次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る変速装置である自動変速機20を含む動力伝達装置10の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置10は、前輪駆動車両の前部に横置きに搭載される駆動源としての図示しないエンジン(内燃機関)のクランクシャフトおよび/または電気モータのロータに接続されると共にエンジン等からの動力(トルク)を図示しない左右の前輪(駆動輪)に伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置10は、エンジン等から入力軸(入力部材)20iに伝達された動力を変速して車両の前輪に伝達する自動変速機20に加えて、トランスミッションケース(静止部材)11や、発進装置(流体伝動装置)12、オイルポンプ17等を含む。
発進装置12は、上述のような駆動源に連結されるポンプインペラ14pや、自動変速機20の入力軸20iに連結されるタービンランナ14t、ポンプインペラ14pおよびタービンランナ14tの内側に配置されてタービンランナ14tからポンプインペラ14pへの作動油の流れを整流するステータ14s、図示しないステータシャフトより支持されると共にステータ14sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ14o等を有するトルクコンバータを含む。更に、発進装置12は、エンジンのクランクシャフト等に連結されたフロントカバーと自動変速機20の入力軸20iとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ15と、フロントカバーと自動変速機20の入力軸20iとの間で振動を減衰するダンパ機構16とを含む。なお、発進装置12は、ステータ14sを有さない流体継手を含むものであってもよい。
オイルポンプ17は、ポンプボディとポンプカバーとを含むポンプアッセンブリ、発進装置12のポンプインペラ14pに連結された外歯ギヤ(インナーロータ)、当該外歯ギヤに噛合する内歯ギヤ(アウターロータ)等を有するギヤポンプとして構成される。オイルポンプ17は、エンジン等からの動力により駆動され、図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して図示しない油圧制御装置へと圧送する。なお、オイルポンプ17の外歯ギヤは、チェーンまたはギヤ列を介してポンプインペラ14pに連結されてもよい。
自動変速機20は、11段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸20iに加えて、当該入力軸(第1軸)20iと平行に延在する別軸(第2軸)上に配置される出力ギヤ(出力部材)20oや、シングルピニオン式の第1遊星歯車21とダブルピニオン式の第2遊星歯車22とを組み合わせて構成される複合遊星歯車機構としてのラビニヨ式遊星歯車機構25と、ダブルピニオン式の第3遊星歯車23とを含む。本実施形態において、出力ギヤ20oは、外歯歯車であり、当該出力ギヤ20oに噛合するドライブピニオンギヤ、当該ドライブピニオンギヤに噛合するデフリングギヤを含むデファレンシャルギヤおよびドライブシャフト(何れも図示省略)を介して左右の前輪に連結される。また、本実施形態において、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成する第1および第2遊星歯車21,22と、第3遊星歯車23とは、発進装置12すなわちエンジン側(図1における右側)から、第3遊星歯車23、第1遊星歯車21、第2遊星歯車22という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。
ラビニヨ式遊星歯車機構25は、外歯歯車である第1サンギヤ21sおよび第2サンギヤ22sと、第1サンギヤ21sと同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤ21rと、第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに噛合する複数の第1ピニオンギヤ(ロングピニオンギヤ)21pと、第2サンギヤ22sおよび複数の第1ピニオンギヤ21pに噛合する複数の第2ピニオンギヤ(ショートピニオンギヤ)22pと、複数の第1ピニオンギヤ21pおよび複数の第2ピニオンギヤ22pを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持する第1キャリヤ21cとを有する。
このようなラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s、第1キャリヤ21c、第1ピニオンギヤ21p、および第1リングギヤ21rは、シングルピニオン式の第1遊星歯車21を構成する。また、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s、第1キャリヤ21c、第1および第2ピニオンギヤ21p,22p、並びに第1リングギヤ21rは、ダブルピニオン式の第2遊星歯車22を構成する。そして、本実施形態において、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、シングルピニオン式の第1遊星歯車21のギヤ比λ1(第1サンギヤ21sの歯数/第1リングギヤ21rの歯数)が、例えば、λ1=0.458となり、かつダブルピニオン式の第2遊星歯車22のギヤ比λ2(第2サンギヤ22sの歯数/第1リングギヤ21rの歯数)が、例えば、λ2=0.375となるように構成される。
更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rには、外歯歯車である第1ドライブギヤ26が同軸に常時連結されており、第1リングギヤ21rと第1ドライブギヤ26とは、常時一体に回転または停止する。更に、自動変速機20の出力ギヤ20oには、外歯歯車である第1ドリブンギヤ27が同軸に常時連結されている。第1ドリブンギヤ27は、第1ドライブギヤ26に噛合すると共に、出力ギヤ20oと常時一体に回転または停止する。第1ドライブギヤ26と、当該第1ドライブギヤ26から動力が伝達される第1ドリブンギヤ27とは、第1ギヤ列G1を構成し、第1リングギヤ21rは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素として機能する。
加えて、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cには、外歯歯車である第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されており、第1キャリヤ21cと第2ドライブギヤ28とは、常時一体に回転または停止する。第2ドライブギヤ28は、当該第2ドライブギヤ28に噛合する第2ドリブンギヤ(外歯歯車)29と共に、第2ギヤ列G2を構成する。第2ギヤ列G2は、そのギヤ比gr2(第2ドリブンギヤ29の歯数/第2ドライブギヤ28の歯数)が第1ギヤ列G1のギヤ比gr1(第1ドリブンギヤ27の歯数/第1ドライブギヤ26の歯数)とは異なるように構成される。本実施形態において、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1は、gr1=1.00である。また、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められ、本実施形態では、gr2=0.870である。
第3遊星歯車23は、外歯歯車である第3サンギヤ(固定要素)23sと、第3サンギヤ23sと同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤ(出力要素)23rと、互いに噛合すると共に一方が第3サンギヤ23sに、他方が第3リングギヤ23rに噛合する2つのピニオンギヤ23pa,23pbの組を自転自在(回転自在)かつ公転自在に複数保持する第3キャリヤ23c(入力要素)とを有する。図示するように、第3遊星歯車23の第3サンギヤ23sは、図示しない支持部材(フロントサポート)を介してトランスミッションケース11に対して回転不能に接続(固定)される。また、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cは、入力軸20iに常時連結されており、当該入力軸20iと常時一体に回転または停止する。これにより、第3遊星歯車23は、いわゆる減速ギヤとして機能し、入力要素である第3キャリヤ23cに伝達された動力を減速して出力要素である第3リングギヤ23rから出力する。本実施形態において、第3遊星歯車23のギヤ比λ3(第3サンギヤ23sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)は、例えば、λ3=0.487である。
更に、自動変速機20は、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの動力伝達経路を変更するためのクラッチC1(第3係合要素)、クラッチC2(第4係合要素)、クラッチC3(第5係合要素)、クラッチC4(第6係合要素)、ブレーキB1(第1係合要素)、ブレーキB2(第2係合要素)、およびクラッチC5(出力側係合要素)を含む。
クラッチC1は、第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cすなわち入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第1サンギヤ21sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第2ドリブンギヤ29のトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29がトランスミッションケース11に回転不能に固定されることにより、第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結されるラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)は、トランスミッションケース11に対して回転不能に接続されることになる。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
本実施形態では、クラッチC1,C2,C3,C4およびC5として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、それぞれ作動油が供給される係合油室および遠心油圧キャンセル室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)が採用される。また、ブレーキB1およびB2として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される係合油室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキ(摩擦係合要素)が採用される。そして、クラッチC1〜C5、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置による作動油の給排を受けて動作する。
図2は、自動変速機20における入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である(ただし、入力軸20iすなわち第3キャリヤ23cの回転速度を値1とする)。また、図3は、自動変速機20の各変速段とクラッチC1〜C5、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を示す作動表である。
図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成する4つの回転要素、すなわち、第1固定可能要素としての第1サンギヤ21s、第2固定可能要素としての第1キャリヤ21c、出力要素としての第1リングギヤ21r、および第2サンギヤ22sは、この順番で図中左側からシングルピニオン式の第1遊星歯車21のギヤ比λ1およびダブルピニオン式の第2遊星歯車22のギヤ比λ2に応じた間隔をおいて当該ラビニヨ式遊星歯車機構25の速度線図(図2における右側の速度線図)上に並ぶ。このような速度線図での並び順に従い、ここでは、第1サンギヤ21sを自動変速機20の第1回転要素とし、第1キャリヤ21cを自動変速機20の第2回転要素とし、第1リングギヤ21rを自動変速機20の第3回転要素とし、第2サンギヤ22sを自動変速機20の第4回転要素とする。従って、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、速度線図上でギヤ比λ1,λ2に応じた間隔をおいて順番に並ぶ自動変速機20の第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素および第4回転要素を有する。
また、ダブルピニオン式の第3遊星歯車23を構成する3つの回転要素、すなわち、第3サンギヤ(固定要素)23s、第3リングギヤ(出力要素)23rおよび第3キャリヤ23c(入力要素)は、当該第3遊星歯車23の速度線図(図2における左側の速度線図)上でギヤ比λ3に応じた間隔をおいて図中左側から第3サンギヤ23s、第3リングギヤ23r、第3キャリヤ23cという順番で並ぶ。このような速度線図での並び順に従い、ここでは、第3サンギヤ23sを自動変速機20の第5回転要素とし、第3リングギヤ23rを自動変速機20の第6回転要素とし、第3キャリヤ23cを自動変速機20の第7回転要素とする。従って、第3遊星歯車23は、速度線図上でギヤ比λ3に応じた間隔をおいて順番に並ぶ自動変速機20の第5回転要素、第6回転要素および第7回転要素を有する。
そして、自動変速機20では、クラッチC1〜C5、ブレーキB1およびB2を図3に示すように係合または解放させて上述の第1〜第7回転要素の接続関係を変更することで、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの間に前進回転方向に11通りおよび後進回転方向に2通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第11速段の前進段、後進第1速段および後進第2速段を設定することができる。
具体的には、前進第1速段は、クラッチC1およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC2〜C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、前進第1速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23r(第6回転要素)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)とが互いに接続される。更に、ブレーキB2により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29、すなわち第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結される第1キャリヤ21c(第2回転要素)がトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。本実施形態(第1〜第3遊星歯車のギヤ比がλ1=0.458,λ2=0.375,λ3=0.487であり、かつ第1および第2ギヤ列G1,G2のギヤ比gr1,gr2がgr1=1.00、gr2=0.870である場合、以下同様)において、前進第1速段におけるギヤ比(入力軸20iの回転速度/出力ギヤ20oの回転速度)γ1は、γ1=5.200である。
前進第2速段は、クラッチC1およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC2〜C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第2速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。本実施形態において、前進第2速段におけるギヤ比γ2は、γ2=2.971である。また、前進第1速段と前進第2速段との間のステップ比は、γ1/γ2=1.750である。
前進第3速段は、クラッチC1およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC2〜C4、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第3速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第3速段におけるギヤ比γ3は、γ3=2.374である。また、前進第2速段と前進第3速段との間のステップ比は、γ2/γ3=1.252である。
前進第4速段は、クラッチC1およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC2,C4,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第4速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC3により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23r(第6回転要素)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第4速段におけるギヤ比γ4は、γ4=1,950である。また、前進第3速段と前進第4速段との間のステップ比は、γ3/γ4=1.217である。
前進第5速段は、クラッチC1およびC4を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第5速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC4により入力軸20i(第3遊星歯車23の第3キャリヤ23c)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第5速段におけるギヤ比γ5は、γ5=1.470である。また、前進第4速段と前進第5速段との間のステップ比は、γ4/γ5=1.327である。
前進第6速段は、クラッチC1およびC2を係合させると共に、残余のクラッチC3,C4,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第6速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第6速段におけるギヤ比γ6は、γ6=1.224である。また、前進第5速段と前進第6速段との間のステップ比は、γ5/γ6=1.201である。
前進第7速段は、クラッチC2およびC4を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第7速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC4により入力軸20i(第3遊星歯車23の第3キャリヤ23c)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。本実施形態において、前進第7速段におけるギヤ比γ7は、γ7=1.000である。また、前進第6速段と前進第7速段との間のステップ比は、γ6/γ7=1.224である。
前進第8速段は、クラッチC2およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C4、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第8速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第8速段におけるギヤ比γ8は、γ8=0.870である。また、前進第7速段と前進第8速段との間のステップ比は、γ7/γ8=1.150である。
前進第9速段は、クラッチC2およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C4,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第9速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC3により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。本実施形態において、前進第9速段におけるギヤ比γ9は、γ9=0.817である。また、前進第8速段と前進第9速段との間のステップ比は、γ8/γ9=1.064である。
前進第10速段は、クラッチC2およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C4,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第10速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。本実施形態において、前進第10速段におけるギヤ比γ10は、γ10=0.686である。また、前進第9速段と前進第10速段との間のステップ比は、γ9/γ10=1.192である。
前進第11速段は、クラッチC4およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C3、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第11速段の形成に際しては、クラッチC4により入力軸20i(第3遊星歯車23の第3キャリヤ23c)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。本実施形態において、前進第11速段におけるギヤ比γ11は、γ=0.585である。また、前進第10速段と前進第11速段との間のステップ比は、γ10/γ11=1.172である。更に、自動変速機20におけるスプレッド(ギヤ比幅=最低変速段である前進第1速段のギヤ比γ1/最高変速段である前進第11速段のギヤ比γ10)は、γ1/γ11=8.889である。
後進第1速段は、クラッチC3およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C4,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進第1速段の形成に際しては、クラッチC3により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB2により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29、すなわち第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結される第1キャリヤ21cがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。後進第1速段におけるギヤ比γrev1は、γrev1−4.255である。また、前進第1速段と後進第1速段との間のステップ比は、|γrev1/γ1|=0.818である。
後進第2速段は、クラッチC4およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C3,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進第1速段の形成に際しては、クラッチC4により入力軸20i(第3遊星歯車23の第3キャリヤ23c)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB2により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29、すなわち第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結される第1キャリヤ21cがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。後進第2速段におけるギヤ比γrev2は、γrev2=−2.182である。また、前進第1速段と後進第2速段との間のステップ比は、|γrev2/γ1|=0.420である。
上述のように、自動変速機20では、クラッチC1〜C5、ブレーキB1およびB2の係脱により第1速段から第11速段までの前進段、後進第1速段および後進第2速段を形成することができる。そして、自動変速機20では、前進第3速段、第8速段および第11速段が形成される際に、クラッチC1,C2およびC4の何れかとクラッチC5とが係合させられる。このようにクラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、当該出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転する第2ドリブンギヤ29に第2ドライブギヤ28を介して連結された第1キャリヤ21c(何れかの回転要素)が出力ギヤ20oに対して第2ギヤ列G2のギヤ比gr2に応じた回転速度で回転する。また、クラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素である第1リングギヤ21rは、出力ギヤ20oに対して第1ギヤ列G1のギヤ比gr1に応じた回転速度で回転する。従って、クラッチC1,C2およびC4の何れかとクラッチC5とを係合させることで、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rと第1キャリヤ21cとの間に、第1および第2ギヤ列G1,G2のギヤ比gr1,gr2に応じた回転速度差を生じさせることができる。これにより、自動変速機20では、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の何れか2つを選択的に係合させることにより得られるもの以外の変速段を形成することが可能となる。
すなわち、クラッチC1の係合により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rを介してラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)に入力軸20iからのトルクが伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cを前進第2速段の形成時よりも増速させると共に、第1リングギヤ21rを前進第4速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第2速段におけるギヤ比γ2よりも小さく、かつ前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも大きいギヤ比γ3の前進第3速段を形成することが可能となる。
また、クラッチC2の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第7速段の形成時よりも増速させると共に、前進第9速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第7速段におけるギヤ比γ7よりも小さく、かつ前進第9速段におけるギヤ比γ9よりも大きいギヤ比γ8の前進第8速段を形成することが可能となる。
更に、クラッチC4の係合により第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rを介してラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)に入力軸20iからのトルクが伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第10速段の形成時よりも増速させることができる。これにより、前進第10速段におけるギヤ比γ10よりも小さいギヤ比γ11の前進第11速段を形成することが可能となる。
上述のように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(出力要素)以外の第2サンギヤ22s、第1キャリヤ21cおよび第1サンギヤ21sに入力軸20i側からのトルクが選択的に(順番に)伝達される自動変速機20では、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置(特開2013−204754号公報参照)に対して3つの変速段(前進第3速段、第8速段および第11速段)を追加することができる。この結果、自動変速機20では、最高速段である前進第11速段の追加によりスプレッドをより大きくして(本実施形態では、8.889)、特に高車速時の車両の燃費を向上させることが可能となる。更に、中間段(前進第3速段および第8速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)して変速フィーリングを向上させることができる。従って、自動変速機20によれば、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を良好に向上させることが可能となる。
また、自動変速機20のように、4要素式の複合遊星歯車機構であるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1および第2ギヤ列G1,G2とクラッチC5とを組み合わせることで、装置全体の大型化や部品点数の増加を抑制しつつ、変速段の多段化を図ることができる。更に、自動変速機20では、図1に示すように、ブレーキB2を出力ギヤ20oの軸心(第2軸)の周りに配置することができるので、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲(エンジンとは反対側の端部側)における体格の増加を抑制することが可能となる。
なお、自動変速機20において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2をgr2=1.00とし、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1をギヤ比gr2よりも小さくしてもよい(例えば、gr1=1.15)。この場合、前進第1速段から第11速段のギヤ比γ1〜γ11、後進第1速段および後進第2速段のギヤγrev1,γrev2として次のような値をとることが可能となる。γ1=5.980、γ2=3.417、γ3=2.730、γ4=2.243、γ5=1.690、γ6=1.407、γ7=1.150、γ8=1.000、γ9=0.940、γ10=0.789、γ11=0.673、γrev1=−4.893、γrev2=−2.509。
また、自動変速機20では、クラッチC3およびクラッチC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C4、ブレーキB1およびB2を解放させることにより、図2において点線で示すように、上記前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも小さく、かつ上記前進第7速段におけるギヤ比γ7よりも小さいギヤ比の変速段を形成することが可能である。従って、自動変速機20では、図4に示すように、クラッチC3およびクラッチC5の係合により形成される変速段を前進第7速段とすると共に、図2および図3における前進第7速段から第11速段をそれぞれ前進第8速段から第12速段とすることができる。これにより、変速段の更なる多段化によって、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を極めて良好に向上させることが可能となる。
更に、自動変速機20では、図2および図3における前進第3速段の形成を省略すると共に、図2および図3における前進第4速段から第11速段をそれぞれ前進第3速段から第10速段としてもよい(図5参照)。また、自動変速機20では、図2および図3における前進第3速段および第8速段の形成を省略し、図2および図3における前進第4速段から第7速段をそれぞれ前進第3速段から第6速段とすると共に、図2および図3における前進第9速段から第11速段をそれぞれ前進第7速段から第9速段としてもよい(図6参照)。これらの場合も、最高速段である前進第10速段あるいは第9速段の追加によりスプレッドをより大きくして、特に高車速時の車両の燃費を向上させることができる。
図7は、本開示の第1実施形態における変形態様の自動変速機20Bを含む動力伝達装置10Bの概略構成図である。なお、自動変速機20Bの構成要素のうち、上述の自動変速機20と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する(第1実施形態に関して、以下同様)。
図7に示す自動変速機20Bでは、当該自動変速機20Bの第1回転要素であるラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。また、自動変速機20Bにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、自動変速機20Bにおいて、ブレーキB2は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Bにおいても、上述の自動変速機20と同様の作用効果を得ることが可能となる。
図8は、本開示の第1実施形態における他の変形態様の自動変速機20Cを含む動力伝達装置10Cの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Cにおいて、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成する第1および第2遊星歯車21,22と、第3遊星歯車23とは、発進装置12すなわちエンジン側(図8における右側)から、第3遊星歯車23、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。また、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cは、支持部材(フロントサポート)を介してトランスミッションケース11に対して回転不能に接続(固定)されている。更に、第3遊星歯車23の第3サンギヤ23sは、入力軸20iに常時連結されており、当該入力軸20iと常時一体に回転または停止する。
また、自動変速機20Cでは、当該自動変速機20Cの第4回転要素であるラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図8に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも大きく定められている。更に、自動変速機20Cにおいて、ブレーキB1は、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)とを互いに接続することにより当該第1サンギヤ21sをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。また、ブレーキB2は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲に配置される。更に、クラッチC4は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)と入力軸20iとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するように構成され、クラッチC2と同様に自動変速機20Cのエンジンとは反対側の端部側に配置される。このように構成される自動変速機20Cにおいても、上述の自動変速機20と同様の作用効果を得ることが可能となる。
図9は、本開示の第1実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Dを含む動力伝達装置10Dの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Dは、上記自動変速機20においてラビニヨ式遊星歯車機構25をシングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成される複合遊星歯車機構25Wで置き換えたものに相当する。複合遊星歯車機構25Wの第1遊星歯車21は、第1サンギヤ21sと、第1リングギヤ21rと、それぞれ第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに噛合する複数の第1ピニオンギヤ21pを自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ21cとを有する。また、第2遊星歯車22は、第2サンギヤ22sと、第2リングギヤ22rと、それぞれ第2サンギヤ22sおよび第2リングギヤ22rに噛合する複数の第2ピニオンギヤ22pを自転自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ22cとを有する。
図示するように、複合遊星歯車機構25Wでは、第1遊星歯車21の第1リングギヤ21rと第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとが常時連結されており、図9に示す例において、第2サンギヤ22sは、第1リングギヤ21rの内歯を包囲するように当該第1リングギヤ21rと一体に成形(一体化)されている。また、第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cと第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cとは常時連結されている。更に、複合遊星歯車機構25Wは、第2遊星歯車22が第1遊星歯車21を包囲すると共に、第1遊星歯車21の第1ピニオンギヤ21pと第2遊星歯車22の第2ピニオンギヤ22pとが径方向からみて軸方向に少なくとも部分的に重なり合うように配置される。
また、自動変速機20DのクラッチC1は、第3遊星歯車23の第3リングギヤ23r(第6回転要素)と、常時連結(一体化)された複合遊星歯車機構25Wの第1リングギヤ21rおよび第2サンギヤ22s(第4回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20iと複合遊星歯車機構25Wの第2リングギヤ22r(第2回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第3遊星歯車23の第3リングギヤ23r(第6回転要素)と複合遊星歯車機構25Wの第1サンギヤ21s(第1回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cすなわち入力軸20iと複合遊星歯車機構25Wの第1サンギヤ21s(第1回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、複合遊星歯車機構25Wの第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第1サンギヤ21sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構25Wの第2リングギヤ22rをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
更に、複合遊星歯車機構25Wの第1および第2キャリヤ21c,22cには、第1ギヤ列G1の第1ドライブギヤ(外歯歯車)26が同軸に常時連結され、第1および第2キャリヤ21c,22cは、複合遊星歯車機構25Wの出力要素として機能する。また、複合遊星歯車機構25Wの第2リングギヤ22r(第2回転要素)には、第2ギヤ列G2の第2ドライブギヤ(外歯歯車)28が同軸に常時連結されている。図9に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。
図10は、自動変速機20Dにおける入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である(ただし、入力軸20iすなわち第3キャリヤ23cの回転速度を値1とする)。同図に示すように、複合遊星歯車機構25Wを構成する4つの回転要素、すなわち、第1固定可能要素としての第1サンギヤ21s、第2固定可能要素としての第2リングギヤ22r、出力要素としての常時連結された第1および第2キャリヤ21c,22c、並びに常時連結された第1リングギヤ21rおよび第2サンギヤ22sは、この順番で図中左側から第1遊星歯車21のギヤ比λ1および第2遊星歯車22のギヤ比λ2に応じた間隔をおいて当該複合遊星歯車機構25Wの速度線図(図10における右側の速度線図)上に並ぶ。このような速度線図での並び順に従い、ここでは、第1サンギヤ21sを自動変速機20Dの第1回転要素とし、第2リングギヤ22rを自動変速機20Dの第2回転要素とし、第1および第2キャリヤ21c,22cを自動変速機20Dの第3回転要素とし、第1リングギヤ21rおよび第2サンギヤ22sを自動変速機20Dの第4回転要素とする。従って、複合遊星歯車機構25Wは、速度線図上でギヤ比λ1,λ2に応じた間隔をおいて順番に並ぶ自動変速機20Dの第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素および第4回転要素を有する。
上述のように構成される自動変速機20Dにおいても、上記自動変速機20と同様の作用効果を得ることが可能となる。また、シングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成される複合遊星歯車機構25Wを採用しても、部品点数を削減して自動変速機20Dの重量増を抑制しつつ組立性をより向上させることが可能となる。更に、図9に示すような複合遊星歯車機構25Wによれば、第1遊星歯車21を包囲するように第2遊星歯車22を配置することができるので、自動変速機20Dの軸長をより短縮化することが可能となる。
図11は、本開示の第1実施形態における他の変形態様の自動変速機20Eを含む動力伝達装置10Eの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Eは、上記自動変速機20Bにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25を複合遊星歯車機構25Wで置き換えたものに相当する。すなわち、自動変速機20Eでは、当該自動変速機20Eの第1回転要素である複合遊星歯車機構25Wの第1サンギヤ21sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図11に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。また、自動変速機20Eにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構25Wの第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構25Wの第2リングギヤ22r(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、複合遊星歯車機構25Wの周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Eにおいても、上述の自動変速機20等と同様の作用効果を得ることが可能となる。
図12は、本開示の第1実施形態における他の変形態様の自動変速機20Fを含む動力伝達装置10Fの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Fは、上記自動変速機20Cにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25を複合遊星歯車機構25Wで置き換えたものに相当する。すなわち、自動変速機20Fでは、当該自動変速機20Fの第4回転要素である複合遊星歯車機構25Wの第1リングギヤ21rおよび第2サンギヤ22sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図12に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも大きく定められている。このように構成される自動変速機20Fにおいても、上述の自動変速機20等と同様の作用効果を得ることが可能となる。
図13は、本開示の第2実施形態における自動変速機20Gを含む動力伝達装置10Gの概略構成図である。なお、自動変速機20Gの構成要素のうち、上述の自動変速機20等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図13に示す自動変速機20Gは、上述の自動変速機20においてダブルピニオン式の第3遊星歯車23をシングルピニオン式の第3遊星歯車230で置き換えると共にクラッチC4を省略したものに相当する。第3遊星歯車230は、第3サンギヤ23sと、第3リングギヤ23rと、それぞれ第3サンギヤ23sおよび第3リングギヤ23rに噛合する複数の第3ピニオンギヤ23pを自転自在かつ公転自在に保持する第3キャリヤ23cとを有するものである。図示するように、第3遊星歯車230の第3サンギヤ23sは、図示しない支持部材(フロントサポート)を介してトランスミッションケース11に対して回転不能に接続(固定)される。また、第3遊星歯車23の第3リングギヤ23rは、入力軸20iに常時連結されており、当該入力軸20iと常時一体に回転または停止する。これにより、第3遊星歯車230は、いわゆる減速ギヤとして機能し、入力要素である第3リングギヤ23rに伝達された動力を減速して出力要素である第3キャリヤ23cから出力する。
また、自動変速機20GのクラッチC1は、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第3遊星歯車23の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第1サンギヤ21sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
図14は、自動変速機20Gにおける入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である(ただし、入力軸20iすなわち第3リングギヤ23rの回転速度を値1とする)。また、図3は、自動変速機20Gの各変速段とクラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を示す作動表である。
自動変速機20Gでは、図14に示す速度線図での並び順に従い、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sが当該自動変速機20Gの第1回転要素とされ、第1キャリヤ21cが自動変速機20Gの第2回転要素とされ、第1リングギヤ21rが自動変速機20Gの第3回転要素とされ、第2サンギヤ22sが自動変速機20Gの第4回転要素とされる。また、シングルピニオン式の第3遊星歯車230を構成する3つの回転要素、すなわち、第3サンギヤ(固定要素)23s、第3リングギヤ23r(出力要素)および第3キャリヤ23c(入力要素)は、当該第3遊星歯車230の速度線図(図14における左側の速度線図)上でギヤ比に応じた間隔をおいて図中左側から第3サンギヤ23s、第3キャリヤ23c、第3リングギヤ23rという順番で並ぶ。このような速度線図での並び順に従い、ここでは、第3サンギヤ23sを自動変速機20の第5回転要素とし、第3キャリヤ23cを自動変速機20の第6回転要素とし、第3リングギヤ23rを自動変速機20の第7回転要素とする。
そして、自動変速機20Gでは、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2を図15に示すように係合または解放させて上述の第1〜第7回転要素の接続関係を変更することで、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの間に前進回転方向に9通りおよび後進回転方向に1通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第9速段の前進段および後進段を設定することができる。
具体的には、自動変速機20Gの前進第1速段は、クラッチC1およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、前進第1速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23c(第6回転要素)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)とが互いに接続される。更に、ブレーキB2によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)がトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。前進第2速段は、クラッチC1およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第2速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第3速段は、クラッチC1およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第3速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第4速段は、クラッチC1およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC2,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第4速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC3により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23c(第6回転要素)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)とが互いに接続される。
前進第5速段は、クラッチC3およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第5速段の形成に際しては、クラッチC3により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第6速段は、クラッチC1およびC2を係合させると共に、残余のクラッチC3,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第6速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)とが互いに接続される。
前進第7速段は、クラッチC2およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第7速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第8速段は、クラッチC2およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第8速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC3により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。
前進第9速段は、クラッチC2およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第9速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。後進段は、クラッチC3およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進段の形成に際しては、クラッチC3により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB2により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29、すなわち第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結される第1キャリヤ21cがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。
上述のように、自動変速機20Gでは、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2の係脱により第1速段から第9速段までの前進段および後進段を形成することができる。そして、自動変速機20Gでは、前進第3速段、第5速段および第7速段が形成される際に、クラッチC1〜C3の何れかとクラッチC5とが係合させられる。このようにクラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、当該出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転する第2ドリブンギヤ29に第2ドライブギヤ28を介して連結された第1キャリヤ21c(何れかの回転要素)が出力ギヤ20oに対して第2ギヤ列G2のギヤ比gr2に応じた回転速度で出力ギヤ20oや第1ドライブギヤ26と同方向に回転する。また、クラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素である第1リングギヤ21rは、出力ギヤ20oに対して第1ギヤ列G1のギヤ比gr1に応じた回転速度で回転する。従って、クラッチC1〜C3の何れかとクラッチC5とを係合させることで、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rと第1キャリヤ21cとの間に、第1および第2ギヤ列G1,G2のギヤ比gr1,gr2に応じた回転速度差を生じさせることができる。これにより、自動変速機20Gでは、クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2の何れか2つを選択的に係合させることにより得られるもの以外の変速段を形成することが可能となる。
すなわち、クラッチC1の係合により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cを介してラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)に入力軸20iからのトルクが伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図14に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cを前進第2速段の形成時よりも増速させると共に、第1リングギヤ21rを前進4速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第2速段におけるギヤ比γ2よりも小さく、かつ前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも大きいギヤ比γ3の前進第3速段を形成することが可能となる。
また、クラッチC3の係合により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cを介してラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)に入力軸20iからのトルクが伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図14に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第4速段の形成時よりも増速させることができる。これにより、前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも小さく、かつ前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも大きいギヤ比γ5の前進第5速段を形成することが可能となる。
更に、クラッチC2の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図14に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第8速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも小さく、かつ前進第8速段におけるギヤ比γ8よりも大きいギヤ比γ7の前進第7速段を形成することが可能となる。
上述のように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(出力要素)以外の第2サンギヤ22s、第1サンギヤ21sおよび第1キャリヤ21cに入力軸20i側からのトルクが選択的に(順番に)伝達される自動変速機20Gでは、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置(特開2010−038168号公報参照)に対して3つの変速段(前進第3速段、第5速段および第7速段)を追加することができる。この結果、自動変速機20Gでは、中間段(前進第3速段、第5速段および第7速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)することが可能となり、各変速段での加速性能や変速フィーリングを向上させることができる。従って、自動変速機20Gでは、変速段の多段化により車両の燃費を向上させると共にドライバビリティーを良好に向上させることが可能となる。
また、自動変速機20Gにおいても、4要素式の複合遊星歯車機構であるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1および第2ギヤ列G1,G2とクラッチC5とを組み合わせることで、装置全体の大型化や部品点数の増加を抑制しつつ、変速段の多段化を図ることが可能となる。更に、自動変速機20Gにおいても、図13に示すように、ブレーキB2を出力ギヤ20oの軸心(第2軸)の周りに配置することができるので、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲(エンジンとは反対側の端部側)における体格の増加を抑制することが可能となる。
図16は、本開示の第2実施形態における変形態様の自動変速機20Hを含む動力伝達装置10Hの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Hは、上述の自動変速機20Gにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)の代わりに第1サンギヤ21s(第1回転要素)に第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28を同軸に常時連結したものに相当する。また、自動変速機20Hにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、自動変速機20Hにおいて、ブレーキB2は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Hにおいても、上述の自動変速機20Gと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図17は、本開示の第2実施形態における他の変形態様の自動変速機20Iを含む動力伝達装置10Iの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Iは、上述の自動変速機20C(図8参照)からクラッチC4を省略したものに相当する。このように構成される自動変速機20Iにおいても、上述の自動変速機20Gと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図18は、本開示の第2実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Jを含む動力伝達装置10Jの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Jは、上記自動変速機20Gにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25をシングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成される、いわゆるCR−CR式の複合遊星歯車機構250で置き換えたものに相当する。複合遊星歯車機構250では、図示するように、第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cと第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rとが常時連結されると共に、第1遊星歯車21の第1リングギヤ21rと第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cとが常時連結されている。
更に、複合遊星歯車機構250の第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22rには、第1ギヤ列G1の第1ドライブギヤ(外歯歯車)26が同軸に常時連結され、第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22rは、複合遊星歯車機構250の出力要素として機能する。また、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2回転要素)には、第2ギヤ列G2の第2ドライブギヤ(外歯歯車)28が同軸に常時連結されている。図18に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。
また、自動変速機20JのクラッチC1は、第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cと、複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rすなわち入力軸20iと複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rすなわち入力軸20iと複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。ブレーキB1は、複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第2サンギヤ22sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
図19は、自動変速機20Jにおける入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である(ただし、入力軸20iすなわち第3リングギヤ23rの回転速度を値1とする)。同図に示すように、複合遊星歯車機構250を構成する4つの回転要素、すなわち、第1固定可能要素として第2サンギヤ22s、第2固定可能要素としての常時連結された第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c、出力要素としての常時連結された第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22r、並びに第1サンギヤ21sは、この順番で図中左側から第1遊星歯車21のギヤ比λ1および第2遊星歯車22のギヤ比λ2に応じた間隔をおいて当該複合遊星歯車機構250の速度線図(図10における右側の速度線図)上に並ぶ。このような速度線図での並び順に従い、ここでは、第2サンギヤ22sを自動変速機20Jの第1回転要素とし、第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cを自動変速機20Jの第2回転要素とし、第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22rを自動変速機20Jの第3回転要素とし、第1サンギヤ21sを自動変速機20Jの第4回転要素とする。従って、複合遊星歯車機構250は、速度線図上でギヤ比λ1,λ2に応じた間隔をおいて順番に並ぶ自動変速機20Jの第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素および第4回転要素を有する。
そして、自動変速機20Jでは、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2を図20に示すように係合または解放させて上述の第1〜第7回転要素の接続関係を変更することで、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの間に前進回転方向に9通りおよび後進回転方向に1通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第9速段の前進段および後進段を設定することができる。
具体的には、自動変速機20Jの前進第1速段は、クラッチC1およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、前進第1速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23c(第6回転要素)と複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21s(第4回転要素)とが互いに接続される。更に、ブレーキB2により複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2回転要素)がトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。前進第2速段は、クラッチC1およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第2速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cと複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB1により複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第3速段は、クラッチC1およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第3速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cと複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第4速段は、クラッチC1およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC2,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第4速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cと複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC3により入力軸20i(第3遊星歯車230の第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1回転要素)とが互いに接続される。
前進第5速段は、クラッチC1およびC2を係合させると共に、残余のクラッチC3,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第5速段の形成に際しては、クラッチC1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cと複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC2により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2回転要素)とが互いに接続される。前進第6速段は、クラッチC2およびC3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第6速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cとが互いに接続される。更に、クラッチC3により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1回転要素)とが互いに接続される。
前進第7速段は、クラッチC2およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第7速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第8速段は、クラッチC2およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第8速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cとが互いに接続される。更に、ブレーキB1により複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第9速段は、クラッチC3およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第9速段の形成に際しては、クラッチC3により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。後進段は、クラッチC3およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進段の形成に際しては、クラッチC3により入力軸20i(第3リングギヤ23r)と複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、ブレーキB2により複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。
上述のように、自動変速機20Jにおいても、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2の係脱により第1速段から第9速段までの前進段および後進段を形成することができる。すなわち、自動変速機20Jにおいても、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置(特開2010−038168号公報参照)に対して3つの変速段(前進第3速段、第7速段および第9速段)を追加することが可能となる。この結果、自動変速機20Jでは、最高速段である前進第9速段の追加によりスプレッドをより大きくして、特に高車速時の車両の燃費や各変速段での加速性能を向上させることが可能となる。更に、中間段(前進第3速段および第7速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)して変速フィーリングを向上させることができる。従って、自動変速機20Jによっても、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を良好に向上させることが可能となる。また、シングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成されるCR−CR式の複合遊星歯車機構250を採用すれば、当該複合遊星歯車機構250の回転要素間の噛み合い損失を低減させて自動変速機20Jにおける動力の伝達効率をより向上させると共に、部品点数を削減して装置全体の重量増を抑制しつつ組立性を向上させることが可能となる。
図21は、本開示の第2実施形態における他の変形態様の自動変速機20Kを含む動力伝達装置10Kの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Kでは、当該自動変速機20Kの第4回転要素である複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図21に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも大きく定められている。また、自動変速機20Kにおいて、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、複合遊星歯車機構250の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Kにおいても、上述の自動変速機20Jと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図22は、本開示の第2実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Lを含む動力伝達装置10Lの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Lでは、当該自動変速機20Lの第1回転要素である複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図22に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。また、自動変速機20Lにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、複合遊星歯車機構250の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Lにおいても、上述の自動変速機20Jと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図23は、本開示の第2実施形態における他の変形態様の自動変速機20Mを含む動力伝達装置10Mの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Mは、シングルピニオン式の第1遊星歯車21とダブルピニオン式の第2遊星歯車22とを組み合わせて構成される複合遊星歯車機構としてのラビニヨ式遊星歯車機構25と、シングルピニオン式の第3遊星歯車230とを含む。図23に示す例において、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成する第1および第2遊星歯車21,22と、第3遊星歯車23とは、発進装置12すなわちエンジン側(図1における右側)から、第3遊星歯車23、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。
図示するように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cには、第1ギヤ列G1の第1ドライブギヤ(外歯歯車)26が同軸に常時連結され、第1キャリヤ21cは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素として機能する。更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2回転要素)には、第2ギヤ列G2の第2ドライブギヤ(外歯歯車)28が同軸に常時連結されている。図23に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。また、第3遊星歯車230の第3サンギヤ23sは、入力軸20iに常時連結されており、当該入力軸20iと常時一体に回転または停止する。
更に、自動変速機20Mは、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの動力伝達経路を変更するためのクラッチC1(第3係合要素)、クラッチC2(第4係合要素)、ブレーキB1(第1係合要素)、ブレーキB2(第2係合要素)、ブレーキB3(第5係合要素)、およびクラッチC5(出力側係合要素)を含む。
クラッチC1は、入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。ブレーキB1は、第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cおよびラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第3キャリヤ23cおよび第2サンギヤ22sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して固定するものである。ブレーキB3は、第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rをトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第3リングギヤ23rのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
自動変速機20Mでは、図24に示す速度線図での並び順に従い、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sが当該自動変速機20Mの第1回転要素とされ、第1リングギヤ21rが自動変速機20Mの第2回転要素とされ、第1キャリヤ21cが自動変速機20Mの第3回転要素とされ、第1サンギヤ21sが自動変速機20Mの第4回転要素とされる。また、第3サンギヤ23sが自動変速機20Mの第5回転要素とされ、第3キャリヤ23cを自動変速機20Mの第6回転要素とされ、第3リングギヤ23rが自動変速機20Mの第7回転要素とされる。
そして、自動変速機20Mでは、クラッチC1,C2,C5、ブレーキB1,B2およびB3を図25に示すように係合または解放させて上述の第1〜第7回転要素の接続関係を変更することで、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの間に前進回転方向に9通りおよび後進回転方向に1通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第9速段の前進段および後進段を設定することができる。
具体的には、自動変速機20Mの前進第1速段は、クラッチC1およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、前進第1速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第4回転要素)とが互いに接続される。更に、ブレーキB2によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2回転要素)がトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。前進第2速段は、クラッチC1およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第2速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cおよびラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第1および第6回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第3速段は、クラッチC5およびブレーキB3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第3速段の形成に際しては、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。更に、ブレーキB3により第3遊星歯車230の第3リングギヤ23r(第7回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。前進第4速段は、クラッチC1およびブレーキB3を係合させると共に、残余のクラッチC2,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第4速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB3により第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第5速段は、クラッチC1およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC2、ブレーキB1,B2およびB3を解放させることにより形成される。すなわち、前進第5速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第6速段は、クラッチC1およびC2を係合させると共に、残余のブレーキB1,B2およびB3を解放させることにより形成される。すなわち、前進第6速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、クラッチC2により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2回転要素)とが互いに接続される。
前進第7速段は、クラッチC2およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1、ブレーキB1,B2およびB3を解放させることにより形成される。クラッチC2により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第8速段は、クラッチC2およびブレーキB3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第8速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rとが互いに接続される。更に、ブレーキB3により第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第9速段は、クラッチC2およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC1,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第9速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20i(第3サンギヤ23s)とラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rとが互いに接続される。更に、ブレーキB1により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cおよびラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。後進段は、ブレーキB2およびB3を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進段の形成に際しては、ブレーキB2によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。更に、ブレーキB3により第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
上述のように、自動変速機20Mでは、クラッチC1,C2,C5、ブレーキB1,B2およびB3の係脱により第1速段から第9速段までの前進段および後進段を形成することができる。そして、自動変速機20Mでは、前進第3速段、第5速段および第7速段が形成される際に、クラッチC1,C2およびブレーキB3の何れかとクラッチC5とが係合させられる。このようにクラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、当該出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転する第2ドリブンギヤ29に第2ドライブギヤ28を介して連結された第1リングギヤ21r(何れかの回転要素)が出力ギヤ20oに対して第2ギヤ列G2のギヤ比gr2に応じた回転速度で回転する。また、クラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素である第1キャリヤ21cは、出力ギヤ20oに対して第1ギヤ列G1のギヤ比gr1に応じた回転速度で回転する。従って、クラッチC1,C2およびブレーキB3の何れかとクラッチC5とを係合させることで、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rと第1キャリヤ21cとの間に、第1および第2ギヤ列G1,G2のギヤ比gr1,gr2に応じた回転速度差を生じさせることができる。これにより、自動変速機20Mにおいても、クラッチC1,C2、ブレーキB1,B2およびB3の何れか2つを選択的に係合させることにより得られるもの以外の変速段を形成することが可能となる。
すなわち、ブレーキB3の係合により第3遊星歯車230の第3キャリヤ23c(第6回転要素)を介してラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第1回転要素)に入力軸20iからのトルクが伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図24に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cを前進第4速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第2速段におけるギヤ比γ2よりも小さく、かつ前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも大きいギヤ比γ3の前進第3速段を形成することが可能となる。
また、クラッチC1の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第4回転要素)に入力軸20iからのトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図24に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第4速段の形成時よりも増速させると共に、第1キャリヤ21cを前進6速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも小さく、かつ前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも大きいギヤ比γ5の前進第5速段を形成することが可能となる。
更に、クラッチC2の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギア21r(第2回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図24に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cを前進第8速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも小さく、かつ前進第8速段におけるギヤ比γ8よりも大きいギヤ比γ7の前進第7速段を形成することが可能となる。
上述のように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(出力要素)以外の第2サンギヤ22s、第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに入力軸20i側からのトルクが選択的に(順番に)伝達される自動変速機20Mでは、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置に対して3つの変速段(前進第3速段、第5速段および第7速段)を追加することができる。この結果、自動変速機20Mでは、中間段(前進第3速段、第5速段および第7速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)することが可能となり、各変速段での加速性能や変速フィーリングを向上させることができる。従って、自動変速機20Mにおいても、変速段の多段化により車両の燃費を向上させると共にドライバビリティーを良好に向上させることが可能となる。
また、自動変速機20Mにおいても、4要素式の複合遊星歯車機構であるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1および第2ギヤ列G1,G2とクラッチC5とを組み合わせることで、装置全体の大型化や部品点数の増加を抑制しつつ、変速段の多段化を図ることが可能となる。更に、自動変速機20Mにおいても、図23に示すように、ブレーキB2を出力ギヤ20oの軸心(第2軸)の周りに配置することができるので、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲(エンジンとは反対側の端部側)における体格の増加を抑制することが可能となる。
図26は、本開示の第2実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Nを含む動力伝達装置10Nの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Nは、上述の自動変速機20Mにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2回転要素)の代わりに第2サンギヤ22s(第1回転要素)に第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28を同軸に常時連結したものに相当する。また、自動変速機20Nにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、ブレーキB2は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Nにおいても、上述の自動変速機20Mと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図27は、本開示の第2実施形態における他の変形態様の自動変速機20Pを含む動力伝達装置10Pの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Pは、上記自動変速機20Mにおいてラビニヨ式遊星歯車機構25をシングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成されるCR−CR式の複合遊星歯車機構250で置き換えたものに相当する。図示するように、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cには、第1ギヤ列G1の第1ドライブギヤ(外歯歯車)26が同軸に常時連結され、第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cは、複合遊星歯車機構250の出力要素として機能する。また、複合遊星歯車機構250の第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22r(第2回転要素)には、第2ギヤ列G2の第2ドライブギヤ(外歯歯車)28が同軸に常時連結されている。図27に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。
また、自動変速機20PのクラッチC1は、入力軸20i(第3サンギヤ23s)と複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第4回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20i(第3サンギヤ23s)と複合遊星歯車機構250の第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22r(第2回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。ブレーキB1は、第3遊星歯車230の第3キャリヤ23cおよび複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第3キャリヤ23cおよび第1サンギヤ21sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構250の第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22r(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して固定するものである。ブレーキB3は、第3遊星歯車230の第3リングギヤ23rをトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第3リングギヤ23rのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
自動変速機20Pでは、図28に示す速度線図での並び順に従い、複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sが当該自動変速機20Pの第1回転要素とされ、第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22rが自動変速機20Pの第2回転要素とされ、第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22cが自動変速機20Mの第3回転要素とされ、第2サンギヤ22sが自動変速機20Mの第4回転要素とされる。また、第3サンギヤ23sが自動変速機20Pの第5回転要素とされ、第3キャリヤ23cを自動変速機20Pの第6回転要素とされ、第3リングギヤ23rが自動変速機20Pの第7回転要素とされる。
上述のように構成される自動変速機20Pにおいても、クラッチC1,C2,C5、ブレーキB1,B2およびB3の係脱により第1速段から第9速段までの前進段および後進段を形成することができる。すなわち、自動変速機20Pにおいても、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置に対して3つの変速段(前進第3速段、第5速段および第7速段)を追加することが可能となる。この結果、自動変速機20Pでは、中間段(前進第3速段、第5速段および第7速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)することができるので、各変速段での加速性能や変速フィーリングを向上させることが可能となる。従って、自動変速機20Pにおいても、変速段の多段化により車両の燃費を向上させると共にドライバビリティーを良好に向上させることができる。
また、シングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成されるCR−CR式の複合遊星歯車機構250を採用すれば、当該複合遊星歯車機構250の回転要素間の噛み合い損失を低減させて自動変速機20Pにおける動力の伝達効率をより向上させると共に、部品点数を削減して装置全体の重量増を抑制しつつ組立性を向上させることが可能となる。更に、自動変速機20Pにおいても、図27に示すように、ブレーキB2を出力ギヤ20oの軸心(第2軸)の周りに配置することができるので、複合遊星歯車機構250の周囲(エンジンとは反対側の端部側)における体格の増加を抑制することが可能となる。
図29は、本開示の第2実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Qを含む動力伝達装置10Qの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Qでは、当該自動変速機20Qの第1回転要素である複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図29に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。また、自動変速機20Qにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構250の第1キャリヤ21cおよび第2リングギヤ22r(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されている。このように構成される自動変速機20Qにおいても、上述の自動変速機20Pと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図30は、本開示の第2実施形態における他の変形態様の自動変速機20Rを含む動力伝達装置10Rの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Rでは、当該自動変速機20Rの第4回転要素である複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図30に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも大きく定められている。このように構成される自動変速機20Rにおいても、上述の自動変速機20Pと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図31は、本開示の第3実施形態における自動変速機20Sを含む動力伝達装置10Sの概略構成図である。なお、自動変速機20Sの構成要素のうち、上述の自動変速機20等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図31に示す自動変速機20Sは、上述の自動変速機20において第3遊星歯車23とクラッチC4とを省略したものに相当する。自動変速機20Sにおいて、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、図示するように、発進装置12すなわちエンジン側(図31における右側)から、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。また、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rには、第1ギヤ列G1の第1ドライブギヤ(外歯歯車)26が同軸に常時連結され、第1リングギヤ21rは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素として機能する。更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)には、第2ギヤ列G2の第2ドライブギヤ(外歯歯車)28が同軸に常時連結されている。図31に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。
また、自動変速機20SのクラッチC1は、入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)すると共に第1サンギヤ21sのトランスミッションケース11に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に回転不能に固定(接続)することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定するものである。クラッチC5は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
図32は、自動変速機20Sにおける入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である(ただし、入力軸20iの回転速度を値1とする)。また、図33は、自動変速機20Sの各変速段とクラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を示す作動表である。
自動変速機20Sでは、図32に示す速度線図での並び順に従い、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sが当該自動変速機20Sの第1回転要素とされ、第1キャリヤ21cが自動変速機20Sの第2回転要素とされ、第1リングギヤ21rが自動変速機20Sの第3回転要素とされ、第2サンギヤ22sが自動変速機20Sの第4回転要素とされる。そして、自動変速機20Sでは、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2を図33に示すように係合または解放させて上述の第1〜第4回転要素の接続関係を変更することで、入力軸20iから出力ギヤ20oまでの間に前進回転方向に7通りおよび後進回転方向に1通りの動力伝達経路、すなわち第1速段から第7速段の前進段および後進段を設定することができる。
具体的には、自動変速機20Sの前進第1速段は、クラッチC1およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、前進第1速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)とが互いに接続される。更に、ブレーキB2によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)がトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。前進第2速段は、クラッチC1およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第2速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)がトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第3速段は、クラッチC1およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC2,C3、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第3速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第4速段は、クラッチC1およびC2を係合させると共に、残余のクラッチC3,C5、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第4速段の形成に際しては、クラッチC1により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22sとが互いに接続される。更に、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)とが互いに接続される。
前進第5速段は、クラッチC2およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3、ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第5速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。前進第6速段は、クラッチC2およびブレーキB1を係合させると共に、残余のクラッチC1,C3,C5およびブレーキB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第6速段の形成に際しては、クラッチC2により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cとが互いに接続される。更に、ブレーキB1によりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sがトランスミッションケース11に回転不能に固定される。
前進第7速段は、クラッチC3およびC5を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,ブレーキB1およびB2を解放させることにより形成される。すなわち、前進第7速段の形成に際しては、クラッチC3により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)とが互いに接続される。更に、クラッチC5により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29と出力ギヤ20o(第1ドリブンギヤ27)とが互いに接続される。後進段は、クラッチC3およびブレーキB2を係合させると共に、残余のクラッチC1,C2,C5およびブレーキB1を解放させることにより形成される。すなわち、後進段の形成に際しては、クラッチC3により入力軸20iとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sとが互いに接続される。更に、ブレーキB2により第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29、すなわち第2ドライブギヤ28を介して第2ドリブンギヤ29に連結される第1キャリヤ21cがトランスミッションケース11に対して回転不能に固定される。
上述のように、自動変速機20Sでは、クラッチC1〜C3,C5、ブレーキB1およびB2の係脱により第1速段から第7速段までの前進段および後進段を形成することができる。そして、自動変速機20Sでは、前進第3速段、第5速段および第7速段が形成される際に、クラッチC1〜C3の何れかとクラッチC5とが係合させられる。このようにクラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、当該出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転する第2ドリブンギヤ29に第2ドライブギヤ28を介して連結された第1キャリヤ21c(何れかの回転要素)が出力ギヤ20oに対して第2ギヤ列G2のギヤ比gr2に応じた回転速度で回転する。また、クラッチC5を係合させた状態で出力ギヤ20oが回転すると、ラビニヨ式遊星歯車機構25の出力要素である第1リングギヤ21rは、出力ギヤ20oに対して第1ギヤ列G1のギヤ比gr1に応じた回転速度で回転する。従って、クラッチC1〜C3の何れかとクラッチC5とを係合させることで、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rと第1キャリヤ21cとの間に、第1および第2ギヤ列G1,G2のギヤ比gr1,gr2に応じた回転速度差を生じさせることができる。これにより、自動変速機20Sにおいても、クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2の何れか2つを選択的に係合させることにより得られるもの以外の変速段を形成することが可能となる。
すなわち、クラッチC1の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第2サンギヤ22s(第4回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図32に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21cを前進第2速段の形成時よりも増速させると共に、第1リングギヤ21rを前進4速段の形成時よりも減速させることができる。これにより、前進第2速段におけるギヤ比γ2よりも小さく、かつ前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも大きいギヤ比γ3の前進第3速段を形成することが可能となる。
また、クラッチC2の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図32に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第4速段の形成時よりも増速させることができる。これにより、前進第4速段におけるギヤ比γ4よりも小さく、かつ前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも大きいギヤ比γ5の前進第5速段を形成することが可能となる。
更に、クラッチC3の係合により入力軸20iからラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21s(第1回転要素)にトルクが直接伝達される状態でクラッチC5を係合させると、第2ドリブンギヤ29が出力ギヤ20oおよび第1ドリブンギヤ27と一体かつ同方向に回転することで、図32に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21rを前進第6速段の形成時よりも増速させることができる。これにより、前進第6速段におけるギヤ比γ6よりも小さいギヤ比γ7の前進第7速段を形成することが可能となる。
上述のように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1リングギヤ21r(出力要素)以外の第2サンギヤ22s、第1キャリヤ21cおよび第1サンギヤ21sに入力軸20iからのトルクが選択的に(順番に)伝達される自動変速機20Sでは、第1および第2ギヤ列G1,G2およびクラッチC5が追加されていない変速装置(特開2010−216568号公報参照)に対して3つの変速段(前進第3速段、第5速段および第7速段)を追加することができる。この結果、自動変速機20Sでは、最高速段である前進第7速段の追加によりスプレッドをより大きくして、特に高車速時の車両の燃費を向上させることが可能となる。更に、中間段(前進第3速段および第5速段)の追加により、ステップ比を適正化(より大きくなるのを抑制)して変速フィーリングを向上させることができる。従って、自動変速機20Sによっても、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を良好に向上させることが可能となる。また、自動変速機20Sにおいても、4要素式の複合遊星歯車機構であるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1および第2ギヤ列G1,G2とクラッチC5とを組み合わせることで、装置全体の大型化や部品点数の増加を抑制しつつ、変速段の多段化を図ることが可能となる。更に、自動変速機20Sにおいても、図13に示すように、ブレーキB2を出力ギヤ20oの軸心(第2軸)の周りに配置することができるので、ラビニヨ式遊星歯車機構25の周囲における体格の増加を抑制することが可能となる。
図34は、本開示の第3実施形態における変形態様の自動変速機20Tを含む動力伝達装置10Tの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Tにおいて、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12すなわちエンジン側(図31における右側)から、第1遊星歯車21、第2遊星歯車22という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。また、自動変速機20Tでは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1キャリヤ21c(第2回転要素)の代わりに第1サンギヤ21s(第1回転要素)に第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が常時連結される。図34に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。このように構成される自動変速機20Tにおいても、上述の自動変速機20Sと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図35は、本開示の第3実施形態における他の変形態様の自動変速機20Uを含む動力伝達装置10Uの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Uは、上述の自動変速機20Jにおいて第3遊星歯車23を省略したものに相当する。図示するように、自動変速機20UのクラッチC1は、入力軸20iと複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21s(第4回転要素)とを互いに接続すると共に両者の接続を解除する。このように構成される自動変速機20Uにおいても、上述の自動変速機20Sと同様の作用効果を得ることが可能となる。また、シングルピニオン式の第1および第2遊星歯車21,22を組み合わせて構成されるCR−CR式の複合遊星歯車機構250を採用すれば、当該複合遊星歯車機構250の回転要素間の噛み合い損失を低減させて自動変速機20Uにおける動力の伝達効率をより向上させると共に、部品点数を削減して装置全体の重量増を抑制しつつ組立性を向上させることが可能となる。
図36は、本開示の第3実施形態における更に他の変形態様の自動変速機20Vを含む動力伝達装置10Vの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Vでは、当該自動変速機20Vの第4回転要素である複合遊星歯車機構250の第1サンギヤ21sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が同軸に常時連結されている。図36に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも大きく定められている。また、自動変速機20Vにおいて、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、複合遊星歯車機構250の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Vにおいても、上述の自動変速機20Uと同様の作用効果を得ることが可能となる。
図37は、本開示の第3実施形態における他の変形態様の自動変速機20Xを含む動力伝達装置10Xの概略構成図である。同図に示す自動変速機20Xでは、当該自動変速機20Xの第1回転要素である複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22sに第2ギヤ列G2を構成する第2ドライブギヤ28が常時連結されている。図37に示す例において、第2ギヤ列G2のギヤ比gr2は、第1ギヤ列G1のギヤ比gr1よりも小さく定められている。また、自動変速機20Xにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することにより複合遊星歯車機構250の第2サンギヤ22s(第1固定可能要素)をトランスミッションケース11に対して回転不能に固定する。更に、ブレーキB2は、複合遊星歯車機構250の第1リングギヤ21rおよび第2キャリヤ22c(第2固定可能要素)をトランスミッションケース11に接続するように構成されており、複合遊星歯車機構250の周囲に配置される。このように構成される自動変速機20Xにおいても、上述の自動変速機20Uと同様の作用効果を得ることが可能となる。
なお、上述の自動変速機20〜20Xにおいて、クラッチC1〜C5、ブレーキB1〜B3の少なくとも何れかは、ドグクラッチあるいはドグブレーキといった噛み合い係合要素とされてもよい。また、自動変速機20〜20Xにおいて、第1〜第3遊星歯車21,22,23,230におけるギヤ比λ1〜λ3は、上記説明において例示されたものには限られない。更に、第1および第2ギヤ列G1,G2の代わりに、互いに異なる速度比を有する2つの巻き掛け伝動機構が用いられてもよい。また、図7に示す自動変速機20Bにおいて、ブレーキB1は、第2ギヤ列G2の第2ドリブンギヤ29をトランスミッションケース11に接続することによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第1サンギヤ21sをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定するが、これに限られるものではない。すなわち、図38に示す自動変速機20B′のように、ブレーキB1は、入力軸20i(第1軸)の周りに配置されてもよい。これにより、ブレーキB1の摩擦板の外径(摩擦材の面積)を大きくして、摩擦板(摩擦材)の枚数の増加を抑制しつつ、当該ブレーキB1のトルク容量や熱容量を良好に確保することが可能となる。
以上説明したように、本開示の変速装置は、出力要素(21r,21c,21cおよび22c,21cおよび22r,21rおよび22c)を含む少なくとも4つの回転要素を有する複合遊星歯車機構(25,25W,250)と、それぞれ前記複合遊星歯車機構(25)の前記回転要素の何れかと入力部材(20i)を含む他の回転要素または静止部材(11)とを接続すると共に両者の接続を解除する少なくとも5つの係合要素(B1,B2,C1,C2,C3)とを含み、前記入力部材(20i)に伝達された動力を複数段に変速して出力部材(20o)に伝達する変速装置(20〜20X)において、前記複合遊星歯車機構(25,25W,250)の前記出力要素に常時連結された第1ドライブギヤ(26)と、前記出力部材(20o)に常時連結されると共に前記第1ドライブギヤ(26)から動力が伝達される第1ドリブンギヤ(27)とを含む第1ギヤ列(G1)と、前記複合遊星歯車機構(25)の前記出力要素以外の何れかの前記回転要素に常時連結された第2ドライブギヤ(28)と、該第2ドライブギヤ(28)からの動力により前記第1ドリブンギヤ(27)と同方向に回転する第2ドリブンギヤ(29)とを含み、前記第1ギヤ列とは異なるギヤ比を有する第2ギヤ列(G2)と、前記第2ドリブンギヤ(29)と前記出力部材(20o)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する出力側係合要素(C5)とを備えるものである。
すなわち、本開示の変速装置は、少なくとも5つの係合要素の少なくとも何れか2つを選択的に係合させることで複数の変速段を形成可能な変速機に対して、第1および第2ギヤ列と、出力側係合要素とを追加したものに相当する。第1ギヤ列は、複合遊星歯車機構の出力要素に常時連結された第1ドライブギヤと、出力部材に常時連結されると共に第1ドライブギヤから動力が伝達される第1ドリブンギヤとを含むものである。また、第2ギヤ列は、複合遊星歯車機構の出力要素以外の何れかの回転要素に常時連結された第2ドライブギヤと、当該第2ドライブギヤからの動力により第1ドリブンギヤと同方向に回転する第2ドリブンギヤとを含み、第1ギヤ列とは異なるギヤ比を有するものである。更に、出力側係合要素は、第2ドリブンギヤと出力部材とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除するものである。
かかる変速装置では、出力側係合要素を係合させた状態で出力部材が回転すると、当該出力部材と一体に回転する第2ドリブンギヤに第2ドライブギヤを介して連結された上記何れかの回転要素が出力部材に対して第2ギヤ列のギヤ比に応じた回転速度で回転する。また、出力側係合要素を係合させた状態で出力部材が回転すると、複合遊星歯車機構の出力要素は、出力部材に対して第1ギヤ列のギヤ比に応じた回転速度で回転する。従って、少なくとも5つの係合要素のうちの何れかと出力側係合要素とを係合させることで、複合遊星歯車機構の出力要素と上記何れかの回転要素との間に、第1および第2ギヤ列のギヤ比に応じた回転速度差を生じさせることができる。これにより、本開示の変速装置では、少なくとも5つの係合要素の少なくとも何れか2つを選択的に係合させることにより得られるもの以外の変速段を形成することが可能となる。例えば、複合遊星歯車機構の出力要素以外の回転要素に入力部材側からの動力が選択的に伝達される場合には、第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とが追加されていない変速装置に対して少なくとも3つの変速段を追加することができる。この結果、本開示の変速装置では、変速段の多段化により、車両の燃費やドライバビリティーをより向上させることが可能となる。
また、前記複合遊星歯車機構(25,25W,250)は、ギヤ比に対応して順番に並ぶ第1回転要素(21s,22s,21s,22s,21s)、第2回転要素(21c,21r,22r,21rおよび22c,21cおよび22r)、第3回転要素(21r,21c,21cおよび22c,21cおよび22r,21rおよび22c)、および第4回転要素(22s,21s、21rおよび22s,21s,22s)を有してもよく、前記出力要素は、前記第3回転要素であってもよく、前記何れかの回転要素は、前記第1、第2または第4回転要素であってもよい。このような4要素式の複合遊星歯車機構と第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とを組み合わせることで、装置全体の大型化や部品点数の増加を抑制しつつ、変速段の多段化を図ることが可能となる。
更に、前記5つの係合要素は、前記第1回転要素を前記静止部材(11)に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除する第1係合要素(B1)と、前記第2回転要素を前記静止部材(11)に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除する第2係合要素(B2)と、前記第4回転要素に前記入力部材側からの動力を伝達すると共に該動力の伝達を解除する第3係合要素(C1)と、前記第2回転要素に前記入力部材側からの動力を伝達すると共に該動力の伝達を解除する第4係合要素(C2)と、前記第1回転要素に前記入力部材側からの動力を伝達すると共に該動力の伝達を解除する第5係合要素(C3,B3)とを含んでもよい。これにより、第3、第4および第5係合要素を選択的に係合させることで、第1、第2および第4回転要素に対して選択的に入力部材側からの動力を伝達することが可能となる。
また、前記変速装置(20,20B,20C,20D,20E,20F)は、ギヤ比に対応して順番に並ぶ第5回転要素(23s)、第6回転要素(23r)、および第7回転要素(23c)を有する遊星歯車(23)と、第6係合要素とを更に備えてもよく、前記第5および第7回転要素(23s,23c)の一方は前記静止部材(11)に常時接続され、他方は前記入力部材(20i)に常時連結されてもよく、前記第3係合要素(C1)は、前記第4回転要素と前記第6回転要素とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第4係合要素(C2)は、前記第2回転要素と前記入力部材とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第5係合要素(C3)は、前記第1回転要素と前記第6回転要素とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第6係合要素(C4)は、前記第1回転要素と前記入力部材とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよい。かかる変速装置は、第1から第6係合要素の何れか2つを選択的に係合させることで第1速段から第8速段までの前進段を形成可能な変速装置に、上記第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とを追加したものに相当する。従って、この変速装置では、第1速段から第12速段、第1速段から第11速段、第1速段から第10速段、あるいは第1速段から第9速段までの前進段を形成することができる。これにより、変速段の多段化により、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を極めて良好に向上させることが可能となる。
具体的には、次のように第1から第6係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第12速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3および第6係合要素(C1,C4)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第5係合要素(C3)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第4および第6係合要素(C2,C4)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第10速段は、第4および第5係合要素(C2,C3)を係合させることにより形成される。前進第11速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第12速段は、第6係合要素(C4)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3)を係合させることにより形成される。
また、次のように第1から第6係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第11速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3および第6係合要素(C1,C4)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4および第6係合要素(C2,C4)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第4および第5係合要素(C2,C3)を係合させることにより形成される。前進第10速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第11速段は、第6係合要素(C4)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進第1段は、第2および第5係合要素(B2,C3)を係合させることにより形成される。後進第2段は、第2および第6係合要素(B2,C4)を係合させることにより形成される。
更に、次のように第1から第6係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第10速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第6係合要素(C1,C4)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第4および第6係合要素(C2,C4)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第4および第5係合要素(C2,C3)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第10速段は、第6係合要素(C4)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3)を係合させることにより形成される。
また、次のように第1から第6係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第9速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第6係合要素(C1,C4)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第4および第6係合要素(C2,C4)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4係合要素(C2)および第5係合要素(C3)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第6係合要素(C4)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3)を係合させることにより形成される。
更に、前記遊星歯車は、第3サンギヤ(23s)と、第3リングギヤ(23r)と、互いに噛合すると共に一方が前記第3サンギヤ(23s)に他方が前記第3リングギヤ(23r)に噛合する2つのピニオンギヤ(23pa,23pb)の組を自転自在かつ公転自在に複数保持する第3キャリヤ(23c)とを有するダブルピニオン式遊星歯車であってもよく、前記第5回転要素は、前記第3サンギヤ(23s)であってもよく、前記6回転要素は、前記第3リングギヤ(23r)であってもよく、前記第7回転要素は、前記第3キャリヤ(23c)であってもよい。
また、前記変速装置(20G,20H,20I,20J,20K,20L)は、ギヤ比に対応して順番に並ぶ第5回転要素(23s)、第6回転要素(23c,23r)、および第7回転要素(23r,23c)を有する遊星歯車(230,23)を更に備えてもよく、前記第5および第7回転要素の一方は前記静止部材(11)に常時接続され、他方は前記入力部材(20i)に常時連結されてもよく、前記第3係合要素(C1)は、前記第4回転要素と前記第6回転要素とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、第4係合要素(C2)は、前記第2回転要素と前記入力部材とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第5係合要素(C3)は、前記第1回転要素と前記第6回転要素とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよい。かかる変速装置は、第1から第5係合要素の何れか2つを選択的に係合させることで第1速段から第6速段までの前進段を形成可能な変速装置に、上記第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とを追加したものに相当する。従って、この変速装置では、第1速段から第9速段までの前進段を形成することができる。これにより、変速段の多段化により、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を向上させることが可能となる。
そして、この変速装置では、次のように第1から第5係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第9速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前記第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第5係合要素(C3)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第4および第5係合要素(C2,C3)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3を係合させることにより形成される。
更に、次のように第1から第5係合要素並びに出力側係合要素を係合させても、第1速段から第9速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前記第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第5係合要素(C1,C3)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第4および第5係合要素(C2,C3)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第5係合要素(C3)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3を係合させることにより形成される。
また、前記変速装置(20M,20N,20P,20Q,20R)は、ギヤ比に対応して順番に並ぶ第5回転要素(23s)、第6回転要素(23c)、および第7回転要素(23r)を有する遊星歯車(23)を更に備えてもよく、前記第5回転要素(23s)は、前記入力部材(20i)に常時連結されてもよく、前記第3係合要素(C1)は、前記第4回転要素と前記入力部材(20i)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、第4係合要素(C2)は、前記第2回転要素と前記入力部材(20i)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第5係合要素(B3)は、前記第7回転要素(23r)を前記静止部材(11)に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除してもよい。かかる変速装置も、第1から第5係合要素の何れか2つを選択的に係合させることで第1速段から第6速段までの前進段を形成可能な変速装置に、上記第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とを追加したものに相当する。従って、この変速装置では、第1速段から第9速段までの前進段を形成することができる。これにより、変速段の多段化により、車両の燃費とドライバビリティーとの双方を向上させることが可能となる。
そして、この変速装置では、次のように第1から第5係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第9速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第5係合要素(B3)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第5係合要素(C1,B3)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第8速段は、第4および第5係合要素(C2,B3)を係合させることにより形成される。前進第9速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,B3)を係合させることにより形成される。
更に、前記遊星歯車は、第3サンギヤ(23s)と、第3リングギヤ(23r)と、それぞれ前記第3サンギヤ(23s)および前記第3リングギヤ(23r)に噛合する複数の第3ピニオンギヤ(23p)を自転自在かつ公転自在に保持する第3キャリヤ(23c)とを有するシングルピニオン式遊星歯車であってもよく、前記第5回転要素は、前記静止部材(11)に常時接続される前記第3サンギヤ(23s)であってもよく、前記6回転要素は、前記第3キャリヤ(23c)であってもよく、前記第7回転要素は、前記第3リングギヤ(23r)であってもよい。
また、前記遊星歯車は、第3サンギヤ(23s)と、第3リングギヤ(23r)と、互いに噛合すると共に一方が前記第3サンギヤ(23s)に他方が前記第3リングギヤ(23r)に噛合する2つのピニオンギヤ(23pa,23pb)の組を自転自在かつ公転自在に複数保持する第3キャリヤ(23c)とを有するダブルピニオン式遊星歯車であってもよく、前記第5回転要素は、前記第3サンギヤ(23s)であってもよく、前記6回転要素は、前記第3リングギヤ(23r)であってもよく、前記第7回転要素は、前記静止部材(11)に常時接続される前記第3キャリヤ(23c)であってもよい。
更に、前記第3係合要素(C1)は、前記第4回転要素と前記入力部材(20i)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第4係合要素(C2)は、前記第2回転要素と前記入力部材(20i)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第5係合要素(C3)は、前記第1回転要素と前記入力部材(20i)とを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよい。かかる変速装置(20S,20T,20U,20V,20X)は、第1から第5係合要素の何れか2つを選択的に係合させることで第1速段から第4速段までの前進段を形成可能な変速装置に、上記第1および第2ギヤ列と出力側係合要素とを追加したものに相当する。従って、この変速装置では、第1速段から第7速段までの前進段を形成することができる。これにより、低コスト化された変速装置において、変速段の多段化により、車両の燃費やドライバビリティーを向上させることが可能となる。
そして、この変速装置では、次のように第1から第5係合要素並びに出力側係合要素を係合させることにより、第1速段から第7速段までの前進段と後進段とを形成することができる。すなわち、前進第1速段は、第2および第3係合要素(B2,C1)を係合させることにより形成される。前進第2速段は、第1および第3係合要素(B1,C1)を係合させることにより形成される。前進第3速段は、第3係合要素(C1)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第4速段は、第3および第4係合要素(C1,C2)を係合させることにより形成される。前進第5速段は、第4係合要素(C2)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。前進第6速段は、第1および第4係合要素(B1,C2)を係合させることにより形成される。前進第7速段は、第5係合要素(C3)および出力側係合要素(C5)を係合させることにより形成される。後進段は、第2および第5係合要素(B2,C3)を係合させることにより形成される。
また、前記複合遊星歯車機構(25)は、第1サンギヤ(21s)と、第2サンギヤ(22s)と、前記第1サンギヤ(21s)に噛合する第1ピニオンギヤ(21p)と、前記第2サンギヤ(22s)に噛合すると共に前記第1ピニオンギヤ(21p)に噛合する第2ピニオンギヤ(22p)と、前記第1および第2ピニオンギヤ(21p,22p)を自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ(21c)と、前記第2ピニオンギヤ(22p)に噛合する第1リングギヤ(21r)とを有するラビニヨ式遊星歯車機構であってもよく、前記第1回転要素は、前記第1サンギヤ(21s)であってもよく、前記第2回転要素は、前記第1キャリヤ(21c)であってもよく、前記第3回転要素は、前記第1リングギヤ(21r)であってもよく、前記第4回転要素は、前記第2サンギヤ(22s)であってもよい。このように、複合遊星歯車機構として、ラビニヨ式遊星歯車機構を採用すれば、部品点数を削減して変速装置全体の重量増を抑制しつつ組立性を向上させることが可能となる。
更に、前記複合遊星歯車機構(25)は、第1サンギヤ(21s)と、第2サンギヤ(22s)と、前記第1サンギヤ(21s)に噛合する第1ピニオンギヤ(21p)と、前記第2サンギヤ(22s)に噛合すると共に前記第1ピニオンギヤ(21p)に噛合する第2ピニオンギヤ(22p)と、前記第1および第2ピニオンギヤ(21p,22p)を自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ(21c)と、前記第2ピニオンギヤ(22p)に噛合する第1リングギヤ(21r)とを有するラビニヨ式遊星歯車機構であってもよく、前記第1回転要素は、前記第2サンギヤ(22s)であってもよく、前記第2回転要素は、前記第1リングギヤ(21r)であってもよく、前記第3回転要素は、前記第1キャリヤ(21c)であってもよく、前記第4回転要素は、前記第1サンギヤ(21s)であってもよい。
また、前記複合遊星歯車機構(25W)は、第1サンギヤ(21s)と、第1リングギヤ(21r)と、それぞれ前記第1サンギヤ(21s)および前記第1リングギヤ(21r)に噛合する複数の第1ピニオンギヤ(21p)を自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ(21c)とを有するシングルピニオン式の第1遊星歯車(21)と、第2サンギヤ(22s)と、第2リングギヤ(22r)と、それぞれ前記第2サンギヤ(22s)および前記第2リングギヤ(22r)に噛合する複数の第2ピニオンギヤ(22p)を自転自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(22c)とを有するシングルピニオン式の第2遊星歯車(22)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記第1サンギヤ(21s)であり、前記第2回転要素は、前記第2リングギヤ(22r)であってもよく、前記第3回転要素は、常時連結された前記第1および第2キャリヤ(21c,22c)であってもよく、前記第4回転要素は、常時連結された前記第1リングギヤ(21r)および前記第2サンギヤ(22s)であってもよい。このようなシングルピニオン式の第1および第2遊星歯車を組み合わせて構成される複合遊星歯車機構を採用しても、部品点数を削減して変速装置の重量増を抑制しつつ組立性をより向上させることが可能となる。加えて、このような複合遊星歯車機構によれば、第1遊星歯車を包囲するように第2遊星歯車を配置することができるので、変速装置の軸長をより短縮化することが可能となる。
この場合、前記第1リングギヤ(21r)および前記第2サンギヤ(22s)は、一体化されてもよく、前記複合遊星歯車機構(25W)は、前記第1ピニオンギヤ(21p)と前記第2ピニオンギヤ(22p)とが径方向からみて軸方向に少なくとも部分的に重なり合うように配置されてもよい。
更に、前記複合遊星歯車機構(250)は、第1サンギヤ(21s)と、第1リングギヤ(21r)と、それぞれ前記第1サンギヤ(21s)および前記第1リングギヤ(21r)に噛合する複数の第1ピニオンギヤ(21p)を自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ(21c)とを有するシングルピニオン式の第1遊星歯車(21)と、第2サンギヤ(22s)と、第2リングギヤ(22r)と、それぞれ前記第2サンギヤ(22s)および前記第2リングギヤ(22r)に噛合する複数の第2ピニオンギヤ(22p)を自転自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(22c)とを有するシングルピニオン式の第2遊星歯車(22)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記第2サンギヤ(22s)であってもよく、前記第2回転要素は、常時連結された前記第1リングギヤ(21r)および前記第2キャリヤ(22c)であってもよく、前記第3回転要素は、常時連結された前記第1キャリヤ(21c)および第2リングギヤ(22r)であってもよく、前記第4回転要素は、前記第1サンギヤ(21s)であってもよい。このように、複合遊星歯車機構として、2つのシングルピニオン式の遊星歯車を含む、いわゆるCR−CR式の複合遊星歯車機構を採用しても、複合遊星歯車機構の回転要素間の噛み合い損失を低減させて変速装置における動力の伝達効率をより向上させると共に、部品点数を削減して装置全体の重量増を抑制しつつ組立性を向上させることが可能となる。
また、前記複合遊星歯車機構(250)は、第1サンギヤ(21s)と、第1リングギヤ(21r)と、それぞれ前記第1サンギヤ(21s)および前記第1リングギヤ(21r)に噛合する複数の第1ピニオンギヤ(21p)を自転自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ(21c)とを有するシングルピニオン式の第1遊星歯車(21)と、第2サンギヤ(22s)と、第2リングギヤ(22r)と、それぞれ前記第2サンギヤ(22s)および前記第2リングギヤ(22r)に噛合する複数の第2ピニオンギヤ(22p)を自転自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(22c)とを有するシングルピニオン式の第2遊星歯車(22)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記第1サンギヤ(21s)であってもよく、前記第2回転要素は、常時連結された前記第1キャリヤ(21c)および前記第2リングギヤ(22r)であってもよく、前記第3回転要素は、常時連結された前記第1リングギヤ(21r)および第2キャリヤ(22c)であってもよく、前記第4回転要素は、前記第2サンギヤ(21s)であってもよい。
更に、前記第1ドライブギヤ(26)は、前記複合遊星歯車機構(25)の前記出力要素と一体に回転する外歯歯車であってもよく、前記第1ドリブンギヤ(27)は、前記第1ドライブギヤ(26)に噛合すると共に前記出力部材(20o)と一体に回転する外歯歯車であってもよく、前記第2ドライブギヤ(28)は、前記複合遊星歯車機構(25)の前記何れかの回転要素と一体に回転する外歯歯車であってもよく、前記第2ドリブンギヤ(29)は、前記第2ドライブギヤ(28)に噛合する外歯歯車であってもよい。これにより、変速装置の大型化を抑制しつつ、複合遊星歯車機構の出力要素と上記何れかの回転要素とを出力部材に連結することが可能となる。
また、前記第1ギヤ列のギヤ比および前記第2ギヤ列のギヤ比の一方は、1.00であってもよい。
更に、前記出力部材は、車両の前輪に連結されたデファレンシャルギヤに動力を伝達するものであってもよい。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。