実施形態に従う光学センサは、半導体センサチップと試料収容部とを備える。半導体センサチップは、基板と基板上に存在する複数のセンシング部とを備える。複数のセンシング部は、基板上の二次元領域に上方を向いてマトリックス状に並んでおり、それによって、前記半導体センサチップは前記二次元領域に対応する一つのセンサ面を提供している。試料収容部は、センサ面よりも上方に位置している。試料収容部は、光透過性の底部と、光透過性の壁部とを備える。底部は、複数のセンシング部と対向して位置している。壁部は、底部上面またはその一部の領域を取り囲むように底部からその上方に向けて任意の高さまで延び、所望に応じた厚さを有する。例えば、光源は、前記試料収容部の外側から前記壁部を通過させて前記試料収容部内へと光を照射するように配置されている。
上述の光学センサは、試料収容部に含まれる収容物、即ち、試料からの光学的情報を二次元的に検出するためのセンサである。光学センサによるセンシングによって、試料収容部に含まれる試料、またはそこに含まれる分析されるべき対象(即ち、分析対象)に関する情報が得られる。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面は模式的なものであり、正確な縮尺ではない。
第1の実施形態
図1の(A)は、実施形態の一例である光学センサの斜視図である。図1の(B)は、図1の(A)の光学センサをB−B’に沿って切断した断面図である。図1の(A)および(B)に示される光学センサ1は、半導体センサチップ10と、試料収容部20と、光源51とを備える。
半導体センサチップ10は、光学センサの本体であり、二次元的に光をセンシングする。半導体センサチップ10は、基板11と複数のセンシング部13とを備える。複数のセンシング部13は、基板11上の二次元領域にマトリックス状に並んでいる。言い換えれば、センシング部13は、当該二次元領域内に縦横にそれぞれ所望の数で行列をなしている。
センシング部13は、上方を向くように、即ち、半導体センサチップ10の表面側を向くように配置されている。それにより、例えば、半導体センサチップ10上に位置している試料収容部20からの光を二次元的にセンシングする。図1に示した半導体センサチップ10は、センシング部13よりも上方に、光透過性部材15を備えている。光透過性部材15は光路の一部として利用される。センシング部13は、光透過性部材15表面から入り、光透過性部材15を通過した光をセンシングする。
詳しくは後述するが、隣り合うセンシング部13は、検出されるべき光に関して互いに干渉しないように構成され得る。例えば、隣り合うセンシング部13の間に位置する光透過性部材15の領域にビアや配線が配置され得る。これにより干渉が防止され得る。
センシング部13のこのような配置によって、半導体センサチップ10の表面は、センサ面14として機能する。センサ面14は、図1に示される光学センサの場合、光透過性部材15の上の表面に該当する。センサ面14は、各センシング部13に対応している光透過性部材15の表面をサブセンサ面4として備えている。サブセンサ面4の配置は、センシング部13の配置に対応し、全体としてセンサ面14の輪郭は、マトリックス状に並んでいる複数のセンシング部13が存在している二次元領域の輪郭と重なり合い、それらは、互いに寸法および形状が同じであり得る。隣り合うサブセンサ面の間に、更にビア(図示せず)が存在してもよい。
以下の説明において、1つのセンシング部を含み、基板11の上からセンサ面14までに亘る部分を光センサ素子12と称する。なお、これは一つの実施形態であり、例えば、他の実施形態としてそれぞれの光センサ素子12が独立していてもよく、光センサ素子12が隣接する他の光センサ素子と別体となっていてもよく、複数のセンサ素子のセンシング部以外の部分が一体となっていてもよい。なお、図1の光センサ素子12の境界線として描写された実線は、光センサ素子12の配列を表現するために便宜上描写されたものであり、必ずしもこれらの実線の部分に光センサ素子12を区画する部材を備えなくてもよい。これは、他の光学センサの断面図においても同様である。
試料収容部20は、底部21と壁部22とを備える。底部21および壁部22は、何れも光透過性の部材により構成されている。図1に示す実施形態では、底部21は円形であり、壁部22は、底部21を取り囲むように底部周面からその上方に向けて延びている。この例では、壁部22と底部21とが垂直に接している。また、壁部22と底部21とは液密に接続しており、それによって試料収容部20は液体を維持し得る。
半導体センサチップと試料収容部とは、前記底部21の下面はセンシング部13と対向するように固定されている。
図1(A)および(B)では、試料収容部20に試料を含んでいる状態の光学センサを示している。ここで示されている試料は、一例として細胞保存液41とそこに含まれる分析対象である細胞40とを含む。
光源51は、前記試料収容部20の外側から前記壁部22を通過させて前記試料収容部20内へと光を照射するように配置されている。図1(A)および(B)においては、例として照明ユニット50に備えられた光源51を示した。使用時に光源51からの光は、壁部22を通過し、試料収容部20内の細胞保存液41を通過して細胞40に照射される。細胞40からの光は、底部21を通過し、その底部21に対向して位置しているセンサ面を通過してセンシング部13に至り、検知される。
上記の例では、壁部22が底部周面から上方に向けて延びる例を示した。他の実施形態において、壁部22が底部上面の所望の領域を取り囲むように底部上面から上方に延びていてもよい。
実施形態によれば、分析されるべき対象に関する光学的情報をより簡便に得ることができる光学センサが提供される。
また、このような構成により、特定の条件下で分析されるべき分析対象に関する情報をより簡便に得ることが可能となる。以下に、光学センサの各構成について更に詳しく説明する。
1.半導体センサチップ
上述したように、半導体センサチップ10は、基板11上の二次元領域にマトリックス状に並んだ複数のセンシング部13を備える。
基板11は、複数のセンシング部13がマトリックス状に位置するまたは形成されるための土台としての役割を持つ。基板11は、例えば、半導体基板であり得る。基板11は、例えば、シリコンなどの半導体基板であり得る。基板の主面の大きさは、例えば、1mm×1mm〜30mm×30mmであり得るが、この大きさに限定されるものではない。基板の厚さは、10μm〜700μmであり得る。
センシング部13は、上述のように光センサ素子12内に備えられて配置され得る。図2を参照しながら、光センサ素子12の構成について説明する。この光センサ素子12は、図1に示した実施形態に含まれ得る光センサ素子の一例である。図2は、半導体センサチップ中に隣接して含まれる3つの光センサ素子12a,12b,12cを示す拡大断面である。それぞれのセンサ素子は、基板11上面側の凹部11a,11b,11c内にセンシング部13a,13b,13cをそれぞれ有する。
センシング部は、例えば、光を検知するための公知の何れかの受光素子であり得る。センシング部は、例えば、フォトダイオードであり得る。
センシング部13は、センシング部13が光を検出できる程度にその少なくとも一部が露出するように基板11の上部に埋め込まれるように配置されている。センシング部13の上には、光透過性部材15としてのSiO2膜15が存在している。SiO2膜15の内部には、センシング部13で検知された光学的情報を伝達する一層または複数層の配線17が備えられ得る。配線17は、導体材料のビア18により互いに電気的に接続され得る。このような構成によって、配線17により隣接する光センサ素子からの光が遮断され、各光センサ素子の上からの光を効率よくセンシング部13で受光することができる。SiO2膜15、配線17、およびビア18からなる層を配線層19と称する。光センサ素子12a,12b,12cは、光透過性部材15の上層として更に保護層を含む。保護層は、半導体センサチップ表面を保護するための光透過性の部材であり得る。保護層は、例えば、窒化シリコン膜16で形成され得る。図2の光センサ素子12a,12b,12cでは、サブセンサ面4a,4b,4cは、窒化シリコン膜16の上表面である。それらは、センサ面14を提供し得る。ただし、図2に示されたセンサ面14は波線により省略された部分にも広がっている。
このような図2に示される光センサ素子12を備える半導体センサチップ10の形成方法を以下に説明する。
当該半導体センサチップ10は、基板11上で複数の光センサ素子12を一体に形成することによって形成され得る。このような半導体センサチップ10は、以下のように半導体プロセスによって形成され得る。まず、基板11上の、センシング部13が形成されるべき場所に、不純物を打ち込むことによりセンシング部13を形成する。続いてその上に、SiO2膜15を堆積する。配線17は、SiO2膜を堆積する際に、その途中の所望の位置にビア18で接続しながら形成され得る。窒化シリコン膜16は、例えばCVD法によりSiO2膜15の表面に堆積することによって形成され得る。
半導体センサチップ10が、このような構成であることによって、その内部に備えられたセンシング部13に当たった光の光学的情報が検出され得る。光は、例えば、可視光、紫外光、赤外光、蛍光、りん光、発光などであり得る。図1に示されるように、複数のセンシング部13が、基板11上にマトリックス状に並んでいる構成によって、実施形態の光学センサを用いて分析対象を分析する際に、センシング部13によって得られた光学的情報に、そのセンシング部13の二次元的な位置情報を結びつけることが可能となる。
一つの半導体センサチップに含まれるセンシング部13の数は、約100個〜1億個であり得るが、これに限定されるものではない。センシング部13の数は、細胞の種類、大きさ、または量、あるいは取得されるべきイメージの解像度などによって調節され得る。そのような複数のセンシング部13を備えることによって半導体センサチップ10は、その表面であるセンサ面14を提供する。
各センシング部の大きさは、例えば、500nm×500nm〜10μm×10μmの範囲であり得る。しかしながらこの範囲に限定されるものではない。センシング部の大きさは、例えば、試料収容部20に収容される試料または分析対象の種類、量または大きさ、あるいは取得されるべきイメージの解像度などによって決定され得る。
各光センサ素子の大きさは、例えば、500nm×500nm〜10μm×10μmの範囲であり得る。しかしながらこの範囲に限定されるものではない。光センサ素子の大きさは、例えば、試料収容部20に収容される試料または分析対象の種類、量または大きさ、あるいは取得されるべきイメージの解像度などによって決定され得る。各光センサ素子の高さは、数μm、例えば、1μm〜4μmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。光センサ素子間のピッチは、例えば、0.3μm〜30μmであり得るが、これに限定するものではない。
更なる実施形態において、光センサ素子12は、公知の光センサを用いた光センサ素子であってもよい。そのような光センサは、例えば、フォトダイオードで検知された光を電気信号に変換するCMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサまたはSPAD(Single photon Avalanche Diode)イメージセンサ、あるいは熱電対で検知された光を電気信号に変換するサーモパイルセンサなどであり得る。
また上述では、光透過性部材15の表面側に表面保護層として窒化シリコン膜16が備えられている例を示した。しかしながらこのような構成に代えて、シリコン酸化膜、酸化アルミニウム膜、または酸化タンタル膜などが保護層として用いられてもよく、あるいは光透過性部材表面に表面保護層が存在しなくともよい。また、センシング部13の下に光透過性部材が形成されてもよい。その場合、センシング部13の表面に保護層が形成されてもよい。例えば、センシング部13が基板11の表面に存在する場合には、配線層19が、基板11とセンシング部13との間に位置していてもよい。このような構成によってもセンシング部13に当たった光の光学的情報を検出することを可能である。
2.試料収容部
上述したように試料収容部は、図1(A)および(B)に示されるように、壁部22と底部21とを備える。
図1(A)に示す実施形態では、底部21は、その主面が円形の面体である。しかしながら、底部主面の形状は多角形、例えば、四角形、例えば、長方形または正方形であり得る。壁部22は、底部21の周縁から底部21の上面21a全体を取り囲むように起立している。その結果、図1(A)では、壁部22は円筒形状である。例えば、底部21の主面の形状が多角形である場合は、壁部は角筒となり得る。または、壁部22は、底部21の上面21aの一部の領域を取り囲むように起立していてもよい。そのような壁部22は、円筒、楕円筒であってもよいし、角筒であってもよい。図1(A)では、壁部22が底部21から垂直に起立している例を示しているが、壁部22が底部21から延びていく方向は、底部21に対して垂直方向のみならず、略垂直であってもよく、斜め上方に向けて延びていてもよい。
底部21および壁部22は、光透過性、例えば、可視光、紫外線、赤外線、蛍光、りん光または化学、生物若しくは化学生物発光などの光を透過する性質を有する部材であり得る。そのような部材の例は、例えば、ガラス、二酸化ケイ素またはポリスチレン、PDMSなどであり得る。底部21と壁部22とが互いに同じ部材で構成されていてもよく、互いに異なる部材で構成されていてもよい。
底部21の厚さ、即ち、底部21の両主面間の距離は、例えば、10nm〜2mmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。壁部22の厚さ、即ち、底部21の下面21bに平行な方向であり、かつ、試料収容部20の外側へ延びる厚さは、例えば、10nm〜2mm、または50μm〜2mmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。また、壁部22の厚さは、全ての領域で一定でなくてもよい。そのような壁部22は、例えば、壁部22が角筒である場合、その少なくとも一つの側面全体が他の側面よりも厚くてもよい。壁部22が円筒である場合、例えば、その円筒を軸に直交して切断したときに得られる円形の断面の所望の長さの弧に対応する壁部22の領域が、当該円形の残りの弧に対応する他の領域よりも厚くてもよい。また、底部21と壁部22とが互いに同じ厚さであってもよく、互いに異なる厚さであってもよい。壁部22の高さは、例えば、50μm〜10mmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。底部21の周縁上の対向する2点の距離は、例えば、100μm〜30mmであり得るが、これに限定されるものではない。
あるいは、例えば、試料収容部20として、市販のガラス製、ポリエチレンまたはポリスチレン製のシャーレ、ディッシュ若しくはマルチウェルプレート等またはその一部分が利用されてもよい。その場合、それらの底面と半導体センサチップのセンサ面が対向するように固定することによって、実施形態に従う光学センサが形成され得る。
上述したような試料収容部を備えることによって、特定の条件下に置かれる状態で分析されるべき分析対象に関連する情報を得ることができる。特定の条件下に置かれる状態で分析されるべき分析対象とは、例えば、培養中の生きた細胞であって培地から出すことにより状態が変化し得る細胞、または特定のガス濃度でないと培養が難しい細胞などであり得る。また、このような試料収容部は、そこに含まれる分析対象に光が照射される場を提供する。
上述のような前記半導体センサチップ10および試料収容部20は、上述のように前記センシング部13と前記試料収容部20の前記底部21とが対向するように固定され得る。このような半導体センサチップおよび試料収容部は、例えば、前記底部21の下面21bおよびセンサ面14が、互いに接着するように固定され得る。しかしながら、下面21bおよびセンサ面14は、後述するように間隙を開けて固定されていてもよい。
このような光学センサ1は、半導体センサチップ10を形成してから、その上部に別途形成した試料収容部20の底部21を固定することにより製造され得る。あるいは、光学センサ1は、半導体センサチップ10と試料収容部20の底部21とを半導体プロセスを用いて一体物として形成した後に、別途形成した壁部22を固定または射出成形することにより形成し得る。各部材同士の固定は、例えば、接着剤を用いて達成され得る。接着剤の例は、例えば、PDMS(シリコーン樹脂)、またはエポキシ樹脂などであり得る。
更なる実施形態において、半導体センサチップおよび試料収容部は、脱着可能に固定されていてもよい。
3.光源
光源51は、試料収容部の外側から壁部を通過させて試料収容部内へと光を照射するように配置されている。光源51は、例えば、図1に示されるような照明ユニット50内に備えられ達ものであり得る。光源51は、例えば、赤色光、緑色光、青色光、白色光などの可視光、紫外光および赤外光、並びにこれらの中から選択される2つ以上の組み合わせなどの光を発する光源であり得る。光源51は、例えば、上述のような光を照射することができる有機EL、LEDまたはレーザーなどであり得る。光源は、半導体センサチップと固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。半導体センサチップと固定されていない光源は、上述のような光を発する光源を備える公知の何れかの照明装置に備えられたものであってもよい。そのような照明装置は、例えば、インキュベータ、チャンバまたは暗室などに内蔵されたものなどであり得る。
第2の実施形態
より好ましい実施形態を図3(A)および(B)に示す。図3(A)は対向したセンサ面14と前記底部21との間に低屈折率層30を備える光学センサの一例の斜視図である。図3(B)は、図3(A)の光学センサをB−B’に沿って切断した断面図である。低屈折率層30は、底部21よりも屈折率の低い層である。低屈折率層30は、例えば、真空であるか、または底部21より屈折率の低い材料で満たされている。底部21より屈折率の低い材料は、例えば、空気またはメタマテリアルなどであり得る。低屈折率層30は、例えば、センサ面14と底部21とを間隔をあけて固定する複数の支持部材31を備えることによって形成され得る。支持部材31は円柱型または角柱型の棒状の部材であり、一方の端がセンサ面14に、他方の端が底部の下面に固定されている。支持部材31の高さは、低屈折率層を構成するセンサ面14と底部21との距離に依存して決定され得る。支持部材31の断面の最大差し渡し長は、センサ面14と底部21の間に所望の低屈折率層30が形成および維持され、かつ試料の光学的情報の検出に影響を与えない何れかの長さであり得る。そのような支持部材31の断面の最大差し渡し長は、例えば、100μm〜10mmであり得る。支持部材31の支持部材31の材料は、例えば、SiO2、ガラス、PDMSまたはエポキシ樹脂であり得る。
センサ面14と支持部材31と底部21とが一体物として形成されている場合、低屈折率層30は、例えば、図4に示される以下のような工程により形成され得る。
図4は、10の断面図である。まず、上述の方法で基板11、センシング部13、SiO2膜15、配線17、ビア18、窒化シリコン膜16を形成し、センサ面14を形成する(図4(a))。その上に支持部材31の材料を堆積して平坦化し、支持部材31が形成されるべき領域にマスクし、エッチングすることによって、支持部材31を形成する(図4(b))。その上から熱酸化膜形成を行ってもよい。エッチングによって取り除かれた支持部材31以外の部分に犠牲層32を堆積し、平坦化する(図4(c))。次に、底部21となる層を堆積し(図4(d))、その層に犠牲層32をエッチングするための穴33をあける(図4(e))。最後に、犠牲層32をエッチングする(図4(f))。
支持部材31は、センサ面14と底部21の間に所望の低屈折率層30が形成および維持され、かつ試料の光学的情報の検出に影響を与えない限り、いくつ備えられていてもよい。
更なる実施形態において、低屈折率層は、軸がセンサ面と直交する筒状の支持部材によって周縁を囲われていてもよい(図示せず)。その場合、当該支持部材によって、センサ面14と底部21とが間隙をあけて対向した状態で固定され得る。その場合、支持部材は備えなくてもよい。そのような支持部材は、と底部とは別に上述の支持部材と同様の材料から形成されてもよいし、と一体として形成されていてもよいし、試料収容部と一体として形成されてもよい。と一体として形成される場合、当該支持部材は、を形成した後にセンサ面上に半導体プロセスまたは射出成形によって形成され得る。試料収容部と一体として形成される場合、当該支持部材は、例えば、壁部を所望の低屈折率層の高さに応じて底部の下側まで伸ばすことによって形成されてもよいし、底部の下面から、筒状部材が下に延びるように射出成形によって形成されてもよい。
更なる実施形態において、試料収容部20は、間隔をあけて上下に配置された2枚の板状部材を一つの底部として備えるシャーレであってもよい。2枚の板状の部材は、上述の何れかの方法で間隙をあけて固定され得る。その2枚の板状部材の間隙が、低屈折率層であり得る。このようなシャーレは、上側の板状部材とセンサ面とが対向するようにシャーレの底面がセンサ面上に固定され得る。シャーレの底面とセンサ面は接着されていてもよいし、光学的情報が所望の精度で検出できる限りにおいて間隙をあけて固定されていてもよい。また、所望の精度で光学的情報が得られる限りにおいて、前記シャーレの底部は、板状部材を2枚以上備えていてもよい。
この様な光学センサは、半導体センサチップおよび試料収容部が脱着可能に固定されていてもよい。その場合、支持部材は半導体センサチップ側にあっても試料収容部側にあってもよい。
センサ面14から前記底部21までの距離を「D」とする(図3(B)参照)。Dの値が大きいほど、センシング部で検出される二次元的な位置情報の精度が低くなり得る。その理由は、底部に対して垂直でない角度で入射した分析対象からの光は、長い距離を進むほど、その光が発生した二次元的な位置から離れるからである。そのために、Dの値が大きいほど、位置情報と対応しない光学的情報が検出される可能性が高くなる。
Dは、例えば、0μm<D≦100μmであり得る。Dは、例えば、10μm以下であることが好ましい。その場合、半導体センサチップ10により取得され得るその位置情報がより正確になり得る。情報がイメージの場合、その解像度がより高くなり得る。
以上のような構成によって、以下、上述の何れかの光学センサによって光学的情報が検出される過程を図5(A)および(B)を用いて説明する。
図5(A)および(B)には、一例として、低屈折率層を備える光学センサを示した。図5(A)に示されるように、当該光学センサ1は、分析に使用される際、試料収容部20内に試料が収容される。図5(A)および(B)では、一例として、試料として細胞40を含む細胞保存液41を試料収容部20に収容した光学センサを示した。この場合、分析対象は細胞40である。分析が行われる際、光源51によって試料収容部20に光が照射され得る。当該光は試料収容部20の外側から壁部22に向けて照射され、壁部22を通過し、試料収容部20内に入射し得る。
試料収容部20内に入射した光のうち、細胞に当たった光52は、散乱し得る。散乱した光のうち、側方散乱した光が側方散乱光である。細胞40が蛍光色素を含み、光源51から照射される光が、当該蛍光色素の励起光であった場合は、光52により細胞40から蛍光が発生し得る。側方散乱光または蛍光のうち、底部の方向に進む側方散乱光52aまたは蛍光52bは、底部を通過して半導体センサチップ10に到達し、その進行方向上にあるセンシング部13によって検出され得る。これによって、側方散乱光52aまたは蛍光52bの発生した二次元的な位置が、それを検出したセンシング部13の二次元的な位置情報として反映され得る。このようにして、各センシング部13によって検出された光学的情報は位置情報と対応付けられ得る。
一方で、細胞に当たらない光は、細胞保存液41の上面(光53a)、底部21(光53b)、または反対側の壁部(光53b)などへ入射し得る。細胞保存液41の上面へ入射した光53aは、反射して底部21へ入射し得る。そのような光53abおよび底部21へ入射した光53bは、更に底部21の下へと入射し、センシング部13に到達し、検出され得る。光53aまたは光53bを以下、散乱光と称する。散乱光が検出されると、散乱光がノイズとなって細胞からの側方散乱光52aまたは蛍光52bとの区別がつきにくく、分析の精度が低くなり得る。しかしながら、光53aおよび53bを以下のような角度で照射すれば、図5(B)に示すように光53abおよび光53bがセンシング部に到達せず、試料収容部20の外に出ていくことが可能となる。そのような光53aおよび53bは、光53aが細胞保存液41の上面で全反射し、かつ光53abおよび光53bが、底部21の下へ入射した際に全反射するような角度である。そのような光53aおよび光53bの角度は、細胞40を含む細胞保存液41の上部へ入射する際の臨界角と、底部21の下へ入射する際の臨界角とのうち、より大きい方の角度以上の角度であり得る。光学センサが低屈折率層を備える場合には底部21の下に低屈折率層30が存在し、低屈折率層を備えない場合に底部21の下にセンサ面14が存在する。このような角度で光を試料に照射することによって、高価な検出器を用いることなく散乱光が効率的に取り除かれ、精度の良い分析が可能となる。これは、光が透過性の壁部を介して照射されることと、照射された光53a,53ab,53bを全反射させることを可能とする細胞保存液41および底部21を併せた層が存在することによって達成され得る。そのような層の存在は、光学センサ1が上述のような構成の試料収容部を有することから達成され得る。
低屈折率層30が存在することで、低屈折率層30が存在しない場合よりもより多くの角度の光が、底部21の下に入射した際に全反射し得る。したがって、このような構成を備えることにより、センシング部に到達する散乱光を減少させることが可能となる。
更なる実施形態において、図6に示されるように、上述の光学センサ1は、試料収容部20の底部21の上面21aに、更にレンズアレイ60を備え得る。レンズアレイ60は、凸面を上方に向けてマトリックス状に並んでいる複数のマイクロ凸レンズ61を含む。マイクロ凸レンズの直径は、例えば、1μm〜10μmであり得る。マイクロ凸レンズの高さは、例えば、1μm〜10μmであり得る。
底部21にレンズアレイ60を形成は、例えば、図7に示される以下の工程により行われ得る。
上述の方法で形成された底部21(図7(a))の上面に、マイクロ凸レンズ61となる高屈折率材料61aを塗布してパターニングする(図7(b))。次に高屈折率材料61aを熱で変形させることによってレンズ状にし、紫外線照射または加熱により高屈折率材料61aを硬化させる(図7(c))。その後、低屈折率材料62を高屈折率材料61a上部に塗布し、その表面をスピンコートなどで平坦化する(図7(d))。高屈折率材料、低屈折率材料は、例えば、屈折率の異なる樹脂などであり得る。
上面にレンズアレイを有する底部として、公知のマイクロレンズアレイを用いてもよい。そのようなマイクロレンズアレイは、例えば、浜松ホトニクス社製または凸版印刷社製のものなどであり得る。
マイクロ凸レンズは試料からの光を屈折させて集めることにより、センサ面14から前記底部21までの距離Dが長い場合であっても、位置情報の精度を高めることが可能となる。
更なる実施形態において、試料収容部20は、間隔をあけて上下に配置された2枚の板状部材を一つの底部として備え、底部上面に上述のマイクロレンズアレイを備えるシャーレ、ディッシュまたはマルチウェルプレートであってもよい。その2枚の板状部材と壁部とで区画された領域が、低屈折率層である。このシャーレの外側底面がセンサ面に対向して固定されることによって、実施形態に従う光学センサが形成され得る。
上記の散乱光のようなノイズとなる光は、底部21に存在するキズ、穴などによっても発生する可能性ある。このような光もセンシング部に到達することで、分析の精度を低くし得る。ノイズとなるような光をより多く取り除き、分析の精度を更に上げるために、例えば、以下の光学センサが用いられ得る:散乱光が到達する半導体センサチップ上の領域にセンシング部を配置しない光学センサ、センサ面の一部を遮光する遮光部材を備える光学センサ、レンズを備える壁部を備える光学センサ、壁部の一部を遮光する遮光膜を備える光学センサ、またはフィルタを有する光学センサ。以下、このような実施形態について詳細に説明する。
第3の実施形態
図8は、更なる実施形態の一例であるセンシング部13に散乱光が到達する領域70にセンシング部13を備えない光学センサ1の断面図である。図8には、低屈折率層を備え、試料として細胞40を含む細胞保存液41を試料収容部20に収容した光学センサを示した。散乱光が到達する領域70は、半導体センサチップ10上の領域であり、それは、例えば、第1または2の実施形態の半導体センサチップ10を使用する場合に散乱光53がそのセンシング部13に到達し得る領域である。このような領域70は、例えば、底部21への入射角がより小さい散乱光53が到達し得る光源51側の領域、または細胞保存液41の上面で反射して底部21に入射した散乱光53が到達し得る光源51と反対側の領域などであり得る。光源51からの光の角度または種類、あるいは細胞保存液41の種類、低屈折率層30の厚さ、種類などによって決定され得る。
更なる実施形態における半導体センサチップ10は、第4の実施形態に記載する穴、キズおよび/または支持部材による散乱光が到達する領域にもセンシング部13を備えない。
このような構成によって、センシング部によって検出が望まれない光、例えば散乱光などが検出されるのを防止することが可能である。
第4の実施形態
図9に、更なる実施形態の一例であるセンサ面14上の散乱光が到達する領域71に遮光部材72を備える上述の何れかの光学センサの断面図を示す。当該散乱光は、例えば、光源51から照射され分析対象の細胞40に当たらずに底部21に入射した際に発生した散乱光53、支持部材31によって発生する散乱光54、底部21の穴33によって発生する散乱光55、または底部21上のキズ34によって発生した散乱光56であり得る。支持部材31、穴33、またはキズ34によって発生する散乱光54,55,56が到達し得る領域71は、例えば、キズ34の周囲0μm〜10μmの領域、穴33の周囲0μm〜10μmの領域、または支持部材31の周囲0μm〜10μmの領域であり得る。
遮光部材72は、例えば、金属であり得る。金属は、Al、またはCuであり得る。遮光部材72のセンサ面と垂直な方向に延びる厚さは、例えば、0.1μm〜3μmであり得る。このような遮光部材72は、例えば、上述の金属の膜をセンサ面14上の全体に堆積し、散乱光が到達し得る領域71以外の領域の金属膜をエッチングによって取り除き、SiO2等によって層間膜堆積し、平坦化を行うことにより形成され得る。
更なる実施形態において、遮光部材72は、センシング部13とセンサ面14との間に形成されていてもよい。遮光部材72は、例えば、光透過性部材15内に形成されていてもよい。また、一つの領域71が1つの連続した遮光部材によって遮光されていてもよいし、複数の遮光部材によって遮光されていてもよい。
このような構成によって、散乱光が半導体センサチップによって検出されるのを防ぎ、光学的情報およびその位置情報を精度よく取得することができる。
図9には、一例として低屈折率層を備える当該光学センサを示したが、低屈折率層を備えなくてもよい。
第5の実施形態
図10(A)に、実施形態の一例である、半導体センサチップ10に、その側面がテーパーを有する遮光部材72を備える光学センサの断面図を示した。このような遮光部材72は、センシング部13の上面よりも上で、かつセンサ面14より下に位置し得る。図10Aには、一例として低屈折率層30を備える当該光学センサを示した。
図10(B)は、図10(A)の囲いBの部分を上から見たときのセンシング部13と遮光部材72の位置関係を示す模式図である。他の部材は省略した。この図では、便宜上隣接した6つのセンシング部13a〜13fと、遮光部材72aおよび72bの一部とを示した。遮光部材72aは、センシング部13a,13b,13cを含むセンシング部の列とセンシング部13d,13e,13fを含むセンシング部の列との間に備えられている。遮光部材72bは、センシング部13d,13e,13fを含むセンシング部の列とセンシング部13g,13h,13iを含むセンシング部の列との間に備えられている。遮光部材72aおよび72bは、それぞれの長手方向が、光源51から照射される光53に直交するように配置されている。遮光部材72aは、上から見てセンシング部13a,13b,13cを含むセンシング部の列とセンシング部13d,13e,13fを含むセンシング部の列との間に配置されている。更なる実施形態において、遮光部材72aは、センシング部13a,13b,13cの真上に位置していてもよいし、上から見て遮光部材72aの一部がセンシング部13a,13b,13cと重なるように配置されていてもよい。これは、遮光部材72b,72cについても同様である。しかしながら、上から見た際に、遮光部材と遮光部材との間には、センシング部の少なくとも一部が露出している。そのような配置によって、遮光部材と遮光部材との間に分析対象からの検出されるべき光が入射し、そこに位置するセンシング部でその光を検出することができる。このような遮光部材の長手方向へ延びる長さは、10μm〜10mmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。この長さは、半導体センサチップの大きさによって決定され得る。遮光部材の長手方向と直交する方向の幅は、1μm〜10μmであり得るが、この範囲に限定されるものではない。このような遮光部材と遮光部材との間隔は、0.1μm〜10μmであり得る。当該間隔は、センシング部の大きさに依存して決定され得る。
図10(C)は、図10(B)のC−C’に沿って切断したときの断面図である。遮光部材72aおよび72bは、底面と上面がセンサ面と平行であり、側面はテーパーを有する。遮光部材の上面と側面とでなす二面角は90℃よりも大きく、上面端部から底面に下ろした垂線と側面とのなす角αは、0<α<90である。また、遮光部材の底面と側面とでなす二面角の内角βは、90°より小さい。したがって、遮光部材72aおよび72bの図10(B)のC−C’に沿って切断した断面は、上底が下底よりも短い台形である。しかしながら、断面は底面がセンサ面と平行であり、頂点がセンサ面側に位置する三角形でもよい。遮光部材72aおよび72bは、例えば、その大きさおよび形状が互いに等しく、センサ面までの距離も等しくてもよい。このような遮光部材72a,72bは、半導体プロセスによって形成され得る。
このような形状の遮光部材72によって、特定の角度φでセンサ面14に入射した散乱光が、センシング部13によって検出されるのを防ぐことが可能となる。特定の角度φは、光が遮光部材72aと72bとの間を通り抜けられる角度より小さい。このような角度φは、φ≦tan−1(h/d)の条件を満たす角度である。hは、遮光部材72aおよび72bの高さである。dは、遮光部材72aの底面の遮光部材72bに最も近い点から、遮光部材72bの上面の遮光部材72aに最も近い点から底面に下ろした垂線と底面との交点までの距離である。断面が三角形である場合、dは、遮光部材72aの底面の遮光部材72bに最も近い点から、遮光部材72の断面の三角形の頂点から底面に下ろした垂線と底面との交点までの距離である。かつ、特定の角度φは、光が遮光部材の側面に当たった際にセンシング部へ向かう方向へ反射しない角度である。このような角度φは、φ≦2α条件を満たす角度である。
更なる実施形態において、角度αは、遮光部材の半導体センサチップ上の位置に応じて互いに異なっていてもよい。更なる実施形態において、当該遮光部材は、センサ面14に対して垂直な方向に複数層形成されていてもよい(図示せず)。
このような角度αを有する側面を備えることによって、複数の連続していない遮光部材を用いた場合であっても、センシング部に入射する散乱光を減少させることが可能である。
このような光学センサは、低屈折率層を備えなくてもよい。そのような光学センサを図10(D)に示す。低屈折率層が存在しない場合、低屈折率層に代わって上述のような遮光部材72が散乱光のセンシング部13への到達を防止し得る。それにより分析対象の検出が可能となる。そのような光学センサ1は、第1の実施形態に記載した光学センサの半導体センサチップ10に上述のような遮光部材72を備えるものであり得る。
更なる実施形態において、このような遮光部材は、側面に上述のようなテーパーを有する上述の配線であってもよい。
第6の実施形態
図11Aは、更なる実施形態の一例である、壁部22Aに更にレンズ23Aを備える光学センサ1の断面図である。当該光学センサ1は、壁部22Aにレンズ23Aを備えること以外は上述の何れかの光学センサと同じであり得る。
レンズ23Aは、少なくとも光源51から試料までの光路上にある壁部22Aの領域を含む所望の領域に備えられる。壁部22Aのそのような領域に配置されたレンズ23Aを通過することによって、光源51から照射された光57は、底部21とほぼ平行な角度に収束する。このように光を屈折させるレンズは、例えば、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、プリズムレンズまたはこれらの何れかの組み合わせなどであり得る。
このようなレンズの立体的な形状は、円盤状、球状、扁平球状、あるいは円柱または角柱などの柱状などであり得る。図11Aには、レンズ23Aが、円盤状の両凸レンズである光学センサを示した。このようなレンズ23Aは、例えば、円盤の一方の面23aが光源51側を向き、他方の面23bは試料収容部20の内側を向き、その主平面23cが底部21に対して垂直になるように配置され得る。ここにおいて、「主平面」は、レンズを通過する前の光の光路およびレンズを通過した後の光路の交点によってなる仮想上の面とする。レンズ23Aがこのように配置されることによって、面23aに光源51からの光が入射する。
図11Bには、レンズが、底面が台形の四角柱状のプリズムレンズである光学センサの断面を示した。四角柱状のレンズ23Bの軸は光57に対して直交し、かつ底部21に対して平行に配置され得る。図11Bに当該レンズ23の軸に直交する断面を示す。当該断面は台形であり、その長い方の底辺23dは光源51側を向き、短い方の底辺23eは試料収容部20の内側を向いている。すなわち、図11Bに示される辺23dで表される側面は光源51側を向いている。このようなレンズ23Bを備えることで、前記台形の脚である辺23fおよび23gで示される側面に入射した光57が底部21とほぼ平行な角度に屈折される。
底面が台形の四角柱状のプリズムレンズの配置される向きは、図11Bに示される向きに限定されるものではない。例えば、台形の長い方の底辺23dによって表される側面が光源側を向いていなくてもよい。そのようなレンズを備える光学センサの一例の断面図を図11Cに示した。図11Cに示される底面が台形の四角柱状のプリズムレンズ23Cは、台形の長い方の底辺23hによって表される側面が上側を向き、短い方の底辺23iによって表される側面が半導体センサチップ側を向くように配置されている。この場合、光源側を向く辺23jによって表される面に光源51から光57が照射され得る。光57は、当該レンズ23Cによって底部21と平行な角度に屈折され得る。このようなレンズ23Cの光源側を向く側面および試料収容部内部を向く側面は、そのどちらか一方が底部21に対して垂直であってもよい。
レンズは、壁部の高さ方向の全てに亘る領域を占めるように配置されていてもよい。その場合壁部として、その所望の領域が上述の何れかのレンズの機能を有するように加工されたものを用いてもよい。
レンズは、壁部の全体的な形状に沿うように湾曲または屈曲していてもよい。すなわち、試料収容部を規定している壁部全体が円筒状の場合、その円筒周面の湾曲に沿うように当該レンズが湾曲していてもよい。また、壁部全体が角筒状の場合、その角筒周面の屈曲に沿うように当該レンズが屈曲していてもよい。
レンズは、壁部の所望の領域に対応するように一つ備えられていてもよいし、複数備えられていてもよい。円盤状のレンズが複数備えられる場合、それらは、例えば、円筒または角筒をなす壁部の、周面の一部の領域または1つの側面からなる領域若しくは複数の側面に亘る領域をカバーするようにアレイ状に配置され得る。柱状のレンズが複数備えられる場合、それらは、例えば、その軸が互いに平行になるように壁部の高さ方向に並ぶように配置され得る。
レンズは、壁部の試料収容部の外側となる面に固定されていてもよく、壁部の試料収容部の内側となる面に固定されていてもよく、壁部を貫通するように配置されていてもよい。
壁部がこのようなレンズを備えることによって、分析対象に当たらずに底部に入射してセンシング部に到達する光を減少させることが可能である。それによって分析対象からの光学的情報を精度よく取得することができる。
このような光学センサは、低屈折率層を備えても備えなくてもよい。低屈折率層が存在しない場合、低屈折率層に代わって上述のようなレンズが散乱光のセンシング部への到達を防止し得る。それにより分析対象の検出が可能となる。そのような光学センサは、第5の実施形態に記載した光学センサであって、壁部が、上述のレンズを備えるものであってよい。その場合、第5の実施形態の遮光部材を備えていても備えていなくてもよい。
第7の実施形態
図12は、実施形態の一例である光学センサの断面図である。図12は、上述の何れかの光学センサの壁部22側面の一部が遮光膜24によって覆われている光学センサ1を示す。図12は一例として、低屈折率層30を備える当該光学センサを示した。また、細胞40を含む細胞保存液41を試料として試料収容部に含む。遮光膜24は、例えば、照明ユニット50に備えられた光源51から照射される可視光、紫外光、または赤外光などを遮光できる公知の何れかの膜であり得る。当該実施形態において、壁部22の遮光膜24によって覆われない領域25は、照射される光の量、光の種類および/または、光源と壁部との距離などに依存して決定され得る。そのような領域は、底部と平行な帯型、丸型、多角形型またはスポット状などであり得る。遮光膜は、少なくとも光源から試料までの光路上にある壁部22を覆うように備えられ得るが、壁部22の外側の側面全体を覆うように用いられてもよい。また、壁部22の外側側面または内側側面を覆っていてもよいし、外側側面の覆われた領域に対応した内側側面の領域も覆っていてもよい。
照明ユニット50の光源51が壁部22から離れているほど、照射された光の底部21への入射角が大きくなるため、センシング部に到達する散乱光が減少し得る。好適な光源51と壁部22の距離は、領域25の形または大きさに依存して変化し得る。したがって、所望の光学的情報およびその位置情報の精度によって、光源51と壁部22との距離と領域25の形および大きさの関係を決定することが好ましい。
上述のような遮光膜を備え、光をより壁部から離れたところから照射することによって、分析対象に当たらずに底部21に入射してセンシング部に到達する光を減少させることが可能である。そのため、分析対象からの光学的情報をより精度よく取得することができる。
このような光学センサは、低屈折率層を備えなくてもよい。低屈折率層が存在しない場合、低屈折率層に代わって上述のような遮光膜が散乱光のセンシング部への到達を防止し得る。それにより分析対象の検出が可能となる。そのような光学センサは、第5の実施形態に記載した光学センサであって、その壁部が上述のように遮光膜によって遮光されたものであり得る。その場合、第5の実施形態に記載した遮光部材を備えなくてもよい。
第8の実施形態
図13の(A),(B)および(C)に、更なる実施形態であるセンシング部13と底部21との間にフィルタ300を備える光学センサの底部21と半導体センサチップ10の拡大断面図を示した。図13の(A),(B)および(C)には、一例として低屈折率層30を備える当該光学センサを示した。
当該光学センサのフィルタ300は、例えば、図13(A)に示されるように、センシング部13とセンサ面14との間に形成されてもよい。また、図13(B)に示されるように、半導体センサチップの最上部に形成されてもよい。更に、図13(C)に示されるように、底部21の下に形成されてもよい。フィルタ300は、半導体プロセスにより形成されてもよい。または、図13(B)に示されるフィルタ300の場合、半導体センサチップを形成する際に最上面に形成されてもよい。あるいは、図13(C)に示されるフィルタ300は、底部の下面に接着されることによって形成されてもよい。
当該フィルタは、特定の波長を透過または吸収するフィルタであり得る。それは、例えば、励起光を吸収し、蛍光を透過するフィルタであり得る。その場合、蛍光色素を含む分析対象からの蛍光を効率的に検出することができる。
フィルタは、例えば、無機フィルタおよび/または有機フィルタであり得る。無機フィルタは、例えば多層フィルタまたはプラズモンフィルタである。多層フィルタは、低屈折材と高屈折材とを交互に堆積したものである。例えば、低屈折材として酸化シリコン膜、高屈折材として酸化ジルコニウムを用いた場合、各膜の厚さは、酸化シリコン膜が62nm±5nm、酸化ジルコニウム38nm±5nmであることが好ましい。このような多層膜は、510nmの波長に対して360nm±30nmの波長の光を良好に反射することができる。具体的には、前記2種の酸化膜を対として30積層することにより1/100000の除去比を得ることができる。有機フィルタは、顔料または染料から作ることができる。
この様なフィルタを備えることによって、分析対象に当たらずセンシング部に到達する光が遮光され、精度よく分析対象の光学的情報が得られ得る。
更なる実施形態において、一つの半導体センサチップに異なる2種類以上のフィルタを備えてもよい。それによって異なる波長の光を一度に分析することが可能となる。
上述の何れかの光学センサは、必ずしも低屈折率層を備えなくてもよい。低屈折率層が存在しない場合、低屈折率層に代わって上述のようなフィルタが散乱光のセンシング部への到達を防止し得る。それにより分析対象の検出が可能となる。そのような光学センサは、第5の実施形態に記載した光学センサであって、上述のようなフィルタを備えたものであり得る。その場合、第5の実施形態に記載した遮光部材を備えなくてもよい。
第5〜第8の実施形態に記載した低屈折率層を備えない光学センサは、更に、第5〜第8の実施形態に記載した散乱光のセンシング部への到達を防止するための部材の何れかを組み合わせて備えていてもよい。そのような光学センサは、例えば、半導体センサチップに第5の実施形態に記載の遮光部材を備え、かつ壁部に第6の実施形態に記載のレンズを備える。または、例えば、半導体センサチップに第5の実施形態に記載の遮光部材を備え、かつ壁部に第7の実施形態に記載の遮光膜を備える。または、例えば、壁部に第6の実施形態に記載のレンズと第5の実施形態に記載の遮光部材とを備える。または、半導体センサチップに第5の実施形態に記載の遮光部材を備え、壁部に第6の実施形態に記載のレンズと第5の実施形態に記載の遮光部材とを備え得る。以上のような光学センサは、更に第8の実施形態に記載のフィルタを備えていてもよい。そのような光学センサは、更に第1の実施形態に記載の半導体センサチップおよび/または第3の実施形態に記載の遮光部材を備えていてもよい。
第9の実施形態
図14の(A)および(B)に、更なる実施形態の光学センサの一例の断面図を示す。当該光学センサは、上述の何れかの光学センサに更に流路を備える。図14の(A)は、流路90を備えた光学センサ1を示している。図14の(A)には、一例として低屈折率層を備える当該光学センサを示した。当該光学センサは、低屈折率層を備えなくてもよい。図14の(B)は、図14の(A)の光学センサ1をB−B’に沿って切断した際の断面図である。図14(A)および(B)に示されるように、当該光学センサ1の底部21は内部に、流路90を備える。流路90は、底部21の上面21aより下かつ底部の下面21bより上に位置し得る。流路90は、例えば、円筒であってもよいし、断面が多角形である角筒であってもよい。図14(A)に示されるように、流路90は、例えば、その長軸が底部21と平行であって、複数の流路90が互いに平行に並ぶように配置され得る。しかしながら、流路90の配置パターンはこれに限定されるものではない。例えば、流路90に直交する複数の更なる流路(図示せず)を備えるように、複数の流路が格子状に交差した形状であってもよい。
図14(B)の囲いCの部分の拡大図である図14の(C)に示されるように、流路90の内部と試料収容部20の内部とは、開孔91によって連絡している。更なる実施形態において、開孔91は、蓋部材93によって開閉されてもよい。そのような開閉は、例えば、電磁気スイッチなどによって行われ得る。電磁気スイッチは、例えば、メカニカルエレクトリカルマイクロスイッチ(MEMS)などであり得る。図14の(C)は、そのようなスイッチによって開かれている開孔91の1例を模式的に示している。図14の(D)は、開孔が閉まっているときの開孔91の1例を模式的に示している。電磁気スイッチを有する開孔91は、例えば、開孔91の周辺に配置された電極92aと、開孔側に電極92bを有する蓋部材93と、蓋部材93と流路90の壁とをつなぐ複数のばね94とを有し得る。このような構成により、当該スイッチは、電極92aに電圧を印加した際に蓋部材93の電極92bが開孔91に引き寄せられ、開孔91を塞ぐことができる。電極92aに電圧がかかっていないときは、ばね94によって蓋部材93が開孔91から引き離され、開孔91が開く。
この様な構成を有する流路90によって、試料収容部20の二次元領域上の特定の位置に存在する試料に所望の薬品を送達するか、または二次元領域上の特定の位置に存在する試料を回収することができる。薬品は、分析対象に、変化または破壊などをもたらす薬品であり得る。変化は、例えば、分性対象が細胞であった場合、細胞の色、細胞内での遺伝子の発現量あるいは細胞または細胞に含まれる物質の不活性化などであり得る。そのような薬品は、公知の何れかの薬品であり得る。
流路を有する光学センサは、更なる実施形態において、更にチャンバを備え得る。図15(A)に示されるように、当該チャンバ95は、底部21内の流路90よりも上に配置され得る。図15(B)は、図15(A)の囲いBの部分の拡大図である。図15には、一例として、試料として細胞40を含む細胞保存液41を収容した光学センサを示した。チャンバ95は、底部21の上面21aより下かつ流路90より上に位置し得る。チャンバは、例えば、中空の直方体であってもよいし、中空の球体であってもよい。チャンバ95は、縦横に所望の数で行列をなして配置され得る。チャンバの位置は、細胞40の位置と対応していてもよい(図示せず)。そのようなチャンバは、例えば、細胞40の一つに対して一つ備えられており、当該細胞40の下方に備えられ得る。当該実施形態における流路90は、流路90の内部と、チャンバ95の内部を連結する開孔91を有する。開孔91は、上述の開孔と同様のものであり得る。開孔91の開閉は、上述と同様の機構によって行われ得る。チャンバ95は、チャンバ95の内部と試料収容部20の内部とを連絡する貫通孔96を有する。
この様な構成を有するチャンバ95と流路90によって、試料収容部20の二次元領域上の特定の位置に存在する試料に対して処理を行うことが可能である。処理は、例えば、試料の加熱、破壊、またはPCR反応等であり得る。加熱は、例えば、ナノワイヤを内部に有するチャンバによって行われ得る。試料の破壊は、例えば、内部に電極を有するチャンバによって電気穿孔法などによって行われ得る。破壊された試料は、流路によって回収され得る。PCR反応は、試料が生物学的試料である場合にチャンバで行われ得る。例えば、流路によって反応に必要な試薬をチャンバ内に送達させ、同時にまたはその前後にチャンバ上方に位置する試料からチャンバ内に核酸を回収し、温度管理をすることにより行われ得る。得られた増幅産物は流路によって回収され得る。
以上のような流路または流路およびチャンバを備える光学センサは、低屈折率層を備えなくてもよい。そのような光学センサは、低屈折率層に代わって散乱光のセンシング部への到達を防止する第5〜第8の実施形態に記載した部材の何れかを組み合わせて備え得る。
更なる実施形態において、上記のような低屈折率層を備えない流路または流路およびチャンバを備える光学センサにおいて、壁部は脱着可能であり得る。そのような光学センサは、底部が試料を配置するための試料台として機能し得る。このような光学センサによって分析される試料は、例えば粘性のある試料、少量の液体である試料、または固体の試料などであり得る。そのような光学センサは、例えば、低屈折率層の代わりに散乱光のセンシング部への到達を防止する第5の実施形態の遮光部材および/または第8の実施形態に記載したフィルタを備え得る。
また、このような実施形態に基づき更なる実施形態が提供され得る。そのような実施形態について以下に説明する。
第10の実施形態
図16(a)に、更なる実施形態の光学センサの一例の断面図を示す。当該光学センサ1は、半導体センサチップ10と光透過性の試料台26とを備える。半導体センサチップ10は、基板11と複数のセンシング部13とを備える。複数のセンシング部13は、基板11の一方の主面上の二次元領域に上方を向いてマトリックス状に並んでおり、前記二次元領域に対応する一つのセンサ面14を提供している。半導体センサチップ10は、第4の実施形態の遮光部材および/または第7の実施形態に記載したフィルタを備えていてもよい。試料台26は、前記センサ面14よりも上方に複数のセンシング部13と対向して位置し、内部に流路90およびチャンバ95を備える。流路およびチャンバは、第8の実施形態に記載したものであり得る。そのような前記チャンバは前記流路よりも上方に位置し得る。前記チャンバ内部と前記流路内部とは、開閉可能な開孔を通じて連絡していてもよい。更に、前記チャンバ内部と前記試料台の上部とは、更なる開孔を通じて連絡していてもよい。前記試料台26は、上述の何れかの底部と寸法、形状、および材料が同じであり得る。
当該光学センサ1は、チャンバを有していなくてもよい。その場合、前記流路内部と前記試料台上部とが開孔を通じて連絡している。
このような光学センサは、第8の実施形態に記載の壁部が取り外された流路または流路およびチャンバを備える光学センサと理解されてもよい。
このような光学センサは、半導体センサチップのセンサ面と試料台の底面の間に上述の実施形態に記載の低屈折率層を備えていてもよい。
このような光学センサにより、分析対象に当たらずに前記底部を通過し得る光が検出されるのを防止することができると共に、当該光学センサで観察された分析対象に関する更なる試験を簡便に行うことが可能である。
またこのような実施形態に基づいて、次のような更なる実施形態も提供され得る。そのような実施形態を図16(b)および図16(c)に示す。図16(b)は、実施形態の光学センサ1の斜視図であり、この光センサ1の線B−B’に沿った断面図を図16(c)に示す。
この光センサ1は、流路90およびチャンバ95を備えないことを除いて図16(a)の実施形態と同様の構成を有している。即ち、当該光学センサ1は、半導体センサチップ10bと光透過性の試料台26Bとを備える。半導体センサチップ10Bは、基板11Bと複数のセンシング部13Bとを備える。複数のセンシング部13Bは、基板11の一方の主面上の二次元領域に上方を向いてマトリックス状に並んでおり、前記二次元領域に対応する一つのセンサ面14Bを提供している。半導体センサチップ10Bは、第4の実施形態の遮光部材および/または第7の実施形態に記載したフィルタを備えていてもよい。試料台26Bは、前記センサ面14bよりも上方に複数のセンシング部13Bと対向して位置している。
このような光センサ1は、複数のセンシング部13Bのそれぞれが、略直上に存在する試料からの光をセンシングするように構成されており、またこの場合、試料への光照射は、試料台26B上面への入射角が臨界角以上となる角度でなされ得る。
このような光学センサによって、分析対象に当たらずに前記底部を通過し得る光が検出されるのを防止することができる。
第11の実施形態
更なる実施形態において、上述のような光源は、上述の何れかの半導体センサチップと固定されて備えられ得る。
固定された光源を備える光学センサは、図17Aに示される以下のような構成を有する。当該光学センサ1は、支持板100と、支持板100に固定された光源501とを含む。光源501は、例えば、図17Aに示されるように照明ユニット500内に備えられたものであり得る。支持板100は、半導体センサチップ10の基板11の下面に固定され得る。光源501は、半導体センサチップ10の方向を向けて固定され得る。そのような支持板100は、光透過性であり得る。当該支持板100は、例えば、SiO2、またはガラスエポキシなどであり得る。当該支持板100の厚さは、例えば、100μm〜2mmであり得る。支持板100は、半導体センサチップ10と照明ユニット500と接着剤などによって接着される。
更なる実施形態において、図17Bに示すように、光源501は壁部220B中に備えられていてもよい。その場合、壁部220Bは、底部21に平行して試料収容部の外側へと延びる厚さを有する。光源501はこのような厚さを有する壁部220B内に配置される。壁部220Bの厚さは所望に応じて選択され得る。光源501および照明ユニット500は壁部220B内に埋め込まれていてもよく、その場合、壁部220B内部の光源501および照明ユニット500以外の部分は、壁部220Bを形作っている材料で満たされている。このような壁部220Bは、支持板100の上面および/またはセンサ面14から延びていてもよい。そのような壁部220は、例えば、樹脂などであり得る。光源501が壁部220の内部にあることで、光源501と空気との界面を減らし散乱光を低減することができる。
更なる実施形態において、壁部220は、試料収容部20内へ入射する光502を底部21とほぼ平行な角度に収束させるように構成されていてもよい。例えば、光502の一部の成分の進行方向を変更する部材が壁部220内の光路上に備えられ得る。または、壁部220の前記光路上の少なくとも一部の領域がそのような機能を奏する形に加工されていてもよい。光を収束する部材は、例えば、第6の実施形態に記載された何れかのレンズまたは第7の実施形態に記載の何れかの遮光膜などであり得る。壁部220が光を収束するように加工されている場合、壁部の試料収容部20の内側を向く面の光路上の領域が、例えば、第6の実施形態のレンズの機能を有するように加工されていてもよい。
図17Cに、更なる実施形態として壁部220の試料収容部20内部に向く面の光502の光路上の領域が、底部21に対して垂直より小さい角度を有する光学センサの一例の断面図を示す。このような壁部220は、第6の実施形態に記載のス11Cに示すレンズ23と同じ機能を有すると理解され得る。壁部220の一部の領域がこのような角度を有することにより、光502を底部21に対してほぼ平行な角度に屈折させることができる。
分析装置
実施形態に従うと、上述のような光学センサを含む分析装置が提供される。以下、分析装置について図18を参照して説明する。
図18(A)に示されるように分析装置は、分析対象を分析するための装置であって、上述の何れかの光学センサと、上述の光源を含む照明ユニットと、マニピュレータと、光学センサの半導体センサチップおよびマニピュレータと電気的に接続された制御部とを備える。電気的な接続は、有線による接続であっても、無線での接続であってもよい。光学センサは、分析対象の二次元的な位置情報と対応した光学的情報を取得し、それを電気信号として制御部に送る。位置情報と対応付けた光学的情報は、イメージとしても取得され得る。制御部は、前記半導体センサチップによって取得された光学的情報と、それらに対応付けられた位置情報と、それらについて予め決定された閾条件とに基づいて、前記マニピュレータによって処理されるべき領域を決定し、それに従い前記マニピュレータを操作する。制御部は、処理装置、記憶装置、入力部、画像処理部、出力部、無線電波発信/受信部を備えていてもよい。制御部は、例えば、コンピュータであってもよい。マニピュレータによって処理されるべき領域を決定は、自動で行われてもよいし、出力部に出力された情報に基づいて手動で行われてもよい。
マニピュレータは、特定の位置に存在する分析対象に特定の処理を行うユニットである。特定の処理は、例えば、分析対象の回収、加熱、破壊、不活性化、および/または薬品の投与などであり得る。マニピュレータは上述の処理を行うマニピュレータツールを備え得る。マニピュレータツールは、例えば、ピンセット、レーザー、マイクロシリンジおよび/またはマイクロニードルなどであり得る。当該分析装置は、上述した流路およびチャンバをマニピュレータとして備えてもよい。マニピュレータは、更にマニピュレータツールを制御部からの指示に従って動作させる機構(動作機構)を備え得る。
更なる実施形態において、制御部は、図18(B)に示されるように、更に照明ユニットにも電気的に接続されていてもよい。その場合、制御部は、光源から発せられる光のオンおよびオフを制御し得る。更なる実施形態において、制御部は、前記半導体センサチップによって取得された情報に基づいて前記光学センサに照射されるべき光の量および/または種類を決定し、それに従って前記照明ユニットから発せられる前記光の量および/または種類を調節する機能も有する。光学センサに照射されるべき光の量および/または種類の決定は、自動で行われてもよいし、出力部に出力された情報に基づいて手動で行われてもよい。
上述のような分析装置は、図19に示される以下のような手順で使用され得る。
まず、試料収容部内に分析対象を含む試料を収容する(S1)。分析対象が細胞である場合は、この状態のままインキュベータ内などで培養されてもよい。次に、暗室において、試料収容部に向けて光を照射することで、分析対象に光を照射する(S2)。その後、予め記憶させたプログラムに従って、制御部の制御によりセンシング部が試料に関する光学的情報を取得する(S3)。制御部の制御の下でセンシング部は、取得した結果を電気信号に変換して制御部に送る(S4)。制御部は、信号を受け取り、電気信号が得られたセンシング部の二次元領域上での位置を検出する(S5)。工程S5は、工程S3と同時に行われてもよい。その場合、光学的情報と位置情報は、同時に制御部に送られ得る。制御部は、受け取った電気信号と、予め決定された閾条件とを比較する(S6)。次に、制御部は、比較の結果に基づいて、与えられた電気信号が閾条件を満たすか否かを判断する(S7)。制御部は、工程S3からS7まででなる処理ループを繰り返し、イメージを生成する(S8)。制御部の制御下で、S7の判断の結果、閾条件を満たすセンシング部の位置に対応する領域に対して、その閾条件に割り当てられた処理をマニピュレータに行わせる(S9)。
このような分析装置により、より簡便に分析対象からの光学的情報を分析することおよび/または分析結果に基づいて分析対象を処理することが可能となる。
更なる実施形態において、上述した何れかの分析装置は、試料収容部の壁部と底部を有さない。当該分析装置を用いて試料を分析する場合、試料は、半導体センサチップ上に配置され、上述の光源によって直接に光を照射されうる。このような分析装置を用いて、上述のS3〜S9の工程により、分析対象からの光学的情報を分析することおよび/または分析結果に基づいて分析対象を処理することが可能である。
光学センサの回路構成
図20および図21は、実施形態に係る光学センサの回路構成について、その概要例を示している。
光学センサは、マトリックス状に並んだ複数のセンシング部13を備える半導体センサチップ10と、ロウコントローラ2と、読み出し回路3とを備える。
隣接した複数のセンシング部13は、1つの基本ブロックBを構成し得る。したがって、半導体センサチップ10は、複数の基本ブロックBを備え得る。複数の基本ブロックBは、例えば、互いに同じ回路構成を有する。本例では、基本ブロックBは、4つのセンシング部S0,S1,S2,S3を備えるが、基本ブロックBに含まれるセンシング部13は、2以上の何れかの数でありうる。
ロウコントローラ2は、マトリックス状に配置されたセンシング部のデータ検出動作を制御する。例えば、ロウコントローラ2は、各センシング部からのデータの読み出し順を制御する。
例えば、ロウコントローラ2は、イネーブル信号ENと刺激信号STとリセット信号RTと転送信号SLを発生する。
イネーブル信号EN、刺激信号ST、リセット信号RT、および転送信号SLは、ロウ方向に並ぶ複数の基本ブロックに共通に与えられる。ここでロウコントローラ2から供給されるイネーブル信号EN、刺激信号ST、リセット信号RT、および転送信号SLは、それぞれ行毎に時間的に異なってもよい。より具体的には、ある行に供給される信号パターンから所定の時間遅延したタイミングで、次の行に同様の信号パターンが供給されてもよい。
図20に示されるイネーブル信号EN[0:3][i](i=0、1、…)、刺激信号ST[0:3][i](i=0、1、…)、リセット信号RT[0:3][i](i=0、1、…)、および転送信号SL[0:3][i](i=0、1、…)の、[i](i=0、1、…)で表記される第2の括弧書きの番号は行番号を表している。図21および以下の説明では行毎に時間的に異なる信号が供給されているものとして、第2の括弧書きの番号は省略する。
基本ブロックBに与えられる信号をイネーブル信号EN[0:3]、刺激信号ST[0:3]とすると、イネーブル信号EN[0]および刺激信号ST[0]は、センシング部S0に与えられ、イネーブル信号EN[1]および刺激信号ST[1]は、センシング部S1に与えられる。また、イネーブル信号EN[2]および刺激信号ST[2]は、センシング部S2に与えられ、イネーブル信号EN[3]および刺激信号ST[3]は、センシング部S3に与えられる。
リセット信号RT[0:3]は、センサからの検出信号を増幅するアンプの入力電圧をリセットする信号である。転送信号SL[0:3]は、アンプの出力信号を読み出し回路3に転送する信号である。
基本ブロックBに与えられる信号をリセット信号[0:3]、転送信号SL[0:3]とすると、リセット信号RT[0]および転送信号SL[0]は、センシング部S0に与えられ、リセット信号RT[1]および転送信号SL[1]は、センシング部S1に与えられる。また、リセット信号RT[2]および転送信号SL[2]は、センシング部S2に与えられ、リセット信号RT[3]および転送信号SL[3]は、センシング部S3に与えられる。
センシング部S0、センシング部S1、センシング部S2、センシング部S3はそれぞれ、出力信号Vo0、出力信号Vo1、出力信号Vo2、出力信号Vo3を、読み出し回路3に出力する。
図20に示される出力信号Vo0[i](i=0、1、…)、出力信号Vo1[i](i=0、1、…)、出力信号Vo2[i](i=0、1、…)、出力信号Vo3[i](i=0、1、…)で表記される括弧書きの番号は列番号を表している。図20では列毎に出力信号が読み出し回路3に出力されているものとして、括弧書きの番号は省略する。
図21は、センシング部の回路例を示している。iは、0,1,2,3のうちの1つである。
センシング部は、リセット信号RT[i]に基づき、アンプBの入力をリセット電圧VR、例えば、電源電圧Vddにリセットするスイッチ素子SW2と、イネーブル信号EN[i]に基づき、フォトダイオード(受光素子)PDiからの検出信号をアンプBに転送するスイッチ素子SW3と、転送信号SL[i]に基づき、アンプBの出力信号Voを有効化するスイッチ素子SW4とを備える。
図23は、基本ブロックの回路例を示している。
本例は、基本ブロックB内のセンシング部S0〜S3について、アンプBをリセットするスイッチ素子(リセットトランジスタ)SW2およびアンプBの出力信号を有効化するスイッチ素子SW4を共有化した点に特徴を有する。
センシング部S0は、電極E0と、刺激信号ST[0]に基づき、電極E0に刺激電圧Vsを印加するスイッチ素子SW10と、イネーブル信号EN[0]に基づき、電極E0からの検出信号をアンプBに転送するスイッチ素子SW30とを備える。
センシング部S3は、電極E3と、刺激信号ST[3]に基づき、電極E3に刺激電圧Vsを印加するスイッチ素子SW13と、イネーブル信号EN[3]に基づき、電極E3からの検出信号をアンプBに転送するスイッチ素子SW33と、を備える。
センシング部S1,S2は、例えば、図22のフォトダイオードPDiおよびスイッチ素子SW3を備える。
基本ブロックBは、更に、共通リセット信号RTcommonに基づき、アンプBの入力をリセット電圧VRにリセットするスイッチ素子SW2と、共通転送信号SLcommonに基づき、アンプBの出力信号Voを有効化するスイッチ素子SW4とを備える。
このような回路により各センシング部からデータ読み出す順番は、所望に応じて任意に決定すればよい。
また上述した回路は、センサ素子からの信号の読み出しを制御する読み出し制御回路として、センサ素子毎にそれぞれ接続されていてもよく、複数のセンサ素子が1つの回路に接続されていてもよく、信号の読み出しがスイッチによる切り替えにより行われてもよい。また、そのような読み出し制御回路は、更に、センサ素子からの信号の読み出し順を制御するコントローラと、前記コントローラの制御の下で、前記センサ素子からの当該信号を外部に出力する出力回路とを備えてもよい。
センサ素子からの信号の読み出しを制御する読み出し制御回路に加えて、光学センサは、センシング部からの信号についてA/D変換が必要な場合など、所望に応じてA/D変換回路を更に備えてもよい。また更に、読み出し制御回路に加えて、光学センサは、センシング部からの信号を予め設定した手順に従って処理する信号処理回路を備えてもよい。信号処理回路は、処理回路とも称され、例えば、時間積分、オートゼロイング、チョッピング、相関二重サンプリング、および/または相関多重サンプリングなどの処理が行われる。また、光学センサは、そこにおいて得られた結果を外部に送信する通信回路を更に備えてもよく、測定条件、測定手順、試料との対応付けおよび/または得られた結果などを格納するメモリ回路、光学センサに電気を供給する電源回路などを更に前記基板上に備えてもよい。光学センサが備える回路は、上述の何れの回路であってもよく、それら何れかの組み合わせであってもよい。
以上に記載した光学センサおよび分析装置は、試料収容部に含まれる収容物(即ち、試料)からの光学的情報を検出するためのセンサである。光学センサによるセンシングによって得られる試料からの光学的情報から、試料収容部に含まれる分析対象に関する情報が得られる。分析対象は、収容部内に存在する試料の全てであってもよいし、収容部内に含まれる試料の一部分であってもよい。分析対象が試料の一部である場合、例えば、分析対象は媒体中に含まれて収容部内に存在し得る。
試料は、それに光が照射されたときに、光学的情報を得ることのできる試料であればよい。光学的情報とは、例えば、光の有無、強度および/または波長などに関連する情報であり得る。このような光学的情報を得ることによって、分析対象に関する情報例えば、分析対象の有無、形態、分布、濃度あるいは挙動などが得られる。
試料は、例えば、生物学的試料、環境由来の試料、食物または飲料由来の試料、工業由来の試料、化学物質、またはこれらの何れかの組み合わせなどであり得る。
そのような試料は、空気よりも高い屈折率を有するものであり、例えば、流体、固体、粘性体またはこれらの何れかの組み合わせなどであり得る。
分析対象は、それに光が当たることによって光が側方散乱し得る流体、固体、粘性体またはこれらの組み合わせなどであり得る。あるいは、分析対象は、蛍光色素を含む流体、固体、若しくは粘性体、または蛍光色素自体であり得る。そのような分析対象は、例えば、流体の媒体に含まれる固体、粘性の媒体に含まれる固体、流体の媒体に含まれる粘性体、流体の媒体に含まれる蛍光色素、固体の媒体に含まれる蛍光色素、粘性体の媒体に含まれる蛍光色素、または流体の第1の媒体に含まれる粘性体の第2の媒体に含まれる蛍光色素などであり得る。
媒体は、光透過性であり、それに光が当たることによって分析対象と同じ光学的情報を有する側方散乱光、または蛍光を発生するような成分を含まない流体、または粘性体等であり得る。
試料が上述の性質を持つ分析対象を含まない場合、即ち実施形態の光学センサによって側方散乱光または蛍光が検出されない場合でも、それらの光以外でセンシング部に到達する光によって、当該試料の有無および/または種類が分析されてもよい。
分析対象は、例えば、細胞を含み得る。細胞は、例えば、動物または植物由来のものであり得る。あるいは、細胞は、細菌類、菌類、菌類の胞子またはウイルスなどであってもよい。そのような細胞は、生体組織切片、単離細胞、培養細胞、培養組織、細胞膜、血液、血漿、血清、尿、便および粘膜などの生物学的試料由来の細胞であり得る。
「単離細胞」とは、動物または植物などの多細胞生物体から採取され、単離された細胞、あるいは多細胞生物体または環境から単離された単細胞生物などを指す。「培養細胞」とは、単離された後に、培地または緩衝液中などで任意の時間に亘り維持された細胞を指す。「単離組織」とは、何れかの生体から採取され、単離された組織、または細胞内若しくは細胞外などに存在する細胞構成成分などを指す。単離組織は、単離組織を切断して得られる切片であってもよい。「培養組織」とは、上記単離組織を培地または緩衝液中などで任意の時間に亘り維持したものを指す。
分析対象が細胞である場合、試料は、媒体として、細胞保存液を含み得る。細胞保存液は、分析時まで細胞に分析結果に関わる変化をもたらさない機能を有する。「分析結果に関わる変化をもたらさない」とは、例えば、細胞の形態の分析を目的としている場合に細胞の形が変化しない、または、細胞の生死の分析を目的としている場合に細胞が死なないことなどを意味する。細胞保存液は、例えば、液体、またはゲルなどであり得る。そのような細胞保存液は、例えば、水、生理的食塩水、緩衝溶液または公知の何れかの培地などであり得る。
分析対象が細胞である場合、実施形態の光学センサによって、例えば、細胞の有無、生死、形態、分布、機能並びに分析対象細胞に関連する物質の分布、濃度および挙動などに関する情報が得られ得る。
分析方法
実施形態に従うと、更に、上述のような光学センサまたは分析装置を用いた分析方法が提供される。以下分析方法について図24を用いて説明する。図24は、分析方法を表した概念図である。
当該分析方法は、以下の工程を含み得る。
(A)分析対象201を含む、その上部202および下部203よりも屈折率が高い高屈折率層204の上面205と下面206の間に、高屈折率層204の上部202および下部203への入射角が臨界角以上となる角度で光207を照射し、分析対象201に光を当てることと、
(B)高屈折率層204の下部203において、前記分析対象201からの光を検出し、位置情報に対応付いた光学的情報を得ること。
各工程について以下に説明する。
工程(A)は、高屈折率層204に含まれる分析対象201に、光を当てる工程である。高屈折率層204は、その上部202および下部203よりも屈折率が高い層である。高屈折率層204は分析対象201を含む。分析対象201は、上述の性質を有する。高屈折率層204の上面205と下面206の間に、光が照射され得る。光は、それが高屈折率層204の上部202へ入射する際の入射角θ1の臨界角または下部203へ入射する際の入射角θのより大きい方の臨界角以上となる範囲の角度で照射され得る。そのことによって、光は、分析対象201に当たらない場合、高屈折率層204の上面205および/または下部203で全反射し高屈折率層204の中にとどまり、光源と反対側に進み得る。分析対象に当たった光は、側方散乱し得る。また分析対象が蛍光色素を含み、光が当該蛍光色素の励起光である場合、分析対象に光が当たると分析対象から蛍光が発せられ得る。側方散乱光および蛍光は、高屈折率層204の下部に入射し得る。
(B)層の下部における分析対象からの光とその位置情報の検出
工程(B)は、工程(A)で生じた分析対象からの光から、位置情報に対応付けられた光学的情報を検出する工程である。光学的情報は、上述したものと同様であり得る。そのような検出は、高屈折率層の下部203に位置し、高屈折率層の下面206と対向し、センサ面14を備える光センサによって行われ得る。このようにして得られた光学的情報およびその位置情報から、上述のような分析対象に関する情報が得られ得る。
更なる実施形態において、当該高屈折率層204は、上述の試料収容部に収容された試料と底部とを併せたものであり得る。この場合、試料収容部の外側から試料収容部の壁部に向けて上述の角度の光を照射することによって、照射された光は壁部を通過し、試料に入射し得る。この光は、分析対象に当たり得る。また、分析対象に当たらない光が底部を通過することが防止され得る。また、底部の下に上述のような低屈折率層を設ける方法、レンズを備える壁部を用いる方法、または壁部の一部を遮光する遮光膜を用いる方法、分析対象に当たらない光が底部を通過することが更に防止され得る。また、分析対象に当たらない光は、試料収容部の底部を通過して、更に高屈折率層の下部へと出て行き得る。分析対象に当たった光は、上述のように側方散乱光または蛍光として底部の下に入射し得る。
光センサは、例えば、上述のような半導体センサチップであり得る。その場合、上述の散乱光が到達する半導体センサチップ上の領域にセンシング部を配置しない方法、センサ面の一部を遮光する遮光部材を用いる方法、またはフィルタにより散乱光を遮る方法を用いることによって、分析対象に当たらずに前記底部を通過し得る光が検出されるのを防止することができる。
更なる実施形態において、分析方法は、
(A)光学センサのセンサ面上またはそれよりも上方に位置しており、複数のセンシング部と対向して位置している光透過性の底部と、前記底部の上面またはその一部の領域を取り囲むように前記底部周縁または底部上面からその上方に向けて任意の高さまで延び、所望に応じた厚さを有する光透過性の壁部とを備える試料収容部内に収容されている、分析対象を含む試料に対して前記壁部を通して光を照射することと、
(B)前記センサ面において前記分析対象からの光を受光することにより、前記分析対象からの位置情報と対応付いた光学的情報を得ることとを含む。
[例]
上述の光学センサと同様の光学センサを作成し、使用した例について図25を参照して以下に記載する。
まず、分析対象である蛍光色素を含むビーズ310を水301と混合した。水301を二枚のガラス板302、303の間に挟み、試料とした。また、水301のみを二枚のガラス板302、303に挟んだものを比較対象として用意した。図1と同様の半導体センサチップ10をそれぞれの試料の下部に間隙304をあけて配置した。試料の底面305と半導体センサチップ10のセンサ面14までの距離は、5mmであった。間隙は、空気で満たされていた。それぞれの試料の外側から、試料の側面に向けて4段階の強度の同じ波長の励起光を照射した。各強度の光を照射した後、半導体センサチップ10によりセンシングされた光の強度を測定した。その結果を図26に示した。ビーズを含む試料において、ビーズを含まない試料よりも強い光が測定された。目視によっても、ビーズを含む試料で蛍光が観察された(図示せず)。ビーズを含まない試料においては、光を照射した際に測定された光の強度は0luxの場合とほとんど変わらなかった。したがって、照射した励起光のほとんどがガラス板と水の中に閉じ込められ、ビーズ中の蛍光色素から発せられた光またはビーズに当たった散乱光が効率よくセンシングされることが示唆された。したがって、実施形態の光学センサにより、分析対象の光学的情報が得られることが明らかとなった。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
二次元領域にマトリックス状に並んでセンサ面を形成する、複数のセンシング部と、
前記複数のセンシング部と対向して位置し、光透過性の底部を有する試料収容部と、
を備える光学センサ。
[2]
更に、前記センサ面と前記底部との間に低屈折率層を備える[1]に記載の光学センサ。
[3]
前記底部は、内部に流路を備え、前記流路内部と前記底部上部とが開孔を通じて連絡している[1]または[2]に記載の光学センサ。
[4]
分析対象を分析するための装置であって、
前記分析対象を含む試料についての光学的情報をその位置情報と対応付けて取得する[1]〜[3]の何れか1つに記載の光学センサと、
前記試料収容部の外側から前記試料収容部の内部に光を照射する照明ユニットと、
マニピュレータと、
前記光学センサと前記マニピュレータとが電気的に接続されており、前記光学センサによって取得された光学的情報と、それらに対応付けられた位置情報と、それらについて予め決定された閾条件とに基づいて、前記マニピュレータによって処理されるべき領域を決定し、決定された領域に対して前記マニピュレータを操作させる制御部と
を備える分析装置。
[5]
前記光学センサと、前記照明ユニットとが支持板の上面に固定されている[4]に記載の分析装置。
[6]
(A)分析対象を含む、その上部および下部よりも屈折率が高い高屈折率層の上面と下面の間に前記高屈折率層の当該上部および当該下部への入射角が臨界角以上となる角度で光を照射し、当該分析対象に光を当てることと、
(B)前記高屈折率層の当該下部において、前記分析対象からの光を検出し、位置情報に対応付けられた光学的情報を得ることと
を含む分析方法。