以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のバタフライ弁を備える原子力発電プラント30を示す概略図である。原子力発電プラント30では、原子炉31で発生した蒸気が、主蒸気止め弁34と高圧蒸気タービン32の速度および負荷を直接制御する蒸気加減弁35とを通って高圧蒸気タービン32に流入し、高圧蒸気タービン32に流入した蒸気は、高圧蒸気タービン32に回転エネルギを与える。続いて、高圧蒸気タービン32の排気が湿分分離加熱器36に流入し、湿分分離加熱器36は排気中の湿分を除去して再熱する。湿分分離加熱器36で発生した蒸気は、組合せバタフライ弁1を構成する中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3を通って低圧蒸気タービン33に流入し、低圧蒸気タービン33に流入した蒸気は、低圧蒸気タービン33に回転エネルギを与える。その後、低圧蒸気タービン33の排気は、復水器37および復水ポンプ38を通って原子炉31に還流する。このように、原子力発電プラント30内を流れる蒸気の流路は、閉ループを構成している。高圧蒸気タービン32および低圧蒸気タービン33で発生した回転エネルギは発電機39によって電気エネルギに変換され、電気エネルギは送電系統に送られる。また、中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3には、第1の実施の形態のバタフライ弁が用いられる。
なお、ここでは、1台の高圧蒸気タービン32と3台の低圧蒸気タービン33とで構成される蒸気タービンを備える原子力発電プラント30を例示したが、第1の実施の形態においては、このような構成に限定されない。原子力発電プラント30における蒸気タービンは、高圧蒸気タービンと中圧蒸気タービンと低圧蒸気タービンとで構成されるものや、高圧蒸気タービンと複数台の低圧蒸気タービンとで構成されるものなど、発電プラントや蒸気タービンの系統、出力、用途などにより種々の組合せが適用される。
図2は、第1の実施の形態のバタフライ弁を備える組合せバタフライ弁1の一部を示す分解斜視図である。図2においては、説明の便宜上、部分的に断面を示している。図3は、第1の実施の形態のバタフライ弁を備える組合せバタフライ弁1の一部断面を示す概略図であり、鉛直方向に沿った縦断面図である。組合せバタフライ弁1は、図2および図3に示すように、バタフライ弁である中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3を備える。図1および図3に示すように、湿分分離加熱器36で発生した蒸気は、図2および図3に示す白抜き矢印に沿って、蒸気流路5内を左側から右側に流れる。中間蒸気止め弁2は、弁箱4内の上流側に設けられ、インターセプト弁3は、弁箱4内の下流側に設けられる。弁箱4は、円筒状であり、上流側の蒸気配管と接続するための入口フランジ10、および下流側の蒸気配管と接続するための出口フランジ11を備える。弁箱4の内部には、図3に示すように、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気を遮断する中間蒸気止め弁2の弁体6、および弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気の流量を制御するインターセプト弁3の弁体7が設けられている。これらの弁体6、7は、蒸気流路5と交差するように配置された中間蒸気止め弁2の弁棒8およびインターセプト弁3の弁棒9にそれぞれ取付けられている。そして、弁体6は弁棒8と一体に回動する。また、弁体7は弁棒9と一体に回動する。
なお、中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁2について説明する。
また、以下では、図2および図3に示すように、弁棒8および弁棒9が水平に配置される構成を示すが、弁棒8および弁棒9は鉛直に配置されてもよい。
図2に示すように、弁棒8の両端は、弁箱4の貫通穴4cを介して弁箱4の外部にそれぞれ突出している。弁箱4には、弁棒8を介して、軸受箱12、13、軸受14、15、スラストカラー16、軸受カバー17、18などが設けられる。軸受箱12、13は、例えばボルトなどによって弁箱4の外側に取付けられる。軸受14、15は、弁棒8を回動可能に支持する。また、軸受14、15は、中間蒸気止め弁2の弁棒8の中心軸の方向(以下、弁棒軸方向ともいう)の外側から軸受14、15に接し、軸受14、15の位置を固定する軸受カバー17、18によって、軸受箱12、13内に固定されている。軸受箱12、13の内面には、内径側に周方向に亘って突出し、弁箱4側の軸受14、15に接する突出部(図示しない)が形成されている。この突出部に軸受14、15が接することで、弁箱4に対する軸受14、15の弁棒軸方向の位置が定められる。また、スラストカラー16は、弁棒軸方向の外側から軸受14に接触するように取付けられる。そして、軸受14は、スラストカラー16によって弁棒軸方向の位置決めがなされている。
図3に示すように、組合せバタフライ弁1は、弁棒8を回転駆動させる駆動装置19を備える。駆動装置19は、鉛直方向に延設されたロッド20を具備し、弁箱4の下部に取付けられている。駆動装置19は、ロッド20を鉛直方向に直線運動させ、リンク21(詳細は図示せず)を介してロッド20の直線運動を回転運動に変換させ、弁棒8を回転させて、弁体6を開閉させる。
ここで、図2では、中間蒸気止め弁2の弁体6およびインターセプト弁3の弁体7を全閉した状態、すなわち蒸気を流さない状態が示されている。また、図3では、中間蒸気止め弁2の弁体6およびインターセプト弁3の弁体7を全開した状態、すなわち蒸気を流す状態が示されている。なお、図3は、弁棒軸方向に垂直、かつ、中間蒸気止め弁2の弁体6の中心を横切る断面を示し、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面のうち、断面積の最も大きい断面である。ここで、弁体を全閉した状態とは、図3において、弁体6の頂点Pおよび頂点Qを結んだ対角線が鉛直方向、すなわち、弁体4の最上線4aに垂直な方向である状態をいう。また、弁体を全開した状態とは、図3において、弁体6の頂点Pおよび頂点Qを結んだ対角線が水平方向、すなわち、最上線4aに平行な方向である状態をいう。
図3に示すように、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面は、菱形状である。ここで、菱形状とは、菱形および正方形を含み、菱形および正方形の辺が後述する凸形状や凹形状であるものであってもよいし、菱形および正方形の角が曲率を有するものであってもよい。なお、図3は、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面のうち、断面積の最も大きい断面である。そして、図3に示す断面以外の、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面は、基本的には図3に示す断面の形状に対して相似の形状を有し、その形状は、弁体6の中心から弁棒軸方向に沿って離れるにつれて小さくなる。また、弁体6は、弁棒8の中心軸を中心に回転する。弁棒8の中心軸は、弁箱4内の蒸気流路5に垂直であり、蒸気流路5の高さが半分になる高さを通る。
また、図3に示すように、弁体6が全開の状態において、弁体6は、弁棒8の中心軸より上流側、かつ、弁体6の一方側に位置する第1面6aと、弁棒8の中心軸より上流側、かつ、弁体6の他方側に位置する第2面6bと、弁棒8の中心軸より下流側、かつ、弁体6の一方側に位置する第3面6cと、弁棒8の中心軸より下流側、かつ、弁体6の他方側に位置する第4面6dとを有する。そして、弁体6の第1面6aのみが、基準面に対して、全体的に弁体6の外側に向かって膨らんだ凸型の曲面を有する形状(以下、凸型形状ともいう)である。また、弁体6の第2面6b、第3面6c、および第4面6dは、平坦面である。
図3に示すように、弁体6が全開の状態において、第1面6aは、弁棒8の中心軸より上流側かつ上半側の弁体6の表面を構成し、第2面6bは、弁棒8の中心軸より上流側かつ下半側の弁体6の表面を構成し、第3面6cは、弁棒8の中心軸より下流側かつ上半側の弁体6の表面を構成し、第4面6dは、弁棒8の中心軸より下流側かつ下半側の弁体6の表面を構成する。第1面6aと第4面6d、および第2面6bと第3面6cは、それぞれ対向する。また、第1面6aと第3面6c、第3面6cと第4面6d、第4面6dと第2面6b、および第2面6bと第1面6aは、それぞれ隣接する。
ここで、基準面とは、従来のバタフライ弁の弁体が全開の状態において、弁体の第1面、第2面、第3面、および第4面が基本的に同一形状であり、これらの面を基準面という。なお、第1面、第2面、第3面、および第4面の形状は、平坦面、凸型形状、凹型形状などがある。例えば、弁棒軸方向に垂直な弁体の断面が菱形または正方形である場合には、基準面は平坦面である。また、弁棒軸方向に垂直な弁体の断面が、例えば平坦面ではなく凸形状または凹形状の曲線であるような菱形状である場合には、基準面は曲面である。なお、図3では、基準面は、平坦面であり、第2面6b、第3面6c、および第4面6dが同一形状であり、第1面6aのみが凸型形状である。
また、図3に示すように、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面6a側を流れる蒸気の流路断面積S6aは、第2面6b側を流れる蒸気の流路断面積S6bより小さい。ここで、流路断面積S6aとは、弁体6が全開の状態において、弁体6の第1面6aと弁箱4の最上線4aとの間であって上流側の頂点Pと下流側の弁棒8の中心軸との間の蒸気流路5の領域における、弁棒軸方向に垂直な方向の流路断面積である。また、流路断面積S6bとは、弁体6が全開の状態において、弁体6の第2面6bと弁箱4の最下線4bとの間であって上流側の頂点Pと下流側の弁棒8の中心軸との間の蒸気流路5の領域における、弁棒軸方向に垂直な方向の流路断面積である。なお、図3では、流路断面積S6a、S6bの一例として、頂点Pと弁棒8の中心軸との間であって、弁棒軸方向に平行なある軸の位置における、弁体6の第1面6a側または第2面6b側の流路断面積を示している。流路断面積S6a、S6bは、それぞれ、弁体6が全開の状態であって、弁棒軸方向に平行な同じ軸の位置において、第1面6aと弁箱4の最上線4aとの間の距離、第2面6bと弁箱4の最下線4bとの間の距離に依存する。
また、図3に示すように、第3面6c側を流れる蒸気の流路断面積S6cは、第4面6d側を流れる蒸気の流路断面積S6dと同じである。上記と同様に、流路断面積S6cとは、弁体6が全開の状態において、弁体6の第3面6cと弁箱4の最上線4aとの間であって上流側の弁棒8の中心軸と下流側の頂点Qとの間の蒸気流路5の領域における、弁棒軸方向に垂直な方向の流路断面積である。また、流路断面積S6dとは、弁体6が全開の状態において、弁体6の第4面6dと弁箱4の最下線4bとの間であって上流側の弁棒8の中心軸と下流側の頂点Qとの間の蒸気流路5の領域における、弁棒軸方向に垂直な方向の流路断面積である。流路断面積S6c、S6dは、それぞれ、弁体6が全開の状態であって、弁棒軸方向に平行な同じ軸の位置において、第3面6cと弁箱4の最上線4aとの間の距離、第4面6dと弁箱4の最下線4bとの間の距離に依存する。
弁体6は、図3に示すように、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって、時計回りに回転する方向の力を受ける。弁体6が弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって時計回りに回転する方向の力を受ける理由について、以下に説明する。
一般にベルヌーイの定理は、非粘性の流体に適用されるが、蒸気流路5を流れる蒸気のような圧縮性流体を定性的に説明することにも適用できる。そこで、ここでは、ベルヌーイの定理に基づいて説明する。
ベルヌーイの定理では、蒸気の静圧をP、蒸気の密度をρ、蒸気の流速をVとしたとき、弁体6の表面上の任意の位置において、下記式(1)の関係が成立する。ここで、流速Vは、弁棒軸方向に平行なある軸の位置での平均流速とする。
P+ρV2/2=一定 …(1)
また、第1面6a側であり、弁棒軸方向に平行なある軸の位置での蒸気の静圧をPu、弁体6の上半側を流れる蒸気の流速をVu、第2面6b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧をPb、弁体6の下半側を流れる蒸気の流速をVbとしたとき、下記式(2)の関係が成り立つ。なお、弁体6の上半側を流れる蒸気の単位時間当たりの流量、および弁体6の下半側を流れる蒸気の単位時間当たりの流量は、互いに等しいものとする。ここで、弁体6の上半側とは、図3に示すように弁体6が全開の状態において、第1面6aおよび第3面6cの側であり、弁体6の下半側とは、第2面6bおよび第4面6dの側である。
Pu+ρVu2/2=Pb+ρVb2/2 …(2)
例えば、第1面6a側であり、弁棒軸方向に平行なある軸の位置での蒸気の静圧をP6a、弁体6の第1面6a側を流れる蒸気の流速をV6a、第2面6b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧をP6b、弁体6の第2面6b側を流れる蒸気の流速をV6bとしたとき、下記式(3)の関係が成り立つ。また、第3面6c側であり、弁棒軸方向に平行なある軸の位置での蒸気の静圧をP6c、弁体6の第3面6c側を流れる蒸気の流速をV6c、第4面6d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧をP6d、弁体6の第4面6d側を流れる蒸気の流速をV6dとしたとき、下記式(4)の関係が成り立つ。
P6a+ρV6a2/2=P6b+ρV6b2/2 …(3)
P6c+ρV6c2/2=P6d+ρV6d2/2 …(4)
上記のように、第1面6a側を流れる蒸気の流路断面積S6aは、第2面6b側を流れる蒸気の流路断面積S6bより小さいことから、V6a>V6bである。そして、この速度の関係式と式(3)とから、P6a<P6bとなる。また、第3面6c側を流れる蒸気の流路断面積S6cは、第4面6d側を流れる蒸気の流路断面積S6dと同じであることから、V6c=V6dである。そして、この速度の関係式と式(4)とから、P6c=P6dとなる。すなわち、第1面6a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P6aに比べて、第2面6b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P6bが大きく、第3面6c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P6cと、第4面6d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P6dとが同一である。そのため、図3に示すように、弁体6には時計回りの方向の回転、すなわち弁体6を閉鎖する方向のモーメントが付与される。
このように、図3に示す弁体6の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体6の上下表面で圧力差が生じ、弁体6は時計回りに回転する方向の力を受ける。さらに、弁体6の第2面6bのみが、基準面に対して、全体的に弁体6の内側に向かって窪んだ凹型の曲面を有する形状(以下、凹型形状ともいう)であっても、上記と同様に、弁体6は時計回りに回転する方向の力を受ける。第2面6bのみが凹型形状であるとき、S6a<S6bであり、S6c=S6dである。すなわち、P6a<P6b、P6c=P6dである。さらに、第4面6dのみが凸型形状である場合、および第3面6cのみが凹型形状である場合でも、上記と同様に、弁体6は時計回りに回転する方向の力を受ける。
ここで、図3は、弁棒軸方向に垂直、かつ、弁体6の中心を横切る断面であり、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面のうち、断面積の最も大きい断面である。そして、図3に示す断面以外の、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面は、基本的には図3に示す断面の形状に対して相似の形状を有し、大きさが異なるだけである。そのため、図3に示す断面以外の、弁棒軸方向に垂直な弁体6の断面についても、上記と同様に、ベルヌーイの定理に基づく関係は成立し、モーメントが弁体6に付与される。なお、弁体6は3次元形状であり、図3に示した断面は、弁棒軸方向に垂直、かつ、弁体6の中心を横切る断面である。そのため、図3に示した断面は、上記のモーメントを最大に付与される断面である。
なお参考として、図13に示すように、従来のバタフライ弁900における弁体906の断面は菱形、すなわち、弁体906の第1面、第2面、第3面、および第4面は、同一形状であり、平坦面である。そして、弁体906を全開にしたときの蒸気の流路断面積は、弁体906の上半側および下半側で同じである。そのため、蒸気の流速は、弁体906の上半側および下半側で同じである。すなわち、弁体906の上下表面での蒸気による圧力差は生じないことから、弁体906には回転力が付与されない。
ここで、蒸気タービンに異常が発生した場合には、蒸気タービンに流入する蒸気を早急に遮断する必要がある。そのため、図3に示す蒸気タービンに具備される非常トリップ機構(図示しない)が動作すると、駆動装置19に設けられる油圧シリンダ22内の制御油がドレン系統に通じ、制御油が駆動装置19のばね箱23に内蔵されたばね(図示しない)によって瞬時にドレンに排出し、弁体6を閉鎖する方向の回転力が弁体6に付与される。さらには、上記のように、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気により、弁体6の上半側と下半側とで圧力差が生じることによって、弁体6を閉鎖する方向の回転力が弁体6に付与される。つまり、ばね箱23内のばねに加えて蒸気流路5を流れる蒸気によっても、時計回りの方向の力が弁体6に付与されることで、弁体6は蒸気流路5を急閉鎖することができる。
なお、蒸気タービンを通常に停止させる場合、または蒸気タービンの通常運転中に弁体6の閉鎖テストを実施する場合には、駆動装置19に具備される電磁弁またはサーボ弁を動作させ(いずれも図示しない)、油圧シリンダ22内の制御油を一定速度で排出し、ばね箱23に内蔵されたばね(図示しない)によって、弁体6を所定の速度で閉鎖させる。
上記したように、第1の実施の形態のバタフライ弁によれば、駆動装置19のばね箱23に内蔵されたばねの力に加えて、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気により、弁体6を閉鎖する方向の回転力が弁体6に付与されることから、弁体6は従来よりも確実に閉鎖することができる。そのため、蒸気タービンの連続運転期間の長期化などにより、弁体の動作が緩慢または弁体がスティックした場合であっても、第1の実施の形態のバタフライ弁は、従来よりも、弁体を確実に閉鎖させ、蒸気タービンを安全かつ確実に停止させることができる。
また、弁体が全開でスティックしたまま負荷遮断やトリップが発生すると、低圧蒸気タービンの入口側の蒸気圧力が復水器の圧力に近づく。そして、バタフライ弁の前後差圧が大きくなるにつれて、蒸気の流速も増加する。蒸気の流速が増加するほど、弁体の上下半側で生じる圧力差が大きくなり、弁体に付与される回転モーメントも増加するため、弁体を閉鎖する力は増加し、バタフライ弁の信頼性は更に向上する。
また、第1の実施の形態のバタフライ弁は、中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3の両方に用いられる場合について説明したが、第1の実施の形態のバタフライ弁が、中間蒸気止め弁2およびインターセプト弁3のいずれか一方のみであってもよい。
また、弁棒8および弁棒9が共に水平に配置される構成を説明したが、弁棒8および弁棒9が共に鉛直に配置される構成でもよいし、弁棒8および弁棒9の一方が水平に配置され、弁棒8および弁棒9の他方が鉛直に配置される構成でもよい。弁棒8や弁棒9が鉛直に配置される場合、中間蒸気止め弁2やインターセプト弁3を構成する各構成部材の配置位置は適宜調整される。
また、第1の実施の形態のバタフライ弁が使用される原子力発電プラント30は、原子炉31で発生した蒸気を直接高圧蒸気タービン32に導入して発電する方式である沸騰水型原子炉の構成を説明したが、原子力発電プラント30は、原子炉31で発生した蒸気を直接高圧蒸気タービン32に導入せずに、蒸気発生器(図示しない)と呼ばれる、いわゆる熱交換器によって熱交換した蒸気を高圧蒸気タービン32に導入して発電する方式である加圧水型原子炉であってもよい。
また、第1の実施の形態のバタフライ弁が原子力発電プラントに使用される構成を説明したが、第1の実施の形態のバタフライ弁は、火力発電プラントや地熱発電プラントに使用されてもよい。
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態のバタフライ弁の弁体106を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第2の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第2の実施の形態のバタフライ弁において、弁体106の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第2の実施の形態のバタフライ弁について、弁体106の第1面106aおよび第4面106dが、凸型形状である。すなわち、第1面106aの形状と第1面106aに対向する第4面106dの形状とは同じである。また、弁体106の第2面106bおよび第3面106cは、平坦面である。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面106a側を流れる蒸気の流路断面積S106aは、第2面106b側を流れる蒸気の流路断面積S106bより小さい。また、第3面106c側を流れる蒸気の流路断面積S106cは、第4面106d側を流れる蒸気の流路断面積S106dより大きい。
第1面106a側を流れる蒸気の流路断面積S106aは、第2面106b側を流れる蒸気の流路断面積S106bより小さいことから、V106a>V106bであり、P106a<P106bとなる。また、第3面106c側を流れる蒸気の流路断面積S106cは、第4面106d側を流れる蒸気の流路断面積S106dより大きいことから、V106c<V106dであり、P106c>P106dとなる。すなわち、第1面106a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P106aに比べて、第2面106b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P106bが大きく、第3面106c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P106cに比べて、第4面106d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P106dが小さい。そのため、弁体106には時計回りの方向の回転、すなわち弁体106を閉鎖する方向のモーメントが付与される。
このように、図4に示す弁体106の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体106の上下表面で圧力差が生じ、弁体106は時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体106の上下表面で生じる圧力差は2倍であり、弁体106に付与される時計回りの方向の力は2倍である。さらに、弁体106の第2面106bおよび第3面106cが、凹型形状であっても、上記と同様に、弁体106は時計回りに回転する方向の力を受ける。第2面106bおよび第3面106cが凹型形状であるとき、S106a<S106bであり、S106c>S106dである。すなわち、P106a<P106b、P106c>P106dである。
図5は、第2の実施の形態のバタフライ弁の弁体の他の例を示す断面図である。第1面106aが凸型形状であり、第3面106cが凹型形状であり、第2面106bおよび第4面106dが平坦面である。すなわち、第1面106aの形状と第1面106aに隣接する第3面106cの形状とは異なる。上記と同様に、図5に示す弁体も時計回りに回転する方向の力を受ける。さらに、第1面106aが凸型形状であり第2面106bが凹型形状である場合、第4面106dが凸型形状であり第3面106cが凹型形状である場合、第4面106dが凸型形状であり第2面106bが凹型形状である場合でも、同様に、弁体は時計回りに回転する方向の力を受ける。
上記したように、第2の実施の形態のバタフライ弁によれば、駆動装置19のばね箱23に内蔵されたばねの力に加えて、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気により、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体106を閉鎖する方向の回転力が弁体106に2倍付与されることから、弁体106は第1の実施の形態のバタフライ弁よりも確実に閉鎖することができる。そのため、第2の実施の形態のバタフライ弁は、更に、蒸気タービンを安全かつ確実に停止させることができる。
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態のバタフライ弁の弁体206を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第3の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第3の実施の形態のバタフライ弁において、弁体206の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第3の実施の形態のバタフライ弁について、弁体206の第1面206aおよび第4面206dが、凸型形状であり、第3面206cが、凹型形状である。すなわち、第1面206aの形状と第1面206aに対向する第4面206dの形状とは同じであり、第1面206aの形状と第1面206aに隣接する第3面206cの形状とは異なる。また、弁体206の第2面206bは、平坦面である。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面206a側を流れる蒸気の流路断面積S206aは、第2面206b側を流れる蒸気の流路断面積S206bより小さい。また、第3面206c側を流れる蒸気の流路断面積S206cは、第4面206d側を流れる蒸気の流路断面積S206dより大きい。
第1面206a側を流れる蒸気の流路断面積S206aは、第2面206b側を流れる蒸気の流路断面積S206bより小さいことから、V206a>V206bであり、P206a<P206bとなる。また、第3面206c側を流れる蒸気の流路断面積S206cは、第4面206d側を流れる蒸気の流路断面積S206dより大きいことから、V206c<V206dであり、P206c>P206dとなる。すなわち、第1面206a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P206aに比べて、第2面206b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P206bが大きく、第3面206c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P206cに比べて、第4面206d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P206dが小さい。そのため、弁体206には時計回りの方向の回転、すなわち弁体206を閉鎖する方向のモーメントが付与される。
このように、図6に示す弁体206の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体206の上下表面で圧力差が生じ、弁体206は時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体206の上下表面で生じる圧力差は3倍であり、弁体206に付与される時計回りの方向の力は3倍である。
さらに、弁体206の第1面206aおよび第4面206dが、凸型形状であり、第2面206bが、凹型形状であっても、上記と同様に、弁体206は時計回りに回転する方向の力を受ける。第1面206aおよび第4面206dが凸型形状であり、第2面206bが凹型形状であるとき、S206a<S206bであり、S206c>S206dである。すなわち、P206a<P206b、P206c>P206dである。
上記したように、第3の実施の形態のバタフライ弁によれば、駆動装置19のばね箱23に内蔵されたばねの力に加えて、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気により、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体206を閉鎖する方向の回転力が弁体206に3倍付与されることから、弁体206は第2の実施の形態のバタフライ弁よりも確実に閉鎖することができる。そのため、第3の実施の形態のバタフライ弁は、更に、蒸気タービンを安全かつ確実に停止させることができる。
(第4の実施の形態)
図7は、第4の実施の形態のバタフライ弁の弁体306を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第4の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第4の実施の形態のバタフライ弁において、弁体306の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第4の実施の形態のバタフライ弁について、弁体306の第1面306aおよび第4面306dが、凸型形状であり、第2面306bおよび第3面306cが、凹型形状である。すなわち、第1面306aの形状と第1面306aに対向する第4面306dの形状とは同じであり、第2面306bの形状と第2面306bに対向する第3面306cの形状とは同じである。また、それぞれ隣接する第1面306aの形状と第3面306cの形状、第3面306cの形状と第4面306dの形状、第4面306dの形状と第2面306bの形状、および第2面306bの形状と第1面306aの形状は異なる。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面306a側を流れる蒸気の流路断面積S306aは、第2面306b側を流れる蒸気の流路断面積S306bより小さい。また、第3面306c側を流れる蒸気の流路断面積S306cは、第4面306d側を流れる蒸気の流路断面積S306dより大きい。
第1面306a側を流れる蒸気の流路断面積S306aは、第2面306b側を流れる蒸気の流路断面積S306bより小さいことから、V306a>V306bであり、P306a<P306bとなる。また、第3面306c側を流れる蒸気の流路断面積S306cは、第4面306d側を流れる蒸気の流路断面積S306dより大きいことから、V306c<V306dであり、P306c>P306dとなる。すなわち、第1面306a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P306aに比べて、第2面306b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P306bが大きく、第3面306c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P306cに比べて、第4面306d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P306dが小さい。そのため、弁体306には時計回りの方向の回転、すなわち弁体306を閉鎖する方向のモーメントが付与される。
このように、図7に示す弁体306の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体306の上下表面で圧力差が生じ、弁体306は時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体306の上下表面で生じる圧力差は4倍であり、弁体306に付与される時計回りの方向の力は4倍である。
上記したように、第4の実施の形態のバタフライ弁によれば、駆動装置19のばね箱23に内蔵されたばねの力に加えて、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気により、第1の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体306を閉鎖する方向の回転力が弁体306に4倍付与されることから、弁体306は第3の実施の形態のバタフライ弁よりも確実に閉鎖することができる。そのため、第4の実施の形態のバタフライ弁は、更に、蒸気タービンを安全かつ確実に停止させることができる。
(第5の実施の形態)
図8は、第5の実施の形態のバタフライ弁の弁体406を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第5の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第5の実施の形態のバタフライ弁において、弁体406の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第5の実施の形態のバタフライ弁について、弁体406の第2面406bのみが、凸型形状である。また、弁体406の第1面406a、第3面406c、および第4面406dは、平坦面である。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面406a側を流れる蒸気の流路断面積S406aは、第2面406b側を流れる蒸気の流路断面積S406bより大きい。また、第3面406c側を流れる蒸気の流路断面積S406cは、第4面406d側を流れる蒸気の流路断面積S406dと同じである。
第1面406a側を流れる蒸気の流路断面積S406aは、第2面406b側を流れる蒸気の流路断面積S406bより大きいことから、V406a<V406bであり、P406a>P406bとなる。また、第3面406c側を流れる蒸気の流路断面積S406cは、第4面406d側を流れる蒸気の流路断面積S406dと同じであることから、V406c=V406dであり、P406c=P406dとなる。すなわち、第1面406a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P406aに比べて、第2面406b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P406bが小さく、第3面406c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P406cと、第4面406d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P406dとが同一である。そのため、弁体406には反時計回りの方向の回転、すなわち弁体406を開ける方向のモーメントが付与される。
このように、図8に示す弁体406の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体406の上下表面で圧力差が生じ、弁体406は反時計回りに回転する方向の力を受ける。さらに、弁体406の第1面406aのみが、凹型形状であっても、上記と同様に、弁体406は反時計回りに回転する方向の力を受ける。第1面406aのみが凹型形状であるとき、S406a>S406bであり、S406c=S406dである。すなわち、P406a>P406b、P406c=P406dである。さらに、第3面406cのみが凸型形状である場合、および第4面406dのみが凹型形状である場合でも、上記と同様に、弁体406は反時計回りに回転する方向の力を受ける。
上記したように、第5の実施の形態のバタフライ弁によれば、蒸気タービンの通常運転中である弁体406の全開状態時に、弁箱4内を流れる蒸気によって、反時計回りに回転する方向、言い換えると弁体406を開ける方向の力を常に弁体406に付与することができる。そのため、弁体406の全開状態時に流れる大流量の蒸気流れに起因した弁体406の振動を大幅に抑制することができる。さらには、従来の蒸気流れに起因した弁体406の振動を抑制することができることから、全開ストッパを設けなくてもよい。そのため、全開ストッパに起因した圧力損失の増大は回避することができ、タービン効率は増加することができる。
(第6の実施の形態)
図9は、第6の実施の形態のバタフライ弁の弁体506を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第6の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第6の実施の形態のバタフライ弁において、弁体506の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第6の実施の形態のバタフライ弁について、弁体506の第2面506bおよび第3面506cが、凸型形状である。すなわち、第2面506bの形状と第2面506bに対向する第3面506cの形状とは同じである。また、弁体506の第1面506aおよび第4面506dは、平坦面である。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面506a側を流れる蒸気の流路断面積S506aは、第2面506b側を流れる蒸気の流路断面積S506bより大きい。また、第3面506c側を流れる蒸気の流路断面積S506cは、第4面506d側を流れる蒸気の流路断面積S506dより小さい。
第1面506a側を流れる蒸気の流路断面積S506aは、第2面506b側を流れる蒸気の流路断面積S506bより大きいことから、V506a<V506bであり、P506a>P506bとなる。また、第3面506c側を流れる蒸気の流路断面積S506cは、第4面506d側を流れる蒸気の流路断面積S506dより小さいことから、V506c>V506dであり、P506c<P506dとなる。すなわち、第1面506a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P506aに比べて、第2面506b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P506bが小さく、第3面506c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P506cに比べて、第4面506d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P506dが大きい。そのため、弁体506には反時計回りの方向の回転、すなわち弁体506を開ける方向のモーメントが付与される。
このように、図9に示す弁体506の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体506の上下表面で圧力差が生じ、弁体506は反時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体506の上下表面で生じる圧力差は2倍であり、弁体506に付与される反時計回りの方向の力は2倍である。さらに、弁体506の第1面506aおよび第4面506dが、凹型形状であっても、上記と同様に、弁体506は反時計回りに回転する方向の力を受ける。第1面506aおよび第4面506dが凹型形状であるとき、S506a>S506bであり、S506c<S506dである。すなわち、P506a>P506b、P506c<P506dである。
図10は、第6の実施の形態のバタフライ弁の弁体の他の例を示す断面図である。第1面506aが凹型形状であり、第3面506cが凸型形状であり、第2面506bおよび第4面506dが平坦面である。すなわち、第1面506aの形状と第1面506aに隣接する第3面506cの形状とは異なる。上記と同様に、図10に示す弁体も反時計回りに回転する方向の力を受ける。さらに、第3面506cが凸型形状であり第4面506dが凹型形状である場合、第1面506aが凹型形状であり第2面506bが凸型形状である場合、第2面506bが凸型形状であり第4面506dが凹型形状である場合でも、同様に、弁体は反時計回りに回転する方向の力を受ける。
上記したように、第6の実施の形態のバタフライ弁によれば、蒸気タービンの通常運転中である弁体506の全開状態時に、弁箱4内を流れる蒸気によって、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体506を開ける方向の力を常に弁体506に2倍付与することができる。そのため、弁体506の全開状態時に流れる大流量の蒸気流れに起因した弁体506の振動を大幅に抑制することができる。
(第7の実施の形態)
図11は、第7の実施の形態のバタフライ弁の弁体606を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第7の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第7の実施の形態のバタフライ弁において、弁体606の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第7の実施の形態のバタフライ弁について、弁体606の第1面606aが、凹型形状であり、第2面606bおよび第3面606cが、凸型形状である。すなわち、第2面606bの形状と第2面606bに対向する第3面606cの形状とは同じであり、第2面606bの形状と第2面606bに隣接する第1面606aの形状とは異なる。また、弁体606の第4面606dは、平坦面である。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面606a側を流れる蒸気の流路断面積S606aは、第2面606b側を流れる蒸気の流路断面積S606bより大きい。また、第3面606c側を流れる蒸気の流路断面積S606cは、第4面606d側を流れる蒸気の流路断面積S606dより小さい。
第1面606a側を流れる蒸気の流路断面積S606aは、第2面606b側を流れる蒸気の流路断面積S606bより大きいことから、V606a<V606bであり、P606a>P606bとなる。また、第3面606c側を流れる蒸気の流路断面積S606cは、第4面606d側を流れる蒸気の流路断面積S606dより小さいことから、V606c>V606dであり、P606c<P606dとなる。すなわち、第1面606a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P606aに比べて、第2面606b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P606bが小さく、第3面606c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P606cに比べて、第4面606d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P606dが大きい。そのため、弁体606には反時計回りの方向の回転、すなわち弁体606を開ける方向のモーメントが付与される。
このように、図11に示す弁体606の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体606の上下表面で圧力差が生じ、弁体606は反時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体606の上下表面で生じる圧力差は3倍であり、弁体606に付与される反時計回りの方向の力は3倍である。
さらに、弁体606の第2面606bおよび第3面606cが、凸型形状であり、第4面606dが、凹型形状であっても、上記と同様に、弁体606は反時計回りに回転する方向の力を受ける。第2面606bおよび第3面606cが凸型形状であり、第4面606dが凹型形状であるとき、S606a>S606bであり、S606c<S606dである。すなわち、P606a>P606b、P606c<P606dである。
上記したように、第7の実施の形態のバタフライ弁によれば、蒸気タービンの通常運転中である弁体606の全開状態時に、弁箱4内を流れる蒸気によって、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体606を開ける方向の力を常に弁体606に3倍付与することができる。そのため、弁体606の全開状態時に流れる大流量の蒸気流れに起因した弁体606の振動を大幅に抑制することができる。
(第8の実施の形態)
図12は、第8の実施の形態のバタフライ弁の弁体706を示す断面図である。なお、以下に示す実施の形態において、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。なお、第8の実施の形態のバタフライ弁について、第1の実施の形態のバタフライ弁と同様に、中間蒸気止め弁およびインターセプト弁は、基本的には同じ形状およびサイズである。以下では、特に明記しない限り、中間蒸気止め弁について説明する。
第8の実施の形態のバタフライ弁において、弁体706の構成が異なる以外は、第1の実施の形態のバタフライ弁の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
第8の実施の形態のバタフライ弁について、弁体706の第1面706aおよび第4面706dが、凹型形状であり、第2面706bおよび第3面706cが、凸型形状である。すなわち、第1面706aの形状と第1面706aに対向する第4面706dの形状とは同じであり、第2面706bの形状と第2面706bに対向する第3面706cの形状とは同じである。また、それぞれ隣接する第1面706aの形状と第3面706cの形状、第3面706cの形状と第4面706dの形状、第4面706dの形状と第2面706bの形状、および第2面706bの形状と第1面706aの形状は異なる。このとき、蒸気が流れる蒸気流路5の断面について、第1面706a側を流れる蒸気の流路断面積S706aは、第2面706b側を流れる蒸気の流路断面積S706bより大きい。また、第3面706c側を流れる蒸気の流路断面積S706cは、第4面706d側を流れる蒸気の流路断面積S706dより小さい。
第1面706a側を流れる蒸気の流路断面積S706aは、第2面706b側を流れる蒸気の流路断面積S706bより大きいことから、V706a<V706bであり、P706a>P706bとなる。また、第3面706c側を流れる蒸気の流路断面積S706cは、第4面706d側を流れる蒸気の流路断面積S706dより小さいことから、V706c>V706dであり、P706c<P706dとなる。すなわち、第1面706a側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P706aに比べて、第2面706b側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P706bが小さく、第3面706c側であり、弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P706cに比べて、第4面706d側であり、当該弁棒軸方向に平行な軸の位置での蒸気の静圧P706dが大きい。そのため、弁体706には反時計回りの方向の回転、すなわち弁体706を開ける方向のモーメントが付与される。
このように、図12に示す弁体706の断面が上下非対称の菱形状であるため、弁箱4内の蒸気流路5を流れる蒸気によって弁体706の上下表面で圧力差が生じ、弁体706は反時計回りに回転する方向の力を受ける。ここで、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体706の上下表面で生じる圧力差は4倍であり、弁体706に付与される反時計回りの方向の力は4倍である。
上記したように、第8の実施の形態のバタフライ弁によれば、蒸気タービンの通常運転中である弁体706の全開状態時に、弁箱4内を流れる蒸気によって、第5の実施の形態のバタフライ弁に比べて、弁体706を開ける方向の力を常に弁体706に4倍付与することができる。そのため、弁体706の全開状態時に流れる大流量の蒸気流れに起因した弁体706の振動を大幅に抑制することができる。
以上説明した実施の形態によれば、弁箱内を流れる蒸気によって時計回りまたは反時計回りの方向に回転する力を弁体に付与することができるバタフライ弁を提供することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。