<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係る電力変換装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置を含む電源システムの概略構成を示す模式図である。図面および以下の説明において、同一または同様の構成要素を示す場合には同一の符号を付すものとする。
本発明の実施の形態1に示す電源システムは、電力変換装置100、入力電源1および負荷7を備える。電力変換装置100は、第1の電力変換回路2、第1の直流コンデンサ3、第2の電力変換回路4、第2の直流コンデンサ5、第3の電力変換回路6および制御部8を含む。第1の電力変換回路2の一端(入力端子)は、入力電源1に接続されている。第2の電力変換回路4の一端(入力端子)は、第1の電力変換回路2の他端(出力端子)に接続されている。第3の電力変換回路6の一端(入力端子)は、第2の電力変換回路4の他端(出力端子)に接続されている。第3の電力変換回路6の他端(出力端子)は、負荷7に接続されている。第1の電力変換回路2は、入力電源からの電圧を直流電圧へ変換する。第2の電力変換回路4は、第1の電力変換回路2からの直流電圧を絶縁トランスを介して変圧する。第3の電力変換回路6は、第2の電力変換回路4からの直流電圧を変換して負荷7に出力する。
第1の直流コンデンサ3は、第1の電力変換回路2と第2の電力変換回路4とを接続する一対の第1の直流母線31間に接続されており、第2の直流コンデンサ5は、第2の電力変換回路4と第3の電力変換回路6とを接続する一対の第2の直流母線51間に接続されている。
制御部8は、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の全てを制御可能であり、各電力変換回路が備える各スイッチング素子の制御を行う。この場合、制御部8は、後述の電流検出器および電圧検出器から得られる検出結果の一部または全部に基づいて、すべての電力変換回路が有する各スイッチング素子に対して駆動信号を送信し、スイッチング素子のオンオフを制御することにより所望の動作を実現する。
本電源システムは、例えば、電動車両の充電器を中心とした電源システムに適用されるもので、入力電源1は商用交流系統もしくは自家発電機などの交流電源、またはバッテリなどの直流電源である。また、負荷7は、抵抗負荷または電圧源負荷である。抵抗負荷は、自発的に電圧を発生しない負荷であり、例えば照明機器や温調機器である。電圧源負荷は、自発的に電圧を発生する負荷であり、例えば車両走行用の高圧バッテリもしくは車両電装品の鉛バッテリなどである。なお、入力電源1や負荷7がこれらの例に限定されるものでないということはいうまでもない。
図2および図3は、実施の形態1に係る電力変換装置100の具体的な回路構成例を示す図である。図2および図3の例では、入力電源1として交流電源が用いられる。また、図2の例では、負荷7として抵抗負荷が用いられ、図3の例では、負荷7として電圧源負荷が用いられる。電力変換装置100の構成は、図2の例と図3の例とで同じである。
実施の形態1に係る電力変換装置100は、第1の電力変換回路2として、入力電流を高力率に制御するAC/DCコンバータ20を含み、第2の電力変換回路4として、直流電圧を変圧する絶縁型DC/DCコンバータ40を含み、第3の電力変換回路6として、直流電圧を変圧する非絶縁型のDC/DCコンバータ60を含む。本例では、AC/DCコンバータ20が力率を改善するPFC(Power Factor Correction)に相当する。
図2および図3に示す第1の電力変換回路2(AC/DCコンバータ20)は、スイッチング素子21〜24および力率改善用の交流リアクトル215、216を備える。スイッチング素子21〜24はフルブリッジ型に接続されている。交流リアクトル215の一端は交流電源11と接続されており、他端はスイッチング素子21とスイッチング素子22との接続点に接続されている。また、交流リアクトル216の一端は交流電源11と接続されており、他端はスイッチング素子23とスイッチング素子24との接続点に接続されている。
なお、図2および図3に示す第1の電力変換回路2では、交流リアクトル215、216が交流電源11の両極側にそれぞれ接続されるが、片極側のみに接続されもよい。すなわち、交流リアクトル215,216のいずれか一方のみが用いられてもよい。
また、図2および図3に示す第1の電力変換回路2は、全ての半導体素子にスイッチング素子を用いた構成であるが、ダイオードなどの受動半導体素子を用いたセミブリッジレス型、またはトーテムポール型の構成であってもよいことは言うまでもない。
図2および図3に示す第2の電力変換回路4(絶縁型DC/DCコンバータ40)は、絶縁トランス49、1次側変換回路4Aおよび2次側変換回路4Bを含む。絶縁トランス49は、互いに磁気的に結合する2つの巻線を含む。絶縁トランス49の一方の巻線は1次側変換回路4Aの端子に接続され、他方の巻線は2次側変換回路4Bの端子に接続される。以下、1次側変換回路4Aの端子に接続される巻線を1次側巻線と称し、2次側変換回路4Bの端子に接続される巻線を2次側巻線と称する。
1次側変換回路4Aは、スイッチング素子41〜44を含む。スイッチング素子41〜44はフルブリッジ型に接続されている。また、1次側変換回路4Aの直流側の端子は、一対の第1の直流母線31を介して第1の電力変換回路2および第1の直流コンデンサ3と接続されており、交流側の端子は絶縁トランス49の1次側巻線と接続されている。この場合、直列接続されるスイッチング素子41とスイッチング素子42との接続点に絶縁トランス49の1次側巻線の一端が接続され、直列接続されるスイッチング素子43とスイッチング素子44との接続点に絶縁トランス49の1次側巻線の他端が接続される。
絶縁トランス49の2次側変換回路4Bは、スイッチング素子45〜48を含む。スイッチング素子45〜48はフルブリッジ型に接続されている。また、2次側変換回路4Bの直流側の端子は、一対の第2の直流母線51を介して第2の直流コンデンサ5および第3の電力変換回路6と接続されており、交流側の端子は絶縁トランス49の2次側巻線と接続されている。この場合、直列接続されるスイッチング素子45とスイッチング素子46との接続点に絶縁トランス49の2次側巻線の一端が接続され、直列接続されるスイッチング素子47とスイッチング素子48との接続点に絶縁トランス49の2次側巻線の他端が接続される。
なお、第2の電力変換回路4が、絶縁トランス49の1次側巻線もしくは2次側巻線に対して直列もしくは並列に接続されたリアクトル、コンデンサなどを含んでもよい。リアクトル、コンデンサなどを用いることにより、低損失なソフトスイッチング動作が可能となる。この場合、別個に用意されたリアクトルが絶縁トランス49に外付けされてもよく、絶縁トランス49の漏洩インダクタンスまたは励磁インダクタンスが、損失低減のためのリアクトルとして利用されてもよい。さらに、2次側変換回路4Bは、ダイオードを用いたダイオード整流回路で構成されてもよいし、コンデンサを用いた倍電圧整流回路で構成されてもよい。
図2および図3に示す第3の電力変換回路6(DC/DCコンバータ60)は、スイッチング素子61、62、平滑用直流リアクトル63および平滑用コンデンサ64を含む。第3の電力変換回路6は、降圧チョッパの回路構成を有する。図2の例では、第3の電力変換回路6の出力端子に抵抗負荷71が接続される。図3の例では、第3の電力変換回路6の出力端子に電圧源負荷72が接続される。
なお、図2および図3に示す第3の電力変換回路6は、降圧チョッパの回路構成を有するが、昇圧型や昇降圧型の回路構成を有してもよく、また、インターリーブの構成や並列接続構成を有してもよいことは言うまでもない。
第1の電力変換回路2のスイッチング素子21〜24、第2の電力変換回路4のスイッチング素子41〜48、および第3の電力変換回路6のスイッチング素子61,62としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、SiC(Silicon Carbide)−MOSFET、GaN(Gallium Nitride)−FET(Field Effect Transistor)、またはGaN−HEMT(High Electron Mobility Transistor)などを用いることができる。
電力変換装置100は、電流検出器D1,D2および電圧検出器D3〜D6をさらに備える。電流検出器D1は、交流電源11から第1の電力変換回路2に流れる交流入力電流iacを検出する。電流検出器D2は、第3の電力変換回路6から負荷7に流れる直流出力電流Ioutを検出する。電圧検出器D3は、交流電源11から第1の電力変換回路2に与えられる交流入力電圧vacを検出する。電圧検出器D4は、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkを検出する。電圧検出器D5は、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintを検出する。電圧検出器D6は、第3の電力変換回路6から負荷7に与えられる直流出力電圧Voutとして、第3の電力変換回路6の平滑用コンデンサ64の電圧を検出する。検出器D1〜D6は、検出結果を制御部8に与える。制御部8は、与えられた検出値の一部または全部に基づいてフィードバック演算を行い、各スイッチング素子のオンオフを制御する。
電力変換装置100の動作開始時には、制御部8は、初期動作として第1〜第3の電力変換回路2,4,6が段階的に動作を開始するように、第1〜第3の電力変換回路2,4,6を制御する。第1〜第3の電力変換回路2,4,6の全てが動作を開始した後、制御部8は、定常動作を行うように第1〜第3の電力変換回路2,4,6を制御する。ここで、動作の開始とは、該当の回路に含まれる少なくとも1つのスイッチング素子のスイッチング動作(オンオフ動作)が開始されることをいう。また、第1〜第3の電力変換回路2,4,6が段階的に動作を開始するとは、少なくとも2つの電力変換回路が異なる時刻に動作を開始することをいう。
まず、定常動作時における制御部8の役割について説明する。制御部8は、検出器D1〜D6の検出結果に基づいて種々の出力値を演算し、その出力値に基づいて第1〜第3の電力変換回路2,4,6を制御する。本例では、交流入力電流iacが予め定められた目標正弦波電流iac*に追従するように制御され、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが予め定められた目標直流電圧Vlink*に追従するように制御され、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが予め定められた目標直流電圧Vint*に追従するように制御される。また、負荷7として抵抗負荷71が適用される場合に、直流出力電圧Voutが予め定められた目標直流出力電圧Vout*に追従するように制御され、負荷7として電圧源負荷72が適用される場合に、直流出力電流Ioutが予め定められた目標直流出力電流Iout*に追従するように制御される。
具体的には、制御部8は、交流電圧vacの検出値と同期する正弦波状の電流指令(目標正弦波電流)iac*と、交流入力電流iacの検出値との電流差を算出する。制御部8は、算出した電流差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。
また、制御部8は、目標直流電圧Vlink*と第1の直流コンデンサ3の直流電圧Vlinkの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。
また、制御部8は、目標直流電圧Vint*と第2の直流コンデンサ5の直流電圧Vintの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。
また、負荷7として抵抗負荷71が適用される場合に、制御部8は、目標直流出力電圧Vout*と直流出力電圧Voutの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。一方、負荷7として電圧源負荷72が適用される場合に、制御部8は、目標直流出力電流Iout*と直流出力電流Ioutの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御もしくは比例積分制御により出力値を演算する。
制御部8は、これらの出力値に基づいて、交流入力電流iac、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧Vlink,Vintならびに直流出力電圧Vout(または直流出力電流Iout)が上記目標値に追従するように、第1〜第3の電力変換回路2,4,6を制御する。
次に、電力変換装置100の初期動作時における制御部8の役割について説明する。図4は、負荷7として抵抗負荷71が用いられた場合の電力変換装置100の初期動作についての説明するための図である。図4には、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlink、交流入力電圧vac、交流入力電流iac、第2の直流コンデンサ5の電圧Vint、および直流出力電圧Voutの各々の検出値が示される。横軸は時間を表し、縦軸は電流または電圧を表す。また、下段に示される“1st”は、第1の電力変換回路2の動作開始時刻を表し、“2nd”は、第2の電力変換回路4の動作開始時刻を表し、“3rd”は、第3の電力変換回路6の動作開始時刻を表す。
図4の例において、電力変換装置100が非動作状態である時刻を初期時刻t0と定義する。すなわち、時刻t0にて、第1の電力変換回路2、第2の電力変換回路4および第3の電力変換回路6のスイッチング動作はいずれも停止されている。また、時刻t0にて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkおよび第2の直流コンデンサ5の電圧Vintはそれぞれ0である。
制御部8は、検出器D1〜D6による検出結果に基づいて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlink、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintおよび直流出力電圧Voutが以下のように変化するように、第1〜第3の電力変換回路2,4,6を制御する。
時刻t1にて、交流入力電圧vacが第1の電力変換回路2の入力端子に印加される。このとき、第1の電力変換回路2の各スイッチング素子の内蔵ダイオードまたは外付けのダイオードを介して第1の直流コンデンサ3が受動的に充電される。それにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが初期充電電圧Vlink0に上昇する。なお、初期充電電圧Vlink0は、交流入力電圧vacの実効値Vac,rmsに対して式(1)を満たす。なお、式(1)における「√2Vac,rms」は、交流入力電圧vacの最大値に相当する。
時刻t2にて、第1の電力変換回路2のスイッチング動作が開始される。この場合、第1の電力変換回路2の実効デューティ比が徐々に上昇されることにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが徐々に上昇する。それにより、急激な電圧変化が防止される。この時点では、第2の電力変換回路4および第3の電力変換回路6のスイッチング動作は停止されている。
時刻t3にて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが、予め定められた第1の閾値電圧Vlink,thに達する。このとき、第1の電力変換回路2による交流入力電流iacの力率制御が開始されるとともに、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、第1の直流コンデンサ3から第2の電力変換回路4を介して第2の直流コンデンサ5に電流が流れ、第2の直流コンデンサ5の充電が開始される。
第1の閾値電圧Vlink,thは、式(2)の条件を満たす。
ここで、第1の電力変換回路2の動作中に、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが交流入力電圧vacより低くなると、第1の電力変換回路2が正常動作(昇圧動作)を継続することができなくなる。具体的には、スイッチング素子21〜24のオンオフに関係なく、交流電源11と第1の直流コンデンサ3との間の電流経路が固定される。そのため、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkは、交流入力電圧vacの最大値以上に維持される必要がある。
上記のように、第1の直流コンデンサ3の初期充電電圧Vlink0は交流入力電圧vacの最大値(√2Vac,rms)以上であり、第2の電力変換回路4の動作開始前には、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkは交流入力電圧vac以上に維持される。しかしながら、第2の電力変換回路4の動作が開始されると、第1の直流コンデンサ3から第2の直流コンデンサ5に電流が流れることによって第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが低下し、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが交流入力電圧vacの最大値よりも低くなる可能性がある。
そこで、本実施の形態では、第1の電力変換回路2によって第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thまで上昇されてから第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkと交流入力電圧vacとの間に一定のマージン(余裕)を確保した状態で、第2の電力変換回路4のスイッチング動作を開始させることができる。また、本実施の形態では、第2の電力変換回路4の実効デューティ比は0から徐々に増加され、第1の直流コンデンサ3から第2の直流コンデンサ5に流れる電流は0から徐々に増加する。それにより、第2の電力変換回路4の動作開始に伴う第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkの急峻な低下が抑制される。
なお、「デューティ比が徐々に上昇する」とは、図4の例のようにデューティ比が一定の変化率で直線的かつ連続的に上昇する場合に限らず、デューティ比が曲線的かつ連続的に上昇する場合、およびデューティ比が複数ステップを介して段階的に上昇する場合を含む。ただし、デューティ比が段階的に上昇される場合には、ステップ数が十分に多く設定され、1ステップでの変化幅が極力小さいことが好ましい。
これらにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが交流入力電圧vacの最大値より低くなることが防止され、第1の電力変換回路2が安定的に正常動作を継続することができる。
また、第1の閾値電圧Vlink,thが目標直流電圧Vlink*より小さい値に設定されているため、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが過電圧となることが防止されるとともに、第2の電力変換回路4の動作開始までの時間を短くすることができる。
さらに、時刻t3にて、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始されると同時に、第1の電力変換回路2による力率制御が開始される。これにより、交流入力電流iacの大きさ(振幅)を0から最大値まで徐々に増加させることができる。したがって、第1および第2の直流コンデンサ3,5を安定的に充電することができる。
その後、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが目標直流電圧Vlink*に達すると、目標直流電圧Vlink*に追従するように電圧Vlinkが制御される。なお、時刻t3にて第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達した時点から第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが目標直流電圧Vlink*に追従するように制御されてもよい。
時刻t4にて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが、予め定められた第2の閾値電圧Vint,thに達すると、第1の電力変換回路2および第2の電力変換回路4に加えて、第3の電力変換回路6のスイッチング動作が開始される。これにより、第2の直流コンデンサ5から第3の電力変換回路6を介して抵抗負荷71に電流が流れ、抵抗負荷71に電力が供給される。
ここで、第2の閾値電圧Vint,thは、式(3)の条件を満たす。
ここで、第3の電力変換回路6の動作中に、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが抵抗負荷71に出力される直流出力電圧Voutよりも低くなると、第3の電力変換回路6が正常動作(降圧動作)を継続することができなくなる。具体的には、第3の電力変換回路6のディーティー比が0に設定されることにより、スイッチング素子61が常時オフされ、抵抗負荷71への電力供給が不可能な状態となる。したがって、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintは、直流出力電圧Voutよりも高く維持される必要がある。
本実施の形態では、第2の電力変換回路4によって第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thまで上昇されてから第3の電力変換回路6の動作が開始される。これにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintと直流出力電圧Voutとの間に一定のマージンを確保した状態で、第3の電力変換回路6のスイッチング動作を開始させることができる。また、第3の電力変換回路6の実効デューティ比は0から徐々に増加され、第2の直流コンデンサ5から抵抗負荷71に流れる電流は0から徐々に増加する。それにより、第3の電力変換回路6の動作開始に伴う第2の直流コンデンサ5の電圧Vintの急峻な低下が抑制される。その結果、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが直流出力電圧Voutより低くなることが防止され、第3の電力変換回路6が安定的に正常動作を継続することができる。
その後、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが目標直流電圧Vint*に達すると、目標直流電圧Vint*に追従するように電圧Vintが制御される。なお、時刻t4にて第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達した時点から第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが目標直流電圧Vint*に追従するように制御されてもよい。
なお、図4には、抵抗負荷71に供給される電力の変化として直流出力電圧Voutの変化のみが示されるが、直流出力電流Ioutも直流出力電圧Voutの上昇に伴って増加する。上記のように、負荷7として抵抗負荷71が用いられる場合には、直流出力電流Ioutの検出値ではなく直流出力電圧Voutの検出値が用いてスイッチング素子のオンオフ制御が行われるので、図4では直流出力電流Ioutの図示を省略している。
時刻t5で電圧Voutが目標直流出力電圧Vout*に達すると、第1の電力変換回路2、第2の電力変換回路4および第3の電力変換回路6の全てが上記の定常動作に移行する。
このように、負荷7として抵抗負荷71が用いられた図4の例では、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が順に開始されることにより、第1および第2の直流コンデンサ3,5が順に充電される。これにより、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が同時に開始される場合と異なり、第1〜第3の電力変換回路2,4,6内における過電流ならびに第1および第2の直流コンデンサ3,5の過電圧を発生させることなく、負荷7への電力供給を安定的に開始することができる。
仮に、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が同時に開始されると、第1および第2の直流コンデンサ3,5、ならびに負荷7に同時に電圧が印加される。この場合、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を個別に制御することは困難であり、第1および第2の直流コンデンサ3,5の少なくも1つに対して瞬間的に大きな電流が流れ込む。それにより、第1〜第3の電力変換回路2,4,6内で過電流が発生するとともに第1および第2の直流コンデンサ3,5が過電圧となる可能性がある。
それに対して、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が順に開始される場合には、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を個別に制御することができる。具体的には、第2の電力変換回路4の動作が停止された状態で第1の電力変換回路2のデューティ比を調整することにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkを制御することができる。また、第3の電力変換回路6の動作が停止された状態で第2の電力変換回路4のデューティ比を調整することにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintを制御することができる。したがって、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を安定的に上昇させることができる。
その後、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達しかつ第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達した状態で、第3の電力変換回路6の動作が開始されることにより、第1〜第3の電力変換回路2,4,6内における過電流ならびに第1および第2の直流コンデンサ3,5の過電圧を発生させることなく、電力変換装置100から負荷7への電力供給を安定的に開始させることができる。
なお、図4の例では、電圧Vlinkが0から第1の閾値電圧Vlink,thに至るまでの期間と、電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thから目標直流電圧Vlink*に至るまでの期間とで、電圧Vlinkの変化率(傾き)が異なるが、電圧Vlinkが0から目標直流電圧Vlink*に至るまで、電圧Vlinkの変化率が一定であってもよい。同様に、電圧Vintが0から第2の閾値電圧Vint,thに至るまでの期間と、電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thから目標直流電圧Vint*に至るまでの期間とで、電圧Vintの変化率が異なるが、電圧Vintが0から目標直流電圧Vint*に至るまで、電圧Vintの変化率が一定であってもよい。また、電圧Vlinkおよび電圧Vintがそれぞれ連続的に変化するのではなく、複数ステップを介して段階的に変化してもよい。ただし、過電流および過電圧の発生を効果的に防止するためには、ステップ数が十分に多く設定され、1ステップでの電圧変化幅が極力小さいことが好ましい。
図5は、負荷7に電圧源負荷72が適用された場合における電力変換装置100の初期動作の第1の例について説明するための図である。図5には、図4の例と同様に、電圧Vlink,vac,Vint,Voutおよび電流iacの検出値が示されるとともに、直流出力電流Ioutの検出値が示される。上記のように、負荷7として電圧源負荷72が用いられる場合には、直流出力電流Ioutの検出値を用いてスイッチング素子のオンオフ制御が行われる。
図5の例では、電圧源負荷72が一定の直流電圧を発生させる。そのため、電力変換装置100が非動作状態である時刻t0において、電圧源負荷72による直流電圧が第3の電力変換回路6の出力端子に印加されている。この電圧は電圧Voutとして検出される。この場合、第3の電力変換回路6のスイッチング素子の内蔵ダイオードもしくは外付けのダイオードを介して第2の直流コンデンサ5が受動的に充電される。それにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが初期充電電圧Vint0に維持されている。
図4の例と同様に、時刻t1にて、交流入力電圧vacが第1の電力変換回路2の入力端子に印加される。それにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが初期充電電圧Vlink0に上昇する。時刻t2にて、第1の電力変換回路2のスイッチング動作が開始される。この場合、第1の電力変換回路2の実効デューティ比が徐々に上昇されることにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが徐々に上昇する。
時刻t3にて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達すると、第1の電力変換回路2による交流電流iacの力率制御が開始されるとともに、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、第1の直流コンデンサ3から第2の電力変換回路4を介して第2の直流コンデンサ5に電流が流れ、第2の直流コンデンサ5の充電が開始される。この場合、第2の電力変換回路4の実効デューティ比は、0から徐々に増加される。それにより、電圧Vintが初期充電電圧Vint0から徐々に上昇する。
なお、本例では、電圧源負荷72によって第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが初期充電電圧Vint0に充電されているので、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが0である場合と比べて、第1の直流コンデンサ3から第2の直流コンデンサ5に流れる電流が抑制される。そこで、第1の電力変換回路2が正常動作を継続することができる範囲内(第1の直流コンデンサ3の電圧linkが交流入力電圧vacよりも低くならない範囲内)で、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達する前に第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始されてもよい。
時刻t4aにて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達すると、第1の電力変換回路2および第2の電力変換回路4に加えて、第3の電力変換回路6のスイッチング動作が開始され、第3の電力変換回路6から抵抗負荷71に電力が供給される。この場合、第3の電力変換回路6の実効デューティ比が0から徐々に増加されることにより、電圧源負荷72に与えられる直流電流Ioutが0から徐々に上昇する。すなわち、電圧源負荷72に与えられる電力が0から徐々に上昇する。
直流出力電流Ioutが目標直流出力電流Iout*まで達した時刻t5aにて、第1の電力変換回路2、第2の電力変換回路4、および第3の電力変換回路6の全てが定常動作に移行する。
このように、負荷7として電圧源負荷72が用いられた図5の例においても、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が順に開始されることにより、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧Vlink,Vintを個別に精度良く制御することができる。その結果、第1〜第3の電力変換回路2,4,6内における過電流ならびに第1および第2の直流コンデンサ3,5の過電圧を発生させることなく、電力変換装置100から負荷7への電力供給を安定的に開始することができる。
また、図4の例と同様に、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達したときに第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始され、かつ第2の電力変換回路4の実効デューティ比が0から徐々に上昇される。それにより、第1の直流コンデンサ3の電圧linkが交流入力電圧vacの最大値より低くなることが防止され、第1の電力変換回路2が安定的に正常動作を継続することができる。
さらに、図4の例と同様に、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達したときに第3の電力変換回路6のスイッチング動作が開始され、かつ第3の電力変換回路6の実効デューティ比が0から徐々に上昇される。それにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが直流出力電圧Voutより低くなることが防止され、第3の電力変換回路6が安定的に正常動作を継続することができる。
なお、負荷7として電圧源負荷72が用いられる場合には、第2の電力変換回路4の動作開始のタイミングおよび第3の電力変換回路6の動作開始のタイミングを比較的柔軟に設定することができる。以下、その具体例を説明する。
図6は、負荷7に電圧源負荷72が適用された場合における電力変換装置100の初期動作の第2の例について説明するための図である。図6の例について、図5の例と異なる点を中心に説明する。
図6の例では、時刻t3にて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達しても、第2の電力変換回路4の動作は停止されたままである。その後の時刻t4bにて、第3の電力変換回路6のスイッチング動作が開始され、電圧源負荷72から第3の電力変換回路6を介して第2の直流コンデンサ5に電流が供給される。それにより、第2の直流コンデンサ5の充電が開始される。この場合、第2の電力変換回路4の実効デューティ比が0から徐々に増加されることにより、電圧Vintが初期充電電圧Vint0から徐々に上昇する。
時刻t3,t4bでは、第2の電力変換回路4の動作が開始されていないので、第1の直流コンデンサ3と第2の直流コンデンサ5との間で電流は流れない。そのため、第1の電力変換回路2の動作は、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintに影響せず、第3の電力変換回路6の動作は、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkに影響しない。したがって、第1および第3の電力変換回路2,6のデューティ比を個別に調整することにより、第1および第2の直流コンデンサ3の電圧Vlink,Vintを個別に制御することができる。なお、第3の電力変換回路6の動作が開始される時刻は、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達する時刻と一致していてもよく、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達する前であってもよい。
時刻5bにて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達する。この時刻5bにて、第1の電力変換回路2による力率制御が開始されるとともに、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、電力変換装置100から電圧源負荷72に電流が流れ、電圧源負荷72に電力が供給される。この場合、第2の電力変換回路4の実効デューティ比が0から徐々に増加されることにより、電圧源負荷72に与えられる直流電流Ioutが0から徐々に上昇する。
直流出力電流Ioutが目標直流出力電流Iout*に達した時刻t6bにて、第1の電力変換回路2、第2の電力変換回路4、および第3の電力変換回路6のすべてが定常動作に移行する。
このように、負荷7として電圧源負荷72が用いられる場合には、電圧源負荷72からの電力により第2の直流コンデンサ5を充電することができる。また、第2の電力変換回路4の動作が開始されていないでは、第1の電力変換回路2の動作と第3の電力変換回路6の動作とが互いに影響しない。そのため、図6の例のように、第1の電力変換回路2の次に第3の電力変換回路6の動作を開始し、第3の電力変換回路6の次に第2の電力変換回路4の動作を開始することができる。
図7は、負荷7に電圧源負荷72が適用された場合における電力変換装置100の初期動作の第3の例について説明するための図である。図7の例について、図5の例と異なる点を中心に説明する。
図7の例では、時刻t0において、電圧源負荷72が第3の電力変換回路6の出力端子と電気的に接続されていない。そのため、時刻t0では、電圧源負荷72から第3の電力変換回路6の出力端子に電圧が印加されておらず、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintは0である。時刻t1にて、交流入力電圧vacが第1の電力変換回路2の入力端子に印加された後、時刻t2cにて、電圧源負荷72が第3の電力変換回路6の出力端子と電気的に接続される。これにより、電圧源負荷72の電圧が第3の電力変換回路6の出力端子に印加され、電圧Voutとして検出される。このとき、第3の電力変換回路6のスイッチング素子の内蔵ダイオードもしくは外付けのダイオードを介して、第2の直流コンデンサ5が受動的に充電され、時刻t3cにて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが初期充電電圧Vint0に達する。なお、時刻t1において、交流入力電圧vacが第1の電力変換回路2の入力端子に印加されると同時に、電圧源負荷72の電圧が第3の電力変換回路6の出力端子に印加されてもよい。
時刻t4cにて、第3の電力変換回路6のスイッチング動作が開始される。この場合、第3の電力変換回路6の実効デューティ比が徐々に上昇されることにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが徐々に上昇する。時刻t5cにて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達する。
時刻t6cにて、第1の電力変換回路2のスイッチング動作が開始される。この場合、第1の電力変換回路2の実効デューティ比が徐々に上昇されることにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが徐々に上昇する。時刻t7cにて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達すると、第1の電力変換回路2の力率制御が開始されるとともに、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、電力変換装置100から電圧源負荷72に電流が流れ、電圧源負荷72に電力が供給される。この場合、第2の電力変換回路4の実効デューティ比が0から徐々に増加されることにより、電圧源負荷72に与えられる直流電流Ioutが0から徐々に上昇する。
直流出力電流Ioutが目標直流出力電流Iout*まで達した時刻t8cにて、第1の電力変換回路2、第2の電力変換回路4、および第3の電力変換回路6のすべてが定常動作に移行する。
図6の例と同様に、負荷7として電圧源負荷72が用いられる場合には、電圧源負荷72からの電力により第2の直流コンデンサ5を充電することができる。また、第2の電力変換回路4の動作が開始されていない状態では、第1の電力変換回路2の動作と第3の電力変換回路6の動作とが互いに影響しない。そのため、図7の例のように、第1の電力変換回路2の次に第3の電力変換回路6の動作を開始し、第3の電力変換回路6の次に第2の電力変換回路4の動作を開始することができる。
なお、図6および図7の例では、第1の電力変換回路2と第3の電力変換回路6とが異なる時刻に動作を開始するが、第1の電力変換回路2と第3の電力変換回路6とが同時に動作を開始してもよい。
以上のように、実施の形態1に係る電力変換装置100においては、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が段階的に開始されることにより、第1〜第3の電力変換回路2,4,6の動作が同時に開始される場合と異なり、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を個別に制御することができる。それにより、第1および第2の直流コンデンサ3の電圧を安定的に上昇させることができる。その後、第1の直流コンデンサ3の電圧Vlinkが第1の閾値電圧Vlink,thに達しかつ第2の直流コンデンサ5の電圧Vintが第2の閾値電圧Vint,thに達した状態で、第3の電力変換回路6の動作が開始されることにより、第1〜第3の電力変換回路2,4,6内における過電流ならびに第1および第2の直流コンデンサ3,5の過電圧を発生させることなく、電力変換装置100から負荷7への電力供給を安定的に開始させることができる。
上記実施の形態1では、第1の電力変換回路2がAC/DCコンバータ20のみにより構成され、第3の電力変換回路6がDC/DCコンバータ60のみにより構成されるが、第1および第3の電力変換回路2,6の構成は、これに限定されない。図8は、実施の形態1に係る電力変換装置100の変形例を示す図である。
図8に示す電力変換装置100は、第1の電力変換回路2に代えて第1の電力変換回路2Aを備え、第3の電力変換回路6に代えて第3の電力変換回路6Aを備える。第1の電力変換回路2Aは、図2および図3のAC/DCコンバータ20に加えて、降圧型のDC/DCコンバータ200を含む。DC/DCコンバータ200は、コンデンサ211、スイッチング素子212,213およびリアクトル214を含む。この第1の電力変換回路2Aにおいては、AC/DCコンバータ20により交流電圧が直流電圧に変換され、変換後の直流電圧がDC/DCコンバータにより降圧されて出力される。
一般的に、負荷7の要求電力が比較的大きい場合には、高調波歪みを抑制するために、昇圧型のコンバータ(本例では、AC/DCコンバータ20)によって力率制御が行われる。しかしながら、そのような昇圧型のコンバータが用いられると、第2の電力変換回路4の絶縁トランス49に印加される電圧が大きくなり、鉄損が増加するという問題がある。そこで、図8の例では、DC/DCコンバータ200によって絶縁トランス49への印加電圧を低減することができ、鉄損の増加を抑制することができる。
図8に示す第3の電力変換回路6Aは、図2および図3のDC/DCコンバータ60に加えて、絶縁型DC/DCコンバータ600を含む。絶縁型DC/DCコンバータ600は、絶縁トランス610、スイッチング素子611〜618およびコンデンサ619を含む。この第3の電力変換回路6Aにおいては、DC/DCコンバータ60により直流電圧が直流電圧に変換され、変換後の直流電圧が絶縁型DC/DCコンバータ60により変圧されて出力される。
DC/DCコンバータ200のスイッチング素子212,213および絶縁型DC/DCコンバータ600のスイッチング素子611〜618は、制御部8によりオンオフ制御される。この場合、AC/DCコンバータ20の動作とDC/DCコンバータ200の動作とが同時に開始されてもよく、AC/DCコンバータ20の動作が開始されてから時間が経過した後にDC/DCコンバータ200の動作が開始されてもよい。また、DC/DCコンバータ60の動作と絶縁型DC/DCコンバータ600の動作とが同時に開始されてもよく、DC/DCコンバータ60の動作が開始されてから時間が経過した後に絶縁型DC/DCコンバータ600の動作が開始されてもよい。また、負荷7として電圧源負荷72が用いられる場合には、絶縁型DC/DCコンバータ600の動作が開始されてから時間が経過した後にDC/DCコンバータ60の動作が開始されてもよい。
電力変換装置100は、第1〜3の電力変換回路2(2A),4,6(6A)に加えて、さらに他の電力変換回路を備えてもよい。図9は、実施の形態1に係る電力変換装置100の他の変形例を示す図である。図9に示す電力変換装置100においては、第1の電力変換回路2、第1の直流コンデンサ3および第2の電力変換回路4と並列に、第4の電力変換回路91および第5の電力変換回路92が接続される。
第4の電力変換回路91は、スイッチング素子911〜914、コンデンサ915、および非接触受電コイル916を含む。スイッチング素子911〜914は、フルブリッジ型に接続される。スイッチング素子911と、スイッチング素子912と、が直列接続される接続点に非接触受電コイル916の一端が接続され、スイッチング素子913と、スイッチング素子914と、が直列接続される接続点に非接触受電コイル916の他端が接続される。第4の電力変換回路91は、一対の第3の直流母線917を介して一対の第2の直流母線51にそれぞれ接続される。
第5の電力変換回路92は、スイッチング素子921〜928、直流リンクコンデンサ929、交流リアクトル931,932、および非接触送電コイル933を含む。スイッチング素子921〜924およびスイッチング素子925〜928は、それぞれフルブリッジ型に接続されている。交流リアクトル931,932の一端は、交流電源11と接続されている。交流リアクトル931の他端は、直列接続されたスイッチング素子921とスイッチング素子922との接続点に接続され、交流リアクトル932の他端は、直列接続されたスイッチング素子923とスイッチング素子924との接続点に接続されている。直流リンクコンデンサ929は、スイッチング素子921〜924とスイッチング素子925〜928とを接続する直流母線の正極および負極に接続されている。直列接続されたスイッチング素子925とスイッチング素子926との接続点に非接触送電コイル933の一端が接続され、直列接続されたスイッチング素子927とスイッチング素子928との接続点に非接触送電コイル933の他端が接続される。
第4の電力変換回路91の非接触受電コイル916と第5の電力変換回路92の非接触送電コイル933とが磁気的に結合されることにより、第5の電力変換回路92から第4の電力変換回路91に非接触で電力が伝送される。第4の電力変換回路91から第3の直流母線917を介して第2の直流コンデンサ5に直流電圧が与えられる。
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2に係る電力変換装置について、上記実施形態1に係る電力変換装置100と異なる点を中心に説明する。実施の形態2に係る電力変換装置の構成は、実施の形態1に示す場合と概ね同様であるため、構成の詳細な説明は繰り返さない。
図10は、実施の形態2に係る電力変換装置100の具体的な回路構成例を示す図である。実施の形態2に係る電力変換装置100は、第1の電力変換回路2に代えて第1の電力変換回路2Bを備え、第3の電力変換回路6に代えて第3の電力変換回路6Bを備える。
第1の電力変換回路2Bは、スイッチング素子221、222および平滑用直流リアクトル223からなるDC/DCコンバータ20Bを含む。DC/DCコンバータ20Bは、降圧チョッパの回路構成を有する。第1の電力変換回路2Bの入力端子には、入力電源1として直流電源12が接続される。なお、図10に示すDC/DCコンバータ20Bは、降圧チョッパの回路構成を有するが、昇圧型や昇降圧型の回路構成を有してもよく、また、インターリーブの構成や並列接続構成を有してもよいことは言うまでもない。
第3の電力変換回路6Bは、スイッチング素子621〜624および交流リアクトル625、626からなり、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ60Bを含む。スイッチング素子621〜624はフルブリッジ型に接続されている。交流リアクトル625の一端はスイッチング素子621とスイッチング素子622との接続点に接続されている。交流リアクトル626の一端はスイッチング素子623とスイッチング素子624との接続点に接続されている。交流リアクトル625,626の他端に、負荷7として抵抗負荷71が接続されている。
なお、図10に示す第3の電力変換回路6では、交流リアクトル625,626が交流電源の両極側にそれぞれ接続されるが、片極側のみに接続されもよい。すなわち、交流リアクトル625,626のいずれか一方のみが用いられてもよい。
図10に示す第1の電力変換回路2BのDC/DCコンバータ20Bは、図2および図3に示す第3の電力変換回路6のDC/DCコンバータ60と入出力が逆の構成を有し、図10に示す第3の電力変換回路6Bのインバータ60Bは、図2および図3に示す第1の電力変換回路2のAC/DCコンバータ20と入出力が逆の構成を有する。そのため、実施の形態1における電力の伝送方向を正方向と定義し、その反対の方向を逆方向と定義した場合、実施の形態2に係る電力変換装置100は、逆方向に電力を伝送する。なお、電力変換装置100が双方向に電力を伝送可能に構成されている場合、共通の電力変換装置100により実施の形態1と実施の形態2の両方を実現することが可能である。
電流検出器D1は、直流電源12から第1の電力変換回路2Bに流れる直流入力電流Idcを検出する。電流検出器D2は、第3の電力変換回路6Bから抵抗負荷71に流れる交流出力電流ioutを検出する。電圧検出器D3は、直流電源12から第1の電力変換回路2に与えられる直流入力電圧Vdcを検出する。電圧検出器D4は、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintを検出する。電圧検出器D5は、第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkを検出する。電圧検出器D6は、第3の電力変換回路6から抵抗負荷71に与えられる交流出力電圧voutを検出する。制御部8は、検出器D1〜D6から与えられた検出値の一部または全部に基づいてフィードバック演算を行い、各スイッチング素子のオンオフを制御する。
定常時における制御部8の役割について、上記実施の形態1と異なる主な点は、次の点である。制御部8は、予め定められた目標直流電圧Vint*と第1の直流コンデンサ3の直流電圧Vintの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。
また、制御部8は、予め定められた目標直流電圧Vlink*と第2の直流コンデンサ5の直流電圧Vlinkの検出値との電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御または比例積分制御により出力値を演算する。
また、制御部8は、抵抗負荷71への出力電圧が正弦波交流になるように予め定められた目標交流出力電圧の実効値Vout,rms*に振幅が√2の正弦波電圧を乗じた目標交流出力電圧vout*と交流出力電圧voutとの電圧差を算出し、算出した電圧差をフィードバック量として比例制御もしくは比例積分制御により出力を演算する。
各出力値に基づいて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが目標直流電圧Vint*に追従するように制御され、第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkが目標直流電圧Vlink*に追従するように制御され、交流出力電圧voutが目標交流出力電圧vout*に追従するように制御される。
次に、実施の形態2における初期動作時の制御部8の役割について、上記実施の形態1における初期動作時の制御部8の役割と異なる点を中心に説明する。図11は、実施の形態2における初期動作について説明するための図である。図11には、直流入力電圧Vdc、第1の直流コンデンサ3の電圧Vint,第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkおよび交流出力電圧voutの検出値が示される。
図11の例においては、時刻t0にて、第1の電力変換回路2B、第2の電力変換回路4および第3の電力変換回路6Bのスイッチング動作はいずれも停止されている。また、時刻t0にて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintおよび第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkはそれぞれ0である。
制御部8は、検出器D1〜D6による検出結果に基づいて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vint、第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkおよび交流出力電圧voutが以下のように変化するように、第1〜第3の電力変換回路2B,4,6Bを制御する。
時刻t1dにて、直流入力電圧Vdcが第1の電力変換回路2Bの入力端子に印加される。このとき、第1の電力変換回路2Bの各スイッチング素子の内蔵ダイオードまたは外付けのダイオードを介して第1の直流コンデンサ3が受動的に充電される。それにより、時刻t2dにて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが初期充電電圧Vint0に上昇する。なお、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが瞬時に充電されることによって時刻t1dと時刻t2dがほぼ一致していてもよい。
時刻t3dにて、第1の電力変換回路2Bのスイッチング動作が開始される。この場合、第1の電力変換回路2Bの実効デューティ比が徐々に上昇されることにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが徐々に上昇する。
時刻t4dにて、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが予め定められた第1の閾値電圧Vint,thに達する。このとき、第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、第1の直流コンデンサ3から第2の電力変換回路4を介して第2の直流コンデンサ5に電流が流れ、第2の直流コンデンサ5の充電が開始される。
第1の閾値電圧Vint,thは、式(4)の条件を満たす。
ここで、第1の電力変換回路2Bの動作中に、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが直流入力電圧Vdcより低くなると、第1の電力変換回路2Bが正常動作(昇圧動作)を継続することができなくなる。具体的には、スイッチング素子21〜24のオンオフに関係なく、直流電源12と第1の直流コンデンサ3との間の電流経路が固定される。そのため、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintは、直流入力電圧Vdcよりも高く維持される必要がある。
本実施の形態では、第1の電力変換回路2Bによって第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが第1の閾値電圧Vint,thまで上昇されてから第2の電力変換回路4のスイッチング動作が開始される。これにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintと直流入力電圧Vdcとの間に一定のマージン(余裕)を確保した状態で、第2の電力変換回路4のスイッチング動作を開始させることができる。また、本実施の形態では、第2の電力変換回路4の実効デューティ比は0から徐々に増加され、第1の直流コンデンサ3から第2の直流コンデンサ5に流れる電流は0から徐々に増加する。それにより、第2の電力変換回路4の動作開始に伴う第1の直流コンデンサ3の電圧Vintの急峻な低下が抑制される。
これらにより、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが直流入力電圧Vdcより低くなることが防止され、第1の電力変換回路2が安定的に正常動作を継続することができる。
また、第1の閾値電圧Vint,thが目標直流電圧Vint*より小さい値に設定されているため、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが過電圧となることが防止されるとともに、第2の電力変換回路4の動作開始までの時間を短くすることができる。
その後、第1の直流コンデンサの電圧Vintは、目標直流電圧Vint*に追従するように制御される。
時刻t5dにて、第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkが、予め定められた第2の閾値電圧Vlink,thに達すると、第1の電力変換回路2Bおよび第2の電力変換回路4に加えて、第3の電力変換回路6Bのスイッチング動作が開始される。この場合、第3の電力変換回路6Bの実効デューティ比は0から徐々に増加され、かつ抵抗負荷71への交流出力電圧voutが、目標交流出力電圧vout*へと追従するように、第3の電力変換回路6Bが制御される。それにより、第2の直流コンデンサ5から抵抗負荷71に流れる交流出力電圧voutの実効値は、0から徐々に増加される。
第2の閾値電圧Vlink,thは、式(5)の条件を満たす。なお、式(5)における「√2Vout*,rms」は、目標交流出力電圧vout*の最大値に相当する。
これにより、第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkが目標交流出力電圧vout*の最大値より低くなることが防止される。その結果、第2の直流コンデンサ5が安定的に正常動作を継続することができる。
その後、第2の直流コンデンサの電圧Vlinkは、目標直流電圧Vlink*に追従するように制御される。
時刻t6dにて、交流出力電圧voutが目標交流出力電圧の実効値Vout,rms*に振幅が√2の正弦波電圧を乗じた目標交流出力電圧vout*まで達すると、第1の電力変換回路2B、第2の電力変換回路4および第3の電力変換回路6Bの全てが上記の定常動作に移行する。
このように、実施の形態2においても、第1〜第3の電力変換回路2B,4,6Bの動作が段階的に開始されることにより、第1〜第3の電力変換回路2B,4,6Bの動作が同時に開始される場合と異なり、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を個別に制御することができる。それにより、第1および第2の直流コンデンサ3,5の電圧を安定的に上昇させることができる。その後、第1の直流コンデンサ3の電圧Vintが第1の閾値電圧Vint,thに達しかつ第2の直流コンデンサ5の電圧Vlinkが第2の閾値電圧Vlink,thに達した状態で、第3の電力変換回路6の動作が開始されることにより、第1〜第3の電力変換回路2B,4,6B内における過電流ならびに第1および第2の直流コンデンサ3,5の過電圧を発生させることなく、電力変換装置100から負荷7への電力供給を安定的に開始させることができる。
なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に種々の変更が可能である。例えば、図3の例と同様に、負荷7として電圧源負荷72が用いられてもよく、図8の例と同様に、第1の電力変換回路2Bおよび第3の電力変換回路6Bに他の回路が追加されてもよく、図9の例と同様に、第1〜第3の電力変換回路2B,4,6Bにさらに他の電力変換回路が接続されてもよい。
制御部8の機能は、電子回路などのハードウェアで実現されてもよく、ソフトウェアで実現されてもよい。図12は、制御部8の少なくとも一部の機能がソフトウェアで実現される例を示す図である。図12の例では、制御部8が、処理装置(プロセッサ)501および記憶装置(メモリ)502を備える。処理装置501は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、記憶装置502に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、上記実施の形態における制御部8の少なくとも一部の機能を実現することができる。