JP6586103B2 - 修飾rnaを含有する分子集合体及びそれを用いたrna送達システム - Google Patents
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Description
従来の低分子化合物では、特定のターゲットに結合する候補化合物を選定する必要があるため、化合物探索に過大な労力を有し、その上市確率はわずか30000分の1程度である。一方、核酸医薬品は、疾患関連遺伝子そのものを直接ターゲットとし疾患原因タンパク質の発現を抑制可能であるため、低分子化合物と比較し汎用性が高いと考えられている。
核酸医薬品の代表例であるsiRNA(small interfering RNA)は、21〜23塩基対からなる低分子二本鎖RNAであり、RNA干渉と呼ばれる、mRNAの発現を抑制する現象であり、2006年にノーベル生理学医学賞受賞のテーマにもなった。
しかしながら、全世界でこれまでに承認に至った核酸医薬品は極めて少ない。その大きな要因は、核酸分子の生体内での不安定性や自然免疫応答の惹起による副作用の誘発と考えられている。すなわち、核酸分子を生体内で効率よく目的組織・細胞に運び、その効果を安全かつ有効に発揮するためには、適切な薬物送達技術、いわゆるDDS(ドラッグデリバリーシステム)が必要となる(非特許文献1、2参照)。
また、カチオン性リポソームと同様に、静電的相互作用によりカチオン性ポリマーとRNAとを結合させ、RNAを細胞内に導入するDDS技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、RNAとカチオン性ポリマー等の静電的結合を用いる方法の問題点は、生体内のアニオン性分子(硫酸化多糖など)やカチオン性分子により阻害されること、カチオン性ポリマーそのものが細胞内に付着・侵入する能力を持ち一般的に細胞毒性が高いことが挙げられる。
特許文献5には、サルコシン鎖を含む分岐した親水性ブロックと、ポリ乳酸鎖を有する疎水性ブロックとを有する分岐型両親媒性ブロックポリマーA、及び機能性部位とポリ乳酸鎖とを有する機能性物質Fを含む分子集合体が開示されている。特許文献3の分子集合体では、前記両親媒性ブロックポリマーAの疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖がL−乳酸単位から構成され、前記機能性物質Fに含まれるポリ乳酸鎖がD−乳酸単位から構成されているか、又は、前記両親媒性ブロックポリマーAの疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖がD−乳酸単位から構成され、前記機能性物質Fに含まれるポリ乳酸鎖がL−乳酸単位から構成されている。
上記特許文献3〜5等は、RNAの細胞内送達について特に述べていない。即ち、特許文献3〜5等に記載の分子集合体が、RNAの細胞内送達に有効か否かについては不明である。
本発明は、生体内投与によって、siRNAやshRNAといった機能性RNAを細胞内へ導入すること及び疾患部位へ送達することを可能とする、該機能性RNAを含有する新規な分子集合体を提供することを主な課題とする。また、その分子集合体を含む癌予防剤又は治療剤、その分子集合体を用いたRNA送達システムなどを提供することも課題とする。
1)サルコシン鎖を含む親水性ブロックと乳酸鎖を含む疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA
2)長鎖疎水性基を有する化合物により修飾されているRNA
3)細胞膜結合性化合物
4)上記1〜3の一以上の成分に結合していてもよい光増感剤。
[4]ポリ乳酸又はポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマーのポリ乳酸が、10〜60個の乳酸単位からなり、ポリサルコシンが、0〜100個のサルコシン単位からなるものである、上記[3]に記載の分子集合体。
[6]遺伝子発現抑制効果を有するRNAが、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、アプタマーRNA、リボザイムである、上記[5]に記載の分子集合体。
[8]ABCG2遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、上記[7]に記載の分子集合体。
センス鎖(配列番号10):
5’−CGAUAUGGAUUUACGGCUUdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号11):
5’−AAGCCGUAAAUCCAUAUCGdTdG−3’
[9]フェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、上記[7]に記載の分子集合体。
センス鎖(配列番号12):
5’−GCAUUUACCAGUGACCAUAdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号13):
5’−UAUGGUCACUGGUAAAUGCdTdA−3’
[11]細胞膜透過性ペプチドが、
配列番号1:GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV
配列番号2:YGRKKRRQRRRG
配列番号3:RRRRNRTRRNRRRVR
配列番号4:YGRRARRRRRRR
配列番号5:KETWWETWWTE
配列番号14:RKKRRRESRKKRRRESC
配列番号15:YARAAARQARAC
配列番号16:KETWWETWWTEWSQPKKKRKVC、又は
配列番号17:LIRLWSHLIHIWFQNRRLKWKKKC
である、上記[10]に記載の分子集合体。
[13]450nm〜1300nmの波長を有する光で機能する光増感剤が、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素等のシアニン系色素、ローダミン系色素、ポルフィリン系色素、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)750、DY750、DY751、DY780、エオシン、ローズベンガル、IRDye(登録商標)800CW、カルボキシフルオレセイン(FAM)である、上記[12]に記載の分子集合体。
[20]RNAが、遺伝子発現抑制効果を有するものである、上記[19]に記載のRNA。
[21]遺伝子発現抑制効果を有するRNAが、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、アプタマーRNA、リボザイムである、上記[20]に記載のRNA。
[23]ABCG2遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、上記[22]に記載のRNA。
センス鎖(配列番号10):
5’−CGAUAUGGAUUUACGGCUUdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号11):
5’−AAGCCGUAAAUCCAUAUCGdTdG−3’
[24]フェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、上記[22]に記載のRNA。
センス鎖(配列番号12):
5’−GCAUUUACCAGUGACCAUAdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号13):
5’−UAUGGUCACUGGUAAAUGCdTdA−3’
また、本発明の分子集合体は、細胞質内までRNAを拡散送達することでき、そこでRNAの機能(遺伝子発現抑制機能)を発揮させることができる。
両親媒性ブロックポリマーAは、サルコシン単位を含む親水性ブロックと乳酸単位を含む疎水性ブロックとが直鎖状に結合した直鎖型でも、乳酸単位を含む一つの疎水性ブロックにサルコシン単位を含む親水性ブロックが3つに分岐結合した分岐型でもよい。親水性ブロックと疎水性ブロックとは、通常、リンカー部位により連結されている。
本発明において、両親媒性ブロックポリマーAの親水性ブロックが有する「親水性」という物性の程度は特に限定されないが、少なくとも、親水性ブロックの全体が、後述の疎水性ブロックに対して相対的に親水性が強い性質をいう。或いは、親水性ブロックが疎水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性をいう。さらに或いは、両親媒性ブロックポリマーAが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性をいう。
サルコシン(N−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このような構造を構成ブロックとして用いることは、該ブロックに高い親水性の基本特性、又は、高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つ基本特性が備わる点で非常に有用である。
本発明において、疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度は特に限定されないが、少なくとも、疎水性ブロックが、上記の親水性ブロックの全体に対して相対的に疎水性が強い領域であり、親水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。或いは、両親媒性ブロックポリマーAが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していればよい。
ポリ乳酸は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から形成される分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内において腫瘍組織以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとする両親媒性物質から得られる分子集合体は、腫瘍組織への特異的な集積性という点で有用である。
両親媒性ブロックポリマーAは、分子中に薬剤等を有さないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない限り、薬剤等を有することもできる。かかる薬剤等は特に限定されないが、例えば、後述する光増感剤が挙げられる。
本発明の分子集合体は、長鎖疎水性基を有する化合物により修飾されているRNAを含む。
上記化合物は、長鎖疎水性基を有していれば、それ以外に長鎖親水性基などを有していてもよい。長鎖疎水性基としては、例えば、ポリ乳酸鎖(R−PLA)、ジヘキシルジスルフィドのように、ジスルフィド結合を間に介する炭素数10〜16(好ましくは炭素数12)の直鎖状炭化水素(好ましくは直鎖状飽和炭化水素)を有する基(例、ジメトキシトリチルオキシ−ヘキシルジチオヘキシル(DMT−C6−SS−C6基)を挙げることができ、長鎖親水性基をも有するものとしては、例えばポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー鎖(R−PLA−Sar)を挙げることができる。
ポリ乳酸鎖、DMT−C6−SS−C6基などの長鎖疎水性基は疎水性を示し、通常、分子集合体の疎水コア部に位置し、ポリサルコシン鎖などの長鎖親水性基やRNAは親水性を示し、親水シェル部に位置する。これによって、当該修飾RNAは、本発明の分子集合体に安定に包含される。当該修飾RNAも本発明に含まれる。
RNAとしては、遺伝子発現抑制効果等の機能を有していれば特に限定されないが、細胞質内のmRNAに作用しその機能を阻害することができる機能性RNAが好ましい。このようなRNAとしては、例えば、siRNA(small interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)、miRNA(microRNA)、アンチセンスRNA、アプタマーRNA、リボザイムを挙げることができる。これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明においては、ABCG2遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNA、及びフェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNAの2つのsiRNAを任意の割合(例えば、1:1)で併用することが好ましい。
RNAとR−PLA又はR−PLA−Sarとは、マレイミド基などの反応性基を介して直接結合していてもよいが、反応性基に加え通常は適当なリンカーを介して結合される。このようなリンカーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリペプチド、脂肪族ポリエステル、多糖類を挙げることができる。ポリペプチドの具体例としては、ポリグリシン、ポリβアラニンを挙げることができ、脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリカプロラクトン、ポリグルコール酸を挙げることができる。
本発明に係るRNAは、長鎖疎水性基を有する化合物により修飾されている。かかる化合物として、具体的には、例えば、ポリ乳酸鎖(R−PLA)又はポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー鎖(R−PLA−Sar)などを有する高分子や、ジメトキシトリチルオキシ−ヘキシルジチオヘキサンを挙げることができる。
上記の中、ポリ乳酸鎖(R−PLA)又はポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー鎖(R−PLA−Sar)のポリ乳酸鎖は、L−乳酸単位から構成されているポリL−乳酸鎖であっても、D−乳酸単位から構成されているポリD−乳酸鎖であっても、L−乳酸単位とD−乳酸単位の両者から構成されるポリDL−乳酸鎖であってもよい。当業者が目的等に応じて適宜選択することができる。ポリDL−乳酸鎖の場合、L−乳酸単位とD−乳酸単位との重合の順番は特に限定されない。L−乳酸単位とD−乳酸単位とが1個又は2個ずつ交互に重合されていてもよく、ランダムに重合されていてもよく、ブロック重合されていてもよい。
RNAを修飾する、長鎖疎水性基を有する化合物の合成方法は特に限定されない。市販試薬から常法により合成することができる。
また、当該化合物の中、ポリ乳酸やポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマーについては、両親媒性ブロックポリマーAに関する合成方法に準じて合成することができる。具体的には、例えば、下記の製法を挙げることができる。
当該修飾RNAは、本発明の効果を損なわない限り、例えば、その分子内に後述する光増感剤を有することができる。かかる光増感剤は、RNA上に結合していてもよく、RNAを修飾する化合物上に結合していてもよい。
当該修飾RNAの調製(製造)方法、即ち、RNAに長鎖疎水性基を有する化合物を修飾する方法は特に限定されない。RNAの種類等に応じて、適宜常法により調製することができる。
siRNA以外の当該修飾RNAについても、上記修飾siRNAの合成方法に準じて、合成することができる。
本発明の分子集合体は、細胞膜結合性化合物を含む。本発明の分子集合体がミセル等の粒子状の場合、かかる細胞膜結合性化合物は、その粒子の外側に一部でも突出する鎖長を有するものが好ましい。
本発明に係る「細胞膜結合性化合物」は、細胞膜に結合し、場合によっては自身を細胞内に取り込ませる働きを有するものである。細胞膜結合性化合物は、通常、ペプチド、糖鎖、抗体である。その代表例として、細胞膜透過性ペプチド(CPP)を挙げることができる。CPPは、アルギニンなどの塩基性アミノ酸(カチオン性アミノ酸)に富んだペプチドであったり、塩基性でかつ疎水性アミノ酸を含む両親媒性ペプチドであったり、またほとんどが疎水性アミノ酸で若干の塩基性アミノ酸を含むペプチドである場合もある。
配列番号2:YGRKKRRQRRRG
配列番号3:RRRRNRTRRNRRRVR
配列番号4:YGRRARRRRRRR
配列番号5:KETWWETWWTE
配列番号14:RKKRRRESRKKRRRESC
配列番号15:YARAAARQARAC
配列番号16:KETWWETWWTEWSQPKKKRKVC
配列番号17:LIRLWSHLIHIWFQNRRLKWKKKC
本発明の分子集合体における細胞膜結合性化合物の含有量は、用いる細胞膜結合性化合物の種類や、両親媒性ブロックポリマーA、修飾RNA、光増感剤の種類や量等によって異なり適宜選択すればよいが、例えば、両親媒性ブロックポリマーAを基準(100モル%)として、通常、1〜50モル%の範囲内であり、好ましくは5〜25モル%、より好ましくは10〜20モル%である。
本発明の分子集合体は、光増感剤を含む。
4.1 光増感剤
本発明に係る「光増感剤」は、例えば、光(近赤外光やそれに近い波長の光)を照射することにより、細胞内に取り込まれエンドソームに局在化していた分子集合体を細胞質中に拡散させることができる機能を有するものである。かかる拡散メカニズムは、光の照射により励起された光増感剤が一重項酸素を発生させ、これがエンドソーム膜を不安定化させる(破壊する)ためであると推測される。
本発明に係る光増感剤は、単独でも本発明の分子集合体中に存在しうるが、一般に水溶性の光増感剤が多いことから、分子集合体に有効に包含させるためにも、前述の通り、本発明の分子集合体を構成する他の一以上の成分の分子内に存在することが好ましい。中でも、細胞膜結合性化合物の分子内に存在させることが好ましい。細胞膜結合性化合物(CPP等)の分子内に存在させることにより、細胞膜結合性化合物による細胞膜への結合と、光増感剤による細胞質中への拡散とが相乗的に発揮されることが期待される。
本発明の分子集合体における光増感剤の含有量は、用いる光増感剤の種類や、両親媒性ブロックポリマーA、修飾RNA、細胞膜結合性化合物の種類や量、他の成分との結合有無等によって異なり適宜選択すればよいが、例えば、両親媒性ブロックポリマーAを基準(100モル%)として、通常、1〜20モル%の範囲内であり、好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%である。
5.1 分子集合体
本発明の分子集合体は、両親媒性ブロックポリマーAの凝集により、或いは自己集合的な配向により構成される構造体である。本発明では、内側(コア部)が疎水性ブロック、外側(シェル部)が親水性ブロックとなるように構成されたミセル形状の分子集合体(ポリ乳酸系両親媒性ポリマーミセル)を用いることが好ましい。また、細胞膜結合性化合物の一部が外側に突出しているミセル形状の分子集合体が好ましい。
本発明の分子集合体の粒子径は、使用する両親媒性ブロックポリマーA、修飾RNA、細胞膜結合性化合物、及び光増感剤の種類、割合等により適宜調整することができるが、例えば、10〜100nmとすることができる。好ましくは10〜50nm、より好ましくは10〜30nmである。
ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。
本発明の分子集合体の作製方法は特に限定されず、所望する分子集合体の大きさ、特性、担持させる機能性構造の種類、性質、含有量等に応じて、当業者が適宜選択することができる。必要に応じ、下記のように分子集合体を形成した後に、得られた分子集合体に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。なお、粒子が形成されたことの確認は、通常、電子顕微鏡観察によって行うことができる。
本発明における両親媒性ブロックポリマーAは低沸点溶媒への溶解性を有するため、例えば、いわゆるフィルム法を用いて本発明の分子集合体を調製することができる。
ガラスビーズが入っていてもよい容器中に、両親媒性ブロックポリマーAや修飾RNA等の分子集合体構成成分を有機溶媒中に含む溶液を用意する工程(以下、「工程(a1)」ともいう)、
上記溶液から上記有機溶媒を除去し、上記容器の内壁に上記両親媒性ブロックポリマーA等を含むフィルムを得る工程(以下、「工程(a2)」ともいう)、及び
上記容器中に水又は水溶液を加え、超音波処理又は加温処理を行い、上記フィルムを分子集合体に変換して分子集合体の分散液を得る工程(以下、「工程(a3)」ともいう)
工程(a1)〜工程(a3)は、通常この順に行われる。上記工程(a1)〜工程(a3)を含む調製方法は、本発明の分子集合体の調製方法として好適に用いられる。
両親媒性ブロックポリマーA等を有機溶媒中に含む溶液の調製方法は特に限定されず、有機溶媒に両親媒性ブロックポリマーA等を混合することによって調製してもよく、両親媒性ブロックポリマーAをあらかじめフィルムの状態でストックしておき、分子集合体を調製する際に、その他の構成成分を含む溶液を加えて該フィルムを溶解することによって調製してもよい。
本発明の分子集合体は、いわゆるインジェクション法により調製することもできる。インジェクション法は、以下の工程を含むことが好ましい。
容器中に、両親媒性ブロックポリマーAや修飾RNA等の分子集合体構成成分を有機溶媒中に含む溶液を用意する工程(以下、「工程(b1)」ともいう)、
上記溶液を水又は水溶液中に分散させる工程(以下、「工程(b2)」ともいう)、及び
上記有機溶媒を除去する工程(以下、「工程(b3)」ともいう)。
上記工程(b1)〜(b3)は、通常この順に行われる。
精製処理としては、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心等の処理が挙げられる。これらを組み合わせて行うこともできる。
また、得られた分散液を凍結乾燥処理してもよい。凍結乾燥処理の方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、上記のようにして得られた分子集合体の分散液を液体窒素等によって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、分子集合体の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、分子集合体を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、分子集合体の分散液を得ることによって、分子集合体を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されず、例えば、分子集合体の用途に応じて適宜選択することができる。生化学的ないし薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。このような水又は水溶液として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液等が挙げられる。
本発明は、本発明の分子集合体を用いた、腫瘍細胞質内へのRNA送達システムも包含する。
本発明のRNA送達システムは、通常、上記分子集合体を動物(生体)内に投与することを含む。分子集合体を投与することができる動物は特に限定されないが、例えば、ヒト又は非ヒト動物が挙げられる。非ヒト動物としては特に限定されないが、ヒト以外の哺乳類、具体的には例えば、霊長類、齧歯類(マウス、ラット等)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマ等が挙げられる。
本発明の分子集合体を投与する標的となりうる腫瘍は特に限定されず、例えば、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がん等の固形癌が挙げられる。
動物(生体内)への投与の方法としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。投与の方法としては、全身投与又は局所投与のいずれでもよい。分子集合体の投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。投与経路は、予防又は治療に効果的な経路を選択することが好ましい。例えば、全身的に投与する場合は、経口投与の他、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射等の非経口投与により投与される。局所的に投与する場合は、例えば、皮膚、粘膜、肺、気管支、鼻腔、鼻粘膜、眼等に投与される。好ましくは、非経口投与、より好ましくは静脈内注射により投与される。
本発明の分子集合体を生体内に投与後、当該分子集合体が標的部位(腫瘍患部)に到達した適当な時期に、例えば、当該分子集合体に内包されている光増感剤が励起する波長の光を患部組織に適当な時間、適当なエネルギーを照射することにより、修飾RNAを腫瘍細胞質内へ拡散送達することができる。修飾RNAが腫瘍細胞質内に送達されることにより、当該RNAがmRNA等に作用し、その機能(遺伝子発現抑制機能)が発揮され、患部組織の腫瘍細胞を死滅させることができる。
修飾RNAのRNAが、ABCG2遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNAや、フェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNA、あるいはその両者併用物である場合、ALAを用いた光線力学的療法(ALA−PDT)において、当該siRNAの作用により癌細胞に蓄積したPpIXの減少が阻止され、PpIXへの光照射で発生した活性酸素種により、効果的に腫瘍細胞を死滅させることができる。
本発明の分子集合体は、機能性RNAを有し、腫瘍組織の細胞質内へ有効に移行することから、癌の予防又は治療に用いられる医薬(ミセル製剤)として有用である。
本発明の予防剤又は治療剤に含まれる分子集合体中の光増感剤を励起させるための励起光を照射する手段としては、例えば、光線力学治療(PDT)用の光源装置(例えば、パナソニック ヘルスケア株式会社製PDT半導体レーザー)などの医療用半導体レーザー装置(例えば、オリンパス社製UDL−15)を挙げることができる。具体的には、例えば、ダイレーザー、エキシマレーザーなどを励起光とした色素レーザー、パルス波エキシマダイレーザー、波長可変レーザー、半導体レーザーを挙げることができる。また、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光ランプ、LEDなどを内蔵した光源装置も挙げることができる。
本発明に係る癌の予防又は治療システムにおいては、例えば、腫瘍の位置を解析する手段や光源の照射位置を腫瘍に合わせる手段を含んでいてもよい。具体的には、赤外線観察カメラシステム(浜松ホトニクス社製 PDE−NEO C10935−20)などを挙げることができる。
本発明に係るポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー修飾RNAとして、PLLA30−PS56−siRNA(平均鎖長30merのポリ乳酸と平均鎖長56merのポリサルコシンの連なったブロックコポリマーに、siRNAのつながったもの)の合成を行った(図2参照)。
ポリサルコシン鎖側の末端にマレイミド基を持つポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー(PLLA−PS−マレイミド)を次の方法により作製した。
NH−PS56−PLLA30 100mgを乾燥したジメチルホルムアミド(DMF)2.5mLに溶解した後、N−succimidyl 3−Maleimidopropyonate 21.3mg(5当量)およびDiisopropylethylamine 5.45μL(2当量)加え、室温で7時間撹拌した。DMFを留去した後、得られた白色沈殿を酢酸エチルで3回洗浄し、PLLA30−PS56−マレイミドを得た(収量:59.1mg)。
PLLA30−PS56(ポリマー)とsiRNAとが1:1のものを、表1の反応組成で、容量20μLにて合成した。siRNAは、anti−GFP(抗緑色蛍光タンパク質)配列のsiRNA(下記配列番号6と7)であって、そのセンス鎖3’末端にチオール基を、アンチセンス鎖3’末端にFAM蛍光色素を持つものである。かかるセンス鎖とアンチセンス鎖は、株式会社日本バイオサービスから購入した。
PLLA30−PS56−siRNAの合成に先立ち、上記センス鎖とアンチセンス鎖を20μMずつの濃度で混ぜ、20mMのTris−HCl及び2mMのMg(OAc)2を含む水溶液中でアニーリング(85℃で2分間加熱後に徐冷)することにより二重鎖のsiRNAを形成させておいた。
5’−GGCUACGUCCAGGAGCGCAdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号7):
5’−UGCGCUCCUGGACGUAGCCdTdT−3’
DMT-C6-SS-C6基を5’末端に付加したsiRNA(anti−EGFP配列)センス鎖、及びsiRNA(anti−EGFP配列)アンチセンス鎖を、株式会社日本バイオサービスから購入した。当該センス鎖およびアンチセンス鎖のRNA配列は、配列番号6と7と同じである。DMT-C6-SS-C6基の構造は下記の通りであり、これがセンス鎖の5’末端リン酸基の酸素原子に付いている。DMT-C6-SS-C6-修飾センス鎖とアンチセンス鎖をアニーリングするために、下記表2の組成の溶液を調製した。その溶液をPCR装置より85℃で1分間加熱し、1℃/sで徐冷した。
(1)細胞膜結合性化合物の作製
細胞膜結合性化合物である下記2種のCPPペプチドをFmoc固相合成法により作製した。いずれもN末端又はC末端にシステインを結合した。システインのチオール基と、光増感剤が有するマレイミド基とを介して、CPPペプチドに光増感剤を結合させるためである。
CGALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV
配列名MPGΔNLS−C(配列番号9):
GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKVGC
上記2種のCPPペプチドに、チオール―マレイミド結合を介して、マレイミド基を持つ光増感剤(Alexa Fluor(登録商標)546、又はDY750)を付加することにより合成した。
Lipofectamine 2000 transfection reagent(Life technologies社製)を用いて、EGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)を安定発現するChinese hamster ovary(CHO)細胞に、合成例1で合成したポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー修飾siRNA(ポリマー修飾siRNA)の導入を行った。
試験例1と同様にして、合成例2で合成したDMT-C6-SS-C6-修飾siRNAのRNAi効果を観測した。その結果を図6に示す。
図6に示す通り、EGFP−CHO細胞におけるEGFPのノックダウンを指標として、当該DMT-C6-SS-C6-修飾siRNAを投与した際には高効率なRNAi効果が観測された。
(1)6wellプレートのウェル上で、Lipofectamine RNAiMax transfection reagent (Life technologies社製)を用いて、ヒト悪性中皮腫細胞株(211H)又はヒト膵臓腺がん細胞株(CFPAC1)に、ATP-binding cassette transporter G2(ABCG2)遺伝子をノックダウンするABCG2 siRNA(配列番号10と配列番号11からなる二本鎖核酸)、フェロケラターゼ(Ferrochelatase, FECH)遺伝子をノックダウンするFECH siRNA(配列番号12と配列番号13からなる二本鎖核酸)の導入を行った。ABCG2 siRNAは最終濃度が100nmol/L、FECH siRNAは最終濃度が20nmol/Lになるように添加した。
タンパク質量として20μgを10%のポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動した。そのゲルに存在するタンパク質は、トランスファー装置を用いてPVDF膜に転写した。そのPVDF膜は、5%(w/v)スキムミルクを含むTBS−T(150 mmol/L sodium chloride, 0.05%(v/v)Tween 20, 10 mmol/L Tris-HCl, pH 7.4)溶液で1時間ブロッキングを行った。抗ABCG2抗体(Cell signaling Technology 社製)、抗FECH抗体(Cell signaling Technology 社製)、抗actin抗体(Millipore社製)は、5%(w/v)スキムミルク−TBS−T溶液で希釈し、PVDF膜を浸して4℃で一晩反応させた。PVDF膜はTBS−T溶液で洗浄(5分間、3回)し、5%(w/v)スキムミルク−TBS−T溶液で希釈したhorse radish peroxidase(HRP)を標識した抗ウサギ抗体又は抗マウス抗体を、室温で2時間反応させた。PVDF膜をTBS−Tで洗浄(5分間、3回)した後、Clarity Western ECL substrate (BioRad社製)を用いてHyperfilm ECL化学発光用フィルム(GE社製)に感光させ、目的とする各タンパク質を可視化させ解析した。なお、ABCG2及びフェロケラターゼは、特異的抗体を用いてそれぞれ検出した。Actinは、内在性コントロールとして使用した。その結果を図7に示す。
RNAの導入は、試験例3(1)と同様にして行った。
RNA導入から48時間後、培地に5−アミノレブリン酸(ALA)を最終濃度0.5mmol/Lとなるように添加した。培養3時間後に培地を除き、トリプシン溶液を用いて細胞を回収しPBS1mLで洗浄した。細胞懸濁液を遠心(4℃、3500rpmで5分間)したのち上清を除去し、PBS0.5mLで再懸濁した。その細胞懸濁液をフローサイトメトリー法により解析した。その結果を図8に示す。
RNAの導入は、試験例3(1)と同様にして行った。
RNA導入から48時間後、培地に5−アミノレブリン酸(ALA)を最終濃度0.5mmol/Lとなるように添加した。培養3時間後にNa−Liランプを装備したTheraBeam VR630 (Ushio Lighting社製)を用いて、細胞に光(波長:630nmを中心とする530nmから700nm、出力:29mW/cm2)を10分間照射した。その後、さらに24時間培養した。培地にMTT溶液を0.0125mg/mLとなるように添加し30分間培養を続けた。培地を除去し細胞をPBS1mLで洗浄しPBSを除去した後、ジメチルスルホキシド1mLを添加し細胞内に生成したホルマザンを可溶化した。その溶液を96wellプレートに100μLずつ移し、マイクロプレートリーダーで吸光度(570nm)を測定し、細胞生存率を算出した。なお、ネガティブコントロールの細胞生存率を100%とした。その結果を図9に示す。
(1)本発明の分子集合体の調製
ポリ乳酸―ポリサルコシン(両親媒性ブロックポリマーA)からなる高分子ミセルへの本発明に係る修飾siRNAの組み込みと精製は、以下の操作により行った。
上記のように製造された本発明の分子集合体ミセルにおいては、そのミセルの外側(シェル部)に細胞膜結合性化合物の一部が突出している。
修飾RNAと細胞膜結合性化合物(CPPペプチド)とを含む分子集合体(図10)が細胞内に侵入することを以下のようにして確認した。
従って、本発明の分子集合体は、細胞質内へRNAを送達できることが明らかである。
(1)本発明の分子集合体の調製
ポリ乳酸−ポリサルコシン(両親媒性ブロックポリマーA)からなる高分子ミセルへのDMT-C6-SS-C6-修飾siRNAの組み込みは以下のように行った。
この分子集合体による、RNAの細胞内侵入の確認は試験例3(2)と同様にして行った。
その結果、FAMで標識された修飾siRNAの局在は、光照射の前後で、図13に示すようになった。修飾RNAは、2時間の細胞処理後に、それぞれ細胞内に侵入し、主として(エンドソームと考えられる)小胞内に局在した(光照射前の写真参照)。光照射後には修飾siRNAが細胞質内に拡がっていることが明らかである(光照射後のFAM写真像参照)。
(1)用いた細胞膜結合性化合物と光増感剤
当該実験に用いた細胞膜結合性化合物は下記4種のCPPペプチドであり、いずれもFmoc固相合成法により作製した。
配列名PTD4(配列番号15):YARAAARQARAC
配列名Pep1(配列番号16):KETWWETWWTEWSQPKKKRKVC
配列名EB1(配列番号17):LIRLWSHLIHIWFQNRRLKWKKKC
32のポリ乳酸からなるPLLA32と25のポリサルコシンからなるPS25がPLLA32に3つ分岐して結合したPLLA32−(PS25)3(分岐型両親媒性ブロックポリマーA)からなる高分子ミセルへの細胞膜結合性化合物の組み込みと精製は、以下の操作により行った。
その後、DPV3、PTD4、Pep1またはEB1(配列番号14〜17)のCPPペプチドを30nmol加え、全液量を100μLとし、室温で12時間以上振盪し反応させた。そして、50kDaの限外濾過フィルターに移し、生理食塩水で全液量を500μLとした後、12000×Gで10分間遠心した。遠心後の溶液に再度生理食塩水を加えて全液量を500μLとし再度同条件で遠心を行い、同工程をもう一度繰り返した後、限外濾過フィルターを逆にして、室温、1000×Gで3分間遠心し溶液を回収した。回収した溶液は、生理食塩水で全液量を50μLとし、以下の実験に供した。
CPPペプチドを含む分子集合体が細胞内に侵入することを以下のようにして確認した。実験は上述の4種のCPPペプチドを含む分子集合体サンプルで行った。対照としてCPPペプチドを含まないサンプルを使用した。
図14に示す通り、特にPep1ペプチドとEB1ペプチドの取り込み率が高かった。
配列番号5:Pepペプチド
配列番号6:anti−GFP siRNAのセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号7:anti−GFP siRNAのアンチセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号8:MPGdNLSのN末端にシステインを有する。
配列番号9:MPGΔNLSのC末端にシステインを有する。
配列番号10:ABCG2 siRNAのセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号11:ABCG2 siRNAのアンチセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号12:Ferrochelatase siRNAのセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号13:Ferrochelatase siRNAのアンチセンス鎖、3’末端の2つのヌクレオチドはDNAで構成され、その他はRNA。
配列番号14:DPV3
配列番号15:PTD4
配列番号16:Pep1
配列番号17:EB1
Claims (18)
- 次の1〜4に記載の成分を必須として含むことを特徴とする、分子集合体。
1)サルコシン鎖を含む親水性ブロックと乳酸鎖を含む疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA
2)長鎖疎水性基を有する化合物により修飾されているRNA
3)細胞膜結合性化合物
4)上記1〜3の一以上の成分に結合していてもよい光増感剤。 - 上記成分3及び4が、光増感剤を結合した細胞膜結合性化合物であって、
当該細胞膜結合性化合物により所定の細胞の細胞壁に吸着してエンドソーム内に取り込まれ、当該光増感剤に光が照射されることで崩壊して当該RNAが当該細胞内に拡散される一方で、当該光が照射されるまでの間、体内酵素による影響が抑えられるものである、請求項1に記載の分子集合体。 - 両親媒性ブロックポリマーAが、20〜300個のサルコシン単位を含む親水性ブロックと、10〜100個の乳酸単位を含む疎水性ブロックとを有するものである、請求項1又は2に記載の分子集合体。
- 長鎖疎水性基を有する化合物が、ポリ乳酸、ポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマー、又はジメトキシトリチルオキシ−ヘキシルジチオヘキサンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分子集合体。
- ポリ乳酸又はポリ乳酸・ポリサルコシンコポリマーのポリ乳酸が、10〜60個の乳酸単位からなり、ポリサルコシンが、0〜100個のサルコシン単位からなるものである、請求項4に記載の分子集合体。
- RNAが、遺伝子発現抑制効果を有するものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分子集合体。
- 遺伝子発現抑制効果を有するRNAが、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、アプタマーRNA、又はリボザイムである、請求項6に記載の分子集合体。
- siRNAが、ATP−binding cassette transporter G2(ABCG2)遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNA、若しくはフェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNAであるか、又はその両者併用物である、請求項7に記載の分子集合体。
- ABCG2遺伝子をノックダウンし、その発現を抑制するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、請求項8に記載の分子集合体。
センス鎖(配列番号10):
5’−CGAUAUGGAUUUACGGCUUdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号11):
5’−AAGCCGUAAAUCCAUAUCGdTdG−3’ - フェロケラターゼ遺伝子をノックダウンし、その活性を阻害するsiRNAが、次のセンス鎖及びアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸である、請求項8に記載の分子集合体。
センス鎖(配列番号12):
5’−GCAUUUACCAGUGACCAUAdTdT−3’
アンチセンス鎖(配列番号13):
5’−UAUGGUCACUGGUAAAUGCdTdA−3’ - 細胞膜結合性化合物が、細胞膜透過性ペプチドである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分子集合体。
- 細胞膜透過性ペプチドが、
配列番号1:GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV
配列番号2:YGRKKRRQRRRG
配列番号3:RRRRNRTRRNRRRVR
配列番号4:YGRRARRRRRRR
配列番号5:KETWWETWWTE
配列番号14:RKKRRRESRKKRRRESC
配列番号15:YARAAARQARAC
配列番号16:KETWWETWWTEWSQPKKKRKVC、又は
配列番号17:LIRLWSHLIHIWFQNRRLKWKKKC
である、請求項11に記載の分子集合体。 - 光増感剤が、450nm〜1300nmの波長を有する光で機能するものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分子集合体。
- 450nm〜1300nmの波長を有する光で機能する光増感剤が、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素等のシアニン系色素、ローダミン系色素、ポルフィリン系色素、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)750、DY750、DY751、DY780、エオシン、ローズベンガル、IRDye(登録商標)800CW、又はカルボキシフルオレセイン(FAM)である、請求項13に記載の分子集合体。
- 粒子径が10〜100nmである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の分子集合体。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載の分子集合体を用いることを特徴とする、腫瘍細胞質内へのRNA送達システム。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載の分子集合体を含むことを特徴とする、癌の予防剤又は治療剤。
- 請求項17に記載の予防剤又は治療剤、及びそれに含まれる分子集合体中の光増感剤を励起させるための励起光を照射する手段を備えた装置を含む、癌の予防又は治療システム。
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