以下、図面に基づいて、本願の開示する無線通信プログラム、無線通信方法、無線基地局および無線通信システムの実施例を詳細に説明する。なお、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下の実施例は、矛盾しない範囲で適宜組みあわせてもよい。
図1は、実施例の無線通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示す無線通信システム1は、船舶5と、基地局100とを有する。また、船舶5は、通信端末10を有する。なお、図1には、複数の船舶5のうちの1つ、および、複数の基地局100のうちの1つを、それぞれ例示しているが、船舶5および基地局100の数は限定されず、任意の数の船舶5および基地局100を有するようにしてもよい。
複数の船舶5の通信端末10および複数の基地局100の間は、電離層Lの反射を利用した短波帯の電波により相互に通信可能に接続される。また、複数の基地局100の間は、図示しないネットワークを介して相互に通信可能に接続される。かかるネットワークには、有線または無線を問わず、インターネットを始め、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。また、当該ネットワークには、各基地局100との間で各種情報のやりとりを行う図示しないサーバが通信可能に接続される。
ここで、電離層Lの反射を利用した通信において、受信が困難となる状況が発生する場合がある。受信が困難となる状況の一例としては、フェージング現象等での混信、一部エラーの発生がある。フェージング現象には、干渉性フェージング、偏波性フェージング、跳躍性フェージング、吸収性フェージング、選択制フェージングおよびK型フェージングがある。干渉性フェージングは、無線通信の電波が届く経路が複数ある場合に経路差により生じるフェージングである。偏波性フェージングは、電離層に電波が反射するときなどに偏波面が変化することで生じるフェージングである。跳躍性フェージングは、電離層の密度の変動によって電波が電離層で反射されたり電離層を突き抜けたりすることにより生じるフェージングである。選択制フェージングは、電波の伝送経路における周波数選択性の媒質により減衰する帯域や減衰量が時間とともに変動することで生じるフェージングである。K型フェージングは、地球の等価半径係数(K)が気象条件などで変動し、電波の伝送経路の曲がり具合が変動することで生じるフェージングである。
無線通信システム1は、例えば、船舶5が沿岸から200海里以上離れた海域で操業する漁船であり、基地局100は、漁港の近隣に設けられた漁業無線協会に設置される基地局である。また、無線通信システム1では、例えば、各種情報を複数の船舶5に送信するために、海面をそれぞれ経度緯度1度ずつで区切ったエリアを設定する。基地局100は、エリア内に位置する船舶5に対して各種情報を送信する。なお、以下の説明では、基地局100から所定のエリア内に位置する複数の船舶5に一斉送信する場合、すなわち同報通信を、放送という場合がある。
基地局100は、所定のエリア内に位置する船舶5に対する情報を第一の送信条件で送信する。すなわち、基地局100は、所定のエリア内に位置する船舶5に対する情報を、第一の送信条件で放送する無線基地局である。第一の送信条件は、例えば、ボーレート(baudrate)を用いて、19600ボー(baud)とする。船舶5の通信端末10は、基地局100から送信された情報を受信すると、情報に対する誤り発生の有無、つまりエラーの有無を含む応答信号を、基地局100に対して送信する。なお、以下の説明では、応答信号は、Ack(Acknowledgment)電文、または、単にAckとも表現する。また、応答信号は、エラーの有無だけでなく、情報の放送電文内の文字数に基づくエラー率を含んでもよい。
基地局100は、所定のエリア内に位置する複数の船舶5から情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信する。基地局100は、応答信号を受信すると、複数の船舶5のそれぞれの船舶5からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する。基地局100は、所定の基準よりも電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、情報を第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う。なお、以下の説明では、電波強度の大きさの平均値を電波強度の平均値と表現し、情報についての誤り発生率をエラー率と表現する場合がある。所定の基準は、例えば、対象の船舶5から受信した応答信号のうち、エラー有りとする応答信号が50%以上である場合等が挙げられる。第二の送信条件は、例えば、第一の送信条件よりも変調レートが低い9600ボーとする。これにより、基地局100は、所定のエリア内に位置する複数の船舶5に対して通信の品質の変動を抑え、精度よく情報を送信できる。
続いて、無線通信システム1を構成する各構成要素について説明する。通信端末10は、通信部11と、記憶部12と、測位部13と、表示操作部14と、制御部15とを有する。なお、通信端末10は、図1に示す機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能部を有することとしてもかまわない。通信端末10の一例としては、タブレット端末、可搬型のパーソナルコンピュータ等を採用できる。
通信部11は、例えば、中波から短波あるいは超短波帯の無線機等によって実現される。通信部11は、電離層Lを介して複数の基地局100のいずれか1つ以上と無線で接続され、基地局100との間で情報の通信を司る通信インタフェースである。通信部11は、制御部15から入力された応答信号であるAck電文、位置情報を含む管理情報等を基地局100に向けて送信する。また、通信部11は、基地局100から送信された電波を受信して、放送電文等の各種情報を取得する。
通信部11は、中波から短波あるいは超短波帯の電波として、例えば、2MHz帯、4MHz帯、8MHz帯、12MHz帯、および、16MHz帯、30MHz帯および50MHz帯以上の超短波帯のうち1つ以上の周波数帯域を用いることができる。通信部11は、例えば、通信端末10の操作者によって陸地との距離および時間帯に応じて選択された周波数帯域を用いる。これは、中波、短波および超短波帯の電波の伝搬状況が、太陽活動や昼夜によって状態が異なる電離層Lの影響を受けるためである。なお、周波数の選択は、測位部13で測位して取得した位置情報に基づいて、代表的な基地局100までの距離を算出し、算出した距離、季節および時刻に応じて各周波数の重み付けを行い、より到達可能性の高い周波数を選択するようにしてもよい。また、周波数の選択は、各周波数帯域のバンド特性を考慮して選択する。
通信部11は、変調方式として、例えば、PSK(Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)等のデジタル変調を用いることができる。また、通信部11は、周波数が低い帯域では、例えば、PSK31等の変調方式を用いることができる。例えば、PSK31は、通信速度が31ボーと低速であるが、専有帯域が狭く、主にテキストデータを通信する短波帯でのデータ通信に適している。なお、通信部11は、制御部15との接続方法として、例えば、通信部11の制御にはRS−232Cを用いたシリアル通信を用いて、各種情報等のデータの授受には、音声入出力端子を用いて変調信号を入出力することができる。
記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスクや光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部12は、応答信号に含める各種情報、制御部15での処理に用いる情報等を記憶する。
測位部13は、衛星測位システムの信号を受信する。測位部13は、衛星測位システムとして、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、ガリレオ、および、コンパス等の全地球航法衛星システムの信号を受信して測位を行う。測位部13は、制御部15から測位を要求されると測位を行なって、測位結果をWGS(World Geodetic System)84等の測地系に基づいた位置情報として出力する。また、測位部13は、制御部15から連続して測位を続けるように要求されると、連続して測位を行なって、制御部15から停止を要求されるまで位置情報の出力を続ける。なお、測位部13は、衛星測位システムとして、準天頂衛星システム、インド地域航法衛星システム、DORIS(Doppler Orbitography and Radio-positioning Integrated by Satellite)、および、北斗等の地域航法衛星システムの信号を受信してもよい。
表示操作部14は、各種情報を表示するための表示デバイス、および、ユーザから各種操作を受け付ける入力デバイスである。例えば、表示操作部14は、表示デバイスとして液晶ディスプレイ等によって実現される。また、例えば、表示操作部14は、入力デバイスとして、タッチパネル等によって実現される。つまり、表示操作部14は、表示デバイスと入力デバイスとが一体化される。また、表示操作部14は、ユーザインタフェースとして、例えば、画面下部にキーボードを表示して、キー入力を受け付ける。表示操作部14は、ユーザによって入力された操作を操作情報として、制御部15に出力する。
制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、内部の記憶装置に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部15は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されるようにしてもよい。制御部15は、通信端末10全体を制御する。また、制御部15は、例えば、みなしGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)のために、1日3回以上、測位部13から位置情報を取得して、取得した位置情報を含む管理情報を、通信部11を介して基地局100に対して送信する。なお、GMDSSは、総トン数20トン以上の船舶に設置が義務付けられている無線通信システムであるが、総トン数20トン未満の漁船については、1日3回の位置情報の報告を行う「みなしGMDSS」により、GMDSSの設置が免除されている。
制御部15は、測位部13に対して測位を要求する。制御部15は、測位の要求として、1回のみの測位の要求と、連続して測位を続ける要求とのいずれかを測位部13に対して出力する。制御部15は、測位部13から測位の要求に応じた位置情報が入力されると、当該位置情報を電文フォーマットに挿入して管理情報である電文を生成する。制御部15は、生成した電文、すなわち管理情報を通信部11に出力する。なお、制御部15は、位置情報を、通信端末10が設置された漁船が所属する漁業無線協会内の装置でのみ復号化できるように暗号化してもよい。
また、制御部15は、TCG(Trusted Computing Group)技術を利用することで、情報の信ぴょう性を検証可能とし、セキュアな情報の送信を実現してもよい。ここで、TCG技術の一例について説明する。
外部と通信を行う端末、デバイスは常にセキュリティの脅威に曝され、ウィルス、スパイウェア、その他悪質なスクリプト、不正アクセス等により、プラットフォームを構成するソフトウェア構造に予期せぬ改変が加えられる場合がある。このようなリスクに対して、TCGでは、プラットフォームの信頼性を保障することにより、安全なコンピューティング環境を実現する。ここで、プラットフォームとは、ハードウェア、OS、アプリケーション等を示す。
例えば、ソフトウェアの改竄という脅威に対して、従来のソフトウェアに依存するセキュリティ対策には限界がある。このため、TCGでは、TPM(Trusted Platform Module)チップ(図示しない)をプラットフォームに埋め込み、かかるTPMチップを信頼のルートとして、改竄が極めて困難な、信頼できるコンピューティング環境を構築している。また、TPMチップを利用することで、ハードウェアベースのデータ・証明書の保護、安全な暗号処理環境を実現できる。
次に、TPMチップについて説明する。TPMチップは、電子機器(例えば通信端末10)にバインドされるバードウェアのチップであり、耐タンパ性を持つ。TPMチップは電子機器から取り外しができないように、電子機器の主要な構成パーツに物理的にバインドされる。例えば、電子機器の構成パーツは、マザーボード等に対応する。TPMチップは、実装される機能、メモリ領域、プロセッサ・パワーを極力抑えて設計されているため、低コストで製造でき、様々な電子機器やプラットフォームに適用できる。
例えば、TPMの機能には、RSA(Rivest Shamir Adleman)秘密鍵の生成・保管する機能、RSA秘密鍵による署名、暗号化、復号する機能が含まれる。RSAでは、秘密鍵と公開鍵とのペアを作成する。また、TPMの機能には、SHA−1(Secure Hash Algorithm 1)のハッシュを演算する機能、電子機器の環境情報を保持する機能が含まれる。TPMは、バインドされた電子機器が起動した時点で、BIOS、OSloader、OSカーネルへのブートプロセスにおけるソフトウェアコードを計測し、計測したソフトウェアコードをハッシュ化して、TPM内部のレジスタに登録する。また、TPMは、バインドされた電子機器のハードウェアの情報を収集し、ハードウェアの情報をハッシュ化して、TPM内部のレジスタに登録する。
TCG技術では、上位のアプリケーションやライブラリからハードウェア・デバイスであるTPMチップを利用するためソフトウェア・スタックとソフトウェアインタフェースを規定する。このソフトウェア・スタックはTSS(TCG Software Stack)と呼ばれ、リソースが制限されるTPMチップの機能を保管するソフトウェアモジュールから構成されている。電子機器のアプリケーションは、TSSの提供するインタフェースを利用して、上述したTPMチップの機能にアクセスすることができる。TPMチップは、顧客システム側のTPMチップでハッシュ値を採取する際のルールをハッシュ化及び署名付与して管理することで、ハッシュ値採取の正当性を担保するものである。しかも、TPMチップは、必要に応じて、現時点でのルールおよび署名をチェックすることで、ルールの非改竄性を証明する。すなわち、制御部15にかかる処理および情報についての信ぴょう性が検証可能となる。その結果、TPMチップは、TPMチップ側で非改竄性が証明されたルールを参照しながら運用することでハッシュ値を採取する際のルールに改竄がないことを保証する。
また、制御部15は、TPMチップがハッシュ化および署名付与した情報を電文フォーマットに挿入し、管理情報である電文を生成してもよい。この場合には、生成された電文を受信した装置(例えば、船舶5が所属する漁業無線協会内の装置)において、制御部15にかかる処理および情報についての信ぴょう性を検証することができる。
制御部15は、基地局100から送信された情報である放送電文が通信部11から入力されると、放送電文から放送情報を抽出して記憶部12に記憶するとともに、表示操作部14に表示させる。なお、制御部15は、放送電文をデジタルサンプリングした無線信号として記憶部12に記憶し、無線信号を所定の複数のボーレートのそれぞれで解析して放送情報を抽出するようにしてもよい。また、制御部15は、放送電文についてエラーの有無を判定し、エラーの有無を含むAck電文を通信部11に出力する。
図2は、電文フォーマットの一例を示す図である。図2に示す電文フォーマット21は、例えば、通信端末10が、みなしGMDSSで用いる管理情報を送信するための電文フォーマットの一例である。図2に示すように、例えば電文フォーマット21は、「Char code」、「format ver」、「Message Type」、「name of a vessel」、「Call Sign」、「nationality」、「prefectures」、「Geographic Point Location」、「Parity」といった項目を有する。なお、図2の電文フォーマット21は、例えば、1マスが1バイトである。また、図2に示す電文フォーマット21の長さは、一例として104バイトであるが、これに限定されず、任意の長さとすることができる。さらに、電文フォーマット21は、他の各種情報に対応する項目を設けてもよい。
「Char code」は、文字コード系を示す。「format ver」は、電文フォーマット21のバーションを示し、フォーマット変更に対応するための項目である。「Message Type」は、メッセージタイプを示し、例えば、自動、手動、要求送信、緊急といったメッセージの種別を表す。「name of a vessel」は、通信端末10が設置された船舶5の船名または識別情報を表す。なお、「name of a vessel」は、文字数に余裕があれば、船舶5の船名と識別情報とを表すようにしてもよい。「Call Sign」は、確実な識別のための無線局のコールサインを表す。「nationality」は、「nationality registration」を省略したものであり、船籍国コードを示す。「prefectures」は、所属都道府県を表す。「Geographic Point Location」は、位置情報を示し、例えば、測位系と緯度と経度とを表す。「Parity」は、メッセージの完全受信を確認するためのパリティである。
図1の説明に戻って、基地局100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。基地局100は、例えば、周波数帯域ごとにそれぞれ無線機を有し、各無線機には図示しないアンテナがそれぞれ接続され、各周波数帯域で同時に複数の船舶5に設置された通信端末10と通信することができる。
通信部110は、例えば、中波から短波あるいは超短波帯の無線機等によって実現される。また、通信部110は、図示しないネットワークを介して他の基地局100、および、図示しないサーバとの間で通信を行うために、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。通信部110は、電離層Lを介して複数の通信端末10のいずれか1つ以上と無線で接続される。つまり、通信部110は、通信端末10と基地局100との間で情報の通信を司る通信インタフェースである。なお、通信部110は、図示しないネットワークとの接続を有線または無線により行う。
通信部110は、例えば、中波から短波あるいは超短波帯の無線機として、複数の無線機、例えば、2MHz帯、4MHz帯、8MHz帯、12MHz帯、および、16MHz帯、30MHz帯および50MHz帯以上の超短波帯に対応する7台の無線機を用いて、通信端末10から送信された電波を受信する。また、通信部110は、例えば、受信と同様に複数の無線機を用いて、通信端末10に対して電波を送信する。なお、使用される周波数帯は、例えば、通信端末10が設置される漁船の位置および時間帯のいずれか1つ以上に応じて決定される。また、通信部110は、変調方式として、通信端末10の通信部11と同様の変調方式を用いる。また、通信部110は、制御部130との接続も通信端末10と同様に、RS−232Cを用いたシリアル通信と、音声入出力端子を用いたデータ通信とを用いることができる。
通信部110は、制御部130から入力された放送電文を、指定された送信条件で所定のエリア内に位置する複数の船舶5の通信端末10に対して送信、つまり放送する。また、通信部110は、通信端末10から受信した電波から管理情報またはAck電文を抽出し、制御部130に出力する。また、通信部110は、管理情報またはAck電文を受信したときの電波強度を制御部130に出力する。
記憶部120は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクや光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、エリア情報記憶部121と、送信条件記憶部122と、受信状況記憶部123とを有する。また、記憶部120は、制御部130での処理に用いる情報を記憶する。
エリア情報記憶部121は、エリアごとにエリア内に位置する船舶ID(Identifier)と、船舶数と、更新日時とを対応付けて記憶する。図3は、エリア情報記憶部の一例を示す図である。図3に示すように、エリア情報記憶部121は、「エリアID」、「エリア内船舶ID」、「エリア内船舶数」、「更新日時」といった項目を有する。エリア情報記憶部121は、例えばエリアIDごとに1レコードとして記憶する。
「エリアID」は、情報を送信するエリアを識別する識別子である。エリアIDは、例えば、海面をそれぞれ経度緯度1度ずつで区切ったエリアに対して付与する。エリアIDは、例えば、北緯12度以上13度未満、東経139度以上140度未満のエリアに対して「N12E139」といったIDを付与する。「エリア内船舶ID」は、当該エリア内に位置する船舶5を識別する識別子である。「エリア内船舶数」は、当該エリア内に位置する船舶5の数を示す情報である。「更新日時」は、エリア内船舶IDおよびエリア内船舶数が更新された日時を示す情報である。図3の1行目の例では、エリアID「N12E139」には、船舶ID「S001,S002,S003,・・・,S100」の船舶が、「100」隻いることを示す。また、図3の1行目の例では、エリア内船舶IDおよびエリア内船舶数が更新された日時が「2015年6月17日16時00分」であることを示す。
図1の説明に戻って、送信条件記憶部122は、通信部110に対して指定する送信条件の一覧を条件IDと対応付けて記憶する。図4は、送信条件記憶部の一例を示す図である。図4に示すように、送信条件記憶部122は、「条件ID」、「送信条件」、「デフォルト使用フラグ」、「前回使用フラグ」といった項目を有する。送信条件記憶部122は、例えば条件IDごとに1レコードとして記憶する。なお、送信条件は、予め基地局100の管理者によって設定される。
「条件ID」は、送信条件を識別する識別子である。「送信条件」は、第一の送信条件および第二の送信条件として設定するための条件を示す情報である。送信条件は、例えば、変調レートであるボーレートとすることができる。「デフォルト使用フラグ」は、第一の送信条件の初期値として設定される送信条件を示すフラグである。「前回使用フラグ」は、例えば、前回の放送電文の送信時に使用した第一の送信条件または第二の送信条件を示すフラグである。
図4の例では、条件ID「C01」は送信条件「19600ボー」であり、条件ID「C02」は送信条件「9600ボー」である。また、送信条件「19600ボー」は、デフォルト使用フラグが「Y」であるので第一の送信条件の初期値であり、前回使用フラグが「Y」であるので、前回の放送電文の送信時に使用した送信条件である。また、送信条件は、基地局100から通信端末10に対して放送電文を送信する周波数、および、誤り符号訂正方式としてもよい。さらに、送信条件は、ボーレート、送信周波数および誤り符号訂正方式を組み合わせてもよい。なお、誤り符号訂正方式は、例えば、ターボ符号、畳み込み符号等が挙げられる。また、送信条件には、パリティ付電文と二重電文とを選択可能としてもよい。
図1の説明に戻って、受信状況記憶部123は、船舶5から受信したAck電文に関する情報と、Ack電文に対応する放送電文に関する情報と、船舶5の位置情報とを対応付けて記憶する。図5は、受信状況記憶部の一例を示す図である。図5に示すように、受信状況記憶部123は、「船舶ID」、「Ack受信」、「エラー有無」、「Ack電波強度」、「Ack受信日時」、「放送送信周波数」、「放送ID」、「位置情報」、「位置情報受信日時」といった項目を有する。受信状況記憶部123は、例えば船舶IDごとに1レコードとして記憶する。
「船舶ID」は、船舶5を識別する識別子である。「Ack受信」は、船舶5からAck電文を受信出来たか否かを示す情報である。Ack受信は、例えば、Ack電文を受信出来た場合には「OK」とし、Ack電文を受信出来なかった場合には「NG」とする。「エラー有無」は、Ack電文が受信出来た場合に、船舶5の通信端末10における放送電文の受信時にエラーが発生したか否かを示す情報である。エラー有無は、例えば、Ack電文内の誤り文字数がゼロである場合には「無し」とし、誤り文字数が1以上である場合には「有り」とすることができる。
「Ack電波強度」は、通信部110においてAck電文を受信したときの電波強度を示す情報である。Ack電波強度は、例えば、電界強度に基づいて5段階で表すことができる。Ack電波強度は、例えば、電界強度30dBμV/m以上を電波強度「5」、電界強度20dBμV/m以上30dBμV/m未満を電波強度「4」、電界強度15dBμV/m以上20dBμV/m未満を電波強度「3」とすることができる。また、Ack電波強度は、例えば、電界強度12dBμV/m以上15dBμV/m未満を電波強度「2」、電界強度10dBμV/m以上12dBμV/m未満を電波強度「1」とすることができる。
「Ack受信日時」は、当該船舶5からAck電文を受信した日時を示す情報である。図5の1行目の例では、船舶ID「S001」からAck電文を「2015年6月17日17時17分」に、電波強度「5」で受信し、エラーは「無し」であったことを示す。
「放送送信周波数」は、Ack電文に対応する放送電文を基地局100が送信した周波数を示す情報である。「放送ID」は、基地局100から送信した放送電文を識別する識別子である。放送IDは、Ack電文がどの放送電文に対する応答であるかを識別するために用いる。図5の1行目の例では、基地局100は、船舶ID「S001」が位置するエリアに対して「4.xxxxMHz」で放送ID「H22001」の放送電文を送信したことを示す。すなわち、図5の1行目の例では、放送ID「H22001」の放送電文に対して船舶ID「S001」の船舶5からAck電文を受信したことを示す。
「位置情報」は、当該船舶5の位置を示す情報である。位置情報は、例えば、基地局100が、船舶5から定期的に送信される管理情報を受信し、管理情報から抽出した位置情報である。なお、位置情報は、船舶5がどのエリアに位置するかを判定するために用いる情報である。「位置情報受信日時」は、位置情報を受信した日時を示す情報である。
図1の説明に戻って、制御部130は、例えば、CPUやMPU等によって、内部の記憶装置に記憶されているプログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、例えば、ASICやFPGA等の集積回路により実現されるようにしてもよい。制御部130は、通信制御部131と、算出部132とを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。なお、制御部130の内部構成は、図1に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
通信制御部131は、通信部110を介して、複数の船舶5の通信端末10から管理情報を受信する。通信制御部131は、受信した管理情報に含まれる位置情報に基づいて、各船舶5の位置情報、および、位置情報を受信した受信日時を、船舶IDと対応付けて受信状況記憶部123に記憶する。すなわち、通信制御部131は、定期的に受信する各船舶5の位置情報および位置情報の受信日時を、受信状況記憶部123に記憶する。なお、通信制御部131は、通信端末10から所定時間、例えば3時間以上の間隔で送信された場合に管理情報を受信する。すなわち、通信制御部131は、通信端末10から所定時間未満の間隔で送信された管理情報は、受信してもよいし、受信せずに放置してもよい。
通信制御部131は、受信状況記憶部123を参照して、各エリア内に位置する船舶5の船舶IDと、各エリア内に位置する船舶5の数とを特定する。すなわち、通信制御部131は、予め設定されたエリアの位置情報と、受信状況記憶部123に記憶された各船舶5の位置情報とを比較して、各エリア内に位置する船舶5の船舶IDと、エリア内に位置する船舶5の数とを特定する。通信制御部131は、特定した各エリア内に位置する船舶5の船舶IDと、エリア内に位置する船舶数と、船舶IDおよび船舶数を更新した更新日時とを、エリアIDに対応付けてエリア情報記憶部121に記憶する。
通信制御部131は、例えば、基地局100の管理者によって、ある情報を所定のエリアに放送する旨の指示が図示しない操作部から入力されると、情報に基づいて放送電文を生成する。通信制御部131は、送信条件記憶部122を参照し、例えば、デフォルト使用フラグが「Y」である送信条件を第一の送信条件に設定する。また、通信制御部131は、例えば、前回使用フラグが「Y」である送信条件を第一の送信条件に設定してもよい。なお、通信制御部131は、前回使用フラグに「Y」がない場合には、デフォルト使用フラグが「Y」である送信条件を第一の送信条件に設定する。図4の例では、デフォルト使用フラグが「Y」であるのは、条件ID「C01」の送信条件「19600ボー」であり、前回使用フラグが「Y」であるのも送信条件「19600ボー」であるので、「19600ボー」を第一の送信条件に設定する。
通信制御部131は、第一の送信条件を設定すると、指定されたエリア内に位置する船舶5に対して、通信部110を介して、生成した放送電文を第一の送信条件で送信する。通信制御部131は、放送電文の送信が完了すると、エリア情報記憶部121を参照して、指定されたエリアのエリア内船舶IDに含まれる船舶IDを取得する。通信制御部131は、取得した船舶IDに対して、放送電文の放送IDと、放送した送信周波数とを対応付けて、受信状況記憶部123に記憶する。
通信制御部131は、通信部110を介して、指定されたエリア内に位置する複数の船舶5からAck電文を受信する。また、通信制御部131には、通信部110から当該Ack電文を受信したときの電波強度であるAck電波強度が入力される。通信制御部131は、Ack電文およびAck電波強度を算出部132に出力する。通信制御部131は、Ack受信可否、Ack電文のエラー有無、Ack電波強度およびAck受信日時を船舶IDと対応付けて受信状況記憶部123に記憶する。なお、Ack電文のエラー有無は、Ack電文内の誤り文字数がゼロの場合に「無し」とし、誤り文字数が1以上の場合に「有り」とする。
通信制御部131は、算出部132から電波強度の平均値およびエラー率が入力されると、所定の基準よりも電波強度の平均値が低い場合、および、エラー率が高い場合のうち1つ以上の場合であるか否かを判定する。所定の基準は、例えば、電波強度の平均値であれば「3」とし、エラー率であれば「20%」とすることができるが、情報の重要度に応じて任意に変更してもよい。通信制御部131は、所定の基準よりも電波強度の平均値が低い場合、および、エラー率が高い場合のうち1つ以上の場合でないときには、エリア内に位置する船舶5に情報が伝達されたとして、情報の送信処理を終了する。
通信制御部131は、所定の基準よりも電波強度の平均値が低い場合、および、エラー率が高い場合のうち1つ以上の場合であるときには、放送電文の送信回数が所定値を超えたか否かを判定する。送信回数の所定値は、例えば5回とすることができる。通信制御部131は、放送電文の送信回数が所定値を超えた場合には、現在の電波伝搬状況では、これ以上情報の伝達率の向上が見込めないとして、情報の送信処理を終了する。通信制御部131は、放送電文の送信回数が所定値を超えていない場合には、送信条件記憶部122を参照し、より電波伝搬状況の悪化に強い送信条件を第二の送信条件に設定する。通信制御部131は、例えば、第一の送信条件が「19600ボー」である場合には、第二の送信条件として「9600ボー」を設定する。また、通信制御部131は、送信条件記憶部122の第二の送信条件に設定した条件IDの前回使用フラグを「Y」に変更し、他の条件IDに前回使用フラグ「Y」があれば、他の条件IDの前回使用フラグに世代情報を追加して、例えば「Y−1」とする。なお、世代情報は、例えば、前々回の送信条件に戻す場合等に参照される。
通信制御部131は、第二の送信条件を設定すると、指定されたエリア内に位置する船舶5に対して、通信部110を介して、放送電文を第二の送信条件で送信する。すなわち、通信制御部131は、第一の送信条件で送信した放送電文を、第二の送信条件で再送信する。通信制御部131は、通信部110を介して、指定されたエリア内に位置する複数の船舶5から、第二の送信条件で送信した放送電文に対応するAck電文を受信する。このとき、船舶5の通信端末10は、第一の送信条件で送信された放送電文に対してエラー無しのAck電文を送信した場合には、混信を避けるために第二の送信条件で送信された放送電文に対応するAck電文を送信しないようにしてもよい。また、通信制御部131には、通信部110から当該Ack電文を受信したときの電波強度であるAck電波強度が入力される。通信制御部131は、第二の送信条件の放送電文に係るAck電文およびAck電波強度を算出部132に出力する。通信制御部131は、第二の送信条件の放送電文に係るAck受信可否、Ack電文のエラー有無、Ack電波強度およびAck受信日時を船舶IDと対応付けて受信状況記憶部123に記憶する。
また、通信制御部131は、第二の送信条件の送信電文について、所定の基準よりも電波強度の平均値が高い場合、および、エラー率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に、送信条件を戻して送信する。すなわち、通信制御部131は、例えば、1回目の送信時に第一の送信条件として「19600ボー」を設定し、2回目の送信時に第二の条件として「9600ボー」を設定したとする。通信制御部131は、2回目の送信時における電波強度の平均値およびエラー率が、所定の基準よりも電波強度の平均値が高い場合、および、エラー率が低い場合のうち1つ以上の場合には、3回目の送信時の送信条件を「19600ボー」に設定する。つまり、通信制御部131は、3回目の送信時の送信条件を、1回目の送信時の第一の送信条件に設定する。
算出部132は、通信制御部131からAck電文およびAck電波強度が入力されると、Ack電文およびAck電波強度に基づいて、電波強度の平均値、および、船舶5の通信端末10でのエラー率を算出する。算出部132は、例えば、指定されたエリア内に位置する船舶5の数に基づいて、電波強度の平均値を算出してもよいし、Ack電文を受信出来た船舶5の数に基づいて、電波強度の平均値を算出してもよい。算出部132は、例えば、複数の船舶5から受信したAck電文のエラー有無に基づいて、エラー率を算出する。算出部132は、例えば、指定されたエリア内に位置する船舶数のうち、60%の船舶5からエラー無しを含むAck電文を受信すると、エラー率を40%とすることができる。すなわち、算出部132は、Ack電文が受信できない船舶5についてもエラー有りとしてエラー率を算出する。なお、算出部132は、Ack電文を受信出来た船舶数に基づいて、エラー率を算出してもよい。算出部132は、算出した電波強度の平均値およびエラー率を通信制御部131に出力する。
算出部132は、通信制御部131から第二の送信条件の放送電文に係るAck電文およびAck電波強度が入力されると、Ack電文およびAck電波強度に基づいて、電波強度の平均値、および、船舶5の通信端末10でのエラー率を算出する。算出部132は、例えば、受信状況記憶部123を参照し、当該エリア内に位置する船舶5の数に基づいて、電波強度の平均値およびエラー率を算出する。算出部132は、算出した電波強度の平均値およびエラー率を通信制御部131に出力する。
ここで、図6を用いて、放送電文およびAck電文のフォーマットについて説明する。図6は、電文フォーマットの他の一例を示す図である。図6に示すように、放送電文フォーマット51は、例えば、「通信形式情報」、「基地局ID」、「放送ID」、「放送情報」といった項目を有する。「通信形式情報」は、例えば、文字コード系、電文フォーマットのバーション、および、メッセージタイプ等を示す情報である。「基地局ID」は、放送電文を送信する基地局100を識別する識別子である。「放送ID」は、放送電文を識別する識別子である。「放送情報」は、所定のエリア内に位置する船舶5に対する情報である。
Ack電文フォーマット52は、例えば、「通信形式情報」、「放送ID」、「船舶ID」、「AckID」、「誤り文字数」といった項目を有する。「通信形式情報」は、例えば、文字コード系、電文フォーマットのバーション、および、メッセージタイプ等を示す情報である。「放送ID」は、Ack電文がどの放送電文に対応するかを示し、対応する放送電文を識別する識別子である。「船舶ID」は、Ack電文を送信した通信端末10が設置されている船舶5を識別する識別子である。「AckID」は、例えば、ある放送IDの放送電文に対して、何回目のAck電文であるかを示す番号である。すなわち、AckIDは、例えば、同内容の放送電文が再送信されてAck電文を送信するたびに、1ずつ増加させる。また、AckIDは、例えば、1日のうち何回目のAck電文であるかを示す番号としてもよい。「誤り文字数」は、Ack電文が対応する放送電文の受信時に、放送電文内で発生した文字の誤りの数、つまり誤り文字の数を示す情報である。なお、放送電文フォーマット51およびAck電文フォーマット52は、電文の長さに応じて基地局ID、放送ID、船舶ID、AckID等を複数挿入するようにしてもよい。これにより、ID間で区切られた部分について再送することができる。
次に、実施例の無線通信システム1の動作について説明する。図7は、実施例の無線通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。なお、以下の説明では、船舶5の通信端末10から管理情報が定期的に送信され、エリア情報記憶部121と、受信状況記憶部123の位置情報および位置情報受信日時とは、適宜更新されているものとする。
基地局100の通信制御部131は、例えば、基地局100の管理者によって、ある情報を所定のエリアに放送する旨の指示が図示しない操作部から入力されると、情報に基づいて放送電文を生成する。通信制御部131は、送信条件記憶部122を参照し、例えば、デフォルト使用フラグが「Y」である送信条件を第一の送信条件に設定する。通信制御部131は、第一の送信条件を設定すると、指定されたエリア内に位置する船舶5に対して、生成した放送電文を第一の送信条件で送信する(ステップS1)。通信制御部131は、放送電文の送信が完了すると、エリア内に位置する船舶5の船舶IDに対して、放送電文の放送IDと、放送した送信周波数とを対応付けて、受信状況記憶部123に記憶する。
船舶5に設置されている通信端末10の制御部15は、通信部11を介して放送電文を受信すると(ステップS2)、放送電文から放送情報を抽出して記憶部12に記憶するとともに、表示操作部14に表示させる。また、制御部15は、放送電文についてエラーの有無を判定し、エラーの有無を含むAck電文を、通信部11を介して基地局100に送信する(ステップS3)。
基地局100の通信制御部131は、指定されたエリア内に位置する複数の船舶5からAck電文を受信する(ステップS4)。また、通信制御部131には、通信部110からAck電波強度が入力される。通信制御部131は、Ack電文およびAck電波強度を算出部132に出力する。通信制御部131は、Ack受信可否、Ack電文のエラー有無、Ack電波強度およびAck受信日時を船舶IDと対応付けて受信状況記憶部123に記憶する。
算出部132は、通信制御部131からAck電文およびAck電波強度が入力されると、Ack電文およびAck電波強度に基づいて、電波強度の平均値、および、船舶5の通信端末10でのエラー率を算出する(ステップS5)。算出部132は、算出した電波強度の平均値およびエラー率を通信制御部131に出力する。
通信制御部131は、算出部132から電波強度の平均値およびエラー率が入力されると、所定の基準よりも電波強度の平均値が低い、および/または、エラー率が高いか否かを判定する(ステップS6)。通信制御部131は、所定の基準よりも電波強度の平均値が低くない、および/または、エラー率が高くない場合には(ステップS6:否定)、情報の送信処理を終了する。なお、通信制御部131は、第二の送信条件の送信電文に係る電波強度の平均値およびエラー率が、所定の基準よりも電波強度の平均値が低くない、および/または、エラー率が高くない場合には、次回の情報の送信時に、送信条件を戻して送信する。
通信制御部131は、所定の基準よりも電波強度の平均値が低い、および/または、エラー率が高い場合には(ステップS6:肯定)、放送電文の送信回数が所定値を超えたか否かを判定する(ステップS7)。通信制御部131は、放送電文の送信回数が所定値を超えた場合には(ステップS7:肯定)、情報の送信処理を終了する。通信制御部131は、放送電文の送信回数が所定値を超えていない場合には(ステップS7:否定)、送信条件記憶部122を参照し、より電波伝搬状況の悪化に強い送信条件を第二の送信条件に設定する。通信制御部131は、第二の送信条件を設定すると、指定されたエリア内に位置する船舶5に対して、放送電文を第二の送信条件で送信する(ステップS8)。
船舶5に設置されている通信端末10の制御部15は、通信部11を介して放送電文を受信すると(ステップS9)、放送電文から放送情報を抽出して記憶部12に記憶するとともに、表示操作部14に表示させる。また、制御部15は、放送電文についてエラーの有無を判定し、エラーの有無を含むAck電文を、通信部11を介して基地局100に送信する(ステップS10)。
基地局100の通信制御部131は、指定されたエリア内に位置する複数の船舶5から、第二の送信条件で送信した放送電文に対応するAck電文を受信する(ステップS11)。また、通信制御部131には、Ack電波強度が入力される。通信制御部131は、第二の送信条件の放送電文に係るAck電文およびAck電波強度を算出部132に出力する。通信制御部131は、第二の送信条件の放送電文に係るAck受信可否、Ack電文のエラー有無、Ack電波強度およびAck受信日時を船舶IDと対応付けて受信状況記憶部123に記憶してステップS5に戻る。これにより、基地局100は、複数の船舶5に情報を一斉送信してエラー率が所定値を超える場合に、不達やエラーが発生した船舶5に対して、送信条件を変更して再送信するので、電波の混信を抑えながら確度の高い通信を行うことができる。すなわち、基地局100は、所定のエリア内に位置する複数の船舶5に対して通信の品質の変動を抑え、精度よく情報を送信できる。
このように、基地局100は、所定のエリア内に位置する船舶5に対する情報を第一の送信条件で送信する。また、基地局100は、所定のエリア内に位置する複数の船舶5から情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信する。また、基地局100は、応答信号を受信すると、複数の船舶5のそれぞれの船舶5からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する。また、基地局100は、所定の基準よりも電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、情報を第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う。その結果、精度よく情報を送信できる。
また、基地局100では、第二の送信条件は、第一の送信条件よりも低いボーレートである。その結果、より通信の品質の変動を抑え、精度よく情報を送信できる。
また、基地局100は、第二の送信条件で情報を送信して応答信号を受信したときに算出された電波強度の大きさの平均値、および、情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値について、所定の基準よりも電波強度の大きさの平均値が高い場合、および、誤り発生率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に第一の送信条件で送信する制御を行う。その結果、電波伝搬状況が改善された場合に、より高速な変調レートを用いて精度よく情報を送信できる。
なお、上記実施例では、ある基地局100が放送電文を送信して、船舶5からAck電文を受信したが、これに限定されない。例えば、他の基地局100から別の放送電文を船舶5に送信し、他の基地局100が受信したAck電文がエラー無しを示す場合には、ある基地局100から当該船舶5に対して送信する放送電文を、図示しないネットワークを介して、他の基地局100に転送する。他の基地局100は、転送された放送電文を、当該船舶5に対して送信する。これにより、情報を伝えたい船舶5に対して、より確度高く情報を伝達できる。
また、上記実施例では、放送電文としてパリティ付の電文を用いたが、これに限定されない。例えば、二重電文を用いて、通信端末10が2つの同内容の電文のうち、異なる文字部分の出現順番番号、数等をAck電文で送信し、基地局100が異なる文字部分について再送信するようにしてもよい。
また、上記実施例では、送信条件の初期値について、デフォルト使用フラグと前回使用フラグとを参照して設定したが、これに限定されない。例えば、基地局100の放送のタイムテーブルや放送内容に応じて変更するようにしてもよい。これにより、例えば、確度高く伝達したい情報は、1回目の送信から低速であるが妨害に強い送信条件で送信することで、情報を船舶5に伝達できる確度を高くできるので、再放送を抑制することができる。
また、上記実施例では、基地局100の通信部110に接続されるアンテナは、無線機ごとに、それぞれ接続したが、これに限定されない。例えば、多バンド型のアンテナを用いてもよいし、アンテナチューナを用いてもよい。また、船舶から陸上への送信と、陸上から船舶への送信とで、異なる周波数を用いてもよい。これにより、アンテナの設置場所の条件が緩和される。
また、上記実施例では、デジタル変調の一例としてPSK31を挙げたが、これに限定されない。例えば、RTTY(Radioteletype)、パケット通信、SSTV等の短波帯で使用可能な狭帯域のデジタル変調を用いてもよい。これにより、短波帯のうち周波数が高い帯域では、よりデータ量の多い通信を行うことができる。
また、上記実施例では、通信端末10は船舶5に設置されたが、これに限定されない。例えば、砂漠、山間部、人口過疎地などの通信困難地域における車両等に通信端末10が設置されてもよい。
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、上記の実施例では、通信制御部131が管理情報と、放送電文およびAck電文との処理を実行する場合を示したが、管理情報を処理する管理情報制御部と、放送電文およびAck電文を処理する放送制御部とに分割してもよい。また、図示した各処理は、上記の順番に限定されるものではなく、処理内容を矛盾させない範囲において、同時に実施してもよく、順序を入れ替えて実施してもよい。
さらに、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。
ところで、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施例と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図8は、無線通信プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
図8に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置204と、各種装置と接続するためのインタフェース装置205と、他の情報処理装置等と有線または無線により接続するための通信装置206とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するRAM207と、ハードディスク装置208とを有する。また、各装置201〜208は、バス209に接続される。
ハードディスク装置208には、図1に示した通信制御部131および算出部132の各処理部と同様の機能を有する無線通信プログラムが記憶される。また、ハードディスク装置208には、エリア情報記憶部121、送信条件記憶部122、受信状況記憶部123、および、無線通信プログラムを実現するための各種データが記憶される。入力装置202は、例えば、コンピュータ200の管理者から、操作情報等の各種情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、コンピュータ200の管理者に対して各種画面を表示する。インタフェース装置205は、例えば、印刷装置等が接続される。通信装置206は、例えば、図1に示した通信部110と同様の機能を有し、電離層Lを介して通信端末10と接続され、通信端末10と各種情報をやりとりするとともに、図示しないネットワークに接続された他の基地局100や図示しないサーバと各種情報をやりとりする。
CPU201は、ハードディスク装置208に記憶された各プログラムを読み出して、RAM207に展開して実行することで、各種の処理を行う。また、これらのプログラムは、コンピュータ200を図1に示した通信制御部131および算出部132として機能させることができる。
なお、上記の無線通信プログラムは、必ずしもハードディスク装置208に記憶されている必要はない。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラムを、コンピュータ200が読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD−ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこの無線通信プログラムを記憶させておき、コンピュータ200がこれらから無線通信プログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
以上、本実施例を含む実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)所定のエリア内に位置する船舶に対する情報を第一の送信条件で送信し、
前記所定のエリア内に位置する複数の船舶から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の船舶のそれぞれの船舶からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出し、
所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする無線通信プログラム。
(付記2)前記第二の送信条件は、前記第一の送信条件よりも低いボーレートであることを特徴とする付記1に記載の無線通信プログラム。
(付記3)前記制御を行う処理は、前記第二の送信条件で前記情報を送信して前記応答信号を受信したときに算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値について、前記所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が高い場合、および、前記誤り発生率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に前記第一の送信条件で送信する制御を行うことを特徴とする付記1または2に記載の無線通信プログラム。
(付記4)所定のエリア内に位置する通信端末に対する情報を第一の送信条件で送信し、
前記所定のエリア内に位置する複数の通信端末から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の通信端末のそれぞれの通信端末からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出し、
所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする無線通信プログラム。
(付記5)所定のエリア内に位置する船舶に対する情報を第一の送信条件で送信し、
前記所定のエリア内に位置する複数の船舶から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の船舶のそれぞれの船舶からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出し、
所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う
処理をコンピュータが実行することを特徴とする無線通信方法。
(付記6)前記第二の送信条件は、前記第一の送信条件よりも低いボーレートであることを特徴とする付記5に記載の無線通信方法。
(付記7)前記制御を行う処理は、前記第二の送信条件で前記情報を送信して前記応答信号を受信したときに算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値について、前記所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が高い場合、および、前記誤り発生率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に前記第一の送信条件で送信する制御を行うことを特徴とする付記5または6に記載の無線通信方法。
(付記8)所定のエリア内に位置する通信端末に対する情報を第一の送信条件で送信し、
前記所定のエリア内に位置する複数の通信端末から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の通信端末のそれぞれの通信端末からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出し、
所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う
処理をコンピュータが実行することを特徴とする無線通信方法。
(付記9)所定のエリア内に位置する船舶に対する情報が第一の送信条件で送信されて、前記所定のエリア内に位置する複数の船舶から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の船舶のそれぞれの船舶からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する算出部と、
前記所定のエリア内に位置する船舶に対する前記情報を前記第一の送信条件で送信し、前記算出部で算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記誤り発生率のうち1つ以上の値について、所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う通信制御部と、
を有することを特徴とする無線基地局。
(付記10)前記第二の送信条件は、前記第一の送信条件よりも低いボーレートであることを特徴とする付記9に記載の無線基地局。
(付記11)前記通信制御部は、前記第二の送信条件で前記情報を送信して前記応答信号を受信したときに算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値について、前記所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が高い場合、および、前記誤り発生率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に前記第一の送信条件で送信する制御を行うことを特徴とする付記9または10に記載の無線基地局。
(付記12)所定のエリア内に位置する通信端末に対する情報が第一の送信条件で送信されて、前記所定のエリア内に位置する複数の通信端末から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の通信端末のそれぞれの通信端末からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する算出部と、
前記所定のエリア内に位置する通信端末に対する前記情報を前記第一の送信条件で送信し、前記算出部で算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記誤り発生率のうち1つ以上の値について、所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う通信制御部と、
を有することを特徴とする無線基地局。
(付記13)船舶と、無線基地局とを有する無線通信システムであって、
前記船舶は、
前記無線基地局から情報を受信すると、前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を送信する通信端末を有し、
前記無線基地局は、
所定のエリア内に位置する船舶に対する情報が第一の送信条件で送信されて、前記所定のエリア内に位置する複数の船舶から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の船舶のそれぞれの船舶からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する算出部と、
前記所定のエリア内に位置する船舶に対する前記情報を前記第一の送信条件で送信し、前記算出部で算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記誤り発生率のうち1つ以上の値について、所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う通信制御部と、
を有することを特徴とする無線通信システム。
(付記14)前記第二の送信条件は、前記第一の送信条件よりも低いボーレートであることを特徴とする付記13に記載の無線通信システム。
(付記15)前記通信制御部は、前記第二の送信条件で前記情報を送信して前記応答信号を受信したときに算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値について、前記所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が高い場合、および、前記誤り発生率が低い場合のうち1つ以上の場合には、次回の情報の送信時に前記第一の送信条件で送信する制御を行うことを特徴とする付記13または14に記載の無線通信システム。
(付記16)通信端末と、無線基地局とを有する無線通信システムであって、
前記通信端末は、
前記無線基地局から情報を受信すると、前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を送信し、
前記無線基地局は、
所定のエリア内に位置する通信端末に対する情報が第一の送信条件で送信されて、前記所定のエリア内に位置する複数の通信端末から前記情報に対する誤り発生の有無を含む応答信号を受信すると、前記複数の通信端末のそれぞれの通信端末からの応答信号の電波強度の大きさの平均値、および、前記情報についての誤り発生率のうち1つ以上の値を算出する算出部と、
前記所定のエリア内に位置する通信端末に対する前記情報を前記第一の送信条件で送信し、前記算出部で算出された前記電波強度の大きさの平均値、および、前記誤り発生率のうち1つ以上の値について、所定の基準よりも前記電波強度の大きさの平均値が低い場合、および、前記誤り発生率が高い場合のうち1つ以上の場合に、前記情報を前記第一の送信条件とは異なる第二の送信条件で送信する制御を行う通信制御部と、
を有することを特徴とする無線通信システム。