JP6555708B2 - リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法及びキット - Google Patents

リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法及びキット Download PDF

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Description

本発明は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法及びキットに関する。
生体膜を構成するリン脂質は、2位に不飽和脂肪酸を有している。図1に示すように、鉄を介したフェントン反応により、スーパーオキシド又は過酸化水素から生成したヒドロキシラジカルが上記不飽和脂肪酸と反応すると、リン脂質ヒドロペルオキシドが生じることが知られている。
リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(phospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase、以下「PHGPx」という場合がある。)は、グルタチオンを補酵素として、生成したリン脂質ヒドロペルオキシドを直接還元し、リン脂質ヒドロキシ体に変換する酵素である。このPHGPx遺伝子のノックアウトマウスは、胎性致死であることが知られていた(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、PHGPx欠損による細胞死のメカニズムは不明であった。
Imai H, et al., Early embryonic lethality caused by targeted disruption of the mouse PHGPx gene, Biochem Biophys Res Commun., 305, 278-86, 2003.
本発明は、PHGPx欠損による細胞死の経路に関与する因子を明らかにし、上記細胞死(以下、「リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死」という。)の検出方法及びキット、を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
(1)細胞中の、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出する工程を備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法であって、前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、oocyte maturation alpha(Omt2a)、sodium channel voltage−gated type XI alpha(Scn11a)、interferon activated gene 205(Ifi205)、IQ motif and ubiquitin domain containing(Iqub)、homeobox D1(Hoxd1)、plasmacytoma expressed transcript 2(Pet2)、sporulation protein meiosis−specific SPO11 homolog(Spo11)、AF4/FMR2 family member 4(Aff4)、echinoderm microtubule associated protein like 5(Eml5)、solute carrier family 7 (cationic amino acid transporter y+ system) member 9(Slc7a9)、Glucosaminyl (N−acetyl) transferase 2, I−branching enzyme(Gcnt2)、ankyrin repeat and sterile alpha motif domain containing 1B(Anks1b)、tumor necrosis factor (ligand) superfamily member 10(Tnfsf10)、RIKEN cDNA A830028E23 gene(BB267006)、vav2 oncogene、cholecystokinin(Cck)、cytochrome P450 family 4 subfamily x polypeptide 1(Cyp4x1)、mannoside acetylglucosaminyltransferase 5(Mgat5)、transmembrane protein 171(Tmem171)、RIKEN cDNA D930015F04 gene(BB523556)、homer homolog 1(Homer1)、LOC102632209、RIKEN cDNA C730031F21 gene(BB667665)、clavesin 2(Clvs2)、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、検出方法。
(2)前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、(1)に記載の検出方法。
(3)前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、(1)又は(2)に記載の検出方法。
(4)リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子のmRNA増幅用プライマー、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子に対するプローブ、又はリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体若しくはアプタマーを備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出用キットであって、前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、キット。
(5)前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、(4)に記載のキット。
(6)前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、(4)又は(5)に記載のキット。
(7)リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子に対するプローブを備えたDNAアレイである、(4)〜(6)のいずれか一項に記載のキット。
本発明により、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法及びキットを提供することができる。
生体膜新脂質酸化反応とその代謝経路を説明する図である。 PHGPxタンパク質を検出するウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。 PHGPx欠損MEF細胞内で生成されたリン脂質ヒドロペルオキシド(18:0、20:4ホスファチジルコリン由来のヒドロペルオキシド)の量の経時変化を示すグラフである。 タモキシフェン添加によりPHGPx欠損MEF細胞が致死となるMTTアッセイの結果を示すグラフである。 (a)は、アポトーシス阻害剤を用いた時のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の抑制効果を細胞生存率(%)で示した結果を示すグラフである。(b)は、スタウロスポリン処理とタモキシフェン処理の際のアポトーシスの指標の蛍光免疫染色の結果を示す写真である。 (a)は、tert−ブチルヒドロペルオキシド添加30分後のHMGB1の蛍光免疫染色の結果を示す写真であり、図6(b)は、タモキシフェン添加48時間後のHMGB1の蛍光免疫染色結果を示す写真である。 (a)は、オートファジー関連因子ATG5のノックダウンによるリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死に対する細胞生存率(%)の結果を示すグラフである。(b)は、RT−PCRによるATG5の発現抑制の結果を示す写真である。 (a)は、ネクロトーシス関連因子Rip1のノックダウン細胞によるリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死に対する細胞生存率(%)の結果を示すグラフである。(b)は、ウエスタンブロッティングによるRip1の発現低下の結果を示す写真である。 発明者らの解析により明らかとなった、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死経路のモデル図である。 (a)〜(d)は、DNAアレイを用いてリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子を探索した結果を示す図である。 定量PCRによる解析の結果を示すグラフである。 定量PCRによる解析の結果を示すグラフである。 定量PCRによる解析の結果を示すグラフである。
[リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法]
1実施形態において、本発明は、細胞中の、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出する工程を備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法であって、前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、検出方法を提供する。
後述するように、発明者らは、アポトーシス、ネクローシス、オートファジー性細胞死、ネクトローシスとは明確に異なる新規の経路による細胞死(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死)を見出した。更に、後述するように、DNAアレイ等を用いた解析の結果から、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死に、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursor遺伝子が関与していることを明らかにした。
したがって、細胞中のこれらの遺伝子の発現上昇を検出することにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死を検出することができる。本実施形態の方法により、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死が進行中であるか否かを検出することもできるし、細胞死が生じた後に当該細胞死がリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死経路を介していたか否かを判断することもできる。
細胞としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル等の細胞が挙げられる。これらの細胞において、発現上昇を検出する遺伝子としては、上述した遺伝子のそれぞれの種におけるホモログを検出すればよい。
本実施形態のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法において、発現上昇を検出するリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子は、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子であることがより好ましい。
これらの遺伝子は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の進行中における発現上昇がより高いため、これらの遺伝子を検出対象とすることにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出精度を更に高めることができる。
本実施形態のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法において、発現上昇を検出するリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子は、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子であることが更に好ましい。
これらの遺伝子は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の進行中における発現上昇が特に高いため、これらの遺伝子を検出対象とすることにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出精度を更に高めることができる。
[リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出用キット]
1実施形態において、本発明は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子のmRNA増幅用プライマー、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子に対するプローブ、又はリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体若しくはアプタマーを備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出用キットであって、前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、キットを提供する。
本実施形態のキットを用いてリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出することにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死を検出することができる。本実施形態のキットにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死が進行中であるか否かを検出することもできるし、細胞死が生じた後に当該細胞死がリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死経路を介していたか否かを判断することもできる。
(mRNA増幅用プライマー)
本明細書において、mRNA増幅用プライマーとは、mRNAを逆転写して得られたcDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅することができるプライマーを意味する。本実施形態のキットにおけるmRNA増幅用プライマーとしては、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、逆転写定量PCR(RT−qPCR)等により、上記のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出することができるものであれば特に制限なく用いることができる。
(プローブ)
本実施形態のキットにおけるプローブとしては、上記のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子のmRNA、又は当該mRNAを逆転写することにより得られたcDNAにハイブリダイズし、ノーザンブロッティング、DNAアレイ解析等により、上記のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出することができるものであれば特に制限なく用いることができる。
プローブは、例えば基板上に固定されたDNAアレイの形態であってもよい。DNAアレイは、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、フォトリソグラフィーの技術を応用して基板上でプローブDNA断片を直接合成したものであってもよく、あらかじめ調製したプローブDNA断片を基板にスポットして固定することにより製造されたものであってもよい。
(抗体又はアプタマー)
本実施形態のキットにおける抗体又はアプタマーとしては、上記のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が転写・翻訳されることにより形成されるタンパク質)に結合し、上記のリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出することができるものであれば特に制限なく用いることができる。
抗体又はアプタマーは、例えば基板上に固定された抗体アレイ又はアプタマーアレイの形態であってもよい。
なお、本明細書において、「抗体」は、抗体及び抗体誘導体を含む。抗体誘導体としては、F(ab)、F(ab’)2フラグメント等の抗体断片、scFv等の1本鎖抗体等が挙げられる。
リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体は、定法により、当該タンパク質又はその部分ペプチドを抗原として動物を免疫すること等により作製することができる。
また、アプタマーとしては、例えばDNAアプタマーが挙げられる。リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質に対するDNAアプタマーは、例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)法等の定法により、当該タンパク質に対する結合能を指標として、ランダム配列の核酸ライブラリー等から選別することができる。
本実施形態のキットにおいて、発現上昇を検出するリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子は、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子であることがより好ましい。
これらの遺伝子は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の進行中における発現上昇がより高いため、これらの遺伝子を検出対象とすることにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出精度を更に高めることができる。
本実施形態のキットにおいて、発現上昇を検出するリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子は、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子であることが更に好ましい。
これらの遺伝子は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の進行中における発現上昇が特に高いため、これらの遺伝子を検出対象とすることにより、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出精度を更に高めることができる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の樹立)
PHGPx欠損細胞死のメカニズムを明らかにするために、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株を樹立した。この細胞は、タモキシフェンを培地に加えると24時間以内にCre−loxPシステムによりPHGPxゲノム遺伝子が欠失する。
具体的には、PHGPx遺伝子ノックアウトマウス(PHGPx−/−)に、loxP配列に挟まれたPHGPx遺伝子(loxP−PHGPx)を遺伝子導入(Tg)した、Tg(loxP−PHGPx):PHGPx−/−マウスと、PHGPx+/−マウスを交配させた。続いて、遺伝子型がTg(loxP−PHGPx):PHGPx−/−である13.5日胚から、マウス胎仔線維芽細胞(MEF)を調製した。続いて、得られた細胞にSV40ウイルスのT抗原遺伝子を遺伝子導入することにより不死化した。続いて、得られた細胞にタモキシフェン誘導型CreERT2遺伝子を導入した。これにより、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株が得られた。
なお、CreERT2とは、エストロゲン受容体と融合タンパク質にしたCre(CreER)を、エストロゲンに反応せず、タモキシフェンに反応するように変異させたものである。タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地にタモキシフェンを添加すると、CreER2のエストロゲン受容体部分にタモキシフェンが結合し、エストロゲン受容体の核移行シグナルが露出する。その結果、CreER2が核内へ移行し、loxPで挟まれたPHGPxゲノム遺伝子が破壊される。添加するタモキシフェンの濃度は終濃度1μM程度でよい。
[実験例2]
(タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株へのタモキシフェンの投与)
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に終濃度1μMのタモキシフェンを添加した。続いて、タモキシフェン添加から0、24及び48時間後の細胞を回収し、抗PHGPx抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、各細胞サンプル中のPHGPxタンパク質の量を測定した。
図2は、PHGPxタンパク質を検出するウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。その結果、タモキシフェン投与から24時間以内にPHGPxタンパク質の発現量が減少することが確認された。
[実験例3]
(PHGPx欠損細胞におけるリン脂質ヒドロペルオキシドの検出)
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に終濃度1μMのタモキシフェンを添加し、生成されるリン脂質ヒドロペルオキシドを検出した。検出には、液体クロマトグラフィー(LC)−エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)/質量分析(MS)を用いた。
液体クロマトグラフィーには、ACQUITY UPLC装置(ウォーターズ社)を用い、質量分析には、四重極リニアイオントラップ質量分析システム(商品名4000 Q−TRAP、エービー・サイエックス社)を用いた。液体クロマトグラフィーのカラムには、ACQUITY UPLC(商標)BEH C18カラム(0.17μm、150mm×1.0mm)を使用した。
タモキシフェン添加から、0、12、24、36及び48時間後の各細胞から抽出した全リン脂質画分のサンプルをオートサンプラーに供し、移動相A(アセトニトリル/メタノール/水=2:2:1(v/v)、0.1%ほう酸、0.028%アンモニア):移動相B(イソプロパノール、0.1%ほう酸、0.028%アンモニア)の100:0(0〜5分)、50:50(5〜25分)、50:50(25〜49分)、100:0(59〜60分)及び100:0(60〜75分)のステップグラジエント、流量70μL/分、カラム温度30℃の条件で分離した。
MS/MS解析は、MRM(Multi Reaction Monitoring)の手法を用いてネガティブイオンモードで実施した。イオンスプレー電圧は、−4500Vに設定した。窒素ガスを障壁ガス及びコリジョンガスとして使用した。酸化リン脂質の検出において、コリジョンエネルギーは20−65eVに設定した。装置のスキャンレンジは、m/z 50〜950、スキャンスピード1000Th/秒に設定した。Q0トラッピングをオンにし、リニアイオントラップフィルタイムを10ミリ秒に設定した。デクラスタリングポテンシャルを−105Vに設定した。Q1の解像度を「ユニット」に設定した。ホスファチジルコリンヒドロペルオキシド(18:0:20:4由来)の特徴的なフラグメンテーションパターンは、ドウェル タイム50ミリ秒、デクラスタリングポテンシャルを−80Vに設定した。Q1及びO3の解像度はユニットに設定し、Q1は886m/z、O3は283m/z(コリジョンエネルギー−60eV)及び335m/z(コリジョンエネルギー−45eV)に設定した。
図3は、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に終濃度1μMのタモキシフェンを添加後、0、12、24、36及び48時間後の細胞内で、18:0(ステアリン酸)、20:4(アラキドン酸)をもつホスファチジルコリン(PC)から酸化により生成した酸化一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシド(PCOOH)の生成量を経時的に示したグラフである。タモキシフェンの添加から24時間後をピークに、アラキドン酸を含むリン脂質の酸化一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシドが生成された。DHAを含むリン脂質の酸化一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシドでも同様な結果が得られている(図なし)。
[実験例4]
(PHGPx欠損細胞のMTTアッセイ)
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に終濃度1μMのタモキシフェンを添加し、MTTアッセイにより、細胞の生存率を測定した。また、タモキシフェンと同時に終濃度200μMのビタミンE添加群についても同様の検討を行った。
より具体的には、タモキシフェンの添加から24、48及び72時間後の細胞の培地にMTT(3−[4,5−dimethylthiazol−2−yl]−2,5−diphenyl tetrazolium bromid)を添加し、4時間後に各細胞をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、540nmにおける吸光度を測定した。
図4は、MTTアッセイの結果を示すグラフである。タモキシフェン添加から48時間後から72時間の間に細胞死が起こることが明らかとなった。また、ビタミンEの添加により細胞死が完全に抑制されることが明らかとなった。
[実験例5]
(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死とアポトーシスとの比較)
リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死(PHGPx欠損による細胞死)が、アポトーシスによる細胞死経路を介しているのか否かについて詳細に検討した。
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に、カスパーゼ阻害剤であるZ−VAD−FMKを終濃度50μM、ミトコンドリアタンパク質であるアポトーシス誘導因子(AIF)の放出阻害剤であるDHIQを終濃度300μM、ビタミンE誘導体であるトロロックスを終濃度400μM添加したもの、及び、対照として何も添加していない細胞を用意した。各細胞に終濃度1μMのタモキシフェンを同時に添加した。タモキシフェン、阻害剤添加3日後にKeyence社のオールインワン顕微鏡にて、ランダムに20枚の写真を撮り、付着している生細胞の数をカウントした。対物レンズにPlan Flour ELWD20x0.45(Nicon)を用いて10倍で観察した(一視野 877.5μm×661.2μm)。細胞生存率(%)は、タモキシフェンを添加せずに、3日培養した時の細胞数を100%として表した。
結果を図5(a)に示す。カスパーゼ阻害剤、AIF系の阻害剤では、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死を抑制することができなかった。一方ビタミンE誘導体であるトロロックスは細胞死を抑制することができた。
次に、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地にアポトーシス誘導試薬であるスタウロスポリンを終濃度0.5μMで添加したものと、タモキシフェンを終濃度1μMで添加したものを用意した。5時間後、24時間後、48時間後に、各細胞を、蛍光免疫染色し、シトクロムC及び活性化カスパーゼ3を染色した。また、TUNEL(TdT−mediated dUTP nick end labeling)法によりアポトーシスの特徴であるDNAの断片化を検出した。
結果を図5(b)に示す。スタウロスポリン処理では、5時間後にシトクロムCの放出が観察され、カスパーゼ3が活性化し、24時間後にはTUNEL陽性の細胞死(アポトーシス)が観察された。一方、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死では、シトクロムCの放出やカスパーゼ3の活性化は観察されなかった(図では48時間後を示したが、60時間後でも観察されなかった)。TUNEL染色のみ、核内にドット状の染色が観察されたが、DNAラダーは検出されなかった。
以上のことから、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死は、典型的なアポトーシスとは異なることが明らかとなった。
[実験例6]
(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死とネクローシスとの比較)
リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死が、ネクローシスによるものか否かについて詳細に検討した。
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地にタモキシフェンを終濃度1μMで添加し、細胞死の瞬間をタイムラプス解析で検討した。しかしながら、細胞死の瞬間にネクローシスの特徴である細胞の膨潤は観察されなかった。細胞死の直前に細胞が形を変形し、最後はシャーレよりはがれて突然致死となった(図示せず。)。
続いて、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株の培地に、ネクローシス誘導剤であるtert−ブチルヒドロペルオキシドを終濃度300mMで添加したものと、タモキシフェンを終濃度1μMで添加したものを用意した。30分後(tert−ブチルヒドロペルオキシド添加群)及び48時間後(タモキシフェン添加群)に、各細胞を、蛍光免疫染色し、ネクローシスの特徴であるHMGB1(High Mobility Group Box1)タンパク質の細胞質への放出を観察した。また、核をHoechstで染色した。
図6(a)は、tert−ブチルヒドロペルオキシド添加30分後の結果を示す写真であり、図6(b)は、タモキシフェン添加48時間後の結果を示す写真である。その結果、tert−ブチルヒドロペルオキシド添加による細胞死では、ネクローシスの指標であるHMGB1の核から細胞質への放出が観察されたのに対し、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死では、HMGB1は核にとどまっており細胞質への放出が認められなかった。
以上のことから、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死は、ネクローシスとは異なることが明らかとなった。
[実験例7]
(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死とオートファジー性細胞死との比較)
リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死が、オートファジー性細胞死によるものか否かについて詳細に検討した。オートファジー性細胞死を起こすためにはATG5遺伝子が必須であることが知られている。
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株に、ATG5特異的shRNA(short hairpin RNA)を導入し、ATG5の発現をノックダウンした細胞を用意した。ATG5特異的shRNAとしては、ATG5 shRNA−3(配列番号1)及びATG5 shRNA−4(配列番号2)の2種類のshRNAを使用した。また、対照として、shRNA発現ベクターのみを導入した細胞を用意した。これらの細胞の培地に、タモキシフェンを終濃度1μMで添加し、24、36、48、60及び72時間後の細胞を、Keyence社のオールインワン顕微鏡にて、ランダムに20枚の写真を撮り、付着している生細胞の数をカウントした。細胞生存率(%)は、タモキシフェンを添加後24時間後の細胞数を100(%)とし、それぞれの時間の生細胞数の割合の変化を細胞生存率(%)として表した。
結果を図7(a)及び図7(b)に示す。ATG5の発現をノックダウンしても、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死を抑制することはできなかった。また、図7(b)に示すように、RT−PCRの結果から、shRNAの導入により、ATG5遺伝子の発現がノックダウンされたことが確認された。
以上のことから、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死は、オートファジー性細胞死とは異なることが明らかとなった。
[実験例8]
(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死とネクトローシスとの比較)
リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死が、ネクトローシスによるものか否かについて詳細に検討した。ネクトローシスは、プログラムされたネクローシスとして知られる細胞死の1形態である。また、receptor−interacting protein kinase 1(Rip1)のノックダウンにより、ネクトローシスが顕著に抑制されることが知られている。
タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株に、Rip1特異的shRNA(small hairpin RNA)を導入し、Rip1の発現をノックダウンした細胞を用意した。Rip1特異的shRNAとしては、Rip1 shRNA−4(配列番号3)を使用した。また、対照として、shRNA発現ベクターのみを導入した細胞、及び培地中に終濃度400μMでトロロックスを添加した細胞を用意した。これらの細胞の培地に、タモキシフェンを終濃度1μMで添加し、24時間後、72時間後の生細胞をKeyence社のオールインワン顕微鏡にて、ランダムに20枚の写真を撮り、付着している生細胞の数をカウントした。細胞生存率(%)は、タモキシフェンを添加後24時間後の細胞数を100(%)とし、72時間後の付着している生細胞数の割合を細胞生存率(%)として表した。
結果を図8(a)及び図8(b)に示す。Rip1の発現をノックダウンしても、PHGPx欠損による細胞死を抑制することはできなかった。また、図8(b)に示すように、ウエスタンブロッティングの結果から、shRNAの導入により、Rip1タンパク質の発現がノックダウンされたことが確認された。
以上のことから、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死は、ネクトローシスとは異なることが明らかとなった。すなわち、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死は、アポトーシス、ネクローシス、オートファジー性細胞死、ネクトローシスとは異なる新規の細胞死であることが明らかとなった。
図9に、発明者らの解析により明らかとなった、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死経路のモデル図を示す。PHGPxが欠損すると、24時間後をピークとしてリン脂質の酸化一次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシドが上昇する。その下流でCDK4が活性化し、36時間後以降にMAPキナーゼ経路のMEK、ERKがリン酸化され、48時間後から72時間の間で細胞死を引き起こす。
発明者らは更に、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞株を利用した検討の結果、ビタミンE、CDK4阻害剤である3−ATA(3−アミノ−9−チオ[10H]−アクリドン)又はMEK阻害剤であるU−0126(1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス[2−アミノ−フェニルチオ]ブタジエン)を培地中に添加することにより、PHGPxの欠損により誘導されるリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死を抑制できることを見出した。
[実験例9]
(リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の同定)
DNAアレイを用いて、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子を同定した。具体的には、まず、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地にタモキシフェンを終濃度1μM添加した群(タモキシフェン添加群)、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地にタモキシフェンを終濃度1μM及びビタミンE誘導体であるトロロックスを終濃度300μM添加した群(タモキシフェン/トロロックス添加群)、及び、対照として、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地に何も添加していない群(対照群)を用意した。続いて、各群の細胞を36時間インキュベートした後、それぞれRNAを抽出し、DNAアレイ(商品名「Genechip」、アフィメトリクス社)を用いて遺伝子の発現の変動を網羅的に解析した。図10(a)〜(d)は、DNAアレイを用いてリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子を探索した結果を示す図である。
その結果、図10(a)に示すように、対照群(control)とタモキシフェン添加群(Tam)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、PHGPxが欠損したことにより発現量が1.5倍以上上昇した遺伝子が3477個同定された。また、タモキシフェン添加群(Tam)とタモキシフェン/トロロックス添加群(Tam+Trolox)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、脂質の過酸化に依存して発現量が1.5倍以上上昇した遺伝子が1590個同定された。更に、これらの遺伝子群に共通する635個の遺伝子が同定された。
また、図10(b)に示すように、対照群(control)とタモキシフェン添加群(Tam)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、PHGPxが欠損したことにより発現量が3倍以上上昇した遺伝子が1290個同定された。また、タモキシフェン添加群(Tam)とタモキシフェン/トロロックス添加群(Tam+Trolox)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、脂質の過酸化に依存して発現量が3倍以上上昇した遺伝子が532個同定された。更に、これらの遺伝子群に共通する44個の遺伝子が同定された。表1に、上記の44個の遺伝子のリストを示す。
また、図10(c)に示すように、対照群(control)とタモキシフェン添加群(Tam)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、PHGPxが欠損したことにより発現量が1.5倍以上減少した遺伝子が5761個同定された。なお、発現量が1.5倍以上減少したとは、対照群における対象遺伝子の発現量が、タモキシフェン添加群における対象遺伝子の発現量の1.5倍以上であったことを意味する。また、タモキシフェン添加群(Tam)とタモキシフェン/トロロックス添加群(Tam+Trolox)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、脂質の過酸化に依存して発現量が1.5倍以上減少した遺伝子が1867個同定された。更に、これらの遺伝子群に共通する826個の遺伝子が同定された。
また、図10(d)に示すように、対照群(control)とタモキシフェン添加群(Tam)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、PHGPxが欠損したことにより発現量が3倍以上減少した遺伝子が3012個同定された。また、タモキシフェン添加群(Tam)とタモキシフェン/トロロックス添加群(Tam+Trolox)との間での遺伝子の発現量の比較に基づいて、脂質の過酸化に依存して発現量が3倍以上減少した遺伝子が593個同定された。更に、これらの遺伝子群に共通する49個の遺伝子が同定された。
[実験例10]
(定量PCRによるリン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の確認)
実験例9で同定した、PHGPxが欠損したことにより発現量が3倍以上上昇し、かつ、脂質の過酸化に依存して発現量が3倍以上上昇した44遺伝子について、定量PCRを行い、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子であるか否かを確認した。
具体的には、まず、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地にタモキシフェンを終濃度1μM添加した群(タモキシフェン添加群)、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地にタモキシフェンを終濃度1μM及びビタミンE誘導体であるトロロックスを終濃度300μM添加した群(タモキシフェン/トロロックス添加群)、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地にトロロックスを終濃度300μM添加した群(トロロックス添加群)及び、対照として、タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞の培地に何も添加していない群(対照群)を用意した。続いて、各群の細胞を36時間インキュベートした後、それぞれRNAを抽出しcDNAを合成した。
続いて、各cDNAを鋳型とした定量PCR(リアルタイムPCR)を行い、上記の44遺伝子の発現量をそれぞれ定量した。具体的には、各群の細胞における対象遺伝子の発現量を、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子の発現量を用いて基準化し、対照群における対象遺伝子の発現量を1として、各群の細胞における対象遺伝子の発現量の相対値を算出して比較した。表2に、定量PCRに用いたセンスプライマー及びアンチセンスプライマーの塩基配列の配列番号を示す。
また、GAPDHの定量PCRに用いたセンスプライマーの塩基配列を配列番号92に示し、アンチセンスプライマーの塩基配列を配列番号93に示す。
定量PCRによる解析の結果、Omt2a、Scn11a、Ifi205、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5遺伝子は、タモキシフェン添加群において、対照群の約5倍以上に発現量が上昇した。図11は、各群の細胞におけるこれらの遺伝子の発現量を示すグラフである。
また、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、Tnfsf10、BB267006、vav2 oncogene、Cck、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171遺伝子は、タモキシフェン添加群において、対照群の約2倍〜5倍に発現量が上昇した。図12は、各群の細胞におけるこれらの遺伝子の発現量を示すグラフである。
また、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursor遺伝子は、タモキシフェン添加群において、対照群の約2倍に発現量が上昇した。図13は、各群の細胞におけるこれらの遺伝子の発現量を示すグラフである。
これらの遺伝子は、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の進行中に、再現性よく発現量が上昇するため、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出用マーカーとして有用である。
表3に、実験例9において、これらの遺伝子のcDNAにハイブリダイズした、DNAアレイ上のプローブの塩基配列の配列番号を示す。実験例9で使用したDNAアレイでは、各遺伝子に付き11種類ずつのプローブが使用されており、いずれのプローブも対象遺伝子のcDNAにハイブリダイズすることができた。
本発明により、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法及びキットを提供することができる。

Claims (7)

  1. 細胞中の、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子の発現上昇を検出する工程を備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出方法であって、
    前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、BB267006、vav2 oncogene、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、検出方法。
  2. 前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、BB267006、vav2 oncogene、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、請求項1又は2に記載の検出方法。
  4. リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子のmRNA増幅用プライマー、
    リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子に対するプローブ、又は
    リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体若しくはアプタマー、
    を備える、リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死の検出用キットであって、
    前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、BB267006、vav2 oncogene、Cyp4x1、Mgat5、Tmem171、BB523556、Homer1、LOC102632209、BB667665、Clvs2、low−density lipoprotein receptor−related protein 1B及びD−beta−hydroxybutyrate dehydrogenase mitochondrial precursorからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、キット。
  5. 前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4、Eml5、Slc7a9、Gcnt2、Anks1b、BB267006、vav2 oncogene、Cyp4x1、Mgat5及びTmem171からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、請求項4に記載のキット。
  6. 前記リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子が、Omt2a、Scn11a、Iqub、Hoxd1、Pet2、Spo11、Aff4及びEml5からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である、請求項4又は5に記載のキット。
  7. リン脂質ヒドロペルオキシド依存性細胞死関連遺伝子に対するプローブを備えたDNAアレイである、請求項4〜6のいずれか一項に記載のキット。
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