<実施の形態1>
(モールド式EVTの構造)
図1はモールド式を採用したモールド形EVTの構造を示す説明図である。図1(a)は側面断面構造を示し、図1(b)は正面断面構造を示している。図2は一次巻線31の部分拡大図を模式的に示す説明図である。
以下、図1及び図2を参照して、66/77kV級モールド式EVTの標準的な構造を説明する。
単相のモールド式EVT1e(部分変圧器)は、大別して、同心円状に巻かれたコイル群30と、コイル群30を貫通し、閉じられた磁路を形成するカットコア35と、コイル群30及びその周辺をエポキシ樹脂で被覆した樹脂部(モールド部)37とを含んで構成される。
コイル群30は一次巻線31、二次巻線32及び三次巻線33を有し、外周側から内周側にかけて一次巻線31、二次巻線32及び三次巻線33の順でカットコア35に巻回されている。
三次巻線33は、一次−三次間変圧比(例えば、77000/√3V:110/3V)に応じて絶縁された平角銅線を数10回、二次巻線32は、一次−二次間変圧比(例えば、77000/√3V:110/√3V)に応じて絶縁された平角銅線を数10回、一次巻線31は髪の毛ほどの太さの絶縁された銅線である素線を総計数万回、1層毎に数100回、カットコア35を中心として巻回されている。
カットコア35は、方向性電磁鋼板巻鉄心を2分割切断し、切断面を研磨し、樹脂部37で被覆されたコイル群30の一次巻線31、二次巻線32及び三次巻線33に貫通した後、切断面を合わせて鋼帯36により固定されている。
このような構成の単相のEVT1eが、R相(第1相)、S相(第2相)及びT相(第3相)用に3個設けられ、これらの集合体によりEVT1が構成される。
以下、図2を参照して、一次巻線31の基本構成を説明する。図2では、3層分の素線40が巻かれた箇所を示している。各層において素線40は例えば80回程度巻かれており、異なる層の素線40,40間には層間絶縁物41が介挿される。そして、素線40及び層間絶縁物41を樹脂部37よって被覆している。
一次巻線31は片端接地の段絶縁で、1回の巻回における1ターン電圧は1V前後で、素線40はエナメル等により素線絶縁が施されている。
例えば、素線40の80巻回(80ターン)による層が450層で積層形成されている場合、総計巻回数は36000(=450×80)ターンとなる。
このような構造の一次巻線31において、対地間に一次端子側に例えば77000/√3Vが加わった場合、1層分の分担電圧は100V前後(≒77000/√3/450)となり、連続する2層間において下層で最初に巻回された素線40と上層で最後に巻回された素線40との間における一次巻線端部層間には200V前後の2層分分担電圧となり、中性点接地端子側に向かって、各層の対地間電圧が加わる。
(モールド式EVTの故障モード)
モールド形EVTのコイルが絶縁破壊し1線地絡事故に至るには、一般に前兆現象として、電界強度が最も大きい一次巻線の一次端子に近い部分で部分放電が始まり、層間絶縁物41の過熱劣化により異なる層間の素線40,40が短絡する層間短絡が発生する。例えば、往復2ターン(2巻回)分の閉回路が生じると、鉄心中の磁束によって閉回路に過電流が流れ、ジュール熱によって閉回路が生じた層の全周の巻線である素線40が過熱し、加熱した素線40に接触している層間絶縁物41の過熱劣化を引き起こし、層間短絡の範囲が次第に拡大する。
数100層(上記した例では450層)の積層構造から成る一次巻線31の層間短絡がある範囲まで拡大し、健全層の分担電圧が絶縁耐力を超えると、一次巻線31は全路絶縁破壊に至り、1線地絡事故となる。
一次巻線31の層間短絡から1線地絡事故に至る事象は、最初の部分放電発生個所などによって一律ではないと考えられるが、自動オシロ装置に記録されたデータの解析から、数10秒で見掛け上の一次巻線31が約40%に減少し、層間短絡から1線地絡事故に進展したことが判明した実例がある。
(C−GISの構成とEVTの接続例)
図3は、77kV常用線−予備線受電、変圧器2バンク構成の特別高圧受電設備の系統構成例を示す説明図である。
同図に示すように、VCT(Voltage and Current Transformer;取引用変成器)8は、受電遮断器5及び受電断路器4を介して常用線L1に接続されるとともに、受電遮断器7及び受電断路器6を介して予備線L2に接続されている。また、VCT8は変圧器一次断路器9及び変圧器一次遮断器10を介して第1バンク変圧器B1に接続されるとともに、変圧器一次断路器11及び変圧器一次遮断器12を介して第2バンク変圧器B2に接続される。さらに、特別高圧母線13の変圧器一次断路器11側のノードP1はEVT一次断路器3を介してEVT1に接続される。
なお、通常、受電断路器4及び受電遮断器5が導通状態、受電断路器6及び受電遮断器7が遮断状態(電路閉状態)に設定され、変圧器一次断路器9及び変圧器一次遮断器10と変圧器一次断路器11及び変圧器一次遮断器12とのうち一方が導通状態、他方が遮断状態に設定される。
上述した構成部(1,2,4〜13)がガス絶縁されたキュービクルに収納され、キュービクル形ガス絶縁開閉装置(C−GIS)を構成する。
(EVTの結線と平常時の二次、三次電圧)
前述したように、EVT1は単相形のEVT1eが3台で構成される。すなわち、EVT1は、三相交流電源系統におけるR相(第1相)、S相(第2相)及びT相(第3相)に対応した3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)構成される。
そして、3相のEVT1e間において、一次巻線31,31間は星形に結線され、二次巻線32,32間は星形に結線され、三次巻線33,33間は開放三角形に結線される。
図4はEVT1eにおける一次巻線31〜三次巻線33の結線内容を模式的に示す説明図である。同図(a)は一次巻線31における結線内容を示し、同図(b)は二次巻線32における結線内容を示し、同図(c)は三次巻線33における結線内容を示している。
同図(a)に示すように、一次R相電圧E1Rに示す箇所にR相用の一次巻線31が配置され、一次S相電圧E1Sで示す箇所にS相用の一次巻線31が配置され、一次T相電圧E1Tで示す箇所にT相用の一次巻線31が配置される。そして、T相一次線T1、R相一次線R1及びS相一次線S1に電力供給を受ける。
同図(b)に示すように、二次R相電圧E2Rに示す箇所にR相用の二次巻線32が配置され、二次S相電圧E2Sで示す箇所にS相用の二次巻線32が配置され、二次T相電圧E2Tで示す箇所にT相用の二次巻線32が配置される。そして、T相二次線T2、R相二次線R2及びS相二次線S2のうち2つの線間において3つの二次線間電圧を得ることができる>。
同図(c)に示すように、三次R相電圧E3Rに示す箇所にR相用の三次巻線33が配置され、三次S相電圧E3Sで示す箇所にS相用の三次巻線33が配置され、三次T相電圧E3Tで示す箇所にT相用の三次巻線33が配置される。そして、T相三次線T3、S相三次線S3及びR相三次線R3を経由したT相、S相及びR相のベクトル和である三次巻線33における零相電圧3voを得ることができる。
図4に示す構成では、単相EVT1eの変圧比は77000/√3:110/√3:110/3Vで、星形結線(一次巻線31間)−星形結線(二次巻線32間)−開放三角結線(三次巻線33間)に設定することにより、二次線間電圧は110Vとなり、これが各種の計器や継電器に入力される。図4の三次開放端は、正常時は各相三次電圧のベクトル和がゼロとなるため、正常動作時、3vo(三次換算値)=0となる。
三次開放端には、地絡事故時に動作する零相電圧計や、地絡保護継電器が接続される。1線完全地絡事故時は例えば「3vo=110V」となる。
(1線地絡時事故時のEVT二次、三次電圧)
まず、1線地絡事故時とEVT一次巻線層間短絡故障時のEVT二次、三次に現れる電圧の違いを説明する。図5は、1線地絡事故時の回路状態を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、T相電源線T0にT相用交流電源ATが接続され、R相電源線R0にR相用交流電源ARが接続され、S相電源線S0にS相用交流電源ASが接続された、一般的な電力会社等からの電力供給を想定した場合を考える。この場合、わが国の77/66kV系統の中性点接地方式は200〜400A抵抗接地で、R相用交流電源AR、T相用交流電源AT及びS相用交流電源ASが接続される中性点P2と大地レベル間に中性点接地抵抗Rn(NGR;抵抗値RnΩ)が接続される。
T相電源線T0、R相電源線R0及びS相電源線S0は、ケーブルや架空線で構成される電路である。T相電源線T0と大地との間にはT相対地静電容量CT0、R相電源線R0と大地との間にはR相対地静電容量CR0、S相電源線S0と大地との間にはS相対地静電容量CS0が存在する。T相対地静電容量CT0、R相対地静電容量CR0及びS相対地静電容量CS0の容量値Cは、分布定数であるが、等価的に集中定数として図示している。
図5では、R相で1線地絡事故が発生したと想定した図であり、R相電源線R0と大地との間に地絡点抵抗Rg(Ω)が存在すると定義する。
図6は、R相で1線地絡事故が発生した場合の各相の電圧のベクトル状況を示す説明図である。
図6のR相用円50として示すように、R相用交流電源AR、S相用交流電源AS及びT相用交流電源ATによる電源電圧及び対地静電容量Cが三相平衡の条件では、R相1線地絡事故時の中性点P2の軌跡は、R相電圧ERを通る円弧になることが理論的に証明されている。
なお、R相用円50の中心座標C0は以下の式(1)で表され、R相用半径RERは以下の式(2)で表される。なお、式(1)及び式(2)において、CはR相対地静電容量CR0の容量値、Rnは中性点接地抵抗Rnの抵抗値、ωは角周波数を意味する。
地絡点抵抗Rgの抵抗値が小さいほど完全地絡に近くなり、各相の零相電圧Voが大きくなり、中性点P2はR相電圧ERのベクトル終点であるR点に近づき、地絡点抵抗Rgの抵抗値が大きいほど平常時に近くなり、零相電圧Voが小さくなり、中性点P2は中心座標C0点に近づく(Rg=∞は、地絡事故が起きていないことを示す)。
各相の対地間電圧であるR相電圧ER、S相電圧ES、及びT相電圧ETは、平常時(1線地絡事故発生前)から1線地絡事故発生後の異常時にかけて零相電圧Voが“0”から“0”でない有意な値を採る状態に変化する結果、それぞれ以下の式(3)〜式(5)で表される。なお、式(3)〜式(5)に示すR相電圧VR、S相電圧VS及びT相電圧VTは異常時におけるR相電圧、S相電圧及びT相電圧を意味し、R相電圧ER、S相電圧ES及びT相電圧ETは正常時におけるR相電圧、S相電圧及びT相電圧を意味する。
また、中性点接地抵抗Rnの抵抗値が大きいほど非接地系に近くなり、R相用円50は小さくなる。Rn=∞(完全非接地系)では、地絡点抵抗Rgの抵抗値をパラメータとした場合の中性点P2の軌跡は、図6の線分0−R(R相電圧ER)を直径とする半円を描く。
図6から明らかなように、1線地絡事故が発生すると、開放三角結線されるEVT1の三次電圧として“0”でない零相電圧3voが発生し、これを計器や継電器に入力することによって、地絡事故が発生したことを検出できる。
1線地絡事故が発生しても、EVT1の各線間電圧に相当する、図6で示すST線間電圧EST、TR線間電圧ETR、RS線間電圧ERSは変化しない(厳密には微小な変化はある)ことが本発明の第1の重要ポイントとなる。
(1台のEVT1eに層間短絡故障時のおける当該EVT1eの二次、三次電圧)
図7はR相用のEVT1eの一次巻線に層間短絡故障が発生した場合の各相のEVT1eの二次電圧のベクトル状況を示す説明図である。同図(a)が正常時の場合、同図(b)がR相のEVT1eの一次巻線31に層間短絡故障が発生した異常時の場合を示している。
R相用のEVT1eの一次巻線31に層間短絡故障が発生すると、見掛け上、一次巻線の巻回数が減少したのと等価となり、変圧比が小さくなるため、同図(b)に示すR相の二次R相電圧V2Rは、同図(a)で示す平常時の二次R相電圧E2Rよりも大きくなる。
したがって、EVT1の二次巻線間において、同図(b)で示す異常時の二次RS線間電圧V2RS及び二次TR線間電圧V2TRは、同図(a)で示す平常時の二次RS線間電圧E2RS及び二次TR線間電圧E2TRより大きくなる。一方、同図(b)で示す異常時の二次ST線間電圧V2STは、同図(a)で示す正常時の二次ST線間電圧E2STから変化しない。
この二次巻線32における線間電圧の変化は、一次巻線31の層間短絡範囲の拡大に伴って大きくなる。この現象が、本発明の第2の重要ポイントとなる。
各相のEVT1eの一次巻線31、二次巻線32及び三次巻線33の各巻数をN1、N2、及びN3とし、R相用のEVT1eの一次巻線31の層間短絡故障により、R相一次巻数がN1からN1(1−K)に減少したとする。この場合、二次R相電圧V2Rは、以下の式(6)のように、二次R相電圧E2Rから上昇する。
その結果、図7に示すように、二次R相電圧V2Rの上昇を受け、各相のEVT1eの3つの二次線間電圧のうち、2つの二次RS線間電圧V2RS及び二次TR線間電圧V2TRも上昇する。
図8はKをパラメータとして、二次RS線間電圧V2RS及び二次TR線間電圧V2TRの上昇率の計算結果を表形式で示す説明図である。
同図に示すように、パラメータKが大きくなる、すなわち、巻回数減少度合が大きくなるに従い、二次RS線間電圧V2RS及び二次TR線間電圧V2TRの上昇率が増大する。
図9はEVT1の三次巻線33における三次R相電圧E3R、三次S相電圧E3S及び三次T相電圧E3Tのベクトル和である三次巻線33における零相電圧3voのベクトルを示す説明図である。同図(a)が正常時の場合、同図(b)がR相のEVT1eの一次巻線31に層間短絡故障が発生した場合を示している。
同図に示すように、R相用のEVT1eの一次巻線31に層間短絡故障が発生した場合、同様の原理で三次R相電圧E3Rも大きくなり、開放三角結線内の各相電圧のベクトル和である零相電圧3voが“0”でなく有意な値をもつため、地絡事故は起きていないにも関わらず、三次開放端に見掛け上の有意な値を有する零相電圧3voが発生する。
(EVT一次巻線の層間短絡故障検出方法)
図10は、この発明の実施の形態1であるEVT一次巻線の故障検出方法の判定アルゴリズムを示すフローチャートである。同図において、ステップS1と、ステップS11〜S15よりなる層間短絡故障判定処理TR1と、ステップS21〜S28よりなる1線地絡事故判定処理TR2とから構成される。
第2の重要ポイントとして示したように、EVT一次巻線における層間短絡時の特徴は、二次線間電圧のうち、層間短絡が発生した相に関わる2つの線間電電圧、例えば、R相EVTの層間短絡故障であれば、R−S間とT−R間の線間電圧が上昇し、S−T間の線間電圧は変化しないことである。
線間電圧の上昇の要因は、電源電圧の上昇や進み力率運転時のフェランチ効果などがあるが、2つの線間電圧が大きく上昇する現象は一次巻線の層間短絡以外には考えられない。
また、電源電圧の上昇やフェランチ効果による電圧上昇では、通常は各相の電圧が上昇する。また、この場合、“0”でない有意な値を有する零相電圧3voは発生しないが、層間短絡では有意な値を有する零相電圧3voが発生する。
零相電圧3voは、地絡事故時にも有意な値を示すが、地絡事故では、第2の重要ポイントである、2つの線間電圧が上昇する現象は発生しない。
以下、図10を参照して、実施の形態1であるEVT1の故障検出方法の処理手順を説明する。
まず、ステップS1において、二次RS線間電圧E2RS、二次ST線間電圧E2ST及びTR線間電圧E2TRが3つともほぼ同じ値であるか(Y(YES))否か(N(NO))を判定し、YESの場合はステップS21以降の1線地絡事故判定処理TR2に移行し、NOの場合はステップS11移行の層間短絡故障判定処理TR1に移行する。
(層間短絡故障判定処理TR1)
まず、層間短絡故障判定処理TR1について説明する。ステップS11において、三次巻線33における零相電圧3voが“0”あるか(Y)否か(N)を判定し、YESの場合はステップS15で、後述する計器・継電器19等の誤動作調査を実行し、NOの場合はステップS12に移行する。
このように、ステップS11において、R相,S相及びT相用の3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)の三次巻線33より得られる零相電圧3voが“0”でない有意な値を有する第1の故障要因の有無を判定している。
ステップS12において、二次RS線間電圧E2RSの値(絶対値)と二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)とが同レベルの(ほぼ等しい)関係にあり、かつ、これら2つの線間電圧(E2TR,E2RS)の値が残りの1つの線間電圧である二次ST線間電圧E2STの値(絶対値)より大きい(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS12でYESの場合にステップS16でR相・層間短絡故障が発生したと判定し、警報を出力する。一方、ステップS12でNOの場合はステップS13に移行する。
ステップS13において、二次RS線間電圧E2RSの値(絶対値)と二次ST線間電圧E2STの値(絶対値)とが同レベルの関係にあり、かつ、これら2つの線間電圧(E2RS,E2ST)の値が残りの1つの線間電圧である二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)より大きい(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS13でYESの場合にステップS17でS相・層間短絡故障が発生したと判定し、警報を出力する。一方、ステップS13でNOの場合はステップS14に移行する。
ステップS14において、二次RS線間電圧E2TRの値(絶対値)と二次ST線間電圧E2STの値(絶対値)とが同レベルの関係にあり、かつ、これら2つの線間電圧(E2TR,E2ST)の値が残りの1つの線間電圧である二次RS線間電圧E2RSの値より大きい(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS14でYESの場合にステップS18でT相・層間短絡故障が発生したと判定し、警報を出力する。一方、ステップS14でNOの場合はステップS1に戻る。
そして、ステップS16〜S18それぞれにおいて、ステップS11及びステップS12〜S14の判定結果を参照して、上述した第1及び第2の故障要因が共に有るか否かに基づき、EVT1における層間短絡故障の有無を判定している。
(1線地絡事故判定処理TR2)
次に、1線地絡事故判定処理TR2について説明する。ステップS21において、零相電圧3voが“0”あるか(Y)否か(N)を判定し、YESの場合はステップS25で「正常状態」であると判定し、NOの場合はステップS22に移行する。
このように、ステップS21において、R相,S相及びT相用の3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)の三次巻線33より得られる零相電圧3voが“0”でない有意な値を有する第1の故障要因の有無を判定している。
ステップS22において、三次R相電圧E3Rの値(絶対値)が、三次S相電圧E3Sの値(絶対値)あるいは三次T相電圧E3Tの値(絶対値)より小さいか(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS22でYESの場合にステップS26でR相・1線地絡事故が発生したと判定し、警報を出力する。一方、ステップS22でNOの場合はステップS23に移行する。
ステップS23において、三次S相電圧E3Sの値が、三次T相電圧E3Tの値あるいは三次R相電圧E3Rの値より小さいか(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS23でYESの場合にステップS27でS相・1線地絡事故の発生が判定したと、警報を出力する。一方、ステップS23でNOの場合はステップS24に移行する。
ステップS24において、三次T相電圧E3Tの値が、三次R相電圧E3Rの値あるいは三次S相電圧E3Sの値より小さいか(Y)か否か(N)を判定する。そして、ステップS24でYESの場合にステップS28でT相・1線地絡事故が発生したと判定し、警報を出力する。一方、ステップS24でNOの場合はステップS1に戻る。
このように、ステップS22〜S24にそれぞれにおいて、R相,S相及びT相用の3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)それぞれの三次巻線33の出力電圧となる3つの三次出力電圧のうち、1つの三次出力電圧が他の2つの三次出力の少なくとも一つより小さくなる、第3の故障要因の有無を判定している。
そして、ステップS26〜S28それぞれにおいて、ステップS21及びステップS22〜S24の判定結果を参照して、上述した第1及び第3の故障要因が共に有るか否かに基づき、EVT1における1線地絡事故の有無を判定している。
このように、実施の形態1であるEVTの故障検出方法における層間短絡故障判定処理TR1は、ステップS16〜S18において、ステップS11とステップS12〜S14の判定結果を参照して、第1の故障要因及び第2の故障要因が共に有るか否かに基づき、EVT1における層間短絡故障の有無を判定している。ここで、第1の故障要因の判断基準として零相電圧3voが“0”でない有意な値をもつことを採用し、第2の故障要因の判断基準として、3つの二次線間電圧のうち、2つの二次線間電圧が他の1つの二次線間電圧より大きく、2つの二次線間電圧が同レベルである(ほぼ同じ値となる)ことを採用している。
その結果、実施の形態1のEVTの故障検出方法の層間短絡故障判定処理TR1により、第1及び第2の故障要因を共に満足する場合にEVT1における層間短絡故障の発生を判定することができるため、比較的簡単な方法で精度良くEVT1における層間短絡故障の有無を判定することができる。
特に、従来はその構造上、層間短絡故障の検出が不可能とされていたモールド式EVTにおいて、実施の形態1の故障検出方法を採用することは有益である。
さらに、実施の形態1であるEVTの故障検出方法における1線地絡事故判定処理TR2は、ステップS26〜S28において、ステップS21及びステップS22〜S24の判定結果を参照して、第1の故障要因及び第3の故障要因が共に有るか否かに基づき、EVT1における1線地絡事故の有無を判定している。ここで、第1の故障要因の判断基準として零相電圧3voが“0”でない有意な値をもつことを採用し、第3の故障要因の判断基準として、3つの三次出力電圧のうち、1つの三次出力電圧が他の2つの三次出力電圧の少なくとも一つより小さいことを採用している。
その結果、実施の形態1のEVTの故障検出方法の1線地絡事故判定処理TR2により、第1及び第3の故障要因を共に満足する場合にEVT1における1線地絡事故の発生を判定することができるため、層間短絡故障に加え、比較的簡単な方法で精度良くEVT1における1線地絡事故の有無を判定することができる。
図11〜図13は図10の個別ステップの詳細を示すフローチャートであり、図11はステップS11(S21)の詳細を示し、図12はステップS12の詳細を示し、図13はステップS22の詳細を示している。
図11に示すように、同図(a)で示すステップS11の処理は、同図(b)で示すように、零相電圧3voの絶対値|3vo|が基準パラメータa(>0)より小さいか否かで判定している。なお、基準パラメータaとして例えば完全地絡時3voの15%が考えられる。
図12に示すように、ステップS12はステップS121〜S123により実行される。ステップS121において、二次RS線間電圧E2RSの値(絶対値)と二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)との差の絶対値||E2RS|−|E2TR||が基準パラメータb(>0)より小さいか(Y)否か(N)により、「E2RS≒E2TR」の有無を判定している。なお、基準パラメータbとして、例えば平常時の二次線間電圧(E2RS,E2TR、E2ST)の10%以下の有意な値が考えられる。
このように、ステップS121において、3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)のうち2つのEVT1eにおける二次巻線32の線間電圧となる3つの二次線間電圧のうち、2つの二次線間電圧が同レベルである(ほぼ等しい)場合に第1の判断基準を満足すると判定している。
そして、ステップS121でYESの場合に次の判定ステップであるステップS122に移行し、NOの場合はステップS12の判定結果がNOとなりステップS13(図10参照)に移行する。
ステップS122において、ステップS121で判定に用いた二次RS線間電圧E2RS及び二次TR線間電圧E2TRに関し、二次RS線間電圧E2RSの値(絶対値)と二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)との和(|E2RS|+|E2TR|)の半分の値を平均線間電圧EMに設定する。
その後、ステップS123において、平均線間電圧EMが二次ST線間電圧E2STの絶対値に基準パラメータc(>0)を加算した「|E2ST|+c」より大きい(Y)か否か(N)により、「E2RS,E2TR>EST」の有無を判定している。なお、基準パラメータcとして、は例えば平常時の二次線間電圧(E2RS,E2TR、E2ST)の15%以下の有意な値が考えられる。
そして、ステップS123でYESの場合は、ステップS16において、R相・層間短絡故障の判定を行い、NOの場合はステップS12の判定結果がNOとなりステップS13(図10参照)に移行する。
このように、ステップS122及びS123において、2つの二次線間電圧の値(絶対値)の和の1/2が他の1つの二次線間電圧の絶対値+基準パラメータcより大きい値を有する場合を第2の判断基準としている。ステップS122及びS123の実行時において、ステップS121の判定に用いた2つの二次線間電圧の値は同レベルである第1の判断基準を満足しているため、上記第2の判断基準は、「ステップS121の判定に用いた2つの二次線間電圧それぞれが、他の1つの二次線間電圧より大きいこと」とする判断基準と実質等価な判断となる。
そして、ステップS16において、ステップS121の実行による第1の判断基準と、ステップS122及びS123の実行による第2の判断基準とを共に満足する場合に層間短絡故障の発生要因である第2の故障要因が発生したと判定することにより、最終的に、精度良くEVT1におけるR相の層間短絡故障の有無を判定することができる。
なお、図12ではステップS12について示したが、ステップS13及びS14もステップS12と同様にステップS121〜S123と同様な処理によって実行されることになる。
次に、図13を参照してステップS22の処理を説明する。
まず、ステップS221において、三次R相電圧E3Rの絶対値|E3R|が三次S相電圧E3Sの絶対値に基準パラメータd(>0)を減算した「|E3S|−d」より小さい(Y)か否か(N)により、三次R相電圧E3Rが三次S相電圧E3Sより十分小さいか否かを判定する。なお、基準パラメータdは例えば平常時の二次線間電圧(E2RS,E2TR、E2ST)の15%以下の有意な値が考えられる。
そして、ステップS221でYESの場合、ステップS22の処理をYESとしてステップS26でR相・1線地絡事故が発生したと判定し、NOの場合にステップS222に移行する。
まず、ステップS222において、三次R相電圧E3Rの絶対値|E3R|が三次T相電圧E3Tの絶対値に基準パラメータd(>0)を減算した「|E3T|−d」より小さい(Y)か否か(N)により、三次R相電圧E3Rが三次T相電圧E3Tより十分小さいか否かを判定する。
そして、ステップS222でYESの場合、ステップS22の処理をYESとしてステップS26でR相・1線地絡事故の発生を判定し、NOの場合にステップS23(図10参照)に移行する。
このように、ステップS221及びS222の組み合わせによって、三次R相電圧E3Rの値(絶対値)が三次S相電圧E3Sの値(絶対値)及び三次T相電圧E3Tの値(絶対値)のうち少なくとも1つより十分に小さいか否かにより、ステップS22の処理を実現している。
なお、図13ではステップS22について示したが、ステップS23及びS24もステップS22と同様にステップS221及びS123と同様な処理によって実行されることになる。
<実施の形態2>
図14はこの発明の実施の形態2であるEVT一次巻線の故障検出方法の判定アルゴリズムを示すフローチャートである。実施の形態2では層間短絡故障判定に特化した故障検出方法である。
以下、図14を参照して、実施の形態2であるEVT1の故障検出方法の処理手順を説明する。
まず、ステップS31において、零相電圧3voが“0”ある(Y)か否か(N)を判定し、NOの場合はステップS32に移行する。一方、ステップS31でYESの場合はステップS31に戻り、ステップS31でYESとなるまでステップS31の処理が繰り返される。
このように、ステップS31において、R相,S相及びT相用の3つのEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)の三次巻線33より得られる零相電圧3voが“0”でない有意な値を有する第1の故障要因の有無を判定している。
なお、ステップS31の処理は、実施の形態1の図11(b)で示すように、零相電圧3voの絶対値|3vo|が基準パラメータa(>0)より小さいか否かで判定している。
ステップS32において、パラメータ初期設定処理を行う。パラメータ初期設定処理にはカウント値CS、カウント値CR及びカウント値CTを「CS=CR=CT=0」に設定したり、警報発報規定回数ACの値を設定したりする等の処理が含まれる。
ステップS32を終えると、ステップS41〜S45からなるS相・層間短絡故障判定処理SJD、ステップS51〜S55からなるR相・層間短絡故障判定処理RJD、及びステップS61〜S65からなるT相・層間短絡故障判定処理TJDが並行して実行される。
まず、S相・層間短絡故障判定処理SJDについて説明する。S相・層間短絡故障判定処理SJDでは二次RS線間電圧E2RSの値(絶対値)と二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)との差分(E2RS−E2TR)を所定時間毎にサンプリングする。ここで、最新サンプリング時刻tのサンプリング値を(E2RS−E2TR)tとし、時刻tの1つ前のサンプリング値を(E2RS−E2TR)(t−1)とする。
なお、図14では絶対値の記号の図示を省略しているが、ステップS41で示される差分値は、正確には二次RS線間電圧E2RSの絶対値から二次TR線間電圧E2TRの絶対値を差し引いた値(|E2RS|−|E2TR|)となる。
ステップS41は(E2RS−E2TR)(t−1)と、(E2RS−E2TR)tとがセットされた段階、すなわち、少なくとも2つのサンプリング値が得られた段階で処理を開始する。
ステップS41において「(E2RS−E2TR)(t−1)<(E2RS−E2TR)t」であるか(Y)否か(N)が判定する比較処理を行い、YESの場合は次のステップS42に移行し、NOの場合はCS=0に初期化した後、ステップS41に戻る。なお、ステップS41では新たな実行時に、前回のサンプリング時刻tから、サンプリング周期である所定時間経過後の最新サンプリング時刻tに更新して新たな比較処理を行う。
ステップS41でYESの場合に実行されるステップS42において、カウント値CSを“1”インクリメントし(CS=CS+1)、ステップS43に移行する。
ステップS43において、「CS=AC」であるか(Y)否か(N)を判定し、YESの場合はステップS44にて、S相・層間短絡故障の予測情報を出力する。一方、ステップS43でNOの場合はステップS41に戻る。
次に、R相・層間短絡故障判定処理RJDについて説明する。R相・層間短絡故障判定処理RJDでは二次TR線間電圧E2TRの値(絶対値)と二次ST線間電圧E2STの値(絶対値)との差分値(E2RS−E2TR)を所定時間毎にサンプリングする。ここで、最新サンプリング時刻tのサンプリング値を(E2TR−E2ST)tとし、時刻tの1つ前のサンプリング値を(E2TR−E2ST)(t−1)とする。
なお、図14では絶対値の記号の図示を省略しているが、ステップS51で示される差分値は、正確には二次TR線間電圧E2TRの絶対値から二次ST線間電圧E2STRの絶対値を差し引いた値(|E2TR|−|E2ST|)となる。
ステップS51は(E2TR−E2ST)(t−1)と、(E2TR−E2ST)tとがセットされた段階で処理を開始する。
ステップS51において「(E2TR−E2ST)(t−1)<(E2TR−E2ST)t」であるか(Y)否か(N)が判定する、ステップS41と同様な比較処理を行い、YESの場合は次のステップS52に移行し、NOの場合はCR=0に初期化した後、ステップS51に戻る。
ステップS51でYESの場合に実行されるステップS52において、カウント値CRを“1”インクリメントし(CR=CR+1)、ステップS53に移行する。
ステップS53において、「CR=AC」であるか(Y)否か(N)を判定し、YESの場合はステップS54にて、R相・層間短絡故障の予測情報を出力する。一方、ステップS53でNOの場合はステップS51に戻る。
最後に、T相・層間短絡故障判定処理TJDについて説明する。T相・層間短絡故障判定処理TJDでは二次ST線間電圧E2STの値(絶対値)と二次TS線間電圧E2RSの値(絶対値)との差分値(E2ST−E2RS)を所定時間毎にサンプリングする。ここで、最新サンプリング時刻tのサンプリング値を(E2ST−E2RS)tとし、時刻tの1つ前のサンプリング値を(E2ST−E2RS)(t−1)とする。
なお、図14では絶対値の記号の図示を省略しているが、ステップS61で示される差分値は、正確には二次ST線間電圧E2STの絶対値から二次RS線間電圧E2RSの絶対値を差し引いた値(|E2ST|−|E2RS|)となる。
ステップS61は(E2ST−E2RS)(t−1)と、(E2ST−E2RS)tとがセットされた段階で処理を開始する。
ステップS61において「(E2ST−E2RS)(t−1)<(E2ST−E2RS)t」であるか(Y)否か(N)が判定する、ステップS41及びS51と同様な比較処理を行い、YESの場合は次のステップS62に移行し、NOの場合はCT=0に初期化した後、ステップS61に戻る。
ステップS61でYESの場合に実行されるステップS62において、カウント値CTを“1”インクリメントし(CT=CT+1)、ステップS63に移行する。
ステップS63において、「CT=AC」であるか(Y)否か(N)を判定し、YESの場合はステップS64にて、T相・層間短絡故障の予測情報を出力する。一方、ステップS63でNOの場合はステップS61に戻る。
このように、S相・層間短絡故障判定処理SJD、R相・層間短絡故障判定処理RJD及びT相・層間短絡故障判定処理TJD(以下、「S相・層間短絡故障判定処理SJD等」と略記する場合あり)によって、S相、R相及びT相における層間短絡故障の有無を判定している。
すなわち、S相・層間短絡故障判定処理SJD等のステップS41〜S43,S45(S51〜S53,S55及びS61〜S63及びS65)は、3相のEVT1e(第1〜第3の部分変圧器)のうち2つのEVT1e間における二次巻線の線間電圧となる3つの二次線間電圧のうち、2つの二次線間電圧の差分値を所定時間毎にサンプリングし、当該差分値の経時変化に伴う増加傾向が警報発報規定回数AC(所定回数)連続して確認された場合に第3の判断基準を満足したと認識する処理となる。
したがって、実施の形態2の故障検出方法では、第3の判断基準の判断基準として、3つの二次線間電圧のうち、1つの二次線間電圧が他の2つの二次線間電圧の少なくとも一つより小さい状態となる度合が経時変化によって顕著になることを採用している。
すなわち、実施の形態2の故障検出方法においても、実施の形態1と同様、第2の故障要因として3つの二次線間電圧のうち、2つの二次線間電圧が他の1つの二次線間電圧より大きくなることが含まれている。
そして、実施の形態2の故障検出方法では、ステップS44,S54,及びS64において、第3の判断基準を満足する場合に層間短絡故障の発生要因である第2の故障要因の発生を判定し、第1の故障要因(ステップS31でYES)及び第2の故障要因を共に満足することを認識すると、精度良くEVT1におけるS相、R相及びT相の層間短絡故障の有無を判定することができる。
例えば、図7に示すように、R相・層間短絡故障が発生した場合、二次R相電圧V2R(異常状態の二次R相電圧E2R)は時間経過と共に大きくなるが、二次S相電圧E2S及び二次T相電圧E2Tは時間経過によっても変化しない。
したがって、二次TR線間電圧E2TRは時間経過と共に大きくなるが、二次ST線間電圧E2STは時間経過によって変化しない。その結果、差分値(E2TR−E2ST)は時間経過に伴い値が大きくなるという、時間経過故障要因傾向を示す。
したがって、R相・層間短絡故障判定処理RJDのステップS53でカウント値CR=ACが確認される、すなわち、差分値(E2TR−E2ST)の時間経過に伴う増加が警報発報規定回数AC連続した場合、上記時間経過故障要因傾向が顕著であると認識できるため、ステップS54でR相・層間短絡故障の予測情報を出力することができる。
S相・層間短絡故障判定処理SJDにおいてもR相・層間短絡故障判定処理RJDと同様にステップS44でS相・層間短絡故障の予測情報を出力し、T相・層間短絡故障判定処理TJDにおいてもR相・層間短絡故障判定処理RJDと同様にステップS64でT相・層間短絡故障予測情報を出力している。
なお、警報発報規定回数ACは、サンプリング周期である所定時間を1秒とした場合、例えば、“10”程度が想定される。
また、S相・層間短絡故障判定処理SJDのステップS41において二次RS線間電圧E2RSの代わりに二次ST線間電圧E2STを用いても良い。同様に、R相・層間短絡故障判定処理RJDのステップS51において二次TR線間電圧E2TRの代わりに二次RS線間電圧E2RSを用いても良く、T相・層間短絡故障判定処理TJDのステップS61において二次ST線間電圧E2STの代わりに二次TR線間電圧E2TRを用いてもよい。
<故障検出機能内蔵の電力系統構成例>
(第1の構成例)
図15は実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を有する故障検出機能内蔵の電力系統の第1の構成例を示す説明図である。
同図に示すように、VCT8は受電遮断器5及び受電断路器4を介して単一常用線L0に接続されると共に、特別高圧母線13に接続される。特別高圧母線13は断路器15を介して第1バンク変圧器B1に接続されるとともに、断路器16を介して第2バンク変圧器B2に接続される。なお、断路器15は図3で示した変圧器一次断路器9あるいは変圧器一次断路器9及び変圧器一次遮断器10の組み合わせに相当し、断路器16は図3で示した変圧器一次断路器11あるいは変圧器一次断路器11及び変圧器一次遮断器12の組み合わせに相当する。通常、断路器15及び断路器16のうち一方が導通状態、他方が遮断状態に設定される。
特別高圧母線13のノードP1はEVT一次断路器3を介してEVT1に接続され、EVT1のR相、S相及びT相のEVT1eそれぞれの二次巻線及び三次巻線が計器・継電器19に接続され、計器・継電器19が層間短絡故障検出装置20に接続される。
計器・継電器19は各相のEVT1eの二次巻線に電気的に接続されており、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法に必要な二次巻線に関連する情報である二次RS線間電圧E2RS、二次TR線間電圧E2TR、及び二次S相電圧E2Sが検出可能である。さらに、計器・継電器19は各相のEVT1eの三次巻線33に電気的に接続されており、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法に必要な三次巻線33に関連する情報である零相電圧3vo、三次R相電圧E3R、三次S相電圧E3S及び三次R相電圧E3Rが検出可能である。
したがって、層間短絡故障検出装置20は計器・継電器19を介して必要な検出情報を取得して、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を実行することができる。
また、層間短絡故障検出装置20は、故障検出方法の実行時に図示しない制御信号によって、EVT一次断路器3または受電遮断器5の導通・遮断制御を行うことができる。
このように構成において、層間短絡故障検出装置20は、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法の実行により、EVT1における層間短絡故障の発生を認識すると、受電遮断器5を制御して遮断状態とする連動トリップ処理を行い単一常用線L0への影響を回避する。その後、単一常用線L0を利用する受電設備は一次停電状態となる。
層間短絡故障検出装置20は上記連動トリップ処理と並行して、EVT一次断路器3を遮断状態とすることにより、層間短絡故障が発生したEVT1を特別高圧母線13から切り離す。その後、EVT1無しで、単一常用線L0に接続される受電設備の運用が可能であれば、受電遮断器5を導通状態に戻して、速やかに復電することができる。
(第2の構成例)
図16は実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を有する故障検出機能内蔵の電力系統の第2の構成例を示す説明図である。
同図に示すように、VCT8は受電遮断器5A及び受電断路器4Aを介して常用線L1に接続されると共に、受電遮断器5B及び受電断路器4Bを介して予備線L2に接続される。
一方、VCT8は受電遮断器5Bに接続され、特別高圧母線13は断路器15を介して第1バンク変圧器B1に接続されるとともに、断路器16を介して第2バンク変圧器B2に接続される。通常、断路器15及び断路器16のうち一方が導通状態、他方がS遮断状態に設定される。
特別高圧母線13のノードP11はEVT一次断路器3A及びEVT一次遮断器2Aを介してEVT1Aに接続され、EVT1AのR相、S相及びT相のEVT1Aeそれぞれの二次巻線及び三次巻線が計器・継電器19Aに接続され、計器・継電器19が層間短絡故障検出装置20Aに接続される。
また、特別高圧母線13のノードP12はEVT一次断路器3B及びEVT一次遮断器2Bを介してEVT1Bに接続され、EVT1BのR相、S相及びT相のEVT1Beそれぞれの二次巻線及び三次巻線が計器・継電器19Bに接続され、計器・継電器19が層間短絡故障検出装置20Bに接続される。
計器・継電器19A及び19Bは、第1の構成例の計器・継電器19と同様、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法に必要な二次巻線32に関連する情報及び三次巻線33に関連する情報が検出可能である。
したがって、層間短絡故障検出装置20Aは計器・継電器19Aを介して必要な検出情報を取得して、層間短絡故障検出装置20と同様、EVT1Aに対して、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を実行することができる。同様に、層間短絡故障検出装置20Bは計器・継電器19Bを介して必要な検出情報を取得して、EVT1Bに対して、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を実行することができる。
また、層間短絡故障検出装置20Aは故障検出方法の実行時に図示しない制御信号によって、少なくともEVT一次遮断器2A及び受電断路器4A、EVT一次遮断器2B、EVT一次断路器3B、受電断路器4B及び受電遮断器5Bの導通・遮断制御を行うことができる。
また、層間短絡故障検出装置20Bは故障検出方法の実行時に図示しない制御信号によって、少なくともEVT一次遮断器2B及び受電断路器4Bの導通・遮断制御を行うことができる。
通常時は、受電断路器4A及び受電遮断器5Aを共に導通状態、受電断路器4B及び受電遮断器5Bを遮断状態にするとともに、EVT一次断路器3B及びEVT一次遮断器2Bを遮断状態することにより、受電設備は常用線L1を使用する。
通常時において、層間短絡故障検出装置20Aは、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法の実行により、EVT1Aにおける層間短絡故障の発生を認識すると、EVT一次遮断器2Aを制御して遮断状態とする連動トリップ処理を行い常用線L10への影響を回避するとともに、受電断路器4B及び受電遮断器5B並びにEVT一次遮断器2B及びEVT一次断路器3B2を導通状態にし、予備線L2を利用する臨時状態に切り替える。したがって、受電設備は常用線L1に代えて予備線L2を使用することができる。
したがって、EVT1Aに層間短絡故障が発生しても、層間短絡故障検出装置20Aの働きにより 常用線L1を予備線L2に切り替えるとともに、EVT1AをEVT1Bに切り替えることにより、常用線L1及び予備線L2を利用する受電設備が停電状態になるのを回避することができる。
なお、層間短絡故障検出装置20Aは、上記連動トリップ処理と並行して、EVT一次断路器3Aを遮断状態とすることにより、EVT1Aを特別高圧母線13から切り離す。
臨時状態時において、層間短絡故障検出装置20Bは、実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法の実行により、EVT1Bにおける層間短絡故障の発生を認識すると、EVT一次遮断器2Bを制御して遮断状態とする連動トリップ処理を行い常用線L1への影響を回避する。
また、層間短絡故障検出装置20Bは、上記連動トリップ処理後に、EVT一次断路器3Bを遮断状態とすることにより、EVT1Bを特別高圧母線13から切り離す。
EVT1(1A,1B)の層間短絡故障を起点とする、特別高圧母線13に接続される特別高圧受電設備(単一常用線L0,常用線L1及び予備線L2)の事故は、受電設備に接続される機器自体の損傷や、復旧までの停電による損害等、大きな影響を与えることが想定される。
しかしながら、第1及び第2の構成例のように、故障検出機能を有する層間短絡故障検出装置20(20A,20B)を設けることにより、速やかに層間短絡故障を検出し、早期に故障状態と判定されたEVT1(1A,1B)を受電設備から切り離すことができる結果、EVT1の層間短絡故障による悪影響を最小限に抑えることができる。
すなわち、従来のEVT1の故障検出方法では、1線地絡事故を検出するのがせいぜいであったため、1線地絡事故の発生時にはEVT1の損壊(モールド部の破裂等)となり、受電設備に停電が避けられないが、前兆現象である層間短絡故障の段階でEVT1の交渉を検知し、電路からEVT1を切り離すことができれば、受電設備への影響を最小化できる。
なお、図15及び図16で示した第1及び第2の構成例それぞれにおいて、実施の形態1の故障検出方法の1線地絡事故判定処理TR2によって1線地絡事故を認識した場合も、層間短絡故障が発生した場合と同様な処理を採ることが考えられる。但し、1線地絡電流をEVT一次断路器で遮断する能力はない。
<その他>
なお、層間短絡故障検出装置20(20A,20B)に実施の形態1あるいは実施の形態2の故障検出方法を実現する層間短絡故障検出機能を持たせる方法として、例えば、EVT二次、三次電圧を標本量とする専用のディジタル継電器(図15及び図16の計器・継電器19(19A,19B)に相当)を公知の技術の組み合せで製作する第1の方法が考えられる。さらに、EVT二次、三次電圧をトランスジューサ等によって信号化したものを工業用パソコン等に入力し、ソフトウェアに基づくCPUを用いたプログラム処理によって判定する第2の方法が考えられる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。