以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線中継システムを含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。本実施形態の無線中継システムは、簡易な構成で、目標位置に移動した後、複数の通信オペレータの移動通信網について固定基地局とユーザ装置との間の無線通信の中継を速やかに開始することができる、時分割中継方式を用いた臨時無線中継システムである。
図1において、本実施形態に係る無線中継システムは、第1無線中継局(以下「親機」ともいう。)10及び第2無線中継局(以下、「子機」ともいう。)20を備える。第1無線中継局(親機)10及び第2無線中継局(子機)20は、無線信号の周波数が互いに異なる複数の通信オペレータ(通信事業者)A,Bの移動通信網80A,80Bのコアネットワークそれぞれに接続されたマクロセル基地局などの複数の固定基地局30A,30Bと、複数の通信オペレータA,Bそれぞれに対応するユーザ装置としての複数の移動局40A,40Bとの間の無線通信を同時に中継する。親機10及び子機20は、GPS衛星からの受信信号などを利用して互いに時間同期されている。
なお、本実施形態では、通信オペレータ(固定基地局)の数が2の場合について説明するが、通信オペレータ(固定基地局)の数は3以上であってもよい。また、図1では、通信オペレータA,Bそれぞれに対応する移動局の数が1であるが、通信オペレータA,Bそれぞれに対応する移動局の数は2以上であってもよい。
移動通信網80A,80Bにはそれぞれ遠隔制御装置81A,81B(制御元)を設けてもよい。遠隔制御装置81A,81Bは、例えば第1無線中継局10及び第2無線中継局20の情報を保持し、第1無線中継局10及び第2無線中継局20の少なくとも一方に制御情報を送信することができる。また、遠隔制御装置81A,81Bは、情報の送信先として機能し、第1無線中継局10及び第2無線中継局20の少なくとも一方から情報を受信してもよい。なお、遠隔制御装置81A,81Bは、第1無線中継局10や第2無線中継局20と通信可能な場所であれば、移動通信網80A,80B以外に設けてもよい。また、第1無線中継局10及び第2無線中継局20の制御は、遠隔制御装置81A,81Bの両方で行ってもよいし、遠隔制御装置81A,81Bのいずれか一方が行うようにしてもよい。また、遠隔制御装置81Cは、各通信オペレータの移動通信網80A,80B以外の共通のネットワーク80C上に設置されてもよい。遠隔制御装置81A,81B,81Cは、例えば、第1無線中継局10と通信可能な、又は、第1無線中継局10及び第2無線中継局20に通信可能な、サーバ、PC若しくはタブレット端末であってもよい。
第1無線中継局10は、通信オペレータA,Bごとに、固定基地局30A,30Bとの間の中継対象の第1周波数(以下、「無線中継周波数」又は「基地局側周波数」ともいう。)F1A(下り信号)及びF1A’(上り信号)(以下、まとめて「F1A/F1A'」と表記する。)並びにF1B(下り信号)及びF1B'(上り信号)(以下、まとめて「F1B/F1B'」と表記する。)の無線信号と、第2無線中継局20との間の通信オペレータに共通の第2周波数(以下「中間周波数」ともいう。)F2(下り信号)及びF2'(上り信号)(以下、まとめて「F2/F2'」と表記する。)の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置であり、車両である自動車50に搭載されることにより地上の目標位置に移動することができる。
本実施形態の無線中継システムにおいて、複数の通信オペレータの固定基地局と移動局との無線通信の中継に、通信オペレータごとに設定した互いに異なる無線中継周波数(第2周波数、中間周波数)を用いる場合、次のような課題がある。
例えば、通信オペレータの数が3であり、通信オペレータ1の第1周波数をF1−1(帯域幅B1、上下回線で2×B1)、通信オペレータ2の第1周波数をF1−2(帯域幅B2、上下回線で2×B2)、通信オペレータ3の第1周波数をF1−3(帯域幅B3、上下回線で2×B3)とした場合、周波数変換後の無線中継周波数(第2周波数、中間周波数)の帯域幅は上下回線で2×(B1+B2+B3)が必要となる。具体的には、B1=B2=B3=20MHzであれば、2×(20Mz+20Mz+20Mz)=120MHzが必要となる。一般に、通信オペレータがN社あり、各通信オペレータの帯域幅がB[MHz]とすれば、上下回線でN×(2×B)=2・N・B[MHz]が必要となる。
上記無線中継周波数が、通信オペレータに割り与えられている周波数でないような場合、上下回線で2・N・Bと新たな周波数を割り与える必要となり、このような多くの周波数を割り与えることは一般には困難である。
また、一つの通信オペレータの無線中継周波数の送信電力をPmとすると、複数の通信オペレータ(通信オペレータの数:N)を同時に送信する場合、無線中継システムの親機から子機に向けてN×Pmの送信電力が必要となる。同様に、子機から親機に向けてN×Pmの送信電力が必要となる。
逆に、親機から子機及び子機から親機に向けた無線中継周波数の総送信電力をPMとすると、一つの通信オペレータの送信電力はPm=PM/Nと小さくなり、無線中継の通信距離が小さくなる。
子機から移動局に向けてのサービスリンクについても、N社の通信オペレータそれぞれの送信電力をPsとおくと、N×Psの送信電力が必要となる。逆に、子機から移動局に向けてのサービスリンクの総送信電力をPSとすると、一つの通信オペレータの送信電力はPs=PS/Nと小さくなり、無線中継のサービスエリアが小さくなる。
そこで、本実施形態では、以下に示すように、複数の通信オペレータの無線中継に時分割中継方式を用いることにより、複数の通信オペレータそれぞれのサービスリンクの周波数帯域について所定の帯域を確保しつつ、複数の通信オペレータの無線中継に用いる周波数帯域を抑制するとともに、親機−子機間の中継距離及び子機−移動局間のサービスエリアを大きくしている。
第1無線中継局10と第2無線中継局20との間の無線中継に用いられる通信オペレータに共通の第2周波数F2/F2'の帯域幅は、通信オペレータA,Bそれぞれの無線通信で必要とされる複数の通信帯域BA,BBの中で最大の帯域幅Bmax(=Max[BA,BB])に設定される。無線中継対象の通信オペレータの数がNであり、i番目(i=1,2,−−−,N)の通信オペレータの通信帯域をBiとした場合、その複数の通信オペレータそれぞれの無線通信で必要とされる複数の通信帯域Bi(i=1,2,−−−,N)の中で最大の帯域幅Bmax(=Max[B1,B2,−−−,BN])に設定される。また、サービスリンクの上り回線及び下り回線で互いに異なる周波数を用いるFDD(周波数分割複信)の場合は、共通の第2周波数F2/F2'全体の帯域幅は、2×Bmaxに設定される。このように共通の第2周波数F2/F2'全体の帯域幅を設定することにより、複数の通信オペレータそれぞれのサービスリンクの周波数帯域について所定の帯域を確保しつつ、複数の通信オペレータの無線中継に用いる周波数(第2周波数F2/F2')の帯域幅を、通信オペレータごとに異なる周波数で無線中継する場合の1/N(N:中継対象の通信オペレータの数)に削減することができる。なお、複数の通信オペレータそれぞれが通信できる時間は時分割的に割り当てられた時間に制限されるが、例えば位置情報の送受信のような短いパケット通信の場合は特に問題はない。また、送受信エラー発生時の再送処理などにより通信品質の低下を回避することができる。
第1無線中継局10が搭載される自動車50は、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など、第1無線中継局10に長時間にわたって電力を供給可能なバッテリーや発電機などを備えているものであってもよい。また、図1の構成例では、第1無線中継局10が自動車50に組み込まれた場合の例であるが、第1無線中継局10が組み込まれる移動体は、道路を走行する自動車以外の車両、線路上を走行する鉄道車両、航空機、又は、河川上若しくは海上の船舶などであってもよい。また、第1無線中継局10が組み込まれる移動体は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター(例えばドローン)など、自律制御により又は外部からの制御により所定の空域に滞在又は移動する飛行体であってもよい。
第2無線中継局20は、通信オペレータA,Bごとに、第1無線中継局10との間の共通の第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号と、移動局40A,40Bとの間の中継対象の第1周波数(以下、「無線中継周波数」又は「移動局側周波数」ともいう。)F1A/F1A',F1B/F1B'の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置であり、自律制御により又は外部からの制御により所定の空域に滞在又は移動するドローンなどの飛行体70に搭載されることにより第1無線中継局10よりも高い位置に位置することができる。この場合、第1無線中継局10が搭載される自動車50は、飛行体70が離発着可能な離発着部を備えてもよい。
また、図2に示すように、第2無線中継局20は、係留気球などの気球60に搭載してもよい。気球60は、固定基地局30A,30Bのアンテナ31A,31Bとの間に無線通信の電波の見通し伝搬の障害になる山や高層ビルディングなどの障害物が存在する、不感地、山岳エリア、海上エリアなどの弱電界エリアの上空に設置してもよい。気球60は、例えば地上から数十m〜数百mの位置に配置されるように、地上のアンカーベースから上空に延びた係留索(主係留索)で係留されて支持される。アンカーベースは、係留索(主係留索)の下端を固定して気球60を係留できるものであればよく、形状や大きさなどは特定のものに限定されない。気球60は、アンカーベースとして第1無線中継局10が搭載される自動車50に係留してもよい。また、気球60を海上の上空に配置する場合、アンカーベースは海上のブイや船舶などに設けてもよい。
第1無線中継局10及び第2無線中継局20それぞれにおいて通信オペレータA,Bごとに変換する第1周波数(中継対象周波数)F1A/F1A',F1B/F1B'及び共通の第2周波数(中間周波数)F2/F2'は、第1無線中継局10で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉及び第2無線中継局20で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉が発生しないように互いに異なる周波数である。例えば、第1周波数(中継対象周波数)F1A/F1A',F1B/F1B'が2.1GHz帯の周波数であり、通信オペレータA,Bに共通の第2周波数(中間周波数)F2/F2'が3.3GHz帯の周波数であってもよい。
図3は、実施形態に係る無線中継システムの第1無線中継局10の主要部構成の一例を示すブロック図である。図3において、第1無線中継局10は、第1無線通信部11と第2無線通信部12と周波数変換部13と各部を制御する制御部14とを備える。
第1無線通信部11は、固定基地局向けの第1アンテナ101を介して固定基地局30A,30Bとの間で基地局側周波数である第1周波数(中継対象周波数)F1A/F1A',F1B/F1B'の無線信号を送受信する。第2無線通信部12は、無線中継局向けの第2アンテナ102を介して第2無線中継局(子機)20との間で第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号を送受信する。第1無線通信部11及び第2無線通信部12はそれぞれ増幅器(例えば、受信用のローノイズ増幅器及び送信用の電力増幅器)を備えてもよい。第1無線通信部11及び第2無線通信部12は、通信オペレータA,Bごとに、周波数変換後の信号電力を複数の通信オペレータA,B間で互いに等しくなるように調整する機能を有してもよい。
周波数変換部13は、通信オペレータA,Bごとに、第1無線通信部11と第2無線通信部12との間で第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'と共通の第2周波数F2/F2'との周波数変換を行う。周波数変換部13は、例えば、第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'を第2周波数F2/F2'に変換する周波数変換器と、第2周波数F2/F2'を第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'に変換する周波数変換器とを用いて構成してもよい。
第1無線中継局10で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE−Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。
第1無線中継局10の第1アンテナ101は、無指向性アンテナでもよいし、複数の通信オペレータA,Bの固定基地局30A,30Bそれぞれの方向に指向性の向きを調整可能な複数の指向性アンテナであってもよい。また、第1無線中継局10の第1アンテナ101は、通信オペレータA,Bの固定基地局30A,30Bそれぞれを追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、固定基地局30A,30Bそれぞれを追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
第1無線中継局10の第2アンテナ102は、無指向性アンテナ、又は、第2無線中継局20を追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、第2無線中継局20を追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
制御部14は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。
また、複数の移動通信網80A,Bの通信オペレータA,Bの遠隔制御装置81A,B(制御元)からの制御情報を受信したり遠隔制御装置81A,Bに情報を送信したりする場合は、制御部14に接続された制御用通信装置15を備えてもよい。制御用通信装置15は、例えば、装置への組み込みが容易な移動通信モジュール等のユーザ端末(移動局)でもよいし、WiFiなどの無線通信により第2無線中継局20と通信可能な無線通信装置であってもよい。
制御部14は、例えば、遠隔制御装置81A,81Bから固定基地局30A,30Bを介して送信されてきた制御情報を制御用通信装置15で受信し、その制御情報に基づいて、通信オペレータA若しくはBの無線中継機能のみ又は通信オペレータA,Bの両方の無線中継機能をON/OFFするように制御してもよい。また、制御部14は、不要な電力を使用しないように、複数の通信オペレータA,Bのうち無線中継をしない通信オペレータの第1無線中継局10及び第2無線中継局の無線通信に関わる回路の電源を全て切る制御を行ってもよい。また、制御部14は、遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置から固定基地局30A,30Bを介して送信されてきた通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報を制御用通信装置15で受信し、その中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、第2無線中継局(子機)20との間の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御してもよい。ここで、遠隔制御装置と制御用通信装置15との間の通信は、例えば遠隔制御装置及び制御用通信装置15それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は、電話番号若しくはMACアドレス)を用いて行ってよい。
また、制御部14は、第1無線中継局(親機)10において手操作などでリアルタイムに入力設定された中継切替指示情報に基づいて、第2無線中継局(子機)20との間の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御したり、その中継切替指示情報を、制御用通信装置15を介して第2無線中継局(子機)20に送信(転送)したりしてもよい。また、制御部14は、遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置から受信した通信オペレータA,Bの中継切替スケジュール情報を、制御用通信装置15を介して第2無線中継局(子機)20に送信(転送)してもよい。
また、制御部14は、制御用通信装置15を介して、第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'からなる固定基地局30A,30Bとの間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す情報や、第2周波数F2/F2'からなる第2無線中継局20との間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報を、移動体通信の通信オペレータA,Bの遠隔制御装置81A,B又は他の共通の遠隔制御装置に送信するように制御してもよい。移動体通信のオペレータ側は、例えば、受信した無線中継情報に基づいて、第1無線中継局10の無線中継機能をON/OFFすることにより、第2無線中継局20への信号をON/OFFすることが可能であり、他の固定基地局のサービスエリアに干渉を及ぼすことが予測される場合はOFFとすることで干渉を及ぼさないように、又は、第2無線中継局20への信号をOFFにすることでノイズが増加しないように、制御することができる。例えば、ドローンが中継場所に到着するまでの間、電波を送信する必要がない時などOFFにして、電波を送信しないように制御することが可能である。
図4は、実施形態に係る無線中継システムの第2無線中継局20の主要部構成の一例を示すブロック図である。図4において、第2無線中継局20は、第1無線通信部21と第2無線通信部22と周波数変換部23と各部を制御する制御部24とを備える。
第1無線通信部21は、無線中継局向けの第1アンテナ201を介して第1無線中継局10との間で第2周波数(中間周波数)F2/F2'の無線信号を送受信する。第2無線通信部22は、移動局向けの第2アンテナ202を介して移動局40A,40Bとの間で移動局側周波数である第1周波数(中継対象周波数)F1A/F1A',F1B/F1B'の無線信号を送受信する。第1無線通信部21及び第2無線通信部22はそれぞれ増幅器(例えば、受信用のローノイズ増幅器及び送信用の電力増幅器)を備えてもよい。第1無線通信部21及び第2無線通信部22は、通信オペレータA,Bごとに、周波数変換後の信号電力を複数の通信オペレータA,B間で互いに等しくなるように調整する機能を有してもよい。
周波数変換部23は、通信オペレータA,Bごとに、第1無線通信部21と第2無線通信部22との間で第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'と共通の第2周波数F2/F2'との周波数変換を行う。周波数変換部23は、例えば、第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'を共通の第2周波数F2/F2'に変換する周波数変換器と、第2周波数F2/F2'を第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'に変換する周波数変換器とを用いて構成してもよい。
第2無線中継局20で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE−Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、固定基地局から届く無線信号と、第2無線中継局20から届く無線信号が遅延が異なるマルチパスと等価となり、複数のパスの無線信号を受信することで良好な通信品質を維持できる。
第2無線中継局20の第1アンテナ201は、第1無線中継局10を追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、第1無線中継局10を追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
制御部24は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。
また、複数の移動通信網80A,Bの通信オペレータA,Bの遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置からの制御情報を受信したり遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置に情報を送信したりする場合は、制御部24に接続された制御部14に接続された制御用通信装置25を備えてもよい。制御用通信装置25は、例えば、装置への組み込みが容易な移動通信モジュールなどのユーザ端末(移動局)25であってもよいし、WiFiなどの無線通信により第2無線中継局20と通信可能な無線通信装置であってもよい。
制御部24は、例えば、遠隔制御装置81A,B又は他の共通の遠隔制御装置から固定基地局30A,B及び無線中継システムを介して送信されてきた制御情報を制御用通信装置25で受信し、その制御情報に基づいて、通信オペレータA若しくはBの無線中継機能のみ又は通信オペレータA,Bの両方の無線中継機能をON/OFFするように制御してもよい。また、制御部24は、不要な電力を使用しないように、複数の通信オペレータA,Bのうち無線中継をしない通信オペレータの第2無線中継局20の無線通信に関わる回路の電源を全て切る制御を行ってもよい。また、制御部24は、遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置から固定基地局30A,30Bを介して送信されてきた通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報を制御用通信装置25で受信し、その中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、第1無線中継局(親機)10との間の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御してもよい。ここで、遠隔制御装置と制御用通信装置25との間の通信は、例えば遠隔制御装置及び制御用通信装置25それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は、電話番号若しくはMACアドレス)を用いて行ってよい。
また、制御部24は、第1無線中継局(親機)10において設定された通信オペレータA,Bの中継切替情報又は中継切替スケジュール情報を制御用通信装置25で受信し、その中継切替情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、第1無線中継局(親機)10との間の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御してもよい。この場合、親機の第1無線中継局10の制御部14が主制御装置(マスター)であり、子機の第2無線中継局20の制御部24が副制御装置(スレーブ)であり、親機の制御部14が子機の制御部24を制御する。親機の制御部14からの制御情報(中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報)により、第1無線中継局(親機)10及び第2無線中継局(子機)20の通信オペレータの切替を同時に行うことができる。
また、制御部24は、制御用通信装置25を介して、共通の第2周波数F2/F2'からなる第1無線中継局10との間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報や、第1周波数F1A/F1A',F1B/F1B'からなる移動局40A,40Bとの間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報を、移動体通信の通信オペレータの遠隔制御装置81A,B又は他の共通の遠隔制御装置に送信するように制御してもよい。
図5は、実施形態に係る無線中継システムのダウンリンク及びアップリンクの双方向無線中継に対応した第1無線中継局(親機)10の一構成例を示すブロック図である。本構成例は、固定基地局側の第1アンテナとして複数の指向性アンテナ101A,101Bを用いた例である。なお、図5において、前述の図3と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
また、図6(a)〜図6(d)は、図5の無線中継システムにおけるダウンリンク及びアップリンクの信号の周波数特性を示す図である。
図6(a)は図5の第1無線中継局(親機)10のダウンリンク信号処理経路における第1アンテナ101A,101Bで受信された各通信オペレータA,Bの第1周波数F1A,F1Bの受信信号SR1A,SR1Bの周波数特性を示す図である。
図6(b)は図5の第1無線中継局(親機)10のダウンリンク信号処理経路における周波数変換後の第2周波数F2の送信信号ST2の周波数特性を示す図である。
図6(c)は図5の第1無線中継局(親機)10のアップリンク信号処理経路における第2アンテナ102で受信された各通信オペレータA,Bの第2周波数F2'の受信信号SR2'の周波数特性を示す図である。
また、図6(d)は図5の第1無線中継局(親機)10のアップリンク信号処理経路における周波数変換後の第1周波数F1A’,F1B’の送信信号ST1A’,ST1B’の周波数特性を示す図である。
また、図7(a)、図7(b)及び図7(c)はそれぞれ、固定基地局30A,30Bと第1無線中継局(親機)10との間、第1無線中継局(親機)10と第2無線中継局(子機)20との間、及び第2無線中継局(子機)20と移動局40A,40Bとの間における周波数利用の様子を示す説明図である。図7(a)及び図7(c)に示すように通信オペレータA,Bのダウンリンク及びアップリンクそれぞれに対して通信帯域BA,BBの互いに異なる周波数F1A,F1A’,F1B,F1B’が割り当てられ合計2×BA+2×BBの帯域を利用している場合、第1無線中継局(親機)10と第2無線中継局(子機)20との間の無線中継の第2周波数F2,F2’で利用される帯域を、上記割当周波数の帯域(2×BA+2×BB)の1/2(=BA+BB)に削減することができる。
図5において、固定基地局側の第1アンテナは、複数の通信オペレータの固定基地局30A,30Bそれぞれに向いた指向性を有する複数の指向性アンテナ101A,101Bで構成されている。指向性アンテナ101A,101Bはそれぞれ、第1無線中継局(親機)10が目的地に移動した後、複数の通信オペレータA,Bの固定基地局30A,30Bそれぞれを追尾するように指向性の向きを調整できるように構成されている。なお、指向性アンテナ101A,101Bは、第1無線中継局(親機)10及び指向性アンテナ101A,101Bを搭載した自動車50の位置情報及び姿勢情報などに基づいて、複数の通信オペレータA,Bの固定基地局30A,30Bそれぞれを追尾するよう指向性の向きを自動制御可能に構成してもよい。
第1無線通信部11は、複数のDUP110A,110Bと、固定基地局側のダウンリンク受信信号処理部であるダウンリンク無線中継切替部118Dと、固定基地局側のアップリンク送信信号処理部であるアップリンク無線中継切替部118Uとを備えている。
ダウンリンク無線中継切替部118Dは、通信オペレータA用の帯域フィルタ114A及び自動ゲイン制御(AGC)機能付きの増幅器111Aと、通信オペレータB用の帯域フィルタ114B及び自動ゲイン制御(AGC)機能付きの増幅器111Bと、通信オペレータ切替部115とを備える。帯域フィルタ(BPF)114A,114Bはそれぞれ、通信オペレータA,Bのダウンリンク信号の周波数F1A,F1Bを選択的に通過させる。増幅器111A,111Bはそれぞれ、帯域フィルタ(BPF)114A,114Bを通過した通信オペレータA,Bの無線中継周波数F1A,F1Bの受信信号の電力を所定電力Prにする。
帯域フィルタ114Aは、図6(a)に示す通信オペレータA,Bのダウンリンクの受信信号SR1A,SR1Bのうち、通信オペレータAの第1周波数F1Aの受信信号SR1Aを選択的に通過させる帯域通過フィルタであり、帯域フィルタ114Bは、通信オペレータBの第1周波数F1Bの受信信号SR1Bを選択的に通過させる帯域通過フィルタである。
通信オペレータ切替部115は、例えば制御部14からの制御信号で切替可能なスイッチで構成され、通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、ダウンリンク信号経路を、帯域フィルタ114A及び増幅器111Aを通過する経路、又は帯域フィルタ114B及び増幅器111Bを通過する経路に切り替えるように制御される。
アップリンク無線中継切替部118Uは、通信オペレータA用の帯域フィルタ116A及び増幅器117Aと、通信オペレータB用の帯域フィルタ116B及び増幅器117Bと、通信オペレータ切替部119とを備える。帯域フィルタ(BPF)116A,116Bはそれぞれ、通信オペレータA,Bのアップリンク信号の周波数F1A’,F1B’を選択的に通過させる。増幅器117A,117Bはそれぞれ、帯域フィルタ(BPF)116A,116Bを通過した通信オペレータA,Bの無線中継周波数F1A’,F1B’の送信信号を所定の電力(信号レベル)まで増幅する。
また、帯域フィルタ116Aは、図6(d)に示す通信オペレータA,Bの周波数変換後の第1周波数F1A’,F1B’のアップリンクの送信信号ST1A',ST1B'のうち、通信オペレータAの第1周波数F1A’の送信信号ST1A'を選択的に通過させる帯域通過フィルタであり、帯域フィルタ116Bは、通信オペレータBの第1周波数F1B’の送信信号ST1B'を選択的に通過させる帯域通過フィルタである。
通信オペレータ切替部119は、制御部14からの制御信号で切替可能なスイッチで構成され、通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、ダウンリンク信号経路を、帯域フィルタ116A及び増幅器117Aを通過する経路、又は帯域フィルタ116B及び増幅器117Bを通過する経路に切り替えるように制御される。
上記通信オペレータ切替部115、119及び制御部14は、第2無線中継局(子機)20との間で複数の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御する切替制御手段を構成する。
また、図5において、周波数変換部13は、ダウンリンク用の周波数変換器131とアップリンク用の周波数変換器132とを備える。周波数変換器131は、ダウンリンク信号処理経路において受信信号SR1A,SR1Bの第1周波数F1A,F1Bを親機−子機中継用の中間周波数である共通の第2周波数F2に変換する。一方、周波数変換器132は、アップリンク信号処理経路において親機−子機中継用の中間周波数である送信信号ST2’の第2周波数F2’を固定基地局用の第1周波数F1A’,F1B’に変換する。
図8(a)及び図8(b)はそれぞれ、図5の第1無線中継局(親機)10における周波数変換器131,132の構成例を示すブロック図である。
図8(a)のダウンリンク用の周波数変換器131は、局部発振器1311と周波数混合器1312とを備え、図5の出力フィルタ126に出力される。出力フィルタ126の通過帯域は、共通の第2周波数(中間周波数)F2が通過するように設定されている。局部発振器1311では、制御部14により通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数が時分割的に切り替えられる。具体的には、通信オペレータAの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2−F1Aに設定され、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2−F1Bに設定されるように切替制御される。このように設定が切り替えられた局部発振周波数の信号とダウンリンク信号(F1A又はF1B)が周波数混合器1312で混合される。図5の出力フィルタ126から出力される信号の周波数は、通信オペレータA,Bのダウンリンク信号のどちらが入力された場合でも、共通の第2周波数(中間周波数)F2になる。
また、図8(b)のアップリンク用の周波数変換器132は、局部発振器1321と周波数混合器1322とを備える。図5の出力フィルタ116Aまたは116Bの通過帯域は、各通信オペレータA,Bのアップリンク信号の第1周波数F1A’及びF1B’が通過するように設定されている。局部発振器1321では、制御部14により通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数が時分割的に切り替えられる。具体的には、通信オペレータAの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1A’−F2に設定され、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1B’−F2に設定されるように切替制御される。このように設定が切り替えられた局部発振周波数の信号と第2周波数(中間周波数)Fの中継信号が周波数混合器1322で混合され、その出力は図5の出力フィルタ116Aまたは116Bに出力される。出力フィルタ116Aまたは116Bから出力される信号の周波数は、通信オペレータA,Bの通信時間に応じてF1A’又はF1B’に切り替わる。
また、図5において、第2無線通信部12は、DUP120と、子機側のダウンリンク受信信号処理部と、子機側のアップリンク送信信号処理部とを備える。DUP120は、第2アンテナ102で受信された受信信号のアップリンク経路と第2アンテナ102で送信される送信信号のダウンリンク経路との経路分離を行う。
子機側のダウンリンク受信信号処理部は、通信オペレータA,B用の帯域フィルタ126及び増幅器(例えば、線形増幅器)127を備える。
また、子機側のアップリンク送信信号処理部は、受信用の自動ゲイン制御(AGC)機能付き増幅器121と、通信オペレータA,B用の帯域フィルタ124と、を備える。
帯域フィルタ124は、図6(c)に示す通信オペレータA,Bに共通の周波数変換前の第2周波数F2のアップリンク受信信号SR2’を選択的に通過させる帯域通過フィルタである。また、帯域フィルタ126は、図6(b)に示すように通信オペレータA,Bに共通の周波数変換後の第2周波数F2のダウンリンク送信信号ST2を通過させる帯域通過フィルタである。
図5の構成例の第1無線中継局(親機)10において、移動局40A,40Bから固定基地局30A,30Bへのアップリンクの無線通信を中継する場合、第2アンテナ102を介して子機20から受信された共通の第2周波数F2の受信信号SR2’は、第2無線通信部12の帯域フィルタ124を通過し、増幅器121で増幅された後、周波数変換器132に出力される。周波数変換器132で共通の第2周波数F2’から第1周波数F1A’,F1B’に変換された受信信号SR1A’,SR1B’はそれぞれ、第1無線通信部11の帯域フィルタ116A,116Bを通過して不要な信号が除去され、増幅器117A,117Bで所定の同一電力Pr(信号レベル)まで増幅された後、送信信号ST1A’,ST1B’として、DUP110A,110B及び第1アンテナ101A,101Bを介して携帯基地局30A,30Bに向けて送信される。
また、図5の構成例の第1無線中継局(親機)10において、固定基地局30A,30Bから移動局40A,40Bへのダウンリンクの無線通信を中継する場合、通信オペレータAの固定基地局30Aから送信された第1周波数F1Aのダウンリンクの無線信号は、その固定基地局30Aの方向に向いた指向性アンテナ101Aで受信され、DUP110Aを介してダウンリンク無線中継切替部118Dに入力される。一方、通信オペレータBの固定基地局30Bから送信された第1周波数F1Bのダウンリンクの無線信号は、その固定基地局30Bの方向に向いた指向性アンテナ101Bで受信され、DUP110Bを介して、ダウンリンク無線中継切替部118Dに入力される。
ダウンリンク無線中継切替部118Dにおいて、各通信オペレータA,Bの第1周波数F1A,F1Bの受信信号SR1A,SR1Bは、帯域フィルタ114A,114Bを通過して不要な信号が除去され、増幅器111A,111Bで増幅され、通信オペレータ切替部115を時分割的に通過した後、周波数変換器131に出力される。周波数変換器131で第1周波数F1A,F1Bから共通の第2周波数F2に変換された受信信号SR2は、第2無線通信部12の帯域フィルタ126を通過して不要な信号が除去され、増幅器127で所定の電力(信号レベル)まで増幅された後、ダウンリンク中継用の送信信号ST2として、第2アンテナ102を介して子機20に向けて送信される。
図9は、実施形態に係る無線中継システムのダウンリンク及びアップリンクの双方向無線中継に対応した第2無線中継局(子機)20の一構成例を示すブロック図である。本構成例は、図5の第1無線中継局(親機)10と組み合わせて用いられ、親機側の第1アンテナ201及び移動局側の第2アンテナ202それぞれに無指向性アンテナを用いた例である。なお、図9において、図5と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
また、図10(a)〜図10(d)は、図9の無線中継システムにおけるダウンリンク及びアップリンクの信号の周波数特性を示す図である。
図10(a)は図9の第2無線中継局(子機)20のダウンリンク信号処理経路における第1アンテナ201で受信された各通信オペレータA,Bに共通の第2周波数F2の受信信号SR2A,SR2Bの周波数特性を示す図である。
図10(b)は図9の第2無線中継局(子機)20のダウンリンク信号処理経路における周波数変換後の第1周波数F1A,F1Bの送信信号ST1A,ST1Bの周波数特性を示す図である。
図10(c)は図9の第2無線中継局(子機)20のアップリンク信号処理経路における第2アンテナ202で受信された各通信オペレータA,Bの第1周波数F1A',F1B'の受信信号SR1A',SR1B'の周波数特性を示す図である。
図10(d)は図9の第2無線中継局(子機)20のアップリンク信号処理経路における周波数変換後の共通の第2周波数F2’の送信信号ST2’の周波数特性を示す図である。
図9において、第1無線通信部21は、DUP210と、親機側のダウンリンク受信信号処理部と、親機側のアップリンク送信信号処理部とを備える。DUP210は、第1アンテナ201で受信された受信信号のダウンリンク経路と第1アンテナ201へ向かう送信信号のアップリンク経路との経路分離を行う。
親機側のダウンリンク受信信号処理部は、受信用の自動ゲイン制御(AGC)機能付きの増幅器211と帯域フィルタ214とを備える。
また、親機側のアップリンク送信信号処理部は、共通の第2周波数F2’用の帯域フィルタ216及び増幅器(例えば、線形増幅器)217を備える。
帯域フィルタ214は、図10(a)に示す通信オペレータA,Bに共通の第2周波数F2を有するダウンリンクの受信信号SR2を選択的に通過させる帯域通過フィルタである。
また、帯域フィルタ216は、図10(d)に示す通信オペレータA,Bに共通の周波数変換後の第2周波数F2’のアップリンクの送信信号ST2’を通過させる帯域通過フィルタである。
また、図9において、周波数変換部23は、ダウンリンク用の周波数変換器231とアップリンク用の周波数変換器232とを備える。周波数変換器231は、ダウンリンク信号処理経路において受信信号SR2の第2周波数F2を移動局対応の第1周波数F1A,F1Bに変換する。一方、周波数変換器232は、アップリンク信号処理経路において移動局対応の送信信号ST1A’,ST1B’の第1周波数F1A’,F1B’を親機−子機中継用の共通の中間周波数である第2周波数F2’に変換する。
図11(a)及び図11(b)はそれぞれ、図9の第2無線中継局(子機)20における周波数変換器231,232の構成例を示すブロック図である。
図11(a)のダウンリンク用の周波数変換器231は、局部発振器2311と周波数混合器2312と出力フィルタ2313とを備える。出力フィルタ2313の通過帯域は、各通信オペレータA,Bのダウンリンク信号の第1周波数F1A及びF1Bが通過するように設定されている。局部発振器2311では、制御部24により通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数が時分割的に切り替えられる。具体的には、通信オペレータAの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1A−F2に設定され、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1B−F2に設定されるように切替制御される。このように設定が切り替えられた局部発振周波数の信号とダウンリンク信号(F2)が周波数混合器2312で混合され、出力フィルタ2313から出力される。出力フィルタ2313から出力される信号の周波数は、通信オペレータA,Bの通信時間に応じてF1A又はF1Bに切り替わる。
また、図11(b)のアップリンク用の周波数変換器232は、局部発振器2321と周波数混合器2322と出力フィルタ2323とを備える。出力フィルタ2323の通過帯域は、共通の第2周波数(中間周波数)F2’が通過するように設定されている。局部発振器2321では、制御部24により通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数が時分割的に切り替えられる。具体的には、通信オペレータAの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2’−F1A’に設定され、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2’−F1B’に設定されるように切替制御される。このように設定が切り替えられた局部発振周波数の信号とアップリンク信号(F1A’又はF1B’)が周波数混合器1322で混合され、出力フィルタ1323から出力される。出力フィルタ1323から出力される信号の周波数は、通信オペレータA,Bのアップリンク信号のどちらが入力された場合でも、共通の第2周波数(中間周波数)F2’になる。
図12は、実施形態に係る無線中継システムのダウンリンク及びアップリンクの双方向無線中継に対応した第1無線中継局(親機)10の他の構成例を示すブロック図である。本構成例は、図5の構成例と同様に、固定基地局側の第1アンテナとして複数の指向性アンテナ101A,101Bを用いた例である。本構成例では、ダウンリンク及びアップリンクそれぞれについて通信オペレータA,Bごとに予め変換周波数を固定した個別の周波数変換器131A,B及び132A,Bを設けている。なお、図12において、前述の図5と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図12において、第1無線通信部11のダウンリンク無線中継切替部118Dは、通信オペレータ切替部115を備えず、各通信オペレータA,Bの増幅器111A,111Bから出力される無線中継周波数F1A,F1Bのダウンリンク信号はそれぞれ、対応する周波数変換器131A,131Bに入力される。各周波数変換器131A,131Bから出力される共通の第2周波数F2の送信信号は、通信オペレータ切替部125を介して共用の帯域フィルタ126に入力される。
通信オペレータ切替部125は、制御部14からの制御信号で切替可能なスイッチで構成され、通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、ダウンリンク信号経路を、周波数変換器131Aを通過する経路、又は周波数変換器131Bを通過する経路に切り替えるように制御される。この通信オペレータ切替部125及び制御部14は、第2無線中継局(子機)20との間で複数の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御する切替制御手段を構成する。
第2無線通信部12の増幅器121から出力された各通信オペレータA,Bに共通の第2周波数F2’のアップリンクの受信信号は、受信信号分配部212で分配されて周波数変換器132A及び132Bに入力される。周波数変換器132A,132Bで第1周波数F1A’,F1B’に周波数変換されたアップリンクの受信信号SR1A’,SR1B’はそれぞれ、アップリンク信号処理経路のON/OFF切替部113A,113Bを介して増幅器117A,117Bに入力され。増幅器117A,117Bで所定の電力まで増幅された周波数F1A’,F1B’のアップリンクの送信信号ST1A’,ST1B’は、DUP110A,110B及び第1アンテナ101A,101Bを介して携帯基地局30A,30Bに向けて送信される。
アップリンク信号処理経路のON/OFF切替部113A,113Bは、例えば、制御部14からの制御信号で切替可能なスイッチ又は減衰器(ATT)で構成されている。このON/OFF切替部113A,113B及び制御部14により、通信オペレータA,Bの中継切替に同期させて、無線中継していない通信オペレータの固定基地局に対するアップリンク信号の信号出力回路を遮断する手段として機能する。
ON/OFF切替部113A,113Bは、通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、各通信オペレータA,Bの増幅器117A,117Bを介したアップリンク送信信号経路を相補的にON/OFFするように制御される。例えば、通信オペレータAの無線通信を中継するときは、ON/OFF切替部113AをONにして周波数F1A’のアップリンクの送信信号ST1A’を携帯基地局30Aに向けて送信し、ON/OFF切替部113BをOFFにして周波数F1B’のアップリンクの送信信号ST1B'が送信されないようにする。一方、通信オペレータBの無線通信を中継するときは、ON/OFF切替部113BをONにして周波数F1B’のアップリンクの送信信号ST1B’を携帯基地局30Bに向けて送信し、ON/OFF切替部113AをOFFにして周波数F1A’のアップリンクの送信信号ST1A’が送信されないようにする。このように無線中継対象になっていないアップリンク送信信号を送信しないようにすることにより、各通信オペレータA,Bの携帯基地局30A,30B等におけるノイズや干渉を抑制できる。なお、ノイズや干渉が許容レベルの場合はON/OFF切替部113A,113Bを省略してもよい。
また、ON/OFF切替部113A,113B及び制御部14は、不要な電力を使用しないように、通信オペレータA,Bの中継切替に同期させて、無線中継していない通信オペレータの第1無線中継局(親機)の無線通信に関わるアップリンク信号の回路の電源を全て切る手段として機能してもよい。
図13(a)及び図13(b)はそれぞれ、図12の第1無線中継局(親機)における通信オペレータAに対応するダウンリンク及びアップリンクそれぞれの周波数変換器131A,132Aの構成例を示すブロック図である。また、図14(a)及び図14(b)はそれぞれ、図12の第1無線中継局(親機)における通信オペレータBに対応するダウンリンク及びアップリンクそれぞれの周波数変換器131B,132Bの構成例を示すブロック図である。なお、図13及び図14において、図8と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図12〜図13の第1無線中継局(親機)10の構成例では、通信オペレータA,Bごとに、ダウンリンク及びアップリンクそれぞれに対応する周波数変換器131A,B及び132A,Bを設けている。図13の周波数変換器131A,132Aの局部発振器1311A,1321Aの局部発振周波数は、通信オペレータA用に固定された周波数(F2−F1A,F1A’−F2’)に予め設定しておくことができる。また、図14の周波数変換器131B,132Bの局部発振器1311B,1321Bの局部発振周波数は、通信オペレータB用に固定された周波数(F2−F1B,F1B’−F2’)に予め設定しておくことができる。従って、周波数変換が容易になり、各通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数を時分割的に切り替える制御も不要になる。
図15は、実施形態に係る無線中継システムのダウンリンク及びアップリンクの双方向無線中継に対応した第2無線中継局(子機)20の他の構成例を示すブロック図である。本構成例は、図12の第1無線中継局(親機)10と組み合わせて用いられる構成例である。なお、図15において、図5、図9及び図12と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図15において、第1無線通信部21の親機側のダウンリンク受信信号処理部は、通信オペレータ切替部を備えず、受信信号分配部212と、通信オペレータA,Bごとに設けられた受信用の自動ゲイン制御(AGC)機能付きの増幅器211A,211B及び帯域フィルタ214A,214Bとを備える。
親機側のアップリンク送信信号処理部は、共通の第2周波数F2’用の増幅器(例えば、線形増幅器)217と、アップリンク無線中継切替部218Uとを備える。
アップリンク無線中継切替部218Uは、通信オペレータA用の帯域フィルタ216Aと、通信オペレータB用の帯域フィルタ216Bと、通信オペレータ切替部215とを備える。帯域フィルタ(BPF)216A,216Bはそれぞれ、通信オペレータA,Bに共通のアップリンク信号の周波数F2’を選択的に通過させる。なお、帯域フィルタ(BPF)216A,216Bは増幅器217の前段又は後段に共通の帯域フィルタとして設けてもよい。
通信オペレータ切替部215は、例えば制御部24からの制御信号で切替可能なスイッチで構成され、通信オペレータA,Bの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、アップリンク信号経路を、周波数変換器232A及び帯域フィルタ216Aを通過する経路、又は周波数変換器232B及び帯域フィルタ216Bを通過する経路に切り替えるように制御される。
増幅器217は、帯域フィルタ(BPF)216A又は216Bを通過した通信オペレータA,Bに共通の無線中継周波数F2’の送信信号を所定の電力(信号レベル)まで増幅する。
親機10から受信した共通の第2周波数F2のダウンリンクの受信信号は、受信信号分配部212で分配され、通信オペレータA,Bごとに増幅器211A,211B及び帯域フィルタ214A,214Bを介して、対応する周波数変換器231A,231Bに入力される。各周波数変換器231A,231Bから出力される各通信オペレータA,Bの第1周波数F1A,F1Bの信号はそれぞれ、ダウンリンク無線中継切替部228Dに入力される。
第2無線通信部22の移動局側のアップリンク受信信号処理部の共通増幅器221から出力された第1周波数F1A,F1Bのアップリンクの受信信号は、受信信号分配部222で分配され、通信オペレータA,Bごとに設けられた周波数変換器231A,231Bそれぞれに入力される。
なお、図15の第2無線中継局(子機)20において、通信オペレータ切替部215、225及び制御部24は、第1無線中継局(親機)10との間で複数の通信オペレータA,Bの無線通信を時分割で切り替えて中継するように制御する切替制御手段を構成する。
図16(a)及び図16(b)はそれぞれ、図15の第2無線中継局(子機)20における通信オペレータAに対応するダウンリンク及びアップリンクそれぞれの周波数変換器231A,232Aの構成例を示すブロック図である。また、図17(a)及び図17(b)はそれぞれ、図15の第2無線中継局(子機)20における通信オペレータBに対応するダウンリンク及びアップリンクそれぞれの周波数変換器231B,232Bの構成例を示すブロック図である。なお、図16及び図17において、図8と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
図15〜図17の第2無線中継局(子機)20の構成例では、通信オペレータA,Bごとに、ダウンリンク及びアップリンクそれぞれに対応する周波数変換器231A,B及び232A,Bを設けている。図16の周波数変換器231A,232Aの局部発振器2311A,2321Aの局部発振周波数は、通信オペレータA用に固定された周波数(F1−F2,F2’−F1A’)に予め設定しておくことができる。また、図17の周波数変換器231B,232Bの局部発振器2311B,2321Bの局部発振周波数は、通信オペレータB用に固定された周波数(F1B−F2,F2’−F1B’)に予め設定しておくことができる。従って、周波数変換が容易になり、各通信オペレータが通信する時間に合わせて局部発振周波数を時分割的に切り替える制御も不要になる。
上記各実施形態の無線中継システムにおいて無線中継対象の複数の通信オペレータA,Bは、予め設定した所定周期ごとに交互に切り替えてもよいし、任意のタイミングでリアルタイムに切り替えてもよいし、予め設定した切替スケジュールに基づいて切り替えてもよい。
図18は実施形態に係る無線中継システムにおける無線中継対象の通信オペレータの切替制御の一例を示すタイムチャートである。図18において、親機10の制御部14は、親機10を操作している操作者の手操作などで中継対象を通信オペレータAから通信オペレータBに切り替える切替1が指示されると、その切替1の中継切替指示情報を、制御用通信装置15を介して子機20に送信する。また、親機10の制御部14は、切替1の中継切替指示情報に基づいて、子機20との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータAから通信オペレータBに切り替えて中継するように制御する。子機20の制御部24は、制御用通信装置25を介して親機10から受信した切替1の中継切替指示情報に基づいて、親機10との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータAから通信オペレータBに切り替えて中継するように制御する。同様に、切替2(通信オペレータBから通信オペレータA)及び切替3(通信オペレータAから通信オペレータBへの切替)の指示があったときは、親機10の制御部14及び子機20の制御部24は、各切替2,3の中継切替指示情報に基づいて、通信オペレータを同時に切り替えて中継するように制御する。以上のように、本例の制御例によれば、任意のタイミングで手操作などにより中継対象の通信オペレータの切替指示があった場合に、その切替指示に応じて、親機10及び子機20による無線通信の中継対象の通信オペレータをリアルタイムに切り替えることができる。
図19は、実施形態に係る無線中継システムにおける無線中継対象の通信オペレータの切替制御の他の例を示すタイムチャート。図19において、親機10の制御部14は、親機10を操作している操作者の手操作などで表1のような通信オペレータA,Bの中継切替スケジュール情報が作成されると、そのスケジュール情報を、制御用通信装置15を介して子機20に送信する。
親機10の制御部14は、上記中継切替スケジュール情報に基づいて、切替1の時刻t1になったタイミングに、子機20との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータAから通信オペレータBに切り替えて中継するように制御する。また、子機20の制御部(スレーブ)24は、親機10から受信した中継切替スケジュール情報に基づいて、切替1の時刻t1になったタイミングに、親機10との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータAから通信オペレータBに切り替えて中継するように制御する。同様に、切替2(通信オペレータBから通信オペレータA)の時刻t2になったタイミング及び切替3(通信オペレータAから通信オペレータBへの切替)の時刻t3になったタイミングそれぞれに、親機10の制御部14及び子機20の制御部24は、通信オペレータを同時に切り替えて中継するように制御する。以上のように、本例の制御例によれば、親機10で予め作成された中継切替スケジュール情報に応じて、親機10及び子機20による無線通信の中継対象の通信オペレータを切り替えることができる。
また、上記各実施形態の無線中継システムにおいて無線中継対象の複数の通信オペレータA,Bは、遠隔制御装置から制御情報に基づいて遠隔制御してもよい。
図20(a)及び図20(b)はそれぞれ、実施形態に係る無線中継システムにおける無線中継対象の通信オペレータの遠隔切替制御の一例を示す説明図である。
図20(a)において、遠隔制御装置81(遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置)は、遠隔制御装置81を操作している操作者の手操作などで中継対象の通信オペレータの切替が指示されると、その中継切替指示情報を、移動通信網を介して親機10の制御部14に送信する。親機10の制御部14は、遠隔制御装置81から中継切替指示情報を受信すると、WiFiなどの無線通信又は移動通信網を介して子機20の制御部24に中継切替指示情報を送信(転送)する。親機10の制御部14及び子機20の制御部24は、遠隔制御装置81で設定された中継切替指示情報に基づいて、無線通信の中継対象の通信オペレータをリアルタイムに切り替えるように制御する。
図20(b)において、遠隔制御装置81(遠隔制御装置81A,81B又は他の共通の遠隔制御装置)は、遠隔制御装置81を操作している操作者の手操作などで通信オペレータA,Bの中継切替スケジュール情報(例えば表1参照)が作成されると、その中継切替スケジュール情報を、移動通信網を介して親機10の制御部14に送信する。親機10の制御部14は、遠隔制御装置81から中継切替スケジュール情報を受信すると、WiFiなどの無線通信又は移動通信網を介して子機20の制御部24に中継切替スケジュール情報を送信(転送)する。親機10の制御部14及び子機20の制御部24は、遠隔制御装置81で作成された中継切替スケジュール情報に基づいて、無線通信の中継対象の通信オペレータを切り替えるように制御する。
以上、本実施形態によれば、第1無線中継局10を自動車に搭載して目標位置に移動した後、基地局を搭載した場合のようなコアネットワークへの接続作業や基地局のセットアップ作業を行う必要がないため、複数の通信オペレータA,Bの固定基地局30A,30Bと移動局(ユーザ装置)40A,40Bとの間の無線通信の中継を速やかに開始することができる。
また、本実施形態によれば、親機10に基地局装置(eNodeB)が不要であり、構成が簡易である。
一般には、複数の通信オペレータA,Bそれぞれのサービスリンクを中継するためには、通信オペレータA,Bそれぞれの周波数帯域幅の合計(和)の無線中継周波数が必要であるが、本実施形態によれば、複数の通信オペレータA,Bの無線中継に共通の中間周波数F2/F2'を用いることができるため無線中継に用いる中間周波数の帯域幅を抑制することができる。例えば、中継対象の通信オペレータの数をNとした場合、通信オペレータごとに互いに異なる中間周波数を用いる場合に比べ、無線中継に共通の中間周波数の帯域幅を1/Nに削減できる。
また、本実施形態によれば、中継対象の通信オペレータの数をNとした場合、親機−子機間(上り回線/下り回線)の総送信電力及び子機−移動局間(下り回線)の総送信電力がそれぞれ一定の場合、通信オペレータごとに互いに異なる中間周波数を用いる場合に比べ、親機−子機間(上り回線/下り回線)の送信電力及び子機−移動局間(下り回線)の送信電力をN倍に増大できる。
例えば、図21(a)の比較例のように親機−子機間(上り回線/下り回線)の無線中継において通信オペレータA,Bに対して互いに異なる複数の中間周波数(F2A/F2A’,F2B/F2B’)を用いる場合、親機−子機間(上り回線/下り回線)の総送信電力をPMとすると、通信オペレータA,Bそれぞれの親機−子機間(上り回線/下り回線)の送信電力PmはPM/2になる。これに対し、図21(b)に示す本実施形態のように複数の通信オペレータA,Bの無線中継に共通の中間周波数F2/F2'を用いた場合は、通信オペレータA,Bそれぞれの親機−子機間(上り回線/下り回線)の送信電力Pmは上記比較例の2倍のPMになる。
また、図22(a)の比較例のように子機−移動局間(下り回線)のサービスリンクで通信オペレータA,Bの無線通信を同時に行う場合、子機−移動局間(下り回線)の総送信電力をPSとすると、通信オペレータA,Bそれぞれの子機−移動局間(下り回線)の送信電力PsはPS/2になる。これに対し、図22(b)の本実施形態のように子機−移動局間(下り回線)のサービスリンクで通信オペレータA,Bの無線通信を切り替えて行う場合は、通信オペレータA,Bそれぞれの子機−移動局間(下り回線)の送信電力Psは上記比較例の2倍のPSになる。
このように親機−子機間(上下回線)の送信電力及び子機−移動局間(下り回線)の送信電力を増大できるため、親機−子機間の中継距離及び子機−移動局間のサービスエリアを大きくすることができる。
図5及び図12の構成例によれば、第1無線中継局(親機)10の対携帯基地局(固定基地局30A,30B)向けの第1アンテナとして複数の指向性アンテナ101A,101Bを用い、通信オペレータA,B毎の携帯基地局(固定基地局30A,30B)と送受信することにより、各通信オペレータA,Bの通信品質の改善が図れる。
また特に、図5〜図17の構成例によれば、第1無線中継局(親機)10で受信したダウンリンクの無線中継周波数(第1周波数)F1A,F1B毎に、AGC(Auto Gain Control)を適用して、各通信オペレータA,Bに対応する中間周波数(第2周波数)F2の対子機向けの無線信号の出力が同一電力になるように制御する。また、第2無線中継局(子機)20で受信した中間周波数(第2周波数)F2の信号に、AGCを適用して、各通信オペレータA,Bの無線中継周波数(第1周波数)F1A,F1Bの対移動局向けの出力が同一電力になるように制御する。この第1無線中継局(親機)10及び第2無線中継局(子機)20の電力調整の制御により、ダウンリンクにおける第2無線中継局(子機)20の対移動局向けの無線中継周波数(第1周波数)F1A,F1Bの送信電力が同じとなるため、各通信オペレータA,Bに対応する無線中継周波数(第1周波数)F1A,F1B間で無線中継エリア(子機20のセル200)が同じになる。
また、本実施形態によれば、各通信オペレータA,Bの携帯基地局エリア(固定基地局30A,30Bのセル300A,300B)と無線中継エリア(子機20のセル200)との間に一部重なりがあっても、携帯基地局(固定基地局30A,30B)と無線中継システムが同一信号を送信しているため、その重なりエリアに位置する移動局(ユーザ端末)40A,40Bには干渉とはならない。むしろ、携帯基地局(固定基地局30A,30B)と無線中継システムの両方から送信された無線信号を加算して受信しているため、通信品質が向上する(図23参照)。
また、本実施形態によれば、自動車50等に搭載した親機10は各通信オペレータA,Bの携帯基地局(固定基地局30A,30B)のサービスエリア(セル300A,300B)の端部まで移動することができる。例えば、携帯基地局のエリア端(固定基地局30A,30Bのセル端)に親機10を移動させれば、そこから子機20に中継できるため、無線中継システムのサービスエリアをより遠くまで拡張できる(図24(a)及び図24(b)参照)。
また、本実施形態によれば、親機10を自動車50等に搭載して走行させれば、無線中継システムのサービスエリアを連続的に拡張できる。例えば、各通信オペレータA,Bの携帯基地局(固定基地局30A,30B)のサービスエリア(セル300A,300B)外での遭難者の捜索するような場合、エリアを連続的に拡張できるので探索範囲の拡張が短時間に容易に図れる。特に自動車50等の走行速度が速い程、短時間にエリアの拡張が図れる(図25参照)。
また、本実施形態によれば、親機10は、前述の制御用通信装置15(15A,15B)により、遠隔制御通信のON/OFF又は電源のON/OFFの制御と装置の監視を行う制御部14と、移動通信網80A,80Bの通信オペレータA,Bに設けた遠隔制御装置81A,81B(制御元)の少なくとも一方との間で通信を行うことができる。また、子機20は、前述のユーザ端末(移動局)などの制御用通信装置25(25A,25B)により、遠隔制御通信のON/OFF、電源のON/OFF制御及び無線通信部の増幅器(AMP)の利得制御(最大送信電力制御)を行う制御部24と、移動通信網80A,80Bの通信オペレータA,Bの遠隔制御装置81A,81B(制御元)の少なくとも一方との間で通信を行うことができる。
通信オペレータA,Bは、親機10の通信のON/OFF又は電源のON/OFF制御を遠隔で行うことで、無線中継システムの通信の開始及び終了を独自に遠隔制御することができる。例えば、親機10及び子機20を所定の場所に設置した場合、通信オペレータA,Bに設けた遠隔制御装置81A,81B(制御元)から遠隔で親機10の通信のON/OFFまたは電源のON/OFF制御を行う。これにより、通信オペレータA,Bごとに無線中継システムの通信の開始、停止を遠隔で制御できる。
同様に、親機10の通信ON後に、子機20の電源のON/OFFを遠隔で制御することで、無線中継システムの通信の開始、停止を子機20でも制御することができる。また、子機20の増幅器(AMP)の利得制御(最大送信電力制御)を遠隔で行うこともできる。
また、本実施形態によれば、無線中継システムが他の携帯基地局(固定基地局30C)のサービスエリア(セル300C)に干渉を与えるような場合、子機20の増幅器(AMP)の利得(最大送信電力)を低減制御することで他の携帯基地局(固定基地局30C)のサービスエリア(セル300C)への予干渉を抑圧することができる(図27参照)。
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線中継局、遠隔制御装置及び基地局における基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、基地局装置、無線中継装置、ユーザ装置(移動局、通信端末)、遠隔制御装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。