JP6538461B2 - 高強度コンクリートからなる構造体コンクリートの強度推定方法 - Google Patents

高強度コンクリートからなる構造体コンクリートの強度推定方法 Download PDF

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Description

本発明は、設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートからなる構造体コンクリートの強度推定方法に関する。
鉄筋コンクリート造建築物において、構造体コンクリート強度は設計基準強度以上であることが求められる。構造体コンクリート強度は、構造体から採取されたコア供試体を用いて直接的に評価することも可能であるが、コア供試体を構造体から採取すると構造体に損傷を与えることになる。構造体の損傷を避けるため、コンクリート打設時に作製しておいた直径100mm×高さ200mm程度の標準養生(20℃水中養生)供試体を用いて間接的に評価することが多い。この際、構造体コンクリートと標準養生供試体との間には、硬化時の温度履歴の違いなどにより圧縮強度発現に差が生じているため、標準養生供試体での判定値を、構造体強度補正値(以下、mSn、またはS値という。)により補正しなければならない。
設計基準強度(以下、Fcという。)60N/mm以下については、JASS5でS値の標準値が与えられており、設計基準強度にこの値を上乗せした調合管理強度を標準養生供試体における判定値とすることができる。しかし、Fc60N/mm以上については、実績が乏しいことを理由に、試し練りによりS値を定める必要があるとされている。試し練りでS値を定めるには、JASS5T−605(コア供試体による構造体コンクリート強度の推定方法)に従って、1m角程度の模擬柱部材を作製し、この模擬柱部材からコア供試体を採取して圧縮強度を確認する。S値は、使用材料、結合材水比(以下、B/Wという。シリカフュームなどの混和材を含まない場合はセメント水比に相当する。)、時期(外気温条件)ごとに異なる値となる。コンクリートに使用する材料は、生コン工場ごとにその付近で採取される材料が用いられることが多いため、同じ調合でも生コン工場ごとに使用する材料の性質は異なる。そのため、同様な調合であっても、生コン工場ごとに、3水準程度のB/Wについて、夏期、標準期、冬期の3回程度模擬柱部材を作製する必要がある。高強度コンクリートを使用するには、異なる時期に模擬柱部材を作製し、S値を測定した後に国土交通省へ大臣認定申請を行わねばならず、実際の現場で使用する1年以上前に試験を開始する必要がある。また、1m角もの大きさのサンプルを9個程度作製する費用と労力の負担が大きいという問題がある。
高強度コンクリートについては、使用材料、B/W、時期などの影響を考慮したS値の評価方法は確立されていない。例えば、非特許文献1では、模擬柱部材作製実験の結果をもとにS値の傾向について検討が行われている。非特許文献1では、B/Wや部材の最高温度とS値の関係における傾向について考察がなされており、それらの傾向が結合材種類ごとに異なることが示されているが、S値の推定式の提案までは至っておらず、また骨材による影響については考察されていない。非特許文献2では、粗骨材の岩種と最高温度によるS値への影響について検討されているが、傾向の確認にとどまっており、その定量評価までは至っていない。
陣内浩、桝田佳寛、早川光敬、並木哲:高強度コンクリートの構造体と標準養生供試体の強度差に及ぼす要因、日本建築学会構造系論文集、No.562、pp.1〜7、2002.12 三井健郎、小島正朗、米澤敏男:初期材齢での高温養生を受ける超高強度コンクリートの強度発現に及ぼす水結合材比及び骨材品質の影響、日本建築学会大会学術講演梗概集A、pp.297〜298、1994.9
本発明は、設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートを用いた構造体コンクリートの強度管理に用いられる構造体強度補正値を、生コン工場ごとに試し練りを行うことなく推定し、この構造体強度補正値から構造体コンクリート強度を推定する方法を提供することを課題とする。
1.コンクリート打設時に作製した標準養生供試体の圧縮強度から、設計基準強度が60N/mm以上である高強度コンクリートからなる構造体コンクリートの強度を推定する方法であって、
前記標準養生供試体の圧縮強度を基準とし、(I)結合材(混和材を含まない場合はセメント:B)と水(W)の重量比(B/W)、(II)最高温度、(III)最高温度と練上がり温度との差(温度上昇量)に基づいて算出した構造体強度補正値mSnで補正することを特徴とする構造体コンクリートの強度推定方法。
2.設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートの構造体強度補正値mSnを、式1、2に基づいて推定することを特徴とするmSnの推定方法。
(式1)
mSn={Kb×B/W+Kt×T+Sb+Ka×(T−T0)+Sa}×Fm
(式2)
T=α×B/W+β
ここで、
mSn:構造体強度補正値であり、材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度と材齢n日における構造体コンクリートの圧縮強度の差
B:単位結合材量(混和材を含まない場合は単位セメント量)
W:単位水量
B/W:結合材水比
T:構造体コンクリートの硬化初期における最高温度
T0:練上がり時のコンクリート温度
Fm:材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度
Kb、Kt、Sb:結合材種類に起因するmSnに対する影響係数
Ka、Sa:骨材種類に起因するmSnに対する影響係数
α、β:結合材種類およびT0に起因するTに対する影響係数
3.2.の推定方法により時期ごとにmSnを推定し、推定値が最大となる時期にコンクリートの試し練りを行いmSnを測定し、該測定値をその他の時期についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
4.2.の推定方法により時期ごとにmSnを推定し、推定値が最大となる時期の外気温に制御した室内でコンクリートの試し練りを行い、標準養生供試体および構造体コンクリートを模擬した温度履歴を与えた円柱供試体の圧縮強度試験の測定値からmSnを求めて、該測定値を全時期についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
5.2.の推定方法によりB/WとmSnの関係を推定し、mSnが最大となる1水準のB/Wでコンクリートの試し練りを行いmSnを測定し、該測定値をB/Wの全適用範囲についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
使用材料の種類が同じ過去の試し練りのデータから、S値を推定することができる。S値の挙動を推定することで、S値が最大となる条件を推定することができる。
S値を大きな値に設定するほど構造体コンクリート強度の判定では安全側の評価になるため、推定したS値が最大となる時期に実際に試し練りを行い、この測定値を他の時期のS値として適用することで、試験開始から実際の現場で使用するまでに係る期間を短くすることができる。
推定したS値が最大となる時期の外気温を再現した室内で実際に試し練りを行い、標準養生供試体および構造体コンクリートを模擬した温度履歴を与えた標準養生供試体の圧縮強度試験の測定値から得られたS値を全時期のS値として適用することで、時期に関係なくS値を求めることができる。
推定したS値が最大となるB/Wにおいて試し練りを行い、この測定値を他のB/WにおけるS値として適用することで、試し練りの回数を減らすことができ、コストと労力とを低減できる。
VKC調合におけるB/Wと最高温度との関係を示すグラフ。 最高温度とSxy−Sxaとの関係を示すグラフ(左:硬質砂岩、右:石灰石)。 温度上昇量とSxy−Sxaとの関係を示すグラフ(左:硬質砂岩、右:石灰石)。 B/WとKtとの関係を示すグラフ。 B/WとKb×B/W+Sbとの関係を示すグラフ。 B/WとSxyとの関係について、算出式と実測値の回帰式とを示すグラフ。
本発明は、設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートの構造体強度補正値mSnを、式1、2に基づいて推定するmSnの推定方法に関する。
式1
mSn={Kb×B/W+Kt×T+Sb+Ka×(T−T0)+Sa}×Fm
式2
T=α×B/W+β
mSn:構造体強度補正値であり、材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度と材齢n日における構造体コンクリートの圧縮強度の差
B:単位結合材量(混和材を含まない場合は単位セメント量)
W:単位水量
B/W:結合材水比
T:構造体コンクリートの硬化初期における最高温度
T0:練上がり時のコンクリート温度
Fm:材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度
Kb、Kt、Sb:結合材種類に起因するmSnに対する影響係数
Ka、Sa:骨材種類に起因するmSnに対する影響係数
α、β:結合材種類およびT0に起因するTに対する影響係数
上記したように、非特許文献1には、B/Wと部材の最高温度とがS値に影響を及ぼすことが記載されている。また、非特許文献2には、粗骨材の岩種と最高温度とがS値に影響を及ぼすことが記載されている。
本発明者は、過去の模擬柱作製実験の結果を検討し直すことにより、S値に影響を及ぼすのは、(I)B/W、(II)最高温度、(III)温度上昇量であることを見出し、本発明を完成させた。特に、(III)温度上昇量は、粗骨材とペーストとの線膨張係数の違いに由来する粗骨材とペーストとの密着性に関する因子であるが、最高温度ではなく温度上昇量に関する因子がS値に影響を及ぼすことは、これまでに報告されていない新規な知見である。
以下に、本発明を詳述する。
1999〜2012年に、信越(S)・関東(E)・東海(T)・近畿(K)地方の生コン工場27箇所で実施したVKC調合、N+CPS調合に関する大臣認定申請のための1m角程度の模擬柱部材作製実験(延べ39件)の結果をもとに、S値の算定式を検討した。構造体コンクリート強度データが全実験で得られているのが材齢56日までであるため、5656について検討を行った。表1に検討に使用したデータを示す。
結合材:以下の結合材種類を示す記号で分類。
VKC(普通ポルトランドセメント、スラグせっこう系混和材、シリカフューム を質量比7:2:1でプレミックスした高強度用結合材)
N+CPS(スラグせっこう系混和材、シリカフュームを質量比7:3でプレミックスした高強度用混和材CPSを普通ポルトランドセメントNに対して2割置換した結合材)
粗骨材:いずれも砕石2005であり、以下の岩種を示す記号と産地ごとに振った数字で分類。
Ag(安山岩砕石)、Sg(硬質砂岩砕石)、Lg(石灰石砕石)
細骨材:天然砂および砕砂を用いており、以下に示す種類ごとの記号で分類。
Ns(天然砂)、As(安山岩砕砂)、Ss(硬質砂岩砕砂)、Ls(石灰石砕砂)
工場:地方を示す記号と工場ごとに振った数字で分類。
時期:夏期(6〜9月)、標準期(4、5、10、11月)、冬期(12〜3月)に分類し、温度条件は以下のとおり。
夏期 …外気温25〜35℃、練上がり温度24〜35℃、部材最高温度59〜100℃
標準期…外気温15〜25℃、練上がり温度19〜30℃、部材最高温度50〜87℃
冬期 …外気温7〜15℃、練上がり温度8〜24℃、部材最高温度30〜81℃
過去の実験結果からは、いずれの骨材条件についてもB/Wが大きいほどS値が小さい傾向にあることが確かめられた。この主な原因としては、(I)B/Wが大きいほど、また(II)最高温度が高いほど、硬化反応初期における結合材の反応促進効果が大きく、構造体コンクリート強度が向上し、S値が小さくなったと考えられる。
また、過去の実験結果から、夏期のB/Wが大きい領域、つまり最高温度が特に高い領域で、骨材条件の違いによるS値への影響が大きい傾向にあることが確かめられた。最高温度が高い領域では、Lg使用>Sg使用>Ag使用の順に、またLs使用の場合にS値が大きい傾向にあった。この主な原因としては、線膨張係数がペースト(10×10−6/℃以上)と大きく異なる骨材(石灰石は6×10−6/℃程度、かつ異方性あり)を使用すると、(iii)最高温度が高いほど、ペーストと骨材の一体性に悪影響を及ぼし、構造体コンクリート強度が低下してS値が大きくなったと推測される。
前述した(I)、(II)、(iii)の影響は上記非特許文献1、2でも報告されている。構造体コンクリートではこれらの影響が複合して作用していると考えられるが、非特許文献1、2では、各作用を分離してS値への影響を考察していない。
そこで、(I)、(II)、(iii)の各条件がS値に及ぼす影響を分離して数式化し、(I)、(II)、(iii)のS値への影響を検討した。検討条件は以下のように設定した。
(調合)
1.結合材による影響を除外するため、VKC調合である実験No.1〜31に限定した。
2.細骨材による影響も確認されたが、S値への影響は主として粗骨材の岩種に起因すると読み取れたため、粗骨材の岩種ごとにデータを分類した。
3.VKC調合のB/Wと最高温度の関係は図1のとおりであった。B/Wと最高温度の関係における傾向を一次式により評価可能なB/W≦5の範囲に限定した。なお、5<B/Wでは、部材最高温度はほぼ一定となる。5<B/Wの範囲でも、B/Wと最高温度の関係を表す一次式を作成すれば、本発明による評価は可能である。
(実験データの取り扱い)
B/Wと最高温度(T)との関係は、図1の各時期における回帰式をもとに、以下の式3で与えた。なお、実際のコア採取箇所の最高温度は部材最高温度よりも5℃程度低いが、部材最高温度で評価した。
式3
Ts=6.3B/W+58.2
Tm=6.7B/W+47.9
Tw=8.2B/W+20.1
添字は時期(s:夏期、m:標準期、w:冬期)を表す。
S値は5656を材齢56日における標準養生強度(F56)で除して無次元化したSxy(xは時期、yは粗骨材の岩種を表す添字)で評価した。ばらつきはあるものの、ここでは全体的な傾向を評価することを目的としているため、B/WとSxyの関係を、過去の実験結果の回帰式である以下の式4〜6として設定した。
式4
Ag(安山岩砕石)使用
Ssa=−0.070B/W+0.275
Sma=−0.062B/W+0.253
Swa=−0.060B/W+0.289
式5
Sg(硬質砂岩砕石)使用
Sss=−0.032B/W+0.150
Sms=−0.035B/W+0.160
Sws=−0.043B/W+0.215
式6
Lg(石灰石砕石)使用
Ssl=−0.027B/W+0.186
Sml=−0.032B/W+0.193
Swl=−0.019B/W+0.147
式4〜6において、添字は時期(s:夏期、m:標準期、w:冬期)および粗骨材の岩種(a:安山岩、s:硬質砂岩、l:石灰石)を表す。
上記(I)、(II)、(iii)により影響されるSxyを評価可能な式として式7を仮定した。
式7
Sxy=(Kb×B/W+Kt×Tx+Sb)+(Kay×Tx+Say)
Kb、Kt、Kayは、それぞれ(I)、(II)、(iii)の影響度合いを表す係数、Sb、Sayは、それぞれ(I)と(II)、(iii)の影響に関する定数を表す。また、Kb、Kt、Sbは、結合材種類に起因する係数であり、Kay、Sayは、骨材種類に起因する係数である。
ただし、(iii)の影響については粗骨材の影響がないデータが得られていないため、まずは夏期のSxyが最も小さいAg使用の場合(Ssa)の(iii)の影響をきわめて小さいものと判断し、(Kaa×Ts+Saa)=0と仮定して検討した。
まず、式7において(iii)の影響を表す「Kay×Tx+Say」について検討した。下記のようにして、式3〜7より、Kay、Sayを算出した。
式7より、
Sss−Ssa=(Kas×Ts+Sas)−(Kaa×Ts+Saa)
上記したように、Kaa×Ts+Saa=0であるから、
Sss−Ssa=Kas×Ts+Sas
式4、5より、
Sss−Ssa=(−0.032B/W+0.150)−(−0.070B/W+0.275)
=0.038B/W−0.125
式3より、B/W=(Ts−58.2)/6.3を代入して
=0.038×(Ts−58.2)/6.3−0.125
=0.0060Ts−0.476
よって、Kas=0.0060、Sas=−0.476と算出できた。
同様にして、
Sms−Sma=Kas×Tm+Sas=0.0040Tm−0.286
Sws−Swa=Kas×Tw+Sas=0.0021Tw−0.116
Ssl−Ssa=Kal×Ts+Sal=0.0068Ts−0.486
Sml−Sma=Kal×Tm+Sal=0.0045Tm−0.274
Swl−Swa=Kal×Tw+Sal=0.0050Tw−0.243
と算出できた。
Sxy−Sxaと最高温度との関係を図2(左:硬質砂岩、右:石灰石)に示す。
図2に示すように、夏期、標準期、冬期を示すそれぞれの直線は分離しており、粗骨材の岩種が同一でも1つの式で表すことができない。すなわち、式7において(iii)の影響を表す「Kay×Tx+Say」は、S値への影響を評価する式として不適である。
ここで、ペーストと骨材の線膨張係数の違いが、ペーストと骨材の密着性に影響するメカニズムを考慮すると、最高温度ではなく温度上昇量(最高温度−練上がり温度Tx0)で評価するのが妥当ではないかと考えられる。すなわち、ペーストと粗骨材との線熱膨張係数が異なる場合、温度上昇量(最高温度と練上がり温度との差)が大きいほどペーストと骨材の一体性に悪影響を及ぼし、構造体コンクリート強度が低下してS値が大きくなると推測される。そのため、式7を修正して、(III)温度上昇量の影響を評価可能な式8を仮定した。なお、Tx0は本実験における実測値の平均値である、夏期31℃、標準期23℃、冬期12℃を採用した。
式8
Sxy=(Kb×B/W+Kt×Tx+Sb)+(Kay×(Tx−Tx0)+Say)
Kb、Kt、Kayは、それぞれ(I)、(II)、(III)の影響度合いを表す係数、Sb、Sayは、それぞれ(I)と(II)、(III)の影響に関する定数を表す。また、Kb、Kt、Sbは、結合材種類に起因する係数であり、Kay、Sayは、骨材種類に起因する係数である。
式8において、(III)の影響を表す「Kay×(Tx−Tx0)+Say」について、上記式7と同様にして、Kay、Sayを算出した。
Sss−Ssa=Kas×(Ts−31)+Sas
=0.038B/W−0.125
=0.038(Ts−58.2)/6.3−0.125
=0.0060(Ts−31)−0.289
Sms−Sma=Kas×(Tm−23)+Sas
=0.0040(Tm−23)−0.193
Sws−Swa=Kas×(Tw−12)+Sas
=0.0021(Tw−12)+0.091
Ssl−Ssa=Kal×(Ts−31)+Sal
=0.0068(Ts−31)−0.275
Sml−Sma=Kal×(Tm−23)+Sal
=0.0045(Tm−23)−0.172
Swl−Swa=Kal×(Tw−12)+Sal
=0.0050(Tw−12)−0.183
Sxy−Sxaと温度上昇量との関係を図3(左:硬質砂岩、右:石灰石)に示す。
図3に示すように、夏期、標準期、冬期を示すそれぞれの直線は重なっており、「Kay×(Tx−Tx0)+Say」は、(III)のS値への影響を表していることが確認できた。各直線の回帰式により、以下に示すKay、Sayを採用した。
式9
採用値:Kas=0.0030、Kal=0.0049
Sas=−0.132、Sal=−0.182
次に、(II)の影響について検討した。式3、4、8をもとに、Ktを以下のように算出した。
式8より、
Ssa−Swa=Kt×(Ts−Tw)
式3より、Ts、Twを代入して
=Kt{(6.3B/W+58.2)−(8.2B/W+20.1)}
=Kt(−1.9B/W+38.1)
式4より、
Ssa−Swa=(−0.070B/W+0.275)−(−0.060B/W+0.289)
=−0.010B/W−0.014
上記2式より、
Kt(−1.9B/W+38.1)=−0.010B/W−0.014
KtはB/Wの関数であり、本実験の範囲では図4の回帰式で概ね評価可能であった。したがって、以下に示すKtを採用することとした。
式10
採用値:Kt=−0.00043B/W−0.00007
式10から得られるKtは常に負の値となり、B/Wが大きいほどその値は小さくなった。したがって、(II)による影響に関しては、最高温度が高いほど、またB/Wが大きいほどS値は小さくなる傾向にあった。ここで、Ag使用の場合の(III)の影響を表す(Kaa×(Tx−Tx0)+Saa)=0と仮定して検討しているため、(III)の影響によるS値の増大があればKt×Txで算出される値の中にその影響が加算されていると考えられる。つまり、Ag使用の場合の(III)の影響を正確に評価した場合でも、Ktの値がここで得られた値よりも大きくなることはない。
最後に、(I)の影響について検討した。式3、4、8、10をもとに、KbおよびSbを以下のように算出した。
式8より、
Ssa=(Kb×B/W+Kt×Ts+Sb)
式10よりKt、式3よりTsを代入して
=Kb×B/W+(−0.00043B/W−0.00007)×(6.3B/W+58.2)+Sb
式4より、
Ssa=−0.070B/W+0.275
上記2式より、
Kb×B/W+Sb=0.002709B/W−0.044533B/W+0.279074
Kb×B/W+SbはB/Wの関数となり、本実験の範囲では図5の回帰式で概ね評価可能であった。したがって、以下に示すKbおよびSbを採用した。
式11
採用値:Kb=−0.024、Sb=0.241
Kbは−0.024と負の値となっているため、B/Wが大きいほどS値は小さくなる傾向にあった。
以上の結果をもとに求めた、式8で表される粗骨材ごとの算出式は以下のとおりである。
式12
Sxa=(−0.024×B/W+(−0.00043B/W−0.00007)×Tx+0.241)
Sxs=(−0.024×B/W+(−0.00043B/W−0.00007)×Tx+0.241)+(0.0030×(Tx−Tx0)−0.132)
Sxl=(−0.024×B/W+(−0.00043B/W−0.00007)×Tx+0.241)+(0.0049×(Tx−Tx0)−0.182)
B/WとSxyの関係について、式12と式3に基づく算出式と、式4〜6で表される実測値の回帰式とを図6に示す。図6に示すように、算出式は、実測値の回帰式と非常によく一致しており、算出式によりS値の挙動を推定できることが確かめられた。
式8に示すSxyは5656を材齢56日における標準養生強度(F56)で除して無次元化したものであり、式8に標準養生強度を乗じると、式1が得られる。また、式3を一般化すると式2となる。すなわち、式1、2は、(I)B/W、(II)最高温度、(III)温度上昇量というそれぞれの因子が、S値に与える影響を分離して一般化して表されており、式1、2から、S値の挙動を推定できることが確かめられた。
本発明の推定方法を用いることにより、過去、種類が同じで産地が異なる材料を用いた試し練りを行ったデータがあれば、そのデータから(I)B/W、(II)最高温度、(III)温度上昇量のそれぞれがmSnに与える影響を分離して式1、2を求めることで、時期の違いやB/WによるS値の挙動を推定することができる。
夏期、標準期、冬期のうち、冬期のS値の推定値が最大となるのであれば、冬期に試し練りを行いS値を測定し、この測定値を夏期と標準期にも適用することにより、試し練りの回数を3分の1に減らすことができる。また、実際の季節が冬でない場合は、冬期の外気温となるように制御した室内で試し練りを行いS値を測定し、この測定値を全時期に適用することにより、季節の到来を待つことなく迅速にS値を算出することができる。この際、夏期と標準期のS値は、冬期の測定値、または冬期を再現して測定した測定値よりも小さいと推定されるため、測定値を夏期と標準期のS値として適用することは、安全側となるため問題はない。
例えば、必要なB/Wの範囲が3〜5で、B/W=3のときにS値の推定値が最大となるのであれば、B/W=3の条件で試し練りを行い、この測定値をB/W=3〜5の全範囲に適用することにより、B/W3〜5のうちの3水準以上での試し練りが必要であったところ、試し練りの回数を1回に減らすことができる。B/Wが3〜5の範囲では、B/W=3のときにS値が最も大きいと推定されるため、B/W=3における測定値をB/W=3〜5におけるS値として適用することは、安全側となるため問題はない。

Claims (4)

  1. 設計基準強度が60N/mm以上の高強度コンクリートの構造体強度補正値mSnを、式1、2に基づいて推定することを特徴とするmSnの推定方法。
    (式1)
    mSn={Kb×B/W+Kt×T+Sb+Ka×(T−T0)+Sa}×Fm
    (式2)
    T=α×B/W+β
    ここで、
    mSn:構造体強度補正値であり、材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度と材齢n日における構造体コンクリートの圧縮強度の差
    B:単位結合材量(混和材を含まない場合は単位セメント量)
    W:単位水量
    B/W:結合材水比
    T:構造体コンクリートの硬化初期における最高温度
    T0:練上がり時のコンクリート温度
    Fm:材齢m日における標準養生供試体の圧縮強度
    Kb、Kt、Sb:結合材種類に起因するmSnに対する影響係数
    Ka、Sa:骨材種類に起因するmSnに対する影響係数
    α、β:結合材種類およびT0に起因するTに対する影響係数
  2. 請求項の推定方法により時期ごとにmSnを推定し、推定値が最大となる時期にコンクリートの試し練りを行いmSnを測定し、該測定値をその他の時期についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
  3. 請求項の推定方法により時期ごとにmSnを推定し、推定値が最大となる時期の外気温に制御した室内でコンクリートの試し練りを行い、標準養生供試体および構造体コンクリートを模擬した温度履歴を与えた円柱供試体の圧縮強度試験の測定値からmSnを求めて、該測定値を全時期についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
  4. 請求項の推定方法によりB/WとmSnの関係を推定し、mSnが最大となる1水準のB/Wでコンクリートの試し練りを行いmSnを測定し、該測定値をB/Wの全適用範囲についても採用することを特徴とする構造体コンクリートの強度管理方法。
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