以下に、本発明にかかる診断支援装置および診断支援方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、視線検出結果を用いて発達障がいなどの診断を支援する診断支援装置に適用した例を説明する。適用可能な装置は診断支援装置に限られるものではない。
本実施形態の診断支援装置は、被験者が注視する診断画像のエリアに基づいて評価を行うことで、自閉スペクトラム症(ASD)を高い精度で診断支援を実現できるようにした診断支援装置である。なお、本実施形態の診断支援装置は、ASDの他、ADHD等の発達障がいの診断支援を実行可能であってもよい。
本実施形態の診断支援装置は、2ヵ所に設置された照明部を用いて視線を検出する。また、本実施形態の診断支援装置は、視線検出前に被験者に1点を注視させて測定した結果を用いて、角膜曲率中心位置を高精度に算出する。
なお、照明部とは、光源を含み、被験者の眼球に光を照射可能な要素である。光源とは、例えばLED(Light Emitting Diode)などの光を発生する素子である。光源は、1個のLEDから構成されてもよいし、複数のLEDを組み合わせて1ヵ所に配置することにより構成されてもよい。以下では、このように照明部を表す用語として「光源」を用いる場合がある。
視点検出を精度よく行うためには、瞳孔位置を正しく検出できることが重要となっている。近赤外の光源を点灯させカメラで撮影した場合、カメラと光源の距離が一定以上離れていると、瞳孔は他の部分より暗くなることがわかっている。この特徴を用いて瞳孔位置が検出される。
本実施形態では、2台のカメラに対して、光源をそれぞれのカメラの外側に2ヶ所配置する。そして、これらの2つの光源を相互に異なるタイミングで点灯させ、点灯している光源からの距離が長い方(遠い方)のカメラで撮影する。これにより、瞳孔をより暗く撮影し、瞳孔と他の部分とを、より高精度に区別することが可能となる。
この場合、点灯させる光源が異なるため、通常のステレオ方式による三次元計測を単純に適用することができない。すなわち、視点を求める際の光源と角膜反射を結ぶ直線を世界座標で算出することができない。そこで本実施形態では、2つのタイミングでの、撮像に用いるカメラ相互の位置関係、および、点灯させる光源相互の位置関係を、仮想的な光源の位置(仮想光源位置)に対してそれぞれ対称とする。そして、2つの光源それぞれの点灯時に得られる2つの座標値を、左カメラによる座標値および右カメラによる座標値として世界座標に変換する。これにより、2つの光源それぞれの点灯時に得られる角膜反射位置を用いて、仮想光源と角膜反射を結ぶ直線を世界座標で算出すること、および、この直線に基づき視点を算出することが可能となる。
図1は、1つの光源を使用した場合の被験者の目11の様子を示す図である。図1に示すように、虹彩12と瞳孔13との暗さの差が十分ではなく、区別が困難となる。図2は、2つの光源を使用した場合の被験者の目21の様子を示す図である。図2に示すように、虹彩22と瞳孔23との暗さの差は、図1と比較して大きくなっている。
図3および4は、本実施形態の表示部、ステレオカメラ(撮像部)、赤外線光源および被験者の配置の一例を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の診断支援装置は、表示部101と、ステレオカメラを構成する右カメラ102a、左カメラ102bと、LED光源103a、103bと、を含む。右カメラ102a、左カメラ102bは、表示部101の下に配置される。LED光源103a、103bは、右カメラ102a、左カメラ102bそれぞれの外側の位置に配置される。LED光源103a、103bは、例えば波長850nmの近赤外線を照射する光源である。図3では、9個のLEDによりLED光源103a、103b(照明部)を構成する例が示されている。なお、右カメラ102a、左カメラ102bは、波長850nmの近赤外光を透過できるレンズを使用する。なお、LED光源103a、103bと、右カメラ102a、左カメラ102bとの位置を逆にして、LED光源103a、103bを、右カメラ102a、左カメラ102bそれぞれの内側の位置に配置されていてもよい。
図4に示すように、LED光源103a、103bは、被験者の眼球111に向かって近赤外光を照射する。LED光源103aを照射したときに左カメラ102bで撮影を行い、LED光源103bを照射したときに右カメラ102aで撮影を行う。右カメラ102aおよび左カメラ102bと、LED光源103a、103bとの位置関係を適切に設定することにより、撮影される画像では、瞳孔112が低輝度で反射して暗くなり、眼球111内に虚像として生じる角膜反射113が高輝度で反射して明るくなる。従って、瞳孔112および角膜反射113の画像上の位置を2台のカメラ(右カメラ102a、左カメラ102b)それぞれで取得することができる。
さらに2台のカメラにより得られる瞳孔112および角膜反射113の位置から、瞳孔112および角膜反射113の位置の三次元世界座標値を算出する。本実施形態では、三次元世界座標として、表示部101の画面の中央位置を原点として、上下をY座標(上が+)、横をX座標(向かって右が+)、奥行きをZ座標(手前が+)としている。
図5は、診断支援装置100の機能の概要を示す図である。図5では、図3および4に示した構成の一部と、この構成の駆動などに用いられる構成を示している。図5に示すように、診断支援装置100は、右カメラ102aと、左カメラ102bと、左カメラ102b用のLED光源103aと、右カメラ102a用のLED光源103bと、スピーカ205と、駆動・IF(interface)部313と、制御部300と、記憶部150と、表示部101と、を含む。図5において、表示画面201は、右カメラ102aおよび左カメラ102bとの位置関係を分かりやすく示しているが、表示画面201は表示部101において表示される画面である。なお、駆動部とIF部は一体でもよいし、別体でもよい。
スピーカ205は、キャリブレーション時などに、被験者に注意を促すための音声などを出力する音声出力部として機能する。
駆動・IF部313は、ステレオカメラに含まれる各部を駆動する。また、駆動・IF部313は、ステレオカメラに含まれる各部と、制御部300とのインタフェースとなる。
制御部300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信IFと、各部を接続するバスを備えているコンピュータなどにより実現できる。
記憶部150は、制御プログラム、測定結果、診断支援結果など各種情報を記憶する。記憶部150は、例えば、表示部101に表示する画像等を記憶する。表示部101は、診断のための対象画像等、各種情報を表示する。
図6は、図5に示す各部の詳細な機能の一例を示すブロック図である。図6に示すように、制御部300には、表示部101と、駆動・IF部313が接続される。駆動・IF部313は、カメラIF314、315と、LED駆動制御部316と、スピーカ駆動部322と、を備える。
駆動・IF部313には、カメラIF314、315を介して、それぞれ、右カメラ102a、左カメラ102bが接続される。駆動・IF部313がこれらのカメラを駆動することにより、被験者を撮像する。右カメラ102aからはフレーム同期信号が出力される。フレーム同期信号は、左カメラ102bとLED駆動制御部316とに入力される。これにより、LED光源103a、103bを発光させ、それに対応して左右カメラによる画像を取り込んでいる。
スピーカ駆動部322は、スピーカ205を駆動する。なお、診断支援装置100が、印刷部としてのプリンタと接続するためのインタフェース(プリンタIF)を備えてもよい。また、プリンタを診断支援装置100の内部に備えるように構成してもよい。
制御部300は、診断支援装置100全体を制御する。制御部300は、点灯制御部351と、位置検出部352と、曲率中心算出部353と、視線検出部354と、視点検出部355と、出力制御部356と、評価部357と、エリア設定部358と、エリア内検出部359と、を備えている。
制御部300に含まれる各要素(点灯制御部351、位置検出部352、曲率中心算出部353、視線検出部354、視点検出部355、出力制御部356、評価部357、エリア設定部358およびエリア内検出部359)は、ソフトウェア(プログラム)で実現してもよいし、ハードウェア回路で実現してもよいし、ソフトウェアとハードウェア回路とを併用して実現してもよい。
プログラムで実現する場合、当該プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD−R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供される。プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
点灯制御部351は、LED駆動制御部316を用いて、LED光源103a、103bの点灯を制御する。例えば点灯制御部351は、LED光源103a、103bを、相互に異なるタイミングで点灯するように制御する。タイミングの差(時間)は、例えば、被験者の視線の移動等による視線検出結果への影響が生じない時間として予め定められた時間とすればよい。
位置検出部352は、ステレオカメラにより撮像された眼球の画像から、瞳孔の中心を示す瞳孔中心の位置を算出する。また位置検出部352は、撮像された眼球の画像から、角膜反射の中心を示す角膜反射中心の位置を算出する。
曲率中心算出部353は、仮想光源位置と角膜反射中心とを結ぶ直線から、角膜曲率中心を算出する。例えば、曲率中心算出部353は、この直線上で、角膜反射中心からの距離が所定値となる位置を、角膜曲率中心として算出する。所定値は、一般的な角膜の曲率半径値などから事前に定められた値を用いることができる。
角膜の曲率半径値には個人差が生じうるため、事前に定められた値を用いて角膜曲率中心を算出すると誤差が大きくなる可能性がある。従って、曲率中心算出部353が、個人差を考慮して角膜曲率中心を算出してもよい。この場合、曲率中心算出部353は、まず目標位置を被験者に注視させたときに算出された瞳孔中心および角膜反射中心を用いて、瞳孔中心と目標位置とを結ぶ直線と、角膜反射中心と仮想光源位置とを結ぶ直線と、の交点を算出する。そして曲率中心算出部353は、瞳孔中心と算出した交点との距離を算出し、例えば記憶部150に記憶する。
目標位置は、予め定められ、三次元世界座標値が算出できる位置であればよい。例えば、表示画面201の中央位置(三次元世界座標の原点)を目標位置とすることができる。この場合、例えば出力制御部356が、表示画面201上の目標位置(中央)に、被験者に注視させる画像(目標画像)等を表示する。これにより、被験者に目標位置を注視させることができる。
目標画像は、被験者を注目させることができる画像であればどのような画像であってもよい。例えば、輝度や色などの表示態様が変化する画像、および、表示態様が他の領域と異なる画像などを目標画像として用いることができる。
なお、目標位置は表示画面201の中央に限られるものではなく、任意の位置でよい。表示画面201の中央を目標位置とすれば、表示画面201の任意の端部との距離が最小になる。このため、例えば視線検出時の測定誤差をより小さくすることが可能となる。
距離の算出までの処理は、例えば実際の視線検出を開始するまでに事前に実行しておく。実際の視線検出時には、曲率中心算出部353は、仮想光源位置と角膜反射中心とを結ぶ直線上で、瞳孔中心からの距離が、事前に算出した距離となる位置を、角膜曲率中心として算出する。曲率中心算出部353が、仮想光源位置と、表示部上の目標画像を示す所定の位置と、瞳孔中心の位置と、角膜反射中心の位置と、から角膜曲率中心を算出する算出部に相当する。
視線検出部354は、瞳孔中心と角膜曲率中心とから被験者の視線を検出する。例えば視線検出部354は、角膜曲率中心から瞳孔中心へ向かう方向を被験者の視線方向として検出する。
視点検出部355は、検出された視線方向を用いて被験者の視点を検出する。視点検出部355は、例えば、表示画面201で被験者が注視する点である視点(注視点)を検出する。視点検出部355は、例えば図2のような三次元世界座標系で表される視線ベクトルとXY平面との交点を、被験者の注視点として検出する。
出力制御部356は、表示部101およびスピーカ205などに対する各種情報の出力を制御する。例えば、出力制御部356は、表示部101上の目標位置に目標画像を出力させる。また、出力制御部356は、診断画像、および、評価部357による評価結果などの表示部101に対する出力を制御する。
診断画像は、視線(視点)検出結果に基づく評価処理に応じた画像であればよい。例えば発達障がいを診断する場合であれば、発達障がいの被験者が好む画像(幾何学模様映像など)と、それ以外の画像(人物映像など)と、を含む診断画像を用いてもよい。また、自閉スペクトラム症(ASD)で用いられる診断画像としては、少なくとも人の顔を含む画像となっており、例えば、図15に示す映像が用いられる。
図15は、表示される映像(診断画像)の一例を示す図である。図15に示すように、診断画像は、中央に人物の顔画像が配置される自然画の動画である。この診断画像は、人物の顔の動きの少ない画像が望ましい。なお、診断画像は、動画に限らず、静止画であってもよい。また、診断画像は、その背景を単純なものにすることがよく、背景を明るい色として背景と人物とのコントラスト(輝度差)を高くすることがより望ましい。
ここで、図16を参照して、診断画像に対する注視パターンの一例について説明する。図16は、診断画像に対する注視パターンの一例を示す図である。図16に示すVPは、視点検出部355により検出した注視点である。図16に示すように、自閉スペクトラム症のリスクが高い被験者は、人物の髪と背景との境界部分における輪郭の他、人物の肌と髪との境界部分における輪郭に沿って注視点VPが移動する注視パターンがよく見られる。輪郭の検出は、コントラスト(輝度差)によって検出しているが、これに限らず、プログラム設定により映像の輪郭部分を長方形などの複合的なエリアで設定してもよいし、ユーザが任意に設定してもよい。
エリア設定部358は、診断画像における顔の所定の部分に複数のエリアA1〜A13を設定する。図17は、表示される映像(診断画像)に設定されるエリアを示す図である。図17に示すように、エリア設定部358は、診断画像における顔の目元部分に目元エリアA1を設定する。また、エリア設定部358は、診断画像における顔の口元部分に口元エリアA2を設定する。診断画像における顔の目元部分および口元部分のエリア設定は、目付近及び口付近の長方形の領域で設定する。さらに、エリア設定部358は、診断画像における顔の輪郭部分に複数の輪郭エリアA3〜A13を設定する。ここで、複数の輪郭エリアA3〜A13は、さらに詳細に区分けされており、背景と髪との輪郭部分に設定される輪郭エリアA3〜A9と、髪とおでことの輪郭部分に設定される輪郭エリアA10〜A11と、髪と頬との輪郭部分に設定される輪郭エリアA12〜A13と、を含むエリアとなっている。
各エリアA1〜A13は、例えば長方形の領域となっており、注視点の座標に基づいて、注視点がエリアA1〜A13内にあるか、エリアA1〜A13外にあるかを判別可能なエリアとして設定されている。なお、エリア設定部358は、診断画像を表示する映像において人物が移動する場合、各エリアA1〜A13が、人物の移動に追従して移動するように設定している。なお、本実施形態では顔の動きの少ない動画を利用するのが好ましいが、顔が動く場合にはエリア設定部358によりコマ毎に各エリアA1〜A13を設定してもよく、動いた場面毎に各エリアアA1〜A13を設定してもよい。
ここで、各エリアA1〜A13には、後述する評価部357において用いられる補正係数K1〜K5が対応付けられており、この補正係数K1〜K5は、記憶部150に記憶されている。具体的に、輪郭エリアA3〜A9には、補正係数K1が対応付けられ、輪郭エリアA10〜A11には、補正係数K2が対応付けられ、輪郭エリアA12〜A13には、補正係数K3が対応付けられている。そして、補正係数は、「K1>K2>K3」の関係となるように設定されている。また、目元エリアA1には、補正係数K4が対応付けられ、口元エリアA2には、補正係数K5が対応付けられている。
エリア内検出部359は、各エリアA1〜A13内への注視点の停留を検出する。エリア内検出部359は、注視点の座標と、各エリアA1〜A13の座標範囲とに基づいて、注視点がエリアA1〜A13内にあるか、エリアA1〜A13外にあるかを判別している。このため、エリア内検出部359は、注視点が所定のエリアA1〜A13内にある場合、注視点が所定のエリアA1〜A13に停留したとして検出する。一方で、エリア内検出部359は、注視点が所定のエリアA1〜A13外にある場合、注視点が所定のエリアA1〜A13に停留していないとして検出する。
評価部357は、診断画像と、視点検出部355により検出された注視点とに基づく評価処理を行う。例えば発達障がいを診断する場合であれば、評価部357は、診断画像と注視点とを解析し、発達障がいの被験者が好む画像部分を注視したか否かを評価する。具体的に、評価部357は、各エリアA1〜A13に対する注視点の停留時間と、上記の補正係数K1〜K5とを用いた演算式(詳細は後述)に基づき、評価値を算出する。そして、評価部357は、ASDを判定するために予め設定された所定のしきい値と、算出した評価値とを比較することで、被験者のASDのリスクを評価する。
図7は、1つの光源を用いると仮定した場合の処理の概要を説明する図である。図3〜図6で説明した要素については同一の符号を付し説明を省略する。図7の例では、2つのLED光源103a、103bの代わりに、1つのLED光源203が用いられる。
瞳孔中心407および角膜反射中心408は、それぞれ、1つのLED光源203を点灯させた際に検出される瞳孔の中心、および、角膜反射点の中心を表している。角膜曲率半径409は、角膜表面から角膜曲率中心410までの距離を表す。LED光源203は、ここでは1個のLEDとしているが、数個の小さいLEDを組み合わせて1ヵ所に配置されたものであっても構わない。
図8は、本実施形態の診断支援装置100により実行される処理の概要を説明する図である。図3〜図6で説明した要素については同一の符号を付し説明を省略する。
角膜反射点621は左カメラ102bで撮影したときの画像上の角膜反射点を表す。角膜反射点622は右カメラ102aで撮影したときの画像上の角膜反射点を表す。本実施形態では、右カメラ102aと右カメラ用のLED光源103b、および、左カメラ102bと左カメラ用のLED光源103aは、例えば右カメラ102aと左カメラ102bの中間位置を通る直線に対して左右対称の位置関係にある。このため、右カメラ102aと左カメラ102bの中間位置(仮想光源位置)に仮想光源303があるとみなすことができる。角膜反射点624は、仮想光源303に対応する角膜反射点を表す。角膜反射点621の座標値と角膜反射点622の座標値を、左右カメラの座標値を三次元世界座標に変換する変換パラメータを用いて変換することにより、角膜反射点624の世界座標値が算出できる。仮想光源303と角膜反射点624を結ぶ直線523上に角膜の曲率中心505が存在する。従って、図7で表した光源が1ヵ所の視線検出方法と同等の方法で視点検出が可能である。
なお右カメラ102aと左カメラ102bとの位置関係、および、LED光源103aとLED光源103bとの位置関係は、上述の位置関係に限られるものではない。例えば同一の直線に対して、それぞれの位置関係が左右対称となる関係であってもよいし、右カメラ102aと左カメラ102bと、LED光源103aとLED光源103bとは同一直線上になくてもよい。
図9は、視点検出(視線検出)を行う前に、角膜曲率中心位置と、瞳孔中心位置と角膜曲率中心位置との距離を算出する算出処理を説明するための図である。図3〜図6で説明した要素については同一の符号を付し説明を省略する。
目標位置605は、表示部101上の一点に目標画像等を出して、被験者に見つめさせるための位置である。本実施形態では表示部101の画面の中央位置としている。直線613は、仮想光源303と角膜反射中心612とを結ぶ直線である。直線614は、被験者が見つめる目標位置605(注視点)と瞳孔中心611とを結ぶ直線である。角膜曲率中心615は、直線613と直線614との交点である。曲率中心算出部353は、瞳孔中心611と角膜曲率中心615との距離616を算出して記憶しておく。
図10は、本実施形態の算出処理の一例を示すフローチャートである。
まず出力制御部356は、表示部101の画面上の1点に目標画像を再生し(ステップS101)、被験者にその1点を注視させる。次に、点灯制御部351は、LED駆動制御部316を用いてLED光源103a、103bのうち一方を被験者の目に向けて点灯させる(ステップS102)。制御部300は、左右カメラ(右カメラ102a、左カメラ102b)のうち点灯したLED光源からの距離が長い方のカメラで被験者の目を撮像する(ステップS103)。次に、点灯制御部351は、LED光源103a、103bのうち他方を被験者の目に向けて点灯させる(ステップS104)。制御部300は、左右カメラのうち点灯したLED光源からの距離が長い方のカメラで被験者の目を撮像する(ステップS105)。
なお、点灯したLED光源からの距離が長いカメラ以外のカメラによる撮像を停止しなくてもよい。すなわち、少なくとも点灯したLED光源からの距離が長い方のカメラで被験者の目を撮像し、撮像した画像が座標算出等に利用可能となっていればよい。
LED光源103aまたはLED光源103bの照射により、瞳孔部分(瞳孔領域)は暗い部分(暗瞳孔)として検出される。またLED照射の反射として、角膜反射の虚像が発生し、明るい部分として角膜反射点(角膜反射中心)が検出される。すなわち、位置検出部352は、撮像された画像から瞳孔部分を検出し、瞳孔中心の位置を示す座標を算出する。位置検出部352は、例えば目を含む一定領域の中で最も暗い部分を含む所定の明るさ以下の領域を瞳孔部分として検出し、最も明るい部分を含む所定の明るさ以上の領域を角膜反射として検出する。また、位置検出部352は、撮像された画像から角膜反射部分(角膜反射領域)を検出し、角膜反射中心の位置を示す座標を算出する。なお、位置検出部352は、左右カメラで取得した2つの画像それぞれに対して、各座標値を算出する(ステップS106)。
なお、左右カメラは、三次元世界座標を取得するために、事前にステレオ較正法によるカメラ較正が行われており、変換パラメータが算出されている。ステレオ較正法は、Tsaiのカメラキャリブレーション理論を用いた方法など従来から用いられているあらゆる方法を適用できる。
位置検出部352は、この変換パラメータを使用して、左右カメラの座標から、瞳孔中心と角膜反射中心の三次元世界座標に変換を行う(ステップS107)。例えば位置検出部352は、LED光源103aが点灯されたときに左カメラ102bにより撮像された画像から得られた座標を左カメラの座標とし、LED光源103bが点灯されたときに右カメラ102aにより撮像された画像から得られた座標を右カメラの座標として、変換パラメータを用いて三次元世界座標への変換を行う。この結果得られる世界座標値は、仮想光源303から光が照射されたと仮定したときに左右カメラで撮像された画像から得られる世界座標値に対応する。曲率中心算出部353は、求めた角膜反射中心の世界座標と、仮想光源303の中心位置の世界座標とを結ぶ直線を求める(ステップS108)。次に、曲率中心算出部353は、表示部101の画面上の1点に表示される目標画像の中心の世界座標と、瞳孔中心の世界座標とを結ぶ直線を算出する(ステップS109)。曲率中心算出部353は、ステップS108で算出した直線とステップS109で算出した直線との交点を求め、この交点を角膜曲率中心とする(ステップS110)。曲率中心算出部353は、このときの瞳孔中心と角膜曲率中心との間の距離を算出して記憶部150などに記憶する(ステップS111)。記憶された距離は、その後の視点(視線)検出時に、角膜曲率中心を算出するために使用される。
算出処理で表示部101上の1点を見つめる際の瞳孔中心と角膜曲率中心との間の距離は、表示部101内の視点を検出する範囲で一定に保たれている。瞳孔中心と角膜曲率中心との間の距離は、目標画像を再生中に算出された値全体の平均から求めてもよいし、再生中に算出された値のうち何回かの値の平均から求めてもよい。
図11は、視点検出を行う際に、事前に求めた瞳孔中心と角膜曲率中心との距離を使用して、補正された角膜曲率中心の位置を算出する方法を示した図である。注視点805は、一般的な曲率半径値を用いて算出した角膜曲率中心から求めた注視点を表す。注視点806は、事前に求めた距離を用いて算出した角膜曲率中心から求めた注視点を表す。
瞳孔中心811および角膜反射中心812は、それぞれ、視点検出時に算出された瞳孔中心の位置、および、角膜反射中心の位置を示す。直線813は、仮想光源303と角膜反射中心812とを結ぶ直線である。角膜曲率中心814は、一般的な曲率半径値から算出した角膜曲率中心の位置である。距離815は、事前の算出処理により算出した瞳孔中心と角膜曲率中心との距離である。角膜曲率中心816は、事前に求めた距離を用いて算出した角膜曲率中心の位置である。角膜曲率中心816は、角膜曲率中心が直線813上に存在すること、および、瞳孔中心と角膜曲率中心との距離が距離815であることから求められる。これにより一般的な曲率半径値を用いる場合に算出される視線817は、視線818に補正される。また、表示部101の画面上の注視点は、注視点805から注視点806に補正される。
図12は、本実施形態の視線検出処理の一例を示すフローチャートである。例えば、診断画像を用いた診断処理の中で視線を検出する処理として、図12の視線検出処理を実行することができる。診断処理では、図12の各ステップ以外に、診断画像を表示する処理、および、注視点の検出結果を用いた評価部357による評価処理などが実行される。
ステップS201〜ステップS207は、図10のステップS102〜ステップS108と同様であるため説明を省略する。
曲率中心算出部353は、ステップS207で算出した直線上であって、瞳孔中心からの距離が、事前の算出処理によって求めた距離と等しい位置を角膜曲率中心として算出する(ステップS208)。
視線検出部354は、瞳孔中心と角膜曲率中心とを結ぶベクトル(視線ベクトル)を求める(ステップS209)。このベクトルが、被験者が見ている視線方向を示している。視点検出部355は、この視線方向と表示部101の画面との交点の三次元世界座標値を算出する(ステップS210)。この値が、被験者が注視する表示部101上の1点を世界座標で表した座標値である。視点検出部355は、求めた三次元世界座標値を、表示部101の二次元座標系で表される座標値(x,y)に変換する(ステップS211)。これにより、被験者が見つめる表示部101上の視点(注視点)を算出することができる。
(変形例)
瞳孔中心位置と角膜曲率中心位置との距離を算出する算出処理は、図9および図10で説明した方法に限られるものではない。以下では、算出処理の他の例について図13および図14を用いて説明する。
図13は、本変形例の算出処理を説明するための図である。図3〜図6および図9で説明した要素については同一の符号を付し説明を省略する。
線分1101は、目標位置605と仮想光源位置とを結ぶ線分である。線分1102は、線分1101と平行で、瞳孔中心611と直線613とを結ぶ線分である。本変形例では、以下のように、線分1101、線分1102を用いて瞳孔中心611と角膜曲率中心615との距離616を算出して記憶しておく。
図14は、本変形例の算出処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS301〜ステップS309は、図10のステップS101〜ステップS109と同様であるため説明を省略する。
曲率中心算出部353は、表示部101の画面上の1点に表示される目標画像の中心と、仮想光源位置とを結ぶ線分(図13では線分1101)を算出するとともに、算出した線分の長さ(L1101とする)を算出する(ステップS310)。
曲率中心算出部353は、瞳孔中心611を通り、ステップS310で算出した線分と平行な線分(図13では線分1102)を算出するとともに、算出した線分の長さ(L1102とする)を算出する(ステップS311)。
曲率中心算出部353は、角膜曲率中心615を頂点とし、ステップS310で算出した線分を下辺とする三角形と、角膜曲率中心615を頂点とし、ステップS311で算出した線分を下辺とする三角形とが相似関係にあることに基づき、瞳孔中心611と角膜曲率中心615との間の距離616を算出する(ステップS312)。例えば曲率中心算出部353は、線分1101の長さに対する線分1102の長さの比率と、目標位置605と角膜曲率中心615との間の距離に対する距離616の比率と、が等しくなるように、距離616を算出する。
距離616は、以下の(1)式により算出することができる。なおL614は、目標位置605から瞳孔中心611までの距離である。
距離616=(L614×L1102)/(L1101−L1102)・・・(1)
曲率中心算出部353は、算出した距離616を記憶部150などに記憶する(ステップS313)。記憶された距離は、その後の視点(視線)検出時に、角膜曲率中心を算出するために使用される。
次に、このように構成された本実施形態にかかる診断支援装置100による診断支援処理について図18を用いて説明する。図18は、本実施形態における診断支援処理の一例を示すフローチャートである。なお、これ以前に個別のキャリブレーションは完了しているものとする。キャリブレーションには、上述のようなカメラキャリブレーション、または、視線検出のためのキャリブレーション(視線検出用較正)が含まれる。
先ず、出力制御部356は、診断画像としての映像の再生を開始する(ステップS401)。次に、出力制御部356は、映像の再生時間を管理するタイマをリセットする(ステップS402)。この後、評価部357は、目元エリアA1の注視点の停留時間を測定するためのカウンタCNT1と、口元エリアA2の注視点の停留時間を測定するためのカウンタCNT2と、輪郭エリアA3〜A9の注視点の停留時間を測定するためのカウンタCNT3と、輪郭エリアA10〜A11の注視点の停留時間を測定するためのカウンタCNT4と、輪郭エリアA12〜A13の注視点の停留時間を測定するためのカウンタCNT5とをリセットする(ステップS403)。この診断支援装置100では、カメラの1フレームごとに1回の注視点測定を行う。このため、1フレームごとに、注視しているエリアを判定して計数することにより各エリアA1〜A13の停留時間を計測することが可能である。
次に、視点検出部355は、被験者の注視点を検出する(ステップS404)。注視点の検出は、例えば上述の図12または図14のような手順で実行することができる。視点検出部355は、注視点の検出が失敗したかを判断する(ステップS405)。これは、瞬きなどにより、注視点を検出できない場合があることから、ステップS405を実行している。視点検出部355による注視点の検出が失敗した場合(ステップS405:Yes)、ステップS417に進む。
注視点の検出が成功した場合(ステップS405:No)、エリア内検出部359は、エリア設定部358により設定される各エリアA1〜A13の座標範囲を検出し(ステップS406)、注視点座標と、検出した各エリアA1〜A13の座標範囲とを比較する。
先ず、エリア内検出部359は、取得した注視点領域が、目元エリアA1(領域A1)に停留したか否かを判定する(ステップS407)。領域A1に停留している場合(ステップS407:Yes)、評価部357は、カウンタCNT1をインクリメント(カウントアップ)し(ステップS412)、ステップS417に進む。
注視点領域が、領域A1に停留していない場合(ステップS407:No)、エリア内検出部359は、注視点領域が口元エリアA2(領域A2)に停留したか否かを判定する(ステップS408)。領域A2に停留している場合(ステップS408:Yes)、評価部357は、カウンタCNT2をインクリメント(カウントアップ)し(ステップS413)、ステップS417に進む。
注視点領域が、領域A2に停留していない場合(ステップS408:No)、エリア内検出部359は、注視点領域が輪郭エリアA3〜A9(領域A3〜A9)に停留したか否かを判定する(ステップS409)。領域A3〜A9に停留している場合(ステップS409:Yes)、評価部357は、カウンタCNT3をインクリメント(カウントアップ)し(ステップS414)、ステップS417に進む。
注視点領域が、領域A3〜A9に停留していない場合(ステップS409:No)、エリア内検出部359は、注視点領域が輪郭エリアA10〜A11(領域A10〜A11)に停留したか否かを判定する(ステップS410)。領域A10〜A11に停留している場合(ステップS410:Yes)、評価部357は、カウンタCNT4をインクリメント(カウントアップ)し(ステップS415)、ステップS417に進む。
注視点領域が、領域A10〜A11に停留していない場合(ステップS410:No)、エリア内検出部359は、注視点領域が輪郭エリアA12〜A13(領域A12〜A13)に停留したか否かを判定する(ステップS411)。領域A12〜A13に停留している場合(ステップS411:Yes)、評価部357は、カウンタCNT5をインクリメント(カウントアップ)し(ステップS416)、ステップS417に進む。
注視点領域が、領域A12〜A13に停留していない場合(ステップS411:No)、評価部357は、注視点領域が、いずれの領域A1〜A13にも停留していないとして、カウンタCNT1〜CNT5をインクリメント(カウントアップ)せず、ステップS417に進む。
次に、出力制御部356は、映像の再生時間を管理するタイマの完了を確認する(ステップS417)。所定時間が経過していない場合には(ステップS417:No)、ステップS404に進み、測定を継続する。所定時間が経過して、タイマが完了した場合には(ステップS417:Yes)、出力制御部356は、映像の再生を停止させる(ステップS418)。
次に、評価部357は評価演算を行う(ステップS419)。評価部357は、例えば、下記する(2)式により、評価値を算出する。なお、(2)式の補正係数K1〜K5は、各エリアA1〜A13に関連付けた重み付けであり、CNT1〜5は、計数値である。
評価値=K1×CNT3+K2×CNT4+K3×CNT5−K4×CNT1+K5×CNT2 ・・・(2)
そして、評価部357は、算出した評価値と、ASDを判定するために予め設定された所定のしきい値とを比較して、被験者のASDのリスクを評価する。
この後、出力制御部356は、評価結果を、表示画面201などに表示する(ステップS420)。
以上のように、本実施形態によれば、診断画像の各輪郭エリアA3〜A13における注視点の停留時間に基づいて評価値を算出することができるため、自閉スペクトラム症のリスクの高い被験者を精度よく評価することができる。なお、本実施形態では、輪郭エリアA3〜A13とともに目元エリアA1および口元エリアA2に基づいた注視点の停留時間に基づいて評価値を算出しているが、目元エリアA1および口元エリアA2における注視点の停留時間に基づいて評価値を算出する処理は必ずしも含まなくてもよい。
また、本実施形態によれば、診断画像の目元エリアA1および口元エリアA2における注視点の停留時間に基づいて評価値を算出することができるため、定型発達の被験者を精度よく評価することができる。
また、本実施形態によれば、補正係数を用いて、各エリアA1〜A13における注視点の停留時間に関連して重み付けすることができるため、自閉スペクトラム症のリスクの高い被験者と、定型発達の被験者とを感度よく評価することができる。