JP6608944B2 - 特徴が改変されたα溶血素変異体 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2014年10月31日に提出された発明の名称が「アルファ溶血素変異体」である米国仮特許出願第62/073,936号に対して優先権を主張する。
配列表
本明細書にはSEQ ID NO:1〜8を含む配列表が添付されている。配列表に示す各配列は、参照によりその全体が全ての目的で本明細書に組み込まれる。2015年10月26日に作成された前記ASCIIコピーは、「20-04338.P519WO1_SL.txt」と名付けられ、サイズは20,325バイトである。
技術分野
黄色ブドウ球菌(Staphylococcal aureus)アルファ溶血素変異体に関連する成分および方法を開示する。アルファ溶血素(α-HL)変異体は、例えば、ポリマー配列情報を決定するための装置に含まれるナノ細孔として有用である。本明細書に記載のナノ細孔、方法、およびシステムは、改良された特徴を備えた、ナノ細孔に基づく単一分子技術を使用したDNA、RNA等の一本鎖核酸の定量的検出を提供する。
背景
溶血素は、多様な生物により生成されるタンパク質毒素ファミリーの一員である。いくつかの溶血素、例えばアルファ溶血素は、膜に細孔またはチャネルを形成することにより細胞膜(例えば、宿主細胞膜)の完全性を破壊し得る。細孔形成タンパク質により膜内に形成された細孔またはチャネルは、特定のポリマー(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を膜の片側からその反対側へ輸送するために使用可能である。
アルファ溶血素(α-HL、a-HL、または、アルファ-HL)は、宿主細胞の細胞膜内に水性チャネルを形成する自己集合型毒素である。アルファ-HLはナノ細孔シークエンシングの集合において、主要な構成要素となっている。また、α-HLは、高い安定性、自己集合、および、一本鎖DNAを許容するが二本鎖DNAは通さない幅の細孔直径、等を含む多くの有利な特性を有する(Kasianowiczら(1996))。
a-HL細孔におけるDNA検出に関する過去の取り組みは、DNAが細孔の中を移動する際の、イオン電流の特徴を解析することに焦点がおかれてきた(Kasianowiczら(1996);Akesonら(1999);Mellerら(2001))。移行速度(100mVで約1nt/μs)およびイオン電流シグナルに固有のノイズから、この解析は大変難しいものであった。細孔の内部に持続的に繋ぎ止められたプローブ分子を組み込むことで、ナノ細孔を基盤としたセンサーに更に高い特異性を持たせることに成功した(Howorkaら(2001)a、および、Howorkaら(2001)b;Movileanuら(2000))。
野生型a-HLでは、結果として有意な数の欠失エラー、即ち塩基が測定されない状況が起こる。従って、特性の改善されたα-HLナノ細孔が望まれている。
発明の簡単な概要
本発明は、例えば、目的の分子を捕らえるためにかかる時間を短縮するといった、挿入に掛かる時間(time-to-thread)を改良するアミノ酸変化を含むブドウ球菌変異型アルファ溶血素(αHL)ポリペプチドを特徴とする。
現在開示されている変異体は、目的の分子、例えば、多様なタグ付加ヌクレオチドまたは配列決定されるヌクレオチドの、挿入に掛かる時間を減少させる。
本明細書には、α溶血素(αHL)変異体が開示されている。α溶血素(αHL)変異体は、親αHLポリペプチド、または、SEQ ID NO:8に対して80%、90%、95%、または98%以上の配列相同性を有する配列に由来し、SEQ ID NO:3(成熟したa-HL)の12位または17位に相当する位置に置換を含む。いくつかの態様において、上記変異体は、更にH144A変異を含む。いくつかの態様において、上記置換は、一つ以上の正電荷を有する。いくつかの態様において、変異体は、一つ以上のT12残基および/またはN17の残基に相当する位置に置換を含む。いくつかの態様において、変異体は、T12K、T12R、N17K、N17Rより選択される置換、またはその組み合わせを含む。いくつかの態様において、変異体は、親α溶血素と比べて、挿入に掛かる時間(time to thread (TTT))が改変されている。いくつかの態様において、TTTは減少している。いくつかの態様において、変異体は、黄色ブドウ球菌(SEQ ID NO:1)に由来するα溶血素(α-HL)にT12RまたはK、および/または、N17RまたはKからなる群より選択される残基に相当する位置の置換を含む。いくつかの態様において、置換はT12Kである。いくつかの態様において、置換はT12Rである。いくつかの態様において、置換はN17Kである。いくつかの態様において、置換はN17Rである。いくつかの態様において、特徴が親α溶血素(例えば、AAA26598)のものから変更されたα-HL変異体は、H144Aに加えて、
a.T12K/R;
b.N17K/R;
より選択される少なくとも一つの変異、またはその組み合わせを、更に含む。
全ての態様において、アルファ溶血素は、SEQ ID NO:8に対して90%、好ましくは95%、98%、またはそれを超える配列相同性を持つ配列を有する。
いくつかの態様において、アミノ酸置換は、異種分子(例えば、PEG)の付加を可能にする。いくつかの態様において、a-HL変異体には、翻訳後修飾が起きている。
いくつかの態様において、上記置換は、pH約5から約8.5において塩基性であるかまたは正電荷を有する非天然アミノ酸による置換である。
いくつかの例において、ポリメラーゼはナノ細孔に結合(例えば、ナノ細孔と共有結合)しており、ポリメラーゼによりヌクレオチドの組み入れがなされる。
一つの側面において、本明細書に記載の少なくとも一つのα溶血素(αHL)変異体を含む七量体細孔集合体が提供される。一つの態様において、本発明は、変異型αHLポリペプチド(M)を含むヘテロマーの細孔集合体、例えば、野生型(WT)ブドウ球菌性αHLポリペプチドおよび変異型αHLポリペプチドを含む細孔集合体であって、変異型αHLポリペプチドのアミノ酸変異体(本明細書で提供されるもの)が細孔構造の膜貫通チャネル内の位置を占める集合体を提供する。例えば、WTおよび変異体αHLポリペプチドの比率は、式WT7-nMnにより表され、ここでnは1、2、3、4、5、6、または7である;また、ヘテロ七量体におけるαHLポリペプチドの比率は好ましくは、WT7-nMnである;また、上記比率は、最も好ましくはWT6M1である。七量体の各サブユニットが変異型αHLポリペプチド(即ち、n=7)であるホモマーの細孔も本発明に含まれる。
一つの側面において、本明細書に記載のa-HL変異体をコードする核酸が提供される。
一つの側面において、本明細書に記載のアルファ溶血素変異体をコードする核酸を含むベクターが提供される。
一つの側面において、本明細書に記載のアルファ溶血素変異体をコードする核酸を含むベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。
一つの側面において、
(a)本明細書に記載のアルファ溶血素変異体をコードする核酸を導入された宿主細胞を、適切な条件下、適した培養培地で培養して、アルファ溶血素変異体を生成する工程、および
(b)生成された上記アルファ溶血素変異体を得る工程
を含む、アルファ溶血素変異体を生成する方法が提供される。
一つの側面において、
(a)検出電極に隣接または近接して配置された膜内に本明細書に記載のナノ細孔を含む、チップを提供する工程、
(b)該ナノ細孔を通るよう核酸分子を方向づける工程であって、該核酸分子がレポーター分子に結合し、該核酸分子がアドレス領域とプローブ領域を含み、該レポーター分子がプローブ領域で該核酸分子に結合し、該レポーター分子が標的分子とカップリングしている、工程、
(c)該アドレス領域の核酸配列決定の為に、該核酸分子が該ナノ細孔を通って方向づけられている間に、該アドレス領域の配列を決定する工程、および
(d)コンピュータ処理装置を用いて、工程(c)で決定された該アドレス領域の核酸配列に基づき該標的分子を特定する工程
を含む、標的分子を検出するための方法が提供される。
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
[1]
SEQ ID NO:3の12位または17位に相当する位置に置換を含むα溶血素(α-HL)変異体であって、該置換が一つまたは複数の正電荷を含む、α溶血素(α-HL)変異体。
[2]
H144Aをさらに含む、[1]のα溶血素変異体。
[3]
T12残基およびN17残基に相当する位置に置換を含む、[1]または[2]のα溶血素変異体。
[4]
T12K、T12R、N17K、N17R、およびそれらの組み合わせより選択される置換を含む、[1]または[2]のα溶血素変異体。
[5]
前記置換がT12Kである、[1]のα溶血素(α-HL)変異体。
[6]
前記置換がT12Rである、[1]のα溶血素(α-HL)変異体。
[7]
前記置換がN17Kである、[1]のα溶血素(α-HL)変異体。
[8]
前記置換がN17Rである、[1]のα溶血素(α-HL)変異体。
[9]
SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、90%、95%、98%、またはそれを超える配列同一性を有する配列を有する、[1]のα溶血素(α-HL)変異体。
[10]
DNAポリメラーゼに共有結合している、[1]〜[9]のいずれかのα溶血素変異体。
[11]
イソペプチド結合を介してDNAポリメラーゼに結合している、[10]のアルファ溶血素変異体。
[12]
[1]〜[11]のいずれかのα溶血素(α-HL)変異体を少なくとも一つ含む、七量体ナノ細孔集合体。
[13]
天然のアルファ溶血素からなる細孔複合体に対して、挿入に掛かる時間(time to thread (TTT))が変更されている、[12]の七量体ナノ細孔集合体。
[14]
前記TTTが減少している、[13]の七量体ナノ細孔集合体。
[15]
[1]〜[9]のいずれかのアルファ-HL変異体をコードする、核酸。
[16]
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SEQ ID NO:1)に由来する、[15]の核酸分子。
[17]
[15]または[16]のアルファ溶血素変異体をコードする核酸を含む、ベクター。
[18]
[17]のベクターで形質転換された、宿主細胞。
[19]
(a)[18]の宿主細胞を、適切な条件下、適した培養培地で培養して、アルファ溶血素変異体を生成する工程、および
(b)生成された前記アルファ溶血素変異体を得る工程
を含む、アルファ溶血素変異体を生成する方法。
[20]
(a)検出電極に隣接または近接して配置された膜内に[12]〜[14]のいずれかのナノ細孔を含む、チップを提供する工程、
(b)該ナノ細孔を通るよう核酸分子を方向づける工程であって、該核酸分子がレポーター分子に結合し、該核酸分子がアドレス領域とプローブ領域を含み、該レポーター分子が該プローブ領域で該核酸分子に結合し、該レポーター分子が標的分子とカップリングしている、工程、
(c)該アドレス領域の核酸配列決定の為に、該核酸分子が該ナノ細孔を通って方向づけられている間に、該アドレス領域の配列を決定する工程、および
(d)コンピュータ処理装置を用いて、(c)で決定された該アドレス領域の核酸配列に基づき該標的分子を特定する工程
を含む、標的分子を検出するための方法。
下記の詳細な説明により、本発明の他の目的、特徴、および利点が明白となる。この詳細な説明および特定の実施例は本発明の好ましい態様を示しているが、詳細な説明に鑑みれば、本発明の精神と範囲内において多様な変化や改変が当業者には明らかとなるため、これらは説明の目的のみに提示したものであることが理解されよう。
図1〜5は、それぞれ二つの図、例えば図1Aおよび1B、を含む。それぞれの図において、Aの図は、x軸に示す時間位置の値と同等の「挿入に掛かる時間」を有する捕獲現象の数を示すヒストグラムである。それぞれの図において、Bの図は、対応するAの図における生データの一部を示す。
野生型a-溶血素ナノ細孔より得られた結果を示す。図1A(上のパネル)は、「挿入に掛かる時間」のデータを示す。このデータは、タグ付加ヌクレオチドを捕獲している多くの細孔より組み合わせたものであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有することを示している。野生型aHLの平均値および中央値、ならびに標準偏差はそれぞれ20.7ms、16.1ms、および1.5msであり、計算に用いた方形波の総数は41910である。図1B(下のパネル)は、五つの連続する方形波の生データを示す。緑の線の間に示したデータポイントは、開口チャネル(タグ付加ヌクレオチドが細孔内に挿入されていない場合)を表し、赤い線の間に示したデータは、タグ付加ヌクレオチドが細孔に挿入され、チャネル内のイオンの移動を遮断している場合を表している。電極は+100mVと-100mVの間でサイクルさせたが、本発明者らのシステムでは、負電圧が印加された際のデータポイントは記録していない。従って、全てのデータポイントは、正電位が印加された際に収集し、データポイントが無い時間(例えば、1716.9〜1717秒の間)は、電極に負電圧が印加されている時である。この例において「挿入に掛かる時間」の測定は、観察可能な挿入レベルを有する方形波より計算され、その前の方形波は正電圧の終わりに挿入レベルを有していた(これにより、タグが細孔に挿入され、ポリメラーゼにより結合されたことが示された)。 T12K変異を有するa-溶血素ナノ細孔より得られた結果を示す。図2A(上のパネル)は、タグ付加ヌクレオチドを捕獲している多くの細孔より組み合わせたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有することを示している。T12K aHLの平均値および中央値、ならびに標準偏差はそれぞれ19.7ms、14.5ms、および1.5msであり、計算に用いた方形波の総数は4311である。図2B(下のパネル)は、五つの連続する方形波の生データを示す。緑の線の間に示したデータポイントは、開口チャネル(タグ付加ヌクレオチドが細孔内に挿入されていない場合)を表し、赤い線の間に示したデータは、タグ付加ヌクレオチドが細孔に挿入され、チャネル内のイオンの移動を遮断している場合を表している。電極は+100mVと-100mVの間でサイクルさせたが、本発明者らのシステムでは、負電圧が印加された際のデータポイントは記録していない。従って、全てのデータポイントは、正電位が印加された際に収集し、データポイントが無い時間(例えば、1600.4〜1601.2秒の間)は、電極に負電圧が印加されている時である。この例において「挿入に掛かる時間」の測定は、観察可能な挿入レベルを有する方形波より計算され、その前の方形波は正電圧の終わりに挿入レベルを有していた(これにより、タグが細孔に挿入され、ポリメラーゼにより結合されたことが示された)。 T12R変異を有するa-溶血素ナノ細孔より得られた結果を示す。図3Aは、タグ付加ヌクレオチドを捕獲している多くの細孔より組み合わせたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有することを示している。T12R aHLの平均値および中央値、ならびに標準偏差はそれぞれ16.9ms、10.5ms、および1.5msであり、計算に用いた方形波の総数は4138である。図3B(下のパネル)は、五つの連続する方形波の生データを示す。緑の線の間に示したデータポイントは、開口チャネル(タグ付加ヌクレオチドが細孔内に挿入されていない場合)を表し、赤い線の間に示したデータは、タグ付加ヌクレオチドが細孔に挿入され、チャネル内のイオンの移動を遮断している場合を表している。電極は+100mVと-100mVの間でサイクルさせたが、本発明者らのシステムでは、負電圧が印加された際のデータポイントは記録していない。従って、全てのデータポイントは、正電位が印加された際に収集し、データポイントが無い時間(例えば、267.2〜268.2秒の間)は、電極に負電圧が印加されている時である。この例において「挿入に掛かる時間」の測定は、観察可能な挿入レベルを有する方形波より計算され、その前の方形波は正電圧の終わりに挿入レベルを有していた(これにより、タグが細孔に挿入され、ポリメラーゼにより結合されたことが示された)。 N17R変異を有するa-溶血素ナノ細孔より得られた結果を示す。図4A(上のパネル)は、タグ付加ヌクレオチドを捕獲している多くの細孔より組み合わせたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有することを示している。N17R aHLの平均値および中央値、ならびに標準偏差はそれぞれ17.5ms、10.5ms、および1.7msであり、計算に用いた方形波の総数は3877である。図4B(下のパネル)は、五つの連続する方形波の生データを示す。緑の線の間に示したデータポイントは、開口チャネル(タグ付加ヌクレオチドが細孔内に挿入されていない場合)を表し、赤い線の間に示したデータは、タグ付加ヌクレオチドが細孔に挿入され、チャネル内のイオンの移動を遮断している場合を表している。電極は+100mVと-100mVの間でサイクルさせたが、本発明者らのシステムでは、負電圧が印加された際のデータポイントは記録していない。従って、全てのデータポイントは、正電位が印加された際に収集し、データポイントが無い時間(例えば、344〜344.9秒の間)は、電極に負電圧が印加されている時である。この例において「挿入に掛かる時間」の測定の計算は、観察可能な挿入レベルを有する方形波より計算され、その前の方形波は正電圧の終わりに挿入レベルを有していた(これにより、タグが細孔に挿入され、ポリメラーゼにより結合されたことが示された)。 N17K変異を有するa-溶血素ナノ細孔より得られた結果を示す。図5A(上のパネル)は、タグ付加ヌクレオチドを捕獲している多くの細孔より組み合わせたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有することを示している。N17K aHLの平均値および中央値、ならびに標準偏差はそれぞれ5.7ms、2.4ms、および0.7msであり、計算に用いた方形波の総数は2424である。図5B(下のパネル)は、五つの連続する方形波の生データを示す。緑の線の間に示したデータポイントは、開口チャネル(タグ付加ヌクレオチドが細孔内に挿入されていない場合)を表し、赤い線の間に示したデータは、タグ付加ヌクレオチドが細孔に挿入され、チャネル内のイオンの移動を遮断している場合を表している。電極は+100mVと-100mVの間でサイクルさせたが、本発明者らのシステムでは、負電圧が印加された際のデータポイントは記録していない。従って、全てのデータポイントは、正電位が印加された際に収集し、データポイントが無い時間(例えば、79.5〜80.5秒の間)は、電極に負電圧が印加されている時である。この例において「挿入に掛かる時間」の測定の計算は、観察可能な挿入レベルを有する方形波より計算され、その前の方形波は正電圧の終わりに挿入レベルを有していた(これにより、タグが細孔に挿入され、ポリメラーゼにより結合されたことが示された)。
詳細な説明
ここで、本発明は、以下の定義および実施例のみの参照により詳細に説明される。本明細書に引用される全ての特許および公報は、それらに公開されている全ての配列を含めて、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通して理解されているのと同じ意味を有する。Singletonら(1994)DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、John Wiley and Sons(New York)、ならびに、HaleおよびMarham(1991)THE HAPPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial(New York)は、本発明で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書中に記載される方法および材料に類似したまたは等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。技術者は本願技術分野の定義と用語について、Sambrookら(1989)、とAusubel FMら(1993)を特に参照する。この発明は、記載された特定の方法論、手順および試薬に限定されないことを理解すべきである。これらは変わりうるからである。
数値範囲はこの範囲を定める数字を含む。本願で使用される「約」は、値の±10%以内を意味する。例えば、「約100」は、90から110の間の任意の値を意味する。
別に示す場合を除いて、それぞれ、核酸は左から右に5'から3'方向;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載する。
さらに、本明細書に記載の表題は本発明の種々の側面または実施態様の限界ではなく、本発明は全体として明細書を参照することにより理解されるべきものである。従って、直ぐ後に定義される用語は全体として明細書を参照することにより、より完全に定義される。
定義
アルファ溶血素
本明細書で使用される「アルファ溶血素」、「α溶血素」、「a-HL」、および「α-HL」は互換的に用いられ、自己集合することで水を含む七量体膜貫通チャネル(即ち、ナノ細孔)を形成する単量体タンパク質を指す。また、状況に応じて、この用語は、7個の単量体タンパク質により形成される膜貫通チャネルを指す場合もある。
アミノ酸
本明細書で使用される、用語「アミノ酸」は、その最も広い意味で、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。「標準的なアミノ酸」は、天然に存在するペプチドに通常見られる20個の標準的なL-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準的なアミノ酸」は、それが合成により、または自然源から得られるか否かに関わらず、標準的なアミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を指す。本明細書で使用される、「合成アミノ酸」または「非天然アミノ酸」は、これらに限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換を含む化学修飾されたアミノ酸を包含する。ペプチドにおけるカルボキシおよび/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、および/またはその活性に悪影響を及ぼすことない他の化学基との置換により修飾され得る。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関わる場合がある。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指す場合がある。遊離アミノ酸またはペプチドの残基のどちらを指すかは、用語が使用される文脈から明らかであろう。なお、本明細書中で式により表される全てのアミノ酸残基配列は、従来の左から右へアミノ末端からカルボキシ末端の方向に従う。
塩基対(bp)
本明細書で使用される「塩基対」とは、二重鎖DNA分子におけるアデニン (A) とチミジン (T)、またはシトシン (C) とグアニン (G) の対を指す。
相補性
本明細書で使用される、用語「相補性」は塩基対合を介した二つのポリヌクレオチド鎖の領域間、または二つのヌクレオチド間の配列相補性の広範な概念をいう。アデニンヌクレオチドは、チミンまたはウラシルヌクレオチドと特定の水素結合(「塩基対合」)を形成できることが知られている。同様に、シトシンヌクレオチドは、グアニンヌクレオチドと塩基対合を形成できることが知られている。
発現カセット
「発現カセット」および「発現ベクター」という用語は、標的細胞中の特定の核酸の転写を可能にする一連の特定された核酸エレメントを用いた組換え、または合成によって生成された核酸構築体を意味する。組換え発現カセットは、プラスミド、クロモソーム、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス、または核酸フラグメントに組み込まれ得る。通常、発現ベクターの組換え発現カセット部位は、他の配列の中に、転写される核酸配列およびプロモーターを含む。
異種
「異種の」核酸構築体または配列は、それが発現する細胞固有のものではない配列の一部を有している。制御配列に関する異種とは、発現を現在調節している同じ遺伝子を調節するために本来機能しない制御配列(すなわちプロモーターまたはエンハンサー)をいう。一般的に、異種の塩基配列は、それらのもともとの細胞または遺伝子の一部には存在しないのもであり、感染、トランスフェクション、形質転換、顕微注入、エレクトロポーション、または同様の方法により細胞へ追加されたものである。「異種の」核酸構築体は、ネイティブの細胞の中で発見された制御配列/DNAコーディング配列の組み合わせと同じであるか、異なる制御配列/DNAコーディング配列を組み合わせたものを含む。
宿主細胞
「宿主細胞」という語は、ベクターを含み、発現構築体の複製、ならびに/または、転写もしくは転写および翻訳(発現)をサポートする細胞を意味する。本発明で用いられる宿主細胞は、大腸菌(E. coli)や枯草菌(Bacillus subtilus)のような原核細胞、または酵母菌、植物、昆虫、両生類、または哺乳類の細胞のような真核細胞であり得る。一般的には、宿主細胞は、例えば大腸菌のような原核生物の細胞である。
単離された
「単離された」分子とは、例えば天然の環境下など、通常その分子が結合している少なくとも一つの他の分子から分離した核酸分子である。単離された核酸分子は、通常その核酸分子を発現する細胞内に存在する核酸分子であるが、染色体外に存在するか、または天然の染色体上の位置と異なる位置に存在する核酸分子を含む。
修飾されたアルファ溶血素
本明細書で使用される用語「修飾されたアルファ溶血素」は、別の(即ち、親)アルファ溶血素に由来するアルファ溶血素を指し、これは親アルファ溶血素と比較した場合、一つ以上のアミノ酸変化(例えば、アミノ酸の置換、欠失、または挿入)を含む。一部の態様において、本発明の修飾されたアルファ溶血素は、天然に存在するアルファ溶血素または野生型アルファ溶血素に由来するか、またはそれを修飾したものである。一部の態様において、本発明の修飾されたアルファ溶血素は、キメラアルファ溶血素、融合アルファ溶血素、または別の修飾されたアルファ溶血素を含むがそれらに限定されない組換えアルファ溶血素または遺伝子操作されたアルファ溶血素に由来するか、またはそれを修飾したものである。修飾されたアルファ溶血素は、典型的には、親アルファ溶血素と比較した場合、少なくとも一つの変更された表現型を有する。
変異
本明細書で使用される用語「変異」とは、親配列に対する置換、挿入、欠失(短縮化を含む)を含むが、それらに限定されない変化の導入を指す。変異の結果としては、これらに限定されないが、親配列でコードされたタンパク質には見られない新たな特徴、性質、機能、表現型、または形質の創造が含まれる。
ナノ細孔
本明細書で使用される用語「ナノ細孔」は、概して膜に形成されるか、または他の様式で設けられた、細孔、チャネル、または通路を指す。膜は、脂質二重層などの有機膜、またはポリマー材料から形成された合成膜などであり得る。膜は、ポリマー材料であってもよい。ナノ細孔は、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、または電界効果トランジスタ(FET)回路などの検知回路、または検知回路に係合した電極に隣接または近接して配置することができる。幾つかの例では、ナノ細孔は、0.1ナノメートル(nm)〜約1000nm次元の特徴的な幅または直径を有する。幾つかのナノ細孔は、タンパク質であり、アルファ溶血素は、タンパク質ナノ細孔の一例である。
核酸分子
用語「核酸分子」は、RNA、DNA、およびcDNA分子を含む。遺伝暗号の退縮の結果として、アルファ溶血素および/またはその変異体のような所与のタンパク質をコードしている塩基配列の多様性が生成され得ることが理解される。本発明は、遺伝暗号の退縮により与えられたアルファ溶血素変異体をコードする、可能な限り多くの変異塩基配列を含む。
プロモーター
本明細書で使用される用語「プロモーター」は、遺伝子の下流側の転写に直接作用する核酸配列をいう。このプロモーターは一般的に標的遺伝子を発現する宿主細胞に適したものが用いられる。このプロモーターは、他の転写および翻訳調節核酸配列(「制御配列」ともいう)と共に、定められた遺伝子の発現に必要である。一般的には、この転写および翻訳調節配列には、プロモーター配列、リボゾーム結合部位、転写開始および転写終了配列、ならびにエンハンサーまたは活性化配列を含むがそれらに限られない。
精製された
本明細書で使用される用語「精製された」は、分子がそれを含む試料中に重量の少なくとも95%または重量の少なくとも98%の濃度で存在することを意味する。
精製する
本明細書で使用される用語「精製する」は、一般に、遺伝子組換された核酸またはタンパク質を含む細胞を、生化学的精製および/またはカラムクロマトグラフィーに供することを意味する。
タグ
本明細書で使用される用語「タグ」は、原子もしくは分子、または原子もしくは分子の集まりであり得る検出可能な部分を意味する。タグは、ナノ細孔を利用して検出可能となり得る、光学的、電気化学的、磁気的、または静電的な(例えば、誘導性、容量性の)シグネチャーを提供し得る。典型的に、タグにヌクレオチドが結合されている場合、それは「タグ付加ヌクレオチド」と呼ばれる。タグは、ヌクレオチドのリン酸部分を介して結合され得る。
挿入に掛かる時間(Time-To-Thread)
「挿入に掛かる時間」または「TTT」という表現は、ポリメラーゼタグ複合体または核酸鎖がナノ細孔の筒の中にタグを挿入するために掛かる時間を意味する。
変異体
本明細書で使用される用語「変異体」は、親タンパク質と比較した場合に変更された特徴、例えば変更されたイオン伝導度などを表す修飾されたタンパク質を指す。
変異体溶血素
「溶血素変異体遺伝子」または「溶血素変異体」という用語は、それぞれ、黄色ブドウ球菌から得られたアルファ溶血素遺伝子の塩基配列が、除去、追加、および/もしくはコード配列の操作により変化していること、または発現されたタンパク質のアミノ酸配列が、本明細書に記載の発明に従って修飾されていることを意味する。
ベクター
本明細書で使用される用語「ベクター」は、異なる宿主細胞間を輸送することを目的として設計された核酸構築体を指す。「発現ベクター」とは、異種の細胞内で、異種のDNAフラグメントを取り込み、発現させる能力があるベクターをいう。多くの原核または真核細胞の発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
野生型
本明細書で使用される用語「野生型」は、天然に存在する供給源から単離された場合の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する、遺伝子または遺伝子産物をいう。
相同性の割合(パーセント)
ここで「相同性%」という用語は「同一性%」という用語と交換可能に用いられ、配列アラインメントプログラムを用いて配置した際の、本発明のポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸配列、または、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の間についての、核酸またはアミノ酸配列の同一性レベルをいう。
例えば、ここで用いる、相同性80%とは定義したアルゴリズムにより決定される配列同一性が80%であることと同じ意味であり、従って所定の配列の相同体は所定の配列の長さにおいて80%よりも高い配列同一性を有する。配列同一性の典型的なレベルは、限定されないが、所定の配列に対して80、85、90、95、98%、またはそれを超える配列同一性を含み、その一例は、本明細書に記載する本発明のいずれか一つのポリペプチドをコードする配列である。
2つの配列間の同一性を決定するために使用できる代表的なコンピュータープログラムは、限定されないが、一連のBLASTプログラム、例えばBLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTNなどであり、インターネット上で公開されている。また、Altschulら(1990)およびAltschulら(1997)を参照されたい。
配列サーチは所定の核酸配列をGenBank DNA配列およびその他の公共データベースにおける核酸配列と比較して評価する場合、一般的にBLASTNプログラムを用いて行う。BLASTXプログラムはGenBankタンパク質配列およびその他の公共データベース中のアミノ酸配列に対して全リーディングフレーム内で翻訳されている核酸配列をサーチするのに好ましい。BLASTNおよびBLASTXの両方は11.0のオープンギャップ・ペナルティの初期値パラメーターおよび1.0の延長ギャップペナルティを用いて操作し、BLOSUM-62マトリックスを利用する。(Altschul, S. F.ら(1997)NucleicAcids Res. 25: 3389-3402等を参照。)
2つ以上の配列間の「同一性%」を決定するために選択された配列の好ましいアラインメントは例えば、MacVectorバージョン13.0.7のCLUSTAL-Wプログラムを用いて実行し、10.0のオープンギャップ・ペナルティ、0.1の延長ギャップペナルティおよびBLOSUM30類似マトリックス等の初期値パラメーターを用いて操作する。
命名法
本明細書および特許請求の範囲においては、アミノ酸残基の従来の一字および三字コードが用いられる。
参照しやすいように本願の変異体は次の命名法を用いて記載される。
すなわち、元のアミノ酸:位置:置換されたアミノ酸を用いて記述される。この命名法によれば、例えば17位でのスレオニンのアルギニンヘの置換は、
Thr17Arg、または、T17R
と示される。
多重突然変異はプラス記号によって分けられ、すなわち
Thr17Arg+Glu34Ser、または、T17R+E34S
は、アラニンとグルタミン酸をそれぞれにアスパラギンとセリンに置換する30位および34位における突然変異を表す。
所定の位置に一つまたは複数の別のアミノ酸残基を挿入することができる場合、それは
T17R/K、または、T17RもしくはT17K
と示される。
アルファ溶血素に対する部位特異的突然変異誘発
黄色ブドウ球菌アルファ溶血素野生型配列は本明細書に提供されており(SEQ ID NO:1として核酸コード領域;SEQ ID NO:3としてタンパク質コード領域)、また、その他の場所でも入手可能である(National Center for BioinformaticsまたはGenBank Accession Numbers M90536およびAAA26598)。
点突然変異は、QuikChange Lightning 2キット(Stategene/Agilent)を用いて、製造元の取り扱い説明書に従い導入することができる。
プライマーは、一般企業、例えばIDT DNA、より注文することができる。
ナノ細孔集合体および挿入
本明細書に記載の方法では、ポリメラーゼがナノ細孔に結合したものを利用できる。場合によっては、各ナノ細孔が一つのポリメラーゼのみを有することが望ましい(例えば、それにより各ナノ細孔において一つの核酸分子のみが配列決定される)。しかしながら、アルファ溶血素(aHL)を含む多くのナノ細孔は、多量体タンパク質であってよく、複数のサブユニット(例えば、aHLの場合は7つのサブユニット)を有する。サブユニットは、同じポリペプチドの同一のコピーであってよい。本明細書において提供するものは、修飾されたサブユニット(例えば、a-HL変異体)と修飾されていないサブユニット(例えば、a-HL)を規定された比率で有する多量体タンパク質(例えば、ナノ細孔)であり得る。更に、本明細書は、修飾されたサブユニットと修飾されていないサブユニットを規定された比率で有する多量体タンパク質(例えば、ナノ細孔)を作製する方法を提供する。
WO2014/074727に記載の図27を参照すると、複数のサブユニットを持つタンパク質を構築する方法は、複数の第一のサブユニット2705を提供し、加えて、複数の第二のサブユニット2710を提供することを含み、ここで第一のサブユニットと比較した場合、第二のサブユニットは修飾されている。いくつかの場合において、第一のサブユニットは野生型(例えば、天然の供給源より単離されたものか、または組換え技術により作製されたもの)である。第二のサブユニットは、任意の適切な方法により修飾されていてよい。いくつかの場合において、第二のサブユニットにはタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)が結合されている(例えば、融合タンパク質など)。
修飾されたサブユニットは、化学反応性部位(例えば、結合形成に適したアジド基またはアルキン基)を含み得る。いくつかの場合において、上記方法は、更にある実体(例えば、ポリメラーゼ)を化学反応部位に結合する反応(例えば、クリックケミストリー環化付加)を実施する工程を含む。
上記方法は、更に、第一の比率で第一サブユニットを第二サブユニット2715に接触させることで、第一サブユニットと第二サブユニットを持つ複数のタンパク質2720を形成する工程を含み得る。例えば、ポリメラーゼを結合するのに適した反応性基を持つ一部分が修飾されたaHLサブユニットは、六つの野生型aHLサブユニットと混合することができる(即ち、第一の比率が1:6)。複数のタンパク質は、複数の第一サブユニット対第二サブユニットの比率を有することができる。例えば、混合されたサブユニットは、修飾されたサブユニット対無修飾のサブユニットの化学量論比の分布(例えば、1:6、2:5、3:4)を有する幾つかのナノ細孔を形成することができる。
いくつかの場合において、上記タンパク質は、単にサブユニットを混合することで形成される。aHLナノ細孔の場合、例えば、界面活性剤(デオキシコール酸など)が引き金となり、aHL単量体は細孔の立体構造をとることができる。ナノ細孔は、脂質(例えば、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)または1,2-ジ-O-フィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DoPhPC)を用いて、中程度の温度(例えば、約100℃未満)で形成することもできる。ある場合において、DPhPCを緩衝液と混合すると大きな多重膜ベシクル(LMV)が作られ、この溶液にaHLサブユニットを加え、得られた混合物を40℃で30分保温すると、細孔が形成される。
異なる二種類のサブユニットが使用された場合(例えば、天然の野生型タンパク質、および、一つの点変異を含んでいてもよい第二のaHL単量体)、結果的に得られるタンパク質は混ざった(例えば、野生型および変異型タンパク質の)化学量論比を持つことができる。これらのタンパク質の化学量論比は、細孔形成反応に用いられる二つのタンパク質の濃度の比率に依存する以下に示した式に従っていてもよい:
100Pm=100[n!/m!(n-m)!]・fmut m・fwt n〜m
式中、
Pm=細孔がm個の変異型サブユニットを有する確率;
n=サブユニットの総数(例えば、aHLの場合は7);
m=「変異型」サブユニットの数;
fmut=混合された変異型サブユニットの割合または比率;
fwt=混合された野生型サブユニットの割合または比率。
上記の方法は、複数のタンンパク質を分画する工程を更に含むことで、第一サブユニット対第二サブユニット2725が第二の比率を有するタンパク質を濃縮することができる。例えば、修飾されたサブユニットを一つだけ有する(例えば、第二の比率が1:6の)ナノ細孔タンパク質を単離することができるが、いかなる第二の比率も適している。第二の比率の分布も分画することができ、例えば、一つまたは二つの修飾されたサブユニットを有するタンパク質を濃縮することができる。タンパク質を形成するサブユニットの総数は、WO2014/074727の図27に示されるように、必ずしも7個ではない(例えば、異なるナノ細孔を使用してもよいし、また、6個のサブユニットを有するアルファ溶血素ナノ細孔が形成されてもよい)。いくつかの場合においては、一つの修飾されたサブユニットのみを有するタンパク質が濃縮される。そのような場合、第二の比率は、(n-1)個の第一サブユニット毎に1個の第二サブユニットであり、ここでnはタンパク質に含まれるサブユニットの数である。
第一の比率は第二の比率と同じであってもよいが、その必要はない。場合によっては、変異導入された単量体を有するタンパク質の形成は、変異導入されていないサブユニットからなるタンパク質の形成よりも効率を欠くことがある。その場合、第一の比率は、第二の比率よりも大きい値であってよい(例えば、一つの変異導入されたサブユニットに対して6個の変異導入されていないサブユニットが第二の比率であることが望ましいナノ細孔の場合、適切な数の1:6型のタンパク質を形成するにはサブユニットを1:6よりも大きい値の比率で混合することが必要となり得る)。
サブユニットの第二の比率が異なるタンパク質は、分離する際に異なる挙動を示すことができる(例えば、異なる保持時間を有する)。いくつかの場合において、タンパク質は、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーを用いて分画される。修飾部位以外において第一サブユニットと第二サブユニットは同一であってよいため、タンパク質における修飾部位の数は、分離の基準となり得る。いくつかの場合において、第一サブユニットまたは第二サブユニットのいずれかが精製用タグを(例えば、修飾に加えて)有することで、分画が可能になるかまたは分画効率が改善される。いくつかの場合において、ポリヒスチジンタグ(His-タグ)、ストレプトアビジンタグ(Strep-タグ)、または他のペプチドタグが使用される。ある場合には、第一サブユニットおよび第二サブユニットはそれぞれ異なるタグを含み、分画の工程では、それぞれのタグに基づいて分画が実施される。His-タグの場合、低pHではタグに電荷が生じる(ヒスチジン残基は側鎖のpKaよりも低い場合に正電荷を帯びる)。他の分子と比べて一つのaHL分子に有意な電荷の差がある場合、「電荷タグ付加」aHLサブユニットを0、1、2、3、4、5、6、または7個持つオリゴマーの分離に、イオン交換クロマトグラフィーを用いることができる。原則的に、この電荷タグは、均一に電荷を持つ任意のアミノ酸鎖であってよい。図28および図29は、Hisタグに基づくナノ細孔の分画の例を挙げる。図28は、280nmにおける紫外線吸光度、260nmにおける紫外線吸光度、および伝導率をプロットしたものを示す。ピークは、様々な比率で修飾されたサブユニットと無修飾のサブユニットを含むナノ細孔と一致する。WO2014/074727に記載の図29は、His-タグおよびStrep-タグの両方を利用したaHLナノ細孔およびその変異体の分画を示す。
場合によって、ある実体(例えば、ポリメラーゼ)は、分画後のタンパク質に結合される。そのタンパク質はナノ細孔であってよく、実体はポリメラーゼであり得る。いくつかの例で、上記方法は、第二の比率でサブユニットを有するタンパク質を二重層へ挿入する工程を更に含む。
状況によってナノ細孔は、複数のサブユニットを含むことができる。ポリメラーゼはサブユニットのうちの一つに結合させることができ、少なくとも一つのサブユニットおよび全部よりも少ない数のサブユニットは第一の精製タグを有することができる。例えば、ナノ細孔はアルファ溶血素またはその変異体であり得る。いくつかの例で全てのサブユニットは、第一の精製タグまたは第二の精製タグを有する。第一の精製タグは、ポリ‐ヒスチジンタグ(例えば、ポリメラーゼが結合されているサブユニットに存在するもの)であってよい。
ナノ細孔に結合されたポリメラーゼ
いくつかの場合では、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)は、ナノ細孔に結合される、および/またはナノ細孔に接近して位置付けられる。ポリメラーゼは、ナノ細孔が膜に組み込まれる前または後にナノ細孔に結合され得る。いくつかの例では、ナノ細孔およびポリメラーゼは、融合タンパク質(即ち、単一のポリペプチド鎖)である。
ポリメラーゼは任意の適切な方法でナノ細孔に結合され得る。いくつかの場合では、ポリメラーゼは、ナノ細孔(例えば、溶血素)タンパク質単量体に結合され、次に、完全なナノ細孔七量体が(例えば、ポリメラーゼが結合した(例えば、溶血素)ナノ細孔単量体6つに対して、ポリメラーゼが結合していないナノ細孔単量体が1つの割合で)構築される。次いで、ナノ細孔七量体は、膜内に挿入され得る。
ポリメラーゼをナノ細孔へ結合する為の別の方法は、リンカー分子を溶血素単量体に結合させる工程、または溶血素単量体を結合部位を有するように変異させる工程、次いで、完全なナノ細孔七量体を構築する工程を含む(例えば、リンカーおよび/または結合部位を有する一つの単量体に対してリンカーおよび/または結合部位を持たない6つの溶血素単量体の割合でナノ細孔が構築される)。次にポリメラーゼを(例えば、膜内に挿入する前にまとまった量を用いて)結合部位または結合リンカーに結合することができる。ポリメラーゼはまた、(例えば、七量体)ナノ細孔が膜内に形成された後、結合部位または結合リンカーに結合することもできる。いくつかの場合では、複数のナノ細孔ポリメラーゼ対は、バイオチップの複数の膜(例えば、ウェルおよび/または電極にわたって配置された膜)内に挿入される。いくつかの事例では、ポリメラーゼのナノ細孔集合体への結合は、上述の各電極の上に配置されたバイオチップ上で生じる。
ポリメラーゼは、任意の適切な化学的手段(例えば、共有結合および/またはリンカー)によりナノ細孔に結合され得る。いくつかの場合では、ポリメラーゼは、分子ステープルでナノ細孔に結合される。いくつかの事例では、分子ステープルは、3つのアミノ酸配列(リンカーA、B、Cと呼ばれる配列)を含む。リンカーAは溶血素単量体から伸びていてもよく、リンカーBはポリメラーゼから伸びていてもよく、その場合、リンカーCはリンカーAおよびBを(例えば、リンカーAおよびBの両方に巻き付くことにより)結合していてもよく、その結果ポリメラーゼをナノ細孔に結合することができる。リンカーCはリンカーAまたはリンカーBの一部として構築されてもよく、そのようにしてリンカー分子の数を少なくさせることができる。
いくつかの事例において、ポリメラーゼは、Solulink(商標)化学を使用してナノ細孔に結合される。Solulink(商標)は、HyNic(6-ヒドラジノ-ニコチン酸、芳香族ヒドラジン)と4FB(4-ホルミルベンゾエート、芳香族アルデヒド)との間の反応であり得る。いくつかの事例では、ポリメラーゼは、クリック化学(例えば、LifeTechnologiesから入手可能である)を使用してナノ細孔に結合される。いくつかの場合では、亜鉛フィンガー突然変異が溶血素分子内に導入され、次いで、分子を使用して(例えば、DNA中間分子)、ポリメラーゼを溶血素上の亜鉛フィンガー部位に結合する。
装置の構成
ナノ細孔は、例えば集積回路などの感知回路の検出電極に隣接して堆積させられた膜中に形成するか、または別の方法で埋め込むことができる。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であってもよい。いくつかの例において、集積回路は、電界効果トランジスタまたは相補型金属酸化物半導体(CMOS)である。感知回路は、ナノ細孔を有するチップまたは他の装置に設けられていてもよいし、または例えばオフチップ構造などのようにチップまたは装置の外部に設けられていてもよい。半導体は、これらに限定されないが、第IV族(例えばケイ素)および第III〜V族半導体(例えば砒化ガリウム)などの任意の半導体であってもよい。ヌクレオチドまたはタグを検知するための装置およびデバイスの構成に関しては、例えばWO2013/123450を参照されたい。
細孔式センサ(例えば、バイオチップ)は、単一分子の電気インテロゲーションのために使用することができる。細孔式センサーは、検知電極に隣接または近接して配置される膜内に形成される本開示のナノ細孔を含むことができる。センサーは、対電極を含み得る。膜は、トランス側(すなわち、検知電極に面する側)およびシス側(すなわち、対電極に面する側)を含む。
下記の実施例において、以下の略語を使用した:eq(等価);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(規定濃度);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒)。
本発明を以下の実施例において更に詳細に説明する。実施例は、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲をいかようにも限定するように意図されていない。添付図面は、本発明の明細書および説明の不可欠な部分とみなされるように意図されている。引用されているすべての参考文献は、本明細書に記載されているもののすべてに特に言及することによって組み込まれている。以下の実施例は、説明のために提供されているが、特許請求の範囲に記載されている発明を限定しない。
実施例1:発現および回収
細菌性宿主細胞(例えば、大腸菌)からのタンパク質発現および回収を説明する。
野生型a-HLをコードするDNAは、市販のものを購入した。配列はシーケンシングにより確認した。
プラスミド構築
野生型または変異型のα溶血素をコードする遺伝子は、T7プロモーターの制御下にあるpPR-IBA2プラスミド(IBA Life Sciences、ドイツ)に挿入した。
形質転換
当技術分野において公知の方法を用いて、野生型または変異型α溶血素をコードするDNAを含む発現ベクターで、大腸菌株BL21 DE3(Life Technologies)細胞を形質転換した。手短に、細胞を氷上で解凍した(細胞が凍結している場合)。次に、コンピテント細胞に目的のDNA(適切なベクター/プラスミドに挿入したもの)を直接加え(コンピテント細胞の5%を超えるべきではない)、チューブを弾くことで内容物を混ぜ合わせた。チューブを氷上で20分静置させた。次に、細胞を撹拌せず42℃の水槽に45秒静置させ、その後チューブを氷上で2分静置させた。次に、細胞を0.9mlのSOC培地を含む(予め室温まで温めた)15mlの滅菌培養チューブに移し、これを振盪機に入れ、37℃で1時間培養した。最終的に、適当な抗生物質を含むLB寒天培地プレート上に一定量の細胞を塗布し、これを37℃にて一晩培養した。
タンパク質発現
形質転換後、コロニーを拾い、適切な抗生物質を含む少量(例えば、3ml)の増殖培地(例えば、LB培地)に播種し、これを一晩37℃で振盪培養した。
翌朝、一晩培養した培養液1mlを、適切な抗生物質を含む100mlの新しい自己誘導培地、例えばMagicMedia(Life Technologies)に移すことにより、発現プラスミドを選択した。発現プラスミドに応じて異なるが、培養物を25℃で約16時間振盪培養した。細胞は、3,000gおよび4℃で20分遠心分離することで回収し、使用するまで-80℃で保存した。
精製
細胞の溶解は、超音波処理にて行った。アルファ溶血素は、アフィニティカラムクロマトグラフィーにより均一になるまで精製された。
実施例2:T12および/またはN17の変異体
下記の実施例は、所望の残基への変異導入を詳細に記載する。
変異
QuikChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene、米国カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、部位特異的変異誘発を行うことで、T12および/またはN17の変異体を調製した。
変異体の発現および精製は、実施例1の通り行った。
実施例3:ナノ細孔構築
下記の実施例は、6個のa-HL変異体サブユニットおよび1個の野生型サブユニットからなるナノ細孔の構築を記載する。
野生型a-HLは、SpyタグおよびHisタグを用いて実施例1に記載の方法で発現させ、コバルトアフィニティカラムでコバルト溶出バッファー(200mM NaCl、300mMイミダゾール、50mMトリス、pH8)を使用し、精製した。所望のa-HL変異体は、Strepタグを用いて実施例1の記載に従い発現させ、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)に接続したStreptactinアフィニティカラムで溶出緩衝液(50mMトリス、5mMデスチオビオチン、200mM NaCl、pH8)使用して精製した。精製したタンパク質は、5日以内に使用する場合は4℃で保存し、その他の場合は、8%トレハロースを加え-80℃で保存した。
約20mgの総タンパク質を使用し、野生型a-HLの溶液および所望のa-HL変異体の溶液を、1:6の割合で混合した。ジフィタノイル‐ホスファチジルコリン(DPhPC)脂質を、最終濃度が50mg/mlとなるように50mMトリス、200mM NaCl、pH 8、または 150mM KCl、30mM HEPES、pH7.5に溶解し、次にこれを最終濃度が5mg/mlとなるようにa-HL単量体の混合物に加えた。a-HL単量体の混合物を40℃で少なくとも10分間保温した。この脂質と溶血素の混合物を分子ふるいクロマトグラフィーにかけ、多量体化したタンパク質から脂質を分離した。
実施例4:ポリメラーゼの結合
下記の実施例は、ポリメラーゼのナノ細孔への結合を説明する。
ポリメラーゼはナノ細孔と任意の適切な手段によりカップリングし得る。例えば、PCT/US2013/068967(WO2014/074727としても掲載;Genia Technologies)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508としても掲載)、およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249としても掲載;コロンビア大学)を参照されたい。
ポリメラーゼ、例えばphi29 DNAポリメラーゼは、リンカー分子を介して、タンパク質ナノ細孔(例えば、アルファ溶血素)とカップリングさせた。具体的には、生理的条件下で自発的にイソペプチド共有結合を形成するSpyTag-SpyCatcherシステムを使用した。例えば、Liら、J Mol Biol. 2014 Jan 23;426(2):309-17を参照されたい。
Sticky phi29 SpyCatcher Hisタグは、実施例1に従って発現させ、コバルトアフィニティカラムを用いて精製した。SpyCatcherポリメラーゼおよびSpyTag多量体化タンパク質は、3mM SrCl2中4℃で一晩保温した。次に、割合が1:6のポリメラーゼ・テンプレート複合体を分子ふるいクロマトグラフィーを用いて精製した。
実施例5:変異体の活性
下記の実施例は、実施例3に従って提供されたナノ細孔(ポリメラーゼが結合したナノ細孔)の活性を示す。
野生型および変異型のナノ細孔をアッセイすることにより、一か所以上での変異の効果を測定した。アッセイは、交流電圧、即ち方形波を用いて、タグ付加分子をナノ細孔に結合しているDNAポリメラーゼが捕獲するために掛かる時間を測定するように設計された。
2014年10月23日に提出されたPCT/US14/61853に記載のように、二重層を形成し、細孔を挿入した。分子(および/または核酸の配列)の検出に使用するナノ細孔装置(またはセンサー)は、WO2013123450に記載のとおり組み立てた。
タグ付加ヌクレオチドを、本発明者らのシークエンシング複合体中のDNAポリメラーゼで捕獲する際に掛かる時間を測定するために、本発明者らは、正負が交互となる電圧(方形波)を利用するアッセイを考案し、その時間を測定した。本発明者らのシークエンシング複合体は、単一のDNAポリメラーゼに結合したタンパク質ナノ細孔(αHL)からなる(実施例4を参照)。タグ付加ヌクレオチドは負電荷を帯びているため、ナノ細孔シークエンシング複合体に印加される電圧が正の場合はナノ細孔に誘引され、負の場合は反発される。従って、正負の電位を印加し電圧をサイクルさせ、ナノ細孔の電流が妨害されない期間(開口チャネル)に対してタグが挿入されている期間(電流量の減少)を決定することにより、細孔の中にタグが挿入されるまでに掛かる時間を測定することができた。
この「挿入に掛かる時間」アッセイを実施するためには、Geniaシークエンシングチップと共にGeniaシークエンシング装置を使用した。PCT/US2013/026514の説明に従い、電極をコンディショニングし、リン脂質二重層をチップ上に設けた。PCT/US2013/026514(WO2013/123450としても記載)に記載のプロトコールに従い、Geniaのシークエンシング複合体を二重層へ挿入した。本特許に示されている挿入に掛かる時間のデータは、20mM HEPES pH7.5、300mM KCl、3μMのタグ付加されたヌクレオチド、3mM Ca2+からなる緩衝液システムを用いて、5Hzのデューティーサイクルを有する+/-100mVの電圧を印加することにより収集された。データ収集後、方形波の正の部分の終わりまで持続するタグ付加されたヌクレオチドの捕獲(挿入レベル)を示す方形波を分析し、その後に後続の方形波において別のタグ捕獲が続いた。挿入に掛かる時間は、第二の方形波が妨げの無い開口チャネル電流を示した時間の長さを決定することにより測定された。例えば、10個の連続する方形波が方形波の正の部分の終わりまで持続するタグ付加されたヌクレオチドの捕獲を示した場合、挿入に掛かる時間のパラメーターは、2番目から10番目の方形波より計算することとなる(直前の方形波においてポリメラーゼにタグが結合していないため、最初の方形波は計算要素に入らない)。これらの挿入に掛かる時間の数値は、実施例に記載の全ての細孔について収集され、これらより統計学的パラメーター(例えば、平均値、中央値、標準偏差など)が抽出された。
結果は図1〜5に示されている。
本明細書に記載の実施例および態様は例示の目的のみのものであり、それらに照らして様々な修飾または変形が当業者に示唆され得、これが本出願および添付の特許請求の精神と範囲内に包含されることが理解される。本明細書に引用する全ての文献、特許および特許出願は、全ての目的に関してそれ自体が全体として引用により本明細書中に包含される。
配列表フリーテキスト
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引用リスト
特許文献
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非特許文献
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本明細書に挙げられた各々の特許、特許出願、刊行物および文献、GENBANK配列、ウェブサイトおよび他の出版物は、全ての表、図面、および図形を含めて参考によって本明細書に組み込まれる。全ての特許および刊行物は、各々の独立した特許および刊行物が特におよび個別に参照により組み込まれることを示した場合と同じ程度まで、本明細書において参照により組み込まれる。上記の特許、特許出願、刊行物、および文献の引用は、任意の上記のものが関連する先行技術であることの了承事項ではなく、該引用は、これらの刊行物または文献の内容または日付に関する了承事項を構成するものでもない。本明細書で引用した全ての特許および刊行物は、本発明の属する分野における当業者の技術レベルを示すものである。

Claims (18)

  1. SEQ ID NO:8に対して少なくとも90%またはそれを超える配列同一性の配列を有するα溶血素(α-HL)変異体であって、該変異体が、SEQ ID NO:8のT12残基およびN17残基に相当する位置に置換を含み、該置換が一つまたは複数の正電荷を含む、α溶血素(α-HL)変異体。
  2. H144Aをさらに含む、請求項1に記載のα溶血素変異体。
  3. T12K、T12R、N17K、N17R、およびそれらの組み合わせより選択される置換を含む、請求項1または2に記載のα溶血素変異体。
  4. T12Kの置換を含む、請求項1または2に記載のα溶血素(α-HL)変異体。
  5. T12Rの置換を含む、請求項1または2に記載のα溶血素(α-HL)変異体。
  6. N17Kの置換を含む、請求項1または2に記載のα溶血素(α-HL)変異体。
  7. N17Rの置換を含む、請求項1または2に記載のα溶血素(α-HL)変異体。
  8. DNAポリメラーゼに共有結合している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のα溶血素変異体。
  9. イソペプチド結合を介してDNAポリメラーゼに結合している、請求項に記載のα溶血素変異体。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のα溶血素(α-HL)変異体を少なくとも一つ含む、七量体ナノ細孔集合体。
  11. 天然のアルファ溶血素からなる細孔複合体に対して、挿入に掛かる時間(time to thread (TTT))が変更されている、請求項10に記載の七量体ナノ細孔集合体。
  12. 前記TTTが減少している、請求項11に記載の七量体ナノ細孔集合体。
  13. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のアルファ-HL変異体をコードする、核酸分子
  14. 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SEQ ID NO:1)に由来する、請求項13に記載の核酸分子。
  15. 請求項13または14に記載のアルファ溶血素変異体をコードする核酸を含む、ベクター。
  16. 請求項15に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
  17. (a)請求項16に記載の宿主細胞を、適切な条件下、適した培養培地で培養して、アルファ溶血素変異体を生成する工程、および
    (b)生成された前記アルファ溶血素変異体を得る工程
    を含む、アルファ溶血素変異体を生成する方法。
  18. (a)検出電極に隣接または近接して配置された膜内に請求項10〜12のいずれか一項に記載のナノ細孔を含む、チップを提供する工程、
    (b)該ナノ細孔を通るよう核酸分子を方向づける工程であって、該核酸分子がレポーター分子に結合し、該核酸分子がアドレス領域とプローブ領域を含み、該レポーター分子が該プローブ領域で該核酸分子に結合し、該レポーター分子が標的分子とカップリングしている、工程、
    (c)該アドレス領域の核酸配列決定の為に、該核酸分子が該ナノ細孔を通って方向づけられている間に、該アドレス領域の配列を決定する工程、および
    (d)コンピュータ処理装置を用いて、(c)で決定された該アドレス領域の核酸配列に基づき該標的分子を特定する工程
    を含む、標的分子を検出するための方法。
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