JP6503124B1 - 木質材料の改質薬液、木質培土、および木質培土の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、農業や園芸には、ピートモスや赤玉土、堆肥などを主材として構成された培土が一般に用いられている。培土は、肥料成分はもとより、植える植物に適した保水性、透水性、pH等の品質が求められる。ピートモスなどのいわゆる有機資材は、土壌の保水性・通気性の改善あるいは向上を目的として用いられる。
木質培土は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。
木質培土は、木材に含まれるポリフェノール成分の不活性化を目的とした硫酸鉄と、その硫酸鉄をキレート化させたクエン酸と、が含有されている。更に、木質培土の品質を向上するために、必要に応じて、界面活性剤やpH調整剤が、木質培土に添加されている。
木質培土は、表面に近い部分はタンニン成分が不活性化されている一方、その内部に木材のポリフェノール成分がそのまま残る、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、栽培対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性や吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
木質培土は、針葉樹の木材(端材)を砕いて木材砕片を形成する工程(第1工程)、所定の改質薬液を調製する工程(第2工程)、木材砕片を改質薬液で処理する工程(第3工程)などを経て製造される。堆肥化されていない木材を原料にして、堆肥化という不確実な工程を経ることなく工業的に製造できるので、短時間で量産できる。また、浸漬法と異なり、大量の処理廃液が発生することもない。
上述した木質培土の製造後、すなわち、木材砕片に改質薬液が混合された後においても、ポリフェノール成分と硫酸鉄との結合によるポリフェノール成分の不活性化は徐々に進行していく。従って、木質培土の製造後、直ちに使用するのではなく、少なくとも一定期間放置(養生)するのが好ましい。
本発明者らは、安価なコストで、先に提案したクエン酸鉄アンモニウムと同等以上の効果が期待できる原料として、硫酸鉄およびクエン酸に着目し、様々な検討を行った。以下、その内容について説明する。
クエン酸/硫酸鉄比率による硫酸鉄とクエン酸との錯体の形成への影響について調べるため、試験を行った。その試験では、硫酸鉄・7水和物(以下、単に硫酸鉄という)およびクエン酸を、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜1.0)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。いずれの水溶液も、硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度が3重量%となるように調製した。そして、これら水溶液の電気伝導度を測定した。
硫酸鉄およびクエン酸を混合した水溶液の安定性について調べるため、第1試験を行った。第1試験では、硫酸鉄およびクエン酸を、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜1.0)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。いずれの水溶液も、硫酸鉄およびクエン酸の合計濃度が3重量%となるように調製した。そして、これら水溶液を密閉容器に入れ、40℃の温度条件下で保管し、経時的な変化を目視により観察した。
ポリフェノール成分の不活性化に対して、クエン酸/硫酸鉄比率の違いが及ぼす影響について調べるため、試験を行った。その試験では、第2試験と同様に、硫酸鉄の濃度が0.25重量%で一定となるように調製した。そのうえで、所定のクエン酸/硫酸鉄比率(0〜0.3)で水に混合し、複数の水溶液を作製した。
木質培土のクエン酸/硫酸鉄比率が植物の成長に与える影響を調べるため、試験を行った。その試験では、先の試験と同様に、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの木材砕片を作製した。
木質培土に含まれる硫酸鉄の濃度が植物の成長に与える影響を調べるため、試験を行った。その試験では、先の試験と同様に、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの木材砕片を作製した。
スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材を原料に木質培土を作製し、コマツナの栽培試験を行った。
木材砕片そのものと、木材砕片を改質薬液で処理した木質培土との微生物特性の違いを検証した。原料にスギ材を使用し、そのスギ材をカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの粒状の木材砕片(粒状木材砕片)を作製した。また、原料にスギ材を使用し、そのスギ材をエクストルーダーで摩砕し、さらにカッターミルで粉砕、メッシュ(φ4mm)での篩い分けにより、所定サイズの繊維状の木材砕片(繊維状木材砕片)を作製した。
Claims (11)
- 堆肥化していない木材砕片を原料にして、木質培土の工業的な製造を可能にする、木質材料の改質薬液であって、
クエン酸および硫酸鉄を含有し、
前記硫酸鉄の重量に対する前記クエン酸の重量の含有比率が、0.05以上となるように調製されている、木質材料の改質薬液。 - 請求項1に記載の、木質材料の改質薬液において、
前記含有比率が、0.1以上となるように調製されている、木質材料の改質薬液。 - 請求項2に記載の、木質材料の改質薬液において、
前記木材砕片は、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材の少なくともいずれか1つから形成され、
前記含有比率が、更に0.3以下となるように調製されている、木質材料の改質薬液。 - 針葉樹の木材を砕いて形成された、堆肥化されていない木材砕片を主体とし、クエン酸および硫酸鉄を含有する薬液で改質することによって製造される木質培土であって、
前記薬液は、前記硫酸鉄の重量に対する前記クエン酸の重量の含有比率が、0.05以上となるように調製されていて、前記木材砕片の絶乾重量に対し、前記硫酸鉄を、0.15重量%以上0.35重量%以下の濃度で含む、木質培土。 - 請求項4に記載の木質培土において、
前記含有比率が、0.10以上となるように調製されている、木質培土。 - 請求項5に記載の木質培土において、
前記木材砕片は、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材の少なくともいずれか1つから形成され、
前記含有比率が、更に0.3以下となるように調製されている、木質培土。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1つに記載の木質培土において、
更に界面活性剤を含む、木質培土。 - 木質培土の製造方法であって、
針葉樹の木材を砕いて木材砕片を形成する第1工程と、
硫酸鉄の重量に対するクエン酸の重量の含有比率が、0.05以上となるように、前記硫酸鉄および前記クエン酸を混ぜることにより、水を主体とする改質薬液を調製する第2工程と、
前記木材砕片の絶乾重量に対し、前記硫酸鉄が、0.15重量%以上0.35重量%以下の濃度で含まれるように、前記改質薬液で前記木材砕片を処理する第3工程と、
を含む、木質培土の製造方法。 - 請求項8に記載の、木質培土の製造方法において、
前記含有比率が0.1以上となるように、前記改質薬液を調製する、木質培土の製造方法。 - 請求項9に記載の、木質培土の製造方法において、
前記木材に、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、およびトドマツ材の少なくともいずれか1つを用い、
前記含有比率が、更に0.3以下となるように、前記改質薬液を調製する、木質培土の製造方法。 - 請求項8〜請求項10のいずれか1つに記載の、木質培土の製造方法において、
前記第1工程、前記第2工程、および前記第3工程の少なくともいずれか1つの工程で、界面活性剤を添加する、木質培土の製造方法。
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