JP6522271B1 - プラズマ溶射用材料 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、金属基材等の基材に対して接着強度が高いハイドロキシアパタイト皮膜を形成できるプラズマ溶射用材料を提供することである。水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるハイドロキシアパタイト粉末は、プラズマ溶射用材料として使用することによって、金属基材等の基材に対して接着強度が高いハイドロキシアパタイト皮膜を形成し得る。

Description

本発明は、金属基材等の基材に対して接着強度が高いハイドロキシアパタイト皮膜を形成できるプラズマ溶射用材料に関する。
近年、高齢化を原因とする骨折や変形性股関節症が増加し、人工関節を使用するケースが増えている。
人工関節は、強度及び安定性が高いチタン合金やコバルト合金等の金属基材が使用されている。しかしながら、人工関節に使用されている金属基材は、生体への適合性は示すものの、生体親和性に乏しく、生体組織と馴染みにくいため、より生体親和性の高い材料を基材の表面にコーティングすることが一般的に知られている。
従来、人工関節の生体親和性を高めるために、ハイドロキシアパタイト(以下、HApと記載することもある)やバイオガラス等の生体親和性材料を金属基材の表面にコーティングした人工関節が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような人工関節の製造において、生体親和性材料のコーティングは、浸漬法、電気泳動法、プラズマ溶射法等の方法で行われているが、プラズマ溶射法が最も多く普及している。プラズマ溶射法の原理は、以下の通りである。陰極と陽極間に電圧をかけ発生したアークにアルゴンガス等の作動ガスが供給されると作動ガスが電離する。これにより発生したプラズマフレーム中に、生体親和性材料を供給することで、プラズマフレームが持つ温度及び気流により、溶融した生体親和性材料が金属基材に接着し、生体親和性材料の皮膜を形成する。このようなプラズマ溶射法では、プラズマフレームは中心部になるに従い、気流などの外的要因による影響を受け難くなるので、一般的には良質な皮膜形成にはフレーム中心部付近にコーティング材料を供給することが良いとされている。
一方、HApで金属基材をコーティングした人工関節は、股関節を含めた関節部位に多用されているが、埋入部位によっては、HAp皮膜への負荷が大きいことがある。金属基材へのHAp皮膜の接着強度が低い場合には、HAp皮膜に負荷がかかると、剥離が起き、炎症が生じ、再手術を要することがある。そのため、HApで金属基材をコーティングした人工関節において、HAp皮膜には、接着強度が高く、剥離し難いことが要求される。HApで金属基材をコーティングした人工関節において、HApと金属基材との接着強度を1MPa向上させることは、単位面積(cm2)当たりの接着強度を10kgf向上させることを示し、人工関節の面積から考慮しても大きな向上であることは明確である。また、HApのようなセラミックは破壊靱性が低いことからも、このような接着強度の向上は、技術的に大きな意味を持つと考えられる。金属基材へのHAp皮膜の接着強度を高める手法としては、HApをプラズマ溶射する際の条件(例えば、キャリアーガスの種類、溶射距離、電流値等)を適切にコントロールすることが有効になるが、プラズマ溶射条件の最適化は容易ではない。更に、プラズマ溶射条件の変更によって、HAp皮膜の熱分解性、色調への影響、製造工程における生産効率の低下等が考えられるため、プラズマ溶射条件の大幅な変更は現実的とはいえない。そこで、プラズマ溶射用材料として使用されるHApの物性の観点から、金属基材に対して高い接着強度を具備させる技術の開発が望まれている。
特開平2−140171号公報
本発明の目的は、金属基材等の基材に対して接着強度が高いHAp皮膜を形成できるプラズマ溶射用材料を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるHAp粉末は、プラズマ溶射用材料として使用することによって、金属基材等の基材に対して接着強度が高いHAp皮膜を形成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるハイドロキシアパタイト粉末を含む、プラズマ溶射用材料。
項2. 前記モード径が550〜750nmである、項1に記載のプラズマ溶射用材料。
項3. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の嵩密度が0.6g/mL以上である、項1又は2に記載のプラズマ溶射用材料。
項4. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の嵩密度が0.7〜1g/mLである、項1〜3のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項5.前記ハイドロキシアパタイト粉末が、水銀圧入法によって測定される5000nm以上の細孔径を有している、項1〜4のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項6. 前記ハイドロキシアパタイト粉末が、水銀圧入法によって測定される20000〜50000nmの細孔径を有している、項1〜5のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項7. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下における細孔容積が0.01〜0.5cc/gである、項1〜6のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項8. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される平均粒子径(累積度が50%となる粒子径)が30超〜350μmである、項1〜7のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項9. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される粒度分布が、累積度が10%となる粒子径(D10)が45〜75μm、累積度が50%となる粒子径(D50)が80〜120μm、且つ累積度が90%となる粒子径(D90)130〜170μmを満たす、項1〜8のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項10. 基材上での皮膜形成に使用される、項1〜9のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
項11. 前記基材が金属基材である、項10に記載のプラズマ溶射用材料。
項12. 前記金属基材がチタン合金製である、項11に記載のプラズマ溶射用材料。
項13. 前記金属基材が人工関節である、項11又は12に記載のプラズマ溶射用材料。
項14. 項1〜13のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料をプラズマ溶射し、基材上にハイドロキシアパタイト皮膜を形成させる、ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
項15. 前記基材が金属基材である、項14に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
項16. 前記金属基材がチタン合金製である、項15に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
項17. 前記金属基材が人工関節である、項15又は16に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
項18. 水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるハイドロキシアパタイト粉末の、プラズマ溶射用材料としての使用。
本発明のプラズマ溶射用材料は、プラズマ溶射によって基材上にHAp皮膜を高い接着強度で形成することが可能になっており、負荷がかかってもHAp皮膜の剥離を抑制することができるので、負荷に耐えることが要求される部材(例えば、人工関節等のインプラント)の皮膜形成材料として好適に使用できる。更に、本発明のプラズマ溶射用材料は、プラズマ溶射によって基材上に白色度が高く、良好な外観のHAp皮膜を形成することもできる。
本発明のプラズマ溶射用材料が、基材にHAp皮膜を高い接着強度で形成できる作用機序については、限定的な解釈を望むものではないが、次のように考えられる。本発明のプラズマ溶射用材料で使用されるHAp粉末が、特定の細孔径を有することによってプラズマの熱エネルギーが粒子表面及び粒子内部へ均一に伝達され易くなっており、粉末全体を均一に溶融することが可能である。また、細孔容積が小さい粒子は適度な密度を持ち、プラズマフレームの中心部への供給が行い易く且つ均一な供給が可能になると考えられる。そのため、適度に溶融された粉末が基材に対して接着することで強固なHAp皮膜を形成すると考えられる。
実施例1〜3及び比較例1〜2のHAp粉末の外観を顕微鏡観察した像を示す。 実施例4及び比較例3〜8のHAp粉末の外観を顕微鏡観察した像を示す。 実施例1〜3及び比較例1〜2のHAp粉末をプラズマ溶射することにより形成したHAp皮膜の断面外観を顕微鏡観察した像を示す。 比較例3、7〜8のHAp粉末をプラズマ溶射することにより形成したHAp皮膜の断面外観を顕微鏡観察した像を示す。 実施例1〜3及び比較例1〜2のHAp粉末について、水銀圧入法で細孔径の分布を求めた結果を示す。 実施例4のHAp粉末について、水銀圧入法で細孔径の分布を求めた結果を示す。 比較例3〜8のHAp粉末について、水銀圧入法で細孔径の分布を求めた結果を示す。 実施例2の粉末X線回折分析の結果を示す。 比較例4の粉末X線回折分析の結果を示す。
本発明のプラズマ溶射用材料は、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるHAp粉末を含むことを特徴とする。以下、本発明のプラズマ溶射用材料について詳述する。
[HAp粉末の物性]
HApは、化学式Ca5(PO43(OH)で表されるリン酸カルシウムである。また、本発明におけるHAp粉末とは、微粒状の粉末形態だけではなく、顆粒、造粒物、細粒等の粉末形態を包含する。
本発明で使用されるHAp粉末は、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径(最頻細孔直径)が550〜1000nmである。このようなモード径を充足することによって、プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜が、基材に対して高い接着強度を備えることが可能になる。プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜の基材への接着強度をより一層向上させるという観点から、細孔径5000nm以下におけるモード径として、好ましくは550〜900nm、更に好ましくは550〜800nm、特に好ましくは550〜750nmが挙げられる。
本発明において、「水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径」とは、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔分布において、細孔径5000nm以下の領域で出現比率が最も高い直径(最頻細孔直径)である。当該モード径の測定において、細孔分布を測定する際の水銀ポロシメーターの条件は、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を480erg/cm2に設定される。
また、本発明で使用されるHAp粉末の好適な特性として、水銀圧入法による測定において測定される5000nm以上の細孔径を有していること、好ましくは水銀圧入法による測定において測定される20000〜50000nmの細孔径を有していることが挙げられる。本発明において、「水銀圧入法による測定において測定される5000nm以上の細孔径を有している」とは、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔分布において、5000nm以上の範囲に細孔径の存在が認められることを意味している。また、「水銀圧入法による測定において測定される20000〜50000nmの細孔径を有している」は、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔分布において、20000〜50000nmの範囲に細孔径の存在が認められることを意味している。当該細孔分布を測定する際の水銀ポロシメーターの条件は、前記「細孔径5000nm以下におけるモード径」の場合と同様である。
本発明で使用されるHAp粉末において、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以上におけるモード径については、特に制限されないが、例えば、5000〜300000nm、好ましくは、10000〜100000nm、更に好ましくは20000〜50000nm、特に好ましくは35000〜45000nmが挙げられる。
本発明において、「水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以上におけるモード径」とは、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔分布において、細孔径5000nm以上の領域で出現比率が最も高い直径(最頻細孔直径)である。当該モード径の測定において、細孔分布を測定する際の水銀ポロシメーターの条件は、前記「細孔径5000nm以下におけるモード径」の場合と同様である。
本発明で使用されるHAp粉末において、細孔容積については、特に制限されないが、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下における細孔容積が、好ましくは0.01〜0.5cc/g、更に好ましくは0.01〜0.4cc/g、より好ましくは0.05〜0.35cc/g、特に好ましくは0.1〜0.35cc/gが挙げられる。このような細孔容積を満たすことによって、プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜の基材への接着強度をより一層向上させることが可能になる。
本発明において、「水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下における細孔容積」は、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔容積において、細孔径5000nm以下の領域の累積細孔容積である。当該細孔容積の測定において、細孔容積を測定する際の水銀ポロシメーターの条件は、前記「細孔径5000nm以下におけるモード径」の場合と同様である。
本発明で使用されるHAp粉末において、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以上における細孔容積については、特に制限されないが、例えば、0.01〜1cc/g、好ましくは0.01〜0.8cc/g、更に好ましくは0.3〜0.6cc/gが挙げられる。
本発明において、「水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以上における細孔容積」は、水銀ポロシメーターを用いて測定された細孔容積分布において、細孔径5000nm以上の領域の累積細孔容積である。当該細孔容積の測定において、細孔容積分布を測定する際の水銀ポロシメーターの条件は、前記「細孔径5000nm以下におけるモード径」の場合と同様である。
また、本発明で使用されるHAp粉末の嵩密度については、特に制限されないが、例えば0.6g/mL以上、好ましくは0.7g/mL以上、更に好ましくは0.7〜3g/mL、より好ましくは0.3〜1.3g/mL、特に好ましくは0.7〜1g/mLが挙げられる。このような嵩密度を満たすことによって、プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜の基材への接着強度をより一層向上させることが可能になる。
本発明において、「嵩密度」は、HAp粉体10.0gを量りとり、50mLメスシリンダーに静かに入れ、HAp粉体の上面を圧密せずに注意深くならし、粉末体積(ゆるみ嵩体積)を測定し、以下の式に従って算出される値である。
嵩密度(g/mL)=粉体重量(g)/粉体体積(mL)
本発明で使用されるHAp粉末のタップ密度については、特に制限されないが、例えば、0.8g/mL以上、好ましくは0.8〜3g/mL、更に好ましくは0.9〜1.5g/mLが挙げられる。
本発明において、「タップ密度」は、HAp粉末10.0gを量りとり、50mLメスシリンダーに入れ、タッピング装置を用いて、4cmの高さにて100/250秒の速度でタッピングを行って、粉末体積(タップ体積)を測定し、以下の式に従って算出される値である。
タップ密度(g/mL)=粉体重量(g)/粉体体積(mL)
本発明で使用されるHAp粉末の平均粒子径については、特に制限されないが、例えば、30超〜350μm、好ましくは50〜150μm、更に好ましくは70〜120μm、特に好ましくは80〜110μmが挙げられる。このような平均粒子径を満たすことによって、プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜の基材への接着強度をより一層向上させることが可能になる。
本発明において、「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される、累積度が50%となる粒子径(D50、メジアン径)である。
本発明で使用されるHAp粉末の粒度分布については、特に制限されないが、累積度が90%となる粒子径(D90)が、例えば、2000μm以下、好ましくは、30超〜2000μm、より好ましくは、30超〜200μm、更に好ましくは100〜200μm、特に好ましくは、140〜155μmが挙げられる。特に、累積度が10%となる粒子径(D10)が45〜75μm、累積度が50%となる粒子径(D50)が80〜120μm、且つ累積度が90%となる粒子径(D90)が130〜170μmの粒度分布を有するHAp粉末が好適であり、とりわけ、累積度が10%となる粒子径(D10)が50〜65μm、累積度が50%となる粒子径(D50)が85〜110μm、且つ累積度が90%となる粒子径(D90)が140〜155μmの粒度分布を有するHAp粉末が最も好適である。このような粒度分布を充足することによって、プラズマ溶射によって形成されるHAp皮膜の基材への接着強度をより一層向上させることが可能になる。
本発明において、D10、D50、及びD90は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される値である。
本発明で使用されるHAp粉末のBET比表面積については、特に制限されないが、例えば、10m2/g以下、好ましくは0.1〜10m2/g、更に好ましくは0.1〜5m2/g、特に好ましくは0.1〜3m2/gが挙げられる。
本発明において、BET比表面積は、高速比表面積細孔分布測定装置を用いて、以下の方法で測定される値である。先ず、HAp粉末1.0gを正確に量り、吸着管に封入し、105℃で3時間脱気する。次いで、液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、その吸着等温線を用いて、多点BET法により比表面積(m2/g)を算出する。
本発明で使用されるHAp粉末において、ガス吸着法によって測定される細孔容積については、特に制限されないが、例えば、0.001〜1.4cc/g、好ましくは0.001〜0.05cc/g、更に好ましくは0.001〜0.01cc/gが挙げられる。
本発明において、ガス吸着法によって測定される細孔容積は、高速比表面積細孔分布測定装置を用いて、以下の方法で測定される値である。先ず、HAp粉末1.0gを正確に量り、吸着管に封入し、105℃で3時間脱気する。次いで、液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、液相対圧P/P0(P0:飽和蒸気圧)が0.995におけるガス吸着量から全細孔容積(cc/g)を算出する。
また、本発明において、ガス吸着法によって測定される平均細孔径については、特に制限されないが、例えば、1〜20nm、好ましくは5〜15nm、更に好ましくは8〜12nmが挙げられる。
本発明において、「ガス吸着法によって測定される平均細孔径」は、以下の式に従って算出される値である。
平均細孔径(nm)=4V/S×1000
V:ガス吸着法によって測定される細孔容積(cc/g)
S:比表面積(m2/g)
[HAp粉末の製造方法]
本発明で使用されるHAp粉末の製造方法については、前述する物性を備えるHAp粉末が得られることを限度として特に制限されないが、前述する物性を備えるHAp粉末を製造する方法の好適な例として、下記第1工程及び第2工程を含む製造方法が挙げられる。
第1工程:(1)水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液にリン酸を滴下する逐次添加工程を含む湿式法、又は(2)リン酸を水に溶解させたリン酸水溶液に水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液を添加する逐次添加工程を含む湿式法によりHAp粉末を得る。
第2工程:前記第1工程で得られたHAp粉末に対して、1050℃超〜1400℃未満の温度で焼成処理する。
前記第1工程において、(1)水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液にリン酸を滴下する、又は(2)リン酸を水に溶解させたリン酸水溶液に水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液を添加することによって、カルシウムイオンとリン酸イオンを反応させて、HApの合成反応[10Ca(OH)2+6H3PO4→Ca10(PO46(OH)2]を行えばよい。前記第1工程では、最終的に共存させる水酸化カルシウムとリン酸の割合がHApのカルシウムとリンの割合と同等になるように調整すればよい。水酸化カルシウムを水中で乳液状に懸濁した液は、酸化カルシウムを水に添加して水和反応させることによって得ることができる。また、水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液にリン酸を滴下する場合、滴下するリン酸は、リン酸を水に溶解させたリン酸水溶液の状態であることが好ましい。水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液にリン酸を滴下する場合であれば、リン酸を滴下する速度については、滴下後の反応液のpHが9以下になるように適宜調整すればよいが、例えば、カルシウム(Ca)原子1molに対し、リン(P)原子が0.05〜0.6mol/h、好ましくは0.1〜0.3mol/h、より好ましくは0.2mol/hとなる範囲が挙げられる。また、リン酸を水に溶解させたリン酸水溶液に水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液を添加する場合であれば、リン(P)原子1molに対し、カルシウム(Ca)原子が0.05〜0.6mol/hとなる範囲が挙げられる。なお、水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液とリン酸を同時に混合する湿式法でHApの合成を行うと、前述する物性を備えことができず、プラズマ溶射に供し得るHApは形成できなくなる。
本発明で使用されるHAp粉末を効率的に製造するという観点から、第1工程は、水酸化カルシウムを懸濁させた懸濁液にリン酸を滴下する逐次添加工程を含む湿式法により行うことが好ましい。
前記第1工程で製造されたHApは、スプレードライ、箱形乾燥機、バンド乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、マイクロ波乾燥機、ドラムドライヤー、流動乾燥機等で乾燥させた後に、第2工程(焼成処理)に供すればよい。また、前述する物性を備えるHAp粉末が得られることを限度として、第1工程で得られたHAp粉末は、第2工程に先立って、必要に応じて、粒子径を調整する目的で、湿式造粒、乾式造粒又は粉砕等の処理を施してもよい。
前記第1工程で製造されたHAp粉末は、第2工程において1050℃超〜1400℃未満の温度条件での焼成処理が実施される。従来、湿式法で製造されたHAp粉末の焼成処理は、一般的には1000℃以下の温度条件で行われているが、このような温度条件では、前述する物性を具備するHAp粉末は得られない。本発明では、第2工程において、前記第1工程で製造されたHAp粉末の焼成処理の温度条件を1050℃超〜1400℃未満の温度に設定することによって、前述する物性を具備するHAp粉末を得ることが可能になる。第2工程における焼成処理の温度条件として、好ましくは1050超〜1300℃、更に好ましくは1100〜1200℃が挙げられる。
また、前記焼成処理の温度条件の保持時間については、温度条件を勘案した上で、前述する物性を具備するHAp粉末が生成する範囲で適宜設定すればよく、前述の焼成処理の温度条件に一瞬でも達していればよいが、好ましくは0.1〜10時間、更に好ましくは1〜5時間が挙げられる。
斯くして第2工程を行うことによって、前述する物性を備えるHAp粉末(本発明で使用されるHAp粉末)を得ることができる。第2工程によって得られたHAp粉末は、篩を用いて整粒しておくことが望ましい。使用する篩の目開きについては、特に制限されないが、例えば30μm以上、好ましくは50〜500μm、更に好ましくは150〜300μmが挙げられる。
[用途・使用方法]
本発明では前記HAp粉末をプラズマ溶射用材料として使用する。「プラズマ溶射用材料」とは、プラズマ溶射に供される粉末(形成される皮膜の原料となる粉末)である。また、「プラズマ溶射」とは、プラズマ溶射用材料(粉末)を、プラズマで加熱し、溶融させて液状微粒子とし、この液状微粒子をプラズマジェットとともに、基材の表面に高速で衝突させ、基材上にプラズマ溶射用材料の皮膜を形成させる技術である。
本発明のプラズマ溶射用材料を用いたプラズマ溶射において、HAp皮膜の形成対象となる基材の素材については、特に制限されないが、例えば、チタン合金(Ti−6Al−4V合金、Ni−Ti等)、コバルト合金(Co-Cr-Ni合金、Co−Cr−Mo、Co−Cr−W−Ni等)、マグネシウム合金(Mg−Y−RE、Mg―Ca―Zn、Mg−Li−Al等)ステンレス鋼(SUS316L、SUS304等)、チタン、コバルト、モリブデン、ニオブ、タンタル、金、白金、タングステン、イリジウム、インコネル等の金属;アルミナ、ジルコニア等のセラミック;ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリパラジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン等の高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは金属、更に好ましくはチタン合金が挙げられる。
また、HAp皮膜の形成対象となる基材の種類(用途)については、特に制限されないが、例えば、人工関節、人工歯根、人工骨等のインプラント;補助人工心臓、人工血管、ステント、ペースメーカー、縫合糸、カテーテル、人工皮膚、人工筋肉、眼内レンズ等の生体内留置機器の筐体等が挙げられる。これらの中でも、インプラント(特に、人工関節)は、生体内で負荷がかかり易く、基材上に設けられたHAp皮膜が強固に接着し剥がれ難い特性が強く要求される。本発明のプラズマ溶射用材料は、インプラント(特に、人工関節)に求められる前記要求特性を満足できるHAp皮膜を形成できるので、インプラント(特に、人工関節)の表面に設けられるHAp皮膜の形成材料として好適に使用される。
本発明のプラズマ溶射用材料を用いて基材にHAp皮膜を形成させる際のプラズマ溶射の条件については、特に制限されず、基材の種類、形成させるHAp皮膜の厚み等に応じて、通常採用されているプラズマ溶射の条件の範囲内で適宜設定すればよい。
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明する。本発明はこの実施例に限定されない。
1.HAp粉末の製造及び物性評価
1−1.HAp粉末の製造
実施例1
反応槽に水6L及び酸化カルシウム1kgを投入して水和反応させた後に、懸濁液に水を加え、合計15Lに調整した。次いで、50℃に加温し、pH8になるまでリン酸水溶液をカルシウム(Ca)原子1molに対し、リン(P)原子を0.2mol/hとなる滴下速度で添加した。得られた溶液を95℃以上に加温して2時間反応させた。
次いで、得られた反応液をディスク式の噴霧手段を備えたスプレードライヤを用いて、噴霧乾燥を行い、乾燥物を回収した。
更に、得られた乾燥物に対して、電気炉(草葉化学社製)を用いて1100℃3時間焼成(昇温速度65℃/h)を行った。放冷後、HAp粉末を得た。
実施例2
焼成温度を1150℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
実施例3
焼成温度を1200℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
実施例4
焼成温度を1250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例1
焼成温度を800℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例2
焼成温度を1000℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例3
焼成温度を1050℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例4
焼成温度を1400℃に変更したこと以外は、実施例1と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例5
水5Lに水酸化カルシウム25重量%懸濁液2.5L及びリン酸50重量%溶液1LをpH7にて3時間かけて同時に滴下した。
次いで、得られた反応液をディスク式の噴霧手段を備えたスプレードライヤを用いて、噴霧乾燥を行い、乾燥物を回収した。
更に、得られた乾燥物に対して、電気炉(草葉化学社製)を用いて1200℃3時間焼成(昇温速度65℃/h)を行った。放冷後、HAp粉末を得た。
比較例6
焼成温度を1000℃に変更したこと以外は、比較例5と同様条件で、HAp粉末を得た。
比較例7
反応槽に水6L及び酸化カルシウム1kgを投入して水和反応させた後に、懸濁液に水を加え、合計15Lに調整した。次いで、50℃に加温し、pH8になるまでリン酸水溶液を添加した。得られた溶液を95℃以上に加温して2時間反応させた。
次いで、得られた反応液を湿式粉砕した後、得られたスラリーを流動層造粒装置を用いて、造粒乾燥を行い、乾燥物を回収した。
更に、得られた乾燥物に対して、電気炉(草葉化学社製)を用いて800℃3時間焼成(昇温速度65℃/h)を行った。放冷後、HAp粉末を得た。
比較例8
市販のHAp粉末(Medicoat社製Hydroxyapatite(Medipure 20−15No101))を使用した。
1−2.HAp粉末の物性の評価方法
得られた各HAp粉末について、以下の方法で、嵩密度、タップ密度、平均粒子径・粒度分布、細孔径5000nm以下/5000nm以上のモード径及び細孔容積(水銀圧入法)、BET比表面積、平均細孔径(ガス吸着法)、細孔容積(ガス吸着法)、外観、及び粉末X線回折分析における回折ピークを測定した。
[嵩密度]
HAp粉末10.0gを量りとり、50mLメスシリンダーに静かに入れ、HAp粉体の上面を圧密せずに注意深くならし、粉末体積(ゆるみ嵩体積)を測定し、次式により嵩密度を算出した。
嵩密度(g/mL)=粉体重量(g)/粉体体積(mL)
[タップ密度]
HAp粉末10.0gを量りとり、50mLメスシリンダーに入れ、タッピング装置を用いて、4cmの高さにて100/250秒の速度でタッピングを行って、粉末体積(タップ体積)を測定し、次式によりタップ密度を算出した。
タップ密度(g/mL)=粉体重量(g)/粉体体積(mL)
[平均粒子径・粒度分布]
ハイドロキシアパタイト粒子を水中に分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(MicrotracBEL社製「MICROTRAC MT3300EXII」)を用いて、粒度分布を測定し、D10、D50(平均粒子径)、及びD90を求めた。
[細孔径5000nm以下/5000nm以上のモード径及び細孔容積(水銀圧入法)]
水銀ポロシメーター(Quantachrome社製「poremaster60GT」)を用いて、以下の条件でモード径及び細孔容積の測定を行った。ハイドロキシアパタイト粒子0.1〜0.2gを測定用セルに封入し、水銀の接触角を140°、水銀の表面張力を480erg/cm2として、測定した圧力からモード径及び細孔容積を算出した。なお、解析範囲は、細孔径5000nm以下と5000nm以上の範囲に分けて行った。
[BET比表面積]
高速比表面積細孔分布測定装置(Quantachrome社製「NOVA−4000」)を用いて、以下の操作条件でBET比表面積の測定を行った。
前処理:試料1.0gを正確に量り、吸着管に封入し、105℃で3時間脱気した。
測定及び解析:液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、その吸着等温線を用いて多点BET法により比表面積(m2/g)を算出した。
[細孔容積(ガス吸着法)]
高速比表面積細孔分布測定装置(Quantachrome社製「NOVA−4000」)を用いて、以下の操作条件で、ガス吸着法による細孔容積の測定を行った。
前処理:試料1.0gを正確に量り、吸着管に封入し、105℃で3時間脱気した。
測定及び解析:液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、相対圧P/P0(P0:飽和蒸気圧)が0.995におけるガス吸着量から全細孔容積(cc/g)を算出した。
[平均細孔径(ガス吸着法)]
下記の式にて平均細孔径(ガス吸着法)を算出した。
平均細孔径(nm)=4V/S×1000
V:細孔容積(ガス吸着法)(cc/g)
S:BET比表面積(m2/g)
[外観]
電界放出形走査電子顕微鏡を用いて、500倍及び10000倍で、各HAp粉末の外観を観察した。
[粉末X線回折分析]
X線回折装置「SmartLab」(製造元:株式会社リガク)によって2θ=20〜50°の範囲で測定を行った(測定条件は、ターゲット:Cu、管電圧:40kV、管電流:30mA、走査範囲:20〜50°、スキャンスピード:40.000°/分、スキャンステップ:0.02°、走査モード:連続)。測定結果を、Rigaku Data Analysis Software PDXL version2.1.3.6を用いて解析し、各ピークの定性を行った。
2.金属基材表面でのHAp皮膜の形成及び物性評価
2−1.金属基材表面でのHAp皮膜の形成
φ25の厚み6mmのペレット状のTi−6Al−4V合金からなる金属基材の表面をブラスト処理により粗面化した後、大気圧下で以下のプラズマ溶射条件にて、各HAp粉末を用いて皮膜を得た。
2−2.HAp皮膜の物性評価
金属基材上に形成したHAp皮膜について、以下の方法で、接着強度、断面硬さ、厚み、表面粗さ、断面外観、及び色差を測定し、更にHAp皮膜形成時の成膜速度を求めた。なお、色差の測定は、実施例1〜3のHApで形成したHAp皮膜に対してのみ行った。
[HAp皮膜の接着強度]
ISO13779−4(2002)に規定されている試験方法に基づいて、HAp皮膜と金属基材との接着強度を測定した。
[HAp皮膜の断面硬さ]
ビッカース硬度計を用いて、試験力0.3kgにおけるHAp皮膜の断面硬さを測定した。
[HAp皮膜の厚み]
マイクロメーターを用いて、HAp皮膜の厚みを測定した。
[HAp皮膜の表面粗さ]
表面粗さ計を用いて、JIS B 0031(1994)に基づきハイドロキシアパタイト皮膜の表面粗さを測定した。
[断面外観]
走査型電子顕微鏡を用いて、500倍及び1000倍で、HAp皮膜の断面を観察した。
[HAp皮膜形成時の成膜速度]
前記HAp皮膜の厚み及びパス回数から下記の式に従って、HAp皮膜形成時の成膜速度を算出した。
成膜速度(μm/pass)=HAp皮膜の厚み(μm)/パス回数(pass)
[色差]
金属基材上に形成したHAp皮膜を日本電色工業社製測色色差計「ZE6000」を用いて、反射条件にて、L値、a値、b値、及びこれらの値から次式により、W(白色度)を計算した。
W=100−〔(100−L)2 +(a 2 +b 2 )〕 1/2
3.評価結果
結果を表2及び3、並びに図1〜9に示す。図1及び2にはHAp粉末の外観を顕微鏡観察した像、図3及び4にはHAp皮膜の断面外観を顕微鏡観察した像、図5〜7には水銀圧入法でHAp粉末の細孔径の分布を測定した結果、図8には実施例2のHAp粉末の粉末X線回折分析の結果、及び図9には比較例4のHAp粉末の粉末X線回折分析の結果
を示す。
実施例1〜3のHAp粉末を使用して形成したHAp皮膜は、接着強度及び断面硬さが比較例1、2及び3の場合に比して高く、図3に示す皮膜の断面外観の像から未溶融粒子が少ないことが確認された。特に接着強度について、実施例1〜3は、比較例1及び2と比べて5.9〜7.3MPa向上しており、また比較例3と比べると6.7〜8.0MPa向上しており、これは、単位面積(cm2)あたり59〜73kgf向上させることを示し、負荷耐性が飛躍的に向上したことで大きな負荷のかかる部位にも適用できると考えられる。加えて、ISO13779における接着強度の推奨値である15MPaを上回っていた。これはプラズマ溶射装置に供給されたHAp粉末が、高い割合でプラズマフレーム中心部に供給され、且つHAp粉末全体が均一に溶融したことにより、未溶融粉末が皮膜に残存することなく、高い強度を持つ皮膜を形成したことに起因していると考えられる。また、実施例1〜3のHAp粉末を使用して形成したHAp皮膜は、白色度が高く、色調の悪化も少ないことが確認された。これは熱分解がないことが起因していると考えられる。
更に、実施例1〜3のHAp粉末を使用した場合には、HAp皮膜形成時の成膜速度が高くなっていた。これは、実施例1〜3のHAp粉末では、プラズマフレームの中心部への供給が行いやすく、高い割合で溶射皮膜形成に使用されたことに起因すると考えられる。一方、比較例5及び比較例6のHAp粉末は、プラズマ溶射をすることができなかったが、これは、各HAp粉末がプラズマフレームの中心部への供給ができなかったことに起因すると考えられる。また、比較例4は、図9に示すとおり、ハイドロキシアパタイトが分解し、ハイドロキシアパタイト以外のα−TCPなどの類縁物質が混在しているため、強度が求められる生体組織に使用するプラズマ溶射用材料として不適である。

Claims (18)

  1. 水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるハイドロキシアパタイト粉末を含む、プラズマ溶射用材料。
  2. 前記モード径が550〜750nmである、請求項1に記載のプラズマ溶射用材料。
  3. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の嵩密度が0.6g/mL以上である、請求項1又は2に記載のプラズマ溶射用材料。
  4. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の嵩密度が0.7〜1g/mLである、請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  5. 前記ハイドロキシアパタイト粉末が、水銀圧入法によって測定される5000nm以上の細孔径を有している、請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  6. 前記ハイドロキシアパタイト粉末が、水銀圧入法によって測定される20000〜50000nmの細孔径を有している、請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  7. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下における細孔容積が0.01〜0.5cc/gである、請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  8. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される平均粒子径(累積度が50%となる粒子径)が30超〜350μmである、請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  9. 前記ハイドロキシアパタイト粉末の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される粒度分布が、累積度が10%となる粒子径(D10)が45〜75μm、累積度が50%となる粒子径(D50)が80〜120μm、且つ累積度が90%となる粒子径(D90)130〜170μmを満たす、請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  10. 基材上での皮膜形成に使用される、請求項1〜9のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料。
  11. 前記基材が金属基材である、請求項10に記載のプラズマ溶射用材料。
  12. 前記金属基材がチタン合金製である、請求項11に記載のプラズマ溶射用材料。
  13. 前記金属基材が人工関節である、請求項11又は12に記載のプラズマ溶射用材料。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のプラズマ溶射用材料をプラズマ溶射し、基材上にハイドロキシアパタイト皮膜を形成させる、ハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
  15. 前記基材が金属基材である、請求項14に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
  16. 前記金属基材がチタン合金製である、請求項15に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
  17. 前記金属基材が人工関節である、請求項15又は16に記載のハイドロキシアパタイト皮膜の形成方法。
  18. 水銀圧入法によって測定される細孔径5000nm以下におけるモード径が550〜1000nmであるハイドロキシアパタイト粉末の、プラズマ溶射用材料としての使用。
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