン脂質を30〜60.2質量%含む飼料原料をリン脂質の質量基準で0.271〜0.433質量%、そして粗飼料を20質量%以上かつ60質量%以下含む反芻動物用飼料。
  2. 反芻動物の消化管での短鎖脂肪酸産生を向上させることを特徴とする、請求項1に記載の反芻動物用飼料。
  3. 前記短鎖脂肪酸産生の向上は、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸及び吉草酸の総量の増大である、請求項2に記載の反芻動物用飼料。
  4. 前記飼料原料が、アセトン可溶物含量が4質量%以下の脱油菜種レシチンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の反芻動物用飼料。
  5. 菜種由来のリン脂質を30〜60.2質量%含む飼料原料をリン脂質の質量基準で0.271〜0.433質量%、そして粗飼料を20質量%以上かつ60質量%以下含む反芻動物用飼料を、リン脂質の質量基準で8〜400g/日、反芻動物に給与することを含む、反芻動物の飼育方法。
  6. 反芻動物の消化管での短鎖脂肪酸の産生を向上させることを特徴とする、請求項5に記載の反芻動物の飼育方法。
  7. 前記短鎖脂肪酸産生の向上は、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸及び吉草酸の総量の増大である、請求項6に記載の反芻動物の飼育方法。
  8. 前記飼料原料が、アセトン可溶物含量が4質量%以下の脱油菜種レシチンを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の反芻動物の飼育方法。
  9. 菜種由来のリン脂質を30〜60.2質量%含む飼料原料をリン脂質の質量基準で0.271〜0.433質量%、そして粗飼料を20質量%以上かつ60質量%以下配合することを含む、反芻動物用飼料の製造方法。
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