JP6508994B2 - 緑地施工計画方法又は緑地施工方法 - Google Patents

緑地施工計画方法又は緑地施工方法 Download PDF

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本発明は、人工地盤上に緑地を施工する施工方法に関する。特に、施工地域に適合した植物相を実現する施工方法に関する。
植栽を施した公園などの緑地を施工することが行われている。そして、建造物が建て込んだ外構計画は、美しく見せることが目的なため、景観を作りだす植物を美しく並べて絵画のように見せて植えている。また地域特有の植栽を残す工夫も提案されている。
例えば、特許文献1(特開平4−145580号公報)には、植栽後の数年先や季節の変化をシミュレーションし、施工性・監理の容易性を考慮した植栽配置計画を行えるランドスケープデザインシステムに関する発明が開示されている。
特許文献2(特開2004-305069号公報)には、コンピュータに植物の種類別に導出した植物齢と三次元形状との関数を記憶し、植物毎に植栽地上の位置と種類と三次元形状とを入力する入力手段、植物毎の位置と種類と三次元形状とが記録された植栽計画図を作成する計画図作成手段、及び関数に基づき植栽計画図上の植栽の経年変化を算出する経年変化算出手段を設け、記憶手段に植物の種類別に導出した三次元形状に応じた材積推定式と材積に応じた含有炭素量推定式とを記憶し、経年変化算出手段により植栽による大気中二酸化炭素(CO)の固定量を算出し、また、記憶手段に植物のCO固定量と大気汚染物質吸収量との関係式を記憶し、経年変化算出手段により植栽による大気汚染物質の吸収量を算出する植栽計画支援方法及びプログラムが開示されている。
特許文献3(特開2002−220839号公報)には、山地等に形成された造成地において、従来その地に生えていた樹木の活用を図り、その地個性と魅力ある地域づくりを図るために、比較的緩傾斜の宅地盤と緩衝緑地とを交互に配置した雛壇型の造成地において、造成前にその地に生えていた自然林地帯のうちの一部を自然林地帯として造成地内に残置して、これら自然林地帯の自然林を、公園や造成緑地である緩衝緑地と連続させることにより一層の緑の広がりを設けた緑地形成方法が開示されている。
特許文献4(特開2001−317056号公報)には、複数種の樹木種子を用いて裸地(法面)上に生育基盤を造成する際、裸地上に予め規定された一施工単位又は予め定められた面積をブロックとして、ブロック毎に複数種の樹木種子の内の一種の樹木種子を選択樹木種子として選択して、ブロック毎に選択樹木種子を混合した植生基材を順次吹き付けて、法面に亘って 複数種の樹木種子を不規則に配列した緑化工法が開示されている。
特開平4−145580号公報 特開2004−305069号公報 特開2002−220839号公報 特開2001−317056号公報
本発明は、ビルが林立する都市空間において、植物がランダムに配置されて自然に見え、全体でみると花も咲き、緑被も確保でき、新緑も楽しめるような美しさを確保できるように計画された林床地被を含む自然の森の計画手法を提供することを目的とする。
特に、人工地盤上に樹木林、地被類を組み合わせて、施工地の環境に適した自然の森林緑地を計画する手法とその施工方法を提供する。周辺の環境に合致し、また、植生を単調とすることなく人の目を惹きつつも、維持管理を簡単にした、人工地盤上で自然に近い林地や都会における自然の森や鎮守の森あるいは里山の景観をなす、人工地盤における緑地の施工方法を提供する。
本発明は、人工地盤上にその土地に適合した自然林を再現するように緑地を整備する施工計画方法を提供することである。
施工計画は、その環境条件と植物の条件とのマッチングが重要であり、さらに、それは遷移するので、経年変化も考慮する。
これらの条件を考慮して具体的な植物の選定をする。高木樹木の外、林床と中低木を組み合わせて配置して自然観を演出するとともに、さらに、緑地利用者の目を惹く目立つ植栽を配置する。
高木樹木は、幹周(根元から1.2m高さの幹の周長(「目通り」と言うこともある))直径に着目して、異齢感のある多様性が出るように選定して配置する。
低木層は、日照条件と土壌水分条件によっていくつかのゾーンに分割して、草やコケ、シダを組みあせてゾーンの構成とする。
そして、植物は移植に伴うストレスによって、枯死するリスクがあり、植え替えが発生することが多い。ビルが林立する都市空間の植栽は、ビルが完成した後の外構工事という性格もあって、ビルが供用された後に大きな重機を用いた植え替え工事は極めて困難であるので、模擬緑地を準備して数年前から高木を中心とする馴化育成を行い、枯死のリスクを回避する。
具体的には、高木樹木を組み合わせて類型化した高木ユニットと林床相を形成する低層植物から構成して類型化した林床ゾーンを設定し、高木ユニットと林床ゾーンを組み合わせて緑地を計画し、この計画に基づいて選定した植物を施工予定地を模した環境で設定ユニットと設定ゾーンと同様に配置して馴化育成し、その後施工地に土壌ごと移植する施工方法である。
これらの諸条件を加味した本発明の主な解決手段は次のとおりである。
(1)人工躯体上に形成した人工地盤に高木層を形成する高木樹木と、林床層を形成する低層植物を含む植物を配置して、施工地域に適合した緑地を計画する緑地施工計画方法であって、
人工地盤は、起伏のあるアンジュレーションを設定し、
植物として、施工地域の環境に対応した植物を準備し、
高木樹木は、樹種と樹木姿形に基づいて類型化した高木ユニットを設定し、
低層植物は、日照条件と土壌水分条件に基づいて類型化した林床ゾーンを設定し、
審美性と持続性の観点に基づいて高木ユニットと林床ゾーンを組み合わせて配置を設定した緑地施工計画に基づき、
人工地盤とアンジュレーションも含めて施工予定地を模した事前環境を準備し、当該事前環境にて、前記緑地施工計画で設定された高木ユニットと林床ゾーンに属する植物を馴化育成し、その後施工地に土壌も含めて移植することを特徴とする緑地施工方法。
)高木ユニットは、
林内の明るさに関係する疎密の指標、林の樹齢構成に関係する目通り直径の指標、樹種の多様性に関する混交の指標を設定し、さらに、枝葉の着生高さに基づく垂直方向の階層指標を設定し、
各指標に基づいて形成される一団の群であることを特徴とする(1)記載の緑地施工方法。
)一団の群で形成される高木ユニットは、
最上層に達する樹高を持ち、ユニット内で一番大きな樹冠を備えている主景木、
最上層に樹冠を有し、主景木よりも目通り直径が小さい副景木、
主景木の樹冠より下であって、目線よりも上に枝葉を有する添景木、
目線をさえぎる高さに枝葉を有する低景木、
の4種類の観点から選定された樹木で構成されていることを特徴とする()に記載された緑地施工方法。
)低層植物は、
群生種、基本種および味付種を含む植物を、
周辺建造物と高木ユニットの樹木によって影響を受ける日照条件とアンジュレーションによって影響を受ける土壌水分条件に基づいて組み合わせて林床ゾーンを設定することを特徴とする(2)又は(3)に記載された緑地施工方法。
)根鉢の下部から横方向に延出する水平部材と、根鉢の側面を支持する垂直部材と、根鉢と垂直部材の間に介在するエキスパンドを備え、垂直部材の上から根鉢を巻き止めるバンドを備えた根鉢固定具を用いて高木樹木を植栽することを特徴とする(2)〜()のいずれかに記載の緑地施工方法。
本発明は、緑地の環境条件をシミュレーションして、適正な植物の配置を行って、その土地に適した自然林に近い緑地空間を施工することができる。
本発明は、ビルが林立する都市空間において、植物がランダムに配置されて自然に見え、全体でみると花も咲き、緑被も確保でき、新緑も楽しめるような美しさを確保できるように計画された自然の森の林床地被を含む計画手法を提供できる。
特に、人工地盤上に高木を含む樹木林と地被類を組み合わせて、施工地に適した植物を用いて、施工場所の地理的環境や周囲の環境、現地の環境に適した自然の森の施工計画方法を提供する。
自然観の高い樹木を備えた緑地は、高木層の多様性と審美性によって醸成されており、それは、樹木の疎密に基づく林内の明るさ、枝葉の着生高さ、目通りの幹の太さ、含まれる木の種類数などによって規定されることに着目して高木ユニットを規定することができた。
低層の植物は、日照の条件とアンジュレーションも加味した土壌の水分条件の観点に着目してゾーンを規定することができる。
高木層ユニットと低層植物ゾーンを組み合わせて、施工地に即した自然の持続性と審美性を演出する緑地を計画できた。
植栽する植物を模擬緑地にて、馴化栽培するので、移植後の不良交換のリスクを回避することができ、安定した緑地を実現できる。
人工地盤に係止具を設けて高木を安定させるので、浅い人工土壌においても、倒伏せず、安定させることができる。
そして、オフィスなどの商業ビルの外構にあたる部分のため、年間を通じて緑被をある程度確保しながら、山野草が多い落葉樹種を併用しつつ、話題性を確保でき、季節の移り変わりが感じられる地被を備えた樹林緑地の計画手法を実現した。
本発明の人工地盤における緑地の施工方法により、周辺の環境に合致し、また、植生を単調とすることなく人の目を惹きつつも、維持管理を簡単にした、人工地盤上で自然に近い林地や都会における自然の森や鎮守の森あるいは里山の景観をなす緑地の施工を確実に行うことができる。
植生の遷移の例を示す図。 本発明の実施形態であって、高木ユニットの配置のイメージ図の例。 本発明の実施形態であって、高木ユニットの木々の配置のイメージ図の例。 本発明の実施形態であって、竣工時の高木ユニット階層イメージ図。 本発明の実施形態であって、竣工30年後の高木ユニット階層イメージ図。 本発明の実施形態であって、基本種のゾーニングの例を示す図。 本発明の実施形態であって、基本種と群生種のゾーニングの例を示す図。 馴化栽培(プレフォレスト活用)の例を示す図。 地下支柱の例を示す図。
本発明は、施工地の属する地域の固有の自然に近い緑地を人工地盤上に施工して再現する緑地の施工計画とその計画に基づいて事前に模擬育成によって馴化育成した植物を移植する施工方法である。特に、日本などの極相として樹林を形成する地域の緑地計画、施工方法である。
人工地盤は地下躯体上に土壌を盛り土して起伏を備えたアンジュレーションを形成して構築する。なお、本発明で地下躯体とは、盛り土した土壌の下方に形成されたコンクリート構造物を指し、必ずしも、グラウンドレベルよりも下を意味するものではない。したがって、地下躯体がビルの屋上を指す場合もある。本発明は、自然林などを想定しているので、人工地盤の表面を一般の地上面として設定している。
緑地を構成する植物を、高木層を形成する樹木と林床層を形成する草や潅木に分けて類型化して日照条件や土壌水分条件を加味して、自然の持続性と審美性の観点で組み合わせて地域個性を現す緑地施工計画を立案し、施工地を模した環境にて立案された計画に基づいた植物を事前に育成して、馴化と適合性を確認して土壌を含めて移植して施工を実施する。
さらに、人工地盤は土壌深さに制限があるので、高木の傾倒防止対策として地下支柱を工夫した。
緑地計画を立案するに当たって、環境シミュレーションを行って、環境特性を把握する必要がある。植物の生育条件として、日照、風、湿度などが影響する。
日照は、施工予定地の周辺の建造物、季節の影響が大きい。建物の外壁による反射も影響する。さらに、階層的である林内においては、上層の植物の影響を受けるので、高木を選定した後の林床の照度(林内の明るさ)の変化も想定する必要がある。落葉樹木と常緑樹では、季節変動による影響が大きい。
風の影響は、直接の風当たりと土壌の乾燥に影響する。地表面の起伏や林の周辺と中央部、上層と林内でも風通しが変化する。
湿度は、土壌の水分条件に影響する。土壌の乾燥状態によって適正な植物が変化する。通常の水分状態と降雨時の雨水の流れなど一時的な状態の差もある。
したがって、環境シミュレーションは、植栽前と植栽後、植物の生長に伴う経年変化、周年性などの観点から実施する必要がある。
さらに、降雪や台風の影響も場所によっては、加味する。
<高木について>
自然緑地は一様ではなく、明るさの変化や見通し性、林床植物による地被特性によって多様性と審美性を醸し出している。
このような自然緑地を形成する設計手法として、土地の起伏によるアンジュレーションを設定し、基本となる植物相として、高木に着目して、その多様性を表す指標を分析して、複数の高木を組み合わせて性格付ける樹木の一団を高木ユニットとして設定した。なお、高木とは、10m以上の樹高を持つ樹木と設定する。
高木ユニットを構成する指標として、林内の明るさに関係する疎密の指標、林の樹齢構成に関係する目通り直径の指標、樹種の多様性に関する混交の指標、枝葉の着生高さに基づく垂直方向の階層指標を設定した。
疎密の指標は、目標とする地域の特性によって評価されて設定される。たとえば、関東地方の自然林では低密度は3本/100m2、高密度では8〜13本/100m2程度であった。さらに、樹木の生えていない草地などの空間も存在するので、この空間部分を木々の間の空間として位置づけ、ギャップと称することとする。このギャップの0本の部分と疎〜密の間で計画指標を設定することとなる。
目通り直径は、見た目の幹の太さであり、観者はアイレベルにおける樹齢を意識することとなる。発明者らの調査の結果、林の多様性は樹種の多さのほか、この目通り直径の太さにバリエーションが要素になることが判明した。
林は木々の成長に伴い全体景観が変化し、また、極相林に向かって木々の優劣が経年変化し、これを植生の遷移といい、施工計画がどの状態を予定するかによって構成される自然林の様子が決定されるので、その想定自然林にあわせて目通り直径の組み合わせが異なる。植生遷移の参考例を図1に示す。
たとえば、関東地方では、裸地、草地、先駆樹種(裸地系初期樹木)、雑木林(コナラなどの落葉樹中心の高木樹種とアカマツなど、陰樹の幼樹が生育し始める)、照葉樹林(陰樹林)(シイ、カシなど)と変化する。
一般的に馴染のある雑木林を想定すると、樹高が10m以上の樹木で幹周が40cm〜80cm以上の木々の構成がバリエーションに影響を与えていることが判明した。このバリエーションが、樹齢の混在(異齢)を印象付けている。
すなわち、太さのそろった木々が植えている状態は人工林のイメージが強く、薪炭林など定期的に伐採し、太い伐根から数本の幹が株立ちしているような林も樹齢の豊富さを印象することはできていない。
樹種の多様性に関する混交の指標は、植生の遷移について述べたとおり、想定する遷移過程において、林を構成する樹種の組み合わせが存在する。これらの樹種の木々を備えていることが自然な林の印象を与えることとなるので、施工予定地域の樹種構成を調査して、樹種と使用する数量を決定する。
枝葉の着生高さに基づく垂直方向の階層指標は、枝葉の位置と量によって、樹勢を感じさせ、その部分の景観に大きな影響を与えている。また、目線の位置に枝葉があると遮断性が発生し、林全体に奥行き感が生じ、見えないことによりその先にさらに奥があるように印象付けることができる。
施工予定地域と計画した遷移状態に応じて決められることであるが、たとえば、最大の目通り直径を有し林の骨格を成す木を主景木、主景木より細いが樹高は同程度の副景木、主景木よりも下方に枝葉を有する添景木、目線の位置に枝葉を有する低景木の4種類の階層と細長く上のほうに小さく枝葉を繁らせている負け木を加えて4階層に分けることができる。
たとえば、関東地方の雑木林を想定すると、林の先端は10m以上であって、主景木、副景木、添景木および負け木は目線よりも上に枝葉があって、アイレベルでは、幹が見えていることとなり、目通り直径が強く意識されることとなる。この水平の幹の太さの分布が自然性を表す要素のひとつである。そして、低景木を加えることによって、その部分の目線がさえぎられ、奥行き感が発生する。樹冠部の枝葉は、木々の勢力を示し、大きな枝張りはその地域の景観に大きな影響を与える。副景木や添景木は、若木のイメージを与え、次代の後継となる可能性を持っている。
高木に関しては、これらの指標を元に一団のユニットのレベルを決定する。
施工予定地は決まっているので、その施工地域の植生の遷移のどの過程にするか決定する。
施工予定地の林の全体イメージを企画する。この企画に先立ち、周辺の建造物などの影響による日照や風の環境条件を把握する。この環境は、周年性があるので、季節による変化も把握する。
この全体イメージを実現するように、高木ユニットの構成を決める。たとえば、空き地のギャップとユニット1〜3の4種類に設定する。
各ユニットの構成は、具体的に主景木に相当する木々は個々に選定されるなど、該当レベルの木々から選択されて構成されることとなるので、工業製品のように同じではなく、植物群として同等の一団を形成することとなる。
<低層植物について>
低層植物は、林の地面を覆うように存在する植物であり、林床相を形成する植物とも言われる。樹木の下方に成育しており、通常の林では上方の樹木の枝葉の影響で明るさが制限され、落葉樹と常緑樹では日照の周年変化も影響がでる。落葉樹の下では冬から春にかけては十分な日照が得られるので、スミレなどの春咲きの草花が咲くことができる。
土壌の乾湿によっても適正があるので、アンジュレーションによって、乾きやすい丘部、湿りがちな窪地、雨水などが流れる谷筋などによって、常時の土壌湿度の環境条件と雨期の水量が異なるのでそれに適合した植物を選定する必要がある。
施工予定地域の林床植物を調査して、候補植物を選定する。林床植物は、コケ、シダ、草、笹、潅木などが含まれる。たとえば、林床を広く覆う基本種や群生種、数は少ないが彩りを添える単独種や味付け種などに区分される。
これらを、耐陰性、季節性や乾湿適合性などの観点から分類して組み合わせをゾーンとして設定した。
<馴化育成>
人工地盤に自然林などの緑地を再現する施工においては、建造物が建て込んでおり、すでに供用が始まった後に、枯死などによる植え替えは困難である。通常の工事では、建物工事が一段落した後に植栽工事が始まり、移植された植物の活着の確認は月日を要し、植え替えなどの補植が発生することがある。しかし、高木の移植には大きな重機が必要になり、建物が近接し、多くの人々が活動しているビル群の間で植え替え作業をすることは困難である。
本発明では、本施工に先立ち、本施工の人工地盤を模した環境を造成し、この模擬環境に本施工数年前に移植して馴らし育成をし、確実性を高めることとする。
模擬の人工地盤は、土壌深さ、アンジュレーションも本施行と同様にし、植栽も計画にしたがって高木ユニット、低層植物ゾーンにあわせて行うことが好ましい。
模擬人工地盤の規模は、計画地と同様であることが望ましいが、計画地でも再工事がしにくい場所に限って、設定することもできる。
模擬人工地盤での確認栽培を行った植物は、模擬人工地盤の土壌も含めて移植を行うことが好ましい。なじんだ土壌を用いることによって、植物に与えるダメージを少なくすることができる。
<地下支柱について>
自然林の再現をするには、移植に伴う支柱は露出しないことが好ましい。このような支柱構造として、根鉢を押さえる地下支柱が開発されている。土中深く支持杭を打てない地下躯体でも高木に採用可能な地下支柱も提案されている。
予備試験の結果、根鉢に回転力が加わるような力が作用すると、傾倒するリスクがあることが判明した。この回転力に抵抗する構成を設けた地下支柱を工夫することにより、傾倒のリスクを低減することができた。
根鉢の下部から横方向に延出する水平部材と根鉢の側面を支持する垂直部材と根鉢と垂直部材の間に介在するエキスパンドを備え、垂直部材の上から根鉢を巻き止めるバンドを備えた根鉢固定具を用いて高木樹木を植栽する。特に、負け木は、樹高の割に根鉢が小さく、風圧によって回転して、倒伏するリスクが大きいので、この固定具を適用するのが適している。
本発明の実施の形態について、説明する。
図2は、本発明の緑地の施工方法を適用して人工地盤上に自然の森を形成する場合の緑地の配置の一例であり、図3は、図2記載の緑地上に配置される植物をグループ分けして高木をユニット化して示したものである。
本実施態様は、関東地方の落葉樹を主体とした植生の遷移状態をイメージしている。一般的に雑木林と称される状態である。この状態の林では、落葉している冬から春先にかけては明るい林内であり、春先に咲く野草も多く、秋には紅葉するなど周年変化が大きい。そして、極相を形成する常緑陰樹であるカシやシイの幼木も見られるようになっている。この自然は多様性に富んでいる林を形成している。
最初に、緑地の林内の明るさを想定し、高木の密度に着目して、緑地の全体イメージを作成した。1、2、3はそれぞれ人工地盤上の高さのある樹木(高木)を含むユニットを示し、1が最も植生密度が低いユニット、3が最も植生密度が高いユニットであり、2が1と3の中間の植生密度のユニットである。Gは高木が存在しないギャップである。
これら1、2、3のユニット及びギャップGにふさわしい植物の選択を行うにあたっては、植生を高木層と林床に分けて調査を行う。
高木層については、人工地盤が設置される場所を含む地域のさまざまな自然樹林の調査を行い、代表的な樹林を抽出して、それぞれを構成する樹木を選定する。すなわち、人工地盤が設置される場所を含む地域の温度、湿度、日照、風向、平均風速、降水量、降雪量、積雪量を検討して、おおむね同条件の植生がみられる地域と同じ植物が選択されることになる。
同時に、自然樹林を構成する樹木の配置、高さ、枝張り、目線の太さを示す幹周などを測定、観察し、それぞれの構成上の特性を導き出す。これは、人工地盤上に自然の森を形成する場合に、自然の森に見えるように植栽を行う際の景観作成のために用いるものである。
また、林床についても、植生に用いる灌木、山野草その他の草花、苔類についても、人工地盤が設置される場所を含む地域のさまざまな自然林や公園の調査を行い、高木層と共生する、自然の森の林床を形成する植物を選定する。こちらも、人工地盤が設置される場所を含む地域の温度、湿度、日照、風向、平均風速、降水量、降雪量、積雪量を検討して、おおむね同条件の植生がみられる地域と同じ植物が選択されることになる。
東京都心に自然の森を作ることを目的とした場合を例にとって植物の選定を説明する。まず、東京をはじめとした南関東地域の自然林や公園を調査し、実際に生育している植物を選定した。
高木層について、自然林や公園の調査にあたり、面積、樹木密度、樹高、幹周、株立、樹木間距離、樹種分布の7項目を調査して評価を行い、自然の美しい森を再現するための評価軸として、審美性、環境の豊かさや多様性、生育の健全性の3つを設定し、これらの評価を高めるための具体的な要素を調査結果から導き出した結果、高木の密度の多様性(疎密)、異齢性(構成する木々の樹齢の変化≒幹の太さの変化)、混交性(樹種数と比率)の3要素を実現することにより自然の美しい森が構築できることが判明した。
なお、本実施態様では高木とは10m以上の樹高を持つ木々および10m以上の樹高に成長する可能性のある樹木とする。
疎密については、例えば100平方メートルあたりの高木本数を密度が高い部分で8〜13本、低い部分で3本程度と変化をつけることで、高木の密度の多様性による林床の光と影のコントラストがくっきりとして美しい森の景観を作り出すものである。異齢については、樹木の高さが10mを超えるような森の場合、景色として人の印象に残るのはアイレベルであるため、幹周が0.2mから1.0m程度までというバリエーションの多さ、すなわち、幹の太さの多様性ということができ、異齢が印象を大きく左右する。幹周の分布に幅があり、かつ、特定の幹周の分布が突出していると、メリハリのついた風景ということができる。混交については、同じ樹木のみ、例えば針葉樹のみであると、人工林のようにみえて、自然林らしくなくなることから、異なる種類の樹木、それも、常緑樹と落葉樹を適当に混ぜて植えておくことにより、自然の森の多様性を表現することができる。加えて、自然林の内部では、ある樹木より背の低い樹木は、上にある樹木の葉と葉の間のわずかな空間を縫って通ってきた光を利用することにより、木々の間の空隙を縫うように育ち、木の上部のみに葉をつけた、樹木相互の競争に負けた劣勢木(負け木)が見られることがあり、このような負け木が景観の多様性を生み出す一つの要素である。
以上から、疎密、異齢、混交の3要素を実現するための方法として、多様な環境と高い審美性をあわせ持つ自然の森は、垂直方向に階層があり、一団の群を形成する高木のまとまり(ユニット)と、樹木が生えていない空き地(ギャップ)の組み合わせによって構成されると想定し、異齢を再現するために、ユニット内の高木は森の上部を構成する高さ5mから12mの層に枝葉を持ち、幹周が0.8m以上の森の骨格をなす木(主景木)、主景木と同じく高さ5mから12mの層に枝葉を持ち、幹周が0.4m以上0.8m未満の数十年後に主景木に成長する木(副景木)、高さ3mから上の層に緑のボリュームを与え、幹周0.4m未満の木(添景木)、高さ1mから5mの層の枝葉で視線を止め、幹周0.4m内外の木(低景木)の、樹齢の異なる4種類の木の組み合わせにより構成し、さらに実際の自然の森にみられる、樹木相互の競争に負けた劣勢木(負け木)を足すことにより、景観の多様性を向上させる計画とした。
低景木は、その枝葉で視線をさえぎることとなり、その奥が見えないことによって、周辺の見通しと合わせて林の奥行き感を醸成している。
すなわち、これら4種類の階層の樹木の樹齢をそれぞれ異ならせることで、高木層全体の構造は時間を経ても同じ階層関係を保ったまま成長するものとなり、自然林らしく多様な景観を得ることができるものである。4種類の樹木中に、自然林に見られる、樹木相互の競争に負けた負け木(劣勢木)を加えると、より自然林らしい景観を作成することができる。
ユニット1、2、3については、1が最も植生密度が低いユニット、3が最も植生密度が高いユニットであり、2が1と3の中間の植生密度のユニットであるが、ユニット1は森の天蓋、あるいは、ひさし状の、キャノピーを形成するもので、主景木と副景木により形成される。ユニット2は、アイレベルの視線を確保しながら視線よりやや高い層に緑量を加えるもので、ユニット1に添景木を加えて構成した。ユニット3は、視線の隙間が狭く、明度が低く他のユニットと関連して林に濃淡を与える。ユニット内の高木の割合は、実際に観察した林地を元に、例えば主景木:副景木:低景木(及び添景木)=2:3:2を基本とした。これら密度の異なるユニット1、2、3とギャップGを組み合わせることにより、森の中で疎密を生み出す計画とした。具体的な配置は計画地の周辺や敷地内通路、建物等との位置関係といった、計画地の状況に応じて、ユニット1を基本としながら要所にユニット2及びユニット3、ギャップGを点在させて、必要な緑量と景観の変化や奥行きを形成するようにした。
ここで、選定された高木層の樹木は以下の通りである。
(高木層の選定)
高木層を構成する樹木として、以下の樹種をまず選定した。タブノキ、シロダモは比較的風に強いことから、防風の役に立てることを考慮して選定したものである。また、ケヤキ、エノキ、イチョウ、ムクノキ、クスノキ等の、単独で大木に育つ樹種は選定しなかった。そして、選定された樹木の中から実際に緑化に用いる樹木を選択するものである。
選定した樹木は、以下の通りである。
(常緑樹)
マテバシイ、スダジイ、コジイ、アラカシ、シラカシ、アカガシ、アカマツ、サカキ、タブノキ、シロダモ、カヤ、サザンカ、ヤブツバキ
(落葉樹)
クヌギ、アベマキ、コナラ、エゴノキ、イヌシデ、シバグリ、イロハモミジ、ウメ、ヤマツツジ、ヤマザクラ、コブシ、カシワ、アカメガシワ、ヌルデキリ、アオギリ、ネムノキ
林床についても、「自然の林床の創出」、「都心で健全で安定した生育の確保」、「都心ではめずらしい山野草を配置」、を具体化するために、自然林や公園の調査にあたり、山野草の生育環境把握を中心に自然林の観察を行った。具体的には、群生して花を咲かせる種について季節ごとの生育状況を観察し、その結果から自然の森の林床として、低景木より高さの低い潅木を含めるものとし、山野草などの群生する種(群生種)、群生種と共生しつつ緑を確保するベースとなる種(基本種)、景観に変化をつける種(味付種)、単独で視線を集める種(単独種)の4種類に分類して選定した。味付種及び単独種は、単独で配置して人の目を惹き、景観に興趣を加えていわばアクセントをつける。同じ植物が、これら4分類で重複することも生じ得る。これら4分類の植物の中から選定して混植することにより、自然の森の景観を得るようにした。
林床計画は、図4に示すように緑被を確保する種(群生種、基本種)と花物山野草(味付種)、アクセント種(単独種等)を重ね合わせて行われる。
ここで、選定された林床の植物は以下の通りである。
(林床の選定)
林床を構成する植物として、以下の植物を選定した。そして、選定された植物の中から実際に緑化に用いる植物を選択するものである。
選定した植物は、以下の通りである。
林床を形成する低層植物の季節性と特性を表1に例示する。
(群生種)
アキノキリンソウ、アズマネザサ、ウツボグサ、ウバユリ、ウマノアシガタ、エビネ、オオバイノモトソウ、オオバギボウシ、オキナグサ、オトギリソウ、カタクリ、カワラナデシコ、キキョウ、キツネノカミソリ、キツネノボタン、クマガイソウ、ゲンノショウコ、コウヤワラビ、コバノタツナミソウ、コヤブラン、サラシナショウマ、シャガ、ジュウモンジシダ、シュンラン、センニンソウ、タチツボスミレ、タマシダ、チゴユリ、ツボスミレ、ツワブキ、ニリンソウ、ノシラン、ノビル、ノブキ、ハナミョウガ、ヒメシャガ、フクジュソウ、ベニシダ、ヘビイチゴ、ホシダ、ホタルカズラ、ホトトギス、ミヤコワスレ、ミヤマヨメナ、ムラサキサギゴケ、ヤブカンゾウ、ヤブコウジ、ヤブソテツ、ヤブラン、ヤマドリゼンマイ、ヤマブキソウ、ヤマユリ、ユキノシタ、リュウキュウノギク、リュウノウギク、リョウメンシダ、リンドウ、
(群生種(流れや水場に配置されるもの))
イノモトソウ、ウバユリ、コバギボウシ、サギソウ、サワラン、シャガ、セキショウ、セリ、チゴユリ、トキソウ、ニリンソウ、ミツバ、ヤマブキソウ、ユキノシタ、リュウキンカ
(基本種)
イカリソウ、イヌガンソク、イノモトソウ、イワガネソウ、ウラシマソウ、オオバノイノモトソウ、オオベニシダ、オニヤブソテツ、カラタチバナ、カンアオイ、カンスゲ、キチジョウソウ、キッコウハグマ、キヅタ、ゲンノショウコ、コクラン、コバノタツナミソウ、シシガシラ、ジャノヒゲ、シュンラン、ショウジョウバカマ、セントウソウ、センニンソウ、センリョウ、タチシノブ、タチツボスミレ、テイカカズラ、ドクダミ、ナガバジャノヒゲ、ナルコユリ、ノシラン、ハナミョウガ、ヒトリシズカ、ヒメヤブラン、フッキソウ、フユイチゴ、ヘビイチゴ、ホウチャクソウ、ホソバカナワラビ、マンリョウ、ミツバアケビ、モミジガサ、ヤブコウジ、ヤブミョウガ
(基本種(流れや水場に配置されるもの))
シロバナサギゴケ、セキショウ、キチジョウソウ、ミツバ、セリ
(味付種)
イヌワラビ、オオバギボウシ、カンアオイ、シケシダ、シシガシラ、ジャノヒゲ、ジュウモンジシダ、スダヤクシュ、ツルカノコソウ、ツワブキ、ノシラン、ハンショウヅル、ヒメウズ、ベニシダ、ホソバカナワラビ、ミゾシダ、ムラサキケマン、ヤブソテツ、ヤブラン、ヤマユリ、ユキザサ
(単独種)
アズマネザサ、サラシナショウマ、ベニシダ、ユキノシタ
(高木ユニットの例)
各ユニット内に高木層を配置するにあたっては、自然に見えるよう、ユニット内の樹木の密度や、樹齢、幹の太さを異ならせる。これにより、景観が単調となることを防止して、自然にみえる森を形成することができる。また、ビル風を考慮し、防風のために風に比較的強い種類の樹種を追加することも一案である。
同じ樹種の樹木を複数選んで同一ユニット内に配置する場合には、樹齢を異ならせることが、景観を自然に見せる上で望ましい。
都市景観の中に配置される森であることを考慮すると、見た目が非常に重要であり、年間を通じて一定の緑で覆われることが必要となるため、各ユニット内には場所に適した常緑樹を配置する必要がある。同時に、自然の森は落葉樹が中心とし、常緑樹であって陰樹の幼樹も生育しているので、カシやシイなどの常緑樹をユニット内に配置する。
また、図5、に示す通り、植物は年々成長するものであるから、樹木それぞれの成長速度を考慮して、各ユニット内の樹木、及び、全体の樹木の配置を考慮する必要がある。
図5(a)は、施工当初の樹木の状態を示している。ユニット1は低密度、ユニット3は高密度、ユニット2は中間の密度であり、ユニット1とユニット2の間に高木が存在しないギャップが配置されている。
これが年月を経てどのように変化するか予想して、景観の変遷をシミュレーションする。ある経年変化をシミュレーションした結果、本例では図5(b)のようになり、それぞれの木々は生長しているが、枯死は発生せず、階層関係は維持されており、ギャップも開放空間として残っている状態である。
また、高木ユニットにカシやシイなどの大きく成長する常緑樹を採用した場合、これらの常緑樹が成長した後に日陰になる落葉樹は、光を受けることができずに抑圧されることがあるので、落葉樹を将来も残そうと計画するならば、落葉樹を常緑樹の南側に配置するなど、個々の木々の関係も考慮する。
(低層植物について)
高木層の下に配置される、灌木、山野草などの草花やシダ類、苔類等からなる植生である林床については、基本種、群生種及び味付種・単独種の3つのグループに分類し、配置を考慮する。
低層植物は光の条件、季節性、土壌の乾燥性(湿度分布)、一時的な水の流れなどに影響されるので、具体的な種類の選定にはこれらの影響も配慮する。
(基本種のゾーニング例)
基本種については、人工地盤の土壌表面全体に配置されるものであるから、その上方を覆う樹木の種類がどのようなものであるかを考慮する必要がある。上部を覆う樹木の種類により、当然に基本種に届く光量も変化することから、落葉樹が多い落葉樹林部分に配置される基本種、常緑樹が多い常緑樹林部分や建物の日陰に配置される基本種の種類を異ならせる必要があり、また、落葉樹であれ常緑樹であれ、配置される樹木の密度についても考慮した上で、基本種の配置を考慮しなければならない。落葉樹林部分と常緑樹林部分の境界部分に配置される基本種についても、樹木の密度を考慮の上で落葉樹林部分と常緑樹林部分と同様に境界線をなすように配置を計画して、図6に示すように基本種のゾーニングを行う。
(群生種のゾーニング例)
群生種についても、上を覆う樹木の種類や密度について考慮しなければならないことは基本種と同様であるが、まとまって存在し、花や独特の草姿などによって景観を作るための植物であるから、例えば花の咲く時期や期間も考慮して配置する。例えば、図7に示すように群生種のゾーニングを行う。
照度を中心とするゾーニングの例を表2に示す。
(味付種、単独種)
そして、ゾーニングされた各ゾーン内において、基本種及び群生種それぞれの配植密度及びパターンを決定して、ゾーンへの配置を行う。
さらに、これら基本種及び群生種に加えて、単独種及び味付種を配置して、高木の下の部分においても植生が単調とならないように配置を行う。
(アンジュレーション)
また、人工地盤上の土壌は、平坦にはせず、表面に微妙な傾斜(アンジュレーション)を設ける。これにより、全体の地形を平板とした場合に比べ、アンジュレーションにより生じる日照等の環境の相違を含めて、植生が配置されることとなり、風景を人工的なものではなく、より自然なものとする。
そして、植物の配置にあたっては、土壌の表面の微妙な傾斜(アンジュレーション)により光線が遮られることも考慮して配置を行うものである。
(その他の考慮事項)
配置にあたっては、手入れの手間を考えて、植生の配置を設定する。
さらに、単独で大きくなる樹木はこれを当初からユニットには含めずに検討を行うことで、植生全体がなす景観を形成するようにして、全体として自然に見える森を形成するようにする。もしくは、単独で大きくなる樹木については、人工地盤上であり土壌深さがあまり取れないことを考慮して植生に採用しない。
ギャップGに水場や流れを配置する場合には、高木層および林床に含まれる植物以外の、水生植物をギャップGの水場や流れに配置してもよい。
また、ギャップGを歩行空間として緑化された緑地空間の間に小径を配することにより、森林の中の散歩道のようにすることもできる。また、歩行空間と緑地空間を分離することにより、コンクリートの照り返しによる熱を吸収するホットスポット効果や、いわゆるゲリラ豪雨にともなって起こり得る大量の雨水を、集中して配置された緑地空間の土壌部分が吸収することにより、周辺の水没を防ぐ、都市型水害防止効果も期待できる。
ユニットへの植物の配置にあたって、植物を植えたことによる影響をも考慮する必要があることから、実際に植物を配置した状況を想定してのコンピュータシミュレーションにより、温度、湿度、日照、風向、平均風速、降水量、降雪量、積雪量を位置ごとに割り出して、配置の調整を行う。このとき、日照のみのシミュレーションを行えば簡便であるが、より正確にコンピュータシミュレーションを行うためには、他の要素を加えてシミュレーションを行う方がよい。この際に、樹木の成長による変遷や、季節ごとの落葉の状況、開花や果実の結実による目通りの変化、アンジュレーションによる光線の変化などが含まれる。
さらに、地衣類、草花、灌木類(低木類)、高木類の高さをそれぞれ別々に変化させること及び同時に変化させるコンピュータシミュレーションを行うことにより、より正確なコンピュータシミュレーションを行うことができ、より自然の森に近づけた植生を得ることが可能となる。
表2に群生種と基本種の特性を示した例を示す。
(馴化育成について)
図8は、緑地を施工する場所とは別の場所に、緑地を施工する場所と同様の人工地盤を設け、馴化育成する例を示している。地下躯体上に緑地を施工する場所と同様の土壌を投入して模擬の人工地盤を造成し、アンジュレーションを形成する。その人工地盤に緑地計画で予定した植物を一旦植え付けて生育状態を観察し、計画の想定を検証し、必要な修正を加えて、施工地に移植する緑地の施工方法を示す。この模擬の馴化育成を本例では、プレフォレストとする。
プレフォレストであらかじめ数年間栽培し、緑地の竣工時にプレフォレストから移植する。プレフォレストは、できる限り施工する人工地盤と同様にすることが望ましいが、施工緑地の後工事の困難性の程度を考慮して、後に重機を持ち込む補修工事が困難な部分を優先するなど、部分的にプレフォレストを活用することもできる。プレフォレストから緑地への移植は、土壌も含めて行うと植物と土壌のなじみも良い。
選定された高木層及び林床の植物から、実際の人工地盤上の植生に用いる植物を選択するが、実際の人工地盤上で植生を行う前に、プレフォレストにおいて人工地盤上の植生に用いる植物の栽培を行い、問題点の洗い出しを行う。また、植物の生育についてコンピュータシミュレーションを行い、同時に、利用者の視点による目通りの分布についてもコンピュータシミュレーションを行って、自然の森のデザインを決定する。そして、このプレフォレストには、緑地を施工する場所と同様のアンジュレーションを形成し、緑地を施工する場所と同様の植物を植えて、検証を行うものである。
プレフォレストにおける高木層の検証として、審美性、環境の豊かさや多様性、生育の健全性の3つにつき、疎密、異齢、混交の3要素から評価を行った。また、プレフォレストでの生育中における台風などの強風の影響についても評価を行い、これに基づき、実際の施工場所における人工地盤中の、樹木を支持する地下支柱の構造に改良を加える等のフィードバックを行った。
プレフォレストにおける林床の検証として、植物の生育に影響を及ぼす大きな要因を日照と考え、実際の施工場所を想定した照度シミュレーションの結果から林床に届く平均照度を基にゾーン分けを行い、さらに、アンジュレーションによって土壌の乾湿度が変わると予測し、この点についてもシミュレーションに基づく予測を行って、最終的なゾーン分けを決定して、設定された各ゾーン毎に群生種及び基本種を組み合わせて配置し、さらに必要に応じて味付種、単独種を配置した。これらのゾーンについて、コドラート法に基づいて植生調査を行い、実際の施工場所における植生のフィードバックを行った。
シミュレーションにあたっては、アンジュレーションを考慮に入れて、人工地盤が設置される場所の温度、湿度、日照、風向、平均風速、降水量、降雪量、積雪量という各要素、及び、土壌の温度、乾湿度、水分量という各要素を加えた上で、高木層及び林床の生育についてのコンピュータシミュレーションを季節ごとに行い、植物の生育に影響を及ぼす大きな要因である、日照や林床に届く平均照度、土壌の乾湿度を求めてフィードバックをかけて、高木層及び林床の植物の生育のコンピュータシミュレーションを行った。また、高木層や林床の多年草、灌木について、それらの年毎の成長に伴うコンピュータシミュレーションを行うことで、利用者の季節ごとの、あるいは、経年に伴う目通りの変化を割り出し、これらをもとに、プレフォレスト及び実際の人工地盤上での植物の配置を考慮した。
プレフォレストは、人工地盤における土壌と同じ面積で同じ土壌、表面の傾斜(アンジュレーション)、さらには同じ土壌深さにより形成し、コンクリート躯体、排水勾配、排水位置、土壌種類、灌水システムなどを実際に施行される緑地と同様として行うことで、移植を同配置で行えて簡便であるばかりか、生育がシミュレーションや計画と異なっていた場合は調整を施すことができでより自然な緑化を行え、また、人工地盤上に緑地を施工した後の、整備について事前計画することができる。
これにより、プレフォレストから人工地盤への移植時に枯死する危険が減少する。また、プレフォレストでの栽培時の状況から、人工地盤の樹木用の根鉢を入れる部分に土壌に向けた地下支柱を配置しておくことで、樹木をより倒れにくくすることができる。
地下支柱は、根鉢の下部から横方向に延出する水平部材と根鉢の側面を支持する垂直部材と根鉢と垂直部材の間に介在するエキスパンドを備え、垂直部材の上から根鉢を巻き止めるバンドを備えた根鉢固定具で形成する。特に、負け木は、樹高の割に根鉢が小さく、風圧によって回転して、倒伏するリスクが大きいので、この固定具を適用するのが適している。
特に、高木層を形成する背の高い樹木については、一般に添え木支柱を用いることが多いが、添え木を用いると自然の森林としての景観に見せることが困難となる。そこで、図9に示すように、背の高い樹木を人工地盤上の土壌に配置する際には、ベルト及びベルト内の根鉢を用い、さらに、根鉢が強風を受けた樹木により回転することのないよう、エキスパンドを併用してベルトと根鉢を強く締め付けることにより、樹木が風を受けても根鉢が回転しないようにすることで樹木の傾倒を防止する。このとき、根鉢を地下支柱上に配置することが好ましく、さらに、地下支柱をあらかじめ人工地盤に固定して設けておくことが望ましい。地下支柱については、配置される樹木専用のものを予め位置を決めて設けておくことも好ましい。
以上、人工地盤上に自然の森の景観を形成する場合の緑地の配置の一例について説明を行ったが、自然の森の景観ではなく鎮守の杜の景観を形成する場合には、人工地盤が設置される場所を含む地域のさまざまな神社における鎮守の森の調査を行い、自然樹林の場合と同様の調査を行って、高木層及び林床それぞれに含まれる植物を選定し、選定された植物を用いて鎮守の森を形成する。このときもシミュレーションやプレフォレストの使用については自然樹林の場合と同様に行う。
鎮守の森の景観を形成する場合には、ギャップGに小さな社を配置することもできる。ケヤキ、エノキ、イチョウ、ムクノキ、クスノキ等の、単独で大木に育つ樹種を選定して、神木のように構成することも好ましい。
里山の景観を構成する場合には、カキノキ、ビワ、アンズといった栽培種の植生を行い、同時にアカマツの割合を増やすことも好ましい。
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。

Claims (5)

  1. 人工躯体上に形成した人工地盤に高木層を形成する高木樹木と、林床層を形成する低層植物を含む植物を配置して、施工地域に適合した緑地を計画する緑地施工計画方法であって、
    人工地盤は、起伏のあるアンジュレーションを設定し、
    植物として、施工地域の環境に対応した植物を準備し、
    高木樹木は、樹種と樹木姿形に基づいて類型化した高木ユニットを設定し、
    低層植物は、日照条件と土壌水分条件に基づいて類型化した林床ゾーンを設定し、
    審美性と持続性の観点に基づいて高木ユニットと林床ゾーンを組み合わせて配置を設定した緑地施工計画に基づき、
    人工地盤とアンジュレーションも含めて施工予定地を模した事前環境を準備し、当該事前環境にて、前記緑地施工計画で設定された高木ユニットと林床ゾーンに属する植物を馴化育成し、その後施工地に土壌も含めて移植することを特徴とする緑地施工方法。
  2. 高木ユニットは、
    林内の明るさに関係する疎密の指標、林の樹齢構成に関係する目通り直径の指標、樹種の多様性に関する混交の指標を設定し、さらに、枝葉の着生高さに基づく垂直方向の階層指標を設定し、
    各指標に基づいて形成される一団の群であることを特徴とする請求項1記載の緑地施工方法。
  3. 一団の群で形成される高木ユニットは、
    最上層に達する樹高を持ち、ユニット内で一番大きな樹冠を備えている主景木、
    最上層に樹冠を有し、主景木よりも目通り直径が小さい副景木、
    主景木の樹冠より下であって、目線よりも上に枝葉を有する添景木、
    目線をさえぎる高さに枝葉を有する低景木、
    の4種類の観点から選定された樹木で構成されていることを特徴とする請求項に記載された緑地施工方法。
  4. 低層植物は、
    群生種、基本種および味付種を含む植物を、
    周辺建造物と高木ユニットの樹木によって影響を受ける日照条件とアンジュレーションによって影響を受ける土壌水分条件に基づいて組み合わせて林床ゾーンを設定することを特徴とする請求項2又は3に記載された緑地施工方法。
  5. 根鉢の下部から横方向に延出する水平部材と、根鉢の側面を支持する垂直部材と、根鉢と垂直部材の間に介在するエキスパンドを備え、垂直部材の上から根鉢を巻き止めるバンドを備えた根鉢固定具を用いて高木樹木を植栽することを特徴とする請求項2〜のいずれかに記載の緑地施工方法。
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