以下、添付図面を参照して、核医学イメージング装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、核医学イメージング装置がSPECT装置である場合を実施形態として説明する。
(実施形態)
まず、本実施形態に係るSPECT装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るSPECT装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、本実施形態に係るSPECT装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品の核種から放出されるガンマ線を計数した結果を収集する装置である。架台装置10は、図1に示すように、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器14と、カメラ駆動部16とを有する。また、検出器14のガンマ線の入射面(以下、検出器面)には、ガンマ線の入射方向を制限するコリメータ15が取り付けられる。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を上下方向、長手方向、短手方向等に移動することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。例えば、寝台駆動部13は、被検体Pの撮影部位の中心が、有効視野(FOV:Field Of View)の中心となる位置まで、寝台12を移動させる。
検出器14は、所謂、ガンマカメラであり、被検体Pから放出されたガンマ線の入射に応じて信号を出力する光子計数型の面検出器である。検出器14は、ガンマ線が入射するごとに、1パルスの電気信号を出力する複数の検出素子が2次元状に配列される。例えば、検出器14は、複数の検出素子が一列に配列された検出素子列が、被検体Pの体軸方向に沿って複数配列された構成となる。検出素子列の配列方向は、体軸方向に垂直な垂直方向となる。図2は、図1に示す検出器の一例を説明するための図である。
図2に示す一例では、検出器14は、シンチレータ141に、複数の光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)142が取り付けられることで、複数の検出素子が2次元状に配列された構成となっている。シンチレータ141は、ガンマ線をシンチレータ光に変換するNaIやBGO等であり、光電子増倍管142は、シンチレータ光を増倍して電気信号に変換する光センサである。なお、本実施形態は、光センサとして、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)を用いたシリコンフォトマルチプライアー(SiPM:Silicon Photomultiplier)が用いられる場合であっても良い。また、本実施形態は、検出器14が、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)系の半導体素子片にバイアス電極と信号電極とが取り付けられることで、複数の検出素子が2次元状に配列される構成となる場合であっても良い。
また、図2に示す一例では、検出器14の検出器面に、パラレルホールコリメータ151がコリメータ15として取り付けられている。パラレルホールコリメータ151は、シンチレータ141に直角に入射するガンマ線を、主に通過させるように構成されている。
或いは、例えば、頭部検査を行なう場合、検出器14の検出器面には、図3に例示するように、ファンビームコリメータ152がコリメータ15として取り付けられる。図3は、図1に示す検出器の別の一例を説明するための図である。なお、図3の左図は、垂直方向を、図面上の左右方向とした場合の検出器14の外観図(ファンビーム)であり、図3の右図は、体軸方向を、図面上の左右方向とした場合の検出器14の外観図(パラレルビーム)である。
ファンビームコリメータ152は、図3に示すように、例えば、関心領域である頭部がFOV内となり、頭部から放出されるガンマ線が検出器14にて高確率で検出されるように、検出器14に取り付けられる。図3に示す焦線(Focal Line)は、ファンビームコリメータ152の幾何学的構造により定まる線である。また、図3に示す回転軸は、後述するカメラ駆動部16により回転される検出器14の回転軸である。ファンビームコリメータ152は、シンチレータ141に入射するガンマ線の入射方向を、検出器14の垂直方向ではファンビーム状に制限し、検出器14の体軸方向ではシンチレータ141の配列面に対して直角となるように制限する。
なお、本実施形態では、図1に示すように、1検出器系のSPET装置を一例として説明するが、本実施形態で説明する核医学イメージング方法は、2検出器系のSPET装置や、3検出器系のSPECT装置であっても適用可能である。
図1に戻って、カメラ駆動部16は、後述するカメラ制御部24の制御により、検出器14を撮影口内に沿って回転駆動させる。これにより、検出器14は、被検体Pの周囲を回転して、例えば、360度にわたる複数の投影方向それぞれで、被検体Pから放出されるガンマ線の入射に応じて、信号を出力し、出力信号を後述する収集部25に送信する。なお、カメラ駆動部16は、各投影方向(各ビュー)において、所定の収集時間分、ガンマ線検出が行われるように、検出器14を回転させる。
コンソール装置20は、操作者によるSPECT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集されたデータを用いた再構成処理により、被検体Pに投与した核種(RI:Radio Isotope)の体内分布が描出された再構成画像(SPECT画像)を生成する。
具体的には、コンソール装置20は、図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、カメラ制御部24と、収集部25と、作成部26と、画像再構成部27と、データ記憶部28と、システム制御部29とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
入力部21は、SPECT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部29に転送する。
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部29による制御のもと、SPECT画像等を操作者に表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
寝台制御部23は、寝台駆動部13に対して制御信号を送信することで、寝台12の移動を制御する。また、カメラ制御部24は、カメラ駆動部16に対して制御信号を送信することで、検出器14の回転移動を制御する。
収集部25は、検出器14が出力した信号に基づいて、投影データを収集する。例えば、収集部25は、検出器14が出力した電気信号をデジタルデータに変換し、デジタルデータに基づいて、アンガー型位置計算処理により、ガンマ線の入射位置と、当該入射位置におけるガンマ線のエネルギー値を計算する。エネルギー値は、ある投影方向の収集時間で、検出器14から出力された電気信号の計数値(カウント数)に応じた値となる。収集部25は、各投影方向で、上記の処理を行って、入射位置とエネルギー値とを対応付けた投影データを収集する。
更に、収集部25は、収集した各投影方向の投影データに対して、オフセット補正、感度補正等の前処理を行なって補正済み投影データを生成し、生成した補正済み投影データをデータ記憶部28に格納する。例えば、収集部25は、前処理として、ローパスフィルタであるバターワースフィルタ(Butterworth filter)を用いて、ノイズ低減処理を行なう。また、例えば、収集部25は、ファンビームコリメータ152が使用されている場合、ファンビームの投影データをパラレルビームの投影データに変換する処理、所謂、ファンパラ変換を、前処理として行なう。
なお、被検体Pの体内で放出されたガンマ線は、体外で検出されるまでの間に体内で吸収されて減弱する。例えば、被検体PのSPECT検査の撮影部位と同一の撮影部位のX線CT画像が得られている場合、収集部25は、このX線CT画像を減弱マップとして用いて、投影データの減弱補正を、前処理として行なう。なお、本実施形態は、収集部25が架台装置10に設置される場合であっても良い。
作成部26は、逐次近似法による3次元再構成処理において位置分解能を補正するための応答関数を作成する。なお、本実施形態に係る作成部26が作成する応答関数については、後に詳述する。
画像再構成部27は、データ記憶部28から投影データ(例えば、360度方向分の補正済み投影データ)を読み出し、読み出した補正済み投影データを用いた逐次近似法により、再構成画像(SPECT画像)を生成する。そして、画像再構成部27は、再構成画像をデータ記憶部28に格納する。具体的には、画像再構成部27は、逐次近似法として、MLEM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法やOSEM(Ordered Subset MLEM)法を実行する。
MLEM法及びOSEM法は、実際に収集された投影データ(オリジナル投影データ)と、再構成画像を再度投影処理することで生成された推定投影データとが一致するように、検出確率を用いた補正処理を逐次的に繰り返して行なうことで、確率論的に最も確からしい放射性物質の集積分布を推定して、最尤推定に収束したSPECT画像を再構成する方法である。なお、OSEM法は、MLEM法による逐次過程の繰り返し回数を減らすために、複数投影方向の投影データ群を所定の数のサブセット数に分けて、個々のサブセットにて、最尤推定に収束したSPECT画像を再構成する方法である。言い換えると、サブセット数が1の場合のOSEM法は、MLEM法となる。
図4は、逐次近似法の一例を説明するための図である。例えば、逐次近似法では、オリジナル投影データ(図4の投影データを参照)から初期画像としてのSPECT画像が、フィルタ補正逆投影法(FBP法、FBP:filtered back projection)等の逆投影処理により再構成される。そして、逐次近似法では、図4に示すように、初期画像を投影処理することで、推定投影データ1が生成され、推定投影データ1とオリジナル投影データとの比から重みを決定し、重み付けした推定投影データ1を逆投影処理することで再構成データである画像2が再構成される。そして、逐次近似法では、図4に示すように、画像2を投影処理することで、推定投影データ2が生成され、推定投影データ2とオリジナル投影データとの比から重みを決定し、重み付けした推定投影データ2を逆投影処理することで画像2が再構成される。かかる処理が、例えば、逐次近似回数として設定された「N」回繰り返され、図4に示すように、オリジナル投影データとの間で対応する画素ごとの画素値の比率が「1」に略収束した推定投影データNが生成される。そして、図4に示すように、推定投影データNを逆投影処理した画像Nが、確率論的に最も確からしいSPECT画像として再構成される。なお、繰り返し回数や、サブセット数等は、再構成条件として、操作者から入力部21を介して設定される。
システム制御部29は、架台装置10及びコンソール装置20の動作を制御することによって、SPECT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部29は、寝台制御部23及びカメラ制御部24を制御することで、ガンマ線検出データの収集処理を架台装置10に実行させる。また、システム制御部29は、収集部25、作成部26及び画像再構成部27を制御することで、コンソール装置20における画像処理全体を制御する。また、システム制御部29は、データ記憶部28が記憶するデータを、表示部22に表示するように制御する。
以上、本実施形態に係るSPECT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るSPECT装置は、逐次近似法による3次元再構成処理において、例えば、コリメータ開口幅や、線源からコリメータ面までの距離等の物理的要因により発生する位置分解能の低下を、応答関数を用いて補正するOSEM法を実行する。かかる再構成方法を、以下、コリメータ開口補正OSEM再構成法と記載する。例えば、画像再構成部27は、コリメータ開口補正OSEM再構成法を、以下の式(1)により行なう。
ここで、式(1)の「j」は、再構成画像の座標を示し、「m」は、投影方向数を示し、「i:1≦i≦n」は、検出器14上の検出素子番号(画素番号)を示す。また、式(1)の右辺において、下付きの「j」と上付きの「k」とが添えられた「λ」は、k番目の繰り返し回数の再構成画像の画素「j」におけるRI濃度を示す画素値を示す。また、式(1)の「rx:−a≦rx≦a」は、FOVにおける体軸方向の範囲を示し、「ry:−a≦ry≦a」は、FOVにおける垂直方向の範囲を示しめす。
また、例えば、式(1)の「y(i+rx+ry)」は、検出素子番号「i+rx+ry」での推定投影データを示し、式(1)の「C(i+rx+ry)」は、再構成画像の座標「j」から放出されたガンマ線光子が検出素子番号「i+rx+ry」に到達する割合を示す検出確率である。
そして、例えば、式(1)の「h(i+rx+ry)」は、検出素子番号「i+rx+ry」における位置分解能を補正するための応答関数「h」の値である。画像再構成部27は、k番目の繰り返し回数で得た画像から、式(1)を用いて、k+1番目の画像を得る。
ここで、従来のコリメータ開口補正OSEM再構成法では、パラレルホールコリメータを前提としており、体軸方向と、体軸方向に垂直な垂直方向とで、応答関数が同じである。図5は、従来技術の一例を説明するための図である。
例えば、従来では、図5に示すように、体軸方向及び垂直方向の双方で、位置分解能低下によるボケの2次元分布を、同じ振幅及び半値幅となるガウス関数で表わされる応答関数「h」として定義して、ボケの3次元分布を作成していた。例えば、使用しているファンビームコリメータ151の特性が低エネルギー高分解能(LEHR:Low Energy High resolution)型のコリメータの特性に近いなら、LEHR型コリメータの応答関数の定義式を体軸方向及び垂直方向の双方で使用していた。
かかる前提は、体軸方向及び垂直方向それぞれでガンマ線の入射方向をシンチレータ141に対して直角に制限するパラレルホールコリメータ151を使用する場合であれば、有効である。
しかし、ファンビームコリメータ152を使用する場合、上述したように、体軸方向と垂直方向とで制限される入射方向が異なるため、実際には、体軸方向と垂直方向とで位置分解能の低下の程度(ボケの程度)が異なる。すなわち、ファンビームコリメータ152は、体軸方向ではパラレルビーム、垂直方向ではファンビームという幾何学的構造(geometry)であるため、パラレルホールコリメータ151と比較して深さ方向の分解能の低下が少ないという特性を有するが、体軸方向の応答関数と、垂直方向の応答関数とは、同一とはならない。しかし、従来では、ファンビームコリメータ152を用いる場合であっても、図4に示す応答関数を用いている。このため、従来では、ファンビームコリメータ152を用いる場合、上記の前提に基づくコリメータ開口補正OSEM再構成法を行なっても位置分解能の補正が正確でない。
また、核医学イメージングでは、スライス方向に加算することにより、スライス方向の投影データのカウントが増え、S/Nが向上することが知られている。特に、頭部検査の場合は、スライス厚を「2〜3」とすることにより、投影データのカウントが増えてS/Nが向上するため、安定した画像が得られる。しかし、パラレルホールコリメータ151を使用する場合でも、例えば、再構成条件として設定された体軸方向のスライス厚が、検出器の体軸方向における1列分の投影データのピクセル実長と異なると、上記の前提に基づくコリメータ開口補正OSEM再構成法では、コリメータによる位置分解能の補正が正確に行えない。
このため、従来の3次元コリメータ開口補正OSEM再構成法では、スライス厚を「1」として計算していた。一方、FBP法や、通常のMLEM法やOSEM法では、スライス厚の制約がない。しかし、上述したように、核医学イメージングでは、コリメータ開口補正法を組み込んだ3次元再構成処理においても、再構成画像のS/Nを向上させるために、スライス厚を2以上で処理できることが要望されている。
そこで、本実施形態に係るSPECT装置は、位置分解能の精密な補正を行なうため、以下に説明する処理を行なう。まず、作成部26は、位置分解能を補正するための応答関数を、被検体Pの体軸方向及び該体軸方向に垂直な垂直方向それぞれで独立して別々に定義し、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを合成した2次元応答関数を作成する。そして、画像再構成部27は、作成部26が作成した2次元応答関数を用いた逐次近似法(MLEM法やOSEM法)により、再構成画像を生成する。
具体的には、作成部26は、コリメータ15の幾何学的構造に応じて、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを別々に定義して、2次元応答関数を作成する。例えば、作成部26は、ファンビームコリメータ152の幾何学的構造に応じて、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを定義して、2次元応答関数を作成する。
或いは、作成部26は、再構成条件として設定された体軸方向のスライス厚に応じて、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを定義して、2次元応答関数を作成する。作成部26は、再構成条件として設定された体軸方向のスライス厚に応じて、体軸と垂直方向の応答関数と、垂直方向と同じであるがスライス厚分の距離を考慮した体軸方向の応答関数を定義して、2次元応答関数を作成する。例えば、設定されるスライス厚は、検出器14の2列以上に該当する体軸方向の厚さである。また、かかる場合のコリメータ15は、パラレルホールコリメータ151であっても、ファンビームコリメータ152であっても良い。ファンビームでスライス厚を考慮する場合、作成部26は、ファンビームを考慮した体軸とパラレルビームを考慮した垂直方向の応答関数に対して、更に、スライス厚分の距離を考慮した体軸方向の応答関数を作成する。そして、画像再構成部27は、スライス厚に該当する検出器14の列数分の投影データを加算した加算投影データから、2次元応答関数を用いた逐次近似法により、再構成画像を生成する。
或いは、例えば、作成部26は、コリメータ15の幾何学的構造と、再構成条件として設定された体軸方向のスライス厚とに応じて、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを定義して、2次元応答関数を作成する。そして、画像再構成部27は、スライス厚に該当する検出器14の列数分の投影データを加算した加算投影データから、2次元応答関数を用いた逐次近似法により、再構成画像を生成する。かかる場合、例えば、設定されるスライス厚は、検出器14の2列以上に該当する体軸方向の厚さである。また、かかる場合のコリメータ15は、パラレルホールコリメータ151であっても、ファンビームコリメータ152であっても良い。
以下、上述した処理について、図6〜図9等を用いて具体的に説明する。図6及び図7は、コリメータの幾何学的構造に応じて作成される2次元応答関数の一例を説明するための図である。
例えば、頭部検査用に、ファンビームコリメータ152が検出器面に取り付けられているとする。また、ファンビームコリメータ152の隔壁の傾き等の幾何学的構造情報が、例えば、データ記憶部28に予め格納されているとする。作成部26は、ファンビームコリメータ152の幾何学的構造情報を、データ記憶部28から取得し、図6の上図に示すように、体軸方向の応答関数「g(L)」と、垂直方向の応答関数「f(L)」と定義する。なお、「L」は、直交座標系の原点から、2次元平面状の点までの距離を示す。図6に示すように、作成部26は、ファンビームコリメータ152の幾何学的構造情報に応じて、補正係数の分布が異なる体軸方向の応答関数「g(L)」と、垂直方向の応答関数「f(L)」とを別々に定義する。
そして、作成部26は、例えば、以下に示す式(2)を用いて、ファンビームコリメータ152用の2次元応答関数「h(θ,L)」を補間にて作成する。
式(2)は、角度「θ」の位置にある2次元平面状の点の補正係数を、体軸方向の応答関数「g(L)」と垂直方向の応答関数「f(L)」とを用いた補間処理により計算することを示している。これにより、作成部26は、図6の下図及び図7に示すように、垂直方向より、体軸方向に広く分布している2次元応答関数を作成する。ここで、作成部26は、図7に示すように、3次元再構成空間にあるFOV内の各点から放出されたガンマ線が検出器面の複数の検出素子それぞれに入射した場合に対応する2次元応答関数を作成する。作成部26は、図7に示すように、検出器面に近い程、分布が狭く、検出器面から遠い程、分布が広い2次元応答関数を作成する。なお、上記では、体軸方向の応答関数と、体軸に垂直な方向の応答関数とが任意に定義されていて、両者から2次元応答関数を補間して求める方法について説明した。ただし、2次元応答関数の作成方法そのものは、体軸方向と体軸に垂直な方向の分布が表現できるのであれば、上記の補間式を用いなくても良い。例えば、作成部26は、2次元正規分布で表現できるのであれば、2次元正規分布の関数式を用いて、2次元応答関数を作成しても良い。
そして、画像再構成部27は、上記の処理により作成されたファンビームコリメータ152に対応した2次元応答関数を用いて、通常のOSEM法による3次元再構成を行なって、再構成画像を生成する。上記の処理により、ファンビームコリメータ152が用いられる場合にも対応して、位置分解能の精密な補正を行なうことができる。
なお、パラレルホールコリメータ151が検出器面に取り付けられている場合、作成部26は、例えば、従来と同様に、パラレルホールコリメータ151の幾何学的構造情報に応じて、補正係数の分布が同じ体軸方向の応答関数「g(L)」と、垂直方向の応答関数「f(L)」とを定義して、2次元応答関数を作成する。
次に、図8及び図9を用いて、スライス厚が「2」以上に設定された場合の処理の一例について説明する。図8は、スライス厚に応じて作成される2次元応答関数の一例を説明するための図であり、図9は、スライス厚に応じた投影データの加算縮小処理の一例を説明するための図である。なお、図8では、図面上、縦方向を体軸方向とし、横方向を垂直方向として示している。
図8の(A)は、パラレルホールコリメータ151を使用している場合に、スライス厚が「3」に設定された場合の作成部26の処理を例示している。作成部26は、例えば、図8の(A)の左図に示す略円形の2次元応答関数を、体軸方向にスライス厚数分縮小することで、すなわち、「体軸方向に三分の一」縮小することで、図8の(A)の左図に示すスライス厚「3」用の2次元応答関数を作成する。
また、図8の(B)は、ファンビームコリメータ152を使用している場合に、スライス厚が「3」に設定された場合の作成部26の処理を例示している。作成部26は、例えば、図8の(B)の左図に示す「体軸方向の分布が広がっている2次元応答関数」を、「体軸方向に三分の一」縮小することで、図8の(B)の左図に示すスライス厚「3」用の2次元応答関数を作成する。図8の(A)及び図8の(B)を用いて説明した処理は、スライス厚が2以上の場合に、スライス厚分、体軸方向の応答関数のサンプリング間隔を大きくする処理と同様の処理となる。
そして、画像再構成部27は、図9に示すように、各投影方向において、「スライス厚:1」の投影データを3つずつ加算し、更に、「スライス厚:1」となるように、体軸方向で三分の一に縮小した加算投影データを生成する。
なお、画像再構成部27は、3次元再構成空間において、FOVの境界に位置する投影データについては、再構成画像にアーチファクトが出現することが回避するため、加算対象の範囲をFOV外にまで広げて、投影データの加算縮小処理を行なう(図7の点線矢印を参照)。また、スライス厚分の加算縮小を行なう場合、図9の下図に示すように、FOVの範囲が変更されるので、画像再構成部27は、体軸方向に加算縮小した場合のFOVの範囲を計算し、計算後のFOVにおいて3次元コリメータ開口補正OSEM再構成法を行なう。
そして、画像再構成部27は、図8の(A)の右図に示す2次元応答関数や、図8の(B)の右図に示す2次元応答関数を用いたOSEM法により、加算投影データから再構成画像を生成する。かかる場合、画像再構成部27は、従来と同様に、「スライス厚:1」と同じ3次元コリメータ開口補正OSEM再構成法を行なう。上記の処理により、例えば、パラレルホールコリメータ151を用いてスライス厚が「3」とされる場合だけでなく、ファンビームコリメータ152を用いてスライス厚が「3」とされる場合でも、位置分解能の精密な補正を行なうことができる。
ここで、作成部26は、上述した様々な応答関数作成処理において、最終的に、トータルカウントが「1」となるように、正規化した2次元応答関数を作成して、画像再構成部27に通知する。なお、上記の一例では、体軸方向の応答関数と、垂直方向の応答関数とをガウス分布に類似した関数を用いて定義する場合について説明したが、本実施形態で適用可能な関数は、位置分解能の補正を行なえるのであれば、例えば、1次関数、2次関数等、任意の関数を用いることが可能である。また、本実施形態は、例えば、体軸方向と垂直方向とで同じ分布となる2次元ガウス関数を定義し、コリメータ15の幾何学的構造やスライス厚に応じて、体軸方向と垂直方向とで振幅や半値幅を変更することで、2次元応答関数を作成する場合であっても良い。
次に、図10を用いて、本実施形態に係るSPECT装置が行なう再構成処理について説明する。図10は、本実施形態に係るSPECT装置が行なう再構成処理の一例を示すフローチャートである。なお、図10では、検出器14から再構成可能な投影数の信号を、収集部25が受信した後の処理について説明する。
図10に示すように、収集部25は、投影データを収集する(ステップS101)。この際、収集部25は、前処理として、必要に応じてファンパラ変換を行ない、また、バターワースフィルタ等のフィルタ処理を行なって、投影数分の投影データを生成収集する。
そして、システム制御部29は、操作者から受け付けた情報や、SPECT装置のシステム構成等から、画像再構成処理における処理条件を設定する(ステップS102)。例えば、システム制御部29は、繰り返し回数や、サブセット数、スライス厚等の再構成条件や、有効視野(FOV)に関する情報を設定する。なお、サブセット数が「1」である場合、以下に説明する再構成処理は、MLEM法により行われることになる。
そして、画像再構成部27は、スライス厚に応じて、スライス厚分の投影データを加算縮小して加算投影データを生成する(ステップS103)。なお、スライス厚が「1」の場合、ステップS103の処理は、省略される。また、ステップS103の処理を行なう場合、画像再構成部27は、有効視野の情報と、スライス厚とに応じて、再構成領域を再計算して、加算対象の範囲をFOV外にまで広げる。
そして、作成部26は、コリメータ15の幾何学的構造や、スライス厚に応じて、体軸方向の1次元応答関数と垂直方向の1次元応答関数を定義して、2次元応答関数を作成する(ステップS104)。
そして、画像再構成部27は、オリジナル投影データから、初期画像を設定し(ステップS105)、投影処理により推定投影データを生成し(ステップS106)、推定投影データを逆投影する(ステップS107)。ステップS106及びステップS107の処理は、「投影数/サブセット数」分、サブセット数分、及び、繰り返し回数分、処理が繰り返される。そして、画像再構成部27は、再構成画像を生成する(ステップS108)。
例えば、投影方向が「1〜9」であり、繰り返し回数が「3」であり、サブセット数が「3」であるとする。かかる場合、画像再構成部27は、「1、4、7」の投影方向の投影データを用いて、ステップS106及びステップS107の処理を3回繰り返して、3投影数分の画像を再構成する。また、画像再構成部27は、「2、5、8」の投影方向の投影データを用いて、ステップS106及びステップS107の処理を3回繰り返して、3投影数分の画像を再構成する。そして、画像再構成部27は、「3、6、9」の投影方向の投影データを用いて、ステップS106及びステップS107の処理を3回繰り返して、3投影数分の画像を再構成する。そして、画像再構成部27は、これら3つの画像を合成することで、再構成画像を生成する。
そして、表示部22は、システム制御部29の制御により、再構成画像を表示し(ステップS109)、処理を終了する。
上述したように、本実施形態では、コリメータ15の幾何学的構造や、スライス厚に応じて、体軸方向の応答関数と垂直方向の応答関数とを定義して、2次元応答関数を作成し、3次元コリメータ開口補正OSEM再構成法を行なう。これにより、本実施形態では、位置分解能の精密な補正を行なうことが可能になる。
また、本実施形態では、従来の3次元のコリメータ開口補正OSEM再構成法のアルゴリズムを大幅に変更することなく、コリメータ15の幾何学的構造や、スライス厚に応じた3次元再構成処理を行なうことが可能になる。また、本実施形態では、従来の3次元のコリメータ開口補正OSEM再構成法のように、スライス厚の制約がなくなるので、例えば、短時間でのデータ収集が要求される場合であっても、スライス厚を2以上として、S/Nが向上した再構成画像を得ることができる。また、本実施形態では、スライス厚を指定できることにより、従来法で同じ範囲の再構成を行った場合より、再構成スライス数が減らせるので、処理時間の短縮を行なうことができる。
なお、上記の実施形態で説明した核医学イメージング方法は、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPET−CT装置においても適用可能である。また、上記の実施形態で説明した2次元応答関数の作成方法は、PET装置や、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置においても応用可能である。
例えば、上記の実施形態で説明した核医学イメージング方法で作成される2次元応答関数は、PET装置において被検体Pから放出されるガンマ線を略同時に計測した検出素子を結ぶLOR(Line of Response)に適用することが可能である。
ここで、PET検査では、陽電子放出核種を含む薬剤が被検体Pに投与され、陽電子放出核種から放出された陽電子が周囲の電子と反応して対消滅し、対消滅位置から略反対方向に放出された一対のガンマ線が、被検体Pから放出される。PET装置は、例えば、複数の検出器モジュールがリング状に配列されている検出器を有し、各検出素子(各シンチレータ結晶)にガンマ線が入射した時間から、2つのガンマ線を略同時に計測した検出素子を特定することで、LORの特定を行なう。PET装置の検出器には、3次元FOV内で多数のLORを特定するために、通常、コリメータが取り付けられていない。また、PET検出器の各シンチレータでガンマ線が検知される確率は、ガンマ線の入射方向(入射角度)に応じて異なり、この確率は、点広がり関数(PSF:Point Spread Function)として定義することができる。
そこで、PET装置やPET−CT装置では、作成部は、検出器におけるガンマ線の入射位置に応じて、体軸方向の点広がり関数と、垂直方向の点広がり関数とを別々に定義し、体軸方向の点広がり関数と垂直方向の点広がり関数とを合成した2次元点広がり関数を、2次元応答関数として作成する。
例えば、作成部は、特定のLORに関してガンマ線を検知するシンチレータのクリスタル構造による点広がり関数(PSF:Point Spread Function)について、体軸に垂直な応答関数としての垂直方向の点広がり関数(X)と、体軸方向の応答関数としての点広がり関数(Y)とを別々に定義し、これら2つの関数から合成した2次元の点広がり関数を作成する。作成部は、PET検出器の幾何学的構造から、3次元FOV内においてPET検出器で特定可能な複数のLORそれぞれについて、垂直方向のSPFと体軸方向のSPFとを定義し、これらSPFを合成して2次元SPFを作成する。かかる2次元SPFにより、シンチレータのクリスタル構造による感度を簡易的な方法で近似することができる。また、PET装置やPET−CT装置は、この2次元SPFを用いたOSEM法を行なうことで、シンチレータのクリスタル構造による感度を補正したPET画像を再構成することができる。
更に、作成部は、再構成条件として設定された体軸方向のスライス厚に応じて、体軸方向の点広がり関数と垂直方向の点広がり関数とを定義して、2次元応答関数を作成しても良い。
例えば、作成部は、複数のLORをまとめた1つのLORにより再構成を行なう際、体軸方向のスライス厚に応じて、垂直方向の点広がり関数(X)と、スライス厚分の距離を考慮した体軸方向の応答関数としての点広がり関数(Y)と定義し、これら2つの関数を合成することで、複数のLORをマージした時に適用可能な2次元SPFを作成する。
例えば、体軸方向にスライス厚「3」が設定された場合、作成部は、スライス厚「1」で作成した2次元SPFを体軸方向に三分の一に縮小することで、スライス厚「3」用の2次元SPFを作成する。かかる2次元の点SPFにより、複数のLORをまとめた1つのLORにより再構成を行なう際の感度を簡易的な方法で近似することができる。そして、PET装置やPET−CT装置は、複数のLORをまとめた1つのLORから、この2次元SPFを用いたOSEM法を行なうことで、S/Nが向上したPET画像を再構成することができる。
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した核医学イメージング方法は、予め用意された核医学イメージングプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この核医学イメージングプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この核医学イメージングプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、位置分解能の精密な補正を行なうことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。