JP6516403B2 - 摺動部材およびすべり軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動面にて相手軸が摺動する摺動部材およびすべり軸受に関する。
ビスマスの結晶方位がランダム配向となっているオーバーレイを備えた摺動部材が知られている(特許文献1、参照)。特許文献1において、ビスマスの結晶方位をランダム配向とすることにより、耐疲労性の向上を図っている。
特許第3916805号
しかしながら、オーバーレイを形成する際に結晶方位を制御することは技術的に困難であり、めっき浴の温度管理や濃度管理等が煩雑となるという問題があった。
本発明は前記課題にかんがみてなされたもので、耐疲労性に優れ、容易に製造できる摺動部材およびすべり軸受を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明の摺動部材およびすべり軸受は、裏金と、裏金上に形成されたライニングと、ライニング上において1μm以上かつ30μm以下の厚みだけ形成されたビスマスのオーバーレイと、を備える。また、オーバーレイにおける炭素濃度は、0.015wt%以上、かつ、0.100wt%以下である。このようにオーバーレイにおける炭素濃度を0.015wt%以上とすることにより、ビスマスのめっき膜を炭素によって分散強化することができ、ビスマスのめっき膜の耐疲労性を向上させることができる。また、ビスマスの結晶方位をランダム配向させなくてもめっき膜の耐疲労性を向上させることができため、オーバーレイを容易に形成できる。
ここで、オーバーレイにおける炭素濃度が大きくなるほどオーバーレイの耐疲労性が向上することが判明している。特に、オーバーレイにおける炭素濃度が0.020wt%以下の範囲において、炭素濃度が大きくなるほどオーバーレイの耐疲労性が飛躍的に向上し、オーバーレイにおける炭素濃度を0.015wt%以上とすることによりオーバーレイの耐疲労性を確実に向上させることができる。オーバーレイにおける炭素濃度が0.020wt%よりも大きい範囲においても、炭素濃度が大きくなるほどオーバーレイの耐疲労性が向上するため、当該範囲内においても炭素濃度が大きくなるほど望ましい。ただし、オーバーレイにおける炭素濃度が0.100wt%よりも大きくなると、オーバーレイが脆くなり、なじみ性が低下するため、オーバーレイにおける炭素濃度が0.100wt%以下となるようにオーバーレイを成膜することが望ましい。また、オーバーレイに含まれる炭素は、例えばオーバーレイの成膜中(例えばめっき中)にオーバーレイに混入されてもよいし、オーバーレイの成膜後にオーバーレイに拡散されてもよい。例えば、スパッタリングやコールドスプレーによってオーバーレイを成膜してもよい。
なお、オーバーレイの厚みは、摺動する相手軸の硬さや作用する荷重や耐用時間等に応じて1μm以上かつ30μm以下の範囲で設定されればよい。オーバーレイの厚みを1μm以上とすることにより、オーバーレイがライニングから剥離することを防止できる。また、オーバーレイの厚みを30μm以下とすることにより、オーバーレイが過剰に厚くなりすぎてコストを増大させることを防止できる。ビスマスで形成されたオーバーレイは軟らかいため、裏金とライニングとは摺動部材およびすべり軸受の強度を確保するために必要となる。すなわち、裏金とライニングとは、オーバーレイよりも高強度の材料で形成されればよく、オーバーレイよりも高強度である限り材料裏金とライニングの材料は特に限定されない。
摺動部材の斜視図である。 (2A)は裏金の表面のプロフィール、(2B)は裏金の表面の写真である。 (3A)は疲労試験の説明図、(3B)はめっきの説明図である。 オーバーレイにおける炭素濃度と疲労損傷面積率のグラフである。 (5A)は比較例にかかる裏金の表面のプロフィール、(5B)は比較例にかかる裏金の表面の写真である。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態:
(1−1)摺動部材の構成:
(1−2)摺動部材の製造方法:
(2)実験結果:
(3)他の実施形態:
(1)第1実施形態:
(1−1)摺動部材の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる摺動部材1の斜視図である。摺動部材1は、裏金10とライニング11とオーバーレイ12とを含む。摺動部材1は、中空状の円筒を直径方向に2等分した半割形状の金属部材であり、断面が半円弧状となっている。2個の摺動部材1を円筒状になるように組み合わせることにより、すべり軸受Aが形成される。すべり軸受Aは内部の中空部分にて円柱状の相手軸2(ハッチング)を軸受けする。本実施形態の相手軸2は、エンジンのクランクシャフトである。すべり軸受Aの内径は、相手軸2の外径よりもわずかに大きく形成されている。相手軸2の外周面と、すべり軸受Aの内周面との間に形成される隙間に潤滑油(エンジンオイル)が供給される。クランクシャフトとしての相手軸2が回転すると、相手軸2がコンロッドから往復荷重を作用させながらすべり軸受Aの内周面上を摺動する。
摺動部材1は、曲率中心から遠い順に、裏金10とライニング11とオーバーレイ12とが順に積層された構造を有する。従って、裏金10が摺動部材1の最外層を構成し、オーバーレイ12が摺動部材1の最内層を構成する。裏金10とライニング11とオーバーレイ12とは、それぞれ円周方向において一定の厚みを有している。本実施形態において、裏金10の厚みは1.3mmであり、ライニング11の厚みは0.2mmであり、オーバーレイ12の厚みは10μmである。また、オーバーレイ12の曲率中心側の表面の半径(摺動部材1の内径)40mmである。以下、内側とは摺動部材1の曲率中心側を意味し、外側とは摺動部材1の曲率中心と反対側を意味することとする。オーバーレイ12の内側の表面は、相手軸2の摺動面を構成する。
裏金10は、Cを0.15wt%含有し、Mnを0.06wt%含有し、残部がFeからなる鋼で形成されている。裏金10の外側の表面の粗さは、Raが0.09μmであり、Rzが0.52μmであり、Rmaxが0.72μmであった。図2Aは、裏金10の外側の表面のプロフィールである。同図において、横軸は、裏金10の外側の表面上におけるすべり軸受Aの軸方向の位置X(図1)を示し、縦軸は当該表面に直交する方向の高さZ(図1)を示す。なお、裏金10の外側の表面のプロフィール(粗さ)は、表面粗さ測定機(小坂研究所製Surfcorder SE−3400)によって計測した。
図2Bは、裏金10の外側の表面の写真である。同図に示すように、裏金10の外側の表面は、裏金10の加工(圧延、プレス加工等)における加工後の平滑形状を維持しており、当該加工におけるわずかな傷のみを有している。また、裏金10の外側の表面に、鋼の素地以外の成分の析出も見られない。なお、図2Bの写真は、電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−2400)によって撮影した。
ライニング11は、裏金10の内側に積層された層であり、Snを5wt%含有し、Biを7wt%含有し、残部がCuと不可避不純物とからなる。ライニング11の不可避不純物はMg,Ti,B,Pb,Cr等であり、精錬もしくはスクラップにおいて混入する不純物である。不可避不純物の含有量は、全体で1.0wt%以下である。なお、ライニング11におけるSnの含有量を2〜8wt%の範囲で調整してもよいし、ライニング11におけるBiの含有量を3〜10wt%の範囲で調整してもよい。
オーバーレイ12は、ライニング11の内側の表面上に積層された層である。オーバーレイ12は、BiとCと不可避不純物とからなる。オーバーレイ12の不可避不純物はSn,Fe,Pb等である。オーバーレイ12における炭素濃度は、0.037wt%である。不可避不純物はめっき浴等からオーバーレイ12に混入する。オーバーレイ12の不可避不純物の含有量は、全体で1.0wt%以下である。
なお、摺動部材1の各層を構成する元素の質量は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製ICPS−8100)によって計測した。ただし、オーバーレイ12における炭素濃度は、高周波誘導加熱炉燃焼赤外線吸収法(JISG1211鉄鋼用炭素量分析方法)によって計測した。
以上説明した摺動部材1と同様のオーバーレイ12を有する疲労試験片(コンロッドR)を作成し、その疲労損傷面積率を計測したところ、疲労損傷面積率は2.8%と良好であった。疲労損傷面積率は、以下の手順で計測した。まず、図3Aに示すように、長さ方向の両端に円柱状の貫通穴が形成されたコンロッドRを用意し、一端の貫通穴にて試験軸H(ハッチング)を軸受けさせた。なお、試験軸Hを軸受けするコンロッドRの貫通穴の内周面に摺動部材1と同様のオーバーレイ12(灰色)を形成した。試験軸Hの軸方向におけるコンロッドRの両外側において試験軸Hを軸受けし、回転数が3000回転/分となるように試験軸Hを回転させた。試験軸Hとは反対側のコンロッドRの端部を、コンロッドRの長さ方向に往復移動する移動体Fに連結し、当該移動体Fの往復荷重を57MPaとした。また、コンロッドRと試験軸Hとの間には、120℃のエンジンオイルを給油した。
以上の状態を50時間にわたって継続することにより、オーバーレイ12の疲労試験を行った。そして、疲労試験後において、オーバーレイ12の内側の表面(摺動面)を、当該表面に直交する直線上の位置から当該直線を主光軸とするように撮影し、当該撮影された画像である評価画像を得た。そして、評価画像に映し出されたオーバーレイ12の表面のうち損傷した部分をビノキュラー(拡大鏡)で観察して特定し、当該損傷した部分の面積である損傷部面積を、評価画像に映し出されたオーバーレイ12の表面全体の面積で除算した値の百分率を疲労損傷面積率として計測した。
(1−2)摺動部材の製造方法:
まず、裏金10と同じ厚みを有する低炭素鋼の平面板を用意した。
次に、低炭素鋼で形成された平面板上に、ライニング11を構成する材料の粉末を散布した。具体的に、上述したライニング11における各成分の質量比となるように、Cuの粉末とBiの粉末とSnの粉末とを低炭素鋼の平面板上に散布した。ライニング11における各成分の質量比が満足できればよく、Cu−Bi,Cu−Sn等の合金粉末を低炭素鋼の平面板上に散布してもよい。
次に、低炭素鋼の平面板と、当該平面板上に散布した粉末とを焼結した。焼結温度を700〜1000℃に制御し、不活性雰囲気中で焼結した。焼結後、冷却した。
冷却が完了すると、低炭素鋼の平面板上にCu合金層が形成される。
次に、中空状の円筒を直径方向に2等分した形状となるように、Cu合金層が形成された低炭素鋼をプレス加工した。
次に、低炭素鋼とCu合金層の表面を切削加工した。このとき、低炭素鋼とCu合金層の厚みが裏金10とライニング11の厚みと同一となり、かつ、低炭素鋼の外径が摺動部材1の外径と一致するように、切削量を制御した。これにより、切削加工後の低炭素鋼とCu合金層によって裏金10とライニング11が形成できる。切削加工は、例えば焼結ダイヤモンドで形成された切削工具材をセットした旋盤によって行った。
次に、ライニング11の表面上にBiを電気めっきによって10μmの厚みだけ成膜することにより、オーバーレイ12を形成した。電気めっきの手順は以下のとおりとした。まず、ライニング11の内側の表面を水洗した。さらに、ライニング11の表面を酸洗することにより、ライニング11の表面から不要な酸化物を除去した。その後、ライニング11の表面を、再度、水洗した。なお、電気めっきを行うにあたり、裏金10とライニング11にマスキングを行わない。
以上の前処理が完了すると、図3Bに示すように、ライニング11の表面が金属ビスマスで形成されたアノード電極Nに対向するように、摺動部材1を収容するラック(不図示)をめっき浴Bに浸漬させた。摺動部材1をラックに収容させることにより、当該ラックに備えられた接点Cを裏金10の外側の表面に接触させた。そして、ライニング11がカソード電極となるように、アノード電極Nと接点Cとの間に電圧を印加した。具体的に、アノード電極Nに供給される直流電流の電流密度が2.0A/dm2となるように、アノード電極NとラックDとの間に直流電圧を印加した。また、めっき浴Bの浴温度を40℃とし、めっき時間を20分とした。
めっき浴Bは、第1塩としての硝酸ビスマス五水和物[Bi(NO33・5H2O]と、第2塩としての塩化カリウム[KCl]とEDTA二ナトリウム[Na2EDTA]と、添加剤としてのゼラチンとを水に溶解させることにより用意した。なお、EDTAの示性式は(HOOCCH22NCH2CH2N(CH2COOH)2である。めっき浴Bにおける硝酸ビスマス五水和物の濃度は、0.20[mol/L]であり、EDTA二ナトリウムの濃度は0.25[mol/L]であり、塩化カリウムの濃度は1.00[mol/L]であり、ゼラチンの濃度は3.00[g/L]であった。また、めっき浴BのpHは9となった。
硝酸ビスマス五水和物に含まれるビスマスは一時的にビスマスイオン[Bi3+]となるものの、その後、EDTA二ナトリウムに含まれるEDTAと一対一で結合し、錯体を形成する。金属ビスマスで形成されたアノード電極Nは、電子を放出するとビスマスイオンを生成するが、当該ビスマスイオンはEDTAと錯体を形成する。以上のようにして形成されたビスマスとEDTAの錯体は、カソード電極としてのライニング11の表面にて電子を受け取ると分解し、ビスマスがライニング11の表面に析出する。ビスマスをライニング11の表面に析出させることにより、オーバーレイ12を成膜できる。
以上のようにして、オーバーレイ12の成膜が完了した後に、水洗と乾燥を行うことにより、摺動部材1を完成させた。さらに2個の摺動部材1を円筒状に組み合わせることにより、すべり軸受Aを形成した。ビスマスで形成されたオーバーレイ12は、ライニング11等よりも軟らかいため、摺動部材1のなじみ性や耐焼き付き性を良好とすることができる。
(2)実験結果:
それぞれ組成が異なるめっき浴B(実施例1〜2、比較例1〜2)にてオーバーレイ12を形成し、オーバーレイ12の比較する実験を行った。実施例1のめっき浴Bを第1実施形態のめっき浴Bと同様とした。すなわち、実施例1のめっき浴Bにおいて、硝酸ビスマス五水和物の濃度を0.20[mol/L]とし、EDTA二ナトリウムの濃度を0.25[mol/L]とし、塩化カリウムの濃度を1.00[mol/L]とし、ゼラチンの濃度を3.00[g/L]とした。また、実施例1のめっき浴Bは、pHが9であった。実施例1において、ビスマスで形成されたアノード電極Nおける電流密度を2.00A/dm2とし、浴温度を40℃とした。
実施例2のめっき浴Bを、ゼラチンの濃度を除いて実施例1のめっき浴Bと同様とした。すなわち、実施例2のめっき浴Bにおいて、硝酸ビスマス五水和物の濃度を0.20[mol/L]とし、EDTA二ナトリウムの濃度を0.25[mol/L]とし、塩化カリウムの濃度を1.00[mol/L]とし、ゼラチンの濃度を実施例1よりも小さい0.50[g/L]とした。また、実施例2のめっき浴Bは、pHが9であった。実施例2においても、ビスマスで形成されたアノード電極Nおける電流密度を2.00A/dm2とし、浴温度を40℃とした。
比較例1のめっき浴Bをメタンスルホン酸浴とした。比較例1のめっき浴Bにおいて、メタンスルホン酸ビスマス[Bi(CH3SO33]の濃度を0.20[mol/L]とし、メタンスルホン酸[CH3SO3H]の濃度を1.00[mol/L]とし、添加剤としてのポリオキシエチレン・ノニルフェニルエーテルの濃度を20[g/L]とした。また、比較例1のめっき浴Bは、pHが1であった。比較例1において、ビスマスで形成されたアノード電極Nおける電流密度を2.00A/dm2とし、浴温度を30℃とした。なお、比較例1は、特許第3916805号の発明にかかるめっき浴Bであり、オーバーレイ12におけるビスマスの結晶方位がランダムとなるように各めっき条件を制御した。
比較例2のめっき浴Bを硫酸浴とした。比較例2のめっき浴Bにおいて、硫酸ビスマス[Bi(NO33]の濃度を0.20[mol/L]とし、硫酸[H2SO4]の濃度を1.00[mol/L]とし、添加剤としてのβナフトールの濃度を1.00[g/L]とした。比較例2のめっき浴Bは、pHが1であった。比較例2において、ビスマスで形成されたアノード電極Nおける電流密度を2.00A/dm2とし、浴温度を25℃とした。
図4は、各めっき浴によって形成されたオーバーレイ12における炭素濃度と、疲労損傷面積率との関係を示すグラフである。実施例1(○)において、オーバーレイ12における炭素濃度は0.037wt%であり、疲労損傷面積率は2.8%であった。実施例2(●)において、オーバーレイ12における炭素濃度は0.021wt%であり、疲労損傷面積率は6.7%であった。比較例1(△)において、オーバーレイ12における炭素濃度は0.008wt%であり、疲労損傷面積率は6.5%であった。比較例2(▲)において、オーバーレイ12における炭素濃度は0.008wt%であり、疲労損傷面積率は50.0%であった。
図4に示すように、EDTA二ナトリウムを含む実施例1〜2のめっき浴Bにおいて、添加剤としてのゼラチンの添加量を大きくするほど、オーバーレイ12における炭素濃度が大きくなった。一方、ゼラチンが添加されていないめっき浴Bを使用した比較例1〜2において、オーバーレイ12における炭素濃度が小さかった。比較例1〜2の疲労損傷面積率を比較すると、比較例1の方が比較例2よりもオーバーレイ12の耐疲労性が良好であった。比較例1のオーバーレイ12におけるビスマスの結晶方位はランダムであり、疲労亀裂が単一方向に長大化しないためと考えられる。
実施例1〜2および比較例2は、特許第3916805号の発明を適用したものではなく、オーバーレイ12におけるビスマスの結晶方位に配向性が見られた。しかしながら、ビスマスの結晶方位に配向性があるにも拘わらず、実施例1〜2においてオーバーレイ12の耐疲労性が良好となった。実施例1〜2は、炭素濃度が比較例2よりも大きく、炭素の分散強化によって耐疲労性が良好となったと考えられる。ここで、ビスマスの結晶方位に配向性がある実施例1〜2および比較例2の疲労損傷面積率を結ぶ近似曲線(実線)が示すように、オーバーレイ12における炭素濃度を大きくするほど、オーバーレイ12の耐疲労性を良好とすることができる。オーバーレイ12における炭素濃度を0.015%以上とすることにより、オーバーレイ12におけるビスマスの結晶方位をランダムとした場合と同様の耐疲労性を得ることができる。
ここで、結晶方位をランダムにするようにビスマスのめっき浴Bを管理することは困難である。実施例1〜2ではビスマスの結晶方位に配向性があってもオーバーレイ12の耐疲労性を良好とすることができるため、容易に耐疲労性を良好な摺動部材1を製造できる。むろん、オーバーレイ12におけるビスマスの結晶方位をランダムにし、かつ、オーバーレイ12における炭素濃度を大きくしてもよい。また、実施例1〜2を比較すると、オーバーレイ12における炭素濃度が大きい実施例1の方が実施例2よりも疲労損傷面積率が小さく、めっき浴Bに添加された水溶性有機物(ゼラチン)の濃度が大きいほど耐疲労性が良好となる。
図5Aは、比較例1における裏金10の外側の表面のプロフィールである。同図において、横軸は、裏金10の外側の表面上におけるすべり軸受Aの軸方向の位置X(図1)を示し、縦軸は当該表面に直交する方向の高さZ(図1)を示す。比較例1における裏金10の外側の表面の粗さは、Raが0.48μmであり、Rzが2.64μmであり、Rmaxが3.75μmであった。図5Bは、比較例1における裏金10の外側の表面の写真である。図2Bの実施例1と異なり、図5Bの比較例1では裏金10の鋼をおもに構成する鉄が腐食しているとともに、ビスマスが析出している部分(他の部分よりも明るい略円形部分)が見られる。鉄はビスマスよりもイオン化傾向が大きく、比較例1における酸性めっき浴においてビスマスと鉄との置換が生じた。なお、上述した実験結果に示した各種数値は、第1実施形態と同様の計測機器および計測手法によって計測されたものである。
(3)他の実施形態:
前記実施形態においては、エンジンのクランクシャフトを軸受けするすべり軸受Aを構成する摺動部材1を例示したが、本発明の摺動部材1によって他の用途のすべり軸受Aを形成してもよい。例えば、本発明の摺動部材1によってトランスミッション用のギヤブシュやピストンピンブシュ・ボスブシュ等を形成してもよい。むろん、摺動部材1は、軸以外の相手軸2が摺動する部材であってもよく、必ずしも円筒状の軸受Aを形成しなくてもよい。なお、裏金10は、ライニング11とオーバーレイ12とを介して相手軸2からの荷重を支持できる材料で形成されればよく、必ずしも鋼で形成されなくてもよい。また、ライニング11は必ずしも焼成によって形成された銅合金でなくてもよく、ライニング11が圧延によって裏金10に貼り合わされてもよい。
また、オーバーレイ12の厚みは、摺動部材1の相手軸2の硬さや荷重や耐用時間等に応じて設定されればよく、前記実施形態のように10μmとすることによりエンジンのクランクシャフトの軸受として好適となる。前記実施形態では、ゼラチンをレベリング剤として添加したが、ゼラチン以外の水溶性有機物をレベリング剤として添加してもよい。例えば、本発明のめっき浴Bを利用して結晶方位がランダム配向のオーバーレイ12を形成することにより、オーバーレイ12における疲労損傷面積率を抑制してもよい。また、オーバーレイ12は、必ずしもめっきで形成されなくてもよく、スパッタリングや蒸着等によって形成されてもよい。これらの場合、ビスマス膜を成膜した後に、炭素をビスマス膜に拡散させることにより、炭素濃度の大きいオーバーレイ12を形成してもよい。
1…摺動部材、2…相手軸、10…裏金、11…ライニング、12…オーバーレイ。

Claims (2)

  1. 裏金と、
    前記裏金上に形成されたライニングと、
    前記ライニング上において1μm以上かつ30μm以下の厚みだけ形成され、ビスマスと炭素と不可避不純物とからなるオーバーレイと、を備える摺動部材であって、
    前記オーバーレイにおける炭素濃度は、0.015wt%以上、かつ、0.100wt%以下である、
    摺動部材。
  2. 裏金と、
    前記裏金上に形成されたライニングと、
    前記ライニング上において1μm以上かつ30μm以下の厚みだけ形成され、ビスマスと炭素と不可避不純物とからなるオーバーレイと、を備えるすべり軸受であって、
    前記オーバーレイにおける炭素濃度は、0.015wt%以上、かつ、0.100wt%以下である、
    すべり軸受。
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