JP6592165B1 - シミュレーション装置、コンピュータプログラム及びシミュレーション方法 - Google Patents

シミュレーション装置、コンピュータプログラム及びシミュレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有限要素法を用いた歯の移動シミュレーションよりもシミュレーション速度を向上でき、かつ、単純に歯を並進移動させる場合と比較して実際の歯の移動を精度良く再現できる歯の移動シミュレーションの技術を提供する。【解決手段】配列計算部は、歯の3次元形状及び配列を示す歯情報に基づいて、歯の理想的な配列を計算する。移動計算部は、荷重が加えられた際の歯の挙動を、歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデル201を用いて計算することで、理想的な配列に向かって歯を移動させるシミュレーションを行う。簡略化モデルは、歯に荷重が加えられて歯が傾斜するときの歯の回転移動の回転軸に相当する軸Oを設定し、設定された軸周りの回転モーメントであって荷重に応じた回転モーメントを形状が簡略化された歯に対して作用させて歯全体を回転させることで歯の挙動を計算するモデルである。【選択図】図7

Description

本開示は、シミュレーション装置、コンピュータプログラム及びシミュレーション方法に関する。
患者の歯の矯正治療の方針を決定するために矯正装置が付けられた際の歯の移動の様態をコンピュータシミュレーションすることが行われている。
特許文献1には、ブラケット、アーチワイヤ、結紮糸及び補助具からなる矯正装置と歯との間の相互作用を解析するために有限要素分析を使用するデータ処理システムが開示されている。このシステムでは、患者の歯の所望の最終の位置から前治療モデルにおける元の位置までの位置ベクトルに沿って歯を移動することによって有限要素分析を行う。有限要素分析を実行することで、歯が位置ベクトルに沿って移動するにつれてアーチワイヤがどのように変形するかが求められる。
特許第4827375号公報
特許文献1のように有限要素分析により歯の移動シミュレーションを実行した場合、膨大な時間とCPUの高い演算処理能力が必要となる。
他方、有限要素分析を使用せずに、患者の歯の3次元画像を単に並進移動させることでシミュレーションを行うことが考えられる。しかしながら、歯の一方側から荷重が加えられると歯が反対側に傾斜するなど実際の歯の移動を再現することはできず、シミュレーション精度が低い。
本開示の一局面は、有限要素法を用いた歯の移動シミュレーションよりもシミュレーション速度を向上でき、かつ、単純に歯を並進移動させる場合と比較して実際の歯の移動を精度良く再現できる歯の移動シミュレーションの技術を提供することを目的としている。
本開示の一態様は、患者の歯の移動シミュレーションを実施するシミュレーション装置であって、取得部と配列計算部と移動計算部とを備える。取得部は、歯の3次元形状及び配列を示す歯情報を取得するように構成される。配列計算部は、歯情報に基づいて、歯の理想的な配列を計算するように構成される。移動計算部は、荷重が加えられた際の歯の挙動を、歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデルを用いて計算することで、歯情報によって示される配列から理想的な配列に向かって歯を移動させるシミュレーションを行うように構成される。簡略化モデルは、歯に荷重が加えられて歯が傾斜するときの歯の回転移動の回転軸に相当する軸を設定し、設定された軸周りの回転モーメントであって荷重に応じた回転モーメントを形状が簡略化された歯に対して作用させて歯全体を回転させることで歯の挙動を計算するモデルである。
このような構成によれば、有限要素法のような複雑な計算を必要しないため、有限要素法を用いた移動シミュレーションよりもシミュレーション速度を向上できる。また、荷重が加えられた際の歯の移動として傾斜を再現できる。よって、単純に歯を並進移動させることで歯の移動シミュレーションを行う構成と比較して、荷重が加えられた際の歯の移動を精度良く再現できる。
本開示の一態様では、簡略化モデルは、歯の形状を、1つの多角柱、1つの円柱又は1つの錐体に簡略化したモデルであってもよい。ここで、「多角柱」に形状が簡略化された歯の形状は、厳密な意味での多角柱である必要はなく、目的とする効果を奏するのであれば、多角柱の辺や面が多少丸みを帯びているなど、厳密な意味で多角柱でなくてもよい。「円柱」又は「錐体」に形状が簡略化された歯の形状についても同様である。
このように歯の形状を簡略化して歯の移動シミュレーションを行っても実際の歯の移動の様態を精度良く再現できる可能性がある。したがって、上記構成によれば、シミュレーション精度を維持しつつ、有限要素法のように歯の形状を細部まで再現してシミュレーションを行う場合と比較してシミュレーション速度を向上できる。
本開示の一態様では、歯情報は、歯の周囲の歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方を特定可能であってもよい。そして、簡略化モデルでは、歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方に基づき、歯を傾ける方向に作用する回転モーメントである傾斜回転モーメントに対する抵抗が設定されてもよい。
このような構成によれば、簡略化モデルにおいて歯の挙動を実際の歯の挙動に近づけることできる。ひいては、歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方に基づき抵抗を設定しない構成と比較して、シミュレーション精度を向上させることができる。
本開示の一態様では、簡略化モデルでは、矯正装置に収容されるアタッチメント、又は、ワイヤを保持する矯正用ブラケット、が歯に付けられているか否かに応じて、軸周りの回転モーメントが調整されてもよい。
このような構成によれば、矯正装置による歯の把持力に応じた歯の挙動の変化を簡略化モデルにおいて再現できる。ひいては、アタッチメントやブラケットの有無など歯への矯正力の荷重状況に応じた歯の挙動の変化を取り入れない構成と比較してシミュレーション精度を向上できる。
本開示の一態様では、簡略化モデルにおける歯の形状を特徴付けるパラメータ及び歯の挙動を特徴付けるパラメータの少なくとも一方が、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験と、簡略化モデルとは別の、荷重が加えられた際の歯の挙動を計算する数学的モデルによるコンピュータシミュレーションと、の両方に基づいて決定されてもよい。なお、本明細書でいう物理実験とは、コンピュータシミュレーションによる実験を意味するのではなく、歯又は歯列の実物の模型を用いた実験を意味する。
このような構成によれば、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験及び簡略化モデルとは別の数学的モデルによるコンピュータシミュレーションのいずれか一方だけに基づいて前記パラメータを決定する構成と比較してシミュレーション精度を向上できる。
本開示の一態様は、出力部を更に備えてもよい。出力部は、移動計算部によるシミュレーションに基づいて、矯正装置の形状、又は、矯正装置を作製する際の雄型に相当する歯列模型の形状、を出力するように構成される。
このような構成によれば、出力部による出力結果に基づきアライナーを作製できる。
前記シミュレーション装置としてコンピュータを機能させるコンピュータプログラム、シミュレーション装置を実現するための制御方法、前記コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記憶媒体も新規で有用である。
図1は、データ処理システムの構成を示すブロック図である。 図2は、簡略化モデルの策定の流れを示すフローチャートである。 図3Aは、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験、及び、コンピュータシミュレーション、において変更される各種パラメータを説明する図、図3Bは、歯の断面形状を示す図である。 図4は、矯正用ブラケットやアタッチメントが付けられた歯を示す図である。 図5は、矯正装置による荷重が加えられた際の歯の挙動を有限要素法によりシミュレーションした場合のシミュレーション結果を示す図である。 図6は、矯正装置による荷重が加えられた際の実際の歯の挙動を示す図である。 図7A〜図7Eは、それぞれ、簡略化モデルによるシミュレーションにより移動される歯を示す図(1)〜(5)である。 図8は、簡略化モデルにおいて歯を並進移動させる場合の計算方法を説明するための図である。 図9は、移動シミュレーション処理のフローチャートである。 図10は、矯正装置による荷重が加えられた際の歯の挙動を並進移動によりシミュレーションした場合のシミュレーション結果を示す図である。 図11は、簡略化された歯の形状の別の例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すデータ処理システム1は、矯正装置としてのアライナーを製作するための歯の移動のコンピュータシミュレーションを行い、シミュレーション結果に基づきアライナーを製作するためのシステムである。アライナーは、患者の歯に装着される、着脱可能な透明なマウスピースである。
データ処理システム1は、CPUなどからなる少なくとも一つのプロセッサ10と、バスシステム20を介してプロセッサ10と通信する数々の周辺機器と、を含む。
これらの周辺機器は、典型的には、ユーザインターフェース11、ネットワークインタフェース12、歯情報取得装置13、格納サブシステム14及び製作機械15を含む。データ処理システム1は、端末又はローエンドパーソナルコンピュータ、或いはハイエンドパーソナルコンピュータ、ワークステーション又はメインフレーム等で実施可能である。
バスシステム20は、単一のバスとして模式的に示されるが、典型的なシステムは、ローカルバス及び一つ以上の拡張バス(例えば、ADB、SCSI、ISA、EISA、MCA、NuBus、又はPCI)など複数のバスと、シリアル及びパラレルポートとを有する。ネットワーク接続は、通常、これらの拡張バスの一つ上におけるネットワークアダプタ、又はシリアルポートのモデム等のデバイスを介して確立される。
ユーザインターフェース11は、ユーザインターフェース入力装置及びユーザインターフェース出力装置を含む。ユーザインターフェース入力装置は、典型的には、キーボードを含み得、ポインティング装置及びスキャナを更に含み得る。ポインティング装置は、マウス、トラックボール、タッチパッド、又はグラフィックタブレットなどの間接的ポインティング装置、或いはディスプレイに組み込まれたタッチスクリーンなどの直接的ポインティング装置であり得る。音声識別システムなど、他の種類のユーザインターフェース入力装置も可能である。
ユーザインターフェース出力装置は、典型的には、プリンタ及び、表示制御器及び制御器に結合された表示装置を含む表示サブシステムを含む。表示装置は、陰極線管(CRT)、液晶表示(LCD)のようなフラットパネル装置、映写装置であり得る。表示サブシステムは、音響出力のような非視覚的表示も供給し得る。
ネットワークインタフェース12には、ネットワークサーバ、ウェブサイト、その他ユーザ等といった外部機械へ接続するためのインタフェースである。
歯情報取得装置13は、光学印象又はCTスキャンにより患者から歯情報を取得し、取得された歯情報を、後の処理のために格納サブシステム14に供給し、格納する。
ここでいう歯情報とは、患者の上下歯列の各歯(各歯牙)の歯冠部及び歯根部の3次元形状、各歯の配列を示す情報である。また、歯情報は、歯の周囲の歯槽骨部分の外形及び内部特性、上下歯列の各歯と歯槽骨部分との位置関係等を示す情報である。ここでいう歯根部分の内部特性には、骨密度の情報が含まれる。特に、歯情報には、患者の各歯に矯正用ブラケット(以下、単にブラケットともいう。)又はアタッチメントが付いている場合、そのブラケット又はアタッチメントの取付け位置及び形状の情報も含まれる。
格納サブシステム14は、基本プログラミング及びデータ構成を維持する。格納サブシステム14は、典型的には、メモリサブシステム141及びファイル格納サブシステム144を含む。
メモリサブシステム141は、典型的には、プログラム実行時の命令及びデータの格納のためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)142、及び固定命令が格納されるリードオンリーメモリ(ROM)143などの複数のメモリを含む。
ファイル格納サブシステム144は、プログラム及びデータファイルに対して持続性(不揮発性)格納を提供し、典型的には、少なくとも一つのハードディスクドライブと、少なくとも一つのフロッピー(登録商標)ディスクドライブ(関連するリムーバブル媒体を含む)を含む。また、ファイル格納サブシステム144は、CD−ROMドライブ及び光学ドライブ(全て関連するリムーバブル媒体を含む)などの他のデバイスも含み得る。さらに、ファイル格納サブシステム144は、リムーバブル媒体カートリッジを伴う型のドライブを含み得る。
ファイル格納サブシステム144には、各患者の歯情報が記憶されている。特に、一の患者の歯情報(すなわち一の患者の各歯の情報)は単一ファイルに記憶されている。
また、ファイル格納サブシステム144には、簡略化モデルが記憶されている。ここでいう簡略化モデルとは、荷重が加えられた際の歯の挙動を計算するための数学的モデルであり、患者の歯の形状を実際の歯の形状よりも簡略化して歯の挙動を計算する数学的モデルである。この簡略化モデルでは、歯の挙動の計算方法も既知のシミュレーション方法である有限要素法よりも簡略化される。本実施形態ではプロセッサ10が図9に示す後述する移動シミュレーション処理を実行することで、簡略化モデルを用いた歯の移動シミュレーションが実行される。また、図9に示す移動シミュレーション処理の実行により、患者の歯の現在の配列から理想的な配列に向かって歯が移動する際の矯正治療段階に対応する、アライナーの形状を示すステレオリソグラフィ(STL)データが出力される。
データ処理システム1の各種機能は、プロセッサ10が非遷移的実体的記憶媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、格納サブシステム14が、プログラムを格納した非遷移的実体的記憶媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、プロセッサ10を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
製作機械15は、出力された前記STLデータに基づき矯正装置16としてのアライナーを製作する。本実施形態では、製作機械15は3次元プリンタである。分布型の環境では、製作機械15は遠隔位置に位置し得、ネットワークインタフェース12を介して、STLデータを受け取る。
[2.簡略化モデル]
次に、本実施形態の簡略化モデルについて説明する。簡略化モデルは、歯の形状及び移動(挙動)を特徴付ける複数のパラメータを有する。これらのパラメータは、図2に示すように、患者の歯又は歯列のモデル(実物の模型)を用いた物理実験(T1)と、簡略化モデルとは別の、荷重が加えられた際の歯の挙動を計算する数学的モデルによるコンピュータシミュレーション(T2)と、の両方に基づいて決定される。本実施形態では、簡略化モデルとは別の数学的モデルとして、有限要素法を用いた数学的モデル(以下、有限要素モデル)が使用される。
すなわち、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験と高精度の計算(力学解析)シミュレーションとの両方を用いて、荷重が加えられた際の歯の移動パターンを特定する。そして、特定された移動パターンを簡略化モデルによるシミュレーションに反映させる。
図2に示すように、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験(T1)→高精度の計算シミュレーション(T2)→簡略化モデルの策定(T3)の順で簡略化モデルが策定される。以下では、まず歯又は歯列のモデルを用いた物理実験について説明し、その後、有限要素モデルによる計算シミュレーションについて説明する。その後、本実施形態の簡略化モデルについて説明する。
<歯又は歯列のモデルを用いた物理実験(T1)>
まず、複数人の患者の歯情報を元に歯根形状を分類し、各分類に対応する典型例として歯(歯牙)の3次元実物モデル(実物の模型)を3Dプリンタなどで作成する。そして、作成された歯又は歯列のモデルをワックスに埋める。ワックスは、歯肉及び歯槽骨部分をモデル化したものである。そして、歯に荷重(例えば50グラムの荷重)を加えて歯の移動(傾斜、平行移動等)の様態を調べる。なお、ここでいう荷重は、アライナーが歯に装着されたときに歯に加わる荷重を想定したものである。
実験は条件を変えて繰り返し行われる。ここでいう条件には、図3A及び図3Bに示すように、歯冠部の長さL1、歯根部の長さL2、歯の断面形状S、歯槽骨部分の骨密度D、歯の初期の傾斜角度(歯軸の向き)θ等が含まれる。なお、ワックスの堅さが歯槽骨部分の骨密度Dに相当する。矯正によって歯を動かしたい方向に歯が最初から傾いている場合、歯が上記方向に傾いていない場合と比べて歯に荷重を加えたときに歯が動きやすい。すなわち、荷重が加えられた際の歯の挙動が歯の初期の傾斜角度θによって変化する。このため、上記条件に歯の初期の傾斜角度θが含まれる。なお、傾斜角度θは、適宜設定された基準軸(図3では上下方向に平行な軸)からの角度として表される。また、図4に示すように、アライナー16に収容されるブラケット又はアタッチメント17が歯に付けられた場合と付けられていない場合との両方の場合で歯の挙動を調べる。
ブラケット17は、ワイヤを保持し、ワイヤとの組合せによって歯に矯正力を生じさせる装置である。ブラケット17が歯に付いているだけでワイヤを保持していない状態のものにはその上からアライナー16を被せることができる。ブラケット17が歯に付いている状態でアライナー16を被せることで、アライナー16による歯の把持力が向上する。すなわち、本明細書でいうブラケット17には、アライナー16による歯の把持力を向上させるために使用されるブラケット17が含まれる。
アタッチメント17は、接着性レジンセメント等による歯の表面に設置された突起物である。アタッチメント17は、アライナー16が歯にしっかりと固定され、歯を移動させるための荷重が歯にかかるように、歯に設置される。アタッチメント17を歯に設置することでアライナー16による歯の把持力が向上する。
<計算シミュレーション(T2)>
複数人の患者の歯情報を元に歯根形状を分類し、各分類に対応する典型例をコンピュータ上でモデル化する。ここでは、歯と、歯槽骨部分を含む歯の周囲の組織と、アライナー16と、ブラケット又はアタッチメント17と、が有限要素モデルによりモデル化される。詳細には、モデル化される対象物の形状をそのままCTスキャンからボクセル化したり、STLデータで表したりしたものが要素で分割されてモデル化される。そして、加重が加えられた際の歯の挙動をコンピュータシミュレーションにより解析する。
なお、T2の計算シミュレーションでは、AbaqusやAnsysのような有限要素分析プログラムが用いられてもよい。これらの有限要素分析プログラムは、アライナー及び患者の歯、歯根膜及び骨に作用する応力、歪み、力、摩擦及びモーメントを求めることのできる、汎用有限要素分析プログラムである。特に矯正用に書かれた有限要素分析プログラムも用いることができる。
T2ではT1と同様、条件を変えてシミュレーションが繰り返し行われる。ここでいう条件には、歯冠部の長さL1、歯根部の長さL2、歯の断面形状S、歯槽骨部分の骨密度D、歯の初期位置、歯の初期の傾斜角度(歯軸の向き)θ等が含まれる。なお、歯槽骨部分を複数の要素でモデル化する場合、歯槽骨部分のヤング率が骨密度Dに相当する。また、歯が埋め込まれ、歯が接続される基質組織を高粘性流体でモデル化した場合などには高粘性流体の形状及び粘度仕様等も上記条件に含まれる。
そして、有限要素モデルのパラメータを調整してシミュレーション精度を向上させる。ここでいうパラメータとしては、例えば、要素の数及び形状、ヤング率、ポアソン比、モデル要素の不動境界を特定する境界条件等が挙げられる。これらのパラメータは、T1の物理実験と比較しながら調整される。
図5には、有限要素モデルによる歯の移動シミュレーションの一例が示されている。図5に示す例では、歯に荷重Fが加えられると、歯が傾斜される様子がシミュレーションされている。なお、図6には、矯正装置による荷重Fが加えられた際の実際の歯の挙動が示されている。図6に示すように、荷重Fが加えられると歯は歯根部を通る軸Pを回転軸として傾斜(回転)する。図5の有限要素モデルによるシミュレーションは高い精度でこのような実際の歯の挙動を再現する。しかし、シミュレーションには時間がかかり、1歯の移動に約半日程度かかる。
<簡略化モデルの策定(T3)>
簡略化モデルは、歯の形状を実際の形状よりも簡略化しつつ、歯の移動の計算方法も有限要素モデル等と比較して簡略化して歯の挙動を計算する数学的モデルである。本実施形態の簡略化モデルは、以下の6つのパラメータを有する。
(1)歯の形状
簡略化モデルでは、有限要素モデルのように歯の形状が細部まで再現されず、歯の形状が極端に簡略化される。本実施形態では、図7A〜図7Dに示すように1つの歯牙(より正確には実際の歯牙をコンピュータ上で再現した歯牙の実態像)200を1つの円柱形状の剛体(以下、簡略歯)201として扱う。特に、実際の歯は歯根形状(歯根が1本か2本か等)などが異なるが、このような各歯の形状の違いを無視して全ての歯を一律に円柱形状として扱う。ただし、円柱の高さ及び半径は歯ごとに適宜変更される。
簡略歯201の形状を特徴付けるパラメータは円柱の高さL及び底面のサイズを規定する半径Rである。これらのパラメータL,Rは、実際の患者の歯の形状(図3に示す歯冠部の長さL1、歯根部の長さL2及び歯の断面形状S等)に基づき決定される。例えば、簡略歯201の高さLは歯冠部の長さL1と歯根部の長さL2との和L1+L2と等しくてもよく、和L1+L2と異なっていてもよい。また、簡略歯201の半径Rは、歯軸に垂直な方向の歯200の径の最大値としてもよく、前記径の歯軸方向における平均値などとしてもよく、また他の方法で決められてもよい。
(2)回転モーメントの回転軸の位置
簡略化モデルでは、患者の歯の挙動を再現するに当たり、まず軸Oが設定される。軸Oは、歯が矯正装置16による荷重(以下、矯正加重)により傾斜(回転)するときの歯の回転移動の回転軸に相当する軸である。軸Oは、実際の歯が傾斜(回転)する際の回転軸に相当するものであるが、実際の歯回転軸と厳密に一致していなくてもよい。また、軸Oは、簡略歯201の歯根部(歯200の歯根部に相当する部位。例えば図7Aの簡略歯201における斜線部。)を通る軸である。換言すれば、軸Oは、矯正装置16による矯正荷重によって歯が傾斜する際に歯が描く軌跡を含む平面に直交する、簡略歯201の歯根部を通る回転軸である。軸Oは、簡略歯201の円柱の側面に直交するように設定される。
軸Oの位置は、患者の歯の歯根形状ごとに設定される。すなわち、ある歯根形状では軸Oは歯根部における端から歯軸方向に沿って1/3の箇所、別の歯根形状では軸Oは歯根部における端から1/5の箇所などと設定される。なお、ここでいう歯根部の端は、歯根部の歯軸方向の両端のうち歯冠部と反対側の端(図7A〜図7Eにおける歯根部の下側の端)を指す。
(3)抵抗
簡略化モデルでは、矯正荷重による回転モーメント(以下、矯正荷重モーメント)M1に対する抵抗が設定される。この抵抗は、歯肉や歯槽骨による歯の動きにくさをモデル化したものである。本実施形態では、図7A〜図7Dに示すように抵抗は、簡略歯201に作用する、軸O周りの回転モーメントであって、矯正荷重モーメントM1とは逆向きに簡略歯201を回転させる回転モーメント(以下、抵抗モーメント)M2として実現される。
本実施形態では、抵抗モーメントM2の大きさ及び向きは、歯冠部の長さL1、歯根部の長さL2、歯の断面形状S並びに患者の歯槽骨部分の外形及び骨密度によって調整される。例えば、患者が老人の場合、歯槽骨部分の骨密度が低く、矯正荷重が加えられた際に歯が動きやすい。よって、例えば、骨密度が小さいほど抵抗(抵抗モーメントM2の大きさ)が低くなるように設定される。また、抵抗モーメントM2の大きさ及び向きは、後述のとおり、歯の初期位置及び初期の傾斜角度によっても調整される。
抵抗は、T1の物理実験及びT2の計算シミュレーションにおける歯の挙動を基に調整される。
(4)慣性モーメント及び慣性質量
簡略化モデルでは、後述するとおり、矯正荷重が加えられた際の歯の移動(傾斜及び並進移動)の様態を、回転及び並進移動の運動方程式を解くことで求める。このときの慣性モーメント及び慣性質量も簡略化モデルのパラメータである。これらのパラメータは、T1の物理実験及びT2の計算シミュレーションにおける歯の挙動を基に調整される。
(5)ブラケットやアタッチメントの有無
歯にブラケットやアタッチメント17が付いている場合、歯にブラケットやアタッチメント17が付いていない場合と比較してアライナー16による歯の把持力が向上する。その結果、アライナー16装着時において矯正荷重により歯が移動しにくくなる。簡略化モデルでは、歯にブラケットやアタッチメント17が付いている場合と、付いていない場合とを比較して、歯が移動しにくくなるように、矯正荷重モーメントM1が小さくなるように設定される。
歯にブラケットやアタッチメント17が付いている場合と付いていない場合とでどの程度矯正荷重モーメントM1の大きさ及び向きを調整するかは、T1の物理実験及びT2の計算シミュレーションにおけるブラケットやアタッチメント17が付いている場合と付いていない場合との歯の挙動の違いを基に調整される。
(6)歯の初期位置及び初期の傾斜角度
歯の初期位置及び初期の傾斜角度によって矯正荷重を歯に加えた際の歯の動きやすさが異なる。例えば、矯正によって歯を動かしたい方向に歯が最初から傾いているほど矯正荷重を歯に加えた際に歯が動きやすい。簡略化モデルでは、歯を動かしたい方向に歯が最初から傾いているほど(換言すれば歯を動かしたい方向への歯の傾斜角度θが大きいほど)抵抗モーメントM2が小さくなるように設定される。
歯の初期位置や歯の初期の傾斜角度によって抵抗モーメントM2をどの程度調整するかは、T1の物理実験及びT2の計算シミュレーションにおける歯の挙動を基に調整される。
以上が本実施形態の簡略化モデルのパラメータである。前述のとおり、物理実験及び計算シミュレーションにおける歯の挙動を再現するように、上記パラメータのうち(1)歯の形状(簡略歯201の高さL及び半径R)、(2)軸Oの位置、(3)抵抗、並びに、(4)慣性モーメント及び慣性質量、の組み合わせが決定される。また、物理実験及び計算シミュレーションにおける歯の挙動を再現するように、これらの組合せにおいて(5)ブラケットやアタッチメントの有無に応じた回転モーメントM1の大きさ及び向き、並びに、(6)歯の初期位置及び初期の傾斜角度に応じた抵抗モーメントM2の大きさ及び向き、が設定される。本実施形態では、これらのパラメータが調整された複数種類の簡略化モデルが格納サブシステム14に記憶されている。そして、患者の歯情報が与えられた際に、歯情報により特定される患者の歯に適合する簡略化モデルが前記複数種類の簡略化モデルから選択されるようになっている。
<計算方法>
簡略化モデルでは、矯正荷重に応じて歯を傾斜(回転)及び/又は並進移動させることで歯の移動シミュレーションを行う。傾斜による移動は、軸O周りの回転の運動方程式(下記式1)を角加速度αについて解くことで計算する。
I×α=T・・・式1
ここで、Iは慣性モーメント、Tはトルクである。Tは矯正荷重モーメントM1と抵抗モーメントM2との和(T=M1+M2)である。
一方、歯をできるだけ並進移動(歯体移動)させたい場合は、図8に示すように、歯の進行方向Aに簡略歯201が倒れないように回転モーメントM3を加える。回転モーメントM3は、簡略歯201に作用する、軸O周りの回転モーメントであって、矯正荷重Fによる回転モーメントM1(図示省略)とは逆向きに簡略歯201を回転させる回転モーメントである。回転モーメントM3によって矯正荷重モーメントM1に起因する簡略歯201の回転が相殺され、簡略歯201の並進移動が実現される。なお、回転モーメントM3は、歯冠部の傾斜や、歯に装着されるアライナーの硬さを適宜設定及び変更等することで簡略化モデルに導入されてもよい。
なお、簡略化モデルを用いて歯の移動シミュレーションを行うときは、図7Aに示すように、シミュレーションによる歯の移動の計算時に歯の実態像200が簡略歯201に変換される。そして、歯(簡略歯201)の移動の計算が完了し、簡略歯201を移動させた後に、再度、簡略歯201を実体像200に変換する(すなわち実体像200に戻す。)。
[3.処理]
次に、プロセッサ10が実行する移動シミュレーション処理について、図9のフローチャートを用いて説明する。移動シミュレーション処理は、ユーザインターフェース11のユーザインターフェース入力装置を介して移動シミュレーション処理を開始するための所定の操作(例えば移動シミュレーション処理開始用のソフトウェアボタンの操作等)が実行されることにより開始される。移動シミュレーション処理の実行により、患者の歯の移動シミュレーションが行われるとともに、シミュレーション結果に基づくアライナーの形状を示すSTLが出力される。
まず、S101で、プロセッサ10は、対象患者の歯情報を格納サブシステム14から取得する。ここでいう対象患者とは、歯の移動シミュレーション処理の実行対象となる患者であり、換言すれば、移動シミュレーション処理により設計しようとしているアライナーを装着する患者である。S101では、対象患者の現在の上下歯列に関する歯情報が取得される。
続いて、S102で、プロセッサ10は、S101で取得された歯情報に基づいて、対象患者の歯の理想的な配列を計算する。具体的には、プロセッサ10は、ディスクレパンシー量(ひいては上下歯列の各歯を並べるために必要なスペース)並びに上下歯列の前後位置関係及び上下位置関係に基づき上下歯列の各歯について動かすべき方向及び量を計算する。
続いて、S103で、プロセッサ10は、対象患者の歯情報に対応する簡略化モデルを特定する。具体的には、プロセッサ10は、歯情報により示される歯の歯冠部及び歯根部の形状、歯槽骨部分の外形及び内部特性(骨密度)、ブラケット又はアタッチメントの有無並びに歯の初期位置及び初期の傾斜角度等を入力として、該当する簡略化モデルを特定する。
続いて、S104で、プロセッサ10は、簡略化モデルを用いて、歯情報によって示される患者の歯の配列から理想的な配列に向かって患者のそれぞれの歯(歯牙)を移動させる。S104では、患者の歯の現在の配列から理想的な配列にかけての歯の移動方向及び移動特性(傾斜か並進移動か)が特定される。これにより、患者の歯の移動経路が特定される。
例えば、図7Aに示すように患者の歯の実態像200が簡略歯201に変換され、軸O周りの矯正荷重モーメントM1及び抵抗モーメントM2による簡略歯201の回転移動が計算される。その結果、簡略歯201の図7Aに示す位置から図7B及び図7Cに示す複数の異なる位置を経て図7Dに示す理想的な位置に至るまでの移動過程が計算される。そして、移動過程の計算が完了すると、簡略歯201から実態像200に変換される。すなわち、歯の移動の計算を行うときだけ実態像200から簡略歯201に変換される。この移動過程の計算は動かされるべき全ての歯について行われる。
続いて、S105で、プロセッサ10は、S104で特定された歯の移動過程を分割し、歯の複数の異なる配列を特定する。ここでいう複数の異なる配列は、歯情報によって示される歯の配列から理想的な配列に向かって移動する際の複数の異なる矯正治療段階に対応する。そして、各矯正治療段階に対応したアライナーの複数の異なる形状を示すSTLデータがユーザインターフェース出力装置の表示装置に出力される。その後、図9の移動シミュレーション処理を終了する。
なお、本実施形態では、出力されたSTLデータを基に3Dプリンタを用いてアライナーが作製される。
[4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態では、プロセッサ10は、荷重が加えられた際の歯の挙動を、歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデルを用いて計算することで、歯情報によって示される配列から理想的な配列に向かって歯を移動させるシミュレーションを行う。
したがって、有限要素法のような複雑な計算を必要しないため、有限要素法を用いた移動シミュレーションよりもシミュレーション速度を向上できる。具体的には、有限要素モデルによる移動シミュレーションを行う場合、1歯の移動に約半日かかる。これに対して、簡略化モデルによる移動シミュレーションによれば、1歯の移動を数秒程度で計算することができる。
また、図10に示すように歯の傾斜移動を取り入れず、単純に歯を並進移動させることで歯の移動シミュレーションを行う構成と比較して、荷重Fが加えられた際の歯の移動を精度良く再現できる。
(2)本実施形態の簡略化モデルは、歯の形状を1つの円柱に簡略化したモデルである。つまり、簡略化モデルでは、有限要素モデルのように歯の形状を細部まで再現せず、歯の形状を極端に簡略化する。このように歯の形状を簡略化してシミュレーションを行っても実際の歯の挙動を精度良く再現できる可能性がある。よって、本実施形態によれば、シミュレーション精度を維持しつつ、例えば有限要素法のように歯の形状を細部まで再現してシミュレーションを行う場合と比較してシミュレーション速度を向上できる。
(3)本実施形態の簡略化モデルでは、歯槽骨部分の外形及び内部特性(骨密度)に基づき抵抗モーメントM2が設定される。したがって、歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方に基づき抵抗を設定しない構成と比較して、歯の挙動を実際の歯の挙動に近づけ、シミュレーション精度を向上させることができる。
(4)本実施形態の簡略化モデルでは、アライナー16に収容されるアタッチメント17又はブラケット17が歯に付けられているか否かに応じて軸O周りの回転モーメントM1が調整される。実際の歯の矯正ではアタッチメント17又はブラケット17の有無によりアライナー16による歯の把持力が変化し、歯の挙動が変化する。よって、本実施形態によれば、アライナー16による歯の把持力に応じた歯の挙動の変化を簡略化モデルにおいて再現できる。ひいては、アタッチメントやブラケット17の有無など歯への矯正力の荷重状況に応じた歯の挙動の変化を取り入れない構成と比較してシミュレーション精度を向上できる。
(5)本実施形態では、簡略化モデルにおける歯の形状を特徴付けるパラメータ(円柱の高さL及び半径R)及び歯の挙動を特徴付けるパラメータ(抵抗モーメントM2、ブラケットやアタッチメントの有無による歯の挙動の変化、歯の初期位置及び初期の傾斜角度による歯の挙動の変化等)が、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験と有限要素モデルによるコンピュータシミュレーションとの両方に基づいて決定される。したがって、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験及び有限要素モデルによるコンピュータシミュレーションのいずれか一方だけに基づいて前記パラメータを決定する構成と比較してシミュレーション精度を向上できる。
(6)本実施形態では、簡略化モデルを用いた歯の移動シミュレーションに基づいて、アライナーの複数の形状が表示装置に出力される。ここで、アライナーの複数の形状は、患者の歯の複数の異なる配列のそれぞれに対応した形状であり、患者の歯の複数の異なる配列は、患者の歯の現在の配列から理想的な配列に向かって歯が移動する際の複数の異なる矯正治療段階に対応する。したがって、簡略化モデルを用いたシミュレーション結果に基づいて各矯正治療段階に対応したアライナーを作製できる。
なお、本実施形態では、プロセッサ10及び格納サブシステム14がシミュレーション装置に相当し、アライナーが矯正装置に相当し、有限要素モデルが簡略化モデルとは別の、荷重が加えられた際の歯の挙動を計算する数学的モデルに相当し、矯正荷重モーメントM1が傾斜回転モーメントに相当し、S101が取得部としての処理に相当し、S102が配列計算部としての処理に相当し、S104が移動計算部としての処理に相当し、S105が出力部としての処理に相当する。
[5.他の実施形態]
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
(1)上記実施形態では、患者の歯の形状は1つの円柱に簡略化されるが、簡略化された歯の形状はこれに限られるものではない。例えば、図11に示すように、患者の歯の形状は1つの角柱である簡略歯202に簡略化されてもよい。また例えば、患者の歯の形状は1つの錐体(円錐又は角錐等)に簡略化されてもよい。
円柱と同様、患者の歯の形状をこれらの形状に簡略化してシミュレーションを行っても実際の歯の挙動を精度良く再現できる可能性がある。したがって、上記構成によれば、シミュレーション精度を維持しつつ、例えば有限要素法のように歯の形状を細部まで再現してシミュレーションを行う場合と比較してシミュレーション速度を向上できる。
なお、患者の歯の形状を、少なくとも1つの多角柱を組み合わせた形状、少なくとも1つの円柱を組み合わせた形状、少なくとも1つの錐体を組み合わせた形状、又は、多角柱、円柱及び錐体の少なくとも2つを組み合わせた形状、等に簡略化してもよい。
(2)上記実施形態において、ブラケットやアタッチメント17が歯に付いている場合と付いていない場合とで、矯正荷重モーメントM1を小さくするのではなく、抵抗モーメントM2を調整してもよい。具体的には、ブラケットやアタッチメント17が歯に付いている場合の方が付いていない場合よりも抵抗モーメントM2が大きくなるように調整されてもよい。また、矯正荷重モーメントM1及び抵抗モーメントM2の両方が調整されてもよい。
(3)シミュレーション対象の歯の口内の位置に応じて歯の移動のし易さ(具体的には回転モーメントM1及び抵抗モーメントM2の少なくとも一方)が調整されてもよい。ここでいう歯の口内の位置は、例えば前歯か奥歯か等であってもよい。
(4)上記実施形態では、図9のS105において各矯正治療段階に対応したアライナーの複数の形状が表示装置に出力されるが、出力されるデータはこれに限られるものではない。例えば、アライナーの複数の形状ではなくアライナーの1つの形状が出力されてもよい。また例えば、雄型の歯列模型を作製し、当該歯列模型に熱可塑性樹脂を被せてアライナーを作製する場合には、前記雄型の歯列模型の1又は複数の異なる形状が表示装置に出力されてもよい。そして、出力された歯列模型の形状を基に3Dプリンタを用いてアライナーが作製のための凸型を作製し、作製された凸型を用いた熱可塑性樹脂の加熱圧接、切断等を経てアライナーが作製されてもよい。
(5)上記実施形態では、簡略化モデルのパラメータを決定するために使用する計算シミュレーションの数学的モデルとして有限要素モデルを例示したが、当該数学的モデルは有限要素モデル以外のモデルであってもよい。例えば、当該数学的モデルは、境界要素法によるモデルであってもよい。
(6)上記実施形態では、簡略化モデルにおける歯の形状を特徴付けるパラメータ及び歯の挙動を特徴付けるパラメータの少なくとも一方が、歯又は歯列のモデルを用いた物理実験とコンピュータシミュレーションとの両方に基づいて決定されるが、前記パラメータを決定する方法はこれに限られるものではない。例えば、物理実験及びコンピュータシミュレーションのいずれか一方のみに基づいて前記パラメータが決定されてもよい。
(7)上記実施形態では、歯槽骨部分の内部特性として骨密度を例示したが、内部特性はこれに限られるものではない。例えば、内部特性は、カルシウム含有量等であってもよい。
(8)上記実施形態では、歯情報は患者の上下歯列の各歯(全ての歯)の情報であるが、歯情報はこれに限られるものではない。例えば、歯情報は、患者の上下歯列の全ての歯の情報ではなく、一部の歯の情報であってもよい。
(9)上記実施形態で、プロセッサ10及び格納サブシステム14が実行する機能の一部又は全部を、1つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
(10)前述したプロセッサ10及び格納サブシステム14の他、当該プロセッサ10及び格納サブシステム14を構成要素とするシステム、プロセッサ10及び格納サブシステム14としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記憶した半導体メモリ等の非遷移的実体的記憶媒体、簡略化モデルを用いた歯の移動シミュレーション方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
(11)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
1…データ処理システム、10…プロセッサ、14…格納サブシステム、200…実態像、201,202…簡略歯、M1〜M3…回転モーメント、O…軸。

Claims (8)

  1. 患者の歯の移動シミュレーションを実施するシミュレーション装置であって、
    前記歯の3次元形状及び配列を示す歯情報を取得するように構成された取得部と、
    前記歯情報に基づいて、前記歯の理想的な配列を計算するように構成された配列計算部と、
    荷重が加えられた際の前記歯の挙動を、前記歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデルを用いて計算することで、前記歯情報によって示される前記配列から前記理想的な配列に向かって前記歯を移動させるシミュレーションを行うように構成された移動計算部と、
    を備え、
    前記簡略化モデルは、前記歯に前記荷重が加えられて前記歯が傾斜するときの前記歯の回転移動の回転軸に相当する軸を設定し、設定された前記軸周りの回転モーメントであって前記荷重に応じた回転モーメントを形状が簡略化された前記歯に対して作用させて前記歯全体を回転させることで前記歯の挙動を計算するモデルである、シミュレーション装置。
  2. 請求項1に記載のシミュレーション装置であって、
    前記簡略化モデルは、前記歯の形状を、1つの多角柱、1つの円柱又は1つの錐体に簡略化したモデルである、シミュレーション装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のシミュレーション装置であって、
    前記歯情報は、前記歯の周囲の歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方を特定可能であり、
    前記簡略化モデルでは、前記歯槽骨部分の外形及び内部特性の少なくとも一方に基づき、前記歯を傾ける方向に作用する前記回転モーメントである傾斜回転モーメントに対する抵抗が設定される、シミュレーション装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のシミュレーション装置であって、
    前記簡略化モデルでは、矯正装置に収容されるアタッチメント、又は、ワイヤを保持する矯正用ブラケット、が前記歯に付けられているか否かに応じて、前記軸周りの前記回転モーメントが調整される、シミュレーション装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のシミュレーション装置であって、
    前記簡略化モデルにおける前記歯の形状を特徴付けるパラメータ及び前記歯の挙動を特徴付けるパラメータの少なくとも一方が、前記歯又は歯列のモデルを用いた物理実験と、前記簡略化モデルとは別の、荷重が加えられた際の前記歯の挙動を計算する数学的モデルによるコンピュータシミュレーションと、の両方に基づいて決定される、シミュレーション装置。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のシミュレーション装置であって、
    前記移動計算部によるシミュレーションに基づいて、矯正装置の形状、又は、前記矯正装置を作製する際の雄型に相当する歯列模型の形状、を出力するように構成された出力部を更に備える、シミュレーション装置。
  7. コンピュータを、患者の歯の移動シミュレーションを実施するシミュレーション装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
    前記歯の3次元形状及び配列を示す歯情報を取得するように構成された取得部と、
    前記歯情報に基づいて、前記歯の理想的な配列を計算するように構成された配列計算部と、
    荷重が加えられた際の前記歯の挙動を、前記歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデルを用いて計算することで、前記歯情報によって示される前記配列から前記理想的な配列に向かって前記歯を移動させるシミュレーションを行うように構成された移動計算部と、
    を備える前記シミュレーション装置としてコンピュータを機能させ、
    前記簡略化モデルは、前記歯に前記荷重が加えられて前記歯が傾斜するときの前記歯の回転移動の回転軸に相当する軸を設定し、設定された前記軸周りの回転モーメントであって前記荷重に応じた回転モーメントを形状が簡略化された前記歯に対して作用させて前記歯全体を回転させることで前記歯の挙動を計算するモデルである、コンピュータプログラム。
  8. 患者の歯の移動シミュレーションを実施するシミュレーション方法であって、
    前記歯の3次元形状及び配列を示す歯情報を取得することと、
    前記歯情報に基づいて、前記歯の理想的な配列を計算することと、
    荷重が加えられた際の前記歯の挙動を、前記歯の形状を実際の形状よりも簡略化した数学的モデルである簡略化モデルを用いて計算することで、前記歯情報によって示される前記配列から前記理想的な配列に向かって前記歯を移動させるシミュレーションを行うことと、
    を備え、
    前記簡略化モデルは、前記歯に前記荷重が加えられて前記歯が傾斜するときの前記歯の回転移動の回転軸に相当する軸を設定し、設定された前記軸周りの回転モーメントであって前記荷重に応じた回転モーメントを形状が簡略化された前記歯に対して作用させて前記歯全体を回転させることで前記歯の挙動を計算するモデルである、シミュレーション方法。
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