JP6527211B2 - 偏光板、及び偏光板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、直交する偏光成分(いわゆるP偏光波、S偏光波)の一方を吸収し、他方を透過させる偏光板、及び偏光板の製造方法に関する。
液晶表示装置は、その画像形成原理から液晶パネル表面に偏光板を配置することが必要不可欠である。偏光板の機能は、直交する偏光成分(いわゆるP偏光波、S偏光波)の一方を吸収し、他方を透過させることである。
従来、このような偏光板として、フィルム内にヨウ素系や染料系の高分子有機物を含有させた二色性の偏光板が多く用いられている。これらの一般的な製法として、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性材料で染色を行った後、架橋剤を用いて架橋を行い、一軸延伸する方法が用いられる。このように二色性の偏光板は、延伸により作製されるため、一般に収縮し易い。また、ポリビニルアルコール系フィルムは、親水性ポリマーを使用していることから、特に加湿条件下においては非常に変形し易い。また、根本的にフィルムを用いるため、デバイスとしての機械的強度が弱く、透明保護フィルムを接着する必要がある場合がある。
近年、液晶表示装置は、その用途が拡大し、高機能化している。それに伴い、液晶表示装置を構成する個々のデバイスに対して、高い信頼性、耐久性が求められる。例えば、透過型液晶プロジェクターのような光量の大きな光源を使用する液晶表示装置の場合には、偏光板は強い輻射線を受ける。よって、これらに使用される偏光板には、優れた耐熱性が必要となる。しかしながら、上記のようなフィルムベースの偏光板は、有機物であることから、これらの特性を上げることにはおのずと限界がある。
米国では、コーニング社よりPolarcorという商品名で耐熱性の高い無機偏光板が販売されている。この偏光板は、銀微粒子をガラス内に拡散させた構造をしておりフィルム等の有機物を使用していない。原理は、島状微粒子のプラズマ共鳴を利用するものである。すなわち、貴金属や遷移金属の島状粒子に光が入射した時の表面プラズマ共鳴による光吸収を利用するものであり、吸収波長は、粒子形状、周囲の誘電率の影響を受ける。ここで島状微粒子の形状を楕円形にすると長軸方向と短軸方向の共鳴波長が異なり、これにより偏光特性が得られ、具体的には長波長側での長軸に平行な偏光成分を吸収し、短軸と平行な偏光成分を透過させるという偏光特性が得られる。しかしながら、Polarcorの場合、偏光特性が得られる波長域は赤外部に近い領域であり、液晶表示装置で求められるような可視光域をカバーしていない。これは島状微粒子に用いられている銀の物理的性質によるものである。
特許文献1には、上記の原理を応用し熱還元によりガラス中に微粒子を析出させることによるUV偏光板が示されており、金属微粒子として銀を用いることが提示されている。この場合、先のPolarcorとは逆に短軸方向での吸収を用いるものと考えられる。Figure1
に示されているように400nm付近でも偏光板として機能はしているが消光比が小さくかつ吸収できる帯域が非常に狭いので、仮にPolarcorと特許文献1の技術を組み合わせたとしても可視光全域をカバーできる偏光板にはならない。
また、非特許文献1には、金属島状微粒子のプラズマ共鳴を使った無機偏光板の理論解析が述べられている。この文献によればアルミニウム微粒子は銀微粒子より共鳴波長が200nm程度短く、このためアルミニウム微粒子を用いることで可視光域をカバーする偏
光板を製作できる可能性があることが記述されている。
また、特許文献2には、アルミニウム微粒子を使った偏光板の幾つかの作成方法が示されている。その中で、ケイ酸塩をベースとしたガラスでは、アルミニウムとガラスが反応するので基板としては望ましくなく、カルシウム・アルミノ硼酸塩ガラスが適していると記述されている(段落0018,0019)。しかし、ケイ酸塩を使用したガラスは、光学ガラスとして広く流通しており、信頼性の高い製品を安価に入手でき、これが適さないということは経済的に好ましくない。また、レジストパターンをエッチングすることで島状粒子を形成する方法が述べられている(段落0037,0038)。通常、プロジェクターで使用する偏光板は、数cm程度の大きさが必要でかつ高い消光比が要求される。従って、可視光用偏光板を目的とした場合、レジストパターンサイズは可視光波長より充分に短い、すなわち、数十ナノメートルの大きさが必要であり、また、高い消光比を得るためには、パターンを高密度に形成する必要がある。また、プロジェクター用として使用する場合には、大面積のパターンの形成が必要である。しかしながら、記述されているようなリソグラフィにより高密度微細パターン形成を応用する方法では、そのようなパターンを得るために電子ビーム描画などを用いる必要がある。電子ビーム描画は、個々のパターンを電子ビームより描く方法であり生産性が悪く実用的でない。
また、特許文献2には、アルミニウムを塩素プラズマにより除去すると記述されているが、通常そのようにエッチングした場合には、アルミニウムパターンの側壁に塩化物が付着する。市販のウエットエッチング液(例えば東京応化工業のSST−A2)により塩化物の除去が可能であるが、アルミニウム塩化物に反応する薬液はアルミニウムにもエッチング速度は遅いながらも反応はするので、述べられているような方法で所望のパターン形状を実現することは難しい。
さらに、特許文献2には、別な方法として、パターン化されたフォトレジスト上に斜め成膜によりアルミニウムを堆積し、フォトレジストを除去する方法が記述されている(段落0045,0047)。しかし、このような方法では、基板とアルミニウムの密着性を得るために、ある程度基板面にもアルミニウムを堆積する必要があるものと考えられる。しかし、これは堆積したアルミニウム膜の形状が段落0015に記述されている適当な形状である扁長の楕円体を含む扁長の球体とは異なることを意味する。また、段落0047には表面に垂直な異方性エッチングにより過沈積分を除去すると記述されている。偏光板として機能させるには、アルミニウムの形状異方性は極めて重要である。従ってレジスト部と基板面に堆積するアルミニウムの量をエッチングにより所望の形状が得られるように調整する必要があると考えられるが、段落0047に記述されているような0.05μmというサブミクロン以下のサイズでこれらを制御することは非常に困難と考えられ、生産性の高い製作方法として適しているか疑問である。また、偏光板の特性として透過軸方向については高い透過率が求められるが、通常、基板にガラスを用いた場合、ガラス界面から数%の反射は避けられず、高い透過率を得ることが難しい。
また、特許文献3には、斜め蒸着による偏光板について記述されている。この方法は、使用帯域の波長に対して透明及び不透明な物質を斜め蒸着により微小柱状構造を製作することで偏光特性を得るものであり、特許文献1と異なり、簡便な方法で微細パターンを得られるため生産性の高い方法と考えられる。しかしながら、使用帯域に対して不透明な物質の微小柱状構造のアスペクト比、個々の微小柱状構造の間隔、直線性は、良好な偏光特性を得るために重要な要素であり、特性の再現性の観点からも意図的に制御されるべきものであるが、この方法では蒸着粒子の初期堆積層の影となる部分に次に飛来する蒸着粒子が堆積しないことにより柱状構造が得られるという現象を利用しているため、上記の項目を意図的に制御することが難しい。これを改善する方法として、蒸着前にラビング処理により基板に研磨痕を設ける方法が記述されているが、一般的には蒸着膜の粒子径は最大で
も数十nm程度の大きさであり、このような粒子の異方性を制御するにはサブミクロン以下のピッチを研磨により意図的に製作する必要がある。しかし、一般の研磨シート等では、サブミクロン程度が限界であり、そのような微細な研磨痕を製作することは容易でない。また、前記のようにAl微粒子の共鳴波長は周りの屈折率に大きく依存し、この場合、透明及び不透明な物質の組み合わせが重要であるが、特許文献3には、可視光域で良好な偏光特性を得るための組み合わせについて記述がされていない。また、特許文献1と同様に、基板としてガラスを用いた場合、ガラス界面から数%の反射は避けられない。
また、非特許文献2には、Lamipolと称する赤外通信用の偏光板について記述されてい
る。これは、AlとSiOの積層構造をしており、この文献によれば非常に高い消光比を示す。また、非特許文献3には、Lamipolの光吸収を担うAlの代わりにGeを使うこ
とで、波長1μm以下で高い消光比を実現できることが述べられている。また、同資料中のFig3からTe(テルル)も高い消光比が得られることが期待できる。このようにLamipolは、高い消光比が得られる吸収型偏光板であるが、吸光物質と透過性物質の積層厚
が受光面の大きさとなるために数cm角の大きさが必要なプロジェクター用途の偏光板には向かない。
また、特許文献4には、ワイヤグリッド構造と吸収膜とを組み合わせた偏光板が記載されている。吸収膜に金属や半導体膜を用いる場合、材料の光学特性に強く影響されるため、材料とワイヤグリッドと吸収膜の間の誘電体膜厚を調整することで、特定域の反射率を軽減することが可能であるが、広波長域でこれを実現することは困難である。
また、吸収性の高いTaやGeなどを使うことで、帯域を広げることが可能であるが、透過軸方向の吸収が同時に大きくなり、偏光板で重要な特性である透過軸方向の透過率が低下してしまう。
上記問題への改善策として、吸収膜への微粒子の適用がある。しかし、これまで提案されている斜め成膜を用いて直接吸収膜を堆積する方法では、堆積させる吸収膜のシャドーイングによる自己組織化に頼っているため、材料自体の物性や基板の粗度などに強く影響を受け、吸収特性の制御が困難であった。
米国特許第6772608号明細書 特開2000−147253号公報 特開2002−372620号公報 特開2008−216957号公報
J.Opt.Soc.Am.A Vol.8,No.4 619−624 Applied Optics Vol.25 No.21986 311−314 J. Lightwave Tec. Vol.15No.6 1997 1042−1050
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、優れた光学特性を有する偏光板及び偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
本件発明者は、鋭意検討の結果、光吸収層として金属を含有する金属含有半導体層を用いることにより、反射率を低下させ、優れた光学特性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板と、Feを含有する金属含有半導体層を少なくとも有し、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された吸収層と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層とを備え、前記透光基板側から前記吸収層と前記反射層とがこの順に積層されてなる、又は前記透光基板側から前記反射層と前記吸収層とがこの順に積層されてなり、前記金属含有半導体層の半導体が、Siであり、前記金属含有半導体層のFe含有量が、5atm%以上10atm%以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る偏光板の製造方法は、使用帯域の光を透過する透光基板上に、Fe含有量が5atm%以上10atm%以下であり、半導体がSiである金属含有半導体層を少なくとも有する吸収層と、反射層とを、この順又は逆の順に積層し、エッチングにより、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されたグリッド構造を形成することを特徴とする。
本発明によれば、光吸収層として、光吸収に相当する消衰係数が高い金属を含有する金属含有半導体層を用いることにより、半導体層よりも光吸収性を向上させることが可能となるとともに、金属層よりも反射率を低下させることが可能となり、優れた光学特性を得ることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る第1の偏光板を示す概略断面図である。 図2は、本発明の実施の形態に係る第2の偏光板を示す概略断面図である。 図3は、従来の偏光板を示す概略断面図である。 図4(A)は、比較例の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図4(B)は、比較例の偏光板の反射率を示すグラフである。 図5は、実施例1の偏光板を示す概略断面図である。 図6(A)は、実施例1の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図6(B)は、実施例1の偏光板の反射率を示すグラフである。 図7は、第1のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図である。 図8は、第2のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図である。 図9は、第1のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを5atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図10は、第1のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを10atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図11は、第2のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを5atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図12は、第2のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを10atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図13(A)は、エッチング時間に対するエッチング深さを示すグラフであり、図13(B)は、エッチングレートの計算結果を示す表である。 図14は、実施例4のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図である。 図15は、誘電体層の膜厚を5nmとしたときの光学特性を示すグラフである。 図16は、誘電体層の膜厚を20nmとしたときの光学特性を示すグラフである。 図17は、誘電体層の膜厚を35nmとしたときの光学特性を示すグラフである。 図18は、誘電体層の膜厚を50nmとしたときの光学特性を示すグラフである。 図19は、実施例5の偏光板を示す概略断面図である。 図20は、吸収層としてSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図21は、吸収層としてTaを20atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図22は、吸収層としてTaを25atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図23は、吸収層としてTaを33atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。 図24は、吸収層としてそれぞれ、Si、Taを20atm%含有するSi、Taを25atm%含有するSi、Taを33atm%含有するSi、及びTaを用いたときの吸収軸反射率を示すグラフである。 図25は、Taの原子百分率に対する吸収軸反射率の測定波長範囲における最大値と最小値との差を示すグラフである。 図26は、吸収層としてそれぞれ、Si、Taを20atm%含有するSi、Taを25atm%含有するSi、Taを33atm%含有するSi、及びTaを用いたときの透過軸透過率を示すグラフである。 図27は、Taの原子百分率に対する透過軸透過率の測定波長範囲における平均値を示すグラフである。 図28は、実施例6の偏光板を示す概略断面図である。 図29は、実施例6の偏光板において誘電体層の膜厚をそれぞれ、2.5nm、5.0nm、7.5nm、及び10.0nmとしたときの吸収軸反射率を示すグラフである。 図30は、実施例7の偏光板を示す概略断面図である。 図31は、実施例7の偏光素子の断面のSEM画像である。 図32(A)は、実施例7の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図32(B)は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各波長帯域における透過軸透過率Tp、吸収軸透過率Ts、コントラストCR(Tp/Ts)、透過軸反射率Rp、及び吸収軸反射率Rsの平均値を示す表である。 図33は、実施例8の偏光板を示す概略断面図である。 図34は、実施例8の偏光素子の断面のSEM画像である。 図35(A)は、実施例8の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図35(B)は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各波長帯域における透過軸透過率Tp、吸収軸透過率Ts、コントラストCR(Tp/Ts)、透過軸反射率Rp、及び吸収軸反射率Rsの平均値を示す表である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.偏光板の構成
2.偏光板の製造方法
3.実施例
<1.偏光板の構成>
本実施の形態に係る偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板と、金属を含有する金
属含有半導体層を少なくとも有し、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された吸収層と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層とを備え、透光基板側から吸収層と反射層とがこの順に積層されてなる、又は透光基板側から反射層と吸収層とがこの順に積層されてなる。すなわち、本実施の形態に係る偏光板は、入射光に対して吸収層と反射層とがこの順に形成されてなるものである。また、吸収層と反射層との間に、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された誘電体層を備えても構わない。
図1は、本発明の実施の形態に係る第1の偏光板を示す概略断面図である。図1に示すように、第1の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、金属を含有する金属含有半導体層を少なくとも有し、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された吸収層12と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された誘電体層13と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層14とを備え、透光基板11側から吸収層12と誘電体層13と反射層14とがこの順に積層されている。すなわち、第1の偏光板1は、透光基板11側から吸収層12と誘電体層13と反射層14とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。
また、図2は、本発明の実施の形態に係る第2の偏光板を示す概略断面図である。図2に示すように、第2の偏光板は、使用帯域の光を透過する透光基板11と、金属を含有する金属含有半導体層を少なくとも有し、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された吸収層12と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された誘電体層13と、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層14とを備え、透光基板11側から反射層14と誘電体層13と吸収層12とがこの順に積層されている。すなわち、第2の偏光板1は、透光基板11側から反射層14と誘電体層13と吸収層12とがこの順に積層された凸部が、透光基板11上に一定間隔に並んだ一次元格子状のワイヤグリッド構造を有する。
このような第1又は第2の偏光板において、一次元格子状のワイヤグリッド構造の凸部の吸収層12又は誘電体層13の少なくとも一部の幅が、反射層14の幅よりも狭いことが好ましく、特に、吸収層12の幅が、反射層14の幅よりも狭いことがより好ましい。これにより、偏光板の透過率を増加させ、反射率を低下させることができる。
透光基板11は、使用帯域の光に対して透明で、屈折率が1.1〜2.2の材料、例えば、ガラス、サファイア、水晶などで構成されている。本実施の形態では、透光基板11の構成材料として、熱伝導性の高い水晶やサファイア基板を用いることが好ましい。これにより、強い光に対して高い耐光性を有することとなり、発熱量の多いプロジェクターの光学エンジン用の偏光板として有用となる。
また、透光基板11が水晶のような光学活性の結晶からなる場合、結晶の光学軸に対して平行方向又は垂直方向に格子状凸部を配置することにより、優れた光学特性を得ることができる。ここで、光学軸とは、その方向に進む光のO(常光線)とE(異常光線)の屈折率の差が最小となる方向軸である。
なお、偏光板の用途によっては、ガラス、特に、石英(屈折率1.46)やソーダ石灰ガラス(屈折率1.51)を用いてもよい。ガラス材料の成分組成は特に制限されず、例えば光学ガラスとして広く流通しているケイ酸塩ガラスなどの安価なガラス材料を用いることができ、製造コストの低減を図ることができる。
吸収層12は、金属を含有する金属含有半導体層を少なくとも有する1層以上から構成
される。金属含有半導体層は、光吸収に相当する消衰係数が高い金属を含有するため、半導体層よりも光吸収性を向上させることができるとともに、金属層よりも反射率を低下させることができる。
金属含有半導体層の半導体としては、Si、Ge、Te、ZnOなどのうちいずれか1種を用いることができる。半導体の光吸収作用に半導体のバンドギャップエネルギーが関与するため、バンドギャップエネルギーが使用帯域以下であることが必要である。例えば、可視光で使用する場合、波長400nm以上での吸収、すなわちバンドギャップとしては3.1eV以下の半導体を使用する必要がある。また、金属含有半導体層の金属としては、Ta、Al、Ag、Cu、Au、Mo、Cr、Ti、W、Ni、Fe、Sn、Nbなどのうち1種以上の純金属又は合金を用いることができる。
また、金属含有半導体層の金属含有量は、50atm%以下であることが好ましい。金属含有半導体層の金属含有量が多すぎると、透過率が減少してしまう。また、金属含有半導体層の半導体は、容易に成膜可能なSiであることが好ましい。金属含有半導体層のより好ましい組み合わせとしては、Feを含有するSi、Taを含有するSiなどを挙げることができる。
また、吸収層12は、金属含有半導体層の他に、金属層をさらに有し、金属層の幅を反射層14の幅よりも狭くすることが好ましい。これにより、偏光板の反射率を低下させることができる。吸収層12の幅は、エッチングにより制御可能であり、そのサイドエッチング量は、エッチングガス圧力、及び基板を冷却するHeガスの圧力により制御することができる。
また、吸収層12は、金属含有半導体層の他に、金属層又は半導体層をさらに有することが好ましい。これにより、反射を抑制し、透過率を向上させることができ、コントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を増大させることができる。
金属含有半導体層としてFeを含有するSiを用いた場合、Fe含有量は、50atm%以下であることが好ましい。Fe含有量が50atm%より多い場合、ガス種を工夫してもエッチングが困難となる。さらに、広く半導体エッチングプロセスで用いられているCFでエッチング可能とするため、10atm%以下であることが好ましい。
また、金属含有半導体層としてFeを含有するSiを用いた場合、反射率の低減効果を高めるために、吸収層12としてさらにTa層を設けることが好ましい。また、Ta層を設けた場合、吸収層12は、光入射方向に対し、Ta層、金属含有半導体層の順に形成されることが好ましい。また、金属含有半導体層の膜厚は、Ta層よりも厚いことが好ましい。これにより低い反射率を得ることができるとともに高い透過率を得ることができる。また、吸収効果や干渉効果を高めてコントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を増大させることができる。
また、金属含有半導体層としてTaを含有するSiを用いた場合、Ta含有量は、40atm%以下であることが好ましい。Ta含有量が40atm%以下の範囲では、反射率はガラス界面レベルと同等の4%以下であり、かつ透過率も高い値であるため、実用上、反射率の低減と高い透過率を保つことができる。
また、金属含有半導体層としてTaを含有するSiを用いた場合、反射率の低減効果を高めるために、吸収層12としてさらにTa層を設けることが好ましい。また、Ta層を設けた場合、吸収層12は、光入射方向に対し、Ta層、金属含有半導体層の順に形成されることが好ましい。また、金属含有半導体層の膜厚は、Ta層よりも厚いことが好まし
い。これにより低い反射率を得ることができるとともに高い透過率を得ることができる。また、吸収効果や干渉効果を高めてコントラスト(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)を増大させることができる。
吸収層12は、蒸着法やスパッタ法により、膜が高い密度で形成されていることが好ましい。膜の密度が高いことにより、熱伝導性が向上し、放熱性を向上させることができる。
誘電体層13は、透光基板11側から入射した光に対して、吸収層12を透過し、反射層14で反射した当該偏光の位相が半波長ずれる膜厚で形成されている。具体的な膜厚は、偏光の位相を調整し、干渉効果を高めることが可能な1〜500nmの範囲で適宜設定される。本実施の形態では、吸収層12が反射した光を吸収するため、膜厚が最適化されていなくてもコントラストの向上が実現でき、実用上は、所望の偏光特性と実際の作製工程の兼ね合いで決定して構わない。
誘電体層13を構成する材料は、SiO、Al、MgFなどの一般的な材料を用いることができる。また、誘電体層13の屈折率は、1.0より大きく2.5以下とすることが好ましい。なお、吸収層12の光学特性は、周囲の屈折率によっても影響を受けるため、誘電層13の材料により偏光板特性を制御してもよい。
反射層14は、誘電体層13上に吸収軸であるY方向に帯状に延びた金属薄膜が配列されてなるものである。すなわち、反射層14は、ワイヤグリッド型偏光子としての機能を有し、透光基板11側から入射した光のうち、ワイヤグリッドの長手方向に平行な方向(Y軸方向)に電界成分をもつ偏光波(TE波(S波))を減衰させ、ワイヤグリッドの長手方向と直交する方向(X軸方向)に電界成分をもつ偏光波(TM波(P波))を透過させる。
反射層14の構成材料には、使用帯域の光に対して反射性を有する材料であれば特に制限されず、例えばAl、Ag、Cu、Mo、Cr、Ti、Ni、W、Fe、Si、Ge、Teなどの金属単体もしくはこれらを含む合金あるいは半導体材料を用いることができる。なお、金属材料以外にも、例えば着色等により表面の反射率が高く形成された金属以外の無機膜や樹脂膜で構成されていてもよい。
なお、反射層14のピッチ、ライン幅/ピッチ、薄膜高さ(厚さ、格子深さ)、薄膜長さ(格子長さ)は、それぞれ以下の範囲とするのが好ましい。
0.05μm<ピッチ<0.8μm
0.1<(ライン幅/ピッチ)<0.9
0.01μm<薄膜高さ<1μm
0.05μm<薄膜長さ
また、光学特性の変化が実用上影響を与えない範囲で、透光基板11及び格子状凸部の表面を被覆する保護膜を備えることが好ましい。例えばSiOなどを堆積させることにより、耐湿性などの信頼性を改善することができる。保護膜の形成方法としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いることが好ましい。プラズマCVDを用
いることにより、格子状凸部の隙間にも保護膜を堆積させることができる。
このような構成の偏光板によれば、透過、反射、干渉、偏光波の選択的光吸収の4つの作用を利用することで、反射層の格子に平行な電界成分をもつ偏光波(TE波(S波))を減衰させ、格子に垂直な電界成分をもつ偏光波(TM波(P波))を透過させることができる。すなわち、TE波は、吸収層12の偏光波の選択的光吸収作用によって減衰され
、吸収層12及び誘電体層13を透過したTE波は、ワイヤグリッドとして機能する格子状の反射層14によって反射される。ここで、誘電体層13の厚さ、屈折率を適宜調整することによって、反射層14で反射したTE波について、吸収層12を透過する際に一部を反射し、反射層14に戻すことができ、また、吸収層12を通過した光を干渉により減衰させることができる。以上のようにしてTE波の選択的減衰を行うことにより、所望の偏光特性を得ることができる。
また、本実施の形態に係る偏光板は、光吸収層として、光吸収に相当する消衰係数が高い金属を含有する金属含有半導体層を用いることにより、半導体層よりも光吸収性を向上させることが可能となるとともに、金属層よりも反射率を低下させることが可能となり、優れた光学特性を得ることができる。よって、従来よりも偏光板の設計範囲を広げることができ、可視光域で所望の消光比を持った偏光板を提供することが可能となる。
また、本実施の形態に係る偏光板は、有機物よりも耐久性の高い無機物で構成されているため、液晶プロジェクターに使われるような強い光に対して高い耐光特性を示し、高い信頼性を得ることができる。また、広波長域で反射率を低減できるため、カメラ用偏光フィルターや、液晶TV用偏光板など、汎用偏光板への適用が可能となる。
<2.偏光板の製造方法>
次に、偏光板の製造方法について説明する。本実施の形態に係る偏光板の製造方法は、使用帯域の光を透過する透光基板上に、金属を含有する金属含有半導体層を少なくとも有する吸収層と、反射層とを、この順又は逆の順に積層し、エッチングにより、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されたグリッド構造を形成するものである。
ここでは、図1に示す第1の偏光板の製造方法ついて説明する。第1の偏光板の製造方法では、先ず、透光基板11上に、吸収層12、誘電体層13、反射層14をこの順に成膜する。
吸収層12は、蒸着法やスパッタ法により成膜する。具体的には、成膜時に透光基板11をターゲットに対して対向させて配置し、アルゴンガス粒子をターゲットに衝突させ、その衝撃ではじき飛ばされたターゲット成分を基板上に付着させ、吸収層12を得る。金属含有半導体層は、例えば、Fe含有シリコンターゲット、Ta含有シリコンターゲットなどの金属含有半導体ターゲットを用いることにより成膜することができる。
また、誘電体層13及び反射層14は、スパッタ法、気相成長法、蒸着法などの一般的な真空成膜法あるいはゾルゲル法(例えばスピンコート法によりゾルをコートし熱硬化によりゲル化させる方法)により成膜することができる。
このようにして成膜された反射層14上に、ナノインプリント、フォトリソグラフィなどにより格子状のマスクパターンを形成、その後、ドライエッチングにより格子状凸部を形成する。ドライエッチング用のガスとしては、反射防止膜(BARC)にはAr/O、AlSiにはCl/BCl、SiO、Si、Taには、CF/Arを挙げることができる。また、エッチング条件(ガス流量、ガス圧、パワー、基板の冷却温度)を最適化することによって、垂直性の高い格子形状を実現することができる。また、エッチング条件により、吸収層12の幅(X軸方向)を調整することができる。
また、格子状凸部を形成するグリッド間のエッチングの際、エッチングによる再デポジションを抑制し、かつ確実に基板界面の金属を除去するため、SiO、Taなどの透明でかつCFによるエッチングが容易な材料を偏光性能に影響を与えない範囲で基
板上に成膜してもよい。また、上記材料をエッチングで部分的また全て取り去ってもよい。
なお、反射層14にAlやAlSiを用いる場合には、吸収層12及び誘電体層13には、フッ素でエッチング可能な材料を選択することが望ましい。そうすることで、高いエッチング選択比が得られ、吸収層12及び誘電体層13の膜厚設計値の幅を広くすることができ、プロセス構築上有利となる。
また、光学特性の変化が応用上影響を与えない範囲で、最上部に耐湿性などの信頼性改善の目的でSiOなどの保護膜を堆積することも可能である。
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。ここでは、吸収層として、金属を含有する金属含有半導体層を用いた偏光板を作製し、光学特性について評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[比較例]
図3は、従来の偏光板を示す概略断面図である。透光基板上にTaを20nm、SiOxを50nm、及びAlを60nm、順次、スパッタリング法により成膜し、ドライエッチングを行い、ピッチが140nmのグリッド構造を形成した。
図4(A)は、比較例の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図4(B)は、比較例の偏光板の反射率を示すグラフである。図4(A)及び図4(B)に示すように、Taは、光吸収膜として有効に作用するものの、反射率の絶対値は、10%弱あり、通常の液晶TVや液晶モニターで使われる有機系偏光板の反射率に比べてはるかに高い。このように従来の偏光板では、可視域の広い波長域で低い反射率を得ることは困難である。
[実施例1]
図5は、実施例1の偏光板を示す概略断面図である。透光基板上にTaを10nm、(Fe5%)Siを15nm、SiOxを30nm、及びAlを60nm、順次、スパッタリング法により成膜し、ドライエッチングを行い、ピッチが140nmのグリッド構造を形成した。(Fe5%)Siは、Feを5atm%含有するシリコンターゲットを用いて成膜した。
図6(A)は、実施例1の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図6(B)は、実施例1の偏光板の反射率を示すグラフである。図6(B)と図4(B)とを比べると分かるように、実施例1の偏光板は、反射率を著しく低下させることができた。特に視感度が高い緑域での反射率を2%以下とすることができた。また、実施例1の偏光板は、比較例と比べて、可視波長の広い範囲で反射率を低下させることができた。このように吸収層として、金属を含有する金属含有半導体層を用いることにより、反射率を大幅に低下させることが可能であることが分かった。
[実施例2]
次に、金属含有半導体層の反射率低減の効果をRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法によりシミュレーションで検証した。
図7は、第1のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図であり、図8は、第2のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図である。第1のシミュレーションに用いる偏光板は、図2に示す第2の偏光板と同様、基板側から反射層、誘電体層、及び
吸収層が形成された構造であり、吸収層にFeを含有するSi、誘電体層にSiO、及び反射層にAlを用いた。また、第2のシミュレーションに用いる偏光板は、図1に示す第1の偏光板と同様、基板側から吸収層、誘電体層、及び反射層が形成された構造であり、吸収層にFeを含有するSi、誘電体層にSiO、及び反射層にAlを用いた。
図9は、第1のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを5atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。このシミュレーションに用いた偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からAlを100nm、SiOを20nm、及びFeを5%含有するSiを25nm積層したものとした。
図10は、第1のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを10atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。このシミュレーションに用いた偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からAlを100nm、SiOを50nm、及びFeを10%含有するSiを15nm積層したものとした。
図11は、第2のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを5atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。このシミュレーションに用いた偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からFeを5atm%含有するSiを25nm、SiOを20nm、及びAlを100nm積層したものとした。
図12は、第2のシミュレーションにおいて、吸収層としてFeを10atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。このシミュレーションに用いた偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からFeを10atm%含有するSiを15nm、SiOを50nm、及びAlを100nm積層したものとした。
図9及び図11に示すように、Fe含有量が5atm%のSiを吸収層に用いた場合、広波長域での反射率の低減は十分ではないが、可視用偏光板として重要な波長500nmの緑域の反射率の低減は十分であり、液晶プロジェクター用のチャンネル偏光板に使用することができる。広波長域で反射率を低減させるためには、実施例1のようにTaを積層することが有効である。
また、図10及び図12に示すように、Fe含有量が10atm%のSiを吸収層に用いた場合、実施例1のようにTaを積層しなくても、広波長域で反射率を低減させることが可能である。このようにFe含有量により反射率の調整が可能であり、Fe含有量を増加させることにより広波長域での反射率の低減効果が高まることが分かった。
[実施例3]
次に、実際の作製プロセスにおけるFe含有量の影響について検証した。ここでは、エッチングガスにCFを用いた場合のFe含有Siのエッチングレートを測定した。CF系のエッチングガスは、MEMS、半導体などの微細エッチングに広く用いられているガスである。個片ガラス基板上にそれぞれ(Fe5%)Si、(Fe10%)Si、及び(Fe15%)Siを成膜し、これらを一括してエッチング処理を行った。
図13(A)は、エッチング時間に対するエッチング深さを示すグラフであり、図13(B)は、エッチングレートの計算結果を示す表である。図13(B)に示すように、(Fe5%)Siは0.973nm/sec、(Fe10%)Siは0.234nm/secのエッチングレートであり、(Fe15%)Siはエッチングされなかった。すなわち、Fe含有量が増加するとエッチングレートが減少し、エッチングが困難になることが分かった。
エッチングガスにアンモニアを用いるとFeがエッチングできるという報告もあるが、本構造は、Fe含有Si単層ではなく、複数の層が積層されているので、他の層への影響(エッチング時の腐食、エッチング異方性)を考慮すると、使用するには適さない。また、アルゴンガスによる物理的除去という方法もあるが、本構造は微細なピッチをもつため再付着が起きやすく、特性劣化の原因ともなる。
以上のような理由により、ガス種を工夫しても50atm%より多いFe含有量は難しいと考えられる。よって、Fe含有量は、50atm%以下、さらに実用的には、広く半導体エッチングプロセスで用いられているCFでエッチング可能な10atm%以下であることが使用上好ましい。Fe含有量を10atm%以下とした場合、反射率の低減効果を高めるためにTaを積層することが好ましい。
[実施例4]
吸収層にFeを含有するSiを用いた構造においても、反射層、誘電体層、吸収層の間の干渉効果があるので、誘電体層の膜厚によっても反射率は変化する。そこで、実施例4では、誘電体層の膜厚による反射率について、RCWA法によりシミュレーションで検証した。
図14は、実施例4のシミュレーションに用いる偏光板を示す概略断面図である。実施例4の偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からAlを100nm、SiO、及びFeを5%含有するSiを25nm積層したものとした。
図15〜図18は、誘電体層の膜厚をそれぞれ、5nm、20nm、35nm、及び50nmとしたときの光学特性を示すグラフである。図15〜図18から分かるように、誘電体層の膜厚を制御することにより、反射率を低減させることが可能である。誘電体の膜厚が、5nm、20nm、35nm、及び50nmの場合、反射率が高いものの、実施例1のようにTaを積層することにより反射率を低下させることができる。
また、図15〜図18より、誘電体層の膜厚を増加させることにより、吸収効果や干渉効果が高まり、CR(消光比:透過軸透過率/吸収軸透過率)が増大することが分かった。
また、誘電体層の膜厚は、エッチング時間が短くなり作製プロセス上有利となるため、薄いことが好ましい。例えば、図10に示すシミュレーション結果の偏光板は、誘電体層の膜厚が50nmであり、さらに、吸収層としてFeを10atm%含有するSiを用いているため、長いエッチング時間が必要である。
[実施例5]
次に、吸収層としてTa含有Siを用いた偏光板のTa含有量について、実際にサンプルを作製して検証した。
図19は、実施例5の偏光板を示す概略断面図である。実施例5の偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側から吸収層を30nm、SiOを30nm、及びAlを40nm積層したものとした。
図20〜図23は、吸収層としてそれぞれ、Si、Taを20atm%含有するSi、Taを25atm%含有するSi、及びTaを33atm%含有するSiを用いたときの光学特性を示すグラフである。
また、図24は、吸収層としてそれぞれ、Si、Taを20atm%含有するSi、T
aを25atm%含有するSi、Taを33atm%含有するSi、及びTaを用いたときの吸収軸反射率を示すグラフである。また、図25は、Taの原子百分率に対する吸収軸反射率の測定波長範囲における最大値と最小値との差を示すグラフである。
また、図26は、吸収層としてそれぞれ、Si、Taを20atm%含有するSi、Taを25atm%含有するSi、Taを33atm%含有するSi、及びTaを用いたときの透過軸透過率を示すグラフである。また、図27は、Taの原子百分率に対する透過軸透過率の測定波長範囲における平均値を示すグラフである。
図25に示すように、吸収軸反射率の測定波長範囲における最大値と最小値との差は、Ta含有量の増加により小さくなり、吸収型偏光板としてはTa含有量が多い方が好適となる。一方、図27に示すように、透過軸透過率の測定波長範囲における平均値は、Ta含有量の増加により小さくなり、Ta含有量が少ない方が好適となる。
図25及び図27より、Ta含有量は40atm%以下であることが好ましいことが分かる。一般的なフロートガラスの反射率が8%であるのに対し、Ta含有量が40atm%以下の範囲では、反射率はガラスと同等以下であり、かつ透過率も高い値であるため、実用上、反射率の低減と高い透過率を保つことができる。
なお、実施例4では、図1に示す第1の偏光板の構造を用いたが、図2に示す第2の偏光板の構造を用いても同様の効果を得ることができる。
[実施例6]
実施例3において、誘電体層の膜厚による反射率について説明したが、実施例6では、誘電体層の膜厚による反射率の最小値の波長について、実際にサンプルを作製して検証した。
図28は、実施例6の偏光板を示す概略断面図である。実施例5の偏光板は、ピッチが140nmのグリッド構造を有し、基板側からAlを220nm、SiO、及びFeを5atm%含有するSiを35nm積層したものとした。
図29は、実施例6の偏光板において誘電体層の膜厚をそれぞれ、2.5nm、5.0nm、7.5nm、及び10.0nmとしたときの吸収軸反射率を示すグラフである。図29に示すように、誘電体層の膜厚により、吸収軸反射率の最小値の波長を制御することができることが分かった。また、誘電体層の膜厚が2.5nmと非常に薄くても反射率が低減されていることから、低反射率が望まれる波長次第では、誘電層がなくてもよいことが分かった。
図30は、実施例7の偏光板を示す概略断面図であり、図31は、実施例7の偏光素子の断面のSEM画像である。実施例7の偏光板は、次のように作製した。先ず、厚さ0.7mmの透光基板(品名:Eagle2000、コーニング社製)上に下地膜としてSiOを15nm、吸収層AとしてTaを15nm、吸収層Bとして(Fe5%)Siを10nm、誘電体層としてSiOxを40nm、及び反射層としてAlを170nm、順次、スパッタリングにより成膜した。(Fe5%)Siは、Feを5atm%含有するシリコンターゲットを用いて成膜した。
また、反射層上にBARC(Bottom Anti-Reflective Coat)を成膜し、レジストによ
り格子状のマスクパターンを形成した。次に、Ar/Oガスによるスカム処理によりBARCを除去し、Cl/BClによりAlをエッチングした。その後、HOプラズマにより腐食層(塩化化合物)を除去し、Oアッシングにより、レジスト、BARCを
除去した。そして、CF/Arガスにより吸収層をエッチングして格子状凸部を形成し、ピッチが140nmのグリッド構造を有する偏光板を作製した。吸収層のエッチング条件は、CFガス流量:20sccm、Arガス流量:4sccm、CF/Arガス圧力:0.5Pa、冷却用Heガス圧力:400Pa、エッチング時間:80secとした。この実施例7の偏光板のTa層の幅は、Al層の幅Wとほぼ同じであった。
図32(A)は、実施例7の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図32(B)は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各波長帯域における透過軸透過率Tp、吸収軸透過率Ts、コントラストCR(Tp/Ts)、透過軸反射率Rp、及び吸収軸反射率Rsの平均値を示す表である。実施例7の偏光板は、実施例1と同様に、比較例と比べて、可視波長の広い範囲で反射率を低下させることができた。また、実施例7の偏光板は、高いコントラストCRを得ることができた。
図33は、実施例8の偏光板を示す概略断面図であり、図34は、実施例8の偏光素子の断面のSEM画像である。実施例8の偏光板は、吸収層のエッチング条件以外は、実施例7の偏光板と同様に作製した。吸収層のエッチング条件は、CFガス流量:20sccm、Arガス流量:4sccm、CF/Arガス圧力:2.0Pa、冷却用Heガス圧力:1000Pa、エッチング時間:80secとした。この実施例8の偏光板のTa層の幅は、Al層の幅Wよりも狭く形成された。
図35(A)は、実施例8の偏光板の光学特性を示すグラフであり、図35(B)は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各波長帯域における透過軸透過率Tp、吸収軸透過率Ts、コントラストCR(Tp/Ts)、透過軸反射率Rp、及び吸収軸反射率Rsの平均値を示す表である。実施例8の偏光板は、コントラストCRが実施例7とほぼ同じでありながら、反射率を実施例7よりも低下させることができた。これは、青の波長帯域(430nm−510nm)で特に顕著であった。
11 透光基板、 12 吸収層、 13 誘電体層、 14 反射層

Claims (9)

  1. 使用帯域の光を透過する透光基板と、
    Feを含有する金属含有半導体層を少なくとも有し、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された吸収層と、
    使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された反射層とを備え、
    前記透光基板側から前記吸収層と前記反射層とがこの順に積層されてなる、又は前記透光基板側から前記反射層と前記吸収層とがこの順に積層されてなり、
    前記金属含有半導体層の半導体が、Siであり、
    前記金属含有半導体層のFe含有量が、5atm%以上10atm%以下である偏光板。
  2. 前記吸収層と前記反射層との間に、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列された誘電体層を備える請求項1記載の偏光板。
  3. 前記吸収層又は前記誘電体層の少なくとも一部の幅が、前記反射層の幅よりも狭い請求項1又は2項に記載の偏光板。
  4. 前記吸収層が、金属層をさらに有し、該金属層の幅が、前記反射層の幅よりも狭い請求項3記載の偏光板。
  5. 前記吸収層が、光入射方向に対し、前記金属層、前記金属含有半導体層の順に形成されてなる請求項4記載の偏光板。
  6. 前記吸収層が、金属層又は半導体層をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記
    載の偏光板。
  7. 前記吸収層が、Ta層をさらに有し、
    前記吸収層が、光入射方向に対し、前記Ta層、前記金属含有半導体層の順に形成されてなる請求項1記載の偏光板。
  8. 前記Ta層の幅が、前記反射層の幅よりも小さい請求項7記載の偏光板。
  9. 使用帯域の光を透過する透光基板上に、Fe含有量が5atm%以上10atm%以下であり、半導体がSiである金属含有半導体層を少なくとも有する吸収層と、反射層とを、この順又は逆の順に積層し、
    エッチングにより、使用帯域の光の波長よりも小さいピッチで一次元格子状に配列されたグリッド構造を形成する偏光板の製造方法。
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