JP6536944B2 - 自己免疫疾患の発症に関与する細胞を判定する方法及びその利用 - Google Patents

自己免疫疾患の発症に関与する細胞を判定する方法及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、自己免疫疾患の発症に関与する細胞を判定する方法及びその利用に関する。
免疫系は、本来、外界からの有害な異物の侵入に対する生体の防御機構として存在するものである。しかし、時にはこの免疫系の働きが、結果的に生体に有害であることがある。
生体は、外界からの異物に対してのみならず、自己の成分に対しても応答を起こすことが知られており、自己免疫現象と呼ばれている。そして、自己免疫によってある種の病態が生じた疾患は、自己免疫疾患と呼ばれている。
自己免疫疾患は、全身性の疾患であるが、臓器特異性のある疾患(臓器特異的自己免疫疾患)と、臓器特異性のない疾患(臓器非特異的自己免疫疾患)との2つに大別される。これら自己免疫疾患の多くは、組織に病変が認められるとともに、組織傷害を伴うものである。
臓器非特異的自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)は、抗dsDNA抗体などの自己抗体の産生の増加に起因することが知られているが、SLEを引き起こす過程の分子生物学的な研究、多様な病態との関連の解明、さらには治療法の開発が期待されている。
実験動物を同一の抗原で繰り返して免疫し続けると、免疫応答は極期をむかえ、やがて疲弊する。その結果として、組織傷害を伴う種々の自己免疫疾患(病態)が生じることが知られている(例えば、特許文献1参照および非特許文献1参照)。
自己免疫疾患による組織傷害に関する研究は現在進みつつあり、組織傷害に、抗原提示細胞による抗原のクロスプレゼンテーションが関わっていることが明らかにされている。具体的には、(1)自己免疫疾患を患うと、樹状細胞における抗原のクロスプレゼンテーションが増強されること、(2)樹状細胞におけるクロスプレゼンテーションが増強されるとCD8T細胞が活性化し、当該CD8T細胞によって細胞傷害が誘導されること、が明らかにされている(例えば、特許文献2および非特許文献1参照)。
本発明者らは、マウスに対して抗原による免疫操作を繰り返すことによって、自己応答性・自己抗体誘導性CD4 T細胞(autoantibody-inducing CD4 T cells;aiCD4 T細胞)という新たなタイプのT細胞が末梢にて生成され、aiCD4 T細胞が多様な自己抗体を誘導するとともに、細胞傷害性T細胞(CTL)を成熟させて種々の臓器障害を惹起してSLEを発症させる、ということをこれまでに報告し(非特許文献1)、さらに、aiCD4 T細胞が、PD−1CD45RBlow122low(PD−1CD45RBlo122lo)のCD4 T細胞亜集団に存在すること、この細胞亜集団をナイーブなマウスに養子移入すると、移入2週間後のレシピエントマウスの血清中に自己抗体が観察されることを見出している(非特許文献2参照)。
特開2006−288382号公報(2006年10月26日公開) 特開2010−004750号公報(2010年 1月14日公開)
Tsumiyama K. et al., PLoS ONE, Vol.4, No.12, e8382, 2009 Miyazaki Y. et al., The Journal of Immunology vol.192, no.2, supplement 177.7、2014 Zhang Q et al., N Engl J Med 361(21): 2046-2055, 2009 Randall KL et al., Nat Immunol 10(12): 1283-1291, 2009 Randall KL et al. Disease Markers 29: 141-150, (2010) Randall KL et al., J Exp Med 208(11): 2305-2320, 2011 Werner M and Jumaa H, Nat Immunol 13(6): 525-526, 2012 Jabara HH et al., Nat Immunol 13(6): 612-620, 2012
本発明は、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞をより簡便に特定するためのマーカーを見出し、これに基づいて自己免疫疾患の客観的かつ正確な診断を可能とすることを目的としている。
本発明は、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を被験体が有しているか否かを判定する方法を提供する。本方法は、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定する方法でもあり得る。本方法は、被験体の末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する工程を包含する。また、本発明は、抗DOCK8抗体を含む、自己免疫疾患を誘導するCD4 T細胞の有無を判定するための組成物を提供する。本組成物は、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定するための組成物でもあり得る。
さらに、本発明は、DOCK8陽性CD4 T細胞を用いる、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製する方法、上記非ヒト哺乳動物を用いる、自己抗体量を低減させる物質のスクリーニング方法を提供する。また、本発明は、DOCK8陽性CD4 T細胞を含む、非ヒト哺乳動物において自己抗体を産生させるための組成物を提供する。本組成物は、非ヒト哺乳動物において自己免疫疾患を誘導するための組成物でもあり得る。
本発明を用いれば、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞をより簡便に特定することができる。本発明を用いれば、新たな自己免疫疾患モデル動物の作製が可能であり、作製したモデル動物を用いることによって、自己免疫疾患の処置(予防、改善または治療)に有用な物質をスクリーニングすることができる。
自己免疫疾患を発症したマウスにおいてDOCK8 CD4 T細胞が増加することを示す図である。 抗原を繰り返し投与したマウスから得られたDOCK8 CD4 T細胞が、自己抗体の産生を誘導することを示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分にDOCK8タンパク質が存在することを示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在してコントロールの細胞亜集団の細胞膜画分に存在しないタンパク質が存在することを示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。 PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在するタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を示す図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
〔1〕DOCK8陽性CD4 T細胞
本発明者らは、独自の創意工夫に基づいて、自己免疫疾患を発症したマウスにおいてdedicator of cytokinesis protein 8(以下、DOCK8)を発現するCD4 T細胞(DOCK8陽性CD4 T細胞(DOCK8 CD4 T細胞ともいう。))が増加することを見出し、さらに、このDOCK8陽性CD4 T細胞をナイーブなマウスへ養子移入することによって自己抗体が産生することを見出した。DOCK8陽性CD4 T細胞による自己抗体産生のプロファイルは、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団による自己抗体産生のプロファイルと同様であった。さらに、本発明者らは、上記CD4 T細胞亜集団にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在することを確認し、DOCK8陽性CD4 T細胞が、SLE発症の原因となる細胞(aiCD4 T細胞)であることを見出した。
DOCK8は、DOCKファミリータンパク質のメンバーであり、グアニンヌクレオチド交換因子(guanine nucleotide exchange factor:GEF)の機能を有する分子量238kDaのタンパク質である。DOCK8は、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質の活性化を介してアクチン細胞骨格の重合を制御することが知られている。アクチン細胞骨格の再構成は、細胞の分化・増殖、遊走、シグナル伝達など様々な細胞機能に関わっている。
近年、ヒトDOCK8遺伝子の欠損が重症複合免疫不全症を引き起こすことが発見されたことをきっかけに、DOCK8の免疫学的な研究成果が複数報告されている(非特許文献3〜8参照)。
上述したように、DOCKファミリー分子と免疫不全症との関係についての報告はあるが、細胞移動やB細胞活性化に関与する細胞内シグナル伝達に重要なアダプタータンパク質としての研究が進められており、aiCD4 T細胞との関与を示唆する報告はない。
なお、本明細書において、「DOCK8」は、特に説明がない場合は、DOCK8タンパク質およびDOCK8タンパク質をコードするDNA(遺伝子)の両方が意図される。本発明にて使用されるDOCK8は、哺乳動物に由来するものであれば特に限定されず、そのような哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、サル、ヒトが挙げられ、好ましくは、マウス、ラット、ヒトであり、より好ましくはヒトである。
DOCK8の塩基配列およびアミノ酸配列は、マウス(アクセッション番号:NM_028785.3)、ラット(アクセッション番号:NM_001037793.2)およびヒト(アクセッション番号:AB191037.1)のものが同定されており、それぞれがGenBankデータベースに登録されている。
〔2〕DOCK8陽性CD4 T細胞の利用
〔2−1〕判定に用いるマーカー
被験体の末梢血またはリンパ組織に存在するT細胞において、DOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定することによって、被験体が、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を有しているか否かを判定することができ、その結果、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定することができる。すなわち、本発明は、被験体が自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を有しているか否かを判定する方法、および、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定する方法を提供する。
本発明において、被験体から取得したT細胞におけるDOCK8陽性CD4 T細胞の数が、健常者または自己免疫疾患に罹患していないことが明らかな患者から取得したT細胞におけるDOCK8陽性CD4 T細胞の数よりも増加していれば「DOCK8陽性CD4 T細胞が存在する」と判定する。なお、増加の程度は、統計的に有意差がある値よりも増加していれば特に限定されない。
本発明に係る判定方法は、被験体の末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する工程を包含する方法であればよく、その他の具体的な工程、条件、材料等は特に限定されない。本発明に係る判定方法は、例えば、自己抗体(抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF))の産生量を測定する工程を包含してもよく、健常者と比較して上記自己抗体の産生が亢進しているか否かを確認する工程をさらに包含してもよい。なお、本発明に係る判定方法は、医師の行為および判断を排除した「判定を補助する方法」または「判定に用いられるデータを取得する方法」でもあり得る。
本明細書において、「自己免疫疾患」は、自己抗体の産生に起因する疾患が意図される。自己抗体としては、例えば、抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF)が挙げられるがこれに限定されない。本発明において、上記自己免疫疾患は、例えば、抗dsDNA抗体の産生に起因する疾患であることが好ましく、具体的には、全身性エリトマトーデス(SLE)が好ましい。
本明細書において、「被験体」は哺乳動物が意図され、ヒトであってもヒト以外の哺乳動物(非ヒト哺乳動物)であってもよい。「非ヒト哺乳動物」は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなどが挙げられる。非ヒト哺乳動物のなかでも、個体発生及び生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なげっ歯動物、特にマウス、ラット等が好ましい。
本明細書において、「リンパ組織」は、免疫反応の担い手であるリンパ球の発生、分化、増殖、および機能発現の場となる器官であるリンパ組織のうち、リンパ球の抗原依存性の増殖と反応の場となる器官が意図され、二次的(末梢性)リンパ器官(secondary lymphoid tissue)ともいう。すなわち、「リンパ組織」は、リンパ球の増殖、分化の場で、免疫応答の場でない一次(中枢性)リンパ器官(primary lymphoid tissue)である胸腺、哺乳類の骨髄、鳥類のファブリキウス嚢(bursa of Fabricius)以外のリンパ組織をいう。
このような「リンパ組織」としては、例えば、リンパ節、脾(臓)、腸リンパ組織(gut-associated lymphoid tissue(扁桃、Peyer板など))などが挙げられる。なかでも、リンパ組織として、脾臓を用いることが好ましい。
本発明に係る判定方法に末梢血または脾臓を用いることにより、簡便かつ正確に、本発明に係る判定方法を実施することができる。特に、末梢血を用いる場合は、生体から容易に検体を採取することができる点で、非常に有用である。
「T細胞」は、免疫応答の活性化(ヘルパーT細胞)、抑制(サプレッサーT細胞)など免疫応答の制御、および、ウイルスが感染した細胞および癌細胞の傷害(キラーT細胞)や遅延型アレルギーなどに関与するリンパ球亜群をいう。
DOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かについては、例えば、抗DOCK8抗体を用いた免疫測定法によって確認することができる。DOCK8陽性CD4 T細胞の存在は、フローサイトメトリーを用いてDOCK8陽性CD4 T細胞そのものの数(量)が確認されても、DOCK8タンパク質の発現量が確認されてもよい。
DOCK8タンパク質の発現量の確認は、測定対象のDOCK8タンパク質と特異的に結合する抗体(抗DOCK8抗体)を用いる免疫測定法などによって行うことができる。免疫測定法としては、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光測定法(FIA)、免疫発光測定法、酵素免疫測定法(例えば、Enzyme Immunoassay(EIA)、Enzyme-linked Immunosorbent assay(ELISA))、またはImmunoblottingなどが挙げられる。また、免疫組織化学により、DOCK8タンパク質の発現量を測定するようにしてもよい。免疫組織化学としては、具体的には、酵素標識抗体法または蛍光抗体法が挙げられる。
抗DOCK8抗体としては、すでに市販されている種々の抗体(11622-1-AP(proteintech社 )、sc-292124(SANTA CRUZ社)等)が利用可能である。また、当業者は、上述したDOCK8の配列情報に基づいてリコンビナントDOCK8を容易に作製し、これを用いて抗DOCK8抗体を容易に作製し得る。
このように、本発明に係る判定方法は、抗DOCK8抗体を用いることによって行われる。すなわち、本発明は、上記判定方法における判定を実現するための抗DOCK8抗体の使用を提供する。この場合、抗DOCK8抗体は、化合物として用いられても、組成物形態で用いられてもよく、上記判定方法における判定を実現するための組成物もまた、本発明の範疇である。
本発明に係る組成物は、抗DOCK8抗体を含むことを特徴としており、末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する用途に用いられても、被験体が自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を有しているか否かを判定する用途に用いられても、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定する用途に用いられてもよい。一実施形態において、本発明に係る組成物は、自己免疫疾患を誘導するCD4 T細胞の有無を判定するための組成物である。別の実施形態において、本発明に係る組成物は、被験体が自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を有しているか否かを判定するための組成物である。さらなる実施形態において、本発明に係る組成物は、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定するための組成物である。
本発明に係る組成物はまた、キットの形態で提供され得る。すなわち、一実施形態において、本発明に係る組成物は、抗DOCK8抗体を備えた、上述した用途に用いられるキットであり得る。本発明に係るキットは、抗DOCK8抗体を内包した容器を備えていればよく、上記化合物を使用するための指示書をさらに備えていてもよい。「指示書」には、キット中の各構成を判定に適用する手順が示されている。なお、「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。さらに、本発明に係るキットは、判定を実行するために必要な器具および試薬をさらに備えていてもよい。一実施形態において、本発明に係るキットは、上述した構成を1つに梱包した包装体であり得る。別の実施形態において、本発明に係るキットは、複数の機器と連動して実行されるシステムの形態であり得る。
〔2−2〕疾患モデル動物の作製ツールおよびその利用
後述する実施例に示すように、DOCK8陽性CD4 T細胞を非ヒト哺乳動物へ移入することによって、非ヒト哺乳動物の末梢血またはリンパ組織にて自己抗体(抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF))を産生させることができる。これらの自己抗体の産生はSLE発症と密接に関連していることがすでによく知られている。これらのことから、DOCK8陽性CD4 T細胞を非ヒト哺乳動物へ移入することによって、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物(以下、自己免疫疾患モデル動物ともいう。)を作製することができるといえる。すなわち、非ヒト脊椎動物へDOCK8陽性CD4 T細胞を移入する工程を包含する、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物の作製方法もまた、本発明の範囲内である。
本発明は、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製する方法を提供する。本発明に係る作製方法は、DOCK8陽性CD4 T細胞を非ヒト哺乳動物へ移入する工程を包含する方法であればよく、その他の具体的な工程、条件、材料等は特に限定されない。本発明に係る作製方法は、例えば、自己抗体(抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF))の産生量を測定する工程を包含してもよく、DOCK8陽性CD4 T細胞を移入する前後において上記自己抗体の産生が亢進しているか否かを確認する工程をさらに包含してもよい。
非ヒト哺乳動物から血清を採取し、血清中における自己抗体の量を測定する。自己抗体の量の測定には、当該分野で周知の手法が用いられればよく、例えば、EIA法、ELISA法、PHA、二重免疫拡散法、FAT、PA法、RIA法等が挙げられる。なお、自己抗体の産生が亢進しているか否かの確認は、移入後の自己抗体量を、同一個体における移入前の自己抗体量と比較して行われても、同じ種類の正常動物個体における自己抗体量と比較して行われてもよい。
上述したように、本明細書において、「自己免疫疾患」は、自己抗体の産生に起因する疾患が意図され、具体的には、全身性エリトマトーデス(SLE)が好ましい。また、「非ヒト哺乳動物」としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、サルなどが挙げられ、特にマウス、ラット等が好ましい。
DOCK8陽性CD4 T細胞は、自己抗体(抗dsDNA抗体、リウマチ因子(RF))の産生が亢進している被験体の末梢血またはリンパ組織から取得することができる。また、後述する実施例にて示すように、同一の抗原で繰り返して免疫した非ヒト哺乳動物の末梢血またはリンパ組織からDOCK8陽性CD4 T細胞を取得することができる。
非ヒト哺乳動物の免疫に用いられる抗原としては、実施例にて用いたオブアルブミン(OVA)に限定されず、例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、キーホールリンペット ヘモシアニン(KLH)等が挙げられる。抗原は、0.1μg〜10mg/g体重の範囲で用いられることが好ましく、1μg〜1mg/g体重の範囲で用いられることがより好ましい。
免疫は3〜7日毎に行われることが好ましく、その頻度は、8回以上が好ましく、8〜20回がさらに好ましい。免疫の際の投与経路としては、静脈注射、腹腔内投与が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る作製方法は、DOCK8陽性CD4 T細胞を用いることによって行われる。すなわち、本発明は、上記作製方法を実現するためのDOCK8陽性CD4 T細胞の使用を提供する。この場合、DOCK8陽性CD4 T細胞は、化合物として用いられても、組成物形態で用いられてもよく、上記作製方法を実現するための組成物もまた、本発明の範疇である。
本発明に係る組成物は、DOCK8陽性CD4 T細胞を含むことを特徴としており、非ヒト哺乳動物において自己抗体を産生させる用途に用いられても、非ヒト哺乳動物において自己免疫疾患を誘導する用途に用いられても、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製する用途に用いられてもよい。一実施形態において、本発明に係る組成物は、非ヒト哺乳動物において自己抗体を産生させるための組成物である。別の実施形態において、本発明に係る組成物は、非ヒト哺乳動物において自己免疫疾患を誘導するための組成物である。さらなる実施形態において、本発明に係る組成物は、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製するための組成物である。
上記組成物もまた、上述したように、キットまたはシステムの形態で提供されてもよい。すなわち、一実施形態において、本発明に係る組成物は、DOCK8陽性CD4 T細胞を備えた、上述した用途に用いられるキットであり得る。
〔2−3〕疾患モデル動物の利用
上述したように、上記自己免疫疾患モデル動物において、疾患を誘導する自己抗体の産生が亢進している。よって、上記自己免疫疾患モデル動物の自己抗体量を低減させる物質は、上記自己免疫疾患に対する処置(予防、改善または治療)に有用である。すなわち、上記自己免疫疾患モデル動物は、自己抗体量を低減させる物質をスクリーニングする用途、自己免疫疾患に対する処置(予防、改善または治療)に有用な物質をスクリーニングする用途に利用可能である。
本発明は、上記自己免疫疾患モデル動物の自己抗体量を低減させる物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明に係るスクリーニング方法は、上記自己免疫疾患モデル動物を用いる方法であればよく、その他の具体的な工程、条件、材料等は特に限定されない。
一実施形態において、本発明に係るスクリーニング方法は、被験物質を投与した後の上記自己免疫疾患モデル動物における第1の自己抗体量を測定する工程、被験物質を投与する前の上記自己免疫疾患モデル動物における第2の自己抗体量を測定する工程、および第1の自己抗体量と第2の自己抗体量とを比較する工程を包含し、比較した結果を指標として、用いられた被験物質を目的の医薬(予防薬、改善薬または治療薬)として選択する工程をさらに包含することが好ましい。
本明細書において、「被検物質」は、自己抗体量に何らかの影響を与える可能性がある物質をいい、例えば、核酸(DNA、RNA、cDNA等)およびこれを含むベクター、抗体、ペプチド、タンパク質、合成化合物などが挙げられる。
なお、被験物質を投与した動物における自己抗体量は、同じ個体の投与前の自己抗体量と比較するだけでなく、同じ種類の正常動物個体における自己抗体量と比較してもよい。すなわち、別の実施形態において、本発明に係るスクリーニング方法は、被験物質を投与した後の上記自己免疫疾患モデル動物における第1の自己抗体量を測定する工程、被験物質を投与していない上記自己免疫疾患モデル動物における第3の自己抗体量を測定する工程、および第1の自己抗体量と第3の自己抗体量とを比較する工程を包含し、比較した結果を指標として、用いられた被験物質を目的の医薬(予防薬、改善薬または治療薬)として選択する工程をさらに包含することが好ましい。
本明細書において、「予防」は、疾患の発症前に医薬を被験者に適用することにより、適用しない場合と比べて、疾患の発症率を抑制(低下)させること、及び疾患の発症後の症状を軽減することが意図され、必ずしも発症を完全に抑制することが意図されるのではない。
また、本明細書において、「治療」は、疾患の発症後に医薬を被験者に適用することにより、適用しない場合と比べて、疾患の症状を軽減することが意図され、必ずしも疾患の症状を完全に抑制することが意図されるのではない。なお、疾患の発症は、疾患の症状が身体に現れることをいう。
被験物質を投与する前後に、自己免疫疾患モデル動物から血清を採取し、血清中の自己抗体の量を測定する。あるいは、被験物質を投与された自己免疫疾患モデル動物と、被験物質を投与されていない自己免疫疾患モデル動物とから血清を採取し、血清中の自己抗体の量を測定する。被験物質の投与によって自己抗体の量が減少しているかどうかを調べることによって、自己免疫疾患の処置(予防、改善または治療)に有用な物質を同定することができる。自己抗体の量の測定には、当該分野で周知の手法が用いられればよく、例えば、EIA法、ELISA法、PHA、二重免疫拡散法、FAT、PA法、RIA法等が挙げられる。
〔3〕本発明の一態様
上述したように、本発明は以下の態様を採り得る:
[1]被験体の末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する工程を包含する、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を被験体が有しているか否かを判定する方法。
[2]被験体の末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する工程を包含する、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定する方法。
[3]上記自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)である、1または2の方法。
[4]自己抗体の産生量を測定する工程をさらに包含する、1〜3の方法。
[5]健常者と比較して上記自己抗体の産生が亢進しているか否かを確認する工程をさらに包含する、4の方法。
[6]上記自己抗体が抗dsDNA抗体および/またはリウマチ因子(RF)である、4または5の方法。
[7]抗DOCK8抗体を含む、自己免疫疾患を誘導するCD4 T細胞が被験体の末梢血またはリンパ組織に存在するか否かを判定するための組成物。
[8]抗DOCK8抗体を含む、被験体が自己免疫疾患の発症の原因となる細胞を有しているか否かを判定するための組成物。
[9]抗DOCK8抗体を含む、被験体が自己免疫疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かを判定するための組成物。
[10]上記自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)である、7〜9の組成物。
[11]DOCK8陽性CD4 T細胞を含む、非ヒト哺乳動物において自己抗体を産生させるための組成物。
[12]DOCK8陽性CD4 T細胞を含む、非ヒト哺乳動物において自己免疫疾患を誘導するための組成物。
[13]DOCK8陽性CD4 T細胞を含む、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製するための組成物。
[14]上記自己免疫疾患が全身性エリテマトーデス(SLE)である、11〜13の組成物。
[15]DOCK8陽性CD4 T細胞を非ヒト哺乳動物へ移入する工程を包含する、自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を作製する方法。
[16]自己抗体の産生量を測定する工程をさらに包含する、15の方法。
[17]DOCK8陽性CD4 T細胞を移入する前後において上記自己抗体の産生が亢進しているか否かを確認する工程をさらに包含する、16の方法。
[18]上記自己抗体が抗dsDNA抗体および/またはリウマチ因子(RF)である、16または17の方法。
[19]15〜18の方法によって作製した自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を用いる、自己抗体量を低減させる物質をスクリーニングする方法。
[20]15〜18の方法によって作製した自己免疫疾患モデルの非ヒト哺乳動物を用いる、自己免疫疾患に対する処置に有用な物質をスクリーニングする方法。
[21]被験物質を投与した後の上記非ヒト哺乳動物における第1の自己抗体量を測定する工程、被験物質を投与する前の上記非ヒト哺乳動物における第2の自己抗体量を測定する工程、および第1の自己抗体量と第2の自己抗体量とを比較する工程を包含し、比較した結果を指標として、用いられた被験物質を目的の医薬として選択する工程をさらに包含する、19または20の方法。
[22]被験物質を投与した後の上記非ヒト哺乳動物における第1の自己抗体量を測定する工程、被験物質を投与していない上記非ヒト哺乳動物における第3の自己抗体量を測定する工程、および第1の自己抗体量と第3の自己抗体量とを比較する工程を包含し、比較した結果を指標として、用いられた被験物質を目的の医薬として選択する工程をさらに包含する、19または20の方法。
[23]上記自己免疫疾患モデルが、全身性エリテマトーデス(SLE)のモデルである、19〜22の方法。
〔実施例〕
〔1.DOCK8 CD4 T細胞〕
8週齢のBALB/cマウス(Charles River Japan Inc.)に0.5mgの卵白アルブミン(OVA; grade V; Sigma)を5日毎に繰り返して腹腔内投与した。投与には、PBSに溶かしたOVA溶液(2mg/mL)を250μL用いた。OVAを12回投与した後のマウスから脾細胞を単離し、抗DOCK8抗体(ウサギ由来、proteintech)、PE標識抗ウサギIgG抗体(BioLegend)、allophycocyanin (APC)標識抗CD4抗体(BioLegend)と反応させ、フローサイトメーターFACS Calibur(BD bioscienses)を用いて、DOCK8陽性CD4 T細胞を検出した。
その結果、PBSを12回繰り返して腹腔内投与した対照群と比較して、OVA投与群ではDOCK8陽性CD4 T細胞が増加していた(図1)。
〔2.DOCK8 CD4 T細胞の養子移入〕
8週齢のBALB/cマウス(Charles River Japan Inc., Yokohama, Japan)に0.5mgの卵白アルブミン(OVA;grade V; Sigma)を5日毎に繰り返して腹腔内投与した。OVA12回投与後のマウスの脾細胞から、磁気ビーズを含むCD4 T cell isolation kit(Miltenyi Biotec)とセルソーターautoMACS(Miltenyi Biotec)を用いて、ネガティブセレクションによって脾細胞からCD4 T細胞を単離した。そして、CD4 T細胞を、抗DOCK8抗体(ウサギ由来、proteintech)およびphycoerythrin(PE)標識抗ウサギIgG抗体(BioLegend)と反応させ、続いて磁気ビーズ 抗PE microbeads(Miltenyi Biotec)と反応させた。その後、セルソーターautoMACS(Miltenyi Biotec)を用いて、ポジティブセレクションによってDOCK8 細胞を単離することにより、DOCK8CD4 T細胞とDOCK8 CD4 T細胞を得た。これらの細胞を、2.5×10個ずつ、ナイーブなBALB/cマウスに静脈注射によって養子移入した。ネガティブコントロールとして、PBSを12回腹腔内投与したBALB/cマウスの脾細胞から、磁気ビーズを用いてCD4 T細胞を単離し、2.5×10個の細胞をナイーブなBALB/cマウスに静脈注射によって養子移入した。
細胞の移入から24時間後に、OVA 0.5mgをレシピエントマウスに腹腔内投与によって追加免疫した。細胞の移入から2週間後に、レシピエントマウスの尾静脈から採血し、非特許文献1に記載の手順に従って、血清中の自己抗体(リウマチ因子(RF)、抗dsDNA抗体)をELISAによって検出した。
図2に示されるように、OVA投与マウスのDOCK8 CD4 T細胞を移入した群では、ネガティブコントロールであるPBS投与マウスのCD4 T細胞を移入した群と比較して、RFおよび抗dsDNA抗体が有意に増加していた。また、OVA投与マウスのDOCK8 CD4 T細胞を移入した群と比較した場合でも、DOCK8CD4 T細胞を移入した群では、RFおよび抗dsDNA抗体が有意に増加していた。ネガティブコントロール群とOVA投与マウスのDOCK8CD4 T細胞を移入した群との間には有意な差は見られなかった。
このように、OVA12回投与後のマウスから得られたDOCK8 CD4 T細胞によって自己抗体(RFおよび抗dsDNA抗体)の産生が誘導されることがわかった。
〔3.PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団〕
本発明者らはこれまでに、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団をナイーブなマウスに養子移入すると、移入2週間後のレシピエントマウスの血清中に自己抗体(RFおよび抗dsDNA抗体)の増加が観察されることを見出している(非特許文献2参照)。そこで、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団にDOCK8 CD4 T細胞が存在するか否かを調べた。
8週齢のBALB/cマウス(Charles River Japan Inc., Yokohama, Japan)に0.5mgの卵白アルブミン(OVA;grade V; Sigma)を5日毎に繰り返して腹腔内投与した。OVA12回投与後のマウスの脾細胞から、磁気ビーズ(MACS beads (Miltenyi Biotec, Germany))を用いてPD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団を単離した。
PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞質画分または細胞膜画分から抽出したタンパク質をSDS−PAGEに供し、抗DOCK8抗体(11622-1-AP)を用いたイムノブロッティングを行った。
図3に示されるように、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分にDOCK8タンパク質が存在することがわかった。なお、図中レーン1〜4は細胞質画分のタンパク質、レーン5〜8は細胞膜画分のタンパク質であり、レーン1および5は、PBSを12回腹腔内投与したBALB/cマウスの脾細胞から回収したCD4 T細胞(ネガティブコントロール)を用い、レーン2および6は、OVAを12回腹腔内投与したBALB/cマウスの脾細胞から回収したCD45RBhi122hiのCD4 T細胞を用い、レーン3および7は、OVAを12回腹腔内投与したBALB/cマウスの脾細胞から回収したPD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞を用い、レーン4および8は、OVAを12回腹腔内投与したBALB/cマウスの脾細胞から回収したPD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞を用いた。
続いて、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞質画分または細胞膜画分から抽出したタンパク質をSDS−PAGEに供し、ゲルの銀染色を行い、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分に存在してコントロールの細胞亜集団の細胞膜画分に存在しないタンパク質(図4の(a)〜(f))をゲルから切り出して質量分析に供した。図中のレーン1〜8は、図3のレーン1〜8に対応している。
質量分析の結果から、DOCK8がPD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団に存在してコントロールの細胞亜集団に存在しないタンパク質であることがわかった。また、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団に存在してコントロールの細胞亜集団に存在しないタンパク質として、DOCK8以外に、DNA topoisomerase 2-beta(TOPO IIβ,181kDa)、von Willebrand factor A domain-containing protein 5A(VWA5A,87kDa)、signal transducer and activator of transcription 5B(STAT5b,89kDa)、epidermal growth factor receptor substrate 15-like 1(EPS15R,99kDa)、arachidonate 5-lipoxygenase-activating protein(FLAP,18kDa)が存在することがわかった。
これらのタンパク質についてのイムノブロッティングの結果を図5A〜図5Fに示す。図中、目的のタンパク質泳動位置に*を付している。また、図中のレーン1〜8は、図3および図4のレーン1〜8に対応している。
図5Aには、抗VWA5A抗体(LS-C172383(LifeSpan BioSciences社)およびSc-137568(SANTA CRUZ社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体LS-C172383を用いた場合、抗体に特異的なシグナル(バンド)が明瞭に観察された。
図5Bには、抗FLAP抗体(ab85227(abcam社)およびSc-28815(SANTA CRUZ社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体Sc-28815を用いた場合は非特異的シグナルがマーカー部分に観察されたに過ぎないが、抗体ab85227を用いた場合、レーン1および3にて弱いシグナルが観察された。
図5Cには、抗DOCK8抗体(11622-1-AP(proteintech社)およびSc-292124(SANTA CRUZ社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体11622-1-APおよび抗体Sc-292124のいずれを用いた場合にも、レーン1、4、5、8にて明瞭なシグナルが観察された。
図5Dには、抗TOPO IIβ抗体(ab58442(abcam社)およびSc-13059(SANTA CRUZ社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体ab58442および抗体Sc-13059のいずれを用いた場合にも、シグナルを検出することができなかった。
図5Eには、抗EPS15R抗体(NBP1-40493(Novus Biologicals社)およびab177804(abcam社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体NBP1-40493および抗体ab177804のいずれを用いた場合にも、目的のタンパク質泳動位置にシグナルを検出することができなかった。
図5Fには、抗STAT5b抗体(ab178941(abcam社)およびSc-1656(SANTA CRUZ社))を用いたイムノブロッティングの結果を示した。抗体ab178941を用いた場合、抗体に特異的なシグナル(バンド)が明瞭に観察された。抗体ab85227を用いた場合、微弱なシグナルではあるものの、抗体ab178941を用いた場合と同様のパターンでシグナルが観察された。
このように、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団の細胞膜画分におけるタンパク質量は、DOCK8タンパク質が最も多かった。
以上の結果から、PD−1CD45RBlo122loのCD4 T細胞亜集団に存在する自己応答性抗体誘導性CD4 T細胞(aiCD4 T細胞)の本体がDOCK8 CD4 T細胞であることが強く示唆された。そして、DOCK8タンパク質をマーカーに用いれば、自己免疫疾患(特にSLE)の原因となるaiCD4 T細胞を簡便に検出することができるとともに、疾患を発症しているか、または発症する可能性があるか否かの判定を客観的かつ正確に行うことができるといえる。
本発明によれば、自己免疫疾患の発症の原因となる細胞をより簡便に特定することができるので、本発明は、検査機器の開発に利用可能である。また、本発明によれば、非ヒト哺乳動物に自己免疫疾患を発症させることによって、自己免疫疾患モデル動物を作製し得るので、本発明は、自己免疫疾患の診断のための医薬品、自己免疫疾患の予防および/または治療のための医薬品のスクリーニング試験などに好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 被験体の末梢血またはリンパ組織にDOCK8陽性CD4 T細胞が存在するか否かを判定する工程を包含する、全身性エリテマトーデス(SLE)の発症の原因となる細胞を被験体が有しているか否かを判定する方法。
  2. 抗DOCK8抗体を含む、全身性エリテマトーデス(SLE)を誘導するCD4 T細胞が被験体の末梢血またはリンパ組織に存在するか否かを判定するための組成物。
  3. DOCK8陽性CD4 T細胞を非ヒト哺乳動物へ移入する工程を包含する、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルの非ヒト哺乳動物を作製する方法。
  4. 請求項に記載の方法によって作製した全身性エリテマトーデス(SLE)モデルの非ヒト哺乳動物を用いる、自己抗体量を低減させる物質をスクリーニングする方法。
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