JP6599635B2 - 加熱処理条件の推定装置およびその方法、核酸断片化システムおよびその方法ならびにコンピュータプログラム - Google Patents
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Description
本発明は、加熱処理条件の推定装置およびその方法、これらを用いた核酸断片化システムおよびその方法ならびにコンピュータプログラムを提供する。
を備え、関係式が、式(I):
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは加熱温度、Dは加熱処理の開始温度を示す)で表わされる式であり、制御部は、入力部によって入力が受け付けられた情報と、記憶部に記憶された対応関係情報及び関係式とに基づき、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する、加熱処理条件の推定装置を含む。
本発明の第2の側面は、加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する装置であって、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける入力部と、所望の平均ヌクレオチド長、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報、並びに、所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式を記憶する記憶部と、制御部とを備え、関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは加熱時間を示す)で表わされる式であり、制御部は、入力部によって入力が受け付けられた情報と、記憶部に記憶された対応関係情報及び関係式とに基づき、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する、加熱処理条件の推定装置を含む。
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは加熱温度、Dは加熱処理の開始温度を示す)で表わされる式である加熱処理条件の推定方法を含む。
本発明の第5の側面は、加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する方法であって、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と;所望の平均ヌクレオチド長の情報と;所望の平均ヌクレオチド長、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報と;所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式に基づき、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する工程を含み、関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは加熱時間を示す)で表わされる式である、加熱処理条件の推定方法を含む。
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは加熱温度、Dは加熱処理の開始温度を示す)で表わされる式である、コンピュータプログラムを含む。
本発明の第8の側面は、加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定するために、コンピュータに、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける機能、及び、受け付けられた情報;所望の平均ヌクレオチド長、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報;並びに所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式とに基づき、加熱時間、加熱温度、緩衝剤の種類および試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する機能を実現させ、関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは所望の平均ヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは加熱時間を示す)で表わされる式である、コンピュータプログラムを含む。
図1に基づき、核酸断片化システムを説明する。
図1に示されるように、核酸断片化システム1は、推定装置2と、推定装置2と通信可能に接続された加熱装置3とを含んでいる。本実施形態において、推定装置2は、コンピュータ本体2aと、入力デバイス2bと、モニタ2cとを含むコンピュータシステムである。また、加熱装置3は、核酸を含む試料にマイクロ波を照射することによって試料を加熱するマイクロ波照射装置である。入力デバイス2bは、推定装置2の入力部として機能する。モニタ2cは、推定装置2の表示部として機能する。
推定装置2のコンピュータ本体2aは、図2に示されるように、CPU(Central Processing Unit)20と、ROM(Read Only Memory)21と、RAM(Random Access Memory)22と、ハードディスク23と、入出力インターフェイス24と、読出装置25と、通信インターフェイス26と、画像出力インターフェイス27とを備えている。CPU20、ROM21、RAM22、ハードディスク23、入出力インターフェイス24、読出装置25、通信インターフェイス26および画像出力インターフェイス27は、バス28によってデータ通信可能に接続されている。CPU20は、コンピュータ本体2aの制御部として機能する。ハードディスク23は、コンピュータ本体2aの記憶部として機能する。
(I) 所望のヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化エネルギーと、加熱温度と、加熱処理の開始温度との相関関係を示す関係式
(II)所望のヌクレオチド長と最小ヌクレオチド長と加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と加熱処理による核酸の断片化速度と加熱時間との相関関係を示す関係式
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは所望のヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは加熱温度、Dは加熱処理の開始温度を示す)
で表わされる関係式である。(II)の関係式は、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは所望のヌクレオチド長、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは加熱時間を示す)
であらわされる関係式である。かかる関係式を用いることにより、加熱処理によって核酸の断片化を行なう際の加熱処理条件を簡便に推定することができる。
入出力インターフェイス24は、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェイスと、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェイスと、D/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェイスとから構成されている。入出力インターフェイス24には、キーボード、マウスなどの入力デバイス2bが接続されている。操作者は、入力デバイス2bを使用することにより、コンピュータ本体2aにデータを入力することが可能である。
つぎに、図3および4に基づき、核酸断片化システム1による処理手順の概要を説明する。
図3に示されるように、まず、ステップS11において、推定装置2のCPU20は、画像出力インターフェイス27を介して、モード選択画面をモニタ2cに表示させる。このモード選択画面は、実用モードおよび条件提案モードのいずれかの選択をユーザに促すための画面である。
つぎに、ステップS22において、CPU20は、ユーザによって選択されたモードが温度一定モードであるか否かの判断を行なう。CPU20は、温度一定モードが選択されたと判断した場合(Yes)にはステップS23へ処理を進める。また、CPU20は、温度一定モードが選択されていないと判断した場合(No)にはステップS24へ処理を進める。
ステップS23では、CPU20は、後述の温度一定モードの処理を進める。また、ステップS24では、CPU20は、後述の時間一定モードの処理を進める。
条件提案モードでは、CPU20は、実用モードと同様に、図4に示される処理手順で、温度一定モードまたは時間一定モードの処理を進める。
条件提案モードにおける「温度一定モード」は、ユーザによって予め設定された加熱温度での加熱処理を行なうための加熱処理条件を推定装置2に提案させるモードである。また、条件提案モードにおける「時間一定モード」は、ユーザによって予め設定された加熱時間での加熱処理を行なうための加熱処理条件を推定装置2に提案させるモードである。
(1)温度一定モードの処理手順
つぎに、図5乃至図9に基づき、推定装置2による実用モードの温度一定モードの処理手順を説明する。
図5に示されるように、まず、ステップS101において、CPU20は、ハードディスク23から式(II)を取得する。
つぎに、図10および図11に基づき、推定装置2による実用モードの時間一定モードの処理手順を説明する。実用モードの時間一定モードでは、CPU20は、ユーザによる設定時間情報に基づき、加熱温度を推定する。
実用モードの時間一定モードの処理手順は、以下の点を除き、実用モードの温度一定モードの処理手順と同様である。
(A)図10のステップS201において、CPU20が、式(I)を取得すること。
(B)図10のステップS202において、CPU20が、ユーザに加熱処理時の設定時間情報の入力を求めること。
(C)図10のステップS203において、CPU20が、入力デバイス2bから入力された設定時間情報を取得すること。
(D)図10のステップS206において、CPU20が、式(I)のパラメータ値を決定すること。
(E)図11のステップS209において、CPU20が、対象核酸の長さの情報、式(II)および図10のステップS206で決定されたパラメータ値に基づき、加熱温度と核酸断片長との対応関係(推定対応関係)の出力を行なうこと。
(F)図11のステップS212において、CPU20が、ステップS211で入力された所望の核酸断片長の情報、式(I)およびステップ206で決定された式(I)のパラメータ値に基づき、加熱温度を推定すること。
(G)図11のステップS213において、CPU20が、ステップS212で推定された加熱温度の情報を出力すること。
図5乃至図11に示される実用モードの処理手順では、設定温度情報、対象核酸の情報、緩衝剤の情報、試料の情報、対象核酸の長さの情報などに基づく推定対応関係の提示後、ユーザに所望の核酸断片長の入力を求めている。しかし、推定対応関係を提示せずに、ユーザに所望の核酸断片長の入力を求めるように、実用モードの処理が進められてもよい。
(1)温度一定モードの処理手順
つぎに、図12乃至図16に基づき、推定装置2による条件提案モードの温度一定モードの処理手順を説明する。
図12に示されるように、まず、ステップS301において、CPU20は、ハードディスク23から式(II)を取得する。式(II)は、以下のステップにおいて、回帰直線の式として用いられる。
ステップS304では、フィッティングに際し、式(II)において入力されていない情報が存在する場合、CPU20により、ハードディスク23に記憶された処理条件ライブラリに含まれる加熱処理条件およびパラメータ値から、不足情報が補完される。CPU20は、式(II)において、入力されていない情報があると判断した場合、ハードディスク23から図15に示される処理条件ライブラリ700から不足情報を取得する。処理条件ライブラリ700は、図15に示されるように、対象核酸情報701、式(II)のパラメータ値情報702、試料導電率情報703、緩衝剤情報704および加熱温度情報705を含む。対象核酸情報701、パラメータ値情報702、試料導電率情報703、緩衝剤情報704および加熱温度情報705は、実験などで予め決定された情報である。対象核酸情報701、パラメータ値情報702、試料導電率情報703、緩衝剤情報704および加熱温度情報705は、それぞれ、対象核酸情報502、パラメータ値情報505、試料導電率情報504、緩衝剤情報503および加熱温度情報501と同様である。図15に示される処理条件ライブラリ700では、加熱処理条件およびパラメータ値が、対象核酸の種類に応じて大別されている。
フィッティングは、例えば、最小二乗法などにしたがって行なわれる。
ステップS306では、推定された加熱処理条件を、処理条件ライブラリ中のパラメータ値に近い順に推奨度のランク付けすることができる。この場合、ユーザに対し、パラメータ値に近い順に、推奨度の高い加熱処理条件を提案することができる。
つぎに、図17に基づき、推定装置2による条件提案モードの時間一定モードの処理手順を説明する。
条件提案モードの時間一定モードの処理手順は、以下の点を除き、条件提案モードの温度一定モードと同様である。
(a)図17のステップS401において、CPU20が、式(I)を取得すること。
(b)図17のステップS404において、CPU20が、式(I)に対し、ステップS403で取得された断片化曲線をフィッティングさせること。
(c)図17のステップS405において、CPU20が、式(I)に対し、図17のステップS403で取得された断片化曲線をフィッティングさせることができるか否かを判断すること。
上記と同様に、加熱処理条件のうちのいずれか1つの条件または複数の条件を一定とするモードを採用することもできる。この場合、推定装置2によれば、一定とされなかった加熱処理条件を推定結果として出力することができる。
<略語>
PBS: リン酸緩衝生理的食塩水〔組成:10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)および150mM塩化ナトリウム〕
10×PBS: 10倍濃度のリン酸緩衝生理的食塩水
1×PBS: 1倍濃度のリン酸緩衝生理的食塩水〔組成:10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)および150mM塩化ナトリウム〕
PB: リン酸カリウム緩衝液〔組成:62mMリン酸一水素二カリウムおよび38mMリン酸二水素カリウム、pH7.0〕
TE: 組成:10mMトリスおよび1mMエチレンジアミン四酢酸、pH7.5を有する緩衝液
STE: 組成:10mMトリス、1mMエチレンジアミン四酢酸および50mM塩化ナトリウム、pH7.5を有する緩衝液
(1)種々の加熱温度での加熱処理によるλDNAの断片化処理
10倍濃度のリン酸緩衝生理的食塩水(10×PBS)〔バイオラッド社製〕を滅菌水で希釈して1倍濃度のPBS(1×PBS)を得た。PBS 1500μLと、λDNA〔タカラバイオ(株)製、0.3μg/μL〕50μLとを水熱処理用ガラス容器中で混合した。得られた混合液のうち100μLの混合液を未処理試料(20℃でのλDNA含有試料)として分取した。つぎに、混合液が入った水熱処理用ガラス容器をマイクロ波合成反応装置〔マイルストーンゼネラル社製、商品名:MultiSYNTH〕にセットした。その後、120℃、140℃、160℃または180℃の加熱温度で10秒間の加熱処理を行ない、試料を得た。なお、加熱処理のサーマルプロファイルを、以下のように設定した。
<サーマルプロファイル>
下記(i−1)乃至(i−4)のステップ:
(i−1)30秒間で常温(20℃)から100℃までの昇温
(i−2)60秒間で100℃から所定の加熱温度までの昇温
(i−3)所定の加熱温度で10秒間の加熱
(i−4)20℃での冷却
実施例1の(1)で得られた試料15μLに電気泳動用緩衝液〔タカラバイオ(株)製、商品名:×6 Loading buffer〕3μLを添加し、電気泳動試料を得た。電気泳動装置〔インビトロジェン社製、商品名:垂直型ミニ電気泳動システム〕と、泳動ゲル〔インビトロジェン社製、商品名:6% TBE GEL、1.0mm、12ウェル〕と、ランニングバッファー〔1倍濃度のTBE(1×TBE)〕とを用い、電圧:200V下で23分間、各電気泳動試料およびマーカーの電気泳動を行なった。なお、マーカーとして、タカラバイオ(株)製、商品名:Wide−Range DNA Ladder(50−10000bp)およびタカラバイオ(株)製、商品名:λ−HindIII digestを用いた。また、1×TBEは、10倍濃度の核酸電気泳動用プレミックスバッファー(バイオラッド社製、商品名:10×TBE)を10倍希釈することによって調製した。
<分類基準>
高分子量領域のデータ点群:核酸断片長が30000bp以上のデータ点群
低分子量領域のデータ点群:核酸断片長が30000bp未満のデータ点群
logM=9.85−52.539×μ (III)
(式中、Mは核酸断片長、μは移動度を示す)
で表わされる直線(R値=0.98677)であることがわかった。また、図20の近似直線(B)は、式(IV):
logM=3.5962−1.9725×μ (IV)
で表わされる直線(相関係数R値=0.96802)であることがわかった。式(III)および(IV)中の各係数は、用いられる泳動ゲルの固さ、大きさなどによって変動すると考えられた。そこで、式(III)および(IV)を一般化し、式(V):
logM=a−b×μ (V)
(式中、Mは核酸断片長、μは移動度、aおよびbはカーブフィッテングで定まる任意の数を示す)
が得られた。
加熱温度を40℃、60℃、100℃、150℃、170℃または190℃に設定したことを除き、実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行ない、各温度での移動度スペクトルを得た。なお、加熱温度が100℃付近である場合、核酸が凝集することがわかった。つぎに、各温度での移動度スペクトル中のピークのうち、最も高いピークを示すバンドの移動度を泳動ゲル中のバンドの移動距離を測定および規格化することによって求めた。得られた移動度を式(III)または式(IV)に代入することにより、核酸断片長Mを算出した。核酸断片長Mから、logMを求めた。加熱時間およびlogMを、x軸が加熱温度であり、かつy軸がlogMである二次元座標上にプロットした。その結果を図21に示す。
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは核酸断片長(所望のヌクレオチド長)、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは加熱温度、Dは加熱処理の開始温度を示す)
で表わされることがわかった。図22に示された近似曲線は、温度Tの関数である。そこで、x軸の変数であるTの値を式(I)に適用することにより、式(I)におけるA、B、H、およびDを求めた。その結果、以下の通りであった。A=50、B=7.94×108、H=0.147およびD=100。得られたA、B、HおよびDは、79400bpのDNAを10秒間加熱する加熱処理が反映された値であった。したがって、式(I)への所望のヌクレオチド長の代入により、10秒間の加熱処理における加熱温度が求められることがわかった。よって、式(I)によれば、一定加熱時間での加熱処理において、所望のヌクレオチド長が得られる加熱温度が求められることがわかった。
核酸の種類および緩衝液を表1のように変更したことを除き、実施例1と同様の操作を行なった。その後、式(I)を用い、各条件に対する加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数を算出した。その結果を表1に示す。
加熱温度を140℃に固定し、加熱時間を種々の時間に設定したことを除き、実施例1の(1)および(2)と同様の操作を行ない、泳動ゲルのG励起での画像を得た。その結果を図23に示す。図中、レーンM1はマーカー〔タカラバイオ(株)製、商品名:λ−Hind III digest〕の電気泳動パターン、レーン1は未処理試料の電気泳動パターン、レーン2は120℃で0.15分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン3は120℃で3分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン4は120℃で10分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン5、7および8は140℃で0.15分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン6は140℃で3分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン7は140℃で10分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターンを示す。なお、加熱処理のサーマルプロファイルを、以下のように設定した。ここで、加熱時間とは、下記(ii−3)の加熱時間をいう。なお、(ii−4)における冷却を、試料への空気の吹き付けに伴う試料の放熱によって行なった。
<サーマルプロファイル>
下記(ii−1)乃至(ii−4)のステップ:
(ii−1)30秒間で常温(20℃)から100℃までの昇温
(ii−2)60秒間で100℃から120℃または140℃までの昇温
(ii−3)140℃で0.15乃至10分間の加熱
(ii−4)120℃または140℃から20℃への冷却
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは核酸断片長(所望のヌクレオチド長)、Aは最小ヌクレオチド長、Bは加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは加熱時間を示す)
で表わされることがわかった。図24に示された近似曲線は、時間tの関数であった。そこで、tの値を式(II)に代入することにより、式(II)におけるA、BおよびKを求めた。その結果、以下の通りであった。A=50、B=4.85×104およびK=2.5。得られたA、BおよびKは、48500bpのDNAを140℃で加熱する加熱処理が反映された値であった。したがって、式(II)への所望のヌクレオチド長の代入により、140℃での加熱処理における加熱時間が求められることがわかった。よって、式(II)によれば、一定加熱温度での加熱処理において、所望のヌクレオチド長が得られる加熱時間が求められることがわかった。
核酸の種類および緩衝液を表2のように変更したことを除き、実施例3と同様の操作を行なった。その後、式(II)を用い、各条件に対する加熱処理による核酸の断片化速度定数Kを算出した。その結果を表2に示す。
(1)種々の加熱温度での加熱処理によるλDNAの断片化処理
PB1.5mLにλDNA〔タカラバイオ(株)製、0.3μg/μL〕25μLを添加して混合液を得た。得られた混合液をオートクレーブ〔アズワン社製、商品名:サイエンスオートクレーブ NCC−1701〕に供し、95℃、121℃または132℃で20分間の加熱処理を行なった。
実施例5の(1)で得られた試料10μLを用いたことを除き、実施例1の(2)と同様の操作を行ない、泳動ゲルを得た。
(1)種々の加熱時間での加熱処理によるλDNAの断片化処理
リン酸緩衝液1.5mLにλDNA〔タカラバイオ(株)製、0.3μg/μL〕25μLを添加して混合液を得た。得られた混合液をオートクレーブ〔アズワン社製、商品名:サイエンスオートクレーブ NCC−1701〕に供し、132℃で5分間、10分間、15分間または30分間の加熱処理を行なった。
実施例6(1)で得られた試料10μLを用いたことを除き、実施例5の(2)と同様の操作を行ない、泳動ゲルの蛍光画像を取得した。その結果を図27に示す。図中、レーンM1はマーカー〔タカラバイオ(株)製、商品名:Wide−Range DNA Ladder(50−10000bp)〕の電気泳動パターン、レーンM2はマーカー〔タカラバイオ(株)製、商品名:λ−Hind III digest〕の電気泳動パターン、レーン1は未処理試料の電気泳動パターン、レーン2は5分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン3は10分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン4は15分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターン、レーン5は30分間の加熱処理後の試料の電気泳動パターンを示す。
2 推定装置
2a コンピュータ本体
2b 入力デバイス
2c モニタ
3 加熱装置
20 CPU
21 ROM
22 RAM
23 ハードディスク
24 入出力インターフェイス
25 読出装置
26 通信インターフェイス
27 画像出力インターフェイス
28 バス
40 記録媒体
500 処理条件ライブラリ
501 加熱温度情報
502 対象核酸情報
503 緩衝剤情報
504 試料導電率情報
505 パラメータ値情報
601 画面
602 画面
611 グラフ
612 コメント
613 コメント
614 データ点
615 コメント
700 処理条件ライブラリ
701 対象核酸情報
702 パラメータ値情報
703 試料導電率情報
704 緩衝剤情報
705 加熱温度情報
801 画面
802 画面
803 画面
811 描画領域
812 コメント
813 断片化曲線
814 許容誤差情報
816 推定断片化曲線
817 コメント
818 コメント
Claims (18)
- 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する装置であって、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、前記所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける入力部と、
前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報、並びに、前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化エネルギーと、加熱温度と、加熱処理の開始温度との相関関係を示す関係式を記憶する記憶部と、
制御部と
を備え、
前記関係式が、式(I):
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは前記加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは前記加熱温度、Dは前記加熱処理の開始温度を示す)
で表わされる式であり、
前記制御部は、前記入力部によって入力が受け付けられた前記情報と、前記記憶部に記憶された対応関係情報及び関係式とに基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する、加熱処理条件の推定装置。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する装置であって、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、前記所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける入力部と、
前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報、並びに、前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式を記憶する記憶部と、
制御部と
を備え、
前記関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは前記加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは前記加熱時間を示す)で表わされる式であり、
前記制御部は、前記入力部によって入力が受け付けられた前記情報と、前記記憶部に記憶された対応関係情報及び関係式とに基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する、加熱処理条件の推定装置。 - 前記入力部は、前記核酸の種類に関する情報の入力をさらに受け付ける、請求項1または2に記載の装置。
- 前記入力部は、前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長に関する情報の入力をさらに受け付ける、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
- 前記対応関係情報は、前記緩衝剤の種類と、前記試料の塩濃度と、前記加熱温度または前記加熱時間との対応関係を規定する処理条件ライブラリを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
- 前記制御部は、前記入力部によって入力が受け付けられた前記情報に基づき、前記記憶部から前記処理条件ライブラリを読み出し、前記処理条件ライブラリを用いて前記加熱処理による核酸の断片化の速度に関する定数を出力する、請求項5に記載の装置。
- 前記制御部は、前記処理条件ライブラリを用い、前記加熱処理で得られる核酸断片の最小ヌクレオチド長に関する情報を出力する、請求項5または6に記載の装置。
- 前記記憶部は、前記最小ヌクレオチド長に関する情報をさらに記憶している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
- 前記最小ヌクレオチド長が、10乃至80ヌクレオチド長である、請求項8に記載の装置。
- 前記加熱温度が90乃至200℃である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
- 前記制御部によって推定された加熱処理条件を出力する出力部をさらに備える、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
- 前記制御部は、
前記緩衝剤の種類に関する情報と、前記試料の塩濃度に関する情報と、前記加熱時間および加熱温度から選ばれた条件に関する情報とに基づき、前記選ばれた条件と、加熱処理によって得られる核酸断片の平均ヌクレオチド長との対応関係を示す情報を前記出力部に出力し、
前記対応関係を示す情報に基づいてユーザにより入力された前記所望の平均ヌクレオチド長に関する情報から、前記所望の平均ヌクレオチド長を有する核酸断片が得られる加熱処理条件をさらに推定する、
請求項11に記載の装置。 - 核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するシステムであって、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の加熱処理条件の推定装置と、
前記推定装置で推定された加熱処理条件の情報に基づき、前記核酸を含む試料を加熱する加熱装置と
を備える、核酸断片化システム。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する方法であって、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長の情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化エネルギーと、加熱温度と、加熱処理の開始温度との相関関係を示す関係式と
に基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する工程を含み、
前記関係式が、式(I):
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは前記加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは前記加熱温度、Dは前記加熱処理の開始温度を示す)
で表わされる式である、加熱処理条件の推定方法。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定する方法であって、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長の情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報と、
前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式と
に基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する工程を含み、
前記関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは前記加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは前記加熱時間を示す)で表わされる式である、加熱処理条件の推定方法。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化する方法であって、
請求項14又は請求項15に記載の方法によって推定された加熱処理条件に基づき、前記試料を加熱して所望の平均ヌクレオチド長に断片化する、核酸断片化方法。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定するために、コンピュータに、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、前記所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける機能、及び、
前記受け付けられた情報;前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報;並びに前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化エネルギーと、加熱温度と、加熱処理の開始温度との相関関係を示す関係式とに基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する機能
を実現させ、
前記関係式が、式(I):
M=A+B×exp{−H(T−D)} (I)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Hは前記加熱処理による核酸の断片化エネルギー定数、Tは前記加熱温度、Dは前記加熱処理の開始温度を示す)
で表わされる式である、コンピュータプログラム。 - 加熱処理によって核酸と緩衝剤とを含む試料中の前記核酸を所望の平均ヌクレオチド長に断片化するための加熱処理条件を推定するために、コンピュータに、
加熱時間、加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた1乃至3の加熱処理条件の情報と、前記所望の平均ヌクレオチド長の情報との入力を受け付ける機能、及び、
前記受け付けられた情報;前記所望の平均ヌクレオチド長、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度の相互間の対応関係を規定した対応関係情報;並びに前記所望の平均ヌクレオチド長と、最小ヌクレオチド長と、加熱処理前の核酸のヌクレオチド長と、加熱処理による核酸の断片化速度と、加熱時間との相関関係を示す関係式とに基づき、前記加熱時間、前記加熱温度、前記緩衝剤の種類および前記試料の塩濃度からなる群より選ばれた加熱処理条件を推定する機能
を実現させ、
前記関係式が、式(II):
M=A+B×exp{−Kt} (II)
(式中、Mは前記所望の平均ヌクレオチド長、Aは前記最小ヌクレオチド長、Bは前記加熱処理前の核酸のヌクレオチド長、Kは前記加熱処理による核酸の断片化速度定数、tは前記加熱時間を示す)で表わされる式である、コンピュータプログラム。
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