以下、本発明によるカバレッジ制御方法、指向性制御方法、基地局装置、無線通信システムおよび基地局制御プログラムの好適な実施の形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるカバレッジ制御方法、指向性制御方法、基地局装置および無線通信システムについて説明するが、かかるカバレッジ制御方法や指向性制御方法を基地局装置内のコンピュータにより実行可能な基地局制御プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、基地局制御プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。なお、以下の各図面において、同一要素には同一の図面参照符号が付されており、説明の明確化のために必要な場合を除いて、同一要素に関する重複した説明を省略している。
(本発明の特徴)
本発明の実施の形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、1周波数しか選択することができないユーザ(移動局)のスループットを改善することを可能にすることを主要な特徴としており、具体的には、主に、次のような5つの態様からなっている。
本発明の第1の態様は、カバレッジ制御方法である。本発明に係るカバレッジ制御方法は、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムにおけるカバレッジ制御方法であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定ステップと、前記移動局の通信状態を測定する移動局通信状態測定ステップと、前記移動局分布推定ステップにおいて推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定した前記移動局の通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定ステップと、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御ステップと、を有することを主要な特徴としている。
本発明の第2の態様は、指向性制御方法である。本発明に係る指向性制御方法は、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムにおいて前記第1の周波数または前記第2の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御方法であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定ステップと、前記移動局の通信状態を測定する移動局通信状態測定ステップと、前記移動局分布推定ステップにおいて推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定した前記移動局の通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定ステップと、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御ステップと、を有すことを主要な特徴としている。
本発明の第3の態様は、基地局装置である。本発明に係る基地局装置は、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムにおける基地局装置であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定手段と、前記移動局との通信状態を測定する移動局通信状態測定手段と、前記移動局分布推定手段において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定手段において測定した前記移動局との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定手段と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定手段において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御手段と、を有することを主要な特徴としている。
本発明の第4の態様は、無線通信システムである。本発明に係る無線通信システムは、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムであって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定手段と、前記移動局と前記基地局装置との通信状態を測定する移動局通信状態測定手段と、前記移動局分布推定手段において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定手段において測定した前記移動局と前記基地局装置との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定手段と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定手段において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御手段と、を有することを主要な特徴としている。
本発明の第5の態様は、基地局制御プログラムである。本発明に係る基地局制御プログラムは、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムにおいて、前記基地局装置に実装されたコンピュータの制御プログラムとして実行される基地局制御プログラムであって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定処理と、前記移動局と前記基地局装置との通信状態を測定する移動局通信状態測定処理と、前記移動局分布推定処理において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定処理において測定した前記移動局と前記基地局装置との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定処理と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定処理において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御処理とを有することを主要な特徴としている。
<本発明の第1の実施の形態>
次に、本発明を適用したカバレッジ制御方法の第1の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本第1の実施の形態に係る無線通信システムにおけるカバレッジ制御方法においては、少なくとも周波数が異なる2つのセルが存在する無線通信環境において、1周波数しか選択することができない移動局群を特定し、特定した該移動局群に向けて他方の周波数の送信ビームの指向性を制御する場合について説明している。
(第1の実施の形態の構成例の説明)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスモールセル基地局、移動局を含む無線通信システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。本第1の実施の形態における以下の説明においては、無線通信システムにLTE(Long Term Evolution)方式を適用し、上り回線と下り回線とで、同一周波数で送信時間が異なるTDD(Time Division Duplex)方式を適用した場合について説明する。
本第1の実施の形態に係る無線通信システムは、図1に示すように、複数周波数の周波数毎に複数の送受信アンテナを備えるマルチキャリア対応のスモールセル基地局1と、該スモールセル基地局1と通信する移動局2とを少なくとも含んで構成される。さらに、スモールセル基地局1は、複数のセル3を備え、相対的に、高周波数、広帯域(例えば、40MHz)の3.5GHzキャリア(第1の周波数のキャリア)を用いるセル3−1(第1のセル)と、相対的に、低周波数、狭帯域(例えば、20MHz)の2GHzキャリア(第2の周波数のキャリア)を用いるセル3−2(第2のセル)とを少なくとも備えている。図1においては、3.5GHzキャリアで通信する移動局2−1、2GHzキャリアで通信する移動局2−2が、それぞれ、セル3−1、セル3−2に位置している。本第1の実施の形態においては、移動局2は、いずれかの一方のキャリアのセル3のみによって通信することができる。図1においては、移動局2−1、移動局2−2のぞれぞれは、セル3−1、セル3−2それぞれを介してスモールセル基地局1と通信中(アクティブ)の状態にある。
一般的に、高周波数ほど電波の直進性が高く、回り込みをしないので、高周波数側の3.5GHzキャリアのセル3−1の方が、低周波数側の2GHzキャリアのセル3−2よりもカバレッジが狭い場合が多い。また、高周波数ほど周波数リソースを広帯域に確保し易いので、スループットは、高周波数側の3.5GHzを用いて通信を行う移動局2−1の方が、低周波数側の2GHzを用いて通信を行う移動局2−2よりも高くなることが多い。なお、本第1の実施の形態においては、前述のように、図1に示すセル3−1とセル3−2との間で、複数の周波数帯域を同時に用いて通信するキャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)は適用しないことを前提にして説明している。
図1のさらなる補足をすると、次の通りである。図1に白抜きの移動局として示すように、5台の移動局2−2が位置する場所においては、2GHzキャリアしか選択することができないので、白抜きの5台の移動局2−2は、2GHzキャリアのセル3−2に収容されることになる。また、図1に斜線付きの移動局として示す1台の移動局2−1が位置する場所においては、3.5GHzキャリアと2GHzキャリアとの両方を選択することができるが、3.5GHzキャリアの受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)があらかじめ定めた所定値以上となっているので、当該1台の移動局2−1は、セル3−1に収容されている。
また、図1に示すように、移動局2−2が5台、移動局2−1が1台であり、セル3−2の方が、セル3−1よりも接続中の移動局2の台数が多いので、セル3−2は、移動局2の台数に基づく負荷が、相対的に高い状況である。なお、図1における各移動局2の台数、各セル3の数、サイズおよび周波数は一例であり、本発明が図1に限定されるものではないことは言うまでもない。
次に、図1に示したスモールセル基地局1および移動局2の内部構成について図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係るスモールセル基地局1および移動局2の内部構成の一例を示すブロック図である。なお、図1に示した移動局2−1と移動局2−2との内部構成は同一であり、図2には、移動局2として内部構成の一例を示している。以下、各装置の内部構成について順に説明する。
まず、スモールセル基地局1の内部構成について説明する。スモールセル基地局1は、図2に示すように、基地局無線送受信部10、送受信バッファ部11、移動局分布推定部12、移動局通信状態測定部13、移動局群特定部14および無線パラメータ制御部15、を少なくとも含んで構成されている。
基地局無線送受信部10は、移動局2との間の無線通信を行うための、スモールセル基地局1における無線送受信の基本機能を備えている。該基本機能として、下り回線参照信号を含む制御信号やデータ信号の移動局2への送信機能や、上り回線参照信号を含む制御信号やデータ信号の移動局2からの受信機能、および、下り回線のデータ送信相手となる移動局2を選択し、割り当てた周波数リソース(PRB: Physical Resource Block)やMCS(Modulation and Coding Schemes)などのスケジューリング情報とともに、選択した移動局2に対してデータを送信するスケジューラ機能等がある。また、基地局無線送受信部10は、無線送受信を行うために、周波数毎に、複数(本第1の実施の形態においては3.5GHzと2GHzとの2つ)の送受信アンテナ素子を備えている。複数の該送受信アンテナ素子は、例えば、電波の半波長の間隔でリニアアレイ状に配置されているものとすることにより、送信ビームのビームフォーミングや受信ビームの到来角推定が可能となる。
送受信バッファ部11は、無線ネットワークを介して移動局2宛てに送られるデータ(または、移動局2から無線ネットワークを介して送られてくるデータ)を一時的に蓄える。送受信バッファ部11を構成するバッファは、ユーザ毎およびQCI(QoS Class Identifier)毎に準備する。ここで、QCIとは、無線ネットワークで提供されるサービス品質を示すQoS(Quality of Service)の識別指標を意味している。
移動局分布推定部12は、移動局2のそれぞれからの上り回線参照信号を基地局無線送受信部10の複数の送受信アンテナ素子にて受信することによって、各移動局2からの電波の到来角を推定し、該到来角の推定結果を収集して、全移動局2に対する到来角の角度分布を推定する。各移動局2からの電波の到来角を推定する方法としては、相関行列の固有値・固有ベクトルを用いるMUSIC(Multiple Signal Classification)法など、本発明に関する分野において一般的な技術を適用する。なお、図1に示したセル3−1(第1のセル)で通信する1台の移動局2−1は、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアを、セル3−2(第2のセル)で通信する5台の移動局2−2それぞれは、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアを、それぞれ用いて到来角を推定する。また、角度分布は、キャリア毎に区別することなく推定するものとする。
移動局通信状態測定部13は、移動局2の通信における特徴的な状態として、トラヒックや受信品質などを移動局2毎に測定する。本第1の実施の形態においては、スモールセル基地局1との通信のために、どのセル3と接続しているかを移動局2の通信状態として測定するものとする。各移動局2の接続先のセル3は、基地局無線送受信部10が通信毎に管理する接続セルの情報から取得することができる。具体的には、ハンドオーバなどのセル選択の際に、スモールセル基地局1から送信されるPCI情報(Physical Cell ID:電波レベルでセル3を識別する情報)を移動局2が測定・報告してくるので、該PCI情報から接続セルを特定することができる。例えば、移動局2−1は、3.5GHzキャリアのセル3−1に接続し、移動局2−2は、2GHzキャリアのセル3−2に接続していることを特定することができる。
移動局群特定部14は、移動局分布推定部12にて推定した各移動局2の角度分布と、移動局通信状態測定部13にて測定した各移動局2の通信状態と、を用いて、2GHzキャリアしか選択することができない移動局群の分布を特定する。本第1の実施の形態においては、移動局2毎に、到来角と接続先セルとの情報を合わせることによって、低周波数(第2の周波数)側である2GHzキャリアしか選択することができない場所にいる移動局2を特定する。移動局2が複数密集する場合には、それら複数の移動局2を1つの移動局群とみなす。
無線パラメータ制御部15は、カバレッジを調整するために無線パラメータを制御する。本第1の実施の形態においては、移動局群特定部14にて特定した移動局群が位置する角度に向けて、3.5GHzキャリアのセル3−1に関し、下り回線参照信号を含む送信ビームの指向性を制御する。つまり、無線パラメータ制御部15は、少なくとも、高周波数(第1の周波数)側である3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御して、移動局群特定部14において特定した移動局群に対するセル3−1(第1のセル)のカバレッジを制御するカバレッジ制御手段を提供している。
次に、図2の移動局2の内部構成について説明する。移動局2は、移動局無線送受信部20を少なくとも含んで構成される。移動局無線送受信部20は、スモールセル基地局1との無線通信のための、移動局2における無線送受信の基本機能を備えている。該基本機能として、上り回線参照信号を含む制御信号やデータ信号のスモールセル基地局1への送信機能や、下り回線参照信号を含む制御信号やデータ信号のスモールセル基地局1からの受信機能等がある。
(第1の実施の形態の動作の説明)
次に、本第1の実施の形態における、スモールセル基地局1のカバレッジ制御動作について、その一例を図3のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るカバレッジ制御方法の一例を実現するためのスモールセル基地局1における動作手順を示すフローチャートであり、スモールセル基地局1においてあらかじめ定めた時間間隔で周期的に実施される。
図3のフローチャートが起動されると、まず、移動局分布推定部12において、各移動局2の上り回線参照信号の到来角情報を用いて、セル3−1およびセル3−2を含むカバレッジエリア内の移動局2の分布を推定する(ステップS101)。ステップS101の動作の一例を、図4Aに示す。図4A,図4B及び図4Cは、本発明の第1の実施の形態に係るスモールセル基地局1におけるカバレッジ制御の実施手順の一例を説明するための説明図であり、図4AはステップS101の動作の一例を、図4BはステップS103の動作の一例を、また、図4CはステップS105の動作の一例を、それぞれ説明している。
ステップS101においては、図4Aに示すように、例えば、スモールセル基地局1から垂直に伸びる垂直軸を基準にして、セル3−1に属する1台の移動局2−1は、3.5GHzキャリアを用いて、また、セル3−2に属する5台の移動局2−2は、2GHzキャリアを用いて、それぞれ、鎖線矢印にて示す上り回線参照信号の到来角が測定される。ここで、スモールセル基地局1と各移動局2との間が見通し内に近い環境であればあるほど、周波数によらず、取得した到来角は、各移動局2の地理的な位置を示す角度方向とみなすことができ、セル3−1およびセル3−2を含むカバレッジエリア内の各移動局2の分布を推定することができる。
図3のフローチャートに戻って、次に、移動局通信状態測定部13において、各移動局2の通信状態を測定する。ここで、前述したように、本第1の実施の形態においては、スモールセル基地局1との通信のために各移動局2がどのセル3と接続しているかを各移動局2の通信状態とみなすことにする。かくのごとき通信状態の測定結果から、2GHzキャリアのみ選択することが可能な移動局2を特定するために、接続先のセル3としてセル3−2を選択した移動局2−2を抽出する(ステップS102)。
しかる後、移動局群特定部14において、ステップS101において求めた各移動局2の角度分布と、ステップS102において取得した各移動局2の通信状態と、を用いて、2GHzキャリアしか選択することができない少なくとも1台以上の移動局2の群(移動局群)の分布を特定する(ステップS103)。ステップS103の動作の一例を、図4Bに示す。
図4Bに示すように、接続先のセル3として2GHzキャリアで通信するセル3−2を選択した5台の移動局2−2について、あらかじめ定めた所定の角度範囲毎に区切って(図4Bの例においては、スモールセル基地局1から垂直に伸びる垂直軸から時計方向に20°ずつ回転する0°〜19°、20°〜39°、…の角度範囲毎に区切って)、ステップS101において得られた移動局2−2の到来角を基にして、各角度範囲毎に移動局2−2の台数を計上する。
各角度範囲毎に計上された移動局2−2の台数が、移動局2の総数(移動局2−1と移動局2−2との合計台数)に対して、あらかじめ定めた所定の割合閾値以上の場合に、該当する角度範囲に属する複数の移動局2−2(図4Bにおいては20°〜39°の角度範囲に属する移動局2−2として点線の丸で囲んだ3台の移動局2−2)を同一の移動局群とみなす。なお、本第1の実施の形態においては、セル3−1、セル3−2の2セル間でできる限り均等に負荷を分散する観点から、前記所定割合を50%と設定している。
図4Bに示す例においては、前述したように、20°〜39°の角度範囲に移動局2−2が3台分布しており、かつ、3台は、移動局2の総数6台の50%に相当しているので、当該角度範囲に属する3台の移動局2−2を1つの移動局群とみなすことになる。
図3のフローチャートに戻って、次に、ステップS101からステップS103までの動作によって、移動局群の存在が特定されたか否かを判定する(ステップS104)。特定された移動局群の数が正整数であり、移動局群が存在すると判定された場合は(ステップS104のYES)、ステップS105に進む。一方、特定された移動局群の数が‘0’であり、移動局群は存在しないと判定された場合は(ステップS104のNO)、ユーザすなわち移動局2のスループットの改善を図ることができない場合であるので、図3のフローチャートの動作を終了する。
移動局群が存在すると判定された場合は、前述のように、ステップS105に進み、無線パラメータ制御部15において、ステップS103において特定した移動局群に向かうように、高周波数側の3.5GHzキャリアのセル3−1における下り回線参照信号を含む送信ビームの指向性を制御することにより、当該移動局群に対するセル3−1のカバレッジを拡大する(ステップS105)。ここで、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性の制御には、特定した移動局群の到来角を用いて、ビームの形状(幅やゲイン)を変えずに、送信ビームの指向性のみを制御するステアリングベクトル法を適用する。ステップS105の動作の一例を、図4Cに示す。
図4Cに示すように、特定した移動局群の代表角θに対して3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を向けるように制御する。ここで、当該代表角θは、特定した移動局群を構成する各移動局2の到来角の平均値を用いても良いし、特定した移動局群を構成する各移動局2の到来角の最大角と最小角との中央値を用いても良い。
以上に詳細に説明したように、本第1の実施の形態においては、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアしか選択することができない移動局群に向けて高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御するので、当該移動局群は高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアを使用することが可能となり、セル3−1(第1のセル)とセル3−2(第2のセル)との間で負荷の分散を図ることができる。而して、当該移動局群を構成する移動局2の低下していたスループットを改善することができるという効果が得られる。
また、図3のフローチャートに示した制御手順は、マイクロプロセッサ等のコンピュータに基地局装置を制御するための制御プログラムを実行させることによっても実現することが可能である。すなわち、基地局制御プログラムを実行するコンピュータに、移動局群の特定、送信ビームの指向性制御等を実施させれば良い。
なお、本第1の実施の形態においては、特定された移動局群が1つのみの場合について説明したが、本発明は、かかる場合のみに限るものではなく、移動局群が複数特定される場合も対象としている。複数の移動局群が特定された場合には、例えば、移動局群を構成する移動局2の台数が最大となる1つの移動局群に対して、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御するようにすれば良い。かくのごとく制御することによって、負荷分散を実現するための対象となる移動局2として、1度に、より多くの移動局2を選択することができる。
また、本第1の実施の形態においては、セル3−1とセル3−2との間でキャリアアグリゲーションを適用しない場合について説明したが、キャリアアグリゲーションを適用するようにしても良い。キャリアアグリゲーションを適用する場合は、高周波数側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性をまず変更する。しかる後、特定された移動局群は、2GHzキャリアのセル3−2を、制御用のRRC(Radio Resource Control)コネクションを最初に張ったプライマリセルとして、また、3.5GHzキャリアのセル3−1を、データ用に付加的に張ったセカンダリセルとして、キャリアアグリゲーションを実施するようにする。したがって、該キャリアアグリゲーションにおいては、複数キャリアのセル間に跨ったスケジューラにより、セル間の負荷分散を実現することになる。
また、本第1の実施の形態においては、低周波数側の2GHzキャリアしか選択することができない移動局2の分布のみを用いたが、高周波数側の3.5GHzキャリアを選択した移動局2の分布も合わせて用いるようにしても良い。すなわち、高周波数側の3.5GHzキャリアを選択した移動局2の分布も推定することによって、特定した移動局群に向かうように3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を変更しても、3.5GHzキャリアを選択した移動局2が、継続して、3.5GHzキャリアを選択することができるか否かを判定することができる。
例えば、図4Cに示したように、2GHzキャリアの移動局群と3.5GHzキャリアの移動局2とが、ほぼ同一の角度分布に存在していれば、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を変更しても、3.5GHzキャリアの移動局2の接続先セルに対する影響はないので、2GHzキャリアの当該移動局群に向かうように3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を変更することができるものと判断することができる。
<本発明の第2の実施の形態>
次に、本発明を適用したカバレッジ制御方法の第2の実施の形態について説明する。本第2の実施の形態に係る無線通信システムの構成およびスモールセル基地局1、移動局2の内部構成については、第1の実施の形態として示した図1、図2の場合と同一のシステム構成、内部構成であるが、本第2の実施の形態に係る無線通信システムにおけるカバレッジ制御方法の動作の一部が、第1の実施の形態として示した図3の場合とは異なっている。
すなわち、第1の実施の形態においては、移動局2の通信状態として、通信中(接続中)のセルを用いているが、本第2の実施の形態においては、移動局2の通信状態として、通信中(接続中)のセルを用いるのみならず、さらに、各移動局2宛ての送信バッファサイズも用いる場合について説明している。ここで、送信バッファサイズとは、移動局2とアプリケーションサーバとの間の通信において、途中に介在する基地局装置内に備えられたバッファに滞留する送信データ量を意味している。移動局2の通信状態として、送信バッファサイズもさらに用いることによって、移動局2当たりのトラヒック負荷に応じた制御を実現することができる。
本第2の実施の形態における、スモールセル基地局1のカバレッジ制御動作について、その一例を図5のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係るカバレッジ制御方法の一例を実現するためのスモールセル基地局1における動作手順を示すフローチャートであり、第1の実施の形態における図3のフローチャートの場合と同様、スモールセル基地局1においてあらかじめ定めた時間間隔で周期的に実施される。図5のフローチャートに示すカバレッジ制御方法と図3の場合との相違点は、図3のステップS102に記載した各移動局2の通信状態の測定に関する動作が、ステップS202の動作に置き換わった点のみである。図5のフローチャートのその他のステップ(ステップS101、ステップS103〜ステップS105)の各動作については、図3のフローチャートの場合と同一であり、図3と同じステップ記号を付して、ここでの詳細な説明は割愛する。
図5のフローチャートにおけるステップS202においては、移動局通信状態測定部13において、各移動局2の通信状態として、スモールセル基地局1との通信のために各移動局2がどのセル3と接続しているかを調べるとともに、さらに、各移動局2宛ての送信バッファサイズがあらかじめ定めた所定のサイズ閾値以上となる状態にあるか否かを測定する。ここで、送信バッファサイズは、送受信バッファ部11に蓄えられているデータ量を測定することによって取得することができる。移動局2の通信状態の測定結果に基づいて、2GHzキャリアのみ選択することが可能であり、かつ、トラヒック負荷があらかじめ定めた負荷閾値以上に高い、移動局2を特定するために、接続先のセル3として低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアのセル3−2(第2のセル)を選択した移動局2−2であって、かつ、送受信バッファ部11に蓄えられているデータ量が前記サイズ閾値以上に多い移動局2−2を抽出する(ステップS202)。
かくのごときステップS202に示す動作を行うことにより、本第2の実施の形態に係るカバレッジ制御方法は、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアしか選択することができないことに加えて、さらに、トラヒック負荷が前記負荷閾値以上に高い移動局2からなる移動局群に向けて、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御するので、セル3−2(第2のセル)からセル3−1(第1のセル)への負荷の分散効果を、第1の実施の形態よりも大きくすることができる。而して、当該移動局群を構成する移動局2の低下していたスループットをより確実に改善することができるという効果が得られる。
なお、本第2の実施の形態において移動局群が複数特定される場合には、例えば、移動局群を構成する各移動局2宛ての送信バッファサイズの合計値が最大となる1つの移動局群に対して、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御するようにすれば良い。而して、セル3−2(第2のセル)からセル3−1(第1のセル)への負荷の分散効果をより確実に実現することができる。
また、本第2の実施の形態においては、通信中(接続中)のセル以外のトラヒックに関連する通信状態として、送信バッファサイズを用いた場合について説明したが、本発明はかかる場合のみに限るものではない。例えば、無線ネットワークにて提供されるサービス品質を示すQoS(Quality of Service)を用いても良い。QoSについては、トラヒックのタイプ(real time、non-real timeなど)、パケット送信遅延、パケットロス率等の要求品質の観点から優先度が規定されており、該優先度は、QCI(QoS Class Identifier)と称される。かかる場合には、送受信バッファ部11における送受信バッファは、QCI毎にも準備されることになる。
したがって、カバレッジ制御の対象とする移動局群を構成する移動局2を特定する際に、優先度を示すQCIがあらかじめ定めた所定の優先度レベルよりも高い送信バッファに、送信データが、あらかじめ定めた所定量以上に蓄積されている状態になっている移動局2の通信状態を、トラヒックに関連する制御対象の通信状態と特定することによって、優先度の高い移動局2に対して、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御することが可能となり、QoSの要求品質をより確実に満たすことができるようになる。
<本発明の第3の実施の形態>
次に、本発明を適用したカバレッジ制御方法の第3の実施の形態について説明する。本第3の実施の形態に係る無線通信システムにおけるカバレッジ制御方法においては、第1の実施の形態に係る無線通信システムの場合とは、第2の実施の形態の場合と同様、測定する移動局2の通信状態が異なっている。すなわち、測定する移動局2の通信状態として、第1の実施の形態においては、接続中(通信中)のセルを用いたのに対して、本第3の実施の形態においては、接続中(通信中)のセルに加えて、さらに、各移動局2の受信品質も用いる。ここで、受信品質としては、例えば、接続中(通信中)のセルにおける、下り回線参照信号の受信電力(RSRP: Reference Signal Received Power)を測定して用いる。受信電力(RSRP)を用いることによって、接続中(通信中)のセルに対する希望信号の受信電力に応じた制御を実施することができる。
(第3の実施の形態の構成例の説明)
本発明の第3の実施の形態に係るスモールセル基地局、移動局を含む無線通信システムのシステム構成は、第1の実施の形態として図1に示したシステム構成と同様であり、無線通信システムにLTE(Long Term Evolution)方式を適用し、上り回線と下り回線とで、同一周波数で送信時間が異なるTDD(Time Division Duplex)方式を適用している。
次に、本第3の実施の形態におけるスモールセル基地局1および移動局2の内部構成について図6を参照しながら詳細に説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態に係るスモールセル基地局1および移動局2の内部構成の一例を示すブロック図である。なお、図1に示した移動局2−1と移動局2−2との内部構成は同一であり、図6には、移動局2として内部構成の一例を示している。図6のブロック構成における第1の実施形態の図2との相違点は、各移動局2の受信電力(RSRP)を取得するために、図6に示す移動局2が、図2の移動局2と同様の移動局無線送受信部20の他に、さらに、チャネル品質測定部21とチャネル品質報告部22とを追加して備えた構成になっている点である。
図6のブロック構成図のその他の構成要素(スモールセル基地局1の基地局無線送受信部10、送受信バッファ部11、移動局分布推定部12、移動局通信状態測定部13、移動局群特定部14および無線パラメータ制御部15の各部位、移動局2の移動局無線送受信部20の部位)については、図2のブロック構成の場合と同一であり、図2と同じ参照符号を付して、ここでの詳細な説明は割愛する。以下、図6のブロック構成図において、本第3の実施の形態に特有の構成要素として移動局2に追加して備えられているチャネル品質測定部21とチャネル品質報告部22とについて、順に説明する。
チャネル品質測定部21は、当該移動局2の接続先のセル(移動局2−1の場合は、3.5GHzキャリアのセル3−1、移動局2−2の場合は、2GHzキャリアのセル3−2)における下り回線参照信号の受信電力(RSRP)を測定する。
チャネル品質報告部22は、チャネル品質測定部21が測定した受信電力(RSRP)に関する情報を、周期測定レポート(Periodic Measurement Report)として、あらかじめ定めた所定の周期でスモールセル基地局1に対して報告する。而して、受信電力(RSRP)に関する周期測定レポートにおける報告値は、当該移動局2の移動局無線送受信部20から、無線ネットワーク、スモールセル基地局1の基地局無線送受信部10を介して、スモールセル基地局1の移動局通信状態測定部13に届けられる。
(第3の実施の形態の動作の説明)
次に、本第3の実施の形態における、スモールセル基地局1のカバレッジ制御動作について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態に係るカバレッジ制御方法の一例を実現するためのスモールセル基地局1における動作手順を示すフローチャートであり、第1の実施の形態における図3のフローチャートの場合と同様、スモールセル基地局1においてあらかじめ定めた時間間隔で周期的に実施される。図7のフローチャートに示すカバレッジ制御方法と図3の場合との相違点は、図3のステップS102に記載した各移動局2の通信状態の測定に関する動作が、ステップS302の動作に置き換わった点のみである。図7のフローチャートのその他のステップ(ステップS101、ステップS103〜ステップS105)の各動作については、図3のフローチャートの場合と同一であり、図3と同じステップ記号を付して、ここでの詳細な説明は割愛する。
図7のフローチャートにおけるステップS302においては、移動局通信状態測定部13において、各移動局2の通信状態として、スモールセル基地局1との通信のために各移動局2がどのセル3と接続しているかを調べるとともに、さらに、各移動局2の受信電力(RSRP)があらかじめ定めた所定の電力閾値以下となる状態にあるか否かを測定する。移動局2の通信状態の測定結果に基づいて、2GHzキャリアのみ選択することが可能であり、かつ、受信品質があらかじめ定めた品質閾値以下の劣悪な状態に低下している、移動局2を特定するために、接続先のセル3として低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアのセル3−2(第2のセル)を選択した移動局2−2であって、かつ、各移動局2から周期測定レポートとして周期的に送信されてくる受信電力(RSRP)に関する報告値が前記電力閾値以下に低下している移動局2−2を抽出する(ステップS302)。
かくのごときステップS302に示す動作を行うことにより、本第3の実施の形態に係るカバレッジ制御方法は、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアしか選択することができないことに加えて、さらに、受信品質が前記品質閾値以下の劣悪な状態に低下している移動局2からなる移動局群に向けて、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御するので、セル3−2(第2のセル)からセル3−1(第1のセル)への負荷の分散効果を、第1の実施の形態よりも大きくすることができる。而して、当該移動局群を構成する移動局2の低下していたスループットをより確実に改善することができるという効果が得られる。
なお、本第3の実施の形態においては、各移動局2の通信状態として測定する受信品質について受信電力(RSRP)を用いる場合について説明したが、本発明における各移動局2の受信品質についは、かかる場合のみに限るものではない。例えば、各移動局2の受信品質として、下り回線参照信号の受信電力(RSRP)、下り回線参照信号の受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信信号電力対干渉および雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise Ratio)、SINRに基づくチャネル品質インディケータ(CQI:Channel Quality Indicator)、基地局のスケジューラで計算される平均送信レートなどのいずれか1ないし複数を用いても良い。これらの各種の受信品質のうち、RSRQとCQIとは、受信電力(RSRP)の場合と同様に、移動局2が測定し、測定結果をあらかじめ定めた周期で周期的にスモールセル基地局1に報告するようにすれば良い。
<本発明の第4の実施の形態>
次に、本発明を適用したカバレッジ制御方法の第4の実施の形態について説明する。本第4の実施の形態に係る無線通信システムにおいては、第1の実施の形態に係る無線通信システムに対して、各セルのセル負荷を測定する構成要素がさらに追加された構成となっている。そして、各セルのセル負荷を測定した結果、セル間のセル負荷の差が大きい場合には、第1の実施の形態における移動局群の特定と3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性制御とを実施する。一方、セル間のセル負荷の差が小さければ、移動局群が存在する可能性が低いので、移動局群の特定および3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性制御の動作を回避する。つまり、セル間のセル負荷の差が大きく、3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性制御の必要性が高いときのみ、カバレッジの制御を実施する。なお、本第4の実施の形態において、測定対象とする各セルのセル負荷としては、通信中(接続中)の移動局2の台数(すなわちアクティブ移動局の台数)を用いている。
(第4の実施の形態の構成例の説明)
本発明の第4の実施の形態に係るスモールセル基地局、移動局を含む無線通信システムのシステム構成は、第1の実施の形態として図1に示したシステム構成と同様であり、無線通信システムにLTE(Long Term Evolution)方式を適用し、上り回線と下り回線とで、同一周波数で送信時間が異なるTDD(Time Division Duplex)方式を適用している。
次に、本第4の実施の形態におけるスモールセル基地局1および移動局2の内部構成について図8を参照しながら詳細に説明する。図8は、本発明の第4の実施の形態に係るスモールセル基地局1および移動局2の内部構成の一例を示すブロック図である。なお、図1に示した移動局2−1と移動局2−2との内部構成は同一であり、図8には、移動局2として内部構成の一例を示している。図8のブロック構成における第1の実施形態の図2との相違点は、各セル3のセル負荷を取得するために、図8に示すスモールセル基地局1が、図2のスモールセル基地局1と同様の各部位の他に、さらに、セル負荷測定部16を追加して備えた構成になっている点である。
図8のブロック構成図のその他の構成要素(スモールセル基地局1の基地局無線送受信部10、送受信バッファ部11、移動局分布推定部12、移動局通信状態測定部13、移動局群特定部14および無線パラメータ制御部15の各部位、移動局2の移動局無線送受信部20の部位)については、図2のブロック構成の場合と同一であり、図2と同じ参照符号を付して、ここでの詳細な説明は割愛する。以下、図8のブロック構成図において、本第4の実施の形態に特有の構成要素としてスモールセル基地局1に追加して備えられているセル負荷測定部16について説明する。
セル負荷測定部16は、各セル3のセル負荷として、各セル3に接続しているアクティブ移動局の台数を測定する。測定したセル負荷は、スモールセル基地局1内の無線パラメータ制御部15に通知される。
(第4の実施の形態の動作の説明)
次に、本第4の実施の形態における、スモールセル基地局1のカバレッジ制御動作について、その一例を図9のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。図9は、本発明の第4の実施の形態に係るカバレッジ制御方法の一例を実現するためのスモールセル基地局1における動作手順を示すフローチャートであり、第1の実施の形態における図3のフローチャートの場合と同様、スモールセル基地局1においてあらかじめ定めた時間間隔で周期的に実施される。図9のフローチャートに示すカバレッジ制御方法と図3の場合との相違点は、図9の最初のステップとしてステップS4−6の動作が追加された点のみである。図9のフローチャートのその他のステップ(ステップS101〜ステップS105)の各動作については、図3のフローチャートの場合と同一であり、図3と同じステップ記号を付して、ここでの詳細な説明は割愛する。
図9のフローチャートにおけるステップS406においては、無線パラメータ制御部15において、まず、セル負荷測定部16にて測定されたセル3−1とセル3−2とのセル負荷を比較する(ステップS406)。セル3−1のセル負荷が、セル3−2のセル負荷に対してさらにあらかじめ定めた所定の差分閾値Aを加算した値よりも小さい場合、すなわち、セル3−1のセル負荷が、セル3−2のセル負荷に比してあらかじめ定めた所定の差分閾値Aよりも小さい場合(ステップS406のYES)、セル3−2のセル負荷がセル3−1のセル負荷に比して相対的に大きいとみなされて、カバレッジの制御を実施するために、ステップS101以降の処理に移行する。
一方、セル3−1のセル負荷が、セル3−2のセル負荷にあらかじめ定めた所定の差分閾値Aを加算した値以上に大きい場合は(ステップS406のNO)、セル3−2のセル負荷がセル3−1のセル負荷に比して相対的に小さく、カバレッジ制御の対象となる移動局群が存在する可能性が低いので、ステップS101以降の動作を実施することなく、図9のフローチャートの動作を終了する。
かくのごときステップS406に示す動作を行うことにより、本第4の実施の形態に係るカバレッジ制御方法は、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアを用いるセル3−1(第1のセル)と低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアを用いるセル3−2(第2のセル)との間で、セル負荷に大きな偏りが生じている場合には、該偏りを是正するように、負荷分散の対象となる移動局群に向けて、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御する。したがって、カバレッジ制御が必要な場合にのみ、セル3−1(第1のセル)への負荷の分散を実現することになり、カバレッジ制御の処理負荷を軽減しながらスループットを確実に改善することができる。また、負荷の分散先であるセル3−1(第1のセル)のセル負荷も考慮しているので、セル3−1(第1のセル)に既に接続されている移動局2−1へのカバレッジ制御による影響を抑えながら、セル負荷の低いセル3−1(第1のセル)に対して効果的に負荷を分散させることができる。
なお、本第4の実施の形態においては、セル負荷として、アクティブ移動局の台数を用いる場合について説明したが、本発明におけるセル負荷については、かかる場合のみに限るものではない。例えば、セル負荷として、アクティブ移動局の台数、セル3の周波数毎の帯域幅の違いを考慮した周波数帯域当たりのアクティブ移動局の台数、周波数リソースのリソース使用率、各セル3内の移動局2すなわち各アクティブ移動局宛ての送信バッファサイズの合計値などのうち、いずれか1ないし複数を用いても良い。
<本発明のその他の実施の形態>
次に、本発明を適用したカバレッジ制御方法のその他の実施の形態について説明する。前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、スモールセル基地局1が各移動局2の分布を推定するために、移動局分布推定部12において上り回線参照信号の到来角を測定する場合について説明したが、本発明における移動局分布推定動作は、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、各移動局2が、下り回線参照信号の到来角度毎の受信品質を測定して、測定した受信品質に関する情報を、プリコーディングウェイト情報(PMI:Precoding Matrix Indicator)として、スモールセル基地局1の移動局分布推定部12に報告するようにしても良い。上り回線参照信号の到来角の場合は、下り回線と上り回線とで同一の周波数を用いるTDDの場合に適しているのに対して、プリコーディングウェイト情報PMIとして移動局2側から報告する場合は、スモールセル基地局1から各移動局2へのフィードバック遅延が生じるものの、TDDの場合のみに限らず、下り回線と上り回線とで異なる周波数を用いるFDD(Frequency Division Duplex)の場合であっても適用することができる。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、カバレッジ制御対象として、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアのセル3−2(第2のセル)のあらかじめ定めた角度範囲内に存在している複数の移動局2−2からなる移動局群に対して、セル3−1(第1のセル)が用いる高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御することによって、セル3−2(第2のセル)に収容されている移動局群の各移動局2−2を、セル3−1(第1のセル)によってもカバーすることができるように制御する場合について説明したが、本発明におけるカバレッジ制御動作は、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、セル3−2(第2のセル)に存在する移動局2−2の一部が、電波の減衰が大きくなる屋内に位置し、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアが到達し難い場合も生じ得る。かかる場合に備えて、移動局2−2の通信状態として、移動局2−2が屋内・屋外いずれかで通信しているかという通信位置状態を判定して、該判定結果を用いて、3.5GHzキャリアのセル3−1の送信ビームの指向性を制御するようにしても良い。つまり、通信位置状態の判定結果として、屋内に位置すると判定された移動局2−2については、カバレッジ制御の対象から外す一方、屋外に位置すると判定された移動局2−2のみをカバレッジ制御の対象として、当該移動局2−2に向けて3.5GHzキャリアのセル3−1の送信ビームの指向性を制御するようにしても良い。ここで、屋内で通信している状態を判定する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)電波の受信レベルがあらかじめ定めた所要レベル閾値よりも小さいと判定された場合や、GPS衛星の検出数があらかじめ定めた検出衛星数閾値よりも少ないと判定された場合、などが挙げられる。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアのセル3−1の送信ビームの指向性を制御する場合について説明したが、本発明における送信ビームの指向性制御動作は、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、カバレッジの制御動作として、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアのセル3−2の送信ビームの指向性を制御するようにしても良い。かかる場合には、各移動局2−2は、前述した第3の実施の形態において説明したような、当該移動局2−2が接続中のセル3−2(第2のセル)だけではなく、セル3−1(第1のセル)の受信品質も合わせて測定する。
測定結果として、セル3−1(第1のセル)の受信品質があらかじめ定めた第1セル品質閾値以下、または、セル3−2(第2のセル)の受信品質に対するセル3−1(第1のセル)の受信品質の相対値があらかじめ定めた所定閾値以下の場合には、セル3−1(第1のセル)の3.5GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御しても、当該移動局2−2をカバーすることはできないものと判断して、セル3−2の2GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御することにする。
かくのごとく、セル3−2の2GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御することによって、該当する移動局2−2の接続先セル3の受信品質を改善することができるので、スループットの改善を期待することができる。
あるいは、前述した第4の実施の形態における図9のステップS406のセル負荷の判定動作について、セル3−1(第1のセル)の3.5GHzキャリアではなく、セル3−2(第2のセル)の2GHzキャリアの送信ビームの指向性を制御する場合のセル負荷を判定する動作を行うために、図9のステップS406の不等号を逆向きに変更して、セル3−1(第1のセル)のセル負荷が、セル3−2(第2のセル)のセル負荷に対してあらかじめ定めた所定の差分閾値Aを加算した値よりも大きいか否かを判定するようにしても良い。セル3−1(第1のセル)のセル負荷が、セル3−2(第2のセル)のセル負荷に対して所定の差分閾値Aを加算した値よりも大きい場合は、セル3−2(第2のセル)のセル負荷がセル3−1(第1のセル)のセル負荷に比して相対的に小さいので、セル3−2(第2のセル)の2GHzキャリアの送信ビームの指向性の制御を行っても、その影響を受ける移動局2−2の台数が少なくて済むことになる。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアと低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアとは、いずれも、1つの周波数帯域を有する1つのセルから構成されている場合について説明したが、本発明におけるシステム構成は、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリア、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアのそれぞれが、複数の周波数帯域から構成され、複数のセルから構成されていても良い。このときの各周波数帯域をコンポーネントキャリア(以下、CCと略記する)と称し、各CCがセルに対応している。例えば、3.5GHzキャリアが、総量で、40MHz幅の周波数帯域から構成される場合、10MHz幅の4CC(4セル)に分割することができる。かくのごとく、複数のCCからなるキャリアの場合においては、各CCに対して、前述の第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態に示したようなカバレッジ制御動作を実施することになる。その結果、移動局群が複数特定された場合には、各CC毎のカバレッジ制御動作により、低周波数(第2の周波数)側の2GHzキャリアに存在する複数の各移動局群を高周波数(第1の周波数)側の3.5GHzキャリアの各CCに収容することができる。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、セル3−1とセル3−2とが異なる周波数を有する同一通信方式の場合について説明したが、本発明におけるセル3−1とセル3−2とは、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、セル3−1とセル3−2とが、互いに異なるRAT(Radio Access Technology)を用いている場合であっても良い。すなわち、セル3−1がLTE方式を用い、セル3−2が第3世代のUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)を用いている場合や、セル3−1がWireless LANを用い、セル3−2がLTEを用いている場合などの組み合わせからなっている場合とすることも可能である。ただし、RATが異なった場合には、対応する周波数も異なるので、セル3−1とセル3−2との周波数が異なることに変わりはない。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、LTE方式の無線通信システムに本発明を適用する場合について説明したが、本発明の適用先となる無線通信方式は、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、UMTS方式の無線通信システムに適用する場合であっても良いし、上り回線と下り回線とで異なる周波数を同時に使用するFDD方式の無線通信システムや、例えばWiMAX、IEEE802.16m等のLTE方式とは異なるTDD方式の無線通信システムに適用する場合であっても良い。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、セル3−1とセル3−2とを、同一のスモールセル基地局1に備えている場合について説明したが、本発明におけるセル構成としては、かかる場合のみに限るものではない。
例えば、セル3−1とセル3−2とが、互いが有線または無線の回線で接続されている異なる基地局装置のそれぞれに分かれて備えられるように構成しても良い。例えば、セル3−1がフェムトセル基地局に、セル3−2がピコ基地局にそれぞれ備えられる場合や、セル3−1がリモート・レディオ・ヘッド(RRH:Remote Radio Head)基地局に、セル3−2がマクロ基地局にそれぞれ備えられている場合であっても良い。かかる場合、移動局2の角度分布を推定する際に、移動局2と各基地局との位置情報を用いた3点測量などの方法によって、移動局2の分布を補正すれば良い。あるいは、同一の基地局装置、異なる基地局装置の如何を問わず、第1のセル3−1が第2のセル3−2のカバレッジ内に位置するスモールセルであっても良い。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、各移動局2は、セル3−1とセル3−2との間で、複数の周波数帯域を同時に用いて通信するキャリアアグリゲーション(CA:Carrier Aggregation)を適用しないIn-Band CAなしの場合について説明したが、本発明は、セル3−1とセル3−2とのいずれか一方のセルを用いて通信を行う場合のみに限るものではなく、セル3−1とセル3−2との双方のセルを用いて通信を行うIn-Band CAありの場合であっても構わない。
また、前述した第1の実施の形態から第4の実施の形態までの各実施の形態においては、セル3のキャリアに関する送信ビームの指向性を制御することにより、移動局2に対する当該セル3のカバレッジを制御するカバレッジ制御方法について説明したが、かくのごときカバレッジ制御方法に限るだけでなく、セル3のキャリアに関する送信ビームの指向性を制御する指向性制御方法として構成するようにしても、勿論構わない。
例えば、第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つのセル3−1(第1のセル)と、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つのセル3−2(第2のセル)と、基地局装置と、前記セル3−1(第1のセル)と前記セル3−2(第2のセル)との少なくとも一方のセルによって通信する移動局2と、を少なくとも含んで構成される無線通信システムにおいて前記第1の周波数あるいは前記第2の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御方法であって、前記セル3−1(第1のセル)および前記セル3−2(第2のセル)における前記移動局2の分布を推定する移動局分布推定ステップと、前記移動局2の通信状態を測定する移動局通信状態測定ステップと、前記移動局分布推定ステップにおいて推定した前記移動局2の分布と前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定した前記移動局2の通信状態とに基づいて、少なくとも、前記セル3−2(第2のセル)に分布する前記移動局2を含む1台以上の前記移動局2から構成される移動局群を特定する移動局群特定ステップと、少なくとも、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御ステップと、を少なくとも有していることを特徴とする指向性制御方法であっても良い。
また、かくのごとき指向性制御方法において、前記セル3−1(第1のセル)と前記セル3−2(第2のセル)とが、同一の基地局装置に実装されていても良いし、また、前記セル3−1(第1のセル)が前記セル3−2(第2のセル)のカバレッジ内に位置するスモールセルであっても良い。
また、かくのごとき指向性制御方法において、前記セル3−1(第1のセル)と前記セル3−2(第2のセル)とが、互いに有線回線で接続されている異なる基地局のそれぞれに分かれて実装されていても良いし、例えば、前記セル3−1(第1のセル)がフェムトセル基地局に、前記セル3−2(第2のセル)がピコ基地局にそれぞれ実装されていても良いし、あるいは、前記セル3−1(第1のセル)がリモート・レディオ・ヘッド(RRH:Remote Radio Head)基地局に、前記セル3−2(第2のセル)がマクロ基地局にそれぞれ実装されていても良い。
また、かくのごとき指向性制御方法において、前記移動局分布推定ステップにおける前記移動局2の分布の推定動作を、前記第1のセルを実装する基地局装置、前記第2のセルを実装する基地局装置、もしくは、他の機器において実施するようにしても良い。
また、かくのごとき指向性制御方法において、前記第1の周波数は3.0GHzよりも高い周波数であり、前記第2の周波数が3.0GHzよりも低い周波数である場合が望ましい。例えば、前述のように、前記第1の周波数が3.5GHzであり、前記第2の周波数が2GHzであっても良い。あるいは、かくのごとき指向性制御方法において、例えば、前記第1の周波数が1.0GHzよりも高い周波数であり、前記第2の周波数が1.0GHzよりも低い周波数である場合であっても構わない。
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
<付記>
以上に、本発明に係る実施の形態について、詳細に説明したことからも明らかなように、前述の各実施の形態の一部または全部は、以下の各付記のようにも記載することができるが、本発明はかかる場合に限るものではないことは言うまでもない。
(付記1)第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局と、を含む無線通信システムにおけるカバレッジ制御方法であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定ステップと、前記移動局の通信状態を測定する移動局通信状態測定ステップと、前記移動局分布推定ステップにおいて推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定した前記移動局の通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定ステップと、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御ステップと、を有するカバレッジ制御方法。
(付記2)前記移動局分布推定ステップにおいて前記移動局の分布を推定するために、各前記移動局が送信する上り回線参照信号を受信し、受信した前記上り回線参照信号の到来角を測定することによって、各前記移動局が位置する角度分布を推定する前記付記1に記載のカバレッジ制御方法。
(付記3)前記移動局分布推定ステップにおいて前記移動局の分布を推定するために、各前記移動局が下り回線参照信号の到来角度毎の受信品質を測定して、測定した前記受信品質に関する情報を、プリコーディングウェイト情報(PMI:Precoding Matrix Indicator)として各前記移動局から報告することによって、各前記移動局が位置する角度分布を推定する前記付記1に記載のカバレッジ制御方法。
(付記4)移動局通信状態測定ステップにおいて前記移動局の前記通信状態を測定するために、少なくとも、前記移動局が前記第2のセルと接続中の状態であるか否かを測定する前記付記1ないし3のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記5)前記移動局通信状態測定ステップにおいて前記移動局の前記通信状態を測定するために、少なくとも、前記移動局が前記第2のセルと接続中の状態であり、かつ、前記移動局宛ての送信バッファサイズがあらかじめ定めたサイズ閾値以上となる状態であるか否かを測定する前記付記1ないし3のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記6)前記移動局通信状態測定ステップにおいて前記移動局の前記通信状態を測定するために、少なくとも、前記移動局が前記第2のセルと接続中の状態であり、かつ、受信品質があらかじめ定めた品質閾値以下の状態に低下しているか否かを測定する前記付記1ないし3のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記7)前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定される前記受信品質として、下り回線参照信号の受信電力(RSRP: Reference Signal Received Power),下り回線参照信号の受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信信号電力対干渉および雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise Ratio)、チャネル品質インディケータ(CQI:Channel Quality Indicator)、あるいは、平均送信レートのいずれか1ないし複数を用いる前記付記6に記載のカバレッジ制御方法。
(付記8)前記移動局通信状態測定ステップにおいて前記移動局の前記通信状態を測定するために、少なくとも、前記移動局が前記第2のセルと接続中の状態であり、かつ、優先度を示すQCI(QoS Class Identifier)があらかじめ定めた優先度レベルよりも高い送信バッファに蓄積される送信データ量が、あらかじめ定めた所定量以上に達している状態であるか否かを測定する前記付記1ないし3のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記9)前記移動局通信状態測定ステップにおいて前記移動局の前記通信状態を測定するために、少なくとも、前記移動局が前記第2のセルと接続中の状態であり、かつ、前記移動局が屋外に位置する状態であるか否かを測定する前記付記1ないし3のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記10)前記移動局が屋外に位置する状態であるか否かを測定する際に、記移動局におけるGPS(Global Positioning System)電波の受信レベルがあらかじめ定めた所要レベル閾値以上に大きい、または、GPS衛星の検出数があらかじめ定めた検出衛星数閾値よりも多い場合に、屋外に位置する状態であると判定する前記付記9に記載のカバレッジ制御方法。
(付記11)前記移動局群特定ステップにおいて前記移動局群を特定するために、前記第2のセルと接続中の状態にある前記移動局のうち、あらかじめ定めた所定の角度範囲毎に区切った領域内に存在している前記移動局の台数が、前記移動局の総数に対するあらかじめ定めた割合閾値以上に達している角度範囲が存在していた場合に、当該角度範囲の領域内に存在している前記移動局を、1つの前記移動局群として特定する前記付記1ないし10のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記12)前記カバレッジ制御ステップにおいて前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御するために、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群の分布領域を代表する代表角に向かうように、前記第1のセルのキャリアの送信ビームの指向性を制御する前記付記1ないし11のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記13)前記移動局群特定ステップにおいて前記第1のセルのキャリアの送信ビームの指向性が向くように制御する前記移動局群の前記代表角として、特定した前記移動局群を構成する各前記移動局の到来角の平均値、あるいは、特定した前記移動局群を構成する各前記移動局の到来角の最大角と最小角との中央値を用いる前記付記12に記載のカバレッジ制御方法。
(付記14)前記カバレッジ制御ステップとして、前記第1のセルと前記第2のセルとのそれぞれのセル負荷を測定するセル負荷測定ステップをさらに有し、前記カバレッジ制御ステップは、前記セル負荷測定ステップにおける前記セル負荷の測定結果として、少なくとも、前記第1のセルのセル負荷が、前記第2のセルのセル負荷に比してあらかじめ定めた差分閾値よりも小さいと判定したときに、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御する動作を行う前記付記1ないし13のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記15)前記セル負荷測定ステップにおいて測定する前記セル負荷として、前記第1のセルまたは前記第2のセルのセルと接続中の状態にあるアクティブ移動局の台数、周波数帯域当たりの前記アクティブ移動局の台数、周波数リソースのリソース使用率、各前記アクティブ移動局宛ての送信バッファサイズの合計値のうちいずれか1ないし複数を用いる前記付記14に記載のカバレッジ制御方法。
(付記16)前記カバレッジ制御ステップにおいて、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を前記移動局群に向かうように制御する代わりに、前記第2の周波数の送信ビームの指向性を前記移動局群に向かうように制御する前記付記1ないし11のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記17)前記カバレッジ制御ステップにおいて前記第2の周波数の送信ビームの指向性を前記移動局群に向かうように制御する場合として、少なくとも、前記第1のセルの受信品質があらかじめ定めた第1セル品質閾値以下、または、前記第2のセルの受信品質に対する前記第1のセルの受信品質の相対値があらかじめ定めた所定閾値以下の場合とする前記付記16に記載のカバレッジ制御方法。
(付記18)前記カバレッジ制御ステップとして、前記第1のセルと前記第2のセルとのそれぞれのセル負荷を測定するセル負荷測定ステップをさらに有し、前記カバレッジ制御ステップにおいて前記第2の周波数の送信ビームの指向性を前記移動局群に向かうように制御する場合として、少なくとも、前記第1のセルのセル負荷が、前記第2のセルのセル負荷に比してあらかじめ定めた差分閾値よりも大きいと判定した場合とする前記付記16に記載のカバレッジ制御方法。
(付記19)各前記移動局は、前記第1のセルと前記第2のセルとのいずれか一方のセルを用いて通信する前記付記1ないし18のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記20)各前記移動局は、前記第1のセルと前記第2のセルとの双方のセルを用いて通信する前記付記1ないし18のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記21)前記第1のセルのキャリアとして用いる前記第1の周波数、前記第2のセルのキャリアとして用いる前記第2の周波数のそれぞれが、複数の周波数帯域から構成され、前記第1のセル、前記第2のセルのそれぞれが、複数の該周波数帯域毎に対応する複数のセルに分割されて構成されている前記付記1ないし20のいずれかに記載のカバレッジ制御方法。
(付記22)第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局と、を含む無線通信システムにおいて前記第1の周波数あるいは前記第2の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御方法であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定ステップと、前記移動局の通信状態を測定する移動局通信状態測定ステップと、前記移動局分布推定ステップにおいて推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定ステップにおいて測定した前記移動局の通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定ステップと、前記移動局群特定ステップにおいて特定した前記移動局群に対する前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御する指向性制御ステップと、を有する指向性制御方法。
(付記23)前記第1のセルと前記第2のセルとが、同一の基地局装置に実装されている前記付記22に記載の指向性制御方法。
(付記24)前記第1のセルが前記第2のセルのカバレッジ内に位置するスモールセルである前記付記22に記載の指向性制御方法。
(付記25)前記第1のセルと前記第2のセルとが、互いに有線回線で接続されている異なる基地局装置のそれぞれに分かれて実装されている前記付記22に記載の指向性制御方法。
(付記26)前記第1のセルがフェムトセル基地局に、前記第2のセルがピコ基地局にそれぞれ実装されている前記付記25に記載の指向性制御方法。
(付記27)前記第1のセルがリモート・レディオ・ヘッド(RRH:Remote Radio Head)基地局に、前記第2のセルがマクロ基地局にそれぞれ実装されている前記付記25に記載の指向性制御方法。
(付記28)前記移動局分布推定ステップにおける前記移動局の分布の推定動作を、前記第1のセルを実装する基地局装置、前記第2のセルを実装する基地局装置、もしくは、他の機器のいずれかにおいて実施する前記付記22ないし27のいずれかに記載の指向性制御方法。
(付記29)前記第1の周波数が3.0GHzよりも高い周波数であり、前記第2の周波数が3.0GHzよりも低い周波数である前記付記22ないし28のいずれかに記載の指向性制御方法。
(付記30)前記第1の周波数が1.0GHzよりも高い周波数であり、前記第2の周波数が1.0GHzよりも低い周波数である前記付記22ないし28のいずれかに記載の指向性制御方法。
(付記31)第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局と、を少なくとも含んで構成される無線通信システムにおける基地局装置であって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定手段と、前記移動局との通信状態を測定する移動局通信状態測定手段と、前記移動局分布推定手段において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定手段において測定した前記移動局との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定手段と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定手段において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御手段と、を有する基地局装置。
(付記32)前記第1のセルと前記第2のセルとの一方のセルもしくは双方のセルを構成要素として備えて構成されている前記付記31に記載の基地局装置。
(付記33)前記第1のセルと前記第2のセルとのいずれか一方のセルを構成要素として備え、かつ、前記第1のセルと前記第2のセルとのいずれか他方のセルを構成要素として備えて構成されている他の基地局装置と互いに有線または無線の回線で接続されている前記付記31に記載の基地局装置。
(付記34)第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムであって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定手段と、前記移動局と前記基地局装置との通信状態を測定する移動局通信状態測定手段と、前記移動局分布推定手段において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定手段において測定した前記移動局と前記基地局装置との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定手段と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定手段において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御手段と、を有する無線通信システム。
(付記35)前記第1のセルと前記第2のセルとのいずれか一方のセルを構成要素として備え、かつ、前記第1のセルと前記第2のセルとのいずれか他方のセルを構成要素として備えて構成されている他の無線通信システムと互いに有線または無線の回線で接続されている前記付記34に記載の無線通信システム。
(付記36)前記第1のセルと前記第2のセルとのそれぞれの無線アクセス方式(RAT:Radio Access Technology)が互いに異なっている前記付記34または35に記載の無線通信システム。
(付記37)前記第1のセルと前記第2のセルとの無線アクセス方式として、LTE(Long Term Evolution)方式、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式、Wireless LAN方式、のうちいずれかを用いている前記付記36に記載の無線通信システム。
(付記38)第1の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第1のセルと、前記第1の周波数よりも低周波数帯の第2の周波数をキャリアとして用いる少なくとも1つの第2のセルと、基地局装置と、前記第1のセルと前記第2のセルとの少なくとも一方のセルによって通信する移動局とを含む無線通信システムにおいて、前記基地局装置に実装されたコンピュータの制御プログラムとして実行される基地局制御プログラムであって、前記第1のセルおよび前記第2のセルにおける前記移動局の分布を推定する移動局分布推定処理と、前記移動局と前記基地局装置との通信状態を測定する移動局通信状態測定処理と、前記移動局分布推定処理において推定した前記移動局の分布と前記移動局通信状態測定処理において測定した前記移動局と前記基地局装置との通信状態とに基づいて、前記第2のセルに分布する前記移動局を含む1台以上の前記移動局から構成される移動局群を特定する移動局群特定処理と、前記第1の周波数の送信ビームの指向性を制御して、前記移動局群特定処理において特定した前記移動局群に対する前記第1のセルのカバレッジを制御するカバレッジ制御処理と、を有する基地局制御プログラム。