以下、SAW(Surface Acoustic Wave)センサの共振周波数検出装置の幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態において、同一又は類似の動作を行う構成については、同一又は類似の符号を付している。なお、下記の各実施形態で説明した対応する構成は十の位と一の位に同一符号を付している。これらの対応する構成は互いに同様の機能を備えるため、その個別又は各要素間で連携して実行される機能説明を必要に応じて省略している。
(第1実施形態)
図1〜図10は第1実施形態の説明図を示す。図1に示すセンシングシステム1は、外的に与えられる歪みに応じて変形するように配置されたSAW共振器2と、このSAW共振器2に接続された共振周波数検出装置3と、を備える。図2は図1に示すセンシングシステム1の具体的な電気的構成例を示す。
共振周波数検出装置3は、変調信号生成部としての変調信号生成器4、加算器5、発振器6を備える送信器7と、ダウンコンバート部としてのミキサ8、フィルタ9、スイッチ10a、10b、位相比較部としてのミキサ11、フィルタ12、及び、演算器13を備える受信器14と、を備える。また、受信器14と送信器7との間には調整器(Calibration)15が周波数調整部として構成されている。また、送信器7と受信器14との間には抵抗16が補助回路として接続されている。また、アンテナ17がSAW共振器2と送信器7及び受信器14との間に介在して設けられている。
送信器7の変調信号生成器4は、例えば狭帯域FM変調用の所定の変調周波数の変調信号として交流信号を出力する。加算器5は、変調信号生成器4の変調信号(例えばAC電圧)と受信器14の演算器13の出力信号(例えばDC電圧)とを重畳し制御信号Vctrlとして発振器6に出力する。発振器6は、例えばVCO(Voltage- Controlled Oscillator)により構成され、加算器5から入力された信号を制御信号Vctrlとして入力してキャリア周波数fcを制御し、その制御後の例えば狭域周波数変調された信号をミキサ8に出力すると共に抵抗16及びアンテナ17を通じてSAW共振器2に出力する。
発振器6は、後述する受信器14から入力されるDC成分が変化すると当該DC成分に応じてキャリア周波数fcを変化させ、変調信号生成器4の変調信号が変化すると変調周波数fmodを変化させる。発振器6の出力ノードをノードN1、アンテナ17と受信器14を構成するミキサ8との共通接続ノードをノードN2とすると、これらのノードN1とノードN2との間には抵抗16が補助回路として接続されている。
SAW共振器2は、ノードN2側にアンテナ17を介在して接続され、SAW素子19を備える。SAW素子19は、圧電体基板(符号なし)上に導波器20および反射器21を備え、アンテナ17を通じて入力された送信信号VTXを、導波器20からSAW素子19の基板に伝搬させる。この伝搬信号は反射器21において反射し再びアンテナ17を通じてノードN2の側に出力される。アンテナ17は、例えば互いに対向する導波線路により構成でき、一般的な伝送線路として扱うことができる。アンテナ17は誘導性アンテナまたは共振型アンテナを用いて構成することもできる。
SAW共振器2を通じて反射された受信信号VRXは、その振幅と位相がSAW共振器2の送受信伝達関数に応じて送信信号VTXの周波数成分の各周波数毎に変化することになる。後述する受信器14は、受信信号VRXの振幅、及び、送信信号VTXと受信信号VRXとの位相差を検出し、これらの検出信号に基づいて共振周波数frを求めることで、当該共振周波数frに依存して変化するSAW共振器2に印加された歪み(物理量に相当)を検出できる。
受信信号VRXは、受信器14のミキサ8に出力される。ミキサ8は、ノードN1及びノードN2に与えられる信号を乗算することで、SAW共振器2からの受信信号VRXを送信信号VTXによりダウンコンバートし、キャリア周波数fcの成分を打消し合わせる。フィルタ9は、例えばBPF(Band-Pass Filter)により構成され、ミキサ8によりダウンコンバートされた後の信号について、変調周波数fmodの成分を通過させ不要成分をカットする処理を行うように構成され、不要成分(例えばDC成分、変調周波数fmodの2倍の成分等)をカットする。
フィルタ9とミキサ11との間にはスイッチ10aが構成されている。また変調信号生成器4とミキサ11との間にはスイッチ10bが構成されている。これらのスイッチ10a、10bは制御回路22によりオン及びオフ制御可能に構成される。制御回路22は例えば論理回路又は/及びマイクロコンピュータなどを用いて構成される。
通常動作モードでは、制御回路22はスイッチ10a及び10bを共にオン制御する。スイッチ10a及び10bがオンされると、ミキサ11は変調信号生成器4の出力信号とフィルタ9の出力信号とをミキシングし位相を比較する。そして、ミキサ11はこの位相の比較結果となる信号をフィルタ12に出力する。このミキサ11は、原理的に、変調周波数fmodの成分を打ち消し合わせるように動作する。
フィルタ12は、例えばLPF(Low-Pass Filter)により構成され、DC成分を通過して不要成分となる変調周波数fmodの2倍の成分をカットし演算器13に出力する。演算器13は、フィルタ12の出力を時間積分する。加算器5は、この位相差に応じたDC成分を変調信号生成器4の出力信号に加算して発振器6に制御信号Vctrlとして出力する。発振器6は、この制御信号Vctrlに応じてキャリア周波数fcを調整出力する。これらの一連の処理は、発振器6が出力するキャリアのキャリア周波数fcがSAWセンサ2の共振周波数frに収束するまで繰り返される。
本実施形態では、前記の通常動作モードの他に調整モードが設けられている。この調整モードは、通常動作モードに入る前に事前に実行されるモードである。この調整モードでは、制御回路22はスイッチ10a及び10bを共にオフ制御すると共に調整器15を有効動作させる。調整器15は、スイッチ10a及び10bがオフされた状態において、受信器14のフィルタ9の出力信号をポートP1に入力すると共に、送信器7の変調信号生成器4の変調周波数fmodの信号をポートP2に入力し、これらの信号の変調周波数fmodの位相差ΔφBPFfmodを検出する。そして調整器15は、変調周波数fmodの位相差ΔφBPFfmodを検出すると、この検出成分に応じて、ポートP3から変調信号生成器4に変調周波数fmodの周波数変更を指令する。また、調整器15は、ポートP4から加算器5に例えばDC信号をキャリア周波数調整指令信号として印加可能に構成されており、加算器5にキャリア周波数調整指令信号を出力することで、発振器6の出力のキャリア周波数fcを調整可能になっている。
まず、前記構成の意義について数式を用いて説明を行う。この方式では発振器6の出力する発振信号に例えば狭域のFM変調波を用いることで、SAW共振器2の反射特性のピーク周波数fpeakを知ることができる。まず、発振器6の出力信号C(t)を(1)式のように定義する。ここでfcはキャリア周波数を示し、φは初期位相角を示し、ATXは送信信号のキャリア周波数成分の振幅を示す。
このとき、変調信号生成器4の出力信号の変調周波数をf
mod、変調指数をmf、とし、信号波をS(t)=cos(2πf
mod・t)とすれば、FM変調波を下式のように表すことができる。そして、例えば狭帯域FM変調であると仮定し、Δfを最大周波数偏移としたときのβ=Δf/f
modを1より十分小さい値と仮定し、さらに初期位相角φを0と仮定し、(1)式を用いて展開すると(2)式のように定義できる。
さらにβ<<1であるため(3−1)式及び(3−2)式が成立する。
このため、FM変調波(2)式は(4)式のように展開できる。
すなわち、FM変調波は、(4)式の第1項のキャリア周波数f
cの成分(以下、成分SI0と称す)、第2項の(キャリア周波数f
c−変調周波数f
mod)成分(以下、成分SI1と称す)、第3項の(キャリア周波数f
c+変調周波数f
mod)成分(以下、成分SI2と称す)、の3つの周波数成分によって近似して表すことができる。
このとき、SAW共振器2を通じて受信されるFM変調波の受信信号VRX(=VFMRx(t))は(5)式のように定義できる。ここで、成分SI0の振幅をATX・A0、成分SI1の振幅をATX・β・A1/2、成分SI2の振幅をATX・β・A2/2とし、成分SI0の位相差をΔθ0、成分SI1の位相差をΔθ1、成分SI2の位相差をΔθ2として表している。
ミキサ8は、これらの(5)式の信号と(6)式の信号とをミキシングし、(6−1)式に示すV
FMRxConv(t)を得る。この結果として周波数を低域側に変換処理できる。フィルタ9は、DC成分SI1及び変調周波数f
modの2倍の周波数成分SI2を除去するため、フィルタ9の通過後の変調周波数f
modの成分は(6−2)式のように表すことができる。
フィルタ9は(6−2)式に示される変調周波数f
modの成分を取得しミキサ11に出力する。ミキサ11は、送信用の変調周波数f
modの信号成分と、この受信信号V
FMRxConv(t)の変調周波数f
modの成分とを混合することで周波数変換処理する。ここで、ミキサ11に入力される変調周波数f
modの成分は(6−2)式で表される。また変調周波数f
modの成分はS(t)=cos(2πf
mod・t)であるため、ミキサ11が例えばミキシングしてダウンコンバートすることで下記の(7)式のように表される信号を得る(V
FMRxConvConv(t)参照)。
フィルタ12は、このうちDC成分を通過し変調周波数f
modの2倍(2×f
mod)の成分をカットする。DC成分は(8)式のように表される。
この(8)式に示されるDC成分が、演算器13を通じて加算器5にフィードバックされる。(8)式のDC成分は、振幅積(−A
TX・A
TXβ・A
1)/8と位相差(Δθ
1)の余弦値との乗算値と、振幅積(−A
TX・A
TXβ・A
2)/8と位相差(Δθ
2)の余弦値との乗算値と、を加算した成分を示している。
この(8)式が表す周波数依存性の傾向を図2〜図4に示している。図2はキャリア周波数fcがピーク周波数fpeaka、fpeakbよりも低い周波数であるときの(8)式の内容の説明図を示している。なお、振幅特性と位相差の余弦値特性とではピーク周波数fpeaka、fpeakbが互いに異なることもあるため、それぞれ変数fpeaka、fpeakbとしているが概ね同じ周波数となるため、以下の説明では同一周波数であると仮定して説明を行う。図3はキャリア周波数fcがピーク周波数fpeaka、fpeakbと同一周波数であるときの(8)式の内容の説明図を示し、図4はキャリア周波数fcがピーク周波数fpeaka、fpeakbよりも高い周波数であるときの(8)式の内容の説明図を示す。
キャリア周波数fc<ピーク周波数fpeaka、fpeakbのときには、図2に示すように(8)式の第1項の負値が第2項の正値より絶対値が大きくなるため(8)式の示す電圧VOUTは負値となる。キャリア周波数fc>ピーク周波数fpeaka、fpeakbのとき、図4に示すように(8)式の第1項の負値が第2項の正値より絶対値が小さくなるため(8)式の示す電圧VOUTは正値となる。キャリア周波数fc=ピーク周波数fpeaka、fpeakbのとき、図3に示すように(8)式の第1項の負値と第2項の正値とは絶対値が同一となるため(8)式の示す電圧VOUTは0となる。このようにしてキャリア周波数fcをピーク周波数fpeaka、fpeakbに一致させることができる。
以下、理論上の説明を行う。SAW共振器2の反射特性S11が1次傾斜すると仮定し、この(8)式を展開すると、下記の(9)式のように示すことができる。
この(9)式が表す振幅と位相の反射特性S11を図5に示す。(9)式に示すαは、XとSQRT(X^2+Y^2)のなす角であり、SQRTはルート演算を示す。また、SAW共振器2の反射特性S11が1次傾斜であると仮定すれば、(Δθ
2+Δθ
1)/2、(A
1+A
2)の値は変調周波数f
modに依存しないため定数と見做すことができる。また(Δθ
2−Δθ
1)/2は変調周波数f
modに比例する。このためkを正の定数としてk×f
modと置く。またこの(9)式のαの値は変調周波数f
modの増加に伴い単調減少することになる。このときの関係性を図6に示している。上述の条件から、Yは定数となるがXは変化することになる。(9)式のαの値を、lを正の定数として−l×f
modと置く。このとき(9)式は(10)式のように置き換えることができる。
理論上、あるキャリア周波数f
cに応じた電圧V
OUTのDC成分は変調周波数f
modの余弦値に比例する関数で表すことができ、(10)式中の(k+l)×f
mod=0°又は180°のときにフィルタ12の出力のDC成分の大きさを最大にできる。
以下では、この原理を考慮した本実施形態の特徴点を説明する。発振器6がロック可能な予め定められたロッキングレンジでは、前述したように、あるキャリア周波数fcに応じた電圧VOUTのDC成分はcosΔφBPFfmodの関数を用いて表すことができる。ここで言及したロッキングレンジは、実回路の実現性を考慮し共振周波数frを算出可能に予め定められた周波数範囲であり、システムを構成する要素に応じて設定される。また位相差ΔφBPFfmodはフィルタ9の出力信号と変調信号生成器4の変調信号との位相差を示す。図7から図9は、キャリア周波数fcがピーク周波数より低い場合において、位相差ΔφBPFfmodが0°、90°、180°のときの、変調周波数fmodの信号とフィルタ9の出力との位相関係を表すと共に、キャリア周波数fcの変化に応じた電圧VOUTの関係性を表す図である。
ここで位相差ΔφBPFfmodが90°に近いと、図8に示すようにキャリア周波数fcの変化に応じた電圧VOUTのDC出力変化が最小となる。このような特性が得られるときには、共振周波数frを調整するための感度が悪化する。この結果、この電圧VOUTを用いたとしても共振周波数frの調整制御性が悪くなってしまう。
逆に、位相差ΔφBPFfmodが0°又は180°に近くなると、キャリア周波数fcの変化に応じた電圧VOUTのDC出力が大きく変化するため、共振周波数frの調整精度を高くできる。すなわちキャリア周波数fcの変化に応じた電圧VOUTの振幅特性を極力大きくするように、位相差ΔφBPFfmodまたは変調周波数fmodを制御する機能を搭載させると良い。キャリア周波数fcの変化に応じた電圧VOUTの出力変化を最大に制御することにより、SAW共振器2を最大感度で使用でき最大精度の特性を得ることができる。SAW共振器2を最大感度で使用できれば、受信器14の入力段に別途増幅器を構成しなくても良くなり、常に最大精度でSAW共振器2を使用できる。しかも、この構成を量産したとしても、複数のSAW共振器2の信号強度のバラつきも抑制できる。
なお、図7の位相差ΔφBPFfmod=0°の場合と図9の位相差ΔφBPFfmod=180°の場合とでは、電圧VOUTのキャリア周波数fcの依存性が共振周波数frを中心として特性が逆転することに留意する。本実施形態の図1は、キャリア周波数fcを共振周波数frより予め低くして、位相差ΔφBPFfmod=0°を調整目標値として調整制御する場合について例示している。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図10は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態において、まず制御回路22がステップS1において調整モードに入る。制御回路22はステップS2においてスイッチ10a及び10bをオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路22は、ステップS3において調整器15を有効動作させる。
このときロッキングレンジ内においてキャリア周波数fcが共振周波数frに一致していると、フィルタ9の出力VOUTの振幅が0に近い値になる。このため、初期状態において位相差ΔφBPFfmodを測定可能にするため、ステップS3a及びS3bの処理を行うことでキャリア周波数fcを調整することが望ましい。
例えば、調整器15は、ステップS3aにおいて、フィルタ9の出力VOUTの振幅が0を超える所定値を跨いだか否かを判定する。この条件を満たさないときには、ステップS3bにおいて、フィルタ12の出力VOUTの振幅が所定値を跨ぎ、且つ共振周波数frより低い値になるようにキャリア周波数fcを調整する。ここでは、位相差ΔφBPFfmod=0°を調整目標値として調整するため、共振周波数frより低い値になるようにキャリア周波数fcを調整する。
他方、位相差ΔφBPFfmod=180°を調整目標値とするときには、例えば図10のステップS3bにおいて共振周波数frより高い値となるようにキャリア周波数fcを調整すると良い。調整器15は、ステップS3a、S3bの条件を満たした上で、ステップS4の処理に移行する。
調整器15は、フィルタ9の出力信号と変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔφBPFfmodを検出し、この検出成分に応じてポートP3から変調信号生成器4に変調周波数fmodの周波数変更を指令することで、ステップS4において変調周波数fmodを調整できる。
ステップS4において、調整器15が位相差ΔφBPFfmodの検出処理と周波数変更指令処理とを繰り返し実行することで、位相差ΔφBPFfmodを例えば0°にするように変調信号生成器4の変調周波数fmodを制御できる。実際には、位相差ΔφBPFfmodが0°を中心とした所定範囲内の適正値になれば調整器15による制御処理をストップする。
その後、制御回路22はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器15を無効化する。また制御回路22は、ステップS7においてスイッチ10a及び10bをオン制御し閉ループ状態を形成する。そして、ステップS8において通常動作する。通常動作モードにおいては、送信器7が送信信号VTXをSAW共振器2に送信し、受信器14がSAW共振器2を介して受信信号VRXを受信する。これにより、SAW共振器2の特性に合わせて変調信号生成器4の変調周波数fmodの周波数を制御でき、SAW共振器2の本来持っている精度を極力活用できる。調整器15の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、調整器15が位相差ΔφBPFfmodに応じて変調信号生成器4の変調周波数fmodを調整するように構成した。この結果、フィルタ12の出力変化のキャリア周波数依存性を最大にすることができ、SAW共振器2を最大感度で使用でき最大精度の特性を得ることができる。この結果、検出信号を確実に得られると共に良好な特性を得られる。
送信器7の発振器6は、キャリアに狭帯域周波数変調された信号をSAW共振器2に送信し、受信器14は、送信器7の送信信号VTXとSAW共振器2からの受信信号VRXの振幅および位相差θrに応じた信号をフィードバックし、変調周波数fmodの変調信号に重畳し、送信器7の発振器6は、変調信号にフィードバック信号が重畳された信号を制御信号Vctrlとして信号を発振させキャリア周波数fcを共振周波数frに収束させるようにしている。これにより、SAW共振器2の共振周波数frを精度良く検出でき、実用性の高いSAW共振器2の共振周波数検出装置3を提供できる。
(第2実施形態)
図11及び図12は第2実施形態の追加説明図を示す。第2実施形態は、変調信号生成器4の変調信号を位相シフトする移相器を設け、調整器が移相器による位相シフト量を調整する形態を示す。
第2実施形態のセンシングシステム101の共振周波数検出装置103は、図11に示すように、調整器15に代わる調整器115が位相調整部として設けられると共に、移相器123がさらに設けられている。調整器115のポートP1はフィルタ9の出力に接続されると共に、ポートP2は移相器123の出力に接続され、調整器115のポートP3は移相器123の制御端子に接続されている。移相器123は、変調信号生成器4と調整器115との間で且つ変調信号生成器4とスイッチ10bとの間に接続されている。調整器115は、調整モードにおいて、フィルタ9の出力信号と変調信号生成器4が生成する変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔφBPFfmodを検出すると、この検出成分に応じてポートP3から移相器123の制御端子に位相シフト量の絶対値又はその前回からの変化量を指令する。移相器123は、調整器115から指令を受付けると位相シフト量を設定する。変調信号生成器4が変調信号を出力すると、移相器123が前述で設定された位相シフト量だけ変調信号を移相し、調整器115に出力する。また、スイッチ10bが制御回路22によりオンされていれば、移相器123の出力はミキサ11に入力される。その他の構成は前述実施形態と同様であるため説明を省略する。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図12は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路22はステップS1において調整モードに入る。制御回路22はステップS2においてスイッチ10a及び10bをオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路22は、ステップS3において調整器115を有効動作させる。調整器115は、初期のステップS3a、S3bの処理を行った後、ステップS4aにおいて、フィルタ9の出力信号と変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔφBPFfmodを検出し、この検出成分に応じてポートP3から移相器123に位相シフト量の絶対値又はその前回からの変化量を指令する。これにより、調整器115がステップS4aにおいて移相器123の位相シフト量を調整できる。
ステップS4aにおいて、調整器115がこの位相差ΔφBPFfmodの検出処理と移相器123に対する位相シフト量の変更指令処理とを繰り返し実行することにより、位相差ΔφBPFfmodを0°にするように移相器123による位相シフト量を制御できる。実際には、位相差ΔφBPFfmodが0°を中心とした所定範囲内の適正値になれば調整器115による調整処理をストップする。
その後、制御回路22はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器115を無効化する。また制御回路22は、ステップS7においてスイッチ10a及び10bをオン制御し閉ループ状態を形成する。そして、ステップS8において通常動作する。送信器7が送信信号VTXをSAW共振器2に送信し、受信器14がSAW共振器2を介して受信信号VRXを受信する。SAW共振器2の特性に合わせて予め移相器123の位相シフト量を制御しているため、SAW共振器2の本来持っている精度を極力活用できる。調整器115の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、調整器115が、フィルタ9の出力信号と変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔBPFfmodに応じて移相器123による位相シフト量を調整するように構成した。この結果、フィルタ12の出力変化の周波数依存性を最大にすることができ、SAW共振器2を最大感度で使用でき最大精度の特性を得ることができる。この結果、検出信号を確実に得られると共に良好な特性を得られる。
(第3実施形態)
図13及び図14は第3実施形態の追加説明図を示す。この第3実施形態は、第1実施形態の構成における補助回路としてコンデンサなどの容量性回路を用いた形態を示している。
第2実施形態のセンシングシステム201の共振周波数検出装置203は、図13に示すように、図1の構成に比較して補助回路としての抵抗16に代わるコンデンサ116を備えている。このコンデンサ116は送信信号VTXの送信ノードN1と受信信号VRXの受信ノードN2との間に接続されている。コンデンサ116がこれらのノードN1及びN2間に構成されていると、フィルタ12のDC出力のキャリア周波数特性をブロード又はシャープに変化させることができることが確認されている。
図14は補助回路として容量素子を用いてシミュレーションしたときのDC成分出力の周波数特性FX1〜FX3を概略的に示す図である。この図14はSAW共振器2のインピーダンスZsを所定周波数(数百MHz)で誘導性としたときのシミュレーション結果を示している。コンデンサ116の容量値が大小調整されると、DC成分出力のキャリア周波数fcに対する勾配変化を調整可能にできることを確認している。すなわち、ロッキングレンジを広くするには、特性FX1に示すように容量値を値C3のように小さくすると良く、ロッキングレンジを狭くしても精度を高めるのであれば、特性FX3に示すように容量値を値C1のように大きくすることが望ましい。両者のトレードオフ特性を採用するのであれば、容量値を値C2(但しC1>C2>C3)のように設定することが望ましい。これにより、前述実施形態と同様の作用効果が得られるようになると共に、設計の自由度を向上でき、アプリケーションに応じて当該特性を選択できるようになる。これにより実用性の高いSAW共振器2の共振周波数検出装置を提供できる。
(第4実施形態)
図15は第4実施形態の追加説明図を示す。この第4実施形態は、第2実施形態の構成における補助回路としてコンデンサ116などの容量性回路を用いた形態を示している。第4実施形態のセンシングシステム301の共振周波数検出装置303は、図15に示すように、図11の構成に比較して補助回路としての抵抗16に代わるコンデンサ116を備えている。詳細説明は省略するが、この第4実施形態においても第2実施形態及び第3実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第5実施形態)
図16及び図17は第5実施形態の追加説明図を示す。本実施形態では、SAW共振器402としてSAW素子419a、419bを2つ設けた形態を示している。SAW共振器402は環境温度変化に依存して伝搬特性が変化する。この温度依存特性をキャンセルするため、歪み、温度の2つの物理量を検出可能なように、SAW共振器402としてはSAW素子419a、419bを2つ用いることが望ましい。
図16に示すように、SAW共振器402は、複数のSAW素子419a、419bを並列接続して構成される。SAW素子419a、419bは、互いに共振周波数fr1、fr2の異なる共振型のSAW素子により構成される。SAW素子419aは、圧電体基板(符号なし)上に導波器20a及び反射器21aを備え、アンテナ17を通じて入力された送信信号VTXをSAW素子419aの基板に伝搬し反射器21aにて反射し、再びアンテナ17を通じて受信信号VRXの入力ノードN102の側に出力する。SAW素子419bもまた、圧電体基板(符号なし)上に導波器20b及び反射器21bを備え、アンテナ17を通じて入力された送信信号VTXをSAW素子419bの基板に伝搬し反射器21bにて反射し再びアンテナ17を通じて受信信号VRXの入力ノードN102の側に出力する。
図16に示す第5実施形態のセンシングシステム401の共振周波数検出装置403が、第1実施形態のセンシングシステム1の共振周波数検出装置3と異なるところは、図1における、加算器5、発振器6、ミキサ8、フィルタ9、スイッチ10a、10b、ミキサ11、フィルタ12、演算器13を、それぞれのSAW素子419a、419bに適した形態で、2組ずつ2系統設けているところである。以下、第1系統のSAW素子419aに対応して構成された第1送信器407a及び第1受信器414aと、第2系統のSAW素子419bに対応した構成された第2送信器407b及び第2受信器414bと、を分けて説明する。以下では、構成説明と共に通常動作モードにおける信号の流れを説明する。
第1送信器407aは、変調周波数fmodの変調信号を生成する変調信号生成器4、加算器405a、及び、発振器406aを備える。第2送信器407bは、変調信号生成器4、加算器405b、及び、発振器406bを備える。発振器406a、406bは例えば電圧制御発振器(VCO)により構成される。これにより、変調信号生成器4は、第1送信器407aと第2送信器407bとで共用でき、部品点数を削減できる。また、加算器405a、405b及び発振器406a、406bは、第1実施形態で説明した加算器5、発振器6とそれぞれ同一機能を示す構成である。
本実施形態以降の2つのSAW素子419a、419bを用いる形態では、発振器406a、406bの出力信号の振幅が互いに異なるように設定される。この理由は、発振器406a、406bの出力信号の位相差が仮に180°になっているときには、互いに信号が打ち消されるためである。すなわち、この無信号又は極小信号状態を回避するため、発振器406a、406bの出力信号の振幅が互いに異なるように設定されている。
第1受信器414aは、ダウンコンバージョン部としてのミキサ408a、フィルタ409a、スイッチ410aa、410ab、位相比較器としてのミキサ411a、フィルタ412a、及び、演算器413aを接続して構成される。第2受信器414bもまた、ダウンコンバージョン部としてのミキサ408b、フィルタ409b、スイッチ410ba、410bb、位相比較器としてのミキサ411b、フィルタ412b、及び、演算器413bを接続して構成される。これらのミキサ408a、408b、フィルタ409a、409b、スイッチ410aa、410ab、410ba、410bb、ミキサ411a、411b、フィルタ412a、412b、及び、演算器413a、413bは、第1実施形態で説明したミキサ8、フィルタ9、スイッチ10a、10b、ミキサ11、フィルタ12、及び、演算器13とそれぞれ同一機能を示す構成であると共にその接続形態も同様であるため、その説明を省略する。
変調信号生成器4が生成する変調周波数fmodの変調信号は、加算器405a,405bを通じて発振器406a、406bにそれぞれ入力される。加算器405aは、変調信号生成器4の変調信号(例えばAC電圧)とフィルタ412aから演算器413aを通じて出力される信号(例えばDC電圧)とを重畳し、制御信号Vctrl1として発振器406aに出力する。発振器406aは、加算器405aから入力された信号を制御信号Vctrl1として入力し、キャリア周波数fc1を制御し、その制御後の狭帯域周波数変調された信号を送信信号VTX1の出力ノードN401aに出力する。この送信信号VTX1はミキサ408aに入力される。
他方、加算器405bもまた、変調信号生成器4の変調信号(例えばAC電圧)とフィルタ412bから演算器413bを通じて出力される信号(例えばDC電圧)とを重畳し制御信号Vctrl2として発振器406bに出力する。発振器406bは、加算器405bから入力された信号を制御信号Vctrl2として入力し、キャリア周波数fc2を制御し、その制御後の狭帯域周波数変調された信号を送信信号VTX2の出力ノードN401bに出力する。この送信信号VTX2はミキサ408bに入力される。
本実施形態においては、これらの発振器406a、406bの出力信号を加算する加算器423をさらに備える。加算器423は、2つの発振器406a、406bの出力信号を加算して抵抗16を通じてSAW共振器402に印加する。加算器423は2つの発振器406a、406bにより出力される信号を加算して抵抗16を通じてノードN102に出力する。SAW共振器402は、このノードN102の信号を入力し、SAW素子419a、419bを伝搬した信号をノードN102に出力する。
ミキサ408aは、受信器414aの入力信号及び発振器406aの出力信号を混合することで、受信信号VRX1を送信信号VTX1によりダウンコンバート処理し、キャリア周波数fc1の成分を打ち消し合わせる。ミキサ408bは、受信器414bの入力信号及び発振器406bの出力信号を混合することで、受信信号VRX2を送信信号VTX2によりダウンコンバート処理し、キャリア周波数fc2の成分を打ち消し合わせる。これにより、これらのミキサ408a、408bの出力信号の周波数成分は、それぞれ変調周波数fmodの成分が主成分となる。
フィルタ409aは、変調周波数fmodの成分を通過させるためのフィルタであり、DC成分、変調周波数fmodの2倍の成分等の不要成分をカットする。スイッチ410aaが制御回路422によりオン制御されていれば、このフィルタ409aの出力信号はスイッチ410aaを通じてミキサ411aに出力される。同様に、フィルタ409bは、変調周波数fmodの成分を通過させるためのフィルタであり、DC成分、変調周波数fmodの2倍の成分等の不要成分をカットする。スイッチ410baが制御回路422によりオン制御されていれば、このフィルタ409bの出力信号はスイッチ410baを通じてミキサ411bに出力される。スイッチ410abが制御回路422によりオン制御されていると、変調信号生成器4の出力信号がミキサ411aに与えられる。スイッチ410bbが制御回路422によりオン制御されていると、変調信号生成器4の出力信号がミキサ411bに与えられる。
位相比較器となるミキサ411aは、変調信号生成器4の出力信号とフィルタ409aの出力信号とを混合し、変調周波数fmod成分の位相を比較し、位相比較信号をフィルタ412aに出力する。ミキサ411aは変調周波数fmodの成分を打ち消しあう。ミキサ411bもまた、変調信号生成器4の出力信号とフィルタ409bの出力信号とを混合し、変調周波数fmodの成分の位相を比較し、位相比較信号をフィルタ412bに出力する。ミキサ411bは変調周波数fmodの成分を打ち消しあう。
フィルタ412aはDC成分を通過して変調周波数fmodの2倍の成分等の不要成分をカットして演算器413aに出力し加算器405aにフィードバックする。フィルタ412bはDC成分を通過し変調周波数fmodの2倍の成分等の不要成分をカットして演算器413bに出力し加算器405bにフィードバックする。
加算器405aは、位相差に応じた位相差成分を変調信号生成器4の出力信号に加算して発振器406aに制御信号Vctrl1として出力する。発振器406aは、この制御信号Vctrl1に応じてキャリア周波数fc1を調整して加算器423及びミキサ408aに出力する。加算器405bは、位相差に応じた位相差成分を変調信号生成器4の出力信号に加算して発振器406bに制御信号Vctrl2として出力する。発振器406bは、この制御信号Vctrl2に応じてキャリア周波数fc2を調整して加算器423及びミキサ408bに出力する。
これらの一連の処理は、発振器406aが出力するキャリアのキャリア周波数fc1がSAW共振器402を構成するSAW素子419aの共振周波数fr1に収束するまで繰り返されると共に、発振器406bが出力するキャリアのキャリア周波数fc2がSAW共振器402を構成するSAW素子419bの共振周波数fr2に収束するまで繰り返される。
この結果、第1系統の受信器414aは、第1系統のSAW素子419aの送受信伝搬特性に応じた位相情報を検出でき、これに応じてキャリア周波数fc1を調整できる。また、第2系統の受信器414bは、第2系統のSAW素子419bの送受信伝搬特性に応じた位相情報を検出でき、これに応じてキャリア周波数fc2を調整できる。このようにして、キャリア周波数fc1、fc2をそれぞれ異なる共振周波数fr1、fr2に調整できる。
本実施形態においても、前記の通常動作モードの他に調整モードが設けられている。この調整モードでは、制御回路422はスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbを共にオフ制御すると共に調整器415を有効動作させる。これらのスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbがオフされると、調整器415は、受信器414aのフィルタ409aの出力信号をポートP1に入力すると共に、変調信号生成器4の変調信号をポートP2に入力して受け付け、調整器415は、これらの各信号の変調周波数fmodにおける位相差ΔφBPF1fmodを算出する。
また、調整器415は、受信器414bのフィルタ409bの出力信号をポートP3に入力すると共に、変調信号生成器4の変調信号をポートP4に入力して受け付ける。ポートP2とポートP4の入力信号は同一であり、調整器415は、これらのポートP3とポートP4の各信号の変調周波数fmodにおける位相差ΔφBPF2fmodを算出する。そして調整器415は、変調周波数fmodの位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodを算出した後、この算出成分に応じてポートP5から変調信号生成器4に変調周波数fmodの周波数変更を指令する。詳細例は後述する。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図17は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路422は、ステップS1において調整モードに入る。制御回路422は、ステップS2においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路422は、ステップS3において調整器415を有効動作させる。調整器415は、ポートP7及びP8を備える。ポートP7は加算器405aに接続されており発振器406aのキャリア周波数fcの変更指令を出力するポートである。ポートP8は加算器405bに接続されており発振器406bのキャリア周波数fcの変更指令を出力するポートである。
調整器415は、初期のステップS3a及びS3bにおいて、ポートP7及びP8を通じてキャリア周波数fcの調整処理を行った後、ステップS4bにおいて、変調信号生成器4の変調信号とフィルタ409aの出力信号との位相差ΔφBPF1fmod、変調信号生成器4の変調信号とフィルタ409bの出力信号との位相差ΔφBPF2fmodを算出し、この算出成分に応じて、ポートP5から変調信号生成器4に変調周波数fmodの周波数変更を指令する。調整器415が、ステップS4bにおいて、位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodの検出処理と周波数変更指令処理とを繰り返し実行することで、位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodを共にある所定範囲の適正値とするように変調周波数fmodの周波数を制御できる。
その後、制御回路422はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器415を無効化する。また制御回路422は、ステップS7においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオン制御し閉ループ状態を形成する。そして、ステップS8において通常動作する。送信器407が送信信号VTX1、VTX2をSAW共振器402に送信し、受信器414a、414bがSAW共振器402を介して受信信号VRX1、VRX2を受信する。これにより、SAW共振器402の特性に合わせて変調信号生成器4の変調周波数fmodの周波数を制御でき、SAW共振器402の本来持っている精度を極力活用できる。調整器415の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。
以下、詳細例を説明する。図17のステップS4bにおいて、調整器415が、これらの変調信号生成器4の変調信号とフィルタ409aの出力信号との位相差ΔφBPF1fmod、変調信号生成器4の変調信号とフィルタ409bの出力信号との位相差ΔφBPF2fmodに応じて周波数変更指令する方法としては、様々な手法を考慮できるが、一例として、以下の図18に示す方法を採用することが望ましい。
図18に示すように、調整器415は、ステップT0において、例えば位相差ΔφBPF1fmodから位相差ΔφBPF2fmodを減算した差分値Δφ21を算出する。この後、調整器415は、これらの算出値を条件として処理を変更する。
例えば、調整器415は、ステップT1において、差分値Δφ21が0°以上90°以下を満たすか、又は、差分値Δφ21が270°以上360°以下を満たすとき、ステップT2において、位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1の調整目標値を0°、180°、360°の何れかとする。そして、調整器415は、これらの0°、180°、360°の何れかの値付近になるようにステップT5において変調周波数fmodを変更指令する。
また、調整器415は、ステップT1の条件を満たさないときには、ステップT3において差分値Δφ21が90°以上270°以下を満たすと判断し、位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1の調整目標値を90°、270°の何れかとする。そして調整器415は、これらの90°、270°の何れかの値付近になるようにステップT5において変調周波数fmodを変更指令する。なお、差分値Δφ21が境界値(例えば90°、270°)に一致するときには、ステップT2、T4の何れの調整目標値0°、90°、180°、270°、360°を用いても良い。
調整器415は、ステップT6において、これらの位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodが共に適切な所定範囲内になると当該調整処理を抜けるが、適切な所定範囲内に調整できなければステップT0に戻り処理を繰り返す。
図19及び図20はこの処理の意義の説明を概略的に示す。図19には、ステップT1の0°≦Δφ21≦90°の条件を満たすと共に、調整器415が位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1を180°に調整する例を示している。例えば、位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1が180°に補正されると、0°≦Δφ21≦90°の条件を満たしていれば、cosΔφBPF1fmod、cosΔφBPF2fmodが何れもcos135°の値以下となる。
すなわち、cosΔφBPF1fmodの絶対値も、cosΔφBPF2fmodの絶対値も、双方共にcos45°=√2/2以上の値にすることができ、これらの絶対値の加算値を2×cos45°以上にできる。
また図20には、ステップT3における90°≦Δφ21≦270°の条件を満たすと共に、調整器415が位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1を90°に調整する例を示している。例えば、位相差ΔφBPF1fmod及びΔφBPF2fmodの加算値の2分の1が90°に補正されると、90°≦Δφ21≦270°の条件を満たしていれば、図20に示すように、これらの位相差が90°を超えることになる。このため、これらのcosΔφBPF1fmod又はcosΔφBPF2fmodの何れか一方がcos45°以上の値となり、この他方がcos135°以下の値となる。
したがって、cosΔφBPF1fmodの絶対値も、cosΔφBPF2fmodの絶対値も双方共に|cos45°|=|cos135°|=√2/2以上の値とすることができ、これらの絶対値の和を2×|cos45°|以上にできる。
本実施形態によれば、2つのSAW素子419a、419bを使用した場合においても、キャリア周波数fc1、fc2をそれぞれ独立して共振周波数fr1、fr2に調整でき、この結果、歪み及び温度に応じた2つの物理量のパラメータを導出することができ、歪みの温度依存性などの2つの物理量やその相関関係等を求めることができる。
本実施形態によれば、変調信号生成器4を2系統の送信器407a、407bで共用するように構成し、差分値Δφ21が0°≦Δφ21≦90°又は270°≦Δφ21≦360°の条件を満たすときには、0°、180°、360°の何れかを調整目標値とすると共に、差分値Δφ21が90°≦Δφ21≦270°の条件を満たすときには、90°、270°の何れかを調整目標値とし、これらの調整目標値に応じて変調周波数fmodを調整するようにした。したがって、調整モードにおいて、cosΔφBPF1fmodの絶対値も、cosΔφBPF2fmodの絶対値も適切な範囲に設定して調整できるようになり、通常動作モードにおいてキャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ412a、412bの何れの出力変化も極力大きくできる。これにより前述実施形態と同様の作用効果が得られる。
(第6実施形態)
図21及び図22は第6実施形態の追加説明図を示す。第6実施形態が第5実施形態と異なるところは、変調信号生成器504a、504bを、第1系統の送信器507a、第2系統の送信器507bにそれぞれ設けたところにある。
第6実施形態のセンシングシステム501の共振周波数検出装置503は、複数(例えば2つ)のSAW素子419a、419bに対応するように送信器507a、507b及び受信器414a、414bを備える。
これらの送信器507a、507b及び受信器414a、414bは2系統設けられている。送信器507aは、変調信号生成器504a、加算器405a、発振器406aを備え、送信器507bは、変調信号生成器504b、加算器405b、発振器406bを備える。発振器406a、406bの出力振幅は互いに異なるように構成される。
調整器415に代わる調整器515はポートP1〜P6を備える。調整器515のポートP1〜P4は調整器415のポートP1〜P4と同一機能であるため説明を省略する。調整器515のポートP5は変調信号生成器504aに変調周波数fmod1の値の指令又は変更指令を送信するポートであり、ポートP6は変調信号生成器504bに変調周波数fmod2の値の指令又は変更指令を送信するポートである。制御回路522は調整器515の有効/無効を制御し、スイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオン/オフ制御する。その他の構成は、前述した第5実施形態に係る構成と同様又は類似の機能を備える構成であるため説明を省略する。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図22は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路522はステップS1において調整モードに入る。制御回路522は、ステップS2においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路522は、ステップS3において調整器515を有効動作させる。調整器515は、初期のステップS3a及びS3bにおいてポートP7及びP8を通じてキャリア周波数fcの調整処理を行った後、ステップS4cにおいて、フィルタ409aの出力信号と変調周波数fmod1の変調信号との位相差ΔφBPF1fmodを算出しこの算出成分に応じて、ポートP5から変調信号生成器4に変調周波数fmod1の周波数変更を指令する。また、調整器515は、ステップS4dにおいて、フィルタ409bの出力信号と変調周波数fmod2の変調信号との位相差ΔφBPF2fmodを算出しこの算出成分に応じて、ポートP6から変調信号生成器4に変調周波数fmod2の周波数変更を指令する。
調整器515が、この位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodの検出処理と周波数変更指令処理とを繰り返し実行することで、位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodが共にある所定範囲の適正値とするように変調周波数fmod1、fmod2の周波数を調整制御できる。
その後、制御回路522はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器515を無効化する。また制御回路522は、ステップS7においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオン制御し閉ループ状態を形成する。そしてステップS8において通常動作する。送信器507a、507bが送信信号VTX1、VTX2をSAW共振器402に送信し、SAW共振器402を介して受信器414a、414bが受信信号VRX1、VRX2をそれぞれ受信する。これにより、SAW共振器402の特性に合わせて変調信号生成器504a、504bの変調周波数fmod1、fmod2を制御でき、SAW共振器402の本来持っている精度を極力活用できる。調整器515の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第7実施形態)
図23及び図24は第7実施形態の追加説明図を示す。第7実施形態は、第2実施形態に係る図11の構成を2系統設けたところに特徴を備えるもので、第5実施形態に係る図16の構成を基本構成として図16と異なる部分について説明し、同一構成部分には同一符号を付し必要に応じて説明を省略する。
第7実施形態のセンシングシステム601の共振周波数検出装置603は、複数(例えば2つ)のSAW素子419a、419bに対応するように送信器407a、407b及び受信器414a、414bを備える。
本実施形態では、第1系統のSAW素子419aに対応するように図11の移相器123に代わる移相器623aを備え、第2系統のSAW素子419bに対応するように移相器623bを備える。
調整器415に代わる調整器615はポートP1〜P8を備える。調整器615のポートP1〜P4、P7、P8は調整器415のポートP1〜P4、P7、P8と同一機能であるため説明を省略する。調整器615のポートP5は移相器623aに位相シフト量の指令の絶対値又は前回からの変更指令を送信するポートであり、ポートP6は移相器623bに位相シフト量の指令の絶対値又は前回からの変更指令を送信するポートである。制御回路622は、調整器615の有効/無効を制御し、スイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオン/オフ制御する。その他の構成は、前述実施形態(例えば第2、第5、第6実施形態)に係る構成と同様又は類似の機能を備える構成であるため説明を省略する。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図24は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路622はステップS1において調整モードに入る。制御回路622は、ステップS2においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路622は、ステップS3において調整器615を有効動作させる。調整器615は、初期のステップS3a及びS3bにおいてポートP7及びP8を通じてキャリア周波数fcの調整処理を行った後、ステップS4eにおいて、フィルタ409aの出力信号と変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔφBPF1fmodを算出しこの算出成分に応じて、ポートP5から移相器623aの位相シフト量を調整するように指令する。また、調整器615は、ステップS4fにおいて、フィルタ409bの出力信号と変調周波数fmodの変調信号との位相差ΔφBPF2fmodを算出しこの算出成分に応じて、ポートP6から移相器623bの位相シフト量を調整するように指令する。
調整器615が、この位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodの検出処理と位相シフト量の調整指令処理とを繰り返し実行することで、位相差ΔφBPF1fmod、ΔφBPF2fmodが共にある所定範囲の適正値とするように変調周波数fmod1、fmod2の周波数を制御できる。
その後、制御回路622はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器615を無効化する。また制御回路622は、ステップS7においてスイッチ410aa、410ab、410ba及び410bbをオン制御し閉ループ状態を形成する。そしてステップS8において通常動作する。送信器407a、407bが送信信号VTX1、VTX2をSAW共振器402に送信し、SAW共振器402を介して受信器414a、414bが受信信号VRX1、VRX2をそれぞれ受信する。これにより、SAW共振器402の特性に合わせてミキサ411a、411bに与える変調周波数fmod1、fmod2の位相を制御でき、SAW共振器402の本来持っている精度を極力活用できる。調整器615の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏するものとなり、本実施形態の構成においても、変調信号生成器4を送信器407a、407bで共用できる。
(第8実施形態)
図25及び図26は第8実施形態の追加説明図を示す。第8実施形態は、調整器715がフィルタ12の出力に応じて変調信号生成器4の変調周波数fmodを調整する形態を示す。
第8実施形態のセンシングシステム701の共振周波数検出装置703は、例えば1つのSAW素子19に対応するように送信器7及び受信器714を備える。送信器7の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。受信器714が、第1実施形態の受信器14と異なるところはスイッチ710の挿入位置である。スイッチ710は、フィルタ12の出力と演算器13との間に接続されている。また、第1実施形態の図1の構成と異なるところは、スイッチ10a、10bが設けられておらず、変調信号生成器4の変調信号が直接ミキサ11に入力されている点も異なる。制御回路22に代わる制御回路722が、通常動作モードに入るとスイッチ710をオン制御する。この通常動作モードでは第1実施形態と同様に作用することになる。
他方、制御回路722が調整モードに入るとスイッチ710をオフ制御する。この調整モードでは、制御回路722はスイッチ710をオフ制御して調整器715を有効動作させる。スイッチ710がオフされると、調整器715は、ポートP2においてフィルタ12の出力VOUTを検出できる。また調整器715は、ポートP1からDC信号を加算器5に出力することで、加算器5を通じて送信器7のキャリア周波数fcを変更可能になっている。また調整器715は、ポートP3から変調信号生成器4の変調周波数fmodを変更可能になっている。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図26は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路722はステップS1において調整モードに入る。制御回路722は、ステップS2においてスイッチ710をオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路722は、ステップS3において調整器715を有効動作させる。
調整器715は、ステップS11においてポートP1からDC信号を出力することにより発振器6に与える制御信号Vctrlを変更し発振器6のキャリア周波数fcをスイープ、すなわち掃引させ、このときのフィルタ12の出力VOUTを検出する。この出力VOUTは、キャリア周波数fcに応じて変化する。調整器715は、ステップS11において出力VOUTがある所定値を跨いだことを条件として、ステップS12において、この条件を満たすキャリア周波数fcでキャリア周波数制御を停止する。逆にステップS11において所定値を跨がないときには、ステップS10において変調周波数fmodの値を一定値(例えば10kHz)変更し、フィルタ12の出力VOUTが所定値を跨いでステップS12においてキャリア周波数制御を停止するまでステップS10及びS11の処理を繰り返す。
次いで、調整器715は、ステップS13において、フィルタ12の出力VOUTが最大になるときのキャリア周波数fcにおいて、変調周波数fmodをスイープしフィルタ12の出力VOUTを検出しメモリ715aに記憶させる。
そして、調整器715は、ステップS14において、これらの検出結果のうち、キャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ12の出力VOUTが最大変化量となる条件を満たす変調周波数fmodを決定する。例えばフィルタ12の出力VOUTの最大値、最小値が最大幅となる条件を満たす変調周波数fmodを決定する。これにより、キャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ12の出力変化を最大とするように変調周波数fmodを決定できる。実際には、フィルタ12の出力VOUTの最大値が所定範囲内の適正値になれば、調整器715によるステップS11〜S14の繰り返し制御処理をストップしても良い。
その後、制御回路722はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器715を無効化する。また制御回路722は、ステップS7においてスイッチ710をオン制御し閉ループ状態を形成する。そして、ステップS8において通常動作する。送信器7が送信信号VTXをSAW共振器2に送信し、受信器14がSAW共振器2を介して受信信号VRXを受信する。これにより、SAW共振器2の特性に合わせて変調信号生成器4の変調周波数fmodの周波数を制御でき、SAW共振器2の本来持っている精度を極力活用できる。調整器715の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第9実施形態)
図27及び図28は第9実施形態の追加説明図を示す。第9実施形態は、調整器815がフィルタ12の出力に応じて変調信号生成器4の位相シフト量を調整してミキサ11に与える形態を示す。
第9実施形態のセンシングシステム801の共振周波数検出装置803は、例えば1つのSAW素子19に対応するように送信器7及び受信器714を備える。送信器7及び受信器714の構成は第8実施形態の図25の構成と同様であるため説明を省略する。第2実施形態と異なるところは、スイッチ10a、10bが設けられておらず、さらに変調信号生成器4の変調信号が移相器823を介在してミキサ11に入力されている点である。制御回路22に代わる制御回路822が、通常動作モードに入るとスイッチ710をオン制御する。この場合、第2実施形態の通常動作モードと同様の作用を行う。
他方、制御回路822が調整モードに入るとスイッチ710をオフ制御する。この調整モードでは、制御回路822はスイッチ710をオフ制御すると共に調整器815を有効動作させる。スイッチ710がオフされると、調整器815はポートP2においてフィルタ12の出力VOUTを検出できる。また調整器815は、ポートP1からDC信号を発振器6の制御信号Vctrlとして出力し加算器5を通じて送信器7のキャリア周波数fcを変更可能になっている。また調整器815は、ポートP3から移相器823の位相シフト量を指令し、当該移相器823により変調信号生成器4の変調信号の位相シフト量を変更可能になっている。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図28は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まず制御回路822はステップS1において調整モードに入る。制御回路822はステップS2においてスイッチ710をオフ制御し開ループ状態を形成する。制御回路822は、ステップS3において調整器815を有効動作させる。
調整器815は、ステップS11においてポートP1からDC信号を出力することにより発振器6に与える制御信号Vctrlを変更し発振器6のキャリア周波数fcをスイープさせ、このときのフィルタ12の出力VOUTを検出する。この出力VOUTは、キャリア周波数fcに応じて変化する。調整器815は、ステップS11において出力VOUTがある所定値を跨いだことを条件として、ステップS12において、この条件を満たすキャリア周波数fcでキャリア周波数のスイープ制御を停止する。逆に、ステップS11において所定値を跨がないときには、ステップS10aにおいて位相シフト量を一定値(例えば90°)変更し、フィルタ12の出力VOUTが所定値を跨いでステップS12においてキャリア周波数のスイープ制御を停止するまで、ステップS10a及びS11の処理を繰り返す。次いで、調整器815は、ステップS13aにおいて、フィルタ12の出力VOUTが最大になるときのキャリア周波数fcにおいて位相シフト量をスイープし、フィルタ12の出力VOUTを検出しメモリ815aに記憶させる。
そして、調整器715は、ステップS14aにおいて、これらの検出結果のうち、キャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ12の出力VOUTが最大変化量となる条件を満たす位相シフト量を決定する。例えばフィルタ12の出力VOUTの最大値、最小値が最大幅となる条件を満たす位相シフト量を決定する。これにより、キャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ12の出力変化を最大とするように位相シフト量を決定できる。実際には、フィルタ12の出力VOUTの最大値が所定範囲内の適正値になれば、調整器815によるステップS11〜S14aの繰り返し制御処理をストップしても良い。
その後、制御回路822はステップS5において通常動作モードに入ると、ステップS6において調整器815を無効化する。また制御回路822は、ステップS7においてスイッチ710をオン制御し閉ループ状態を形成する。そして、ステップS8において通常動作する。送信器7が送信信号VTXをSAW共振器2に送信し、SAW共振器2を介して受信器714が受信信号VRXを受信する。これにより、SAW共振器2の特性に合わせて変調信号生成器4の変調信号の移相器823による位相シフト量を制御でき、SAW共振器2の本来持っている精度を極力活用できる。調整器815の有効、無効処理は必要に応じて設ければ良い。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第10実施形態)
図29及び図30は第10実施形態の追加説明図を示す。第10実施形態は、送信器7を1系統設けると共に、この送信器7に対し受信器914a、914bを2系統設け、変調周波数fmodを固定とし、位相比較器となるミキサ(例えば911a、911b)に入力させる変調信号の位相シフト量を互いに異なるように設定しているところに特徴を備える。
図29に示すように、第10実施形態のセンシングシステム901の共振周波数検出装置903は、SAW共振器2に対応するように送信器907及び受信器914a、914bを備える。送信器907の構成は第2実施形態と同様である。受信器914aは、ミキサ908a、フィルタ909a、ミキサ911a、フィルタ912a、演算器913aを縦続接続して構成されており、受信器914bは、ミキサ908b、フィルタ909b、ミキサ911b、フィルタ912b、演算器913bを縦続接続して構成される。これらの受信器914a、914bは各構成要素を並列接続して構成される。送信器7は、受信器914a、914bのミキサ908a、908bに送信信号VTXを出力し、SAW共振器2、アンテナ17を介して受信される受信信号VRXをミキサ908a、908bにそれぞれ入力する。また、変調信号生成器4の変調信号は例えばミキサ911a、911bに入力される。
この構成の他に移相器923、スイッチ回路926、及び、スイッチ910a、910bが設けられている。移相器923は、変調信号生成器4の変調信号を予め定められた所定角度(例えば90°付近)だけシフトし、第2系統のミキサ911bに変調信号を出力する。すなわち、第1系統の受信器914aと第2系統の受信器914bとは入力する変調信号の位相が互いに異なっている。スイッチ910aは、フィルタ912aの出力と演算器913aとの間に接続されており、スイッチ回路926からオンオフ制御可能になっている。スイッチ910bは、フィルタ912bと演算器913bとの間に接続されており、スイッチ回路926からオンオフ制御可能になっている。
スイッチ回路926は、例えば論理回路などにより構成される。スイッチ回路926は、ポートP11〜P16を備える。ポートP11は演算器913aから信号を入力するポートであり、ポートP12は演算器913bから信号を入力するポートである。また、ポートP13、P14は、加算器5に接続されており、発振器6のキャリア周波数fcを調整するためのノードである。なお、第1系統のポートP11からの信号を受付けたときにはポートP13から指令し、第2系統のポートP12から信号を受付けたときにはポートP14から指令する。ポートP15はフィルタ912aの出力を入力するポートであり、ポートP16はフィルタ912bの出力を入力するポートである。
スイッチ回路926は、通常モードにおいて、スイッチ910a又は910bの何れかをオン制御し他方をオフ制御することで、受信器914a、914bの演算器913a、913bの何れかの出力信号をポートP11又はP12に入力し、この信号をポートP13又はP14から加算器5に出力し、この結果、位相差成分を変調信号生成器4の変調信号に重畳させることでキャリア周波数fcを調整可能になっている。
スイッチ回路926は、調整モードに入るとスイッチ910a、910bをオフ制御する。この調整モードでは、スイッチ回路926による選択制御が有効化され、スイッチ910a、910bがオフされると、スイッチ回路926はポートP15においてフィルタ912aの出力VOUTを有効に検出できる。またスイッチ回路926はポートP16においてフィルタ912bの出力VOUTを有効に検出できる。
次に、調整モード及び通常動作モードの流れを説明する。図30は流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態では、まずスイッチ回路926はステップU1において調整モードに入る。スイッチ回路926はステップU2においてスイッチ910a、901bをオフ制御し開ループ状態を形成する。スイッチ回路926は、ステップU3において選択制御を有効化する。
スイッチ回路926は、ステップU4において例えばポートP3からDC信号を出力することにより発振器6に与える制御信号Vctrlを変更し発振器6のキャリア周波数fcをスイープさせる。そして、スイッチ回路926は、ステップU5においてフィルタ912a、912bの出力の変化が大きい経路、系統の受信器914a又は914bを選択する。これにより、キャリア周波数fcの変化に応じたフィルタ912a、912bの出力VOUTの変化の大きい受信器914a又は914bを選択できる。
その後、スイッチ回路926は、ステップU6において通常動作モードに入ると、ステップU7において調整制御を無効化する。またスイッチ回路926は、ステップU8において、ステップU5にて選択された経路、受信器に対応したスイッチ910a又は910bをオン制御し、その他方のスイッチをオフのまま保持し、これにより閉ループ状態を形成する。そして、ステップU9において通常動作する。送信器7が送信信号VTXをSAW共振器2に送信し、SAW共振器2を介して受信器914a又は914bが受信信号VRXを受信する。これにより、SAW共振器2の特性に合わせて経路、系統を選択することができ、SAW共振器2の本来持っている精度を極力活用できる。本実施形態によっても前述実施形態と同様の作用効果を奏すると共に、検出信号が全く得られないという不具合を防止できる。また、スイッチ回路926は、スイッチ910a、910bの何れかをオンとしその他をオフに切替えることで受信器914a又は914bを選択するため、簡便に構成することができる。本実施形態によっても、前述実施形態と同様の作用効果が得られるものとなる。
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。なお、各実施形態に係る構成は必要に応じて組み合わせて構成しても良い。
ダウンコンバージョン部としてミキサ8等を用いた形態を示したが、送信信号VTXと受信信号VRXとを混合して周波数変換可能な構成であればどのような構成を用いても良い。例えば、ダウンコンバージョン部として包絡線検波器などを用いて変調周波数fmodを検出可能にしても良い。フィルタ9は必要に応じて設ければ良い。
位相差検出部としてミキサ11等を用いた形態を示したが、変調信号生成器4等とフィルタ9の出力を混合して位相差を検出可能な構成でればどのような構成を用いても良い。例えば、A/D変換処理して信号を読み取り、位相差を検出することも可能である。位相差検出部は、ミキサ11と共にフィルタ12を備えるものと考慮しても良いし、さらに演算器13を備えるものと考慮しても良い。
第1実施形態では、変調信号生成器4の変調信号を狭域FM変調波と仮定した理論上の式を示したが、この変調信号生成器4の変調信号は狭域変調波に限定されるものではない。
例えば第1実施形態等の第5実施形態以外の実施形態には、位相差ΔφBPFfmod=0°を調整目標値として制御するための構成を例示した。第1実施形態に説明したように、図7の位相差ΔφBPFfmod=0°の場合と図9の位相差ΔφBPFfmod=180°の場合とでは、電圧VOUTのキャリア周波数fcの依存性が共振周波数frを中心として特性が逆転する。そのため、受信器(例えば14)に、受信信号VRXの極性を反転させるための構成(例えば反転増幅器)を付加すれば良い。この詳細説明は省略する。したがって、位相差ΔφBPFfmod=180°を調整目標値として制御する場合も前述実施形態と同様の構成及び作用効果を奏するものとなる。また、0°又は180°を調整目標値として制御する形態を示しているが、実用的には、この0°又は180°を含む所定範囲内を調整目標値として制御しても良い。
第10実施形態では、受信器914a、914bを2つ設けた形態を示したが、3以上の複数設けても良い。
その他、3以上の複数のSAW素子に対応して3以上の送信器及び受信器をそれぞれ設けた形態に適用しても良い。