JP6539139B2 - 赤外線画像データの画像処理方法及び赤外線画像処理装置 - Google Patents

赤外線画像データの画像処理方法及び赤外線画像処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、赤外線画像データの画像処理方法及び赤外線画像処理装置に関する。
従来、測定対象物を周期的に加熱させることによる測定対象物の温度変化等を利用して、測定対象物の表面や内部における欠陥や繊維配向等の状態を評価する手法(アクティブサーモ法)が広く行われている。この手法は、例えば、測定対象物に欠陥がある場合に、欠陥部分における温度変化と周囲の非欠陥部分の温度変化との間に違いが生じることに基づく評価手法である。
アクティブサーモ法において、測定対象物の温度は赤外線カメラによって測定される。また、測定対象物の周期的な温度変化量の演算は、赤外線カメラによって測定された測定対象物から放出される赤外線に基づいて作成された熱画像のデジタル信号処理(例えばロックイン法)により行われてきた。
従来の赤外線熱画像の画像処理方法では、周期的な温度変化データの全区間を対象に、測定対象物の温度変化量の演算を行っていた。例えば、以下の特許文献1に記載の画像処理方法では、温度変化周期の全区間をロックイン解析の対象とし、解析するロックインの周波数を変化させて埋没した熱源の位置を特定しようとしている。特に、さまざまな周波数の検査信号と、赤外線熱画像から得られる熱応答との間で生じる位相ずれを解析することで、埋没した熱源の深さ位置を特定している。
特開2014−222243号公報
しかしながら、上述したように温度変化の周期の全区間を対象に演算する解析方法では、測定対象物の深さ方向のすべての情報が解析されて深さ方向の情報が重畳するため、欠陥や繊維配向等の解析像がぼやけてしまうという問題があった。
このため、欠陥や繊維配向などの位置の特定に関し、ロックインの解析周波数を変えた場合でも、深さ方向のすべてのデータを対象に解析したのでは、解析結果の精度が十分でなくなってしまう。
また、埋没した熱源の深さ位置を特定するためには、さまざまなロックイン周波数で検査信号を印加しながら温度分布を測定しなければならないため、長時間を要してしまうという問題もあった。
また、たとえばフラッシュランプを加熱源とした場合、加熱のためにフラッシュランプ内のコンデンサに電荷を蓄えるため、発光周期(加熱周期)は数秒おきとなる。加熱周期は、時によっては数10秒おきとなる。この場合、加熱周期が測定対象物の熱浸透深さを大幅に超えることになり、加熱周期が測定対象物から熱が全て拡散する時間よりも十分に長くなってしまう。加熱周期が長すぎる場合、熱が拡散してしまった後のデータまでも含めて解析することとなる。熱が拡散してしまった後のデータは無駄なノイズ源となる。このため、加熱周期が長すぎる場合には、解析結果像が不鮮明となる。
この対策として、フラッシュランプを使用する際には、繰り返し加熱を行わず1回のみ加熱を行って得た加熱データだけを用いて赤外線熱画像の解析が行われることもあった。しかしながら、1回のみ加熱を行って得た加熱データだけではノイズが目立つ解析結果となってしまう。
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、測定対象物の表面及び裏面、並びに内部の状態を非接触で容易に測定することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る赤外線画像データの画像処理方法は、周期的に温度変化する測定対象物を赤外線カメラにより連続撮影して赤外線熱画像データを取得する赤外線熱画像データ取得工程と、前記赤外線熱画像データ取得工程において取得した前記赤外線熱画像データのうち、前記測定対象物の温度変化の周期内の当該周期よりもい一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出する赤外線熱画像データ抽出工程と、前記赤外線熱画像データ抽出工程で抽出された前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する解析画像作成工程と、を備え、前記赤外線熱画像データ取得工程は、複数回繰り返される前記測定対象物の温度変化の複数の周期について前記赤外線熱画像データを取得し、前記赤外線熱画像データ抽出工程は、前記赤外線熱画像データ取得工程で取得した前記複数の周期に亘る前記赤外線熱画像データの各周期内で同一の区間から抽出された複数の赤外線熱画像データのみを、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとし、前記解析画像作成工程は、前記画像処理として、時間に伴って変化する温度変化量又は位相に基づいて前記解析画像を作成するロックイン処理を行うこと特徴とする。
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る赤外線画像処理装置は、測定対象物を周期的に加熱する加熱源と、周期的に温度変化する前記測定対象物を連続撮影して赤外線熱画像データを取得する赤外線カメラと、取得した前記赤外線熱画像データのうち、前記測定対象物の温度変化の周期内の当該周期よりもい一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する計算機と、を備え赤外線カメラは、複数回繰り返される前記測定対象物の温度変化の複数の周期について前記赤外線熱画像データを取得し、前記計算機は、前記赤外線カメラで取得した前記複数の周期に亘る前記赤外線熱画像データの各周期内で同一の区間から複数の赤外線熱画像データのみを抽出して、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとし、前記画像処理として、時間に伴って変化する温度変化量又は位相に基づいて前記解析画像を作成するロックイン処理を行うことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、測定対象物の表面及び裏面、並びに内部の状態を非接触で容易に測定することができる。
本発明の第1実施形態に係る赤外線画像処理装置の構成を示す図である照明装置の外観を説明する斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法により、測定対象物内部の欠陥等を検出する方法の概念を説明する概略図である。 本発明の第1実施形態に係る赤外線画像処理装置により測定された、フラッシュランプの周期的な加熱による測定対象物の温度変化を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法により、測定対象物内部の欠陥等を検出する方法の概念を説明する概略図である。 本発明の第2実施形態に係る赤外線画像処理装置により測定された、ハロゲンランプの周期的な加熱による測定対象物の温度変化を示すグラフである。 本発明の実施例における測定対象物であるCFRP板の裏面の外観を示す写真である。 本発明の第1の実施例における解析結果の画像である。 本発明の第2の実施例における解析結果の画像である。 本発明の第2の実施例における解析結果の画像である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
1.第1実施形態
(1−1)赤外線画像処理装置の構成
以下、図1、図2(a)から図2(d)及び図3(a)から図3(d)を参照しながら、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る赤外線画像処理装置10の全体のシステム構成を示す図である。赤外線画像処理装置10は、赤外線カメラ11と、加熱源としてのフラッシュランプ12(12a及び12b)と、周期信号を発生する信号発生器13と、赤外線カメラ11で得られた熱画像データに基づく演算を行う計算機(以下、コンピュータと記載する)14とを備えている。
赤外線カメラ11は、測定対象物1の温度を測定し、赤外線熱画像を生成するためのカメラである。赤外線カメラ11は、周期的に温度変化する測定対象物1を連続撮影して赤外線熱画像データを取得する。赤外線カメラ11は、測定対象物1の表面から放射される赤外線を受光し、受光した赤外線を二次元配列された赤外線センサに入射して電気信号に変換し、この電気信号を赤外線の受光量に基づく画像信号(温度検出信号)として出力する。赤外線カメラ11は、フレーム中の画素毎に温度データを得る。したがって、赤外線熱画像データは、測定対象物1から放射される赤外線の受光量に基づく温度データを含んでいる。測定対象物1の「表面」とは、測定対象物1の赤外線カメラ11により測定を行っている面を示す。
赤外線カメラ11は、任意の撮影フレームレートで測定対象物1の温度を測定し、取得した画素毎の温度データを含む赤外線熱画像データを得る。赤外線カメラ11で連続撮影された赤外線熱画像の画像データは、周期信号としてコンピュータ14に入力される。
また、コンピュータ14には、信号発生器13より周期信号が入力されてもよい。
フラッシュランプ12は、測定対象物1を周期的に加熱する加熱源であり、パルス光を発生して極めて短時間の発光時間で測定対象物1を加熱する。
フラッシュランプ12には、信号発生器13より周期信号が入力される。これにより、フラッシュランプ12は周期的に発光し、測定対象物1を所定の加熱周期で加熱する。フラッシュランプ12は、ごく短時間の加熱と、加熱後一定時間の非加熱とを1サイクルとして繰り返すことにより測定対象物1を加熱する。
図1に示す第1実施形態における赤外線画像処理装置10は、2灯のフラッシュランプ12a及び12bを備えた例を示している。
信号発生器13は、周期信号を発生し、当該周期信号を加熱源であるフラッシュランプ12に入力する。第1実施形態において、信号発生器13は、フラッシュランプ12に対してインパルス状の信号を入力する。これにより、フラッシュランプ12によって所定の加熱周期で測定対象物1が加熱される。
また、信号発生器13は、コンピュータ14に対して周期信号を入力してもよい。
コンピュータ14は、赤外線カメラ11から取り込んだ赤外線熱画像データを用いて、画像処理を行う。コンピュータ14は、例えば、任意に設定した一定間隔のフレームレートに基づいて、赤外線カメラ11からの赤外線画像の取り込みを連続的に実施し、時間に伴って変化する温度変化量又は位相に基づいて解析画像を作成するロックイン処理を行う。
また、コンピュータ14は、赤外線カメラ11から取り込んだ赤外線熱画像データのうちの一部を抽出して、上述した解析画像を作成することもできる。コンピュータ14は、赤外線カメラ11から取得した赤外線熱画像データのうち、測定対象物の温度変化の周期内の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、所定の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する。
コンピュータ14は、加熱源であるフラッシュランプ12に入力される周期信号に基づいて決定された温度変化の周期内の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行うことができる。フラッシュランプ12に入力される周期信号により、周期的に加熱が行われるため、例えば、周期信号に基づいて、加熱終了後の数秒間を「一部の区間」とし、この区間内に撮影した赤外線熱画像データを解析に用いることができる。
また、コンピュータ14は、温度変化の周期を、赤外線カメラ11により取得した赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断することができる。そして、赤外線熱画像データを抽出する「一部の区間」を、赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断した温度変化の周期に基づいて決定することができる。例えば、コンピュータ14は、赤外線カメラ11により取得した赤外線熱画像データの温度情報に基づいて加熱周期を判断し、この加熱周期に基づいて、加熱終了後の数秒間を「一部の区間」とし、この区間内に撮影した赤外線熱画像データを解析に用いることができる。
コンピュータ14は、ロックイン処理によって解析画像を作成することにより、簡易な演算で精度の高い解析結果を得ることができる。また、ロックイン処理の際のロックイン周波数を変更することにより、ロックイン処理の最適化を図ることもできる。
コンピュータ14における処理は、より詳細に後述する。
赤外線画像処理装置10は、任意の材料からなる測定対象物1の表面及び裏面、並びに内部の状態を解析することが可能である。例えば、赤外線画像処理装置10は、金属、樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass-Fiber-Reinforced Plastic)等の各種の材料からなる測定対象物1の測定を行うことができる。
(1−2)赤外線画像の画像処理方法
以下、図2(a)から図2(d)、及び図3(a)から図3(d)を用いて、本発明の第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法を説明する。
図2(a)から図2(d)は、赤外線画像の画像処理方法により、測定対象物1内部の欠陥等を検出する方法の概念を説明する概略図である。図3(a)から図3(d)は、ロックイン解析を行う際の所定区間の赤外線画像を抽出する概念を示すグラフである。
図2(a)は、フラッシュランプ12等の加熱源により、欠陥等がない測定対象物1に対して周期的に加熱を行い、赤外線カメラ11で測定対象物1の温度を測定する場合の模式図である。なお、図2(a)において、加熱源の記載は省略している。また、図2(b)は、フラッシュランプ12等で周期的に加熱した図2(a)に示す欠陥等がない測定対象物1の温度と時間の関係を示すグラフである。
図2(b)に示すように、欠陥等がない測定対象物1が極短時間で加熱されると測定対象物1の温度は急激に上昇し、その後測定対象物1への加熱が停止されると測定対象物1が冷却され、時間とともに温度が低下する。
本発明の第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法は、測定対象物1に与える加熱及び冷却(非加熱)の周期と、解析できる測定対象物1の深さとの間に相関関係があることを利用した画像処理方法である。図2(b)に示すように、加熱源によって加熱された測定対象物1は、非加熱時に冷却される。赤外線カメラ11は、測定対象物1の表面に近い位置(浅い位置)の状態に基づく赤外線ほど加熱終了後すぐに受光し、測定対象物1の表面に遠い位置(深い位置)の状態に基づく赤外線ほど加熱終了後受光までに時間がかかる。ここで、測定対象物1の「表面」とは、測定対象物1の赤外線カメラ11により測定を行っている面を示す。
一方、図2(c)は、フラッシュランプ12等の加熱源により、欠陥1aがある測定対象物1に対して周期的に加熱を行い、赤外線カメラ11で測定対象物1の温度を測定する場合の模式図である。ここで、欠陥1aとは、例えば測定対象物1内部の空洞や、測定対象物1の表面に形成された傷等である。図2(c)には、測定対象物1の内部に空洞状の欠陥1aが設けられた測定対象物1を示している。なお、図2(c)において、加熱源の記載は省略している。また、図2(d)は、フラッシュランプ12等で周期的に加熱した図2(c)に示す欠陥1aがある測定対象物1の欠陥1aがある領域の温度と時間の関係を示すグラフである。
図2(d)に示すように、欠陥1aがある測定対象物1が極短時間で加熱されると測定対象物1の温度は急激に上昇し、その後測定対象物1への加熱が停止されると測定対象物1が冷却されて温度が低下する。このとき、測定対象物1の温度の低下は、冷却過程の一部で、欠陥がない測定対象物1の温度の低下とは異なる挙動を示す。具体的には、欠陥1aがある測定対象物1の温度を示す曲線の変化率が急激に変化する。これは、測定対象物1の欠陥1aの部分の熱容量が、測定対象物1のその他の部分の熱容量とは異なるためであると考えられる。
本発明の第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法は、測定対象物1に与える加熱及び冷却(非加熱)の周期と、解析できる測定対象物1の深さとの間に相関関係があることを利用した画像処理方法である。図2(b)又は図2(d)に示すように、加熱源によって加熱された測定対象物1が、非加熱時に冷却される。赤外線カメラ11は、測定対象物1の表面に近い位置(浅い位置)の状態に基づく赤外線ほど加熱終了後すぐに受光し、測定対象物1の表面に遠い位置(深い位置)の状態に基づく赤外線ほど加熱終了後受光までに時間がかかる。
すなわち、欠陥1aが測定対象物1の表面から浅い位置に存在する場合には、温度低下における「異なる挙動」は加熱終了直後に現れ、欠陥1aが測定対象物1の表面から深い位置に存在する場合には、温度低下における「異なる挙動」は加熱終了後しばらくして現れる。
このため、第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法では、周期的に温度変化する測定対象物1を赤外線カメラ11により連続撮影して赤外線熱画像データを取得し、取得した赤外線熱画像データのうち、測定対象物1の温度変化の周期より狭い一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、抽出された上述の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する。
すなわち、第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法において、測定対象物1から得たい欠陥や配向等の情報の位置深さが既知の場合には、測定対象物1の周期的な温度変化の区間の赤外線熱画像データのうち、周期内の任意の区間の赤外線熱画像データを抽出して画像解析を行う。測定対象物1から得たい情報の「位置深さ」とは、測定対象物1の表面からの深さをいう。
具体的には、測定対象物1の厚み方向の測定対象位置が、赤外線カメラ11による測定対象物1の測定表面から遠い程、赤外線熱画像データを抽出する一部の区間の開始位置を加熱終了時から遅い位置に設定する。
測定対象物1の厚み方向の測定対象位置が、赤外線カメラ11による測定対象物の測定表面から浅い位置である場合には、赤外線熱画像データを抽出する一部の区間の開始位置を加熱終了から近い位置に設定する。すなわち、測定対象物1の浅い位置の情報を得たい場合、測定対象物1への加熱終了直前又は直後の一定区間の赤外線熱画像データを抽出して画像解析を行えばよい。
また、測定対象物1の厚み方向の測定対象位置が、赤外線カメラ11による測定対象物の測定表面から深い位置である場合には、赤外線熱画像データを抽出する一部の区間の開始位置を加熱終了から遠い位置に設定する。すなわち、測定対象物1の深い位置の情報を得たい場合には、赤外線熱画像データを抽出する一部の区間の開始位置を加熱終了時から遅い位置に設定し、測定対象物1への加熱終了後一定時間が経過後から一定区間の赤外線熱画像データを抽出して画像解析を行えばよい。
これにより、データの解析精度が高まるとともに、データの測定時間及び解析時間を短縮することができる。
また、測定対象物1から得たい情報の位置深さが未知の場合には、測定対象物1への加熱終了前後又は加熱終了後の様々な区間の赤外線熱画像データをそれぞれ抽出して、複数の区間の画像解析を行う。そして、各区間の解析画像を比較する。これにより、欠陥等が存在する場合にはその位置深さを特定することができる。また、配向がある場合には、解析画像から、配向方向及びその位置深さを特定することができる。
図3(a)は、図1に示す赤外線画像処理装置10により測定された、フラッシュランプ12の周期的な加熱による測定対象物1の温度変化を示すグラフである。このグラフは、赤外線カメラ11で測定された特定の画素における温度変化を示している。測定対象物1の温度は、フラッシュランプ12の加熱により温度が急激に上昇し、加熱の停止により温度が緩やかに低下するサイクルを繰り返す。すなわち、測定対象物1の温度変化のサイクル(周期T)は、加熱工程(周期T1)と放熱工程(周期T2)とを繰り返す。なお、図3(a)に示す測定対象物1の温度が急激に上昇するピーク位置は、フラッシュランプ12による加熱とほぼ同等の時間もしくはフラッシュランプ12による加熱からやや遅れた時間に位置する。図3(a)では、測定対象物1の温度が加熱により上昇した後、加熱開始前の温度まで下がる前に次の加熱を開始している。このため、測定対象物1の温度は、全体的に徐々に上昇している。
このような温度変化を示す測定対象物1を赤外線カメラ11によって所定の撮影フレームレートで撮影することにより、例えば数百〜数千枚の赤外線熱画像に対応する赤外線熱画像データが生成される。この赤外線熱画像データから、加熱源による所定周期での加熱終了後の所定の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出して画像解析することにより、測定対象物1の特定の位置深さの情報を得ることができる。
測定対象物1は、フラッシュランプ12による周期的な加熱により、温度上昇及び温度低下の温度変化の周期を繰り返している。そして、測定対象物1が放熱する区間のうちの一部の区間で撮影された赤外線熱画像データが抽出されてロックイン処理により画像解析が行われる。
このような画像処理方法について、図3(b)、図3(c)及び図3(d)を用いて詳細に説明する。
図3(b)は、測定対象物1の表層の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の表層の情報は、図3(b)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了直後の区間(区間b1、b2、b3、b4及びb5)で取得された赤外線熱画像データを抽出して画像解析することにより得られる。区間b1、b2、b3、b4及びb5は、加熱終了直後からt1秒の区間を示すものとする。
このとき、第1実施形態に係る赤外線画像データの画像処理方法では、解析区間を区間b1、b2、b3、b4及びb5の少なくとも一つとすることができ、解析区間を複数の区間とすることが好ましい。すなわち、複数回繰り返される測定対象物1の温度変化の周期のうち、複数の周期それぞれの同一の区間から、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、画像解析に用いることが好ましい。
ここで、測定対象物1の温度変化の一サイクル(周期T)の周期内で設定された第1の区間の加熱開始時又は加熱終了時を基準とする始点及び終点と、他のサイクルの周期内で設定された第2の区間との始点及び終点とがそれぞれ一致する場合、第1の区間と第2の区間とを「同一の区間」というものとする。図3(b)において、1サイクル目の区間b1、b2、b3、b4及びb5は、各サイクルにおける加熱終了後0秒を始点としt1秒を終点とする区間(0<t1)であり、互いに同一の区間である。
図3(b)に示す区間b1、b2、b3、b4及びb5で取得された赤外線熱画像データを用いて画像解析を行う場合、図3(b)に示す区間b1で取得された赤外線熱画像データのみを用いて画像解析を行う場合と比較して、解析精度が向上するため好ましい。
区間b1、b2、b3、b4及びb5で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了直後の温度変化の情報のみが反映されており、加熱終了直後以外の温度変化の情報は反映されない。このため、測定対象物1の表層の解析精度が向上する。
図3(c)は、測定対象物1の中間層の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の中間層の情報は、図3(c)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了後一定時間経過後の区間(区間c1、c2、c3、c4及びc5)で取得された赤外線熱画像データを抽出して、画像解析することにより得られる。区間c1、c2、c3、c4及びc5は、各サイクルにおける加熱終了後t1秒を始点としt2秒を終点とする区間(0<t1<t2)を示し、互いに同一の区間であるものとする。
区間c1、c2、c3、c4及びc5で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了後一定時間経過後の区間の温度変化の情報のみが反映されており、加熱終了後一定時間経過後の以外の区間の温度変化の情報は反映されない。このため、測定対象物1の中間層の解析精度が向上する。
図3(d)は、測定対象物1の深部の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の深部の情報は、図3(d)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了後中間層の情報を解析する場合よりもさらに長時間経過後の区間(区間d1、d2、d3、d4及びd5)で取得された赤外線熱画像データを抽出して、画像解析することにより得られる。区間d1、d2、d3、d4及びd5は、各サイクルにおける加熱終了後t2秒を始点としt3秒を終点とする区間(0<t1<t2<t3)を示し、互いに同一の区間であるものとする。
区間d1、d2、d3、d4及びd5で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了後、中間層の情報を解析する場合よりもさらに長時間経過後の区間の温度変化の情報のみが反映されている。このため、測定対象物1の深部の解析精度が向上する。
このように、図3(b)から図3(d)のそれぞれにおいて斜線で示される特定の区間の赤外線熱画像データのみを選択的に抽出することにより、所望の位置深さに対応する温度変化の情報のみに基づいてロックイン処理による解析を行うことができる。解析区間(赤外線画像データの取得区間)は、加熱源による加熱周期に基づいて設定される。
例えば、フラッシュランプ12によりごく短時間の加熱と放熱のサイクルを10秒周期で行う場合、加熱周期(10秒)に基づいて、測定対象物1の表層の情報を解析する場合の解析区間を例えば「加熱終了後0秒から0.5秒の間」と設定することができる。また、測定対象物1の中間層の情報を解析する場合の解析区間を例えば「加熱終了後0.5秒から4.0秒の間」と設定し、測定対象物1の深部の情報を解析する場合の解析区間を例えば「加熱終了後4.0秒から9.0秒の間」と設定することができる。なお、例示した解析区間は一例であり、加熱周期や取得したい情報の位置深さによって任意に設定される。
このため、撮影された全ての赤外線熱画像(加熱周期1周期で撮影された全ての赤外線熱画像)の赤外線熱画像データを画像解析に用いていた従来のロックイン処理による画像解析と比較して、所望の位置深さの情報をより精度よく解析することができる。
また、測定対象物1から得たい情報の位置深さが未知の場合には、例えば、図3(b)の区間b1からb5の赤外線熱画像データ、図3(c)の区間c1からc5の赤外線熱画像データ及び図3(d)の区間d1からd5の赤外線熱画像データをそれぞれ抽出し、解析する。これにより、測定対象物1の表層、中間層及び深部のそれぞれの解析画像を得ることができるため、測定対象物1の欠陥や配向及び欠陥や配向の深さを把握することができる。
また、加熱源による加熱周期が未知の場合には、加熱源の加熱周期に基づいて画像処理の対象となる赤外線熱画像データを決定することが困難である。このため、加熱源による加熱周期が未知の場合には、赤外線熱画像データを抽出する区間を、赤外線カメラ11により取得した赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断された温度変化の周期に基づいて決定することができる。図3(a)等に示す測定対象物1の温度変化の周期は、加熱源による加熱周期とほぼ同等となる。このため、測定対象物1の温度変化の周期に基づいて、測定対象物1の所望の位置深さの情報を得るために必要な赤外線熱画像データを抽出する区間を決定することができる。
なお、画像解析に用いる赤外線熱画像データは、赤外線カメラ11によって測定対象物1の温度変化の全周期で赤外線熱画像データを取得し、取得した赤外線熱画像データから、温度変化の周期内の一部の区間で取得された赤外線熱画像データを抽出することで得られる。赤外線カメラ11は、所定の測定時間の間、常に測定対象物1の撮影を行う。そして、コンピュータ14は、赤外線カメラ11により温度変化の全周期で取得した赤外線熱画像データのなかから、所望の区間に取得された赤外線熱画像データを抽出して画像解析を行う。
(変形例)
画像解析に用いる赤外線熱画像データの取得方法は上述した方法に限られない。例えば、赤外線カメラ11によって所定区間のみ撮影を行ってもよい。
この場合、画像解析に用いる赤外線熱画像データは、赤外線カメラ11によって測定対象物1の温度変化の周期内の一部の区間でのみ赤外線熱画像データを取得し、取得した赤外線熱画像データを、周期内の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとすることで得てもよい。赤外線カメラ11は、測定対象物1の加熱工程及び放熱工程の全工程において常に測定対象物1の撮影を行わず、所望の情報を得るために必要な赤外線熱画像データを取得する場合にのみ撮影を行う。そして、コンピュータ14は、赤外線カメラ11により取得された赤外線熱画像データを、所望の区間に取得された赤外線熱画像データを抽出して画像解析を行う。
赤外線カメラによって所定区間のみ撮影を行う構成は、例えば以下の構成に適用することができる。
測定対象物1の製造ラインの最終部分に加熱炉と赤外線カメラとを設置し、製造された測定対象物1を加熱炉にて加熱後、加熱炉の外部に設置した赤外線カメラにより温度を測定するようにする。赤外線カメラは、所望の深さの情報が得られる位置に設置する。例えば、加熱終了後(加熱炉からの部材排出後)3秒後に得られる温度変化量に基づいて、測定対象物の所望の位置深さの情報が得られることが分かっている場合には、加熱終了3秒後に測定対象物の温度の測定(撮影)が可能な位置に赤外線カメラを設置する。これにより、赤外線カメラが測定対象物の加熱及び放熱の全区間において撮影を行わなくても、所望の深さの情報を得ることができる。このため、ロックイン処理による画像解析を行うことにより欠陥や配向を把握することができる。
<効果>
以上説明した本発明の第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法及び赤外線画像処理装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)周期的に温度変化する測定対象物の赤外線熱画像データの画像処理において、画像処理の対象区間を温度変化の周期内の一部の区間とすることで、測定対象物の特定の位置深さの情報を精度良く得ることができ、また、対象データ量及び解析時間を短縮することができる。
(2)ロックイン処理により画像処理を行うことで、簡単な演算で精度の高い解析結果を得ることができる。ロックイン処理の際のロックイン周波数を変更することにより、ロックイン処理の最適化を図ることもできる。
(3)測定対象物から得たい情報の位置深さが未知の場合であっても、測定対象物への加熱終了後の様々な区間の赤外線熱画像データをそれぞれ抽出して複数の区間の画像解析を行うことで、様々な深さに対応する解析画像を得ることができる。また、様々な深さに対応する解析画像を比較することで、欠陥等が存在する場合にその位置深さを特定することができる。
(4)加熱源による加熱周期が未知の場合であっても、測定対象物の温度変化の周期に基づいて画像処理の対象となる赤外線熱画像データを決定することができる。
2.第2実施形態
以下、図4及び図5(a)から図5(d)を参照しながら、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。以下の図において、第1実施形態と共通する部分には共通の符号を付し、詳細な説明を省略する。
(2−1)赤外線画像処理装置の構成
図4は、本発明の第2実施形態に係る赤外線画像処理装置30の構成を示す図である。赤外線画像処理装置30は、赤外線カメラ11と、加熱源としてのハロゲンランプ32(32a及び32b)と、周期的な信号を発生する信号発生器33と、赤外線カメラ11で得られた熱画像データに基づく演算を行うコンピュータ14とを備えている。
ハロゲンランプ32は、矩形状の連続光を発生して測定対象物1を加熱する加熱源である。
ハロゲンランプ32には、信号発生器33より矩形状の周期信号が入力される。これにより、ハロゲンランプ32は周期的に発光し、測定対象物1を所定の加熱周期で加熱する。ハロゲンランプ32は、短時間の加熱と短時間の非加熱とを1サイクルとして繰り返すことにより測定対象物1を加熱する。
図4に示す第1実施形態における赤外線画像処理装置30は、2灯のハロゲンランプ32a及び32bを備えた例を示している。
信号発生器33は、周期的な信号を発生し、当該周期的な信号をハロゲンランプ32に入力する。第1実施形態において、信号発生器33は、ハロゲンランプ32に対して矩形状の信号を入力する。信号発生器33から発生される信号の波形は、オン時間とオフ時間とを任意に設定することで規定することができる。
これにより、ハロゲンランプ32によって所定の加熱周期で測定対象物1が加熱される。
(2−2)赤外線画像の画像処理方法
第2実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法では、第1実施形態と同様に、周期的に温度変化する測定対象物1を赤外線カメラ11により連続撮影して赤外線熱画像データを取得し、取得した赤外線熱画像データのうち、測定対象物1の温度変化の周期より狭い一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、抽出された上述の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する。
第2実施形態では、測定対象物1が矩形状の周期信号が入力されたハロゲンランプ32で周期的に加熱される点で第1実施形態と異なる。このため、第2実施形態における測定対象物1の温度変化の周期が、第1実施形態と異なる。
以下、図5(a)から図5(d)を用いて、本発明の第2実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法を説明する。
図5(a)から図5(d)は、ロックイン解析を行う際の所定区間の赤外線画像を抽出する概念を示すグラフである。
図5(a)は、図4に示す赤外線画像処理装置30により測定された、ハロゲンランプ32の周期的な加熱による測定対象物1の温度変化を示すグラフである。測定対象物1の温度は、ハロゲンランプ32の加熱により温度が上昇し、加熱の停止により温度が低下するサイクルを繰り返す。すなわち、測定対象物1の温度変化のサイクル(周期T)は、加熱工程(周期T1)と放熱工程(周期T2)とを繰り返す。なお、図5(a)に示す測定対象物1の加熱工程(周期T1)は、ハロゲンランプ32による加熱とほぼ同等の時間もしくはハロゲンランプ32による加熱からやや遅れた時間に位置する。図5(a)では、測定対象物1の温度が加熱により上昇した後、加熱開始前の温度まで下がる前に次の加熱を開始している。このため、測定対象物1の温度は、全体的に徐々に上昇している。
図5(b)は、測定対象物1の表層の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の表層の情報は、図5(b)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了前後の区間(区間b6、b7、b8及びb9)の少なくとも1つの区間で取得された赤外線熱画像データを抽出して画像解析することにより得られる。区間b6、b7、b8及びb9は、加熱終了時を含む加熱終了直前からt4秒の区間を示し、「同一の区間」であるものとする。
このとき、第2実施形態に係る赤外線画像データの画像処理方法では、解析区間を区間b6、b7、b8及びb9の少なくとも一つとすることができ、解析区間を複数の区間とすることがより好ましい。
区間b6、b7、b8及びb9で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了前後の温度変化の情報のみが反映されており、加熱終了前後以外の温度変化の情報は反映されない。このため、測定対象物1の表層の解析精度が向上する。
図5(c)は、測定対象物1の中間層の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の中間層の情報は、図5(c)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了後一定時間経過後の区間(区間c6、c7、c8及びc9)の少なくとも1つの区間で取得された赤外線熱画像データを抽出して画像解析することにより得られる。区間c6、c7、c8及びc9は、各サイクルにおける加熱終了後t4秒を始点としt5秒を終点とする区間(0<t4<t5)であり、互いに同一の区間であるものとする。
区間c6、c7、c8及びc9で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了後一定時間経過後の区間の温度変化の情報のみが反映されており、加熱終了後一定時間経過後の以外の区間の温度変化の情報は反映されない。このため、測定対象物1の中間層の解析精度が向上する。
図5(d)は、測定対象物1の深部の情報を解析する場合の解析区間を示す。測定対象物1の深部の情報は、図5(d)中において斜線で示される測定対象物1への加熱終了後中間層の情報を解析する場合よりもさらに長時間経過後の区間(区間d6、d7、d8及びd9)の少なくとも1つの区間で取得された赤外線熱画像データを抽出して、画像解析することにより得られる。区間d6、d7、d8及びd9は、各サイクルにおける加熱終了後t5秒を始点としt6秒を終点とする区間(0<t4<t5<t6)であり、互いに同一の区間であるものとする。
区間d6、d7、d8及びd9で取得された赤外線熱画像データを用いた解析画像には、加熱終了後、中間層の情報を解析する場合よりもさらに長時間経過後の区間の温度変化の情報のみが反映されている。このため、測定対象物1の深部の解析精度が高向上する。
このように、図5(b)から図5(d)のそれぞれにおいて斜線で示される特定の区間の赤外線熱画像データのみを選択的に抽出することにより、所望の位置深さに対応する温度変化の情報のみに基づいてロックイン処理による解析を行うことができる。解析区間(赤外線画像データの取得区間)は、加熱源による加熱周期に基づいて設定される。
第2実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法では、第1実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法と同様に、測定対象物1から得たい情報の位置深さが未知の場合でも、測定対象物1の表層、中間層及び深部のそれぞれの解析画像を取得し、測定対象物1の欠陥や配向及び欠陥や配向の深さを把握することができる。
また、加熱源による加熱周期が未知の場合でも、赤外線熱画像データを抽出する区間を、赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断された温度変化の周期に基づいて決定することができる。
画像解析に用いる赤外線熱画像データは、第1実施形態と同様に、赤外線カメラ11によって測定対象物1の温度変化の全周期で取得された赤外線熱画像データから、温度変化の周期内の一部の区間で取得された赤外線熱画像データを抽出することで得られる。
また、赤外線カメラ11によって測定対象物1の温度変化の周期内の一部の区間でのみ赤外線熱画像データを取得し、取得した赤外線熱画像データを画像解析に用いる赤外線熱画像データとしてもよい。
<効果>
以上説明した本発明の第2実施形態に係る赤外線画像の画像処理方法及び赤外線画像処理装置によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(4)の効果を得ることができる。
(その他)
また、測定対象物1の加熱源として、第1実施形態ではフラッシュランプ12を、第2実施形態ではハロゲンランプ32を挙げて説明したが、加熱源はこれらに限られない。
例えば、加熱源としては、測定対象物1を周期的に発熱させる超音波送信手段、電圧印加手段又は電磁誘導手段であってもよい。さらに、測定対象物1の周期的な加熱が、日照、気温及び風等の測定対象物1周囲の自然環境によってなされてもよい。
以下、実施例により本願に係る発明を具体的に説明する。なお、本願に係る発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例では、裏面に人工的に傷を設けた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)板に対して、画像解析試験を行った。
<第1の実施例>
第1の実施例では、フラッシュランプにより人工
傷を有するCFRP板を加熱して画像解析試験を行った。
(CFRP板)
測定対象物であるCFRP板は、縦190mm、横60mm、厚み2mmであり、裏面に深さ0.8mmの人工傷が形成されている。図6は、測定対象物であるCFRP板の裏面の外観を示す写真である。
(試験装置)
第1の実施例において、画像解析試験は、赤外線カメラ、2灯のフラッシュランプ、信号発生器及びパーソナルコンピュータを備える図1に示す試験装置を用いて行った。赤外線カメラは、撮像素子がインジウムアンチモンである、320×256画素の冷却タイプのカメラを使用した。
(試験条件)
赤外線カメラの撮影フレームレートを47Hz、フラッシュランプの加熱周波数を0.1Hz、赤外線熱画像の取得画像数を2576画像とした。フラッシュランプによる加熱周期(加熱周波数0.1Hzの逆数)が10秒であるため、フラッシュランプによる加熱は、ごく短時間の加熱の後約10秒間非加熱とするサイクルを連続的に交互に繰り返した。
また、測定時間を約55秒とし、フラッシュランプによる加熱を5回行った。なお、初回のフラッシュランプによる加熱前及び5回目の加熱後の非加熱期間後に、合計5秒の待機時間を設けた。
(測定結果)
図7(a)から図7(c)は、第1の実施例における解析結果の画像である。
図7(a)は、全区間を対象としたロックイン解析結果を振幅表示した解析画像である。当該解析画像において、解析区間は全区間(解析画像数:2576画像)である。解析画像には、CFRP板表面の炭素繊維の配向とともに、CFRP板裏面に人工的に導入した傷が表示されている。
図7(b)は、加熱直後から加熱終了後0.5秒までの区間に取得された赤外線熱画像を抽出してロックイン解析した結果を振幅表示した解析画像である。ここで、解析に用いたロックインの周期(周波数の逆数)は、切り出した区間と一致させている。この場合、加熱終了後0.5秒以降の画像を解析に含めないため、CFRP板表面の炭素繊維の配向状態がより鮮明に表示されているものの、CFRP板裏面の人工傷は図7(b)に示す解析画像に表示されない。
図7(c)は、加熱終了後4.0秒から9.0秒までの区間に取得された赤外線熱画像を抽出してロックイン解析した結果を振幅表示した解析画像である。ここで、解析に用いたロックインの周期(周波数の逆数)は、切り出した区間と一致させている。この場合、加熱後の4.0秒以前の画像を解析に含めないため、CFRP板表面の炭素繊維の配向状態は図7(c)に示す解析画像に表示されない。このため、図7(c)に示す解析画像には、解析区間を全区間とした図7(a)に示す解析画像と比較して、CFRP板裏面の人工傷がより鮮明に表示されている。
<第2の実施例>
第2の実施例では、ハロゲンランプによりCFRP板を加熱して画像解析試験を行った。
(CFRP板)
試験対象のCFRP板は、第1の実施例で用いたCFRP板である。すなわち、試験対象のCFRP板は、縦190mm、横60mm、厚み2mmであり、裏面に深さ0.8mmの人工傷が形成されている。
(試験装置)
第2の実施例において、画像解析試験は、赤外線カメラ、2灯のハロゲンランプ、関数発生器及びパーソナルコンピュータを備える図4に示す試験装置を用いて行った。赤外線カメラは、撮像素子がマイクロボロメータである、640×480画素の非冷却タイプのカメラを使用した。
(試験条件)
赤外線カメラの撮影フレームレートを12.5Hz、ハロゲンランプの加熱周波数を0.05Hz、赤外線熱画像の取得画像数を5000画像とした。
ハロゲンランプの制御信号は矩形波によって行い、そのデューティー比は50%とした。すなわち、ハロゲンランプのON,OFFが連続的に行なわれ、加熱周期(加熱周波数0.05Hzの逆数)が20秒であるため、ハロゲンランプによる加熱は、加熱を10秒間行った後10秒間非加熱とするサイクルを連続的に交互に繰り返した。
また、測定時間を440秒とした。ハロゲンランプによる加熱と冷却を1サイクルとすると、440秒間の測定で20サイクルの加熱及び冷却が行われるが、測定開始時と測定終了時の不完全なサイクルを除いた19サイクルを有効なサイクルとした。20サイクルの加熱及び冷却で得られた5000画像のうち、有効な19サイクル分の4750画像を解析対象の画像とした。
図8(a)及び図8(b)、並びに図9(a)及び図9(b)は、第2の実施例における解析結果の画像である。
図8(a)は、有効な19サイクル分の区間を対象としたロックイン解析結果を振幅表示した解析画像である。当該解析画像において、解析区間は有効な19サイクル分の区間(4750画像)である。解析画像には、CFRP板表面の炭素繊維の配向とともに、CFRP板裏面に人工的に導入した傷が表示されている。
図8(b)は、加熱開始後9.8秒から10.6秒(加熱終了前0.2秒から加熱終了後0.6秒に該当)までの区間に取得された赤外線熱画像を抽出してロックイン解析した結果を振幅表示した解析画像である。ここで、解析に用いたロックインの周期(周波数の逆数)は、上述した区間を抽出する前の状態(加熱周波数:0.05Hz、ロックインの周期:20秒)としている。ロックイン解析対象である加熱開始後の9.8秒から10.6秒までの区間は、加熱終了直前から冷却開始直後の状態に該当する。この場合、加熱終了後0.6秒以降の画像を解析に含めないため、CFRP板の表面部の情報が解析される。このため、図8(b)に示す解析画像には、CFRP板表面の炭素繊維の配向状態がより鮮明に表示されているものの、CFRP板裏面の人工傷は表示されない。
図9(a)は、加熱開始後10.6秒から12.0秒(加熱終了後0.6秒から加熱終了後2.0秒に該当)までの区間に取得された赤外線熱画像を抽出してロックイン解析した結果を振幅表示した解析画像である。ここで、解析に用いたロックインの周期(周波数の逆数)は、上述した区間を抽出する前の状態(加熱周波数:0.05Hz、ロックインの周期:20秒)としている。ロックイン解析対象である加熱開始後10.6秒から12.0秒までの区間は、加熱終了後の状態に該当する。この場合、加熱終了後0.6秒まで及び加熱終了後2.0秒以降の画像を解析に含めないため、CFRP板の厚さ方向中間部の情報が解析される。このため、図9(a)に示す解析画像には、CFRP板裏面の人工傷のうち深い部分(CFRP板表面から見て浅い部分)が表示されている。
図9(b)は、加熱開始後12.0秒から16.0秒(加熱終了後2.0秒から加熱終了後6.0秒に該当)までの区間に取得された赤外線熱画像を抽出してロックイン解析した結果を振幅表示した解析画像である。ここで、解析に用いたロックインの周期(周波数の逆数)は、上述した区間を抽出する前の状態(加熱周波数:0.05Hz、ロックインの周期:20秒)としている。ロックイン解析対象である加熱開始後12.0秒から16.0秒までの区間は、加熱終了後一定時間経過後の区間に該当する。この場合、加熱終了後2.0秒までの画像を解析に含めないため、CFRP板の厚さ方向の深層部分の情報が解析される。このため、図9(a)に示す解析画像には、解析区間を全区間とした図8(a)に示す解析画像と比較して、CFRP板裏面の人工傷がより鮮明に表示されている。
以上実施例によって説明したように、赤外線熱画像データの画像処理において、画像処理の対象区間を、温度変化の周期内の一部の区間とすることにより、測定対象物の任意の深さにおける状態の解析精度を向上させることができる。
1 測定対象物
10,30 赤外線画像処理装置
11 赤外線カメラ
12 フラッシュランプ
13,33 信号発生器
14 計算機(コンピュータ)
32 ハロゲンランプ

Claims (11)

  1. 周期的に温度変化する測定対象物を赤外線カメラにより連続撮影して赤外線熱画像データを取得する赤外線熱画像データ取得工程と、
    前記赤外線熱画像データ取得工程において取得した前記赤外線熱画像データのうち、前記測定対象物の温度変化の周期内の該周期よりも狭い一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出する赤外線熱画像データ抽出工程と、
    前記赤外線熱画像データ抽出工程で抽出された前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する解析画像作成工程と、
    を備え、
    前記赤外線熱画像データ取得工程は、複数回繰り返される前記測定対象物の温度変化の複数の周期について前記赤外線熱画像データを取得し、
    前記赤外線熱画像データ抽出工程は、前記赤外線熱画像データ取得工程で取得した前記複数の周期に亘る前記赤外線熱画像データの各周期内で同一の区間から抽出された複数の赤外線熱画像データのみを、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとし、
    前記解析画像作成工程は、前記画像処理として、時間に伴って変化する温度変化量又は位相に基づいて前記解析画像を作成するロックイン処理を行う
    赤外線画像データの画像処理方法。
  2. 前記赤外線熱画像データは、前記測定対象物から放射される赤外線の受光量に基づく温度データを含む
    請求項1に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  3. 赤外線熱画像データ取得工程において、温度上昇及び温度低下の温度変化の周期を繰り返す前記測定対象物の放熱区間から、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出する
    請求項1又は2のいずれか1項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  4. 前記測定対象物の厚み方向の測定対象位置が、前記赤外線カメラによる前記測定対象物の測定表面から遠い程、前記赤外線熱画像データを抽出する前記一部の区間の開始位置を加熱終了時から遅い位置に設定する
    請求項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  5. 前記測定対象物の厚み方向の測定対象位置が、前記赤外線カメラによる前記測定対象物の測定表面から浅い位置である場合には、前記一部の区間を加熱終了直前又は直後の区間とする
    請求項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  6. 前記赤外線熱画像データを抽出する前記一部の区間を、前記赤外線カメラにより取得した前記赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断された温度変化の周期に基づいて決定する
    請求項1からのいずれか1項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  7. 前記赤外線熱画像データ取得工程において、前記測定対象物の温度変化の全周期で赤外線熱画像データを取得し、
    前記赤外線熱画像データ抽出工程において、前記測定対象物の温度変化の全周期で取得した赤外線熱画像データから、前記周期内の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出する
    請求項1からのいずれか1項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  8. 前記赤外線熱画像データ取得工程において、前記測定対象物の温度変化の周期内の一部の区間で赤外線熱画像データを取得し、
    前記赤外線熱画像データ抽出工程において、前記測定対象物の温度変化の周期内の一部の区間で取得した赤外線熱画像データを、前記周期内の一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとする
    請求項1からのいずれか1項に記載の赤外線画像データの画像処理方法。
  9. 測定対象物を周期的に加熱する加熱源と、
    周期的に温度変化する前記測定対象物を連続撮影して赤外線熱画像データを取得する赤外線カメラと、
    取得した前記赤外線熱画像データのうち、前記測定対象物の温度変化の周期内の該周期よりも狭い一部の区間で撮影された赤外線熱画像データを抽出し、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行い、解析画像を作成する計算機と、
    を備え、
    赤外線カメラは、複数回繰り返される前記測定対象物の温度変化の複数の周期について前記赤外線熱画像データを取得し、
    前記計算機は、前記赤外線カメラで取得した前記複数の周期に亘る前記赤外線熱画像データの各周期内で同一の区間から複数の赤外線熱画像データのみを抽出して、前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データとし、前記画像処理として、時間に伴って変化する温度変化量又は位相に基づいて前記解析画像を作成するロックイン処理を行う
    赤外線画像処理装置。
  10. 周期信号を発生し、該周期信号を前記加熱源に入力する信号発生器を備え、
    前記計算機は、前記加熱源に入力される前記周期信号に基づいて決定された前記一部の区間で撮影された赤外線熱画像データに基づいて画像処理を行う
    請求項に記載の赤外線画像処理装置。
  11. 前記計算機は、前記温度変化の周期を、前記赤外線カメラにより取得した前記赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断し、前記赤外線熱画像データを抽出する前記一部の区間を、前記赤外線熱画像データの温度情報に基づいて判断した前記温度変化の周期に基づいて決定する
    請求項に記載の赤外線画像処理装置。
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