JP6594009B2 - 含油摺動部材、含油軸受および含油摺動部材の製造方法 - Google Patents

含油摺動部材、含油軸受および含油摺動部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、含油摺動部材、含油軸受および含油摺動部材の製造方法に係り、特に耐荷重性を高めた含油摺動部材に関する。
含油軸受等の含油摺動部材においては、金属製または樹脂製の多孔質体の内部に含有された潤滑油が摺動面に供給されて潤滑作用が得られる。例えば軸受であれば、荷重が小さい時にはシャフトは薄い油膜に支えられており、シャフトの固体面は軸受の固体面に接触しない。シャフトの固体面と軸受の固体面とが油膜で隔離された流体潤滑の状態にあるので、部材の摩耗が少なく、安定的に長期に渡って使用できる。しかしながら、荷重が大きくなると、油膜ではシャフトを支えきれなくなって固体面同士の接触が起こる。時間の経過とともに、いわゆる焼きつきと呼ばれる現象も生じ、摩擦係数が増大して摩耗も進み始める。摩耗が一定以上になると、軸受としてもはや使用することができなくなって寿命を縮める原因となる。したがって大きな荷重を受けた際でも焼きつきを抑制することができれば、含油摺動部材の耐荷重性を高めることができる。
軸受等の摺動部材の耐荷重性を高めるために、潤滑油としてのポリオールエステル(POE)に油膜強度を高める化合物が配合された潤滑組成物を用いること(例えば、特許文献1,2)や、極圧添加剤を含む油組成物を用いること(例えば、特許文献3)が提案されている。また、モリブデン成分と硫黄供給成分とを含む潤滑油を摺動部材に適用した潤滑システム(例えば、特許文献4)や、黒鉛等の固体潤滑剤を含有する潤滑油組成物(例えば、特許文献5)が提案されている。
特開2010−184954号公報 特開2011−208735号公報 特開平10−184688号公報 特開2000−26880号公報 特開2008−255271号公報
しかしながら、上記特許文献に記載されている技術は、含油摺動部材の耐荷重性を高めるために満足のいくものではなかった。
すなわち特許文献1,2の場合には、所望の油膜強度と潤滑油による潤滑性との両立を図って、潤滑組成物に含有される潤滑油はPOEに限定されている。通常、最適な粘度範囲で潤滑油を使用できる条件は、潤滑油の種類によって異なるものである。特許文献1,2の潤滑組成物は、潤滑油がPOEに限定されているので、最適な粘度範囲で使用できる条件はPOEに適した条件のみに限られる。したがって、こうした潤滑組成物を含浸させた含油軸受は、使用条件が制約されて汎用性が低い。
特許文献3の場合には、油組成物が適用される軸受が、特定の組成の焼結体に限定されている。焼結体は、鉄成分の含有量が80%以上であることが必要であり、汎用性に欠ける。また、油組成物中には硫黄成分が含有され、硫黄成分による金属の腐食やスラッジ生成という問題が生じるおそれがある。同様の問題は、潤滑油中に硫黄供給成分が含有されている特許文献4に係る潤滑システムにおいても起こり得る。
特許文献5に係る潤滑油組成物は、部材に含浸させることが記載されておらず、含油軸受用の含浸油としての性能は示されていない。
そこで本発明は、任意の潤滑油を適用でき汎用性が高く、耐荷重性を向上させた含油摺動部材、含油軸受および含油摺動部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点は、部材本体の摺動面に内部から潤滑組成物が供給される含油摺動部材であって、前記潤滑組成物は、潤滑油と耐荷重性固体潤滑剤とを含有していることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記耐荷重性固体潤滑剤は、ナノ炭素材料を含むことを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1または第2の観点に基づく発明であって、前記耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、前記潤滑組成物中における前記耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下であることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第1〜第4のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記部材本体は焼結金属からなり、前記潤滑組成物は、潤滑油と残部の耐荷重性固体潤滑剤とからなることを特徴とする。
本発明の第6の観点は、第1〜第5のいずれか1つの観点に基づく発明であって、前記摺動面が、境界潤滑または混合潤滑の状態で使用されることを特徴とする。
本発明の第7の観点は、前述のいずれかの含油摺動部材を用いたことを特徴とする。
本発明の第8の観点は、潤滑油と耐荷重性固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物を、多孔質状の部材本体の微細孔内部に充填する工程を備えることを特徴とする。
本発明の第9の観点は、第8の観点に基づく発明であって、前記耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることを特徴とする。
本発明の第10の観点は、第9の観点に基づく発明であって、前記潤滑組成物中における前記耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下であることを特徴とする。
本発明の第1〜第7の観点の含油摺動部材では、摺動面に供給される潤滑組成物が潤滑油と耐荷重性固体潤滑剤とを含有していることにより、摩擦係数を低減して耐荷重性を高めることができる。しかも、本発明の第1〜第7の観点の含油摺動部材は、任意の潤滑油を使用でき汎用性が高い。
本発明の第2の観点の含油摺動部材では、耐荷重性固体潤滑剤がナノ炭素材料を含むことにより、摩擦係数をよりいっそう低減して耐荷重性をよりいっそう高めることができる。
本発明の第3の観点の含油摺動部材では、耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることにより、摩擦係数をよりいっそう低減することができる。
本発明の第4の観点の含油摺動部材では、潤滑組成物中における耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下であることにより、摩擦係数をよりいっそう低減して耐荷重性をよりいっそう高めることができる。
本発明の第5の観点の含油摺動部材では、潤滑組成物が潤滑油と残部の耐荷重性固体潤滑剤とからなることにより、焼結金属からなる部材本体の腐食を防止することができる。
本発明の第6の観点の含油摺動部材では、部材本体の前記摺動面が、境界潤滑または混合潤滑の状態で使用されることにより、摺動面に供給され耐荷重性固体潤滑剤の効果を十分に発揮することができる。
本発明の第8の観点の含油摺動部材の製造方法では、多孔質状の部材本体の微細孔内部に潤滑油とともに耐荷重性固体潤滑剤を充填することができるので、長期にわたって高い耐荷重性を維持する含油摺動部材を製造することができる。
本発明の第9の観点の含油摺動部材の製造方法では、耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることにより、摩擦係数をよりいっそう低減した含油摺動部材を製造することができる。
本発明の第10の観点の含油摺動部材の製造方法では、潤滑組成物中における耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下であることにより、摩擦係数をよりいっそう低減した含油摺動部材を製造することができる。
実施形態に係る含油摺動部材の縦断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.全体構成
図1には、本実施形態にかかる含油摺動部材として、含油軸受10の縦断面図を示す。図示する含油軸受10は、摺動面を有する部材本体12を含む。この部材本体12は、多孔質状の焼結金属である。本実施形態においては、部材本体12は、ほぼ円筒状に形成されている。焼結金属の組成は限定されず、軸受に一般的に使用されている組成とすることができる。例えば、銅が80%以上を占める組成、鉄が80%程度を占める組成、銅と鉄とによって90%以上が占められている組成などが挙げられる。
本実施形態に用いられる部材本体12は、乾燥密度が5.2〜7.5g/cmで、含油率が15〜27vol%であることが好ましい。一般的には、部材本体12の乾燥密度や含油率は、JIS規格Z2501:2000により求められる。
部材本体12は、直径が1〜20μm程度の微細孔を有し、この微細孔は三次元的に連続している。微細孔の直径は、一般的には、水銀圧入法により求めることができる。部材本体12の微細孔内部には、潤滑油と耐荷重性固体潤滑剤(以下、固体潤滑剤と称する)とを含有する潤滑組成物が充填されている。
部材本体12の内側には、一端面12aから他端面12bまで軸体14が回転自在に支持されている。この軸体14に一体的に設けられた鍔16から、一端面12aへ軸方向の荷重が加わる。
部材本体12の内周面12cは、摺動面として作用するものである。この内周面12cには、潤滑油と固体潤滑剤とを含む潤滑組成物が部材本体12の内部から供給されて、潤滑作用が付与される。荷重が大きくない場合には、軸体14の表面は、潤滑油からなる油膜と固体潤滑剤とによって部材本体12の内周面12cから隔てられることになる。
潤滑油は特に限定されず、含油摺動部材に含浸される一般的な潤滑油を用いることができる。例えばグリースのような高粘度の潤滑剤とは異なって、潤滑油は粘度が低く流動性を有し、常温で液体である。使用し得る潤滑油としては、例えば、鉱油、合成油等が挙げられる。
固体潤滑剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、およびナノダイヤモンドなどのナノ炭素材料が挙げられる。黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、またはフッ素樹脂の粒子を固体潤滑剤として用いてもよいが、ナノ炭素材料を用いることが好ましい。ナノ炭素材料からなる固体潤滑剤は、他の固体潤滑剤よりも耐荷重性を高める効果が大きいからである。
固体潤滑剤は、潤滑油に配合して調製された潤滑組成物の状態で、潤滑油とともに部材本体12の微細孔内部に充填されたものである。後述するように1wt%超20wt%以下の量の固体潤滑剤が含有された潤滑組成物を用いることによって、また、後述するような平均粒径が10μm以下の固体潤滑剤が含有された潤滑組成物を用いることによって、固体潤滑剤の効果をよりいっそう得ることができる。
潤滑油に含有される固体潤滑剤の形状は、特に限定されない。部材本体12の微細孔内部に充填でき、微細孔内部から摺動面としての内周面12cに供給できる形状であれば、任意の形状の固体潤滑剤を用いることができる。
2.製造方法
本実施形態の含油軸受10は、潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物を、部材本体12に含浸させることによって製造することができる。
潤滑組成物は、例えばペイントシェイカーを用いて30分〜12時間程度の分散処理を施して、固体潤滑剤を潤滑油中に分散させることにより調製することができる。潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物は、部材本体12の微細孔内部に充填された後、摺動面となる内周面12cに供給されて潤滑作用を付与する。部材本体12の微細孔内部へ問題なく充填でき、内周面12cに供給されて所望の潤滑作用を発揮できるためには、潤滑組成物中における固体潤滑剤の濃度は1wt%超20wt%以下であることが好ましい。潤滑組成物中における固体潤滑体の濃度は、3wt%以上15wt%以下がより好ましい。
潤滑組成物中の固体潤滑剤は、必ずしも均一に分散されずに、凝集して凝集体を形成することがある。本実施形態において固体潤滑剤に求められているのは、潤滑油とともに部材本体12の微細孔内部に充填できること、そして、摺動面となる内周面12cに供給されて潤滑作用を付与することである。潤滑組成物中の固体潤滑剤が凝集体を形成していたところで、平均粒径が10μm以下であれば微細孔内部への充填も可能である。また、使用時におけるせん断力により解体されて十分小さくなることで、摩擦係数をより効果的に低減できる。したがって、本実施形態で用いられる潤滑組成物中に含有される固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。
凝集していない固体潤滑剤であっても平均粒径の大きすぎるものは、解体されない凝集体を形成している固体潤滑剤と同様、摺動面としての内周面12cに供給された際に潤滑剤として十分な効果を発揮できない。凝集していない固体潤滑剤の平均粒径が10μm以下であれば、内周面12cにおいて潤滑剤として十分に作用できる。
これらを考慮すると、固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。本実施形態においては、固体潤滑剤の平均粒径とは、固体潤滑剤の粒径分布を測定して得られた体積累積中位径(Dv50)をいう。体積累積中位径(Dv50)は、固体潤滑剤の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径である。固体潤滑剤の体積累積中位径(Dv50)は、例えば動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて、潤滑組成物中の固体潤滑剤の粒径分布を測定することにより求めることができる。あるいは、環境制御型透過電子顕微鏡(ETEM:Environmental Transmission Electron Microscope)を用いて固体潤滑剤の粒径分布を測定して、体積累積中位径(Dv50)を求めてもよい。
固体潤滑剤と潤滑油とを含有する潤滑組成物が充填される微細孔の直径は、1〜10μm程度である。平均粒径(体積累積中位径Dv50)が10μm以下の固体潤滑剤は、潤滑油とともに微細孔内部に充填することができる。しかも、微細孔内部から摺動面としての内周面12cに供給された際には、こうした固体潤滑剤は潤滑剤としての作用を十分に発揮することができる。
上述したとおり本実施形態においては、固体潤滑剤は、潤滑油とともに部材本体12の微細孔内部に充填でき、摺動面としての内周面12cに供給されて潤滑作用を付与できることが求められている。潤滑組成物中の固体潤滑剤が凝集せずに均一に分散していることは必ずしも要求されないため、本実施形態においては潤滑組成物中に分散剤が含有されている必要はない。部材本体12が分散剤によって腐食するおそれがある場合には、分散剤の使用は避けられる。例えば、焼結金属からなる部材本体12の場合には、潤滑油と残部の固体潤滑剤とからなる潤滑組成物を用いることが望まれる。
部材本体12を潤滑組成物中に浸漬し、1〜100mmHg程度で真空引きすることによって、潤滑組成物が部材本体12の内部に含浸される。含浸時間は、特に限定されないが、一般的には1〜12時間とすることができる。
以上のようにして、多孔質状の焼結金属からなる部材本体12に、潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物が含浸された本実施形態の含油軸受10が得られる。
3.作用及び効果
本実施形態に係る含油軸受10においては、部材本体12の微細孔内部に、潤滑油と固体潤滑剤とを含む潤滑組成物が充填されており、この潤滑組成物は摺動面としての内周面12cに供給される。部材本体12の内周面12cには潤滑油による油膜が形成され、油膜中には固体潤滑剤が含有される。固体潤滑剤が油膜中に存在することによって、本実施形態に係る含油軸受10においては、部材本体12の内周面12cに十分な潤滑作用が与えられる。
一般的には、含油軸受10は、1〜10MPa程度の面圧で用いられる。本実施形態の含油軸受10は、高い面圧を受けて油膜の一部が損なわれて部材本体12の内周面12cが軸体14の固体面に接触した場合、いわゆる境界潤滑または混合潤滑の状態でも、固体潤滑剤によって内周面12cの潤滑作用は保たれる。固体潤滑剤に起因した潤滑作用によって、高い面圧を受けても内周面12cにおける焼きつきは回避され、表面の摩耗が大幅に進行することもない。なお、境界潤滑は、部材本体12の内周面12cと軸体14の固体面との間に潤滑油膜が存在するにも拘わらず、部材本体12の内周面12cと軸体14の固体面とが部分的に接触する状態である。混合潤滑とは、流体潤滑部分と境界潤滑部分とが混在した状態である。
このように、本実施形態に係る含油摺動部材10においては、部材本体12の内部から潤滑油とともに内周面12cに供給される固体潤滑剤によって、耐荷重性を高めることができる。本実施形態に係る含油軸受10は、8MPa程度以上の比較的高い面圧で用いた際に、特に効果が発揮される。
仮に、摺動面としての内周面12cに存在する固体潤滑剤が使用中に消耗しても、微細孔内部に充填された固体潤滑剤が内周面12cに供給される限り、本実施形態においては固体潤滑剤の効果を得ることができる。
固体潤滑剤の効果は、潤滑油の種類が変わっても同様に得られることから、本実施形態で使用される潤滑油に制限はない。任意の潤滑油と固体潤滑剤とを組み合わせて調製された潤滑組成物を用いて、含油軸受10を製造することができる。したがって、本実施形態の含油軸受10の使用条件は特に制約されない。分散剤を含まない潤滑組成物が用いられれば部材本体12の材質等も限定されず、任意の部材本体12を用いることができる。本実施形態の含油軸受10は、潤滑油や部材本体12の選択の自由度が広がって汎用性が高い点でも有利である。
しかも、本実施形態においては、潤滑組成物に含まれているのは流動性を有する潤滑油である。グリースなどの高粘度の潤滑剤を用いた場合とは異なって、本実施形態で用いられる潤滑組成物は、浸漬、真空引きといった簡便なプロセスで部材本体12に含浸させることができる。したがって、本実施形態の含油軸受10は、作製も容易である。
4.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
上述の実施形態では、含油摺動部材として含油軸受を用いたが、軸受の他、ブッシュなどの摺動部材を用いることもできる。含油軸受の内周面を摺動面の例として説明したが、摺動部材の種類によっては、内周面以外の面が摺動面となることもあり得る。部材本体の材質は、金属に限定されず、セラミックス、樹脂、または多孔質セラミックスを含む樹脂としてもよい。
部材本体に含浸する潤滑組成物は、固体潤滑剤を潤滑油に分散することによって調製したが、分散処理を施さずに単に潤滑油中に混合して潤滑組成物を調製してもよい。
5.実施例
以下の実施例においては、焼結金属からなる部材本体の微細孔内部に、潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物を充填して試料を作製し、得られた試料の表面における動摩擦係数を測定して試料の耐荷重性を調べた。
(実施例1)
<部材本体の作製>
Cu:88wt%、Sn:10wt%、C:2wt%の組成となるように、原料粉末としての銅粉末、錫粉末、および黒鉛を配合して混合粉末を得、これを常法によりプレスしてφ30mm、L10mmの成形体を作製した。得られた成形体を、常法により、不活性雰囲気中750℃で30分間焼結して、焼結金属からなる部材本体を作製した。得られた部材本体は、JIS規格Z2501:2000により求めた乾燥密度が6.6g/cmであり、含油率は20vol%であった。
<潤滑組成物の含浸>
固体潤滑剤としてのカーボンナノファイバー(CNF)(CNano Technology Ltd.:Flotube9000)を、潤滑油(JX日鉱日石エネルギー(株):タービン油)に加え、12時間の分散処理を施して潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物を調製した。潤滑組成物中における固体潤滑剤の濃度は2wt%とし、分散処理にはペイントシェイカー(浅田鉄工(株))を用いた。
潤滑組成物中に前述の部材本体を浸漬し、10mmHgの真空引きを4時間行って、潤滑組成物を部材本体中に含浸させた。部材本体の微細孔内部には、潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物が充填され、こうして、実施例1の試料が得られた。実施例1の試料においては、部材本体の微細孔内部に充填された潤滑油は、固体潤滑剤とともに部材本体の表面に供給されて油膜を形成する。油膜中には固体潤滑剤が存在しているので、こうした表面には十分な潤滑作用が付与される。
さらに、以下の点を変更する以外は実施例1と同様の手法により、実施例2〜9および比較例の試料を作製した。
(実施例2)
固体潤滑剤としてのCNFの平均粒径を変更し、潤滑組成物中におけるCNFの濃度を1wt%に変更した。
(実施例3)
固体潤滑剤としてのCNFの平均粒径を変更し、潤滑組成物中におけるCNFの濃度を10wt%に変更した。
(実施例4)
固体潤滑剤としてのCNFの平均粒径を変更し、潤滑組成物中におけるCNFの濃度を30wt%に変更した。
(実施例5)
固体潤滑剤としてのCNFを、フラーレン(Sigma Aldrich Corp.:製品番号483036)に変更した。
(実施例6)
固体潤滑剤としてのCNFを、カーボンブラック(三菱化学(株):#1000)に変更した。
(実施例7)
固体潤滑剤としてのCNFの平均粒径を変更し、潤滑組成物中におけるCNFの濃度を10wt%に変更するとともに、分散処理の時間を30分に変更した。
(実施例8)
原料粉末の種類および配合量を変更し、焼結温度を800℃に変更して得られた焼結金属を、部材本体として用いた。焼結金属の組成は、Cu:40wt%,Fe:55wt%,Sn:5wt%であり、この焼結金属からなる部材本体の乾燥密度および含油率は、それぞれ6.2g/cmおよび25vol%であった。
(実施例9)
原料粉末の種類および配合量を変更し、焼結温度を900℃に変更して得られた焼結金属を、部材本体として用いた。焼結金属の組成は、Fe:77wt%、Sn:1wt%、C:2wt%、Cu:20wt%であり、この焼結金属からなる部材本体の乾燥密度および含油率は、それぞれ5.8g/cmおよび24vol%であった。
実施例2〜9の試料においては、実施例1の試料と同様、潤滑油と固体潤滑剤とを含む潤滑組成物が部材本体の微細孔内部に充填されている。実施例2〜9の試料においても、部材本体の微細孔内部に充填された潤滑油は、固体潤滑剤とともに部材本体の表面に供給されて油膜を形成する。油膜中には固体潤滑剤が存在しているので、こうした表面には十分な潤滑作用が付与される。
(比較例)
固体潤滑剤を用いず潤滑油のみを部材本体に含浸させた。比較例の試料においては、部材本体の微細孔内部に充填されているのは、固体潤滑剤を含有する潤滑組成物ではない。こうした比較例の試料においては、部材本体の表面に供給されて潤滑作用を付与するのは潤滑油のみとなる。
上述のように得られた試料(実施例1〜9、比較例)の物性値を、試料の構成とともに下記表1にまとめる。物性値としては、固体潤滑剤の平均粒径、動摩擦係数、焼きつきの有無を、以下の手法により求めた。
<固体潤滑剤の平均粒径>
実施例1〜9で調製された潤滑組成物中の固体潤滑剤の粒径分布を、動的光散乱式粒径分布測定装置((株)堀場製作所:LB−550)を用いて測定した。得られた体積累積中位径(Dv50)を固体潤滑剤の平均粒径とした。
<動摩擦係数>
動摩擦係数は、潤滑組成物または潤滑油を部材本体に含浸させた直後、摩擦摩耗試験機(神鋼造機(株):SZ−FT−93B)を用いて測定した。滑り速度は62m/minに設定し、炭素鋼(S45C)製のピン(Φ4)を用いた。試験は、部材本体の上をピンが回転する形で30分間行い、後半の15分の値の算術平均を求めて動摩擦係数とした。動摩擦係数の測定において、荷重を見掛け接触面積(ピンの面積)で割ることにより得られた面圧は8MPaであった。
<焼きつき>
焼きつきが起きたかどうかは、測定中の動摩擦係数が急激に増大し、摺動音が異常に大きくなる状態が続いた場合、焼きつきが起きたと判断した。
Figure 0006594009
表1中、「NA」は「Not Available」の略であり、データが存在しないことを表している。上記表1に示されるように、含浸されているのが潤滑油のみの比較例の試料では、焼きつきが生じており、動摩擦係数も0.278と高い。これに対して、固体潤滑剤を含有する潤滑組成物が含浸されている実施例の試料の場合には、焼きつきが生じておらず、動摩擦係数は、最大でも0.158と小さい。8MPaという比較的高い面圧において焼きつきが抑えられており、実施例の試料は耐荷重性が高められたことがわかる。
平均粒径が10μm以下の固体潤滑剤を含有する潤滑組成物を用いることによって、試料の動摩擦係数はさらに低減されて0.158未満である。平均粒径が10μm以下の固体潤滑剤を、1wt%超20wt%以下の量で含有する潤滑組成物を用いた場合には、試料の動摩擦係数はよりいっそう低減されて、0.086以下である。
平均粒径および濃度が同じ固体潤滑剤を含有する潤滑組成物を用いた場合には、部材本体の組成によらず、同程度の動摩擦係数が得られることが上記表1に示されている。したがって、耐荷重性は同程度に高められたことが予測される。
以上においては、焼結金属からなる部材本体内部に潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物が含浸された試料を例に挙げて、耐荷重性を高め、摩擦係数を低減し得ることを示した。こうした試料と同様に潤滑油と固体潤滑剤とを含有する潤滑組成物が含浸されていれば、含油軸受等の含油摺動部材の場合も同様に、耐荷重性を高め、摩擦係数を低減することができる。
10 含油軸受(含油摺動部材)
12 部材本体
14 軸体
16 鍔

Claims (7)

  1. 部材本体の摺動面に内部から潤滑組成物が供給される含油摺動部材であって、前記潤滑組成物は、常温で液体である潤滑油と残部の耐荷重性固体潤滑剤とからなり、
    前記耐荷重性固体潤滑剤は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、またはナノダイヤモンドを含み、
    前記潤滑組成物中における前記耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下である
    ことを特徴とする含油摺動部材。
  2. 前記耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることを特徴とする請求項記載の含油摺動部材。
  3. 前記部材本体は焼結金属からなることを特徴とする請求項1または2記載の含油摺動部材。
  4. 前記摺動面が、境界潤滑または混合潤滑の状態で使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の含油摺動部材。
  5. 請求項1〜のいずれか1項記載の含油摺動部材を用いたことを特徴とする含油軸受。
  6. 常温で液体である潤滑油と残部の耐荷重性固体潤滑剤とからなる潤滑組成物を、多孔質状の部材本体の微細孔内部に充填する工程を備え
    前記耐荷重性固体潤滑剤は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、またはナノダイヤモンドを含み、前記潤滑組成物中における前記耐荷重性固体潤滑剤の濃度は、1wt%超20wt%以下である
    ことを特徴とする含油摺動部材の製造方法。
  7. 前記耐荷重性固体潤滑剤の平均粒径は、10μm以下であることを特徴とする請求項記載の含油摺動部材の製造方法。
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