以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、入退場管理システム1の構成例を示す説明図である。入退場管理システム1は、特定の場所へのユーザの入退場を管理するシステムである。入退場管理システム1は、ユーザが所持する情報媒体から改札処理に用いる改札情報を取得し、取得した改札情報に基づいて情報媒体を所持するユーザの通行の可否を判定する。入退場管理システム1は、人体通信装置2、及び入退場管理装置(例えば改札装置)3などを備える。
人体通信装置2は、人体通信装置2を所持するユーザの体(以下人体と称する)を通信媒体として他の機器と通信(人体通信)を行う。人体通信装置2は、アンテナによって人体に電界を印加して人体に電流を誘起させる。これにより人体通信装置2は、人体を通信媒体として通信信号を伝搬させることができる。また、人体通信装置2は、他の機器から人体に伝搬された通信信号によって生じる電界をアンテナによって検出する。これにより、人体通信装置2は、人体を伝搬する通信信号を取得することができる。
また、人体通信装置2は、改札情報を記憶した情報媒体としての非接触式のICカード4と通信を行う。人体通信装置2は、人体通信に用いられる上記のアンテナによってICカード4と無線通信を行う。
入退場管理装置3は、ユーザが所持する人体通信装置2またはICカード4と通信を行い、ユーザの通行の可否を判定する。入退場管理装置3は、一対の筐体11、ドア12、リーダライタ13、及び制御装置14を備える。一対の筐体11は、並行に配置されることによって、通路15を構成する。ドア12は、筐体11の通路15側に設けられ、制御装置14の制御に基づいて回動することにより通路15を塞ぐ。
また、例えば、リーダライタ13は、ユーザが所持する人体通信装置2またはICカード4と通信を行い、改札情報を取得する。リーダライタ13は、ユーザが所持する人体通信装置2と人体通信を行う。例えば、リーダライタ13は、第1の周波数で所定の範囲に電界を発生させてこの範囲内のユーザの人体に電流を誘起させる。これにより、リーダライタ13は、人体を介してユーザが携帯している人体通信装置2に通信信号を送信する。また、例えば、リーダライタ13は、所定の範囲に入ったユーザの人体に伝搬している通信信号によって誘起された電界を検出する。これにより、リーダライタ13は、人体を介して人体通信装置2から送信された通信信号を取得する。なお、第1の周波数は、一般的に人体通信に用いられる周波数帯域であり、例えば150KHz乃至数十MHzの範囲内である。
また、例えば、リーダライタ13は、ユーザが所持するICカード4と無線通信を行う。リーダライタ13は、第2の周波数で所定の範囲に電界を発生させ、この範囲内に存在するICカード4内のアンテナに通信信号を誘起させる。これにより、リーダライタ13は、無線通信によってICカード4に通信信号を送信する。また、例えば、リーダライタ13は、所定の範囲内に存在するICカード4のアンテナによって変調された電界を検出する。これにより、リーダライタ13は、無線通信によってICカード4から送信された通信信号を取得する。なお、第2の周波数は、一般的に非接触式のICカードに用いられるISMバンドの周波数帯域であり、例えば中心周波数が13.56MHz、27.12MHz、及び40.68MHzである。
制御装置14は、リーダライタ13により取得した改札情報に基づく改札処理を行う。例えば、制御装置14は、改札情報に基づいて通路15をユーザが通行することを許可するか否かを判定し、判定結果に基づいてドア12の動作を制御する。制御装置14は、通路15をユーザが通行することを許可する場合にドア12を動作させず、通路15をユーザが通行することを許可しない場合に通路15を塞ぐようにドア12を動作させる。
次に一実施形態に係る人体通信装置2について図2乃至図9を用いて詳細に説明する。
図2及び図3は、人体通信装置2の構成例について説明する為の説明図である。図2は、人体通信装置2の外観について説明する為の説明図である。図3は、人体通信装置2の制御系について説明する為の説明図である。
人体通信装置2は、筐体21を備え、筐体21にはカードスロット22、及び回路部23を備える。筐体21は、人体通信装置2の各部を収容する。また、筐体21は、人体の衣服の上から、または肌に直接人体通信装置2を装着する為の機構を備えていてもよい。例えば、筐体21は、人体に人体通信装置2を固定する為の部材(例えばベルトなど)を備えていてもよい。
カードスロット22は、ICカード4を挿入する為の構造である。カードスロット22は、挿入されたICカード4が脱落しないように固定する為の部材を備えていてもよい。
回路部23は、人体通信装置2の各種の処理を行う回路である。回路部23は、樹脂製の基板上に構成され、筐体21内に収容される。回路部23は、アンテナ部31、人体通信処理部32、ICカード処理部33、スイッチ部34、信号強度検出部35、及びバッテリ36を備える。
アンテナ部31は、ICカード4との無線通信、及び人体を介した人体通信に用いられるアンテナである。アンテナ部31は、人体を介した人体通信に用いられる周波数(第1の周波数)の電波と、ICカード4との無線通信に用いられる周波数(第2の周波数)の電波と、を送受信することができる。アンテナ部31は、例えば基板上の配線パターンによって構成される。
人体通信処理部32は、アンテナ部31を用いて人体通信に関する信号処理を行う。人体通信処理部32の詳細な構成については後述する。
ICカード処理部33は、アンテナ部31を用いてICカード4との無線通信に関する信号処理を行う。ICカード処理部33は、ICカード4に対応した規格により規定された通信処理を行う。例えばICカード処理部33は、ICカード4に対応したISO/IEC14443、ISO/IEC15693、またはISO/IEC18092などの規格に規定された通信処理を行う。ICカード処理部33は、アンテナ部31により第2の周波数の磁界を発生させてカードスロット22に挿入されたICカード4と無線通信を行う。
スイッチ部34は、アンテナ部31と、人体通信処理部32またはICカード処理部33と、の接続を切り替えるスイッチである。スイッチ部34は、アンテナ部31と人体通信処理部32とが接続された状態と、アンテナ部31とICカード処理部33とが接続された状態と、を切り替える。スイッチ部34は、例えば信号強度検出部35による制御に基づいて接続を切り替える。スイッチ部34は、例えばリレースイッチ、または半導体スイッチなどによって構成される。
信号強度検出部35は、特定の周波数の信号強度を検出する。信号強度検出部35は、特定の周波数の信号強度が予め設定された閾値範囲内であるか否かを判定し、判定結果に基づいてスイッチ部34のスイッチを切り替える。信号強度検出部35の詳細な構成については後述する。
バッテリ36は、人体通信装置2の各部に電力を供給する。例えば、バッテリ36は、アンテナ部31と人体通信処理部32とによる人体通信に要する電力、及びアンテナ部31とICカード処理部33とによる無線通信に要する電力をそれぞれ供給する。バッテリ36は、外部の電源供給源と接続されることによって電力を充電する。
図4は、人体通信処理部32の構成例について説明する為の説明図である。人体通信処理部32は、制御部41、信号送信部42、及び信号受信部43を備える。
制御部41は、人体通信処理部32の動作を制御する。制御部41の詳細な構成については後述する。
信号送信部42は、人体通信処理部32からアンテナ部31を介して外部装置へ送信する通信信号を処理し、処理後の通信信号を外部機器へ送信する。信号送信部42の詳細な構成については後述する。
信号受信部43は、外部装置からアンテナ部31を介して人体通信装置2に入力された通信信号を受信し、処理する。信号受信部43の詳細な構成については後述する。
図5は、信号送信部42の構成例について説明する為の説明図である。信号送信部42は、Digital/Analog(D/A)変換部51、送信フィルタ部52、及び電流制限部53を備える。
D/A変換部51は、ディジタル信号をアナログ信号に変換する。D/A変換部51は、制御部41から供給されたデータをアナログ信号に変換する。
送信フィルタ部52は、D/A変換部51により変換されたアナログ信号に対して信号処理を施す。送信フィルタ部52は、例えば、アナログ信号の所定の周波数帯域の信号を減衰させるフィルタリング処理を行う。また、送信フィルタ部52は、例えば、アナログ信号の強度の周波数特性を予め設定された特性に調整する構成であってもよい。
電流制限部53は、送信フィルタ部52により信号処理が施されたアナログ信号に対して制御部41の制御に基づいて処理を施し、処理を施したアナログ信号をアンテナ部31を介して人体に伝搬させる。電流制限部53は、人体にアナログ信号が予め設定されたアンペア以下になるように処理を施す。
図6は、信号受信部43の構成例について説明する為の説明図である。信号送信部42は、リーダライタ13などの外部装置から人体及びアンテナ部31を介して人体通信装置2に送信された通信信号を受信する。信号受信部43は、例えば、人体を伝搬する通信信号により生じた電界に応じてアンテナ部31に誘起された電圧を測定することによって通信信号を取得する。信号受信部43は、Analog/Digital(A/D)変換部61、及び信号処理部62を備える。
A/D変換部61は、信号処理部62から供給されたアナログの信号をデジタルの信号に変換する。A/D変換部61は、デジタル信号を制御部41に供給する。
信号処理部62は、アンテナ部31から供給されたアナログ信号に対して信号処理を施す。信号処理部62は、信号処理を施したアナログ信号をA/D変換部61に供給する。信号処理部62は、少なくとも1つ以上の電圧増幅部63、及び少なくとも1つ以上の受信フィルタ部64を備える。
電圧増幅部63は、アンテナ部31から供給されたアナログ信号を増幅する。即ち、電圧増幅部63は、人体を伝搬する通信信号により生じた電界に応じてアンテナ部31に誘起された電圧を増幅する。電圧増幅部63は、予め設定された増幅度で電圧を増幅する構成であってもよいし、制御部41の制御に基づいて増幅度を可変する構成であってもよい。また、電圧増幅部63は、増幅度が1である電圧フォロワ回路を備える構成であってもよい。
受信フィルタ部64は、アンテナ部31から供給されたアナログ信号の所定の周波数帯域の信号を減衰させるフィルタリング処理を行う。受信フィルタ部64は、例えば、アナログ信号の強度の周波数特性を予め設定された特性に調整する構成であってもよい。受信フィルタ部64は、抵抗、インダクタ、及びキャパシタなどの受動素子が組み合わせられた回路を備える構成であってもよいし、制御部41の制御に基づいて動作するオペアンプなどの能動素子によって構成されたアクティブフィルタを備える構成であってもよい。
図7は、制御部41の構成例について説明する為の説明図である。制御部41は、送信するディジタル信号の生成、受信したディジタル信号の解析、及び記憶領域へのデータの書き込み及び読み出しを行う。また、制御部41は、信号送信部42、及び信号受信部43の動作を制御する。制御部41は、信号送信部42に対してディジタル信号を入力することにより、人体にディジタル信号に応じた通信信号を伝搬させることができる。また、制御部41は、信号受信部43から受信したディジタル信号を解析することにより、人体を介して他の機器から送信されたデータを取得することができる。
制御部41は、例えば、フラッシュメモリ、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)などの記憶領域を持つマイクロコントローラによって構成される。また、制御部41は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)などによって構成されていてもよい。
図7に示すように、制御部41は、動作制御部71と、通信信号演算部72と、を備える。
動作制御部71は、数値演算、及び通信制御のための演算を行う。即ち、動作制御部71は、送信するディジタル信号の生成、信号受信部43から供給されたディジタル信号の解析、並びに記憶領域へのデータの書き込み及び読み出しを行う。動作制御部71は、マイクロコントローラにおけるプログラムとして実装することが可能である。例えば制御部41がFPGAまたはPLDによって構成されている場合、上記のプログラムと同等の動作を行うロジック回路によって動作制御部71が構成されていてもよい。また、マイクロコントローラ動作を行う回路を制御部41が備えることにより動作制御部71が構成されていてもよい。
通信信号演算部72は、送受信を行う際にディジタル信号に対して符号化、復号化、誤り訂正処理、スクランブル処理、及びインターリーブ処理などを行う。アンテナ部31が無線通信と人体通信との両方に対応するように構成されている為、即ち、無線通信と人体通信とでアンテナ部31が共用される為、一面を導体として構成されたアンテナに比べてアンテナ部31の効率が低下する。この為、アンテナ部31により取得するアナログ信号の信号強度が低下する。この為、通信信号演算部72は、通信処理における誤り訂正符号として畳み込み符号、ターボ符号、低密度パリティ検査符号(LDPC符号)などを用いることによって信号の信号対雑音比を改善する。通信信号演算部72は、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)の通信規格であるITU-T G.9902、ITU-TG.9903、及びITU-T G.9907などの通信方式の物理層の仕様に基づいて、上記の符号化、復号化、誤り訂正処理、スクランブル処理、及びインターリーブ処理などの処理を実行する。
図8は、信号強度検出部35の構成例について説明するための説明図である。信号強度検出部35は、アンテナ部31に生じた電圧信号のうちの特定の周波数成分の電圧信号の値が予め設定された閾値範囲内であるか否かに応じてスイッチ部34を切り替える。これにより、信号強度検出部35は、特定の周波数成分の電圧信号の値に応じて、ICカード処理部33によりICカード4と無線通信を行う状態と、人体通信処理部32により人体を介した人体通信を行う状態と、を切り替える。
信号強度検出部35は、信号処理部81、及び信号強度判定部82を備える。
信号処理部81は、アンテナ部31に生じた電圧信号に対して信号処理を施す。信号処理部81は、信号処理を施したアナログ信号を信号強度判定部82に供給する。信号処理部81は、増幅回路部83及びフィルタ部84を備える。
増幅回路部83は、アンテナ部31に生じた電圧信号の信号強度を調整する回路である。増幅回路部83は、特定の周波数の信号強度を調整(増幅)する。例えば、増幅回路部83は、フィルタ部84により抽出される周波数成分の電圧信号を増幅する。例えば、増幅回路部83は、オペアンプまたはトランジスタなどにより構成される。
フィルタ部84は、アンテナ部31に生じた電圧信号のうち特定周波数の成分の電圧信号を抽出する。フィルタ部84は、例えばバンドパスフィルタにより構成される。具体的には、フィルタ部84は、インダクタ、キャパシタ、及び抵抗の組み合わせにより構成されていてもよいし、水晶振動子を用いたフィルタ回路として構成されていてもよい。
フィルタ部84は、例えば、人体通信処理部32が人体通信に使用する通信周波数(上記の第1の周波数)とは異なる特定の周波数の成分をアンテナ部31に生じた電圧信号から抽出する。より具体的には、フィルタ部84は、ICカード処理部33によるICカード4との通信に用いる周波数成分をアンテナ部31に生じた電圧信号から抽出する。即ち、フィルタ部84は、第2の周波数の電圧信号をアンテナ部31に生じた電圧信号から抽出する。フィルタ部84により抽出された電圧信号は、増幅回路部83により増幅されて信号強度判定部82に供給される。
信号強度判定部82は、信号処理部81により信号処理が施された電圧信号の信号強度が、予め設定された閾値範囲内であるか否か判定する。例えば、信号強度判定部82は、信号処理部81により信号処理が施された電圧信号の信号強度(例えば電圧値の実行値)を検出し、検出した信号強度が予め設定された閾値範囲内であるか否か判定する。信号強度判定部82は、例えば、1つ以上のコンパレータにより構成される。
信号強度検出部35は、信号強度判定部82により検出された信号強度が予め設定された閾値範囲内である場合、アンテナ部31とICカード処理部33とが接続されるようにスイッチ部34を制御する。また、信号強度検出部35は、信号強度判定部82により検出された信号強度が予め設定された閾値範囲外である場合、アンテナ部31と人体通信処理部32とが接続されるようにスイッチ部34を制御する。なお、信号強度判定部82が判定結果に応じてスイッチ部34を切り替える構成であってもよいし、信号強度判定部82が判定結果を人体通信処理部32の制御部41に伝送することにより制御部41にスイッチ部34の制御を行わせる構成であってもよい。
図9は、人体通信装置2のスイッチ部34を切り替える動作の例について説明する為のフローチャートである。なお、各処理は、例えば人体通信処理部32が行う構成であってもよいし、人体通信装置2内の各部で分散されて実行されてもよいし、図示されない主制御部によって全ての処理を制御する構成であってもよい。
人体通信装置2の信号強度検出部35は、逐次特定の周波数の信号強度を検出する(ステップS11)。
人体通信装置2は、信号強度検出部35により検出された信号強度が予め設定された閾値範囲内であるか否か判定する(ステップS12)。信号強度検出部35により検出された信号強度が予め設定された閾値範囲内であると判定した場合、(ステップS12、YES)、人体通信装置2は、スイッチ部34を制御してICカード処理部33とアンテナ部31とを接続する(ステップS13)。なお、信号強度検出部35により検出された信号強度が予め設定された閾値範囲外であると判定した場合、(ステップS12、NO)、人体通信装置2は、ステップS16の処理に移行する。
人体通信装置2は、アンテナ部31を介してICカード処理部33とICカード4との間で通信が確立されたか否か判定する(ステップS14)。例えば、ICカード処理部33は、アンテナ部31と接続された場合、アンテナ部31からICカード4を起動する為の搬送波を出力するとともに、ICカード4に対して通信を確立する為のコマンドを送信する。ICカード処理部33は、ICカード4から通信を確立する為のコマンドに対するレスポンスを受信した場合、ICカード4との通信が確立されたと判定する。
アンテナ部31を介してICカード処理部33とICカード4との間で通信が確立されたと判定した場合(ステップS14、YES)、ICカード4と通信を行う(ステップS15)。これにより、ICカード処理部33は、ICカード4に対して種々のコマンドを送信して実行させることができる。なお、アンテナ部31を介してICカード処理部33とICカード4との間で通信が確立されていないと判定した場合(ステップS14、NO)、人体通信装置2は、ステップS16の処理に移行する。
例えば、ICカード処理部33は、人体通信処理部32により入退場管理装置3から受け取ったコマンドをICカード4に送信して実行させる。人体通信処理部32は、ICカード処理部33によりICカード4からレスポンスを取得した場合、取得したレスポンスを人体通信によって入退場管理装置3に送信する。例えば、入退場管理装置3から改札情報を読み取る為のコマンドを受信した場合、ICカード処理部33は、ICカード4にコマンドを送信することによってICカード4に記憶されている改札情報をレスポンスにより取得する。人体通信処理部32は、改札情報を含むレスポンスを人体通信によって入退場管理装置3に送信することにより、入退場管理装置3に改札処理を行わせることができる。
次に人体通信装置2は、アンテナ部31とICカード処理部33との接続を切ってアンテナ部31と人体通信処理部32とを接続し(ステップS16)、ステップS11の処理に戻る。
次に、上記の閾値範囲の設定の仕方について説明する。
図10は、人体(太股)に人体通信装置2を装着した状態で検出される電圧信号の手−太股間での信号減衰量の測定結果を示す。実線は、送信電極を手に接触させ且つ受信電極を太股部分に接触させた場合の周波数に対する信号減衰量の特性の測定結果91を示す。点線は、送信電極を手に接触させ且つ受信電極を太股部分に衣服を介して接触させた場合の周波数に対する信号減衰量の特性の測定結果92を示す。測定にはネットワークアナライザ、およびバラントランスを用いた。電源環境による影響を低減するためにバッテリを用いてネットワークアナライザを駆動した。
測定結果91と測定結果92とを比較すると、例えば周波数13.56MHzの電圧信号の信号減衰量の差は、ほぼ7dBである。この為、衣服を介することによりって電圧信号の減衰量が大きくなることがわかる。
実際に人体通信装置2が運用される場合、人体通信装置2が衣服を介して人体に装着されることが想定される。この為、上記の閾値範囲は、上限と下限とを有し、上限と下限との差が少なくとも7dB以上であることが必要になる。
また、ICカード4が装着された人体通信装置2が入退場管理装置のリーダライタ13に翳された場合、人体通信装置2とリーダライタ13とが近接する為、上記のように衣服を介した場合の信号の減衰が生じない。この為、この場合に人体通信装置2の信号強度検出部35により検出される電圧信号の信号強度から所定量減衰させた信号強度を上記の閾値範囲の上限として設定し、設定した上限から7dB以上減衰させた信号強度を前記閾値範囲の下限として設定する。
このように閾値範囲の上限及び下限を設定することにより、ICカード4が装着された人体通信装置2が入退場管理装置のリーダライタ13に翳された場合に人体通信装置2の信号強度検出部35により検出される電圧信号の信号強度が閾値範囲の上限よりも高くなる。この為、人体通信装置2は、アンテナ部31とICカード処理部33とが接続されず、アンテナ部31と人体通信処理部32とが接続される状態になる。この結果、人体通信装置2に装着されたICカード4は、入退場管理装置のリーダライタ13と直接無線通信を行う。このように、人体通信装置2は、人体通信装置2によりICカード4を起動させる必要が無い場合にアンテナ部31とICカード処理部33との接続を切ってアンテナ部31によるICカード4との無線通信を行わないように制御することにより、電力の消費を抑えることができる。
また、ICカード4が装着された人体通信装置2がユーザの人体に装着されている状態でユーザが通路15に近づいた場合、人体通信装置2の信号強度検出部35により検出される電圧信号の信号強度が閾値範囲の上限未満下限以上になる。この場合、人体通信装置2は、アンテナ部31とICカード処理部33とが接続される状態になる。人体通信装置2の人体通信処理部32は、入退場管理装置と人体通信を行うことによって入退場管理装置から出力された改札処理の為のコマンド(例えば改札情報を読み出す為のコマンド)を取得する。人体通信処理部32は、ICカード処理部33及びアンテナ部31によってICカード4を起動させ、取得したコマンドをICカード4に送信する。ICカード4は、受信したコマンドに応じて処理を行い、レスポンスをアンテナ部31を介してICカード処理部33に送信する。人体通信処理部32は、ICカード処理部33がICカード4から受け取ったレスポンスを人体通信によって入退場管理装置3のリーダライタ13に送信する。この結果、人体通信装置2は、装着したユーザが入退場管理装置に近づいた場合にICカード4と通信可能な状態になる。このように、人体通信装置2は、ICカード4を処理対象とした装置が近傍にあり、且つICカード4の起動に足る電波が供給されていない場合に人体通信装置2によりICカード4を起動させてICカード4に処理を実行させる。これにより、人体通信装置2は、ICカード4を人体通信装置2に収容した状態でICカード4を処理対象とした処理をICカード4に実行させることができる。これにより、ユーザビリティの向上が見込める。
また、ICカード4が装着された人体通信装置2を装着したユーザが入退場管理装置3から離れている場合、即ち、リーダライタ13からの電波が十分に減衰する距離にユーザがいる場合、人体通信装置2の信号強度検出部35により検出される電圧信号の信号強度が閾値範囲の下限未満になる。この場合、人体通信装置2は、アンテナ部31とICカード処理部33とが接続されず、アンテナ部31と人体通信処理部32とが接続される状態になる。このように、人体通信装置2は、人体通信装置2によりICカード4を起動させる必要が無い場合にアンテナ部31とICカード処理部33との接続を切ってアンテナ部31によるICカード4との無線通信を行わないように制御することにより、電力の消費を抑えることができる。
上記したように、人体通信装置2は、ICカード4を処理対象とした装置が近傍に存在するか否かをアンテナ部31に生じる電圧に基づいて検出し、検出結果に応じてICカード4との無線通信を行う状態と行わない状態とを切り替える。この結果、人体通信装置2は、必要に応じてICカード4との無線通信を行うことができる為に、ICカード4との無線通信に要する電力の消費を抑えることができる。これにより、バッテリを小型化することができる為、人体通信装置2の小型化が見込める。
なお、上記の実施形態によると、ICカード処理部33は、カードスロット22に収容されたICカード4と無線通信を行う構成であるとして説明したがこの構成に限定されない。ICカード処理部33は、ICカード4と同等の機能を有するモジュールとして構成されていてもよい。即ち、ICカード処理部33は、ICカード4をエミュレートするプロセッサとメモリとにより構成されていてもよい。
また、上記の実施形態によると、スイッチ部34は、アンテナ部31と人体通信処理部32またはICカード処理部33と、の接続を切り替える構成として説明したがこの構成に限定されない。人体通信処理部32を常時アンテナ部31に接続し、且つアンテナ部31とICカード処理部33との接続を開閉する構成であってもよい。
また、上記の実施形態では、人体通信処理部32とICカード処理部33とを別のモジュールとして説明したがこの構成に限定されない。人体通信処理部32、ICカード処理部33、スイッチ部34、及び信号強度検出部35は、1つの集積回路内に収容されて構成されていてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。