JP6494112B2 - アストリンとラプターの相互作用調節因子、及びその癌治療での用途 - Google Patents
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Description
mTORは、PI3K/AKT/mTORパスウェイ、アポトーシスそしてその結果の癌(例えば乳癌、非小細胞肺癌)において重要な細胞内シグナル伝達パスウェイの一部である。PI3K活性化は、mTORを活性化するAKTを活性化する。多くの癌では、このパスウェイは、過剰なアポトーシスの減少と増殖の許容をしている。したがって、いくつかの実験的制癌剤は、あるポイントでのシグナリング・シーケンスを阻害することを標的とし、そして、mTOR阻害に基づくいくつかの抗癌治療が検討された。
1つの例として、Zagouriら(Zagouri F, Sergentanis TN, Chrysikos D, Filipits M, Bartsch R. mTORinhibitors in breast cancer: A systematic review. Gynecol Oncol. 2012 Sep 8)は、腫瘍増悪の重大なメディエータ―としてのPI3K/AKT/mTORパスウェイを記述する。
LoRusso PM(Mammalian target of rapamycin as a rational therapeutic target forbreast cancer treatment. Oncology. 2013;84(1):43-56. Epub 2012 Oct 30)は、mTORパスウェイの標的である多くの薬剤が、有力な抗腫瘍化効果を生体外で示したことを記述し、また、いくつかの薬剤は、エベロリムス(everolimus)とテムシロリムス(temsirolimus)のような乳癌の患者を治療する際にさらに可能性を示した。PI3K/Aktパスウェイは、乳癌で極度に調節解除されているので、乳癌患者でのmTOR阻害剤の適用は、正当化されるように見える。
これは、乳癌のすべての範疇における、mTOR阻害剤の利用可能なデータをすべて統合するPRISMAガイドラインによる最初の統合的なレビューである。検討は、エベロリムス(1492人の患者)を評価する16の研究、テムシロリムス(1245人の患者)を検討する7つの研究、シロリムス(sirolimus)(400人の患者)を評価する1つの研究、およびMKC-1(60人の患者)を評価する2つの研究を、採用した。
経口でのエベロリムス-2(BOLERO-2)研究の乳癌トライアルでは、エストロゲン受容体陽性の乳癌の治療でのエベロリムスに関する評価で転機を示した。陽性の結果を受けて、エベロリムスはNCCN 2012ガイドラインに入った。また、FDAとEMAによるエキセメスタン(exemestane)とのコンビネーションでの承認も差し迫っている。
さらに、有望な抗腫瘍活性および長期的な疾病コントロールは、HER2陽性の患者でトラスツズマブ(trastuzumab)ベースでの治療からの永続的な利益を達成するための手段を、エベロリムスでのmTOR阻害が、提供することを示唆する。テムシロリムスに関して、将来、転移乳癌治療における役割を、該薬剤は果たせるように見える;しかしながら、重要なことは、その最適標的分集団を見つけるための未対処のニーズがあることである。現在、腫瘍と代謝疾患の臨床研究においてmTOR阻害剤が、又、Inokiらによって記述されている(Inoki,K., Kim, J., and Guan, K.L. (2012). AMPK and mTOR in cellular energyhomeostasis and drug targets. Annu Rev Pharmacol Toxicol 52, 381-400)。
さらにエルフォシンは、Ser473とThr308の残基で、p-Akt、p-ラプター、p-mTOR、p-PRAS40およびその下流の基質p-p70S6Kおよびp-4EBP1のような、mTORパスウェイの主成分の燐酸化を、用量依存的に、ダウンレギュレートした。p-mTOR siRNAでの腫瘍細胞の予備的治療は、シスプラチンに比べ、ラパマイシン(rapamycin)より高いが、エルフォシンの細胞毒性を増加させた。
a) アストリン、アストリンのラプター結合断片、アストリン発現細胞、及び/又はアストリンのラプター結合断片発現細胞の少なくとも1つを、細胞におけるアストリンとラプターの該相互作用、該発現、及び/又は該生物活性を調整する少なくとも一つの候補化合物とを接触させ、そして、
b) 該少なくとも一つの候補化合物の存在下で、該発現及び/又はアストリン若しくは当該断片のラプターへの結合の調節を同定する。
同様に、ラプターも又、ヒトラプター遺伝子及び/又はタンパク質及び/又はmRNAの哺乳類(特にマウス)ホモログを示し/表わすものとして理解されうる。本発明の好適な方法は、当該調節が、当該発現及び/又はラプターへの該結合の減少あるいは増加から選択される。
別の態様は、一つの細胞/複数の細胞で、アストリンの発現を調節する化合物を指向する。
多くのアポトーシス分析は、アポトーシス性細胞を検知し数えるために検討される。方法論に基づいて、アポトーシス分析は、6つの主なグループに分類することができ、細胞形態学的変異;DNA断片化;カスパーゼ、開裂基質、調節剤及び阻害剤の検知;膜変異;全組織標本中でのアポトーシスの検知;及びミトコンドリア分析を含む。好ましい1つの分析は、ミクロ培養−動力学的(MiCK)分析である。それぞれの分析は、当業者に知られ、そしてそれぞれの文献から入手できる。
好ましい具体化態様では、多くの異なる候補結合化合物が、固相に、例えば、化合物ライブラリー・チップに、捕捉され、そして、アストリン(あるいはそれの機能的な部分)が、続いて、そのようなチップと接触を受ける。
さらに好適には、本発明は方法に関し、該方法において、該アストリンのラプター結合断片は、アストリンポリペプチドのN末端頭部ドメイン、例えば、ここに記述されるようにアストリンポリペプチドのN-末端アミノ酸1-481、特にSEQ ID No.1を含む。
そのような変化を検知する適切な方法は、例えば、電位差測定方法を含む。互いへの2つのコンポーネントの結合を検知する及び/又は測定するさらなる方法は、当業者に周知であり、アストリンまたはアストリン断片への候補相互作用化合物の結合を測定するために、制限なしで、使用されうる。化合物の結合の影響若しくはアストリンの活性は、又、例えば、結合後にアストリンの酵素活性を分析することにより、間接的に測定されうる。
上記の記述された方法は「指向性進化」となづけられた。というのは、修飾と選択の多くのステップを含み、それによって、結合化合物は、特性、例えばその結合活性、アストリンポリペプチドの活性を活性化するか調整するその能力のような特性に関して、その能力を最適化する「進化の」プロセスで選択されている。
a) 診断アプローチ: アストリン活性は、ラプターそしてしたがってmTOR複合体1とリンクされるので、遺伝子検査は、特に個別化された治療計画を展開するために、アストリン結合、活性及び/又は発現に基づいた癌に関連して個々のリスクを評価するために開発されうる。
b) 薬学的(癌)および治療的アプローチ: 本発明者のデータは、アストリン作用の阻害は、哺乳動物/ヒトの癌の進行を阻害、処置及び/又はスローダウンさせる薬剤として使用できることを示唆する。アストリン結合阻害剤/阻害構成物は、同様に制癌剤として使用されうる。
ペアの整列パラメーターとして、プログラム「blastp」が使用される。さらに、ギャップ挿入コスト価値として「0」、ギャップ延長コスト価値として「0」、質問シーケンス用のフィルタとして「SEG」およびマトリックスとしての「BLOSUM62」が、それぞれ使用される。
該細胞は、原核生物か真核細胞でありえ、また、発現構築物は、染色体外に存在することができ、若しくは、染色体へ導入することができる。該ポリペプチドは、発現産物を検知することができるように、例えば、リポーター構築物として酵素的に活性な分子と共に、融合タンパク質の形で発現することができる。好適な宿主細胞は、骨格筋、肝臓、脂肪組織、心臓、膵臓、腎臓、胸部組織、卵巣組織及び/又は視床下部から選ばれた細胞に由来する。したがって、本発明の好適なスクリーニングツールにおいて、該細胞は、癌細胞のグループ、アストリン若しくはそれのラプター結合断片を発現する組換宿主細胞、酵母菌および組換細菌細胞であり、該組換細胞はラプター及び/又はそれのアストリン結合断片を選択的に発現する。
さらに好適な、本発明の方法において、アストリンの当該ラプター結合断片は、アストリンポリペプチドのN末端頭部ドメインを含み、例えばここに記述されるようなアストリンポリペプチドのN-末端アミノ酸1-481であり、特にSEQ ID No.1である。
トランスジェニックマウス、ネズミ、ブタ、ヤギあるいは羊が好適であり、そこではリポーター構築物は、骨格筋、肝臓、脂肪組織、心臓、膵臓、腎臓及び/又は該動物の視床下部から選ばれた細胞で好適に発現される。アストリン及び/又はラプターを過剰発現する及び/又はアストリン及び/若しくはラプター遺伝子リポーター構築物を担持する非ヒト遺伝子組換哺乳動物を生産する方法は当業者に周知である。アストリン/ラプターに同族である遺伝子が、修飾機能をもつ遺伝子(例えばノックアウトあるいはノック・イン動物)によって交換される遺伝子組換非ヒト哺乳動物が好適である。
発現は、チップ分析あるいはrtPCRの使用により分析しモニターされうる。細胞でのアストリンの発現を調整する好ましい化合物は、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAs、mRNAあるいはアストリンをコードする他の好適変異核酸から選ばれる。これらの遺伝子要素は、該細胞における、アストリンの機能欠損(例えば同定されるようなトランケーションによって)若しくはそのラプター結合を、提供する/維持するために使われる。
別の好ましい態様は、遺伝子治療を使用して、当該遺伝子要素の移入である。更に、当該細胞への該遺伝子要素の導入のためのウイルス構築物が包含される。あるいは、さらに、「裸の」核酸が細胞へ導入されうる、例えば、粒子仲介技術の使用による。それぞれの方法は、文献によく記述され、当業者に知られている。
注射は、例えば、静脈内か皮内か、皮下か、筋肉内か、腹腔内投与でありえる。植え込みは、植え込み型薬物送達システム、例えばマイクロスフェア、ヒドロゲル、重合体リザーバー、コレステロールマトリックス、マトリックス浸食及び/又は拡散システムのような重合体システム、圧縮、融合若しくは部分的融合ペレットのような非重合体のシステムを含む。坐薬はグリセリン坐剤を含む。
経口摂取投与剤は、腸管的に被覆できる。吸入は、人工呼吸装置でのエアゾールでの薬剤投与を含んでおり、単独で若しくは吸収することができるキャリアーに付着されうる。薬剤は、液体中に、例えば溶解若しくはコロイド状形態で懸濁されうる。液体は、溶媒、部分的溶媒若しくは非溶媒でありうる。多くの場合では、水あるいは有機的な液体が使用されうる。
そして、治療は、これらの要因のコンビネーションに基づいても行なうことができる。本発明のこの方法は、個々の診断の癌データを、患者の臨床データおよび一般的なヘルスケア統計を、例えば、患者へのテーラーメイド医療の適用を可能にするために統合することを含む。薬剤有効性、薬物相互作用および他の患者のステータス条件に関する重要な情報も、使用されうる。
温度、栄養素ストレス、酸化ストレスあるいは放射能に対する細胞の反応は、翻訳抑制のいくつかのメカニズムを活性化し、その中にはeIF2alpha-S51燐酸化および阻害があり、RNA粒子内に非ポリソーム的なポリアデニル化mRNAおよび翻訳開始因子の蓄積に結びつく。これらのmRNAタンパク質複合体は、細胞障害性粒子関連RNA結合蛋白質TIA1、TIA-1関連するタンパク質TIARおよびRasGAP SH3結合タンパク質G3BP1を含む、自己関連SGコンポーネントと共に、SGsにおいてアッセンブルしうる。顕著に、これら後者のコンポーネントの過剰発現は、SGsを誘導するのに多くの場合十分である。SGsにおいてmRNAは、PBsで分解のためにソートされる、あるいはストレス緩和における翻訳再開始のために保存される。
更に、データは、アストリンが、mTORC1-依存の抗アポトーシス性SG機能を仲介することを示す。アストリンは、癌細胞で高度に発現され、低酸素誘導酸化還元反応のストレスが腫瘍において共通の状態であるので、アストリンは、mTORC1活性をコントロールし、かつアポトーシスへ腫瘍細胞を感受性にするための治療的介在物として有望な標的である。
構築物、試薬、細胞株および組織培養。
pCMV6-AC-FLAG-アストリン(オーダー# RC201783)は、“Origin, Rockville, MD,USA”から購入された。アストリン全長cDNA配列は、メーカーのプロトコルによって次のプラスミドへ移入された: pCMV6-AC-GFP、pCMV6-AN-GFP、pCMV6-AN-FLAG、pCMV6-エントリー。
DNAトランスフェクションは、以下に記述されるように行った:JetPEI, PolyPlus, Strasbourg, France JetPEI, PolyPlus, Strasbourg, Franceas described (Sonntag, A.G., Dalle Pezze, P., Shanley, D.P., andThedieck, K. (2012). A modelling-experimentalapproach reveals IRS dependent regulation of AMPK by Insulin. FEBS J)。
新規なmTORおよびラプター相互作用の同定を記述されるように行った(Thedieck, K., Polak, P., Kim, M.L., Molle, K.D.,Cohen, A., Jeno, P., Arrieumerlou, C., and Hall, M.N. (2007). PRAS40 andPRR5-like protein are new mTOR interactors that regulate apoptosis. PLoS One 2, e1217007)。
これは以下に記述される(Dalle Pezze, P., Sonntag, A.G., Shanley, D.P., andThedieck, K. (2012a). Response to Comment on "A Dynamic Network Model ofmTOR Signaling Reveals TSC-Independent mTORC2 Regulation". Sci Signal 5; Dalle Pezze et al., 2012b; Sonntaget al., 2012; Thedieck et al., 2007)。抗体は別記される(Dalle Pezze et al., 2012b; Sonntag et al., 2012)。さらなる抗体は、HistoneH3 (#A300-823A), Histone H3-pS10 (#A301-844A)及びDDX6/p54 (#A300-461A)に対するものがBethyl, Montgomery, TX, USAから及びATF-4 (#11815), hnRNP-A1 (#8443), YB1 (#9744),HSP90 (#4877), HSP70 (#4867), HSF1 (#4356)に対するものがCell Signaling Technology Inc., Boston, MA, USAから及びG3BP1 (#sc-81940), astrin (#sc-98605)に対するものがSanta Cruz, CA, USAから及びPlk1 (#ab17056)に対するものがAbcam, Cambridge, UKから得た。
抗体はすべてメーカー・プロトコルによって使用された。PLAのための単クローン抗体は、Dr. Elisabeth Kremmer,(Helmholtz ZentrumMünchen, Institute of Molecular Immunology, Marchioninistrasse 25, 81377Munich, Germany)によってアストリン、mTORおよびラプターのためにマウスかネズミで調製された。抗体産生のためのペプチドは、Peptide SpecialtyLaboratories (PSL) GmbH, Heidelberg, Germanyによって作られた。
IF 染色は、記述されるように行われた(Thedieck etal., 2007)。細胞は、-20℃で氷寒メタノールによって5分間固定された。GFP-トランスフェクト細胞は、室温で、20分間4%パラホルムアルデヒドで固定された。蛍光顕微鏡検査法は、AxioCam MRm3CCDカメラを備えたAxioimager.Z1複合顕微鏡で行った; Axiovisionソフトウェア・バージョン4.8.1 (CarlZeiss AG, Germany)が画像分析に使用された。
共焦点顕微鏡検査での画像診断は、100x/1.45 NAPlan-Apochromate objectiveを備えたLSM 510 Duo-Live顕微鏡(両方CarlZeiss)で行った。フルフォロフォアー(Hoechst 33342, Alexa-488, Cy3, Cy5)の励起は、各々405、488、561および633nmで行った。指定された範囲の発光信号の検知のために、光電子増倍管チャンネルが、BPのフィルタ420-480、BP 505-530、BP 575-615、LP 650nmで使用された。共焦点針穴直径は、1μmセクションに常に調節された。すべてのイメージにおけるスケールバーは、10μmである。
PLA分析に使用された全ての試薬は、Olink Bioscience, Uppsala, Sweden から得、そして全てのPLA反応は、メーカープロトコルにより、ウェルあたり20μLのサンプル・ボリュームで、暗湿度容器で行われた。簡潔に、細胞はテフロン登録商標でコートされたPLAスライド(Menzel-Gläser, Thermo Scientific)上に接種され、7.5%CO2中で37℃ 2日間培養した。細胞は、-20℃5分間で100%メタノールによって固定した。
固定化後、細胞は、4℃15分間そしてRTで15分間、0.5%サポニン含有PBSで処理され、37℃で60分間5%BSA含有 PBSでブロックされた。細胞は、4℃で一夜、一次抗体(mTOR複合体コンポーネントおよびアストリンに対するもので自己生産:抗体希釈で1:50稀釈)とインキュベートされた。次の日、細胞は、37℃で60分間、一致するPLAプローブ(各々、抗マウス、抗ウサギ若しくは抗ラット用のユニークDNAプローブに結合した第2の抗体)とインキュベートされた。NA-oligosの連結および環状化のために、細胞は、37℃で30分間、リガーゼ溶液とインキュベートされた。ローリングサークル増幅のために、細胞は、37℃で120分間、検知できるフルフォロフォアーとして相補的なAlexa555ラベル化DNAリンカーを含む増幅溶液でインキュベートされた。
細胞は、DAPI含有Duolink In Situ Mounting Mediumの最小ボリュームを使用し、カバーグラス(24x50 mm)に載せ、共焦点顕微鏡検査で分析した(Zeiss LSM 510 orLSM 780 META laser scanning microscope equipped with a 63x/1.4 oil DICobjective), (Zeiss, Jena, Germany) 。写真は、1024x1024(1764x1764)ピクセルの最適なフレーム・サイズで、優れたイメージのためにスキャンスピード7および12ビット(8ビット)のダイナミック・レンジで撮られた。アンプ・オフセットおよび検知器ゲインは、最初に調節され、実験のセッションの間変更されなかった。細胞あたりのシグナル比率(細胞当たりのレッドPLAスポットの数)は、個々の細胞のための定義されたピクセル・サイズとしてPLA−シグナルおよび核を数える無料配布のBlobFinderソフトウェア(Centre for ImageAnalysis, Uppsala University, Sweden)で分析された。
実験はすべて少なくともN=3繰り返しで行った。IBにおけるシグナルは記述されるように計られ標準化された(Dalle Pezze et al., 2012b)。IBとPLAのデータの分析のため、ノンパラメトリカルな2テイルド−スチューデントのt-検定が、不等な変化を仮定して使用された。統計分析は、p<0.05の信頼区間で行った。標準誤差(SEM)が、統計の変わりやすさを評価して選ばれた。ボックスとウィスカーのプロットはGraphPadプリズム6.01ソフトウェアで計算された。百分位数は次の定式によって計算された: 結果=百分位数*[n(値)+1/100]。メジアン(50百分位数)、25〜75百分位数(ボックス)および5〜95百分位数(ウィスカー)が示される。
新しいmTOR調節剤を同定するために、本発明者は、ヒーラー細胞から、内在性のmTOR、ラプター(mTORC1)、およびRictor(mTORC2)を免疫法で精製し、記述されるように(Thedieck et al., 2007)質量分析(MS)によって免疫沈澱物(IP)を分析した。
驚いたことに、ラプターは、mTORとの複合体において作用すると一般的に思われてきた(Laplante, M., and Sabatini, D.M. (2012). mTORSignaling in Growth Control and Disease. Cell 149, 274-293)けれど、本発明者は、ラプターIPにアストリンを同定し (図2、配列カバレッジ12%)、mTOR若しくはRictor IPでは同定されなかった。これは、ラプターのmTOR(mTORC1)との複合体においてではなく、アストリンがラプターに結合することを示唆した。
高いアストリン mRNAレベルは、胸部および肺の癌における悲観的な予後と関係がある(Buechler, S. (2009). Low expression of a few genesindicates good prognosis in estrogen receptor positive breast cancer. BMCCancer 9, 243; Valk, K., Vooder, T.,Kolde, R., Reintam, M.A., Petzold, C., Vilo, J., and Metspalu, A. (2010). Geneexpression profiles of non-small cell lung cancer: survival prediction and newbiomarkers. Oncology 79, 283-292)。したがって、本発明者は、3つの乳癌細胞株中のアストリンタンパク質発現を分析した。アストリンタンパク質レベルは、Akt活性と肯定的に関係し、否定的にmTORC1基質PRAS40-S183およびp70-S6K1-T389の燐酸化と関係した。
FLAG-アストリンは、MSのデータと一致するように、ラプターと共免疫沈澱をしたが、mTORあるいはmTORC2構成要素Rictorとではおこらなかった。さらに、内在性のアストリンは、ラプターと共免疫精製したが、mTORではおこらなかった(図2)。したがって、アストリンは、本質的なmTORC1構成要素ラプターの特異的相互作用物質であり、mTORキナーゼ自体のそのような物質ではない。IPに続く、30分間のアロステリックなmTORC1阻害剤ラパマイシンとの細胞のインキュベーションにおいて、ラプターは、mTOR-ラプター複合体から解離することが見出されたが、アストリン-ラプター結合に対する影響は見られなかった。
したがって、mTORC1活性は、ラプター-アストリン結合に影響しない。
逆に、アストリンのsiRNAノックダウンが、ラプターIPでの増加したmTOR量をもたらしたように、アストリン阻害はmTORC1アッセンブリーに影響する。同様に、近接ライゲーション分析(PLA)によるmTOR-ラプター関連性についてのインサイツ測定で(Soderberg, O., Leuchowius, K.J., Gullberg, M.,Jarvius, M., Weibrecht, I., Larsson, L.G., and Landegren, U. (2008). Characterizingproteins and their interactions in cells and tissues using the in situproximity ligation assay. Methods 45,227-232)、アストリンノックダウンにおいてmTORC1アッセンブリーの驚異的な誘導を明らかにした(図3および4)。本発明者は、アストリンがラプター結合のためにmTORと競合し、アストリン欠如下で増加したmTORC1形成に帰着することを結論づけた。
アストリンは、有糸分裂進行の調節剤として記述され、そしてmTORC1のために、有糸分裂における役割が提案された。したがって、本発明者は、アストリン欠乏が、有糸分裂中のmTORC1活性を変えるかどうかのテストをした。NocodazoleによってG2/Mにて成長停止されたヒーラー細胞において、および有糸分裂ブロックからの開放下で、mTORC1基質 p70-S6K1-T389の燐酸化が、観察された。p70-S6K1-T389は、有糸分裂細胞で単に弱く燐酸化され、アストリン阻害で不変のままであった。有糸分裂の細胞とは対照的に、アストリン欠乏は、有糸分裂を除き、mTORC1へのアストリンの調節の役割を示唆し、非同期化細胞でp70 S6K1-pT389を誘導した。
非同期化細胞のアストリン欠乏は、mTORC1基質 p70 S6K1-T389の燐酸化を引き起こし、また、この結果はアストリンの有糸分裂機能に依存しない。さらにmTORC1シグナリングで、アストリンの役割を確立するために、本発明者は、飢えさせ、アストリンノックダウンの有無で、mTORシグナリングを強く活性化するために10分間インシュリンとaaで細胞を誘導した; そして、アストリン欠損細胞で、p70-S6K1-pT389誘導を確認した。mTORC1の特異的阻害剤ラパマイシンおよびATPアナログ阻害剤PP242(両mTOR複合体をターゲットとする)は、両方とも強力にアストリン欠損細胞でp70-S6K1-pT389を阻害した。したがって、アストリンのp70-S6K1-pT389での阻害効果はmTORC1-依存的である。
アストリン-ラプター相互作用の生物学的機能をさらに究明するために、本発明者は、組み換えアストリン-GFP融合構築物を調製した。N-末端球状頭部ドメインと2つのC末端コイルドコイルドメインをもつアストリンのモジュール構造(Gruber, J., Harborth, J., Schnabel, J., Weber, K.,and Hatzfeld, M. (2002). The mitotic-spindle-associated protein astrin is essentialfor progression through mitosis. J Cell Sci115, 4053-4059)は、アストリンがアダプタータンパク質として役立つかもしれないことを示唆した。かくして、本発明者は、全長アストリン(GFP‑astrinfull length)、N-末端頭部ドメイン(GFP-Astrin1-481)、およびC-末端コイルドコイルドメイン(GFP-astrin482-1193)のための構築物を調製した(図5に描かれたスキーム)。
注目すべきは、C-末端GFP-astrin482-1193もまた、細胞質ゾルの粒状構造に局在し、一方N-末端GFP-Astrin1-481は拡散した細胞質ゾルへの局在化を示した。対照的に、GFP‑astrinfulllength と N末端 GFP‑astrin1‑481は、ラプターと共精製され、そこでC-末端GFP-astrin482-1193のみが、弱くラプターに結合していた。これらのデータは、主としてラプター結合を仲介するアストリンのN末端頭部ドメインと一致する。そこで、アストリンのC末端コイルドコイルドメインは主としてその局在化を仲介する。ラプターに結合するmTORまたはアストリンは、相互に排他的である。
アルセナイトは種々様々の細胞性ROS誘導する(Jomova, K., Jenisova, Z., Feszterova, M., Baros, S.,Liska, J., Hudecova, D., Rhodes, C.J., and Valko, M. (2011). Arsenic: toxicity,oxidative stress and human disease. J Appl Toxicol 31, 95-107)。その特異性を確認しうる、免疫蛍光検査法(IF)で、用いられた商用アストリン抗体でアストリン-GFPを検知した。非ストレス処理細胞では、内在性のアストリンは微小管パターンを示した。特異的SGマーカーG3BP1は、粒状細胞質構造の中に、すなわち、アルセナイトストレス下のSGsに局在化する、そしてアストリンは、部分的にG3BP1と共局在し、したがって、アストリンはアルセナイトストレス下でSGsに局在する。HA-ラプターは、SGsの中へアストリンおよびG3BP1と共局在した。対照的に、mTORは、G3BP1と共局在しなかった。
したがって、酸化ストレスに際して、アストリンとラプターはSGsと共局在し、しかし、mTORはSGsから除外されたままである。
これらの発見は、SGsへのアストリン-ラプター複合体の再局在化が、酸化ストレス下でのmTOR-ラプター複合体を分解するかもしれないという仮説に本発明者を導いた。ストレス下、形成されており、SGsに再局在するアストリン-ラプター複合体に呼応して、ラプターとアストリンの結合は、co-IPsでおよび元の位置で、アルセナイトによって強く増加された(図4)。したがって、ラプター-アストリン複合体の形成およびSGsとのその結合は、アルセナイトストレスによって引き起こされる。
過酸化水素(H2O2)は、SGsを誘導する。そのため、上記の実験は、2mM H2O2で繰り返えした。H2O2での結果はすべて、アルセナイトで得たものを再現した。したがって、異なる酸化ストレスは、mTORC1分解に結びつき、SGsへのラプターのアストリン仲介増強を誘導する。
本発見の医学的観点からの意味は、高いアストリンレベルは、乳腺腫細胞における高いAktおよび低いmTORC1シグナリングと同様に、癌細胞攻撃性(Buechler, 2009; Valk et al., 2010)と関連する。低酸素症による酸化還元ストレスは、腫瘍での共通の条件である。また、腫瘍細胞は、酸化の損傷に応じてアポトーシスを回避する必要がある(Fruehauf, J.P., and Meyskens, F.L., Jr. (2007).Reactive oxygen species: a breath of life or death? Clin Cancer Res 13, 789-794; Sosa et al., 2012)。
並んで、癌細胞の化学耐性は、しばしばアポトーシスを抑制するそれらの増加したキャパシティーに依存する(Ajabnoor, G.M., Crook, T., and Coley, H.M. (2012).Paclitaxel resistance is associated with switch from apoptotic to autophagiccell death in MCF-7 breast cancer cells. Cell Death Dis 3, e260)。
活性mTORは、細胞成長を促進し、それによりアポトーシスを阻害すると一般に思われるが、極度に活性的なmTORC1シグナリングは、アポトーシスに細胞を敏感にする(Thedieck et al., 2007)。興味深いことには、アストリン欠乏は、アポトーシスを促進し、そして、本発明者は、分割されたPARによって測定されるように、siAstrinが、H2O2誘導アポトシスに対して、ヒーラー細胞を、敏感にした。
重要なことには、アストリン依存のアポトーシス誘導は、shRaptorを仲介するmTORC1阻害によって阻害された。また、本発明者は、アストリンによるmTORC1阻害が、アポトーシスに対抗する酸化ストレス下のヒーラー細胞を保護すると結論をした。MCF-7乳癌細胞のようないくつかの乳癌細胞株で示されたように、これらの発見は、さらに他の癌細胞でもしめされる。要約すると、アストリンは、酸化ストレス下のmTORC1超活性化を防ぐことにより癌細胞でのアポトーシスを阻害する(図6を参照)。
アストリンは、ラプターをSGsへ補充し、酸化及び加熱ストレスと同様に栄養及びインシュリン刺激を含んでいるmTORC1を誘導する条件のもとで、mTORC1活性を制限するmTORC1分解に導く。本発明は、mTORC1を分解し、代謝的に障害のある細胞でのその活性を制限する、重要関連物質としてアストリンを明らかにした。一時的なストレス下での、アストリンあるいはSGsのいずれかの阻害は、mTORC1活性の制限におけるアストリンとSGsの重大な意義を明確に示し、細胞に、mTORC1超活性化によるアポトーシスをおこす。
mTORC1阻害剤ラパマイシン(rapamycin)は、寿命を延長させる( Harrison, D.E., Strong, R., Sharp, Z.D., Nelson,J.F., Astle, C.M., Flurkey, K., Nadon, N.L., Wilkinson, J.E., Frenkel, K.,Carter, C.S., et al. (2009). Rapamycinfed late in life extends lifespan in genetically heterogeneous mice. Nature 460, 392-395) そして癌進行を阻止する( Anisimov, V.N., Zabezhinski, M.A., Popovich, I.G.,Piskunova, T.S., Semenchenko, A.V., Tyndyk, M.L., Yurova, M.N., Antoch, M.P.,and Blagosklonny, M.V. (2010). Rapamycin extends maximal lifespan incancer-prone mice. Am J Pathol 176,2092-2097)。
したがって、ROS仲介mTORC1活性化は、正常な細胞機能にとって重要かもしれないし、又老化および癌の進行に関与するかもしれない。私たちのデータはこの2重の役割を支持し、アストリン枯渇およびその結果のmTORC1超活性化は、一時的なストレス下で細胞死を助長し、しかし増加したアストリンレベルは、明確に癌進行と関連した(Buechler, 2009; Valk et al., 2010)。
Akt活性化は、アポトーシスを阻止することがよく知られるメカニズムである、増加したFoxO1/3Aリン酸化および不活性化に帰着した(Appenzeller-Herzog, C., and Hall, M.N. (2012). Bidirectionalcrosstalk between endoplasmic reticulum stress and mTOR signaling. Trends CellBiol 22, 274-282) 。
正常細胞での、アポトーシスのアストリン仲介抑制は、それが、細胞が一時的なストレスか代謝障害でアポトーシスを受けるのを防ぐので、有益でありうる。対照的に、癌細胞では、アストリン仲介mTORC1とアポトシス抑制は、それが、過剰成長細胞がプログラム細胞死をうけるのを阻止するので、不利益でありうる。
このプロセスについての理解は、癌治療に新しい手段を開く。顕著に、アストリンは、腫瘍細胞(Buechler, 2009; Valk et al., 2010)および精母細胞で高度に発現される、しかし、他のすべての非癌組織では低レベルでのみ出現する(GeneNoteanalysis, www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SPAG5)。従って、アストリン阻害は、特異的に腫瘍細胞のmTORネットワーク活性を調整することを可能にすることができる。また、これは、NFLを回復し、かつ、進行癌でしばしば見られるコンデションの、Aktが極度に活性的な場合にアポトーシス増感を達成するのに特に有益でありうる( Spears, M., Cunningham, C.A., Taylor, K.J., Mallon,E.A., Thomas, J.S., Kerr, G.R., Jack, W.J., Kunkler, I.H., Cameron, D.A.,Chetty, U., et al. (2012). Proximityligation assays for isoform-specific Akt activation in breast cancer identifyactivated Akt1 as a driver of progression. J Pathol 227, 481-489)。
アストリン欠損細胞の不完全な細胞周期進行は、治療の標的としてのアストリンの適応性を制限する。だがアストリン欠損マウス(Xue, J., Tarnasky, H.A., Rancourt, D.E., and van DerHoorn, F.A. (2002). Targeted disruption of the testicular SPAG5/deepest proteindoes not affect spermatogenesis or fertility. Mol Cell Biol 22, 1993-1997)及びラット(Yagi, M., Takenaka, M., Suzuki, K., and Suzuki, H.(2007). Reduced mitotic activity and increased apoptosis of fetal sertoli cellsin rat hypogonadic (hgn/hgn) testes. J Reprod Dev 53, 581-589)は、主要な表現型を表示することなしに、生存可能である。したがって、重要な機能に影響せずに、ヒト疾患においてアストリンをターゲットとすることは確実性がある。
Claims (14)
- 細胞におけるラプターとアストリンの相互作用を調整する化合物を同定する方法であって、次のステップを含む;
a) アストリン、アストリンのラプター結合断片、及び/又は、アストリン発現細胞、又は、アストリンのラプター結合断片を発現する細胞の、少なくとも1つを、潜在的に、細胞においてラプターとアストリンの相互作用を調整する少なくとも1つの候補化合物と接触させること、そして、
b) 該少なくとも1つの候補化合物の存在下で、アストリン又は該断片のラプターへの結合の調整を同定すること。 - 該調整が、ラプターへの該結合の減少又は増加から選ばれる、請求項1に記載の方法。
- 該アストリンまたは該アストリンのラプター結合断片は、ストレス小粒の部分若しくはそれと関連する、請求項1又は2に記載の方法。
- 該同定が、rtPCR、免疫沈降法、及び該細胞でのアポトーシスの誘導若しくは減少の測定から選択された方法を含む、請求項1〜3のいづれか一に記載の方法。
- 該化合物は、ペプチドライブラリー、コンビナトリーライブラリー、細胞抽出物、植物細胞抽出液、低分子薬、アンチセンス−オリゴヌクレオチド、siRNA、mRNA、およびラプターへのアストリンの結合を特異的に阻止する抗体若しくはその断片からなるグループから選択される、請求項1〜4のいづれか一に記載の方法。
- 該細胞は、癌細胞、ヒト非胚性幹細胞、アストリン若しくはそれのラプター結合断片を発現する組み換え宿主細胞、ここで該組み換え宿主細胞はラプター発現する若しくは発現しない、酵母菌および組み換え細菌細胞であるグループから選ばれる、請求項1〜5のいづれか一に記載の方法。
- 該アストリンのラプター結合断片は、アストリンポリペプチドのN末端頭部ドメイン又はアストリンポリペプチドのN-末端アミノ酸1-481を含む、請求項1〜6のいづれか一に記載の方法。
- さらに、アポトーシスに腫瘍細胞を敏感にするための活性を同定するために該化合物を検査することを含む、請求項1〜7のいづれか一に記載の方法。
- 細胞におけるアストリンとラプターの相互作用を調整する化合物をスクリーニングするためのツールであって、それは、アストリンを発現する単離細胞、及び/又はそのラプター結合断片発現する単離細胞を含む、ツール。
- 該細胞は、ラプター及び/又はそのアストリン結合断片発現し、該細胞はヒト胚性幹細胞でない、請求項9に記載のツール。
- 該細胞は、癌細胞、アストリンあるいはそれのラプター結合断片を発現する組み換えの宿主細胞、酵母菌および組み換えの細菌細胞である、請求項9又は10に記載のツール。
- 該組み換えの宿主細胞、酵母菌および組み換えの細菌細胞は、ラプター及び/又はそれのアストリン結合断片を発現する、請求項11のツール。
- 該アストリン、ラプター及び/又はそれらの断片は、標識化されてなる請求項9〜12のいづれか一に記載のツール。
- 該アストリンのラプター結合断片は、アストリンポリペプチドのN末端頭部ドメイン又はアストリンポリペプチドのN-末端アミノ酸1-481を含む、請求項9〜12のいづれか一に記載のツール。
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