しかしながら、特許文献1に記載されたシステムでは、電気式熱源機及び吸収式熱源機をどのように作動させるかの具体的な提示がなく、エネルギーコストを求める際に電力の基本料金を考慮していないため、最適な運用手法が反映されないおそれがある。
本発明は上述の課題に鑑み、効率の高い運転を行うことができる熱源機複合システム及び熱源機複合システムの運転方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る熱源機複合システムは、例えば図1及び図3に示すように、電気エネルギーEを主に入力して作動する電気式熱源機11と;燃料を燃焼させた熱エネルギーHを主に入力して作動する吸収式熱源機21と;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の消費電力を取得する熱源機消費電力取得装置53と;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21が熱負荷を処理する対象の建物Bの全体の電力デマンドBDを計測する監視装置31と;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転を制御する制御部55とを備え;電気式熱源機11の容量と吸収式熱源機21の容量との合計が、建物Bの最大熱負荷以上の熱負荷を処理できる容量となるように構成され;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の消費電力を除く建物の消費電力の最大値である熱源除外建物最大消費電力PRS(図3参照)に、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で吸収式熱源機21の能力を最大限利用して建物Bの最大熱負荷を処理する際に消費する吸収式熱源機21の電力及び電気式熱源機11の電力である吸収式優先消費電力PPAを加えて、第1のデマンド管理値D1が設定され;制御部55は、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の少なくとも一方が作動して建物Bの熱負荷を処理している際に、吸収式熱源機21の能力に余力を残した状態で、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の消費電力を含む建物Bの全体の消費電力である建物全体消費電力が、第1のデマンド管理値D1に基づいて設定された第1の切替値以上のときに、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で吸収式熱源機21の能力を最大限利用するように、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転を制御する。
このように構成すると、建物のデマンド(最大需要電力)を抑制しながら極力効率の高い運転を行うことができる。
また、本発明の第2の態様に係る熱源機複合システムは、例えば図1及び図3に示すように、上記本発明の第1の態様に係る熱源機複合システム1において、第1のデマンド管理値D1から、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で電気式熱源機11の能力を最大限利用して建物Bの最大熱負荷を処理する際に消費する電気式熱源機11の電力及び吸収式熱源機21の電力である電気式優先消費電力PPEを差し引き、かつ、吸収式優先消費電力PPAを加えて、第2のデマンド管理値D2が設定され;制御部55は、電気式熱源機11の能力に余力を残した状態で、建物全体消費電力が、第2のデマンド管理値D2に基づいて設定された第2の切替値以下に低下したときに、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で電気式熱源機11の能力を最大限利用するように、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転状態を切り替える。
このように構成すると、適切なタイミングで、第1のデマンド管理値を超えないようにしつつ電気式熱源機を優先的に運転する状態にすることができる。
また、本発明の第3の態様に係る熱源機複合システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第2の態様に係る熱源機複合システム1において、制御部55は、建物全体消費電力が第2の切替値以下に低下し、かつ、燃料があらかじめ決められた量以上消費された後に、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で電気式熱源機11の能力を最大限利用するように、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転状態を切り替える。
このように構成すると、あらかじめ決められた量以上燃料を消費すると燃料の単価が安くなる場合に燃料に関する条件を充足することができる。
また、本発明の第4の態様に係る熱源機複合システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る熱源機複合システム1において、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の所定の運転条件と、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21に入力するエネルギーE、Hの単位熱量あたりの値段との関係が保存された第1の保存部51と;所定の運転条件を検出する第1の検出装置38と;第1の検出装置38で検出された結果を第1の保存部51に保存されている関係に照らし合わせて、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21のそれぞれの、単位熱量あたりのエネルギーコストを算出する第1の演算部53とを備え;制御部55は、算出された電気式熱源機11の単位エネルギーコストと吸収式熱源機21の単位エネルギーコストとのうちの安い方の熱源機を優先的に運転するように電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転を制御する。
このように構成すると、熱源機複合システムのランニングコストを最小化することができる。
また、本発明の第5の態様に係る熱源機複合システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る熱源機複合システム1において、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の所定の運転条件と、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21に入力するエネルギーE、Hの単位熱量あたりの値段との関係が保存された第2の保存部51と;所定の運転条件を検出する第2の検出装置38と;第2の検出装置38で検出された結果を第2の保存部51に保存されている関係に照らし合わせて、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21のそれぞれの、単位熱量あたりのエネルギーコストを算出する第2の演算部53とを備え;制御部55は、電気式熱源機11と吸収式熱源機21とを同時に運転する場合に、第1のデマンド管理値D1(例えば図3参照)を超えない範囲内で、算出された電気式熱源機11の単位エネルギーコストと吸収式熱源機21の単位エネルギーコストとのうちの安い方の熱源機の負荷率を上げるように電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転を制御する。典型的には、第4の態様を引用する場合は、第1の保存部と第2の保存部とが兼用となり、第1の検出装置と第2の検出装置とが兼用となり、第1の演算部と第2の演算部とが兼用となる。
このように構成すると、熱源機複合システムのランニングコストを低減することができる。
上記目的を達成するために、本発明の第6の態様に係る熱源機複合システムの運転方法は、例えば図1、図2及び図3に示すように、電気エネルギーEを主に入力して作動する電気式熱源機11と、燃料を燃焼させた熱エネルギーHを主に入力して作動する吸収式熱源機21と、を有する熱源機複合システム1を運転する方法であって;電気式熱源機11の容量と吸収式熱源機21の容量との合計が、熱負荷を処理する対象の建物Bの最大熱負荷以上の熱負荷を処理できる容量となるように構成され;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の消費電力を除く建物Bの消費電力の最大値である熱源除外建物最大消費電力PRSに、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で吸収式熱源機21の能力を最大限利用して建物Bの最大熱負荷を処理する際に消費する吸収式熱源機21の電力及び電気式熱源機11の電力である吸収式優先消費電力PPAを加えて、第1のデマンド管理値D1を設定する第1のデマンド管理値設定工程(S1)と;電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の少なくとも一方が作動して建物Bの熱負荷を処理している際に、吸収式熱源機21の能力に余力を残した状態で、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の消費電力を含む建物Bの全体の消費電力である建物全体消費電力が、第1のデマンド管理値D1に基づいて設定された第1の切替値以上のときに、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で吸収式熱源機21の能力を最大限利用するように、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転を制御する運転制御工程(S6、S7)とを備える。
このように構成すると、建物のデマンド(最大需要電力)を抑制しながら極力効率の高い運転を行うことができる。
また、本発明の第7の態様に係る熱源機複合システムの運転方法は、例えば図1、図2及び図3に示すように、上記本発明の第6の態様に係る熱源機複合システムの運転方法において、第1のデマンド管理値D1から、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で電気式熱源機11の能力を最大限利用して建物Bの最大熱負荷を処理する際に消費する電気式熱源機11の電力及び吸収式熱源機21の電力である電気式優先消費電力PPEを差し引き、かつ、吸収式優先消費電力PPAを加えて、第2のデマンド管理値D2を設定する第2のデマンド管理値設定工程(S2)と;電気式熱源機11の能力に余力を残した状態で、建物全体消費電力が、第2のデマンド管理値D2に基づいて設定された第2の切替値以下に低下したときに、建物Bの熱負荷を処理するのに必要な範囲内で電気式熱源機11の能力を最大限利用するように、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21の運転状態を切り替える切替工程(S8からS5)とを備える。
このように構成すると、適切なタイミングで、第1のデマンド管理値を超えないようにしつつ電気式熱源機を優先的に運転する状態にすることができる。
また、本発明の第8の態様に係る熱源機複合システムの運転方法は、例えば図1及び図4に示すように、上記本発明の第7の態様に係る熱源機複合システムの運転方法において、燃料をあらかじめ決められた量以上消費したか否かを判断する燃料消費量判断工程(S9)を備え;切替工程(S8からS5)は、燃料があらかじめ決められた量以上消費された後に実行される。
このように構成すると、あらかじめ決められた量以上燃料を消費すると燃料の単価が安くなる場合に燃料に関する条件を充足することができる。
また、本発明の第9の態様に係る熱源機複合システムの運転方法は、例えば図1及び図2に示すように、上記本発明の第6の態様乃至第8の態様のいずれか1つの態様に係る熱源機複合システムの運転方法において、所定の条件から、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21のそれぞれの、単位熱量あたりのエネルギーコストを算出する第1の単位エネルギーコスト算出工程(S3)と;第1の単位エネルギーコスト算出工程(S3)で算出された電気式熱源機11の単位エネルギーコストと吸収式熱源機21の単位エネルギーコストとのうちの安い方の熱源機を優先的に運転するように、熱源機の運転状態を決定する運転モード決定工程(S4、S5、S15)とを備える。
このように構成すると、熱源機複合システムのランニングコストを最小化することができる。
また、本発明の第10の態様に係る熱源機複合システムの運転方法は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第6の態様乃至第9の態様のいずれか1つの態様に係る熱源機複合システムの運転方法において、所定の条件から、電気式熱源機11及び吸収式熱源機21のそれぞれの、単位熱量あたりのエネルギーコストを算出する第2の単位エネルギーコスト算出工程と;電気式熱源機11と吸収式熱源機21とを同時に運転する場合に、第1のデマンド管理値を超えない範囲内で、第2の単位エネルギーコスト算出工程で算出された電気式熱源機11の単位エネルギーコストと吸収式熱源機21の単位エネルギーコストとのうちの安い方の熱源機の負荷率を上げる負荷率調節工程とを備える。
このように構成すると、熱源機複合システムのランニングコストを低減することができる。
本発明によれば、建物のデマンド(最大需要電力)を抑制しながら極力効率の高い運転を行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る熱源機複合システム1を説明する。図1は、熱源機複合システム1の模式的系統図である。熱源機複合システム1は、建物Bの冷房や暖房を行うための熱源機を複数種類備えているシステムである。本実施の形態に係る熱源機複合システム1が備える複数種類の熱源機は、電気エネルギーEを主に入力して作動する電気式熱源機(以下「電気熱源機11」という。)、及び、燃料を燃焼させた熱エネルギーHを主に入力して作動する吸収式熱源機(以下「吸収熱源機21」という。)の2種類である。
電気熱源機11に入力する電気エネルギーEは、電気事業者から供給を受ける商用電力となっている。電気熱源機11は、水又は空気を熱源として、空調機81に供給する冷温水CHの温度を調節する機器であり、例えばヒートポンプチラーやターボ冷凍機が用いられる。電気熱源機11は、内部において、冷媒及び熱媒となる機内熱媒体が、電気エネルギーEで作動するコンプレッサによって圧縮されることを含む相変化を伴う冷凍サイクル又はヒートポンプサイクルを行う。電気熱源機11は、典型的には、夏季に、液体の機内熱媒体が蒸発する際に費やされる潜熱を冷温水CHから奪うことで冷温水CHを冷却し、蒸発した機内熱媒体を水又は空気で冷却する冷凍サイクルを行う。また、電気熱源機11は、典型的には、冬季に、水又は空気で機内熱媒体を蒸発させ、気体の機内熱媒体が凝縮する際の凝縮熱を冷温水CHに与えることで冷温水CHを加熱するヒートポンプサイクルを行う。冷温水CHは、典型的には、夏季は冷水として機能し、冬季は温水として機能する。電気熱源機11は、本実施の形態では、冷却水CDを用いて機内熱媒体を冷却している。
電気熱源機11には、温度調節した冷温水CHを空調機81に向けて流出する冷温水往管12と、空調機81から戻ってきた冷温水CHを導入する冷温水還管13と、冷却水CDを電気熱源機11に導入する冷却水往管17と、電気熱源機11内の冷却水CDを流出する冷却水還管19とが接続されている。冷温水往管12の他端は、冷温水往ヘッダ72に接続されている。冷温水還管13の他端は、冷温水還ヘッダ73に接続されている。冷温水還管13には、冷温水CHを流動させる冷温水ポンプ14が配設されている。冷却水往管17及び冷却水還管19は、冷却水CDを大気と熱交換させる冷却塔16に接続されている。冷却塔16は、密閉型を用いると冷房時及び暖房時(この場合は一般にヒーティングタワーと呼ばれる)の双方に利用できて好適であるが、専ら冷房時に利用する場合は開放型を用いてもよい。冷却水往管17には、冷却水CDを流動させる冷却水ポンプ18が配設されている。以下、電気熱源機11を作動させるのに消費される電力というときは、電気熱源機11自身を作動させるのに消費される電力のほか、冷温水ポンプ14、冷却塔16、冷却水ポンプ18等の電気熱源機11の付帯機器を作動させるのに消費される電力も含むものとする。
吸収熱源機21に主に入力する熱エネルギーHは、燃料を燃焼させて発生したものである。燃料は、典型的にはガス燃料であるが、石油等の液体燃料や固形燃料等の固体燃料であってもよい。吸収熱源機21が主に入力する熱エネルギーHは、吸収熱源機21内で燃料を燃焼させて発生させたものでもよく、ボイラ等の吸収熱源機21外の機器で燃料を燃焼させて発生させたものを蒸気の形態で吸収熱源機21に入力してもよい。吸収熱源機21は、本実施の形態では、ガス燃料を導入して内部で燃焼させることができるように構成されている。吸収熱源機21は、空調機81に供給する冷温水CHの温度を調節する機器であり、例えばガス焚き吸収冷温水機が用いられる。吸収熱源機21は、内部において、冷媒及び熱媒となる機内熱媒体(典型的には水)が、吸収液(典型的には臭化リチウム)に対して吸収及び放出されるサイクルを行う。吸収熱源機21は、典型的には、夏季に、液体の機内熱媒体が、吸収液に吸収されるために蒸発する際に費やされる潜熱を冷温水CHから奪うことで冷温水CHを冷却し、機内熱媒体を吸収して濃度が低下した吸収液を、入力した熱エネルギーHで加熱して吸収液及び機内熱媒体を再生するサイクルを行う。また、吸収熱源機21は、典型的には、冬季に、燃料を燃焼させて発生した熱エネルギーHで冷温水CHを加熱する。吸収熱源機21は、吸収液が機内熱媒体を吸収した際に発生した吸収熱を除去するために、及び、濃度が低下した吸収液を加熱して吸収液から離脱させた機内熱媒体の蒸気を凝縮するために、冷却水CDを導入している。
吸収熱源機21は、本実施の形態では2台設けられており、個別に言及するときはそれぞれを「吸収熱源機21A」、「吸収熱源機21B」と異なる符号で区別するが、共通の性質を説明するときは単に「吸収熱源機21」と総称する。各吸収熱源機21A、21Bには、温度調節した冷温水CHを冷温水往ヘッダ72に導く冷温水往管22と、冷温水還ヘッダ73から流出した冷温水CHを導入する冷温水還管23と、冷却水CDを吸収熱源機21に導入する冷却水往管27と、吸収熱源機21から冷却水CDを流出する冷却水還管29とが接続されている。冷温水還管23には、冷温水CHを流動させる冷温水ポンプ24が配設されている。冷却水往管27及び冷却水還管29は、冷却水CDを大気と熱交換させる冷却塔26に接続されている。冷却塔26は、密閉型を用いると冷房時及び暖房時の双方に利用できて好適であるが、専ら冷房時に利用する場合は開放型を用いてもよい。冷却水往管27には、冷却水CDを流動させる冷却水ポンプ28が配設されている。吸収熱源機21を作動させる際には、吸収熱源機21に投入される熱エネルギーHのほか、冷温水ポンプ24、冷却塔26、冷却水ポンプ28等の吸収熱源機21の付帯機器を作動させる電力を消費する。以下、吸収熱源機21を作動させるエネルギーというときは、熱エネルギーHのほか、冷温水ポンプ24、冷却塔26、冷却水ポンプ28等の吸収熱源機21の付帯機器を作動させる際に消費される電気エネルギーも含むものとする。吸収熱源機21を作動させる際に消費する電力は、同じ容量の電気熱源機11を作動させる際に消費する電力よりも小さい。
電気熱源機11及び吸収熱源機21のそれぞれから冷温水往ヘッダ72に流入した冷温水CHは、二次側往管82を介して空調機81に供給される。空調機81で熱交換が行われた冷温水CHは、二次側還管83を介して冷温水還ヘッダ73に戻される。二次側還管83には、内部を流れる冷温水CHの流量を調整する流量調整弁84が配設されている。冷温水往ヘッダ72及び冷温水還ヘッダ73は、空調機81を介在しないバイパス管75で連絡している。バイパス管75には、冷温水往ヘッダ72と冷温水還ヘッダ73との差圧を調整する差圧調整弁76が配設されている。
電気熱源機11は、一般に、吸収熱源機21よりも効率が高い。また、電気の従量エネルギーコストは、燃料の従量エネルギーコストよりも安価である。ここで、従量エネルギーコストは、熱源機で製造される単位熱量あたりの値段(円/RT)である。典型的には、電気従量エネルギーコストの燃料従量エネルギーコストに対する比(電気従量エネルギーコスト/燃料従量エネルギーコスト)は、概ね0.5である。このような事情を考慮すると、電気熱源機11で建物Bのすべての熱負荷を賄うのが得策のように思える。しかし、電気事業者から供給を受ける電力には、上述した電気の従量エネルギーコストのほかに、基本料金が毎月加算される。基本料金は、電気事業者から建物Bに供給されるすべての電力について、1年間を通じてのデマンド値(最大需要電力)に基づいて決定される。つまり、基本料金の算出は、過去1年間で最も大きいデマンド値が採用される。デマンド値は、一般に、30分単位における平均使用電力(kW)を、計量期間(典型的には1ヶ月)において連続的に出し、計量期間の中で最大の平均使用電力が該当する。したがって、例えば、建物Bの熱負荷が大きくなる夏季に、建物Bの熱負荷のすべてを電気熱源機11で賄おうとすると、大きなデマンド値に基づく基本料金が、中間期を含む1年中に適用されることとなり、熱負荷処理のエネルギーコストが嵩むこととなる。
本実施の形態に係る熱源機複合システム1では、上述の不都合を回避するために、建物B全体の消費電力が、あらかじめ決定した適正な目標電力の範囲内に収まるようにする中で、高効率かつ従量エネルギーコストが安価な電気熱源機11を可能な限り作動させ、目標電力を超えそうな場合には吸収熱源機21を作動させることで目標電力を超えないようにすることとしている。目標電力の決定手法を含む、熱源機複合システム1の運用方法を説明する前に、上述した電気熱源機11及び吸収熱源機21以外の熱源機複合システム1の構成を説明する。熱源機複合システム1は、電気熱源機11及び吸収熱源機21のほか、建物Bの電力デマンドを計測する監視装置31と、外気条件を検出する検出器38と、制御装置50とを備えている。
監視装置31は、建物B全体の電力デマンドBDを計測するように構成されている。したがって、監視装置31は、電気熱源機11及び吸収熱源機21の消費電力みならず、建物Bの照明や電気機器等の消費電力をも計測することができるように構成されている。検出器38は、建物Bの外の空気(外気)の温度及び湿度を検出するように構成されている。外気の温度及び湿度は、電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21の出力に影響を与え、所定の運転条件を構成するものである。検出器38は、第1の検出装置及び第2の検出装置に相当する。
制御装置50は、保存部51と、演算部53と、制御部55とを有している。保存部51は、熱源機複合システム1の運転に用いられる各種のデータが保存されている部位である。保存部51は、電気熱源機11及び吸収熱源機21のそれぞれについて、外気の温度と、外気の湿度と、熱源機の負荷率と、単位製造熱量あたりの値段(円/kW)との関係が、個別に保存されている。また、保存部51は、電気熱源機11及び吸収熱源機21のそれぞれについて、熱源機の負荷率と、熱源機を作動したときに付帯設備も含めて消費する電力との関係が、個別に保存されている。
演算部53は、熱源機複合システム1をどのように運転するかの判断の基準となる数値を演算する部位である。演算部53は、電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21を付帯設備も含めて作動させたときの消費電力を取得することができるように構成されている。このように、演算部53は、熱源機消費電力取得装置の機能を兼ね備えている。また、演算部53は、監視装置31及び検出器38に対して、それぞれ、データの受信が可能なように接続されており、過去の建物Bの最大熱負荷を取得することができるように構成されている。また、演算部53は、保存部51からデータを受け取って電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21を作動させるのに要するコストを算出することができるように構成されている。また、演算部53は、建物B全体の消費電力についての目標電力を算出することができるように構成されている。また、演算部53は、電気熱源機11及び吸収熱源機21について、それぞれどの程度の負荷率で作動させるかの判断の基となる値を演算することができるように構成されている。
制御部55は、熱源機複合システム1の動作を司る部位である。制御部55は、電気熱源機11及び吸収熱源機21について、付帯設備も含めて、発停及び運転容量を制御することができるように構成されている。なお、図1では、保存部51、演算部53、制御部55が別々に構成されているように示しているが、これは機能の観点から概念的に別々に表現したものであり、物理的には渾然一体に構成されていてもよい。また、図1では、保存部51、演算部53、制御部55が1つの筐体に収容されて制御装置50を構成しているように示されているが、これは概念を示しているものであって、物理的にはこれらが分離して配設されていてもよい。
次に図2を参照して、本発明の実施の形態に係る熱源機複合システムの運転方法を説明する。図2は、熱源機複合システムの運転の手順を示すフローチャートである。以下の説明は、典型的には、これまで説明した熱源機複合システム1(図1参照)を運転する方法となるが、熱源機複合システム1以外の電気式熱源機と吸収式熱源機とを含むシステムを運転する方法にも適用することが可能である。以下に説明する熱源機複合システムの運転方法は、熱源機複合システム1の作用の説明を兼ねている。以下の熱源機複合システムの運転方法の説明において、熱源機複合システム1の構成に言及しているときは、適宜図1を参照することとする。また、以下の説明では、便宜上、建物Bの最大熱負荷が500RTであると設定し、電気熱源機11の容量が250RT、2台の吸収熱源機21の容量がそれぞれ250RT(250RT×2)であるとする。つまり、本実施の形態では、電気熱源機11及び吸収熱源機21の合計容量が建物Bの最大熱負荷の1.5倍あり、電気熱源機11の合計容量が吸収熱源機21の合計容量の半分となっており、吸収熱源機21の合計容量で建物Bの最大熱負荷を賄えるような選定となっている。このように、電気熱源機11及び吸収熱源機21の合計容量は、建物Bの最大熱負荷を超えるように選定すること、換言すれば、建物Bの最大熱負荷に対して電気熱源機11及び吸収熱源機21の合計容量に余力があるように選定することが好ましい。熱源機複合システム1の作動中、監視装置31は、建物Bの全体の消費電力を随時計測している。
熱源機複合システム1の運転を開始したら、演算部53は、第1のデマンド管理値D1を設定し(第1のデマンド管理値設定工程:S1)、第2のデマンド管理値D2を設定する(第2のデマンド管理値設定工程:S2)。第1のデマンド管理値D1は、建物Bの熱負荷を処理しながら建物B全体の消費電力を極力抑制した場合の建物Bのデマンド値であり、電気優先運転から吸収優先運転に切り替える際の基準となる値でもある。ここで、電気優先運転とは、建物Bの熱負荷を処理する際に、まず電気熱源機11を作動させ、電気熱源機11を全負荷運転させても能力が不足する場合に吸収熱源機21を追随して作動させる運転である。吸収優先運転とは、建物Bの熱負荷を処理する際に、まず吸収熱源機21を作動させ、すべての吸収熱源機21を全負荷運転させても能力が不足する場合に電気熱源機11を追随して作動させる運転である。第2のデマンド管理値D2は、吸収優先運転から電気優先運転に切り替える際の基準となる値である。第1のデマンド管理値D1及び第2のデマンド管理値D2は、以下の要領で設定する。
図3は、デマンド管理値を設定する概念を示すグラフである。図3に示すグラフは、左側の棒グラフが第1のデマンド管理値D1を設定する概念を示すものであり、右側の2つの棒グラフが第2のデマンド管理値D2を設定する概念を示すものであり、縦軸は消費電力を示している。第1のデマンド管理値D1は、左側の棒グラフに示すように、熱源除外建物最大消費電力PRSに、吸収優先消費電力PPAを加えた値である。ここで、熱源除外建物最大消費電力PRSは、電気熱源機11及び吸収熱源機21の消費電力を除く、建物Bの消費電力の最大値である。熱源除外建物最大消費電力PRSは、典型的には、過去1年間の実績値から求めるとよい。つまり、過去1年間のデマンド値から、熱源機の作動に用いられた消費電力を差し引いて求めることができる。このとき、熱源機の消費電力以外の建物Bの消費電力に変動があった場合、例えば建物Bの照明をLEDに入れ替えて消費電力の削減を図ることができた場合は、当該削減分の消費電力も反映させて、前年度実績から差し引くとよい。また、吸収優先消費電力PPAは、吸収優先運転を行ったときの熱源機(吸収熱源機21及び電気熱源機11)の消費電力である。本実施の形態では、前述の前提条件の下では、建物Bの最大熱負荷(500RT)を処理するのに、吸収熱源機21(250RT)2台を作動させれば足り、電気熱源機11は作動しないこととなるので、吸収熱源機21を2台作動させたときの消費電力(吸収熱源機21の1台あたりの消費電力PA×2)が吸収優先消費電力PPAとなる。第2のデマンド管理値D2は、右側の2つの棒グラフに示すように、第1のデマンド管理値D1から電気優先消費電力PPEを差し引き、そこに吸収優先消費電力PPAを加えた値である。電気優先消費電力PPEは、電気優先運転を行ったときの熱源機(電気熱源機11及び吸収熱源機21)の消費電力である。本実施の形態における電気優先消費電力PPEは、前述の前提条件の下で、建物Bの最大熱負荷(500RT)を処理するのに、電気熱源機11を1台作動させたときの消費電力PEと、吸収熱源機21を1台作動させたときの消費電力PAとの和となる。
再び図2に戻って、熱源機複合システム1の運転方法の説明を続ける。第1のデマンド管理値D1及び第2のデマンド管理値D2を設定したら、演算部53は、検出器38で検出された情報を、保存部51に保存されているデータに照らし合わせて、検出器38で検出された条件における電気熱源機11を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段と、吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段とを算出する(単位エネルギーコスト算出工程:S3)。ここで算出される値段は、典型的には基本料金を含まない従量料金に基づく値段であるが、状況に応じて従量料金のみならず基本料金も含む値段であってもよい。単価の算出に用いる検出器38で検出された値は、熱源機複合システム1の運転時間帯の平均外気温度及び/又は湿度についての前日の実測値としてもよく、気象情報を加味した当日の予測値としてもよい。なお、図2では、第1のデマンド管理値D1の設定(S1)、第2のデマンド管理値D2の設定(S2)、単位エネルギーコストの算出(S3)の順に示されているが、これらの順番は適宜入れ替えてもよく、一部又は全部が並行して行われてもよい。
単位エネルギーコストを算出したら(S3)、演算部53は、電気熱源機11を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段が、吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段以下か否かを判断する(S4)。電気熱源機11を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段が吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段以下の場合は電気優先運転を行い(S5)、電気熱源機11を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段が吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段以下でない場合は吸収優先運転を行う(S15)。この、電気熱源機11及び吸収熱源機21の単位エネルギーコストのどちらが安いか判断する工程(S4)と、安い方を優先的に運転するように電気優先運転(S5)又は吸収優先運転(S15)を行う工程とで、運転モード決定工程を構成している。なお、電気優先運転を行う工程(S5)及び吸収優先運転を行う工程(S15)において、電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21を作動させる際、演算部53が制御部55にその旨の指令信号を出し、制御部55が電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21を制御する。
電気熱源機11が作動すると、冷温水ポンプ14の作動により、冷温水還ヘッダ73の冷温水CHが、冷温水還管13を介して電気熱源機11に流入し、電気熱源機11で温度が調節された後に冷温水往管12を介して冷温水往ヘッダ72に至る。同時に、冷却水ポンプ18の作動により、冷却塔16の冷却水CDが冷却水往管17を介して電気熱源機11に流入し、電気熱源機11で機内熱媒体と熱交換を行った後に冷却水還管19を介して冷却塔16に至り、冷却塔16で大気と熱交換を行って、再び冷却水往管17を流れる作用を繰り返す。なお、暖房時は冷却塔16まわりが作動しない場合もある。他方、吸収熱源機21が作動すると、冷温水ポンプ24の作動により、冷温水還ヘッダ73の冷温水CHが、冷温水還管23を介して吸収熱源機21に流入し、吸収熱源機21で温度が調節された後に冷温水往管22を介して冷温水往ヘッダ72に至る。同時に、冷却水ポンプ28の作動により、冷却塔26の冷却水CDが冷却水往管27を介して吸収熱源機21に流入し、吸収熱源機21で機内熱媒体と熱交換を行った後に冷却水還管29を介して冷却塔26に至り、冷却塔26で大気と熱交換を行って、再び冷却水往管27を流れる作用を繰り返す。なお、暖房時は冷却塔26まわりが作動しない場合もある。電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21で温度が調節されて冷温水往ヘッダ72に流入した冷温水CHは、二次側往管82を介して空調機81に流入し、空調機81で熱が利用された後に二次側還管83を介して冷温水還ヘッダ73に至る。電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21は、制御部55からの指令により、図2に示すフローにしたがって作動及び停止が行われる。
電気優先運転(S5)を行っている際、演算部53は、監視装置31が随時計測している建物B全体の消費電力が、第1の切替値以上か否かを判断する(S6)。ここで、第1の切替値は、典型的には、先に設定した第1のデマンド管理値D1よりも余裕分小さい値である。ここでの余裕分は、典型的には、電気優先運転から吸収優先運転に切り替える際に、切り替えが行われるまでに上昇が予想される電力分とするとよい。なお、余裕分は0でもよく、その場合は第1の切替値が第1のデマンド管理値D1となる。建物B全体の消費電力が第1の切替値以上か否かを判断する工程(S6)において、第1の切替値以上の場合、演算部53は制御部55を介して、吸収優先運転を行うように切り替える(運転制御工程:S7)。ここでの吸収優先運転を行う工程(S7)は、前述の吸収優先運転を行う工程(S15)と比較して、内容は同じであるが、従量コスト面からは電気熱源機11を作動させたいがデマンド値を抑制するために一時的に吸収優先運転を行うこととする点で、コスト面からも吸収熱源機21を作動させることが有利な(したがって通常は電気優先運転への切り替えが行われない)吸収優先運転を行う工程(S15)とは意義が異なっている。
吸収優先運転(S7)を行っている際、演算部53は、監視装置31が随時計測している建物B全体の消費電力が、第2の切替値以下に低下したか否かを判断する(S8)。ここで、第2の切替値は、典型的には、先に設定した第2のデマンド管理値D2よりも余裕分小さい値である。ここでの余裕分は、典型的には、吸収優先運転から電気優先運転に切り替えた場合でも建物B全体の消費電力が第1のデマンド管理値D1を確実に超えないようにする観点から決定するとよい。なお、余裕分は0でもよく、その場合は第2の切替値が第2のデマンド管理値D2となる。建物B全体の消費電力が第2の切替値以下に低下したか否かを判断する工程(S8)において、第2の切替値以下に低下していない場合は、吸収優先運転を行う工程(S7)に戻り、吸収優先運転を維持する。他方、第2の切替値以下に低下した場合は、電気優先運転を行う工程(S5)に戻る。この、吸収優先運転(S7)から、建物B全体の消費電力が第2の切替値以下に低下したか否かを判断する工程(S8)を経て、電気優先運転を行う工程(S5)に至る過程が、切替工程に相当する。
建物B全体の消費電力が第1の切替値以上か否かを判断する工程(S6)において第1の切替値以上ではない場合、演算部53は、熱源機複合システム1を停止させる指令を受けたか否かを判断する(S19)。また、電気熱源機11及び吸収熱源機21の単位エネルギーコストのどちらが安いか判断する工程(S4)から吸収優先運転を行う工程(S15)に進んだ後に、演算部53は、熱源機複合システム1を停止させる指令を受けたか否かを判断する(S19)。熱源機複合システム1を停止させる指令を受けていない場合は、第1のデマンド管理値D1を設定する工程(S1)に戻る。他方、熱源機複合システム1を停止させる指令を受けた場合、制御部55は、熱源機複合システム1を停止させるシーケンスにしたがって各機器を停止させる。
熱源機複合システム1が作動している際は、前述のように、電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21が作動して、温度が調節された冷温水CHが、空調機81の負荷に応じて空調機81に供給されている。電気熱源機11と吸収熱源機21とが同時に作動するとき、一般的な冷温水流量が定流量であるシステムでは、負荷側の熱需要に対する各熱源機11、21の分担は、それぞれの熱源機11、21の能力比となる。つまり、ある熱需要に対して、電気熱源機11が受け持つ分は、[熱需要]×[電気熱源機11の容量]/([電気熱源機11の容量]+[吸収熱源機21の容量])となり、吸収熱源機21が受け持つ分は、[熱需要]×[吸収熱源機21の容量]/([電気熱源機11の容量]+[吸収熱源機21の容量])となる。しかしながら、図2に示すフローでは、単位エネルギーコスト算出工程(S3)においてコストを算出しているので、単位エネルギーコスト算出工程(S3)における結果に照らしてコストが安い方の熱源機に極力負荷を負担させるのが好ましい。したがって、図3のフローにおける電気優先運転を行う工程(S5)あるいは吸収優先運転を行う工程(S7、S15)において、電気熱源機11と吸収熱源機21とが同時に作動する場合は、単位エネルギーコスト算出工程(S3)で算出されたコストの安い方の熱源機の負荷率を上げる制御を行うとよい(負荷率調節工程)。この負荷率調節の制御を行う場合、単位エネルギーコスト算出工程(S3)が第2の単位エネルギーコスト算出工程に相当する。つまり、この場合、単位エネルギーコスト算出工程(S3)は、第1の単位エネルギーコスト算出工程と第2の単位エネルギーコスト算出工程とを兼ねることとなる。各熱源機11、21の負荷率の調節は、各冷温水ポンプ14、24にインバータを搭載して各熱源機11、21に流れる冷温水CHの流量を調節することで行ってもよく、各熱源機11、21から流出した冷温水CHの温度(出口温度)を温度検出器(不図示)で検出して出口温度の設定値を変えることで行ってもよく、電気熱源機11に投入される電気エネルギーE及び/又は吸収熱源機21に投入される熱エネルギーHを制限することで行ってもよく、これらのいずれかを組み合わせることで行ってもよい。
また、吸収熱源機21に導入する熱エネルギーHの素となる燃料は、あらかじめ決められた量以上消費すると単価が安くなる場合がある。あらかじめ決められた量は、典型的には、いわゆる大口契約と称される、燃料供給者が決める量である。この、燃料をあらかじめ決められた量以上消費すると単価が安くなる条件の下で熱源機複合システム1を運転している場合、デマンド値だけで判断すると、吸収優先運転(S7)よりも電気優先運転(S5)の方が有利であるとは限らない場合がある。そこで、このような場合は、図4に示すように、図2に示すフロー中の建物B全体の消費電力が第2の切替値以下に低下したか否かを判断する工程(S8)において第2の切替値以下に低下した場合に、燃料をあらかじめ決められた量以上消費したか否かを判断し(燃料消費量判断工程:S9)、消費していない場合は吸収優先運転を行う工程(S7)に戻り、消費している場合に電気優先運転を行う工程(S5)に進むこととするとよい。このようにすると、燃料に関する条件が設定されている場合に確実に条件を充足することができる。
以上で説明したように、本実施の形態に係る熱源機複合システム1及びその運転方法によれば、単位製造熱量あたりの値段が吸収熱源機21を作動させたときよりも電気熱源機11を作動させたときの方が安い場合に、原則として電気優先運転を行い、電気優先運転中に建物B全体の消費電力が第1の切替値以上となったときに吸収優先運転に切り替え、吸収優先運転中に建物B全体の消費電力が第2の切替値以下となったときに電気優先運転に切り替えるので、運転コストを抑制しつつ極力効率の高い運転を行うことができる。
以上の説明では、説明の簡素化のため、熱源機複合システム1が、1台の電気熱源機11と2台の吸収熱源機21とを備えていることとしたが、電気熱源機11を複数台備えていてもよく、吸収熱源機21を1台あるいは3台以上備えていてもよい。電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21は、所望の容量を1台で賄うこととしてもよく、台数制御が可能なように複数台に分割されていてもよい。
以上の説明では、吸収熱源機21の合計容量で建物Bの最大熱負荷を賄えるような選定となっていることとしたが、吸収熱源機21の合計容量と電気熱源機11の一部の容量で建物Bの最大熱負荷を賄えるような選定として、吸収優先運転の場合にすべての吸収熱源機21を全負荷運転させつつ電気熱源機11を部分負荷運転させることとしてもよい。
以上の説明では、所定の運転条件が外気の温度及び湿度であるとしたが、いずれか一方が電気熱源機11及び/又は吸収熱源機21の出力に与える影響が小さい場合は、当該影響が小さい方のパラメータを省略してもよい。
以上の説明では、第1のデマンド管理値D1及び第2のデマンド管理値D2が演算部53で設定されることとしたが、熱源機複合システム1以外のシステムで、電気式熱源機と吸収式熱源機とを有する熱源機複合システムを運転する方法を行う場合、熱源機複合システム1における演算部53に相当する構成以外の手法で、例えば人間によって第1のデマンド管理値D1及び第2のデマンド管理値D2が設定されることとしてもよい。
以上の説明では、エネルギーコスト算出工程(S3)及び運転モード決定工程(S4、S5、S15)を備えるとしたが、エネルギーコストを算出せずとも電気熱源機11の運転が有利であることが自明である場合は、エネルギーコスト算出工程(S3)、電気熱源機11を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段が吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段以下か否かを判断する工程(S4)、及び吸収熱源機21を作動させたときの単位製造熱量あたりの値段の方が安い場合における吸収優先運転を行う工程(S15)を省略し、第2のデマンド管理値D2の設定(S2)の後に電気優先運転を行う工程(S5)に進むこととしてもよい。