以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを模式的に部分切欠断面図で示す。
図1に示す中間膜1は、多層中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、サーモクロミック層2と、サーモクロミック層2の第1の表面2a側に配置された第1の樹脂層3と、サーモクロミック層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2b側に配置された第2の樹脂層4とを備える。第1の樹脂層3は、サーモクロミック層2の第1の表面2aに積層されている。第2の樹脂層4は、サーモクロミック層2の第2の表面2bに積層されている。サーモクロミック層2は、中間層であり、サーモクロミック性を有する。第1,第2の樹脂層3,4は、本実施形態では表面層である。サーモクロミック層2は、第1,第2の樹脂層3,4の間に配置されている。サーモクロミック層2は、第1,第2の樹脂層3,4の間に挟み込まれている。従って、中間膜1は、第1の樹脂層3と、サーモクロミック層2と、第2の樹脂層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
なお、サーモクロミック層2と第1の樹脂層3との間、及び、サーモクロミック層2と第2の樹脂層4との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。サーモクロミック層2と第1の樹脂層3、及び、サーモクロミック層2と第2の樹脂層4とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を含む層、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等を含む層、並びに金属箔等の無機化合物により形成された層が挙げられる。これらの他の層が含まれる場合、1種の層のみが含まれていてもよく、2種以上の異なる層が含まれていてもよい。
上記サーモクロミック層はサーモクロミック性を有する。上記サーモクロミック層は、サーモクロミック性を有していれば特に限定されない。
上記第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率は、上記第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率よりも高い。別の見方をすれば、上記第1の樹脂層の赤外線吸収率は、上記第2の樹脂層の赤外線吸収率よりも低い。
従来、中間膜を用いた合わせガラスでは、高いサーモクロミック性と、高い可視光線透過率(Visible Transmittance)とを両立することは困難であるという問題があった。
これに対して、本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記サーモクロミック層が備えられており、更に該サーモクロミック層の両側に第1,第2の樹脂層が配置されており、上記第1の樹脂層の上記赤外線透過率が上記第2の樹脂層の上記赤外線透過率よりも高いので、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスのサーモクロミック性及び可視光線透過率のいずれも高くすることができる。
良好なサーモクロミック性を発現させるために、上記サーモクロミック層は、二酸化バナジウム粒子又は二酸化バナジウムのバナジウム原子の一部をタングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の原子で置換した置換二酸化バナジウム粒子を含むことが好ましい。良好なサーモクロミック性を発現させるために、上記サーモクロミック層は、熱可塑性樹脂と二酸化バナジウム粒子又は上記置換二酸化バナジウム粒子とを含むことが好ましい。
上記のようなサーモクロミック層を備える中間膜では、遮熱性を高めることができる。遮熱性の指標であるTds(direct solar energy transmitted through a glazing)が低い合わせガラスを得ることができる。
二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムの相転移温度未満では、サーモクロミック層の可視光線透過率及び赤外線透過率が高い。二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムの相転移温度以上では、サーモクロミック層の可視光線透過率が高い状態で、サーモクロミック層の赤外線透過率が低下すると考えられる。
また、上記第1の樹脂層は、赤外線を比較的多く透過する。このため、上記第1の樹脂層を透過した多くの赤外線は、上記サーモクロミック層に至る。二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウム等の相転移温度以上では、上記サーモクロミック層に至った赤外線は、上記サーモクロミック層により透過が阻害され、一部は反射される。また、上記第1の樹脂層の赤外線透過率が高いことから、上記サーモクロミック層により反射された赤外線の多くは、上記第1の樹脂層を透過する。この結果、二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムの相転移温度以上では、中間膜に赤外線が入射された際の中間膜の温度上昇を抑制できる。このため、本発明に係る合わせガラス用中間膜の二酸化バナジウム又は置換二酸化バナジウムの相転移温度以上における遮熱性が高くなり、更に耐光性に優れているので高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる。また、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを建築物又は車両の開口部に取り付けることで、建築物又は車両の内部空間の温度上昇を効果的に抑制できる。
一方で、仮に上記第1の樹脂層と上記サーモクロミック層とを赤外線の一部が透過すると、透過した赤外線は、上記第2の樹脂層に至る。上記第2の樹脂層の赤外線透過率は比較的低いので、上記第2の樹脂層は、赤外線の透過を効果的に遮断する。このため、中間膜全体を通過する熱線の量を低減できる。このことによっても、本発明に係る合わせガラス用中間膜の遮熱性が高くなり、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを建築物又は車両の開口部に取り付けることで、建築物又は車両の内部空間の温度上昇を効果的に抑制できる。
また、上記第2の樹脂層に至る赤外線の量を低減できる結果、上記第2の樹脂層の劣化を抑えることができ、中間膜全体での耐光性が高くなる。このため、高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる。さらに、上記第2の樹脂層が遮熱粒子などの遮熱性化合物を含む場合に、該遮熱性化合物の劣化も抑制でき、高い遮熱性を長期間に渡り維持できる。
上記第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率は、上記第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率よりも高いので、上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との組成は異なることが好ましい。なお、上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との組成が同一であっても、上記第1の樹脂層の厚みを上記第2の樹脂層の厚みよりも薄くすることにより、上記第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率を、上記第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率よりも高くすることができる。
第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTx1、第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTx2としたときに、Tx1はTx2よりも高い。合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、Tx1はTx2よりも10%以上高いことが好ましく、20%以上高いことがより好ましく、25%以上高いことが更に好ましく、30%以上高いことが特に好ましい。(Tx1−Tx2)の値の上限は特に限定されないが、合わせガラスの透明性がより一層高くなることから、(Tx1−Tx2)は70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましく、40%以下であることが特に好ましい。合わせガラスの遮熱性及び透明性をより一層高めるために、Tx1の好ましい下限は60%、好ましい上限は90%、より好ましい下限は65%、より好ましい上限は85%、更に好ましい下限は70%、更に好ましい上限は80%である。また、合わせガラスの遮熱性及び透明性をより一層高めるために、Tx2の好ましい下限は20%、好ましい上限は75%、より好ましい下限は25%、より好ましい上限は65%、更に好ましい下限は30%、更に好ましい上限は55%、特に好ましい下限は35%、特に好ましい上限は50%である。
なお、第1の樹脂層又は第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率Tx1,Tx2は以下のようにして測定される。
第1の樹脂層又は第2の樹脂層を2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層し、合わせガラスを作製する。JIS R3106(1998)の付表2に示された780〜2100nmの重価係数を使用し、赤外線透過率の新たな重価係数として、規格化する。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率を、新たに規格化した重価係数を乗じて求め、波長780〜2100nmの赤外線透過率を算出する。すなわち、JIS R3106(1998)の付表2に示された300〜2100nmの重価係数のうち、780〜2100nmの重価係数を使用し、780〜2100nmの各々の重価係数を、その780〜2100nmの重価係数の合計値で割ることで、780〜2100nmにおける赤外線透過率の新たに規格化された重価係数を得る。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率に、新たに規格化された重価係数を乗じることにより、波長780〜2100nmの赤外線透過率を算出する。
上記サーモクロミック層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記サーモクロミック層中の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。上記サーモクロミック層は、可塑剤を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことがより好ましい。上記サーモクロミック層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましく、酸化防止剤を含むことが好ましい。
上記第1の樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。上記第1の樹脂層中の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。上記第1の樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことがより好ましい。上記第1の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましく、酸化防止剤を含むことが好ましい。
上記第2の樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。上記第2の樹脂層中の熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。上記第2の樹脂層は、可塑剤を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含むことがより好ましい。上記第2の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましく、酸化防止剤を含むことが好ましい。
上記第2の樹脂層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層が遮熱性化合物を含むことで、上記第1の樹脂層の上記赤外線透過率が、上記第2の樹脂層の上記赤外線透過率よりも高くなる。上記第1の樹脂層は、遮熱性化合物を含んでいてもよい。また、上記第1の樹脂層中の上記遮熱性化合物の含有量(重量%)が上記第2の樹脂層中の上記遮熱性化合物の含有量(重量%)よりも少ないと、上記第1の樹脂層の上記赤外線透過率を、上記第2の樹脂層の上記赤外線透過率よりも高くすることが容易である。上記遮熱性化合物としては、金属酸化物粒子などの遮熱粒子や、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分(以下、成分Xと記載することがある)等が挙げられる。なお、遮熱性化合物とは、赤外線を吸収可能な化合物を意味する。上記第1の樹脂層又は上記第2の樹脂層が複数の遮熱性化合物を含む場合は、上記第1の樹脂層中の上記遮熱性化合物の合計の含有量(重量%)は上記第2の樹脂層中の上記遮熱性化合物の合計の含有量(重量%)よりも少ないことが好ましく、0.05重量%以上少ないことがより好ましく、0.1重量%以上少ないことが更に好ましく、0.2重量%以上少ないことが特に好ましく、0.4重量%以上少ないことが最も好ましい。さらに、遮熱性がより一層高くなることから、上記第2の樹脂層中の上記遮熱性化合物の合計の含有量(重量%)と上記第1の樹脂層中の上記遮熱性化合物の合計の含有量(重量%)との差は2重量%以下であることが好ましい。
以下、上記第1,第2の樹脂層を構成する材料の詳細を説明する。
(熱可塑性樹脂)
上記第1,第2の樹脂層は熱可塑性樹脂を含む。上記サーモクロミック層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。該熱可塑性樹脂は特に限定されない。熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第1の樹脂層中の熱可塑性樹脂と、上記第2の樹脂層中の熱可塑性樹脂と、上記サーモクロミック層中の熱可塑性樹脂とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
汎用性が高いことから、上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂又はポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材、樹脂層及びサーモクロミック層などの他の層に対する第1,第2の樹脂層の接着力がより一層高くなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.8モル%の範囲内である。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下、特に好ましくは3000以下、最も好ましくは2500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3又は4であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは28モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは32モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、測定することにより求めることができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下、最も好ましくは3モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、算出され得る。
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、及びポリアルキレンナフタレート樹脂等が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。なかでも、化学的に安定であり、かつ、二酸化バナジウム粒子を分散させた場合の二酸化バナジウム粒子の長期安定性がより一層高まることから、上記ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。上記ポリアルキレンナフタレート樹脂としては、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
(可塑剤)
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、上記第1の樹脂層は可塑剤を含むことが好ましく、上記第2の樹脂層は可塑剤を含むことが好ましく、上記サーモクロミック層は可塑剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層中の熱可塑性樹脂がそれぞれ、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層はそれぞれ、可塑剤を含むことが特に好ましい。
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の各含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは35重量部以上、好ましくは75重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
(遮熱性化合物)
成分X:
上記第2の樹脂層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は、後述する遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記サーモクロミック層は、上記成分Xを含んでいてもよい。上記成分Xは遮熱性化合物である。中間膜全体で少なくとも1層に上記成分Xを用いることにより、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記第2の樹脂層が上記成分Xを含むことにより、赤外線をより一層効果的に遮断できる。
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層又は上記サーモクロミック層が上記成分Xを含む場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層100重量%中、上記成分Xの各含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下、最も好ましくは0.02重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ上記可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
遮熱粒子:
上記第2の樹脂層は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層は、遮熱粒子を含んでいてもよい。上記サーモクロミック層は、遮熱粒子を含むことが好ましい。遮熱粒子は遮熱性化合物である。中間膜全体で少なくとも1層に遮熱性化合物を用いることにより、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記第2の樹脂層が遮熱粒子を含むことにより、赤外線をより一層効果的に遮断できる。
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。遮熱粒子は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。なかでも、熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
上記酸化タングステン粒子は、下記式(X1)又は下記式(X2)で一般に表される。本発明に係る合わせガラス用中間膜では、下記式(X1)又は下記式(X2)で表される酸化タングステン粒子が好適に用いられる。
WyOz ・・・式(X1)
上記式(X1)において、Wはタングステン、Oは酸素を表し、y及びzは2.0<z/y<3.0を満たす。
MxWyOz ・・・式(X2)
上記式(X2)において、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta及びReからなる群から選択される少なくとも1種の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、x、y及びzは、0.001≦x/y≦1、及び2.0<z/y≦3.0を満たす。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記酸化タングステン粒子には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WO3で表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層又は上記サーモクロミック層が上記遮熱粒子を含む場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層100重量%中、遮熱粒子の各含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3.0重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ上記可視光線透過率が充分に高くなる。
上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層又は上記サーモクロミック層が上記遮熱粒子を含む場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層は、上記遮熱粒子を0.1g/m2以上、12g/m2以下の割合で各層が含有することが好ましい。上記遮熱粒子の割合が上記範囲内である場合には、遮熱性が充分に高くなり、かつ上記可視光線透過率が充分に高くなる。上記遮熱粒子の割合は、好ましくは0.5g/m2以上、より好ましくは0.8g/m2以上、更に好ましくは1.5g/m2以上、特に好ましくは3g/m2以上、好ましくは11g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下、更に好ましくは9g/m2以下、特に好ましくは7g/m2以下である。上記割合が上記下限以上であると、遮熱性がより一層高くなる。上記割合が上記上限以下であると、上記可視光線透過率がより一層高くなる。
(紫外線遮蔽剤)
上記第1の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記サーモクロミック層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との双方が、紫外線遮蔽剤を含むことがより好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層と上記サーモクロミック層との全てが、紫外線遮蔽剤を含むことが更に好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。該紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
従来広く知られている一般的な紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属系紫外線遮蔽剤、金属酸化物系紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン系紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド系紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート系紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
上記金属系紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤として、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤はハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
上記ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
上記マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
上記マロン酸エステル系紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
上記シュウ酸アニリド系紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
上記ベンゾエート系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を抑制するために、上記紫外線遮蔽剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、又は2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)であることが好ましく、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであってもよい。
上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層又は上記サーモクロミック層が上記紫外線遮蔽剤を含む場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層100重量%中、紫外線遮蔽剤の各含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、経時後の可視光線透過率の低下がより一層抑えられる。特に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。更に、上記第1の樹脂層100重量%中の紫外線遮蔽剤の含有量よりも、上記第2の樹脂層100重量%中の紫外線遮蔽剤の含有量が多いと、中間膜及び合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を更に一層顕著に抑制できる。
(酸化防止剤)
上記第1の樹脂層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記サーモクロミック層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との双方が酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層と上記サーモクロミック層との全てが、酸化防止剤を含むことが更に好ましい。該酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、並びにチバガイギー社製「イルガノックス1010」等が挙げられる。
上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層又は上記サーモクロミック層が上記酸化防止剤を含む場合に、上記第1の樹脂層、上記第2の樹脂層及び上記サーモクロミック層100重量%中、酸化防止剤の各含有量は、好ましくは0.1重量%以上、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下である。上記酸化防止剤の含有量が上記下限以上であると、中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率がより一層長期間に渡り維持される。上記酸化防止剤の含有量が上記上限以下であると、添加効果を得るために過剰な酸化防止剤が生じ難くなる。
(接着力調整剤)
上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との内の少なくとも一方が、接着力調整剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層は、接着力調整剤を含むことが好ましい。上記第2の樹脂層は、接着力調整剤を含むことが好ましい。上記第1の樹脂層と上記第2の樹脂層との双方が、接着力調整剤を含むことがより好ましい。接着力調整剤の使用により、中間膜とガラスの接着性が制御され、耐貫通性に優れた合わせガラスが得られる。さらに、耐貫通性の試験として、落球試験を行った場合に、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が接着力調整剤を含むことにより、合わせガラスのガラスの破片を小さくすることができるという効果が得られる。特に、接着力調整剤が金属塩であると、合わせガラスのガラスの破片がより一層小さくなる。上記接着力調整剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記接着力調整剤は特に限定されず、金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びMg塩からなる群から選択された少なくとも1種の金属塩であることが好ましい。上記金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。上記金属塩は、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
上記接着力調整剤の含有量は特に限定されない。上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記接着力調整剤の各含有量は、好ましい下限が0.0005重量部、好ましい上限が0.05重量部である。上記接着力調整剤の含有量が0.0005重量部以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。上記接着力調整剤の含有量が0.05重量部以下であると、合わせガラス用中間膜の透明性がより一層高くなる。上記接着力調整剤の含有量のより好ましい下限は0.002重量部、より好ましい上限は0.02重量部である。また、第1,第2の樹脂層が2層以上の積層構造を有する場合に、合わせガラス部材に接する表面層において、並びに第1,第2の樹脂層が単層構造を有する場合に、第1,第2の樹脂層において、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記接着力調整剤の含有量は、好ましい下限が0.0005重量部、好ましい上限が0.05重量部である。
第1の樹脂層の耐湿性が高くなることから、第1,2の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びMgの各含有量の合計は300ppm以下であることが好ましい。例えば、上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及びMgは、上記接着力調整剤に由来する金属として含んでもよく、ポリビニルアセタール樹脂を合成する際に用いる中和剤に由来する金属として含んでもよい。第1,2の樹脂層中のアルカリ金属、アルカリ土類金属及びMgの含有量の合計は200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。また、第1,第2の樹脂層が2層以上の積層構造を有する場合に、合わせガラス部材に接する表面層において、並びに第1,第2の樹脂層が単層構造を有する場合に、第1,第2の樹脂層において、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びMgの含有量の合計は、300ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。また、第1,第2の樹脂層が2層以上の積層構造を有する場合に、合わせガラス部材に接する表面層において、並びに第1,第2の樹脂層が単層構造を有する場合に、第1,第2の樹脂層において、Mgの含有量の合計は、300ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。
(サーモクロミック成分)
サーモクロミック性をより一層高める観点からは、上記サーモクロミック層は、二酸化バナジウム粒子又は二酸化バナジウムのバナジウム原子の一部をタングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の原子で置換した置換二酸化バナジウム粒子を含むことが好ましい。サーモクロミック性をより一層高める観点からは、上記サーモクロミック層は、上記置換二酸化バナジウム粒子を含むことがより好ましい。タングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも1種の原子は、ドーパンド原子である。二酸化バナジウム中のバナジウム原子の一部をタングステン、モリブデン、ニオブ及びタンタル等の原子で置換することにより、相転移温度を変えることができる。
上記二酸化バナジウム粒子又は上記置換酸化バナジウム粒子を含有することにより、得られる合わせガラス用中間膜の転移温度未満の温度帯での赤外領域の透過率は高く、転移温度以上の温度帯での赤外領域の透過率は低くなり、転移温度未満の温度帯と転移温度以上の温度帯とで光学特性変化が大きくなる。
サーモクロミック性をより一層高める観点からは、上記置換二酸化バナジム原子において、二酸化バナジウム原子とドーパント原子との合計100重量%中、上記ドーパント原子の含有量は好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。上記ドーパント原子の含有量が上記下限以上であると、置換二酸化バナジウム原子の転移温度が効果的に低くなる。上記ドーパント原子の含有量が上記上限以下であると、二酸化バナジウムの結晶性が効果的に維持される。
上記ドーパント原子の含有量は、エネルギー分散型蛍光X線装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)を用いて、蛍光X線分析法によって測定することができる。
上記二置換酸化バナジウム粒子において、上記ドーパント原子の置換率(以下、置換率と略記することがある)は好ましくは0.2原子%以上、より好ましくは0.5原子%以上、好ましくは3原子%以下である。上記置換率が上記下限以上であると、上記置換二酸化バナジウム粒子の相転移温度を容易に調整することができる。上記置換率が上記上限以下であると、サーモクロミック性がより一層良好になる。
上記置換率は、バナジウム原子の数と、バナジウム原子を置換したドーパント原子の数との合計に占める、バナジウム原子を置換したドーパント原子の数の割合を百分率で示した値である。上記バナジウム原子の数とバナジウム原子を置換したドーパント原子の数とは、例えば、エネルギー分散型蛍光X線装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)を用いて、蛍光X線分析法によって測定することができる。
サーモクロミック性をより一層高める観点からは、上記二酸化バナジウム原子は、ルチル型構造を有することが好ましく、上記置換二酸化バナジウム原子はルチル型構造を有する二酸化バナジウム原子を含むことが好ましい。
上記二酸化バナジウム粒子及び上記置換二酸化バナジウム粒子の平均粒子径は好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記平均粒子径が上記上限以下であると、サーモクロミック性がより一層高くなる。上記平均粒子径の下限は特に限定されないが、実質的には20nm程度が限度であると考えられる。
上記平均粒子径の測定方法としては、特に限定されないが、例えば、粒度分布計を用いて、動的光散乱法による粒度分布測定によって測定できる。上記平均粒子径は、上記動的光散乱法による粒度分布測定で得られる分散径(D50)であることが好ましい。上記分散径(D50)とは、本発明に係る置換二酸化バナジウム粒子を分散媒中に分散させた後に、動的光散乱法によって測定される、50個以上の上記置換二酸化バナジウム粒子の短径の平均値をいう。
上記動的光散乱法による粒度分布測定以外の、平均粒子径の測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による上記二酸化バナジウム粒子及び上記置換二酸化バナジウム粒子の形状観察などが挙げられる。
上記二酸化バナジウム粒子及び上記置換二酸化バナジウム粒子の平均結晶子径は好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記平均結晶子径が上記下限以上であると、粒子内の粒界部分が減り、単結晶として存在できる二酸化バナジウムの割合が増加し、サーモクロミック性がより一層高くなる。上記平均結晶子径が上記上限以下であると、相転移が均一に起こり、サーモクロミック性がより一層高くなる。
上記結晶子径とは、X線回折法における回折ピークの半価幅から求められる結晶子のサイズを意味する。例えば、X線回折装置(リガク社製「RINT1000」)を用いて得られる回折データから半価幅を算出し、Scherrerの式をあてはめることで結晶子サイズを算出できる。具体的には、VO2の最強ピーク2θ=27.86°の時の半価幅から算出した結晶子サイズを採用することで測定できる。これら一連の解析は、例えば、解析ソフト(リガク社製「PDXL」)を用いて半価幅及び結晶子サイズを算出できる。
上記置換二酸化バナジウム粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、熱分解法、固相法及び水熱法等が挙げられる。
上記サーモクロミック層100重量%中、上記二酸化バナジウム及び上記置換二酸化バナジウム粒子の合計の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。上記二酸化バナジウム及び上記置換二酸化バナジウム粒子の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、サーモクロミック性がより一層良好になる。
上記サーモクロミック層が熱可塑性樹脂を含む場合に、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記二酸化バナジウム及び上記置換二酸化バナジウム粒子の合計の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2重量部以下である。上記二酸化バナジウム及び上記置換二酸化バナジウム粒子の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、サーモクロミック性がより一層良好になる。
(他の成分)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤及び蛍光増白剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の合わせガラス部材と第2の合わせガラス部材との間に配置されて用いられることが好ましい。
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、建築物又は車両において、外部空間(第1の空間)と該外部空間から熱線が入射される内部空間(第2の空間)との間の開口部に取り付ける合わせガラスを得るために用いられることが好ましい。この場合に、上記第1,第2の樹脂層のうち、上記第1の樹脂層が上記外部空間側に位置するように配置されることが好ましい。
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。
上記サーモクロミック層の厚みは、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.04mm以上、更に好ましくは0.07mm以上、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.2mm以下、更に好ましくは0.18mm以下、特に好ましくは0.16mm以下である。上記サーモクロミック層の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなる。上記サーモクロミック層の厚みが上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。
上記第1,第2の樹脂層の厚みはそれぞれ、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.25mm以上、特に好ましくは0.3mm以上、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.6mm以下、より一層好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.45mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。上記第1,第2の樹脂層の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記第1,第2の樹脂層の厚みが上記上限以下であると、合わせガラスの透明性がより一層高くなる。また、上記第1の樹脂層の厚みは、上記第2の樹脂層の厚みより、0.05mm以上薄いことが好ましく、0.10mm以上薄いことがより好ましい。上記第1の樹脂層の厚みを、上記好ましい範囲で上記第2の樹脂層の厚みより薄くすることで、上記第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率を、上記第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率より、効果的に高くすることができる。
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上述した各成分を混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。特に、上記第1,第2の樹脂層は、押出成形により形成することが好ましい。
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜を得る際に、第1の樹脂層とサーモクロミック層と第2の樹脂層とを別々に作製した後、第1の樹脂層とサーモクロミック層と第2の樹脂層とを積層して中間膜を得てもよく、積層する方法は特に限定されない。例えば積層する方法として、ヒートラミネート法等が挙げられる。
また、第1の樹脂層とサーモクロミック層と第2の樹脂層とを共押出により積層して中間膜を得てもよい。また、第1の樹脂層とサーモクロミック層とを共押出にて作製した共押出物のサーモクロミック層側に第2の樹脂層を積層して中間膜を得てもよい。第2の樹脂層とサーモクロミック層とを共押出にて作製した共押出物のサーモクロミック層側に第1の樹脂層を積層して中間膜を得てもよい。
また、サーモクロミック層の表面に、第1,第2の樹脂層を形成するための組成物を塗工して、第1,第2の樹脂層を形成して、中間膜を得てもよい。
中間膜の製造効率が優れることから、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが、同一のポリビニルアセタール樹脂を含むことが好ましく、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤を含むことがより好ましい。
(合わせガラス)
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、該第1,第2の合わせガラス部材の間に配置された中間膜とを備える。該中間膜が、上述した合わせガラス用中間膜である。上記合わせガラス用中間膜における上記第1の樹脂層の外側に、上記第1の合わせガラス部材が配置されている。上記合わせガラス用中間膜における上記第2の樹脂層の外側に上記第2の合わせガラス部材が配置されている。
本発明に係る合わせガラスは、建築物又は車両において、外部空間と上記外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける合わせガラスであることが好ましい。この場合に、上記第1,第2の合わせガラス部材のうち、上記第1の合わせガラス部材が上記外部空間側に位置するように配置されることが好ましい。
図2に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を断面図で示す。
図2に示す合わせガラス11は、中間膜1と、第1,第2の合わせガラス部材21,22とを備える。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス部材21,22の間に挟み込まれている。中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。中間膜1における第1の樹脂層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1における第2の樹脂層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
上記第1の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率が、上記第2の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率よりも高いことが好ましい。この場合には、第1の合わせガラス部材は、赤外線を比較的多く透過する。さらに、上記第1の合わせガラス部材を透過した赤外線の多くは、上記第1の樹脂層も透過する。このため、上記第1の合わせガラス部材と上記第1の樹脂層を透過した多くの赤外線は、上記サーモクロミック層に至る。上記サーモクロミック層に至った赤外線は、上記サーモクロミック層により透過が阻害され、一部は反射される。また、上記第1の合わせガラス部材と上記第1の樹脂層との赤外線透過率が高いことから、上記サーモクロミック層により反射された赤外線の多くは、上記第1の樹脂層と上記第1の合わせガラス部材とを透過する。この結果、合わせガラスに赤外線が入射された際の合わせガラスの温度上昇を抑制できる。このため、上記合わせガラスの遮熱性が高くなり、更に耐光性に優れているので高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる。また、上記合わせガラスを建築物又は車両の開口部に取り付けることで、建築物又は車両の内部空間の温度上昇を効果的に抑制できる。
一方で、仮に上記第1の合わせガラス部材と上記第1の樹脂層と上記サーモクロミック層とを赤外線の一部が透過した場合には、透過した赤外線は、上記第2の樹脂層に至る。上記第2の樹脂層の赤外線透過率は比較的低いので、上記第2の樹脂層は、赤外線の透過を効果的に遮断する。さらに、上記第2の合わせガラス部材の赤外線透過率も比較的低いので、上記第2の合わせガラス部材は、赤外線の透過を効果的に遮断する。このため、合わせガラス全体を通過する熱線の量を低減できる。このことによっても、合わせガラスの遮熱性が高くなり、該合わせガラスを建築物又は車両の開口部に取り付けることで、建築物又は車両の内部空間の温度上昇を効果的に抑制できる。
第1の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTy1、第2の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTy2としたときに、上記のようにTy1はTy2よりも高いことが好ましい。合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、Ty1はTy2よりも10%以上高いことが好ましく、15%以上高いことがより好ましく、20%以上高いことが更に好ましい。(Ty1−Ty2)の値の上限は特に限定されないが、合わせガラスの透明性がより一層高くなることから、(Ty1−Ty2)は50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましく、25%以下であることが特に好ましい。合わせガラスの遮熱性及び透明性をより一層高めるために、Ty1の好ましい下限は50%、好ましい上限は90%、より好ましい下限は55%、より好ましい上限は88%、更に好ましい下限は60%、更に好ましい上限は86%である。また、合わせガラスの遮熱性及び透明性をより一層高めるために、Ty2の好ましい下限は40%、好ましい上限は88%、より好ましい下限は45%、より好ましい上限は86%、更に好ましい下限は55%、更に好ましい上限は70%、特に好ましい下限は60%、特に好ましい上限は65%である。
第1の合わせガラス部材と第1の樹脂層との2つの層全体の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をT1、第2の合わせガラス部材と第2の樹脂層との2つの層全体の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をT2としたときに、T1はT2よりも高いことが好ましい。この場合には、合わせガラスの遮熱性が高くなる。合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、T1はT2よりも10%以上高いことが好ましく、15%以上高いことがより好ましく、20%以上高いことがより好ましく、30%以上高いことがより一層好ましく、40%以上高いことが更に好ましく、50%以上高いことが更に一層好ましく、60%以上高いことが特に好ましい。(T1−T2)の値の上限は特に限定されないが、合わせガラスの透明性がより一層高くなることから、(T1−T2)は90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。
なお、第1の合わせガラス部材と第1の樹脂層との2つの層全体の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率T1は以下のように測定される。
第1の合わせガラス部材と第1の樹脂層とクリアガラス(厚み2.5mm)とがこの順に積層された合わせガラスを作製する。JIS R3106(1998)の付表2に示された780〜2100nmの重価係数を使用し、赤外線透過率の新たな重価係数として、規格化する。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率を、新たに規格化した重価係数を乗じて求め、波長780〜2100nmの赤外線透過率T1を算出する。すなわち、JIS R3106(1998)の付表2に示された300〜2100nmの重価係数のうち、780〜2100nmの重価係数を使用し、780〜2100nmの各々の重価係数を、その780〜2100nmの重価係数の合計値で割ることで、780〜2100nmにおける赤外線透過率の新たに規格化された重価係数を得る。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率に、新たに規格化された重価係数を乗じることにより、波長780〜2100nmの赤外線透過率T1を算出する。
また、第2の合わせガラス部材と第2の樹脂層との2つの層全体の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率T2は以下のように測定される。
第2の合わせガラス部材と第2の樹脂層とクリアガラス(厚み2.5mm)とがこの順に積層された合わせガラスを作製する。JIS R3106(1998)の付表2に示された780〜2100nmの重価係数を使用し、赤外線透過率の新たな重価係数として、規格化する。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率を、新たに規格化した重価係数を乗じて求め、波長780〜2100nmの赤外線透過率T2を算出する。すなわち、JIS R3106(1998)の付表2に示された300〜2100nmの重価係数のうち、780〜2100nmの重価係数を使用し、780〜2100nmの各々の重価係数を、その780〜2100nmの重価係数の合計値で割ることで、780〜2100nmにおける赤外線透過率の新たに規格化された重価係数を得る。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得る。得られた分光透過率に、新たに規格化された重価係数を乗じることにより、波長780〜2100nmの赤外線透過率T2を算出する。
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材がそれぞれガラス板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであり、かつ上記中間膜が、上記第1,第2の合わせガラス部材として、少なくとも1枚のガラス板を含むことが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材はそれぞれ、クリアガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましい。赤外線透過率が高く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第1の合わせガラス部材は、クリアガラスであることが好ましい。赤外線透過率が低く、合わせガラスの遮熱性がより一層高くなることから、上記第2の合わせガラス部材は、熱線吸収板ガラスであることが好ましい。熱線吸収板ガラスは、グリーンガラスであることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材が、クリアガラスであり、かつ上記第2の合わせガラス部材が熱線吸収板ガラスであることが好ましい。上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスである。
上記第1,第2の合わせガラス部材の厚みは特に限定されないが、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下である。上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。遮熱性が高くかつ可視光線透過率が高いので、上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。
(合わせガラスの取り付け方法)
本発明に係る合わせガラスの取り付け方法は、上述した合わせガラスを、建築物又は車両において外部空間と該外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける方法である。
具体的には、第1の合わせガラス部材が、外部空間側に位置するように、かつ第2の合わせガラス部材が、内部空間側に位置するように、合わせガラスを開口部に取り付ける。すなわち、外部空間/第1の合わせガラス部材/(他の層/)第1の樹脂層/(他の層/)サーモクロミック層/(他の層/)第2の樹脂層/(他の層/)第2の合わせガラス部材/内部空間の順に配置されるように、合わせガラスを取り付ける。好ましくは、外部空間/第1の合わせガラス部材/第1の樹脂層/(他の層/)サーモクロミック層/(他の層/)第2の樹脂層/第2の合わせガラス部材/内部空間の順に配置されることが好ましく、外部空間/第1の合わせガラス部材/(他の層/)第1の樹脂層/サーモクロミック層/第2の樹脂層/(他の層/)第2の合わせガラス部材/内部空間の順に配置されることが好ましく、外部空間/第1の合わせガラス部材/第1の樹脂層/サーモクロミック層/第2の樹脂層/第2の合わせガラス部材/内部空間の順に配置されることが好ましい。上記の配置形態には、外部空間と第1の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれ、内部空間と第2の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれる。
上記積層構造において、上記他の層及び上記他の部材はそれぞれ存在していてもよく、存在していなくてもよい。外部空間から熱線を含む太陽光が合わせガラスに入射され、合わせガラスを通過した熱線を含む太陽光は内部空間に導かれる。上記のように合わせガラスを開口部に取り付けた場合には、第1の合わせガラス部材の外側の表面が熱線の入射面となる。また、第1の樹脂層に第2の樹脂層よりも早く熱線が入射する。
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
第1,第2の樹脂層を形成するために、以下の材料を用いた。
熱可塑性樹脂:
PVB1(n−ブチルアルデヒドによりアセタール化されているポリビニルブチラール樹脂、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68.5モル%)
なお、上記ポリビニルブチラールの水酸基の含有率、アセチル化度及びブチラール化度(アセタール化度)はASTM D1396−92に準拠した方法により測定した。なお、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」により測定した場合も、ASTM D1396−92に準拠した方法と同様の数値を示した。
可塑剤:
3GO(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート)
他の成分:
T−326(紫外線遮蔽剤、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
BHT(酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)
ITO(ITO粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子)
また、以下のサーモクロミック層を用意した。
TC1(サーモクロミック層):以下の手順で作製:
酸化バナジウム(V)V2O5と酸化バナジウム(III)V2O3とを1対1のモル比になるよう配合し、酸化タングステン(VI)WO3粉末をバナジウムとタングステンとのモル比が99.0:1のモル比になるように加え、混合して、混合物を得た。得られた混合物を窒素気流中、昇温速度10℃/minで室温から1000℃まで昇温し、1000℃到達後5時間保持して、酸化バナジウム粒子を得た。
得られた酸化バナジウム粒子を、ダイノミルRESERCH LAB型(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて1時間かけて粉砕し、タングステンがドープされた置換酸化バナジウム粒子を得た。その後、ポリエチレンテレフタレート樹脂3000重量部、置換酸化バナジウム粒子1.3重量部、分散剤として縮合リシノール酸ポリグリセリンエステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業社製)1.3重量部を計量し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。得られた組成物を押出機により押出して、厚み100μmの単層のサーモクロミック層TC1を得た。
また、以下の合わせガラス部材(ガラス)を用意した。
クリアガラス(縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)
グリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)
ライトグリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)
ダークグリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)
UVグリーンガラス(JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラス、縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)
(樹脂層A1の作製)
ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤(3GO)40重量部と、紫外線遮蔽剤(T−326)0.8重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
得られた組成物を押出機により押出して、厚み380μm、430μmの単層の樹脂層A1を得た。
(樹脂層B1の作製)
可塑剤(3GO)40重量部に対し、遮熱粒子(ITO)を得られる樹脂層B1中で0.4重量%となる量とを添加し、混合し、可塑剤分散液を得た。
ポリビニルブチラール樹脂(PVB1)100重量部に対し、可塑剤分散液全量と、紫外線遮蔽剤(T−326)0.8重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
得られた組成物を押出機により押出して、厚み380μmの単層の樹脂層B1を得た。
なお、上記表2及び下記の表3において、3GO、T−326及びBHTの配合量は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)100重量部に対する配合量(重量部)を示す。ITOの配合量は、樹脂層100重量%中での配合量(重量%)を示す。
(実施例1)
(1)合わせガラス用中間膜の作製
得られたサーモクロミック層TC1を得られた厚み380μmの樹脂層A1と得られた厚み380μmの樹脂層B1との間に挟み込んで、中間膜を得た。
(2)合わせガラスの作製
得られた中間膜を、縦30cm×横30cmの大きさに切断した。また、2枚のクリアガラス(縦30cm×横30cm×厚み2.5mm)を用意した。この2枚のクリアガラスの間に、得られた中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラス板からはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
(実施例2〜5)
第1の樹脂層の種類、第2の樹脂層の種類、サーモクロミック層の種類、並びに第1,第2の合わせガラス部材の種類を下記の表4に示すように実施例1と同様に設定し、合わせガラス部材の種類を下記の表4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
(実施例6)
第1の樹脂層に用いる樹脂層A1の厚みを330μmに変更したこと、並びに第2の樹脂層として厚み430μmの樹脂層A1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
(比較例1)
実施例1と同じサーモクロミック層を、得られた樹脂層A1と得られた樹脂層A1との間に挟み込んで、中間膜を得た。得られた中間膜を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
(比較例2)
実施例1と同じサーモクロミック層を、得られた樹脂層A1と得られた樹脂層A1との間に挟み込んで、中間膜を得た。得られた中間膜を用いたこと、並びに第1,第2の合わせガラス部材をグリーンガラスに変更したこと以外は実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
(評価)
(1)可視光線透過率(A光Y値、A−Y(380〜780nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1988)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定した。
(2)Tts(Total solar energy transmitted through a glazing)の測定
ISO 13837に準拠して、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、得られた合わせガラスの23℃及び100℃における波長300〜2500nmの透過率/反射率を測定して、Ttsを算出した。得られた測定値から、ΔTts((23℃におけるTts)−(100℃におけるTts))を求めた。ΔTtsの値が大きいほど、サーモクロミック性に優れることを示す。
合わせガラスの積層構成及び評価結果を下記の表4に示す。また、下記の表4の赤外線透過率の「樹脂層」の欄には、第1の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTx1、第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTx2としたときに、Tx1とTx2との関係を記載した。下記の表4の赤外線透過率の「合わせガラス部材」の欄には、第1の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTy1、第2の合わせガラス部材の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率をTy2としたときに、Ty1とTy2との関係を記載した。
なお、第1の樹脂層又は第2の樹脂層の波長780〜2100nmにおける赤外線透過率Tx1,Tx2は以下のようにして測定した。第1の樹脂層又は第2の樹脂層を2枚のクリアガラス(厚み2.5mm)の間に積層し、合わせガラスを作製した。JIS R3106(1998)の付表2に示された780〜2100nmの重価係数を使用し、赤外線透過率の新たな重価係数として、規格化した。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得た。得られた分光透過率を、新たに規格化した重価係数を乗じて求め、波長780〜2100nmの赤外線透過率を算出した。すなわち、JIS R3106(1998)の付表2に示された300〜2100nmの重価係数のうち、780〜2100nmの重価係数を使用し、780〜2100nmの各々の重価係数を、その780〜2100nmの重価係数の合計値で割ることで、780〜2100nmにおける赤外線透過率の新たに規格化された重価係数を得た。次いで、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、合わせガラスの波長780〜2100nmにおける分光透過率を得た。得られた分光透過率に、新たに規格化された重価係数を乗じることにより、波長780〜2100nmの赤外線透過率を算出した。