JP6538421B2 - 浴用剤 - Google Patents

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Description

本発明は、浴用剤に関し、さらに詳細にはマツ科モミ属に属する植物を利用した温浴効果に優れる浴用剤に関する。
従来より、温浴効果の向上を目的とした浴用剤が種々提案されている。例えば、硫酸ナトリウムや炭酸ナトリウムなどの無機塩類により熱の放散を防ぎ入浴後の保温効果を高めたり、炭酸塩と有機酸を配合し浴湯中で炭酸ガスを発生させ、その血管拡張作用により血行を促進させる発泡性の浴用剤が開発されている。また浴用剤において天然植物の利用も検討されており、例えばニンジン等の生薬は、発泡性の浴用剤に配合可能な成分として知られており(特許文献1〜2参照)、かかる成分を配合した発酵性の浴用剤は、血行促進効果と湯上がり後の肌のしっとり感付与効果を相乗的に高めるとされている(特許文献3参照)。また、ヒノキ科植物から得られた抽出物を用いることにより、疼痛緩和効果を付与した浴用剤も開発されている(特許文献4)。
一方、後継者不足や、木材価格の下落により、山林の手入れが行き届かなくなり、その荒廃が大きな問題とされている。この山林の手入れは、主に間伐と枝打ちであるが、間伐材や、枝打ちで落とされた枝葉に何の経済的価値もなく、逆に経費がかかるのみであれば、このような手入れがおろそかになるのは当然のことである。そこで、山林の手入れが促されるよう、間伐や枝打ちされる樹木について、有効資源化するための加工方法や新規用途の開発が望まれていた。
本発明者らは、このような伐採される樹木の枝葉などを有効利用する方法として、減圧下におけるマイクロ波照射により加熱処理する方法を検討し、得られた蒸留物が、芳香剤や二酸化窒素等の有害酸化物除去剤等として利用し得ることを報告している(特許文献5及び6)。
特開昭62−234015号公報 特開平7−546号公報 特開昭60−215618号公報 特開平11−158058号公報 特開2011−174021号公報 再公表特許WO2010/98439号公報
本発明は、間伐・枝打ちされる樹木を利用した、温浴効果に優れる浴用剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、マツ科モミ属の樹木から得られる抽出物や蒸留物等を浴湯中に加えることにより、優れた温浴効果が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、マツ科モミ属に属する植物の圧搾液、抽出物または蒸留物を含有する浴用剤である。
本発明の浴用剤は、温浴効果が高く、入浴後の保温効果に優れ、さらにリラックス効果やストレス緩和効果を得ることができるものであり、湯冷め防止や冷えの改善に優れた効果を有する。
本発明の浴用剤に用いるマツ科モミ属に属する植物の蒸留物を得るために使用するマイクロ波蒸留装置の構成を模式的に示す図である。 実施例1において、足浴実施期間中初回の足背部の皮膚温の温度低下を示すグラフである(あり;製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分使用、なし;お湯のみ)。 実施例1において、足浴実施期間中1週間継続後の足背部の皮膚温の温度低下を示すグラフである(あり;製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分使用、なし;お湯のみ)。
本発明の入浴剤は、マツ科モミ属に属する植物の搾汁液、抽出物または蒸留物を有効成分とするものである。
マツ科モミ属に属する植物としては、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、ノーブルファー等を挙げることができるが、これらのうちトドマツが好ましく用いられる。
本発明の入浴剤の原料としては、上記マツ科モミ属に属する植物の植物体全てまたはその一部(例えば、果実、種子、葉、樹皮、根茎、花など)が用いられる。これらのうち、間伐・枝打ちされる樹木の有効利用の観点から、葉の部分が好適に用いられる。葉の部分は、そのまま用いても良いが、好ましくは、粉砕機や圧砕機等により粉砕・圧砕して使用される。
上記マツ科モミ属に属する植物の植物体全体またはその一部から、搾汁液、抽出物または蒸留物を得る。搾汁液の製造は、公知の圧搾機を用いて行うことができる。抽出物の製造も常法に従って行うことができるが、抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、具体的には、水、エタノール、メタノール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、酢酸エチル等のカルボニル系溶媒、およびこれらの混液等が例示できる。蒸留物は、常圧蒸留、減圧蒸留、水蒸気蒸留等によって得ることができる。
これらのうち、蒸留物が好ましく、特に減圧下で加熱して蒸留を行うことによって得られたものが好ましい。また、加熱はヒーターによる加熱でもかまわないが、マイクロ波による加熱が好ましく、特に水を加えずに本来植物体に含まれる水分のみでマイクロ波を照射することが好ましい。マイクロ波を照射することにより、植物中に含まれる水分子が直接加熱されて水蒸気が生じ、これが移動相として作用して植物中の揮発性成分が蒸留されるため、この蒸留方法は、揮発性成分の沸点による減圧蒸留的な要素と、水蒸気蒸留的な要素とを包含するものと考えられる。このような蒸留物は、例えば図1に示す装置を使用することにより得ることができる。図中、1はマイクロ波蒸留装置、2は蒸留槽、3はマイクロ波加熱装置、4は撹拌はね、5は気流流入管、6は蒸留物流出管、7は冷却装置、8は加熱制御装置、9は減圧ポンプ、10は圧力調整弁、11は圧力制御装置、12は蒸留対象物、13は蒸留物をそれぞれ示す。
この装置1では、蒸留対象物12となる原料のマツ科モミ属に属する植物を蒸留槽2中に入れ、撹拌はね4で撹拌しながら、蒸留槽2の上面に設けられたマイクロ波加熱装置3からマイクロ波を放射し、原料を加熱する。この蒸留槽2は、気流流入口5および蒸留物流出管6と連通されている。気流流入管5は、空気あるいは窒素ガス等の不活性ガスを反応槽2中に導入するものであり、この気流は、反応槽2の下部から導入される。また、蒸留物流出管6は、原料からの蒸留物を、反応槽2の上部から外に導出するものである。
上記反応槽2内部は、これに取り付けられた温度センサおよび圧力センサ(共に図示せず)により温度および圧力が測定されるようになっており、加熱制御装置8および圧力制御装置11、圧力調整弁10を介してそれぞれ調整されるようになっている。
また、蒸留物流出管6を介して蒸留槽2から流出した気体状の蒸留物は、冷却装置7により液体に代えられ、蒸留物13として得られる。この蒸留物13には、油性画分13aと水性画分13bが含まれるが、このうち水性画分13bが好適に用いられる。水性画分13bは水に対する溶解性が高いため、界面活性剤等を用いることなく、浴湯にそのまま添加することができ、また大量に添加することも可能である。さらに水性画分13bは重い香りを含まずさわやかな芳香を有するため、芳香による心地よさやリラックス感の付与にも寄与し得る。
蒸留にあたっては、上記蒸留槽2内の圧力を、3ないし95キロパスカル、好ましくは、3ないし40キロパスカル、さらに好ましくは3ないし25キロパスカル程度として行なえば良く、その際の蒸気温度は40℃から100℃になる。圧力が3キロパスカル以下では植物中の揮散性成分の蒸気圧上昇が抑制され、また、水蒸気蒸留的要素より、各成分の沸点による減圧蒸留的要素が主となり、沸点の低いものから順に流出してしまうため、水よりも沸点の高い成分の抽出が効率的に行われないという点で好ましくない。また、95キロパスカル以上では、原料の温度が高くなるため、エネルギーロスが大きく、原料の酸化も促進されてしまうという点で好ましくない。また、蒸留時間は、0.2ないし8時間程度、好ましくは、0.4ないし6時間程度とすれば良い。0.2時間以下では植物中の未抽出成分が多く残存してしまい、8時間以上では原料が乾固に近い状態となってしまうため、抽出効率が低下するという点で好ましくない。
更に、蒸留槽2内に導入する気体としては、空気でもかまわないが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましく、その流量としては、1分当たりの流量が、蒸留槽2の0.001ないし0.1容量倍程度とすれば良い。
以上のようにして得られたマツ科モミ属に属する植物の搾汁液、抽出物または蒸留物はそのまま本発明の浴用剤に用いることもできるが、必要に応じて、常法により、更に濃縮したり、精製してもよい。
本発明の浴用剤には、浴用剤に一般に使用される添加剤を本発明の性能を損なわない範囲で配合することも可能である。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトール等の多価アルコール類;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、固形パラフィン等の炭化水素系油;牛脂、豚脂、魚油等の天然油脂類;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等の合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル油;ミツロウ、カルナウバロウ等のロウ類;直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチン等の油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルカノールアミド等の非イオン性界面活性剤;石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、アシルグリシン塩、アシルザルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸べタイン、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩等の両性界面活性剤;アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキシド等の半極性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミンやアミドアミンの塩酸塩あるいは酢酸塩;タルク、カオリン、セリサイト、雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪ソウ土、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ストロンチウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、セラミックスパウダー等の無機粉末; 結晶セルロース、ポリエチレン粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末等の有機粉末;酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;赤色酸化鉄(ベンガラ)チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料; 黄色酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒色酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料; 群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビヒマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビヒマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色酸化チタン被覆雲母等のパール顔料、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム;バリウムまたはアルミのニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β−カロチン等の天然色素;アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の水溶性高分子;ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の無機または有機塩類;pH調製剤である酸およびアルカリ;殺菌剤、キレート剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、動植物由来の天然エキス、香料等を配合できる。
本発明の浴用剤は、常法に基づき製造することができ、粉末、顆粒、錠剤、水性または油性の液状などの通常の剤形とすることができ、これらのうち、加工性や使用性の観点から水性の液状が好適である。浴用剤中のマツ科モミ属に属する植物の圧搾液、抽出物または蒸留物の含有量は特に制限されないが、通常0.001〜100質量%(以下、単に「%」と表す)、好ましくは0.01〜100%、より好ましくは0.1〜100%である。この浴用剤を、例えば、浴湯中にマツ科モミ属に属する植物の圧搾液、抽出物または蒸留物の含有量が、0.1〜50%、好ましくは0.5〜20%、より好ましくは1〜10%となるように添加すればよい。このような範囲とすることにより、優れた温浴効果を得ることができる。
本発明の浴用剤は、浴湯に溶解ないし分散させ、身体の少なくとも一部を浸漬して使用する。浸漬する身体の部位は、身体全体を浸漬する全身浴であってもよく、首や肩、手や腕、足や脚等、身体の一部のみであってもよい。なかでも、本発明の浴用剤は、角質層の厚い身体の部位であっても、良好に温浴効果を及ぼし得ることから、足を浸漬して使用するための足浴剤として最適である。
次に実施例等を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
製 造 例 1
トドマツの葉を圧砕式粉砕機(KYB製作所製)で粉砕したもの約50kgを、図1に示すマイクロ波水蒸気蒸留装置の蒸留槽に投入し、攪拌しながら蒸留槽内の圧力を、約20KPaの減圧条件下に保持し、(蒸気温度は約67℃)1時間マイクロ波照射し蒸留した。得られた蒸留物から水性画分を採取しトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分を得た。
実 施 例 1
温浴効果:
製造例1で得られたトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分の温浴効果を確認した。被験者10名をA、Bの二組に分け(A組:男性3名、女性2名、B組:男性2名、女性3名;平均年齢25.4歳(23〜29歳)、平均BMI20.8(18.1〜23.0))、1週間のウォッシュアウト期間を設定して、1週間連続家庭にて足浴を実施し、条件をクロスオーバーさせて再度1週間足浴を行った。足浴は、1日最後の食事の1時間後から就寝の1時間前までの間で、シャワーを浴びる前に水温41℃で10分間行った。足浴装置は、市販の発泡樹脂フットバス(商品名:フットバスプロ、幅35cm×奥行き35cm×高さ30cm)を使用した。足浴用の浴湯として、製造例1で得られたトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分0.4Lをお湯9Lに加えたものを用いた。ウォッシュアウト期間は、足浴を行わず、浴槽の入浴は不可とし、シャワー浴のみを可とした。
足浴実施期間中、初回と1週継続後に足背部の皮膚温を測定した。測定は、室内環境を室温25〜26℃、湿度50〜60%に設定し、初日と1週間後に1回ずつ、足浴前後で合計4回行った。皮膚温の測定には体温ロガーLT8A(Gram Corporation)を用い、センサーは右足背にテープで留め、防水効果のあるドレッシングテープを使用して被覆し、5秒ごとに計測した。測定時の足浴装置には、自動保温装置の付いた冷え取り君(株式会社高陽社;型式FB-C80)を使用した。
測定実施時間帯は原則として09:00〜11:00または13:00〜16:00とし、被検者ごとに統一した。足浴終了5秒後の皮膚温を基準値0とし、その後14分間の温度低下値を計算してグラフ化した。なお対照としてお湯のみ9Lを用いたもので同様に測定を行った。統計処理には統計解析アドインソフトエクセル統計2012 for Windowsを使用し、p値は0.05未満を統計学的に有意とみなした。両群の皮膚温の経時的変化の比較には、対応のある二元配置分散分析を行い、有意差が認められた場合にはBonferroni法で時間ごとの分析を行った。結果を図2、3に示す(*p<0.05、**p<0.01)。
初日の足浴では、トドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分を添加した場合は、お湯のみと比較して有意に(p<0.0001)皮膚温の低下値が小さく、特に足浴後30秒から2分30秒、3分30秒、6分30秒から14分まで、両者間に有意差が認められた(図2)。
また、1週間足浴継続後においても、足背部の皮膚温低下値は、トドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分を添加した方が、お湯のみの場合よりも有意に少なく(p<0.0001)、特に、足浴終了後3分目から13分まで有意差があった(図3)。
実 施 例 2
気分状態:
製造例1で得られたトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分によるリラックス効果等を確認した。実施例1と同様にして被験者を男女各5名を2組に分け、一週間連続家庭にて足浴を実施し、ウォッシュアウト一週後、条件をクロスオーバーさせて再度一週間足浴を行った。足浴1週継続後に被験者の気分状態を評価した。
気分状態の評価には、簡便に頻回測定できる標準化質問紙Mood Check List - Short Form 2(MCL-S.2)を用いて、快感情、リラックス感、不安感を判断した(橋本公雄、村上雅彦:運動に伴う改訂版ポジティブ感情尺度(MCL-S.2)の信頼性と妥当性、健康科学33:21-26,2011)。MCL-S.2質問シートは、各指標4項目、合計12項目からなっており、「まったくそうである」から「まったくそうでない」までの7件法にて回答を評価した。5分間椅子上安静の後、MCL-S.2質問シートに回答を記入してもらった。統計処理には統計解析アドインソフトエクセル統計2012 for Windowsを使用し、p値は0.05未満を統計学的に有意とみなした。気分指標の変化についてt検定(Welchの方法)を行った。結果を表1に示す。
1週間足浴を継続することにより、最終日には快感情が有意に(p<0.05)増加し、リラックス感は増加傾向を示した(p<0.1)。
製 剤 例 1
粉末状入浴剤:
以下の処方で粉末状入浴剤を調製した。
乾燥硫酸ナトリウム 20%
炭酸水素ナトリウム 残量(合計100%)
当帰エキス 1%
製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分 1%
無水ケイ酸 3%
香料 微量
着色料 微量
製 剤 例 2
油性液状入浴剤:
以下の処方で油性液状入浴剤を調製した。
ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル 10%
流動パラフィン 残量(合計100%)
ホホバ油 5%
製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分 2%
ブチルパラベン 0.2%
香料 1.8%
精製水 1%
製 剤 例 3
水性液状入浴剤:
以下の処方で水性液状入浴剤を調製した。
製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分 0.2%
グリセリン 20%
香料 1%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 2%
ブチルパラベン 0.2%
水 残量(合計100%)
製 剤 例 5
水性液状入浴剤:
以下の処方で水性液状入浴剤を調製した。
製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分 0.2%
グリセリン 20%
塩化カリウム 2%
香料 1%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 2%
メチルパラベン 0.2%
水 残量(合計100%)
製 剤 例 6
攪拌転動混合機に、炭酸ナトリウム40%、重炭酸ナトリウム20%、焼ミョウバン3%、コハク酸15%、香料1%、製造例1のトドマツ減圧水蒸気蒸留水性画分1%を入れて混合した。混合粉体を温めながらポリエチレングリコールを20%添加して再度混合した。次いで、得られた混合物を押し出し造粒機により圧密化し、得られた押し出し物を振動冷却機で冷却したのち、整粒機にて破砕し、顆粒状入浴剤を得た。
本発明の浴用剤は、温浴効果が高く、入浴後の保温効果に優れるとともに、リラックス効果やストレス緩和効果を得ることができるものである。したがって、湯冷め防止や冷えの改善を目的とした浴用剤として有用なものである。
1…マイクロ波蒸留装置
2…蒸留槽
3…マイクロ波加熱装置
4…撹拌はね
5…気流流入管
6…蒸留物流出管
7…冷却装置
8…加熱制御装置
9…減圧ポンプ
10…圧力調整弁
11…圧力制御装置
12…蒸留対象物
13…蒸留物
以 上

Claims (6)

  1. マツ科モミ属に属する植物を減圧下で加熱して蒸留を行うことによって得られる蒸留物の水性画分を含有する浴用剤(ただし、抗ウイルス剤として用いるものを除く)
  2. 加熱がマイクロ波加熱である請求項記載の浴用剤。
  3. マツ科モミ属に属する植物が、トドマツである請求項1または2記載の浴用剤。
  4. 足浴である請求項1〜のいずれかの項記載の浴用剤。
  5. リラックス用である請求項1〜4のいずれかの項記載の浴用剤。
  6. ストレス緩和用である請求項1〜5のいずれかの項記載の浴用剤。
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