JP6564983B2 - 薬剤徐放デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、長期間の徐放や局所的な徐放を可能とし、かつ低浸襲に体内に留置することを可能とするドラッグデリバリーシステム(DDS)に関する。
より詳細には、本発明は、薬物を含浸させた徐放性担体が包埋された高分子シートを含んでなる薬物徐放デバイスに関する。
近年のバイオ医薬品の研究開発の進歩に伴い、多くのタンパク質製剤や核酸医薬品が開発され、従来では治療が困難であった様々な疾患の治療に利用されている。しかし、タンパク質製剤は分子量が非常に大きく、消化管で分解されてしまうために経口摂取することができない。また、核酸医薬品の場合は短時間のうちに酵素により分解されてしまう。そのため、バイオ医薬品においては患部への送達方法が課題として存在している。
また、生活習慣病など慢性的に病気を抱えながら生きていかなければならない場合や、長期療養を必要とする疾患、消耗の激しい疾患においては患者への侵襲が激しい治療を継続することにより社会的にみて「人間らしい生活」が実現されない。そのため、医学的・社会学的観点からQOL(Quality of life)の向上が求められている。
これら様々な要因から、薬剤を効率的に患部に送達でき、長期間使用可能なドラッグデリバリーシステム(DDS)が注目を集めている。
これまでに様々な形態のDDSが開発されており、例えば、DDS微粒子、DDSシート等が挙げられる。
DDS微粒子は、生体分解性の高分子からなる微粒子に薬剤を封入してなり、注射針によって血管内に送達することができるために消化管での吸収率が低い薬剤、消化管で分解されてしまうようなタンパク質製剤や核酸医薬品の送達に有効に利用することができる(非特許文献1−3)。しかしながら、DDS微粒子は患部への集積方法が限られているため、局所徐放性が低いという問題がある。また、投与後の初期バーストにより一定速度の薬剤放出を維持することができない場合があり、血中・組織中濃度の制御が必要な薬物には使用することができない。さらに、長期間の徐放が難しく、継続的に投与する必要があるなどの課題を有する。
DDSシートは、生体分解性の高分子からなるシートに薬剤を搭載してなり、患部に直接貼り付ける(体内留置する)ことができるため、局所徐放性に非常に優れており、薬剤を無駄なく治療に使用することを可能とし、徐放の長期化が可能である(非特許文献4−6)。また、患部以外に薬剤が送達されにくいため、副作用を最小限に抑えることができる。しかしながら、DDSシートは、シート内に複数の薬剤を封入することが難しく、また、体内留置に際して切開・縫合等の手術を要するため、投与する際の侵襲性が高いという課題を有する。
したがって、当該分野においては依然として、長期間の徐放や局所的な徐放を可能とし、かつ低浸襲に体内に留置することが可能なDDSが切望されている。
Kakinoki Sachiroら、European journal of pharmaceutics and biopharmaceutics 55.2(2003):155−160. Zhang Xian−Zhengら、Biomaterials 26.16(2005):3299−3309. Zhu Ai Meら、Journal of applied polymer science 120.4(2011):2374−2380. M.Tobeら、the American Society of Anesthesiologist,112,1473−1481(2010) Y.Tabataら、Tissue Engineering,2,127−138(1999) M.Yamamotoら、Biomaterials,24,4375−4383(2003)
本発明は、長期間の徐放や局所的な徐放を可能とし、かつ低浸襲に体内に留置することを可能とする新たなDDSを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、徐放性担体に薬物を含侵させ、これを高分子シートに包埋することによって得られたシート状のデバイスが、投与後の初期バーストを生じることなく、薬剤を長期間にわたって放出することが可能であること、また当該デバイスは、折り畳む等することにより、例えば、注射針やカテーテル等で吸引・放出することができ低侵襲にて体内に送達することでき、体内に送達された後は液中(例えば、体液中)でシート状に展開することによって、所定の部位に局所的に薬物を送達できることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づくものであり、以下の特徴を有する。
[1] 薬物を含浸させた徐放性担体が包埋された高分子シートを含んでなる、薬物徐放デバイス。
[2] 徐放性担体がコラーゲンである、[1]の薬物徐放デバイス。
[3] コラーゲンがコラーゲン微粒子の形態である、[2]の薬物徐放デバイス。
[4] 高分子シートがポリエチレングリコールからなる、[1]〜[3]のいずれかの薬物徐放デバイス。
[5] ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)およびポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)からなる群から選択される、[4]の薬物徐放デバイス。
本発明によれば、長期間の徐放や局所的な徐放を可能とし、かつ低浸襲に体内に留置することを可能とするDDSを提供することができる。
図1は薬剤徐放デバイスの作製方法を示す模式図である。 図2は作製した薬剤徐放デバイスを示す写真図である。各薬剤徐放デバイスは薬剤含浸COLsを100mg/mL(a)、300mg/mL(b)、及び500mg/mL(c)の濃度にて含む。 図3は、薬剤徐放デバイスの折りたたんだ状態((a)、(c)及び(e))、ならびにPBS中にて展開しシート状に戻った状態((b)、(d)及び(f))を示す写真図である。各薬剤徐放デバイスは薬剤含浸COLsを100mg/mL((a)及び(b))、300mg/mL((c)及び(d))、及び500mg/mL((e)及び(f))の濃度にて含む。 図4は、薬剤含浸COLs濃度を500mg/mLとする薬剤徐放デバイスの電子顕微鏡による観察結果を示す写真図である。PEGDMに包埋された薬剤含浸COLsがPEGDM表面から、粒状に部分的に露出していることが示される。 図5は、各薬剤徐放デバイスの位相差顕微鏡による光学観察(左パネル)及び蛍光観察(右パネル)の結果を示す写真図である。各薬剤徐放デバイスは薬剤含浸COLsを100mg/mL(a)、300mg/mL(b)、及び500mg/mL(c)の濃度にて含む。 図6は、薬剤徐放デバイスの薬剤含浸COLs濃度と当該COLs表面密度との関係を示すグラフ図である。 図7は、各薬剤徐放デバイスの共焦点顕微鏡によるZ軸方向の薬剤含浸COLs分布の観察結果を示す写真図である。各薬剤徐放デバイスは当該COLsを100mg/mL(a)、300mg/mL(b)、及び500mg/mL(c)の濃度にて含む。 図8は、薬剤含浸COLsのみの徐放試験の結果を示すグラフ図である。 図9は、PEGDMシートによる徐放試験の結果を示すグラフ図である。 図10は、薬剤徐放デバイスによる徐放試験の結果を示すグラフ図である。 図11は、薬剤含浸COLs濃度を100mg/mLとする、当該COLsのみ、PEGDMシート及び薬剤徐放デバイスの徐放速度の比較結果を示すグラフ図である。 図12は、2つ折り、4つ折り、及び捲回状態からの高分子シートの展開速度を示すグラフ図である。
本発明の薬物徐放デバイスは、薬物を含浸させた徐放性担体と、当該徐放性担体が包埋された高分子シートを含んでなるか、当該徐放性担体が包埋された高分子シートからなる。
本発明において「徐放性担体」とは、それに含浸させた薬物を徐々に放出する(徐放する)ことが可能なものであればよく、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルブミン等のタンパク質や、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリジオキサノン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等の高分子や、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、セルロース等の多糖類を利用することができる。好ましくは徐放性担体は生体分解性高分子からなる。徐放性担体は高分子シートに包埋できる限り、任意の形状とすることができ、粒子(微粒子)状、ゲル状、フィルム状、ブロック状等、適宜選択することができる。
好ましくは本発明において、徐放性担体はコラーゲンを含むか、コラーゲンよりなる。
コラーゲンはあらゆる型のコラーゲンを用いることができ、例えばI型〜VIII型のコラーゲンを用いることができる。コラーゲンの由来も限定されず、哺乳類、鳥類、魚類等の由来のコラーゲンを用いることができる。またリコンビナントのヒトコラーゲンも用いることができる。例えば、工業的な利用という観点から、収量の多いI型コラーゲンあるいはそれを主成分とするコラーゲンが好ましい。本発明に用いられるコラーゲンは、分子構造について特に限定されるものではない。線維化能を有するものや有さないものも使用できる。コラーゲン分子の両末端には非らせん領域のテロペプチドを有し抗原性を有するという報告がある。用途によっては除去されるべき場合があるが、テロペプチドが除去されていても除去されていなくてもよい。
また本発明で用いるコラーゲンはその変性について特に限定されるものではない。一度変性させたコラーゲンでも、部分的にコラーゲンらせん構造を回復することが知られている。らせん率は旋光度計で測定した比旋光度より求められるが、そのらせん率は特に限定されることはない。
コラーゲンは主に酸性水溶液で抽出される酸可溶化コラーゲンと、アルカリ水溶液で抽出されるアルカリ可溶化コラーゲンに分けられる。特に限定されないが、酸可溶化コラーゲンの方が好ましい。コラーゲン溶液の溶媒としては、酸性溶媒の場合、最終用途から見て、安全で工業用として広く使用されている水、あるいは塩酸、酢酸、クエン酸、フマル酸等の水溶液が好ましい。中性からアルカリ性の場合は、上記と同様の理由から、水、あるいはリン酸塩、酢酸塩、Tris等の水溶液が好ましい。
本発明で用いるコラーゲンは、微粒子状又はゲル状の形態にて用いることができる。以下に、薬物を含浸させたコラーゲン微粒子及びコラーゲンゲルの調製方法の一例を記載する。なお、本明細書においてコラーゲン微粒子のことを「コラーゲンマイクロビーズ」又は「COLs」と記載する場合があるが、これらの用語は相互互換的に用いることができる。
(薬物を含浸させたコラーゲン微粒子の調製方法)
薬物を含浸させたコラーゲン微粒子は、コラーゲン溶液中に薬物を添加し、乳化し薬物を内部に含む油中水型エマルジョンを形成させ、該エマルジョン中の球状コラーゲンを架橋することによって調製することができる。あるいは、薬物の添加を除いた以外は同様の方法でコラーゲン微粒子を作製した後に、薬物溶液にコラーゲン微粒子を含浸して調製することもできる。薬物の含浸効率が良いのは、コラーゲン微粒子を作製した後に薬物溶液に含浸する架橋後含浸である。
乳化時のpHは特に限定されず、使われるコラーゲン原料の製造方法に応じて適宜選択することができる。用いられるコラーゲン溶液が酸可溶化コラーゲンの場合、乳化時のpHは2〜6が好ましい。pH2以下の場合、コラーゲン分子が加水分解を受ける場合がある。一方、用いられるコラーゲン溶液がアルカリ可溶化コラーゲンの場合、pHは5.5〜10であることが好ましい。pHが5.5より低い場合、コラーゲンが十分に可溶化されない場合がある。pH10より高い場合はコラーゲン分子が加水分解を受ける場合がある。
乳化時のコラーゲン溶液の濃度としては、コラーゲン溶解性、溶液の粘性という観点から適宜選択することが可能であり、例えば0.01〜10%(w/v)、好ましくは0.5〜2%(w/v)の範囲より選択することができる。
乳化の際、薬物及びコラーゲンを含む溶液に油性液状有機化合物及び乳化剤を添加して混合することができる。油性液状有機化合物(いわゆる油)としては、一般に水と混じらない可燃性の物質であり、植物性、動物性、あるいは鉱物性のものがあるが、本発明においては特に限定されず、流動パラフィン、木ロウ、密ロウ、米ぬかロウ、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、カルバナワックス等を用いることができ、この中でも流動パラフィンが好ましい。乳化剤は、いわゆる界面活性剤のことを言い、両親媒性分子であれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤、両面界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等を用いることができる。本発明においては、ソルビタンエステル類、ポリソルベート類等の界面活性剤を用いることができ、好適にはソルビタンモノラウレート(Span20)を用いることができる。
乳化によりできたコラーゲン微粒子は、架橋剤を用いて架橋させることができる。架橋剤としてはタンパク質を架橋でき、水溶性を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、アルデヒド系、カルボジイミド系、エポキシド系およびイミダゾール系架橋剤が経済性、安全性、および操作性の観点から好ましく用いることができる。好適な架橋剤として例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド・スルホン酸塩等の水溶性カルボジイミドを挙げることができる。
利用する架橋剤の濃度は特に限定されるものではないが、架橋剤濃度によってコラーゲンの生分解性速度や徐放速度が変化する場合があるため、用途に応じて適宜濃度を決定することができる。例えば、終濃度として、0.01mM〜1Mの範囲より選択される量にて利用することができる。
乳化時にはコラーゲンの線維化を惹起する溶媒を混ぜておいてもよい。例えば、工業用として利用されているリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、Tris等の緩衝能を有する塩水溶液をあらかじめ混ぜておいても良い。
乳化時の温度は、利用するコラーゲン原料の変性温度に応じて適宜選択することが可能であり。例えば、ウシやブタのコラーゲンは変性温度が37〜40℃であるため、それ以下の温度で乳化することができる。
薬物を含浸させたコラーゲン微粒子の平均粒径は0.01〜200μm、好ましくは5〜10μmとすることができる。
本発明の一態様において、コラーゲン微粒子は水性溶媒にコラーゲンを溶解したものを用いて油中水滴エマルション(Water in Oil Emulsion:W/Oエマルション)を調製し、これを架橋することによって調製することができる。
乳化時のコラーゲンは、1〜50%(w/v)、好ましくは10〜20%(w/v)、油性液状有機化合物は50〜99%(w/v)、好ましくは80〜90%(w/v)、乳化剤は0.01〜10%(w/v)、好ましくは0.1〜2%(w/v)、の濃度で用いることができる。また、薬物の添加量は、薬物の種類や用量に応じて適宜決定することができる。
(薬物を含浸させたコラーゲンゲルの調製方法)
コラーゲンゲルを作る方法はコラーゲンが流動性を失ってゲル化するような処理方法であれば特に限定されないが、例えば、コラーゲン溶液に対して架橋剤を含む溶媒を混ぜる方法と、コラーゲンの線維化を惹起する溶媒を混ぜる方法を利用することができる。コラーゲン溶液に架橋剤を入れるとコラーゲン分子同士が架橋されてコラーゲン溶液はゲル化する。また、コラーゲン溶液に緩衝能を有するバッファーを混ぜてpHを中性付近にすると、コラーゲン分子が自己組織化してコラーゲン線維を形成し、ハイドロゲルを形成する。コラーゲンがゲル化するときに薬物を混ぜておくことで薬物含浸コラーゲンゲルを作ることができる。このとき、薬物は粉末でもよいし溶液でもよい。溶液の場合、ゲル化に使う溶媒に溶解しておくと良い。
コラーゲンゲルのコラーゲン濃度は特に限定されず、例えば、0.001%(w/v)から50%(w/v)の範囲より適宜選択することができる。コラーゲン濃度が高いほど溶媒の拡散速度が遅くなるため、薬物の徐放を遅くすることができる。
コラーゲンのゲル化に使うバッファーは、コラーゲンの線維化を惹起する溶媒であれば特に限定されない。しかし、医療用材料を最終用途として考慮すると、細胞毒性が無いかあるいは低く、工業用として広く使用されているリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、Tris等の緩衝能を有する塩水溶液を用いることが好ましい。コラーゲンの線維化に適するpHは、コラーゲンの種類によって変化するが、pH5〜9の範囲である場合が多く、その範囲で高い緩衝能を有するリン酸塩が特に好ましく用いられる。
コラーゲンを線維化するときの温度は、使用されるコラーゲンの変性温度より低い温度で行えばよい。変性温度より高い温度で行うとコラーゲンが変性して線維化を起こさない場合がある。特にウシやブタなどの哺乳類由来のコラーゲンは37℃前後で線維化を起こしやすく、20℃より低い温度では線維化を起こしにくい。従って、薬物を均一にコラーゲンゲルに含浸するために、20℃以下で薬物を混ぜてから、37℃のインキュベーターに入れてゲル化させるとよい。
コラーゲン溶液の架橋に使う架橋剤は、上記した架橋剤を利用することができる。架橋剤の濃度は特に限定されるものではないが、架橋剤濃度によってコラーゲンの生分解性速度や徐放速度が変化する場合があるため、用途に応じて濃度を適宜決定することができる。例えば、終濃度として、0.01mM〜1Mの範囲より選択される量にて利用することができる。
薬物を含浸させたコラーゲンゲルの形状や大きさは特に限定されないが、その最も長い対角線(例えば、直径)の平均が0.01〜200μm、好ましくは5〜10μmとなる大きさとすることができる。また、薬物の添加量は、薬物の種類や用量に応じて適宜決定することができる。
本発明において「高分子シート」とは、およそ0.1〜200μm、より好ましくはおよそ10〜50μm程度の厚みを有するシートとすることができる。
高分子シートは高分子からなり、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)等の光硬化性のポリエチレングリコール)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリジオキサノン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、タンパク質(コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ファイブロネクチン、エラスチン)、多糖類(キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、セルロース)、核酸(DNA、RNA)及びそれらの共重合体等より選択される適当なものを利用して作製することができる。好ましくは高分子シートは生体分解性高分子からなる。
高分子シートは、上記薬物を含浸させた徐放性担体を包埋して保持する。高分子シートに包埋された一部又は全ての徐放性担体は、その一部分が高分子シートの表面より露出した状態にあり、これにより徐放性担体からの薬剤放出に局所性をもたせることができ、長期の徐放を可能とする。
薬物を含浸させた徐放性担体が包埋された高分子シートの調製は、高分子シートを形成する従来公知の一般的な手法に準じて行うことができ特に限定はされないが、例えば、以下の手法により調製することができる。上記高分子又はその構成要素(例えば、高分子の構成要素であるところのモノマー等)(以下、「高分子等」と記載する。)を適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル等)中に0.1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは1mg/mL〜50mg/mLの濃度で溶解し、この高分子等の溶液中に薬物を含浸させた徐放性担体を10mg/mL〜1000mg/mL、好ましくは50〜500mg/mL、より好ましくは100〜500mg/mL、さらに好ましくは100〜300mg/mLにて混合する。含浸させた薬物の種類及び/又は徐放性担体の種類が異なる、複数種の「薬物を含浸させた徐放性担体」を含めても良い。溶液中には必要に応じてさらに、架橋剤や光重合開始剤を加えても良い。次いで、得られた溶液を適当な基板表面上に所望の厚みをもたせて広げ、硬化させることにより、目的の薬物を含浸させた徐放性担体が包埋された高分子シートを得ることができる。基板表面への溶液の展開は、キャスト法、スピンコート法、スタンプ法等、任意の手段を用いて行うことができる。硬化の手段は、用いた高分子等に応じて適宜選択することが可能であり、乾燥、UV光照射等の手段を利用することができる。
高分子シートには、磁性体からなる粒子を担持させることができる。磁性体からなる粒子を高分子シートに担持させることによって、当該高分子シートを磁力を用いて移動/集合させることができ操作性を高めることができる。磁性体からなる粒子は1nm〜1μm、好ましくは、1nm〜500nm、好ましくは1nm〜50nm程度の粒子径とすることができるが、特に限定はされない。磁性体からなる粒子は、上記高分子等の溶液中に含め、高分子等と共に基板表面上に展開することにより最終生成物である高分子シートに担持させることができる。磁性体からなる粒子は高分子等の溶液中に0.1mg/mL〜50mg/mL、好ましくは1mg/mL〜25mg/mLの濃度で含めることができる。
本発明の一態様において、薬物を含浸させた徐放性担体が包埋された高分子シートは、上記薬物を含浸させたコラーゲン微粒子が包埋されたポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)シートからなる。当該シートは、薬物を含浸させたコラーゲン微粒子、PEGDMおよび光重合開始剤を混合し、鋳型となる容器に入れUV光を照射し硬化させることにより調製することができる。PEGDMの分子量は特に限定されないが、コラーゲン微粒子に含浸させた薬物が高分子である場合には300〜6000、好ましくは500〜1000であり、当該薬物が低分子である場合には50〜6000、好ましくは100〜1000とすることができる。なお、光硬化性のポリエチレングリコールであれば、PEGDMに代えて、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)等を使用してもよい。PEGDM溶液と薬物を含浸させたコラーゲン微粒子を混合するとき、例えば、0.1〜10mg/mL、好ましくは1mg/mLのPEGDAと1〜100μg/mL、好ましくは10μg/mLの光重合開始剤の溶液を調製し、この溶液に薬物を含浸させたコラーゲン微粒子を50〜500mg/mL、好ましくは100〜300mg/mLの量にて混合することができる。この際、当該コラーゲン微粒子の濃度を高くするほど、微粒子密度が大きくなり、得られるシートの柔軟性や透明性を低下させ得る。光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン(2−フェニル−2−ヒドロキシアセトフェノン)、ベンゾインアルキルエーテル等を挙げることができる。硬化の際に用いるUV光の強度は、1〜20mW/cmとすることができ、照射は1〜5分間程度行なえばよい。
本発明において「薬物」とは、核酸(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド等)、タンパク質やペプチド、高分子化合物や低分子化合物からなるものを利用することができ特に限定はされないが、好ましくは疾患の治療及び/又は予防に用いられる薬物である。「疾患」は特に限定されないが、体内に持続的な薬物投与が望まれる疾患、特に局所的に持続的な投与が望まれる疾患が挙げられる。このような疾患として、癌、炎症性疾患、変性疾患等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明において利用できる薬物としては例えば、成長/増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)等)、眼圧降下剤、神経保護剤、抗生物質、抗炎症剤、抗真菌剤、抗癌剤等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の薬物徐放デバイスは柔軟性を有し、折り畳む、捲回等することができ、適当なサイズを有する細管(例えば、注射針やカテーテル等)で吸引することができ、また当該細管より放出することができる。これにより本発明の薬物徐放デバイスは、細管を用いて低侵襲にて体内に送達することができる。また、折り畳む等された本発明の薬物徐放デバイスは液中(例えば、体液中)に放出することにより、平面形状(シート状)に展開することができる。これにより本発明の薬物徐放デバイスは、上記のとおり細管を用いて体内に送達された後、体内で平面形状に展開して薬物放出を開始することができる。さらに、本発明の薬物徐放デバイスにおいては、薬物を含浸させた徐放性担体が高分子シートに包埋された状態にあり、当該徐放性担体が高分子シートより露出している面積が限定されている。これにより当該徐放性担体より薬物が放出される面積を限定することができ、初期バーストを回避又は低減した薬物の長期間の徐放を行うことを可能とする。例えば、本発明の薬物徐放デバイスを用いることにより、0.01〜100mgの薬物を長期間(例えば、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月、さらに好ましくは少なくとも1年等、これらに限定はされない)にわたって投与することができる。
本発明はまた、本発明の薬物徐放デバイスを体内に移植し、生体内で当該薬物徐放デバイスより治療用薬物を徐放させることにより、患者における疾患を治療する方法も包含する。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:薬剤徐放デバイスの作製
<1.試薬>
ポリエチレングリコールジメタクリラート(polyethlenglycol dimethaclylate;PEGDM,Mw=750,Sigma−Aldrich)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(Sigma−Aldrich)、豚腱由来コラーゲンTypeI−A水溶液(新田ゼラチン)、水溶性カルボジイミド(WSC,DOJINDO)、ソルビタンモノラウレート(和光純薬)、流動パラフィン(和光純薬)、FITC−Dextran(40kDa,和光純薬)、ならびにその他全ての試薬は市販のされているものを使用した。なお、リン酸バッファー(PBS)は今後特に断りのない場合はPBS(−)(pH7.4;2.68mM KCL、1.47mM KHPO、136.9mM NaCl、8.06mM NaHPO)を使用した。
<2.コラーゲンマイクロビーズ(COLs)の作製>
COLsは、乳化法(Water−in−Oil法(W/O法))に従って、以下の手法にて作製した。
(1)200mLビーカーに0.6%コラーゲン水溶液を10mL用意し、そこに流動パラフィンを50mLとソルビタンモノラウレートSpan20(5% in 流動パラフィン)を3mL入れて、軽く混合した。
(2)次いで、室温でこのビーカーを設置し、600rpmに設定した撹拌機で15分間撹拌した。
(3)さらに、50%水溶性カルボジイミド水溶液(WSC水溶液)を2mL添加し、1時間撹拌した。
(4)50%(v/v)エタノール水溶液を100mL注ぎ、5分間撹拌した。
(5)次いで、Oil(流動パラフィン)相とWater(50%エタノール)相が完全に分離するまで静置した。
(6)相分離後、スポイトを使用してOil層を除去し、残ったWater(50%エタノール)相を遠心分離し(3500rpm、5分間)、粒子を回収した。
(7)回収後、PBSを用いて3回遠心分離によって洗浄した。
得られたCOLsは、平均粒径が8μmであり、含水率が98%以上のハイドロゲルであった。
<3.薬剤徐放デバイスの作製>
薬剤含浸COLsを含有するシート型の薬剤徐放デバイスを、以下の作製方法に従って、光重合反応にて作製した。また、作製方法の模式図を図1に示す。
(1)COLsを充分量の50mg/mL FD−40(デキストラン)水溶液に24時間浸漬し、COLs内の水分を薬剤水溶液で置換した。
(2)得られた薬剤含浸COLsを遠心分離(10,000rpm、5分間)で回収し、PBSを用いて3回遠心分離(10,000rpm、5分間)によって洗浄した。
(3)PEGDMに2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを10v/v%混合して得られた溶液を10分間窒素バブリングし、脱気した。
(4)脱気したPEGDM溶液に薬剤含浸COLsを懸濁し、デバイス作製用のプレポリマー溶液を作製した(図1の(1))。プレポリマー溶液は当該COLs濃度を100mg/mL、300mg/mL、及び500mg/mLとし、COLs濃度の異なる3種類のプレポリマー溶液を調製した。
(5)スライドガラス上にサランラップ(厚さ11μm、旭化成)を敷き、サランラップを22mm四方の正方形に切り抜きスペーサーとし、切り抜かれたスペーサー内にプレポリマー溶液200μLを流し込んだ(図1の(2))。
(6)シラン化されたスライドガラスで蓋をした。なお、シラン化処理はスライドガラスをCorona Surface Treater−BD−20Aを用いて5分間プラズマ処理を施した後に、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリクロロシランを用いて気相中で行った。これをUV露光機(HAMAMATSU Photonics UVLIGHT CURE,11.5mWcm)で60秒間露光することでプレポリマーを重合し、デバイスを得た(図1の(3)、(4))。
<4.作製した薬剤徐放デバイスの特性>
(4−1)作製した薬剤徐放デバイス
図2に作製した薬剤徐放デバイスを示す。薬剤含浸COLs濃度を100mg/mL又は300mg/mLとしたデバイス(図2(a)及び(b))は無色透明であったのに対して、当該COLs濃度を500mg/mLとしたデバイス(図2(c))は白く濁っており、透明ではなかった。また、当該COLs濃度が高いデバイスほど(特に、当該COLs濃度を500mg/mLとしたデバイスにおいて)裂けやすく、シートの形状を保ったままのハンドリングが困難となることが確認された。これらは当該COLsの占める体積の割合が増えるに従い(当該COLs濃度を500mg/mLとしたデバイスにおいてはその体積の6割が当該COLsである)、PEGDMの薄膜としての性質が失われることに起因すると考えられる。
(4−2)薬剤徐放デバイスの展開性
含有する薬剤含浸COLs濃度に関わらず、作製した薬剤徐放デバイスはいずれも高い柔軟性を有しており、小さく折りたたむことが可能であった(図3(a)、(c)及び(e))。また、折りたたまれた薬剤徐放デバイスをPBSに浸漬すると即座に展開し、シートの形状に戻ることが確認された(図3(b)、(d)及び(f))。これはPEGDMの膨潤によるものであると考えられる。当該COLs濃度を100mg/mLとする薬剤徐放デバイスは他のものと比べて特に高い柔軟性を有し、繰り返し折りたたんでも破損すること無く展開することができた。
(4−3)薬剤徐放デバイス内の薬剤含浸COLsの分布
作製した薬剤徐放デバイスにおいて薬剤含浸COLsがPEGDMから露出していることを確認するために電子顕微鏡(SEM,VE−9800,KEYENCE)による観察を行った。結果、作製した薬剤徐放デバイスにおいて、PEGDMに包埋された当該COLsがPEGDM表面から部分的に露出していることが確認され(図4)、COLsからの薬剤徐放に局所性を持たせることが可能であることが確認された。
次いで、プレポリマーにおける当該COLs濃度と薬剤徐放デバイスが含有する当該COLs量の関係を明らかにすることを目的として、位相差顕微鏡による光学観察及び蛍光観察を各COLs濃度の薬剤徐放デバイスで行った。観察された当該COLsをカウントすることで濃度と表面密度の関係を得た。さらに、共焦点顕微鏡を用いてZ軸方向の当該COLs分布を観察した。
位相差顕微鏡による光学観察及び蛍光観察の結果を図5に示す。プレポリマーにおける当該COLs濃度が上昇すると、薬剤徐放デバイス内に含まれる当該COLs量も増加していることが確認された。特に、当該COLs濃度を500mg/mLとする薬剤徐放デバイス(図5(c))においては多くの部分を当該COLsが占めており、また当該COLsが凝集していることが確認された。
次いで、これらの画像から得られた当該COLs濃度と表面密度との関係を求めた。結果を図6に示す。この結果より、当該COLs濃度と表面密度とは比例関係にあることが確認された。薬剤徐放デバイス内の当該COLs量は線形的に変化するため、多剤徐放を行う際には複数種類の薬剤含浸微粒子を徐放したい薬剤の割合で混合させて薬剤徐放デバイスを作製すれば良いことが示唆される。
さらに、共焦点顕微鏡によるZ軸方向の当該COLs分布の観察結果を図7に示す。この結果より、薬剤徐放デバイス内においてZ軸断面図を見ると全てのCOLs濃度においてCOLsはZ軸方向に均一に分布していることが確認された。COLs分布がZ軸方向の均一であるために、徐放速度を一定にできることが示唆された。
(4−4)薬剤徐放特性評価
[方法]
<検量線の作製>
500μg/mL、100μg/mL、50μg/mL、10μg/mL、5μg/mL、及び1μg/mLのFD−40溶液、ならびにPBSを、吸光度計にて計測した。FD−40溶液の計測値からPBSの計測値を減算した値をプロットし、近似直線を求め検量線を作製した。本実験においては、この検量線を用いてFD−40濃度を算出した。
<薬剤含浸COLsのみ(薬剤含浸COLs自体)>
100mg/mL溶液を24時間以上撹拌し、薬剤含浸COLsをPBS中に均一に分散させた。次いで、100μL、300μL、500μLをそれぞれ1mLマイクロチューブに回収し、各チューブにPBSを900μL、700μL、500μL加えて、当該COLs濃度をそれぞれ100mg/mL相当、300mg/mL相当、500mg/mL相当とした。サンプルは37℃、5%COの環境下で保管し、遠心分離(7500rpm、5分間)にて当該COLsを沈殿させ、上澄み液を回収した。
<薬剤担持PEGDMシート>
薬剤担持PEGDMシートはデバイスにおける薬剤含浸COLsを同体積の50mg/mL FD−40溶液で置換し、PEGDMを混ぜあわせて光重合にて作製した。作製したPEGDMシートを6ウェルプレートに敷き、3mLのPBSを滴下した。液中に保つために金属メッシュでPEGDMシートを挟み込んで徐放試験を行った。サンプルは37℃、5%COの環境下で保管した。
<薬剤徐放デバイス>
上記にて作製した薬剤徐放デバイスを6ウェルプレートに敷き、3mLのPBSを滴下した。液中に保つために金属メッシュで薬剤徐放デバイスを挟み込んで徐放試験を行った.サンプルは37℃、5%COの環境下で保管した。
[結果]
<薬剤含浸COLsのみ(薬剤含浸COLs自体)>
図8に、薬剤含浸COLsのみの徐放試験結果を示す。薬剤含浸COLsのみからの徐放ではいずれの濃度においても、投与直後における薬剤の放出速度が大きいこと(初期バースト)が観測された。徐放速度は3日程度で一定となり、5日目以降においては、100mg/mL相当のものではほとんど徐放が確認されなかった。
<薬剤担持PEGDMシート>
図9に、薬剤担持PEGDMシートによる徐放試験の結果を示す。なお、500mg/mL薬剤含浸COLs相当の薬剤担持PEGDMシートは機械的強度の不足からシートの形状を保ったままの徐放試験を行うことができなかったため、結果からは除外した。
薬剤担持COLsのみの結果と比較すると低減はされているものの、初期バーストが認められた。1日目以降において、徐放速度は一定となった。
PEGDM中のFD−40の拡散係数は0.045μm−1と非常に小さい。それにも関わらず、PEGDMよりかなり速い速度でFD−40が徐放されているのは、PEGDMシートの作製過程でFD−40溶液が混合されているからだと考えられる。すなわち、FD−40はPBS中に溶解しているために、PBSによってPEGDMの濃度が低下する。これによりPEGDMの網目構造が緩く、弱く形成されるためと考えられる。500mg/mL相当のPEGDMシートが、シート形状を保ったまま徐放試験を行うことができなかった理由も同様の理由によるものだと考えられる。
<薬剤徐放デバイス>
図10に、薬剤徐放デバイスによる徐放試験の結果を示す。いずれの濃度においても初期バーストは観測されず、徐放速度は一定であった。
次に、薬剤含浸COLs濃度を100mg/mLに相当する、薬剤含浸COLsのみ、薬剤担持PEGDMシート及び薬剤徐放デバイスの徐放速度の比較を行った。結果を図11に示す。
薬剤徐放デバイスの徐放速度は、当該PEGDMシートの徐放速度よりも遅いことが確認された。これは当該PEGDMシートがシート全面から薬剤を徐放するのに対して、薬剤徐放デバイスにおいてはPEGDMシート表面に存在する薬剤含浸COLsより(すなわち、限定された領域のみから)薬剤が放出されるためと考えられる。薬剤徐放デバイスのPEGDMは、薬剤担持PEGDMシートと異なり、PBSによって希釈されていないことから、COLsと比較すると非常に拡散係数が小さく、そのため薬剤はCOLs部分以外から放出されることはほとんどないと考えられる。また、薬剤徐放デバイスにおいて、COLsのみと同じくCOLs粒子からの徐放であるにも関わらず初期バーストが見られないのは、薬剤担持COLsのみの場合、COLs粒子が全周方向から薬剤を放出するのに対して、薬剤徐放デバイスにおいては、PEGDMから露出しているCOLs部分のみから(すなわち、限定された領域のみから)薬剤を放出されるためであると考えられる。
以上の結果より、薬剤徐放デバイスを利用することにより、初期バーストを生じることなく、血中・組織中濃度の制御が必要な薬剤を、長期間にわたって徐放できることが確認された。
実施例2:展開性評価高分子シートの作製
<1.試薬>
PEGDM(Mw=750,Sigma−Aldrich)、イルガキュア2959(長瀬産業株式会社)、ならびにその他全ての試薬は市販のされているものを使用した。
<2.展開性評価高分子シートの作製>
展開性の評価用高分子シートを以下の作製方法に従って、光重合反応にて作製した。
(1)PEGDMにイルガキュア2959を1w/v%混合して得られた溶液を10分間窒素バブリングし、脱気した。
(2)スライドガラス上にサランラップ(厚さ11μm、旭化成)を敷き、サランラップを22mm四方の正方形に切り抜きスペーサーとし、切り抜かれたスペーサー内に脱気したPEGDM溶液200μLを流し込んだ。
(3)シラン化されたスライドガラスで蓋をした。なお、シラン化処理は上記実施例1にて記載したとおりに行った。これをUV露光機(HAMAMATSU Photonics UVLIGHT CURE,11.5mWcm)で60秒間露光することでPEGDMを重合し、高分子シートを得た。
<3.作製した高分子シートの展開性>
[方法]
<2つ折からの展開>
作製した高分子シートを22mm四方の正方形から横22mm縦11mmとする長方形型になるように2つに折りたたんだ。
ピンセットを用いて2つ折にした高分子シートを蒸留水で満たしたビーカー内に投入した。高分子シートが水中に投入された時間を起点として高分子シートが完全に展開するまでの時間を計測した。
<4つ折からの展開>
作製した高分子シートを横22mm縦11mmとする長方形型に折りたたみ、その後、横11mm縦11mmとする正方形型になるように4つに折りたたんだ。
ピンセットを用いて4つ折にした高分子シートを蒸留水で満たしたビーカー内に投入した。高分子シートが水中に投入された時間を起点として高分子シートが完全に展開するまでの時間を計測した。
<捲回状態からの展開>
作製した高分子シートを直径2mmのガラス棒に角を起点として巻きつけた。高分子シートが巻きつけられているガラス棒を蒸留水で満たしたビーカー内に浸漬させた。高分子シートが水中に投入された時間を起点として高分子シートが完全に展開し、ガラス棒から剥がれるまでの時間を計測した。
[結果]
結果を図12に示す。
<2つ折からの展開>
水中にてピンセットから離すと、液面に浮上した。平均64.2秒でシート状に完全に展開した。
<4つ折からの展開>
水中にてピンセットから離すと、液面に浮上した。平均67.9秒でシート状に完全に展開した。4つ折の状態から2つ折の状態へは即座に展開した。
<捲回状態からの展開>
ガラス棒の重みのために水中にとどまり続けた。平均56.6秒でシート状に完全に展開した。展開後、液面に浮上するものとしないものとが存在した。
以上の結果より、高分子シートは液中において、折り畳まれた状態又は捲回状態等の変形状態から、平面形状へ自力で展開できることが示された。

Claims (1)

  1. 薬物を含浸させた徐放性担体であって、コラーゲン微粒子の形態である徐放性担体が包埋されたポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)を光重合開始剤と混合し、UV光を照射し硬化させることを含む、PEGDMからなる高分子シートを含んでなる薬物徐放デバイスを製造する方法
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