JP6591181B2 - 風防装置、航空機、および風防ヒータの電力制御方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、風防の温度に応答した電源電力をヒータ膜に与えている。
そこで、本発明は、風防のヒータを適切に電力制御することにより、省電力化を図ることを目的とする。
〔第1実施形態〕
図1(a)に示すように、航空機1のコックピット2(操縦室)には、風防装置10が設置されている。
風防装置10は、図1(b)に示すように、視界を確保する風防11と、風防11に内蔵されるヒータ12と、ヒータ12を電力制御するコントローラ13とを備えている。
コックピット2内は、航空機1に装備された空調システム14により与圧、空調、および換気がなされる。空調システム14は、航空機1のエンジンの抽気を熱源および圧力原として用いる。
以下では、フロント風防およびサイド風防のことを風防11と総称する。
積層体には、衝撃を緩衝する層や、風防11を加温するヒータ12が含まれている。
ヒータ12は、所定の電気抵抗を有する導電性の部材であり、コントローラ13により通電されることでジュール熱を生じる。
本実施形態では、温度センサ15も積層体に内蔵されている。温度センサ15は、ヒータ12の近くに配置されており、ヒータ12の温度を検知する。
本実施形態では、電力制御対象であるヒータ12の温度が温度センサ15により直接的に検知される。そのため、例えば、ヒータ12から伝熱される風防11の表面の温度を温度センサ15により検知する場合と比べて検知温度の誤差が少なく、ヒータ12をより正確に制御することができる。
風防11の他、エンジンナセルや主翼の前縁等に氷が着くことを確実に防止する必要があるため、航空機1には、外気中の水滴の径等に基づいて着氷状況にあることを検知する着氷検知システム16が装備されている。
また、氷は、外気に接触する風防11の外側の面(外表面)に付着し、曇りは主として風防11の内側の面(内表面)に発生する。したがって、フロント風防の外表面の近くにヒータ12を配置し、サイド風防の内表面の近くにヒータ12を配置すると好ましい。
また、ヒータ12として、電熱線を用いることもできる。その電熱線も、風防11の層間に介装することができる。
それにもかかわらず、コックピット2内の湿度に関係なく、いかなる場合にも風防11に曇りが発生せず、氷も付着しない程の大出力が得られるようにヒータ12を電力制御すると、必要以上に電力が消費されることとなる。
そこで、本実施形態では、コックピット2内の湿度を用いて露点温度を取得し、その露点温度に基づいて、ヒータ12により必要な程度に風防11を加温する。
コントローラ13は、演算装置および記憶装置を備えたコンピュータから構成することができる。露点温度取得部131および電力制御部132は、コントローラ13に導入されるコンピュータプログラムに基づいて処理を実行する。
露点温度取得部131には、コックピット2の外部、つまり外気の状態を示す情報として、高度、外気温度、および外気湿度が入力され、コックピット2の内部の状態を示す情報として、コックピット2内の圧力、コックピット2の換気量、およびコックピット2内の乗員による加湿量が入力される。
露点温度取得部131により高度を外気圧に換算することができる。
コックピット2内と外気との換気量(コックピット換気量)は、空調システム14において制御に用いる値として設定されており、空調システム14から露点温度取得部131へと送信される。
電力制御部132は、入力する電源電力のパルス幅や周波数を変化させることでヒータ12の出力を制御することができる。
電力制御部132は、コックピット2内の露点温度に影響を与えるコックピット2内外の情報を用いて取得した露点温度に応じて制御用関数、すなわち、後述する指標温度線を定める。そして、指標温度線に、温度センサ15により検知された検知温度をあてはめることで得られた入力電力をヒータ12に与える。
そして、フライト中、露点温度取得部131により露点温度を連続的に取得し、取得された露点温度に応じて、指標温度線を更新する。
また、本実施形態の電力制御部132は、所定の周期でヒータ12の温度を温度センサ15により検知しつつ、その検知温度を用いてヒータ12の温度をフィードバック制御する。
温度センサ15による温度検知の周期は、例えば、数秒〜数分程度に定めることができるが、より好ましくは数秒程度が良い。
コックピット2内の露点温度を周期的に取得する場合も、その周期は、例えば、数秒〜数分程度に定めることができるが、より好ましくは数秒程度が良い。露点温度は、必ずしも周期的に取得する必要がなく、フライト中の適宜なタイミングで取得すればよい。
電力制御部132は、航空機1が着氷状況下にあることを着氷検知システム16を通じてモニタしている(ステップS1)。そして、着氷状況下にあることが検知されていない場合に(ステップS1でN)実行される省電力モードM1と、着氷状況下にあることが検知された場合に(ステップS1でY)実行されるハイパワーモードM2とを有している。
ハイパワーモードM2では、図2のステップS21,S22および図3に示すように、温度センサ15により検知された検知温度に対して十分なマージンを加えた電源電力をヒータ12に入力する。
予め、第1温度t1と、それよりも高い第2温度t2とを定めておき、温度センサ15による検知温度が第1温度t1よりも低い温度域Taにあればヒータ12に最大の入力(100%)を与える。検知温度が第2温度t2よりも高い温度域Tcにあればヒータ12に最小の入力(0%)を与える。つまりヒータ12をオフの状態にする。
そして、検知温度が第1温度t1と第2温度t2との間の温度域Tbにあるなら、温度センサ15による検知温度に対応する入力をヒータ12に与える。図3に示す例では、検知温度に対してヒータ入力をリニアに変化させている。
第1温度t1および第2温度t2はそれぞれ特定の値に固定されている。そのため、温度域Tbにおける制御に用いられる指標温度線Lfは固定されている。指標温度線Lfは、第1温度t1と最大入力(100%)とを示すポイントP1と、第2温度t2と最小入力(0%)とを示すポイントP2とを結ぶ直線である。
省電力モードM1では、露点温度取得部131により、コックピット2内の露点温度に影響するコックピット2内の湿度を取得し(ステップS2)、コックピット湿度と、コックピット圧力とに基づいてコックピット2内の露点温度を算出する(ステップS3)。
コックピット2内の湿度には、図4に示すように、コックピット2の換気量Xairと、換気によりコックピット2内に導入される外気に含まれる水蒸気量(外気導入水蒸気量)Xinと、コックピット2内の乗員による加湿量(水蒸気量)Xmanとが関係する。
コックピット2内の絶対湿度Wcは、下記の式(1)により表される。
加湿量Xmanは、例えば、乗員一人あたりの放出水蒸気量をコックピット2内の乗員の数だけ乗じることで求めることができる。
本実施形態では、これらの換気量Xairおよび加湿量Xmanを空調システム14から得ている。
以上より、外気導入水蒸気量Xinと、換気量Xairと、加湿量Xmanとを式(1)にあてはめることで、コックピット絶対湿度Wcを算出することができる。
露点温度DPが得られたならば、電力制御部132は、露点温度DPに応じて指標温度線Lv(関数)を設定する(ステップS4)。
指標温度線Lvは、風防11の内表面での温度と温度センサ15が検知する温度との差を考慮したマージンを含めて設定することが好ましい。
あるいは、コックピット2の換気量Xairを最小に見積もったり乗員による加湿量Xmanを最大に見積もったりすることで、指標温度線Lvに間接的にマージンを含めて設定することもできる。
具体的に、指標温度線Lvは、露点温度DPに所定の第1マージンα(例えば5℃)を加えた第1設定温度T1とそれに対応する最大入力(100%;高入力電力)とを示すポイントP1と、露点温度DPに第1マージンαよりも大きい第2マージンβ(例えば10℃)を加えた第2設定温度T2とそれに対応する最小入力(0%;低入力電力)とを示すポイントP2とを結ぶ直線である。第1設定温度T1は、ハイパワーモードM2(図3(a))で用いる指標温度線Lfを定める第1温度t1よりも低い。第2設定温度T2も、ハイパワーモードM2で用いる指標温度線を定める第2温度t2よりも低い。
電力制御部132は、ヒータ12とその周囲とで熱の出入りのない平衡状態に向かわせるようにヒータ12をフィードバック制御する。例えば、あるとき温度センサ15による検知温度Ts1に対応する入力電力Ip1をヒータ12に与え、ヒータ12が発熱することで検知温度が上昇すると(Ts2)、またそれに対応する入力電力Ip2をヒータ12に与える。それを繰り返すことで、平衡点(Ts0,Ip0)へと至る。
なお、フィードバック制御に限らず、公知の適宜な制御方法を採用することができる。
本実施形態では、ヒータ12の実測値をヒータ12への電源入力値に反映させるフィードバック制御を採用しており、しかも、ヒータ12への電源入力値を求める指標温度線Lvも露点温度に応じて更新しているので、最適に風防11が加温され、省電力化をより一層図ることが出来る。
風防11のヒータ12が最大の入力で駆動された場合、航空機1の全体で通信や照明等のために消費される総電力において過半を占める程多くの電力が消費される。そのため、省電力モードM1でヒータ12が制御されることにより、航空機1の消費電力を大幅に削減することができる。
しかも、航空機1の場合、エンジンに装備された発電機が飛行中の電力供給を担っているので、消費電力の削減により、燃費を向上することができる。
上記実施形態では、着氷状況下にあることの検知結果(図2のステップS1)に従って、省電力モードM1あるいはハイパワーモードM2を自動的に選択している。この自動的選択を行うか否かをパイロットの判断に委ねることができる。
そのために、省電力モードM1およびハイパワーモードM2を自動的に選択する自動モードと、省電力モードM1を行わずに常にハイパワーモードM2を行う非自動モードとを電力制御部132に用意し、自動モードおよび非自動モードの切り替え操作が可能なヒータ入力自動操作スイッチをコックピット2に設けることができる。
もし、ヒータ自動操作スイッチの操作により非自動モードに設定されている場合は(ステップS01でN)、常時、ハイパワーモードM2によりヒータ12を電力制御する。
以上によれば、パイロットの判断により、十分に余裕を持ったヒータ12の出力を得て、風防11をより確実に防氷および防曇することができる。
そのために、省電力モードM1およびハイパワーモードM2の切り替え操作が可能なヒータ入力切替操作スイッチをコックピット2に設けることができる。
そして、図6に示すように、ヒータ入力切替操作スイッチの切替状態に従って(ステップS02)、省電力モードM1またはハイパワーモードM2に移行する。
例えば、フロント風防には図5を参照して説明した電力制御を適用し、サイド風防には図6を参照して説明した電力制御を適用することができる。
次に、図7および図8を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
以下、第1実施形態とは相違する事項について説明する。
第2実施形態の風防装置20は、図7(b)に示すように、コックピット2内の露点温度が入力されるコントローラ23を備えている。コントローラ23が備える露点温度取得部231には、コックピット2内に配置された湿度センサ17(図7(a))により検知された露点温度が送信される。
第2実施形態では、図8に示すように、湿度センサ17により露点温度を取得し(ステップS3)、露点温度を用いて定めた指標温度線に基づいてヒータ12を電力制御する(ステップS4,S5)。
第2実施形態では、コックピット2内の風防11近傍の空気の流動を考慮して、風防11の内表面に接する空気の状態を検知するために適した場所に湿度センサ17を配置することが好ましい。そうすると、コックピット2内に湿度の勾配がある場合でも、風防11に接触する空気の湿度に対応した露点温度を湿度センサ17により正確に検知することができるので、より一層省電力化を図ることができる。
本発明においては、防曇の条件が整っておれば、コックピット2内の露点温度を必ずしも連続的に取得せず間隔を置いて取得する場合も含まれる。例えば、フライト中、あるいは、フライトに先立ち、図10に示すように、コックピット2内の露点温度を取得し(ステップS2およびステップS3)、その露点温度に応じた制御の指標温度線を設定したならば(ステップS4)、それ以降は、ステップS4で設定した指標温度線を一貫して使用し、ヒータ12の電力制御を行うことも許容される(ステップS5)。
2 コックピット(区画)
10 風防装置
11 風防
12 ヒータ
13 コントローラ
14 空調システム
15 温度センサ
16 着氷検知システム
17 湿度センサ
20 風防装置
23 コントローラ
131 露点温度取得部
132 電力制御部(制御部)
231 露点温度取得部
Lv 指標温度線(関数)
M1 省電力モード
M2 ハイパワーモード
S01 ステップ
S02 ステップ
S1 ステップ(第1ステップ)
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
S5 ステップ(第2ステップ)
T1 第1設定温度
T2 第2設定温度
t1 温度
t2 温度
Ta 温度域
Tb 温度域
Tc 温度域
Claims (10)
- 風防と、
前記風防に備えられて通電により発熱するヒータと、
前記風防に備えられて温度を検知する温度センサと、
前記ヒータを電力制御する制御部と、
を備える風防装置であって、
前記制御部は、
前記風防により外部と隔てられる区画の内部の露点温度に応じて定められた関数に、前記温度センサにより検知された検知温度をあてはめることで得られた入力電力を前記ヒータに与えるとともに、
前記制御部は、
前記露点温度を取得する露点温度取得部を備え、
前記露点温度取得部は、
前記区画内と外気との換気量、前記外気に含まれる水蒸気量、および前記区画内の水分源から放出される加湿量を用いて取得した前記区画内の区画湿度と、
前記区画内の圧力とを用いて前記露点温度を取得する、
ことを特徴とする風防装置。 - 前記制御部は、
前記検知温度を用いて前記ヒータの温度をフィードバック制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の風防装置。 - 前記制御部は、
前記露点温度に応じて前記関数を更新する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の風防装置。 - 前記関数は、
前記露点温度に第1マージンを加えた第1設定温度と、前記第1設定温度に対応する前記ヒータの高入力電力とを示すポイントと、
前記露点温度に前記第1マージンよりも大きい第2マージンを加えた第2設定温度と、前記第2設定温度に対応する前記ヒータの低入力電力とを示すポイントと、を結んだ指標温度線により表される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の風防装置。 - 前記制御部は、
前記ヒータを電力制御する複数のモードの一つとして、
前記露点温度に関係した前記入力電力を前記ヒータに与える省電力モードを備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の風防装置。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載の風防装置を備える、
ことを特徴とする航空機。 - 風防により外部と隔てられる区画の内部の露点温度に応じて定められた関数に、検知された前記風防の温度をあてはめることで得られた入力電力を、前記風防に備えられて通電により発熱するヒータに与える、風防ヒータの電力制御方法であって、
前記露点温度は、前記区画内と外気との換気量、前記外気に含まれる水蒸気量、および前記区画内の水分源から放出される加湿量を用いて取得した前記区画内の区画湿度と、
前記区画内の圧力とを用いて取得される、
ことを特徴とする風防ヒータの電力制御方法。 - 前記風防に着氷する着氷状況下にあることを検知する第1ステップと、
前記露点温度に関係した前記入力電力を前記ヒータに与える第2ステップと、を備え、
前記第2ステップは、
前記第1ステップにより前記着氷状況下にないことが検知された場合に行われる、
ことを特徴とする請求項7に記載の風防ヒータの電力制御方法。 - 検知された前記風防の温度に応答した入力電力を前記ヒータに与えるハイパワーモードと、
前記露点温度に関係した前記入力電力を前記ヒータに与える省電力モードとに切替可能である、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の風防ヒータの電力制御方法。 - 航空機が備える前記風防の前記ヒータに適用される、
請求項7から9のいずれか一項に記載の風防ヒータの電力制御方法。
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