JP6620630B2 - セメント組成物の水和熱測定方法 - Google Patents

セメント組成物の水和熱測定方法 Download PDF

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本発明は、セメント組成物の水和熱測定方法に関する。より詳しくは、業界の標準測定方法である溶解熱法による水和熱を短時間で簡便に測定する方法に関する。
セメント組成物は、セメント組成物に含まれる成分と水とが反応して水和物を生成する際に発熱する。一般的には、水和物の生成量が多くなるにつれて、モルタル又はコンクリートの強度は上昇するが、それと同時にセメント組成物と水との反応に伴う水和熱も増大する。言い換えれば、モルタル及びコンクリートの強度発現性が向上すると、セメント組成物の水和熱が増加するのが一般的な傾向である。しかし、コンクリートの耐久性の観点からは、セメント組成物の水和熱は小さい方が好ましく、マスコンクリートでは、セメント組成物の水和熱がその内部に蓄積されて内部温度が上昇し、その温度上昇あるいは冷却過程で、コンクリートの外側部分とコンクリート内部との間に温度差が生じ、部分的なひずみが生じて、温度ひび割れが生じるため、耐久性に優れたコンクリートを志向するセメントユーザーからは、コンクリートの強度発現性を損なわずに、水和熱を低減することが可能なセメント組成物が求められている。
そのため、水和熱は重要なファクターであり、セメント組成物の製造管理においては、水和熱を早く確認したいという要望がある。通常、セメント組成物の水和熱の測定は、材齢7日あるいは28日において行われ、その期間の養生を要する。そのため、セメント組成物の製造直後に水和熱の測定を開始しても、測定結果が判明するのは前記の日数が経過した後になるので、セメント組成物の製造管理上は適した方法ではない。
セメント組成物の水和熱の測定方法としては、溶解熱を測定する方法や、混練したモルタルを簡易断熱状態にて発熱量を測定する方法がある。中でも、モルタルとその原料の酸への溶解熱の差からモルタルの水和熱を求める方法(溶解熱法)としてISO29582-1あるいはJIS R 5203の溶解熱法が一般的で、この試験の値がセメント組成物水和熱の評価の基準になっている。ところが、溶解熱法は、試験に多大な労力と時間を要し、また測定には熟練した技術が必要であるため長期間の経験が必要である。
一方、これを解決するため、ISO29582-2のようにセメント組成物の温度上昇を簡易断熱状態で短時間(例えば、41時間)で発熱量を測定し水和熱を算出するISO29582-2の方法(簡易断熱法)や伝導熱量計(コンダクションカロリーメーター)を使用して測定する方法(伝導熱量計法) がある。
また、コンクリートの発熱特性の評価の一つとして、少量のサンプルを用いて簡易的にコンクリートの断熱温度上昇を測定する方法も提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
本発明は、このような労力と時間、熟練した技術を要す水和熱の測定を、簡便に早く正確に測定できる方法を提案する。
特開2008−241520号公報
丸屋英二ほか、「少量サンプル用断熱熱量計によるセメントの品質管理手法の開発」、セメント・コンクリート論文集、No.61、p.86−92(2007)
セメント組成物の水和熱の測定はJIS R 5203の溶解熱法が一般的で、セメント業界の標準的な測定方法になっている。
しかしながら、溶解熱法は、試験に多大な労力と時間を要し、7日、あるいは28日の養生を必要とし、測定時間が長いため、セメント工場の製品管理としては問題がある。また、熟練した技術も必要である。簡易断熱法や伝導熱量計法では測定時間を短くすることができるが、精度が落ち、基準となる溶解熱法と異なる測定結果となる場合がある。
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討した結果、断熱条件で温度上昇量を測定する完全断熱型断熱熱量計を用いて短時間の断熱温度上昇量を測定して算出した水和熱と、JIS R 5203の溶解熱法で測定される材齢7日および28日の水和熱に相関関係があり、溶解熱法では7日あるいは28日が必要な測定を短時間で測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、完全断熱型断熱熱量計を用いて完全断熱状態でのセメント組成物の断熱温度上昇量を測定し、これにより溶解熱法による材齢7日、28日でのセメント組成物の水和熱を短時間で測定することを可能にする水和熱測定方法に関する。
すなわち、少なくともセメント組成物及び水を含む試料(セメントペースト)あるいは少なくともセメント組成物、細骨材及び水を含む試料(モルタル)を調製後、所定量の試料を試料容器に入れて断熱容器内に設置し、試料の温度と断熱容器周囲環境の温度の差を小さくするように断熱容器周囲環境の温度を制御しながら試料の温度を測定し、測定された試料の温度上昇量から発熱量を求め、さらに前記発熱量から換算式を用いて溶解熱法による水和熱を算出することを特徴とするセメント組成物の水和熱測定方法である。
本発明は、溶解熱法で測定される長期間(材齢7日、28日)の水和熱を、短時間で精度よく推定する方法を提供する。本発明により得られるセメント組成物の水和熱データは、標準的な評価方法である溶解熱法により得られるセメント組成物の水和熱データと精度よく一致する。本発明によれば、セメント組成物の製品管理において、製造から時間を置かずに水和熱のデータが判明するので、工場出荷前の管理が容易になる。したがって、産業上、有用な発明である。
伝導熱量計法とJIS R 5203(溶解熱法)の水和熱測定値との関係 ISO29582-1 (溶解熱法)とISO29582-2 (簡易断熱法)の水和熱測定値との関係 完全断熱型断熱熱量計からの水和熱算出値とJIS R 5203 (溶解熱法)の水和熱測定値との関係(材齢7日) 完全断熱型断熱熱量計からの水和熱算出値とJIS R 5203 (溶解熱法)の水和熱測定値との関係(材齢28日)
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明の方法を、他の方法と区別するため、完全断熱型断熱熱量計法ということがある。
(断熱熱量計)
本発明で使用する断熱熱量計は、試料容器、これを収納する断熱容器及びこれらを収容する断熱容器周囲環境からなり、さらに、試料及び断熱容器周囲環境の温度をそれぞれ計測する熱電対、並びに、計測された試料及び断熱容器周囲環境の温度差に追従して断熱容器周囲環境の温度を制御するヒーターおよび冷却装置からなる温調機構を備える、完全断熱型断熱熱量計である。さらに、コンピュータープログラム等により、試料の温度上昇量の測定、発熱量の計算及び水和熱の算出を行う自動化機構を備えることが好ましい。
試料容器は、測定試料を投入する容器である。
試料容器は、所定量のセメントペースト、モルタルあるいはコンクリート試料を収容する容器である。容器の材質は、測定中に熱や試料との反応による変質や変形を起こさないものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、四フッ化パーフルオロアルキルビニルエーテル等のプラスチックやその他の高分子材料、金属、例えばアルミニウム、セラミックス等の容器を使用することができる。
試料容器の容量は、10〜100mlが好ましい。試料容器の容量が10mL未満である場合、僅かな熱量で温度が変化するため、断熱制御が難しくなる。また、材料の計量誤差や水分の蒸発により、測定誤差が大きくなるため好ましくない。試料容器の容量が100mLを超える場合、使用する材料や試験後の廃棄物量が増加して準備や処理に手間がかかること、手練りでの試料調製が困難になり試験に手間がかかること、の理由から好ましくない。これに対し、容量が100mL以下であれば、試験に係る負荷が小さく作業が容易となる。
試料容器の容量は、20mL〜60mLの範囲にあるのがより好ましい。この範囲であれば、実用上十分な断熱性能、安定した測定結果が得られ、かつ、試験の簡便性が達成できる。
試料容器は、断熱容器の内部に収納される。断熱容器は、試料容器を収容する容器であり、デュワー瓶(真空瓶)のような真空断熱容器、あるいは金属やセラミック容器に断熱材を装填したものなどを利用することができる。
断熱容器周囲環境は、断熱性の高い材料から構成される。断熱性の高い材料としては、気体、液体及び固体ないしはこれらの組み合わせが使用できる。特に、発泡プラスチック又は繊維の塊からなる断熱材が好ましく、中でも、試料容器の大きさに応じて試料容器が内包されるように成形加工した発泡プラスチック系断熱材が好ましい。
発泡プラスチック系断熱材としては、ポリスチレンフォームやウレタンフォーム(ポリウレタン)、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど市販の材料を使用できる。これらは熱伝導率が小さく、かつ、成形が容易であることから、断熱容器の中心に試料容器が入るよう加工することで、任意の大きさの試料容器を使用することができる。
本発明においては、熱電対を用いて試料及び断熱容器周囲環境の温度を測定する。試料容器には、試料温度を計測する熱電対を設ける。試料の温度を測定する熱電対は、熱電対を容器の内部又は表面、好ましくは、容器の内部に配置する。断熱容器周囲環境の温度は、断熱材を使用する際には、断熱材の温度を測定する。断熱容器周囲環境の温度を測定する熱電対は、熱電対を断熱容器周囲環境、特に、断熱材の内部又は断熱容器の外側表面に配置する。
熱電対は、JIS C 1602−1995「熱電対」に定められる8種類のうち、高温用であるB以外を使用することができる。特に、起電力の高さと精度の面から、E熱電対あるいはT熱電対のクラス1を用いることが望ましい。
断熱容器周囲環境温度は、ヒーターおよび冷却装置で制御する。試料及び断熱容器周囲環境に配置された熱電対は、温度制御回路に接続されて、両者の温度差が極小になるように、断熱容器周囲環境温度を差動制御する。この場合、温度制御回路は、制御感度5×10−3Kを満足することが好ましい。
具体的な方法としては、試料の温度を測定する熱電対及び断熱容器の温度を測定する熱電対から得られた温度情報を基に、高感度直流増幅器とツェナーダイオードを備えた温度制御回路で、両者の温度差が極小になるようにヒーターおよび冷却装置を差動制御する。この場合、温度制御回路は、制御感度5×10−3Kを満足することが好ましい。
本発明の断熱熱量計においては、断熱容器周囲環境に、ヒーターおよび冷却装置からなる温調機構を備える。温調機構は、試料容器と断熱容器周囲環境の温度差を検知し、その変化に追従してヒーターおよび冷却装置を作動させて断熱容器周囲環境温度を制御し、試料容器と断熱容器の温度差を小さくする。試料容器と断熱容器周囲環境の温度差は、できるだけ小さくすることが好ましく、実質的にゼロになるように温調機構で自動制御することが好ましい。これにより試料容器からの放熱量を見掛け上ゼロにすることができる。
温度制御には、ヒーター及び冷却装置を使用する。
冷却装置は、冷却水パイプと冷凍機で構成され、サーマルリレー回路を備える。特に、断熱容器周囲環境にパイプを配し、該パイプ内の冷却水温度を制御することが、温度制御の面で好ましい。
冷凍機には、2種類以上のサーマルリレーを設置し、試料に応じて使い分けることが、冷凍機に負荷をかけず、かつ、幅広い温度域での測定が可能になるため、好ましい。冷凍機にサーマルリレー回路が設置されない場合、冷凍機が常時稼動することになり、高温で長時間の運転を繰り返した場合に冷凍機に多大な負荷がかかり、故障の原因となる。また、仮に40℃で冷凍機を停止するサーマルリレーを1つ設置した場合、40℃から50℃で温度上昇が収束する試料を測定した際に、試料に追従した槽内温度の制御が困難となるため、好ましくない。
また、試料量を適正化し、かつ、幅広い測定温度域に対応したサーマルリレーを複数個設置することで、様々な試料の断熱温度上昇特性を簡便かつ精度良く評価することができるようになる。
本発明のセメント組成物の水和熱測定方法は、完全断熱型断熱熱量計を用いて以下のように実施される。
まず、少なくともセメント組成物及び水を含む試料(セメントペースト)あるいは少なくともセメント組成物、細骨材及び水を含む試料(モルタル)を調製後、直ちに一部を試料として採取して計量し、完全断熱型断熱熱量計内の断熱容器内に設置する。
測定対象となるセメント組成物は特に限定されるものではなく、JIS R 5210(ポルトランドセメント)、JIS R 5211(高炉セメント)、JIS R 5212(シリカセメント)、JIS R 5213(フライアッシュセメント)およびEN197-1:2011記載のCEMI〜V(ポルトランドセメントおよび各種混合セメント)に記載のセメント組成物等が挙げられる。
次に、断熱容器を密閉し、試料の温度測定を開始する。試料及び断熱容器周囲環境の温度を常時、測定し、その温度変化に追従して温調機構により断熱容器周囲環境温度を制御し、試料容器と断熱容器の温度差を極小にする。これにより試料容器からの放熱量を見掛け上ゼロにすることができる。同時に、測定開始時からの試料の温度上昇量(ΔT)を測定する。測定時間は、6〜48時間、好ましくは9〜36時間、より好ましくは12〜24時間の短時間から選ばれる。
次に、得られた温度上昇量データから、見掛けの水和熱を下記の計算式により求める。
[セメント組成物の水和熱計算式]
セメント組成物の水和熱(J/g)
=[セメント組成物量(g)×セメント組成物の比熱(J/℃・g)+細骨材量(g)×細骨材の比熱(J/℃・g)
+水量(g)×水の比熱(J/℃・g)+測定容器の熱容量(J/℃)]×温度上昇量(℃)/セメント組成物量(g)
ただし、セメントペーストの場合は、細骨材量は0(g)である。
最後に、前記の短時間測定による水和熱から換算式を用いて、長時間でのセメント組成物の水和熱(溶解熱法)として算出する。本発明者らは、この方法により短時間に測定した熱量値から長時間での水和熱を換算式を用いて小さな誤差で求めることが出来ることを見出した。換算式は一次式が好ましい。該一次式の係数A、C及び定数B、Dは、それぞれの完全断熱型断熱熱量計について、予備試験によりデータを採取して図3又は図4のようにプロットし、プロットの回帰直線から求める。
材齢7日のセメント組成物の水和熱は、一次式である式1で算出できる。
(式1) 水和熱(J/g:材齢7日) = A×断熱温度上昇量(J/g:測定結果)+B
ここで、装置における係数及び定数は、A=0.5〜1.5、B=50〜250の範囲である。係数Aは、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2であり、定数Bは、好ましくは60〜200、より好ましくは70〜180、更に好ましくは80〜150である。
材齢28日のセメント組成物の水和熱は、一次式である式2で算出できる。
(式2) 水和熱(J/g:材齢28日)= C×温度上昇量測定結果(J/g)+D
ここで、装置における係数及び定数は、C=0.5〜1.5、D=100〜300である。係数Cは、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2であり、定数Dは、好ましくは120〜250、より好ましくは150〜200である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[セメントペーストの調製]
セメントペーストは、セメント組成物と水を水セメント比(W/C)が25〜35%(25〜35/100)となるように手練りで調製する。調製は、20℃に設定した実験室内で行い、混練時間は1分とする。
[モルタルの調製]
モルタルはセメント組成物と水と細骨材を水セメント比(W/C)が55%(55/100)となるように手練りで調製した。モルタルの練上がり量を50mLとして所定量の水およびセメント組成物を2分間練り混ぜた後、細骨材(海砂/佐賀県唐津産60%+砕砂/福岡県門司産40%)を加えて3分間練り混ぜた。調製は、20℃に設定した実験室内で行った。

水和熱の測定は、溶解熱法(JIS R 5203、ISO29582-1)を基準とし、伝導熱量計を使用した方法、簡易断熱法(ISO29582-2) 及び本発明の方法を比較対象として実施した。
参考例
[溶解熱法]
溶解熱法の材齢7日、28日の水和熱の試験方法は、JIS R 5203あるいはISO29582-1に記載の方法に準拠した。
未水和セメント組成物を計量後、断熱材で囲まれた真空瓶に入った弗化アンモニウムを含む硝酸水溶液(以下、酸液)に投入し、撹拌しながら酸液の温度を測定し、酸液の温度上昇から未水和セメント組成物の溶解熱を求めた。次に、材齢7日又は28日の水和セメント組成物について、同様の操作により水和セメント組成物の溶解熱を求めた。未水和セメント組成物と水和セメント組成物の酸液への溶解熱の差から、水和セメント組成物の水和熱を求めた。
比較例1〜3(試験No.1〜6)
[伝導熱量計法]
伝導熱量計CHC−OM6(東京理工製)を用いてセメント組成物の水和熱を測定した。
調製直後の試料(セメントペースト)を計量後、伝導熱量計内部の設けられた、熱電対を備えた試料容器に密封し、断熱材で囲まれた真空瓶に入れて密栓した。試料温度及び雰囲気温度の測定を継続して行い、温度上昇量から熱量計の熱量積算と雰囲気への熱損失の合量を、測定時間24時間、41時間及び7日間について求めた。
表3に伝導熱量計での水和熱測定値(測定時間:24時間、41時間及び7日間)とJIS R 5203(溶解熱法;材齢7日)での水和熱測定値の比較を示す。また、図1に伝導熱量計での水和熱測定値とJIS R 5203(溶解熱法)での水和熱測定値の関係を示す。
表中の「近似式からの水和熱(2)」は、各時間における伝導熱量計での水和熱測定値とJIS R 5203 (溶解熱法)での水和熱測定値の関係から求めた近似式に、水和熱測定値を代入して、溶解熱法の値を計算したものである。また、「近似式との差(1)−(2)」は、「JIS R 5203溶解熱法材齢7日(1)」から「近似式からの水和熱(2)」を引いたものである。表の下のσは、「(1)と(2)の差」の標準偏差を計算したものである。
例えば、表中のNo.4は、近似式y=1.4969x+65.969に伝導熱量計の値(x=122)を代入し、計算すると、近似式からの溶解熱法の計算値は248.6J/gとなる(図中の白抜きの丸○で示した)。
y = 1.4969×122 + 65.969 ゆえ、
y = 248.6(J/g)
溶解熱法(材齢7日(1))−近似式からの水和熱(2) = 298−248.6 = 49.4(J/g)
伝導熱量計で測定した水和熱とJIS R 5203(溶解熱法)の水和熱との相関係数は、測定時間41時間後でR2=0.7771であった。また、近似式から求まる水和熱と伝導熱量計で測定した水和熱との差を計算し、そのばらつきの大きさを示す標準偏差σを求めるとσは測定時間24時間後でσ=35.16、41時間後でσ=35.96と大きく、精度は良くなかった。測定時間7日後のσはσ=16.42と24時間後、41時間後に比べ精度は上昇するが、JIS R 5203やISO29582-1と同様の時間がかかるのでは意味がない。
比較例4(試験No.7〜33)
[簡易断熱法]
表4および図2にフランスのセメント協会の試験機関であるATILHで実施されている国際的な共同試験(日本のセメント協会が実施している共同試験(OC)に相当)の2012〜15年に実施された結果に記載されているISO29582-1(溶解熱法)での水和熱測定値とISO29582-2 (簡易断熱法)での水和熱の測定値との関係を示す。測定時間は41時間後であるが、相関係数がR2=0.1926と悪く、ばらつきの大きさを示す標準偏差σも21.49〜44.77と大きい。
以上のことから、JIS R 5203あるいはISO29582-1(溶解熱法)の水和熱を短時間で正確に、精度良く推定しようとすることは困難である。
実施例1〜5(試験No.34〜45)
[完全断熱型断熱熱量計法]
完全断熱型断熱熱量計(株式会社東京理工製、商品名:ACM−120HA)を用い、以下の手順に基づいて、完全断熱状態で断熱温度上昇量を測定した。完全断熱型断熱熱量計は、試料容器、これを収納可能な断熱容器及びこれらを収容する恒温槽からなり、さらに、試料容器及び断熱容器周囲環境の温度を計測する熱電対、並びに、計測された温度変化に追従して断熱容器周囲環境の温度を制御するヒーターおよび冷却装置からなる温調機構を備える。
まず、調製直後の試料(モルタル)30mLを計量後、試料容器に入れ、穿孔した蓋に試料温度測定用のT熱電対(クラス1)を挿入した。熱電対の挿入部周囲には、水の蒸発を防止するためシリコーングリースを塗布して密封した。尚、セメントペーストおよびモルタルの選定、配合やW/Cの決定は、予め試料を混練し、塑性やハンドリング性、適正な温度上昇量が得られる条件を事前に把握し、本実施例では表1に示すモルタル配合とした。
続いて、試料の温度(断熱温度上昇量)を経時的に計測した。この間、試料と断熱容器周囲環境の温度差を検知し、ヒーターおよび冷凍機に接続した冷却水パイプで構成される冷却装置からなり2種類以上のサーマルリレー回路を備える温調機構を使用して試料と断熱容器周囲環境の温度差の変化に追従して断熱容器周囲環境の温度を制御し、試料と断熱容器周囲環境の温度差を小さくした。
[セメント組成物の水和熱換算式]
本発明の完全断熱型断熱熱量計を使用した水和熱の算出は、以下の一次式による。
セメント組成物の水和熱(J/g)=[セメント組成物量(g)×セメント組成物の比熱(J/℃・g)+細骨材量(g)×細骨材の比熱(J/℃・g)+水量(g)×水の比熱(J/℃・g)+測定容器の熱容量(J/℃)]×断熱温度上昇量(℃)/セメント組成物量(g)
ここで、本発明で使用した測定容器の熱容量は、38.87J/℃である。
例えば、試験No.34であれば、
セメント組成物の水和熱(J/g)= [ 14.65 × 0.75 + 32.32 × 0.81 + 8.06 × 4.18 + 38.87] × 21.86092 / 14.65=164 (J/g)
となる。
表5に完全断熱型断熱熱量計を用いて断熱温度上昇量を測定して、算出した水和熱の結果を示す。また、図2に完全断熱型断熱熱量計を用いて算出した水和熱とJIS R5203(溶解熱法)で測定した水和熱との関係を示す。完全断熱型断熱熱量計で算出した水和熱とJIS R5203(溶解熱法) で測定した水和熱との相関係数は測定時間24時間後でR2=0.9793と最も相関が高い。また、近似式から求めた水和熱と完全断熱型断熱熱量計で算出した水和熱との差を計算し、そのばらつきの大きさσを求めると、測定時間24時間後でσ=8.89と他の方法と比べて遙かに小さく、完全断熱型断熱熱量計で水和熱が正確に測定することができることが明らかである。
以上のことから、完全断熱型断熱熱量計を使用し、下式(式1)を用いて水和熱を算出すれば、溶解熱法で測定される材齢7日の水和熱に相当する水和熱を短時間で精度良く、正確に求めることができた。
水和熱J/g(溶解熱法:材齢7日)=0.88×水和熱J/g(完全断熱型断熱熱量計)+94.469・・・(式1)
また、同様に材齢28日の溶解熱法の水和熱も測定時間24時間後の完全断熱型断熱熱量計で算出した水和熱から、以下の式(式2)により、JIS R5203(溶解熱法)の水和熱に相当する水和熱を精度良く求めることができた。
水和熱J/g(溶解熱法:材齢28日)=0.7906×水和熱J/g(完全断熱型断熱熱量計)+170.61・・・(式2)

Claims (7)

  1. 少なくともセメント組成物及び水を含む試料を調製後、所定量の試料を試料容器に入れて断熱容器内に設置し、試料の温度と断熱容器周囲環境の温度の差を小さくするように断熱容器周囲環境の温度を制御しながら試料の温度を測定し、測定された試料の温度上昇量から発熱量を求め、さらに前記発熱量から換算式を用いて溶解熱法による水和熱を算出することを特徴とするセメント組成物の水和熱測定方法。
  2. 断熱容器周囲環境の温度の制御を、ヒーターおよび冷却装置からなる温調機構を用いて行う、請求項1記載の水和熱測定方法。
  3. JIS R5203の水和熱に相当する水和熱を測定する、請求項1又は2記載の水和熱測定方法。
  4. 前記試料の温度の測定時間が、試料の断熱容器内への設置後12〜24時間である、請求項1〜3の何れか1項記載の水和熱測定方法。
  5. 前記換算式が、一次式である請求項1〜4の何れか1項記載の水和熱測定方法。
  6. 下記の式1を換算式として用いて、溶解熱法による材齢7日の水和熱を求める、請求項1〜5の何れか1項記載の水和熱測定方法。
    (式1) 水和熱(J/g:材齢7日)=A×温度上昇量(J/g)+B
    〔但し、係数A=0.5〜1.5、定数B=50〜250である。〕
  7. 下記の式2を換算式として用いて、溶解熱法による材齢28日の水和熱を求める、請求項1〜5の何れか1項記載の水和熱測定方法。
    (式2) 水和熱(J/g:材齢28日)= C×温度上昇量(J/g)+D
    〔但し、係数C=0.5〜1.5、定数D=100〜300である。〕
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