JP6490649B2 - 光刺激装置、光刺激方法及びプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、光刺激技術に関し、特に、頭部への光刺激技術に関する。
自然界における光環境の変化が生体の免疫系にもたらしている例として、秋や冬の日照時間の減少による気分の不快や行動障害の程度が、末梢血中のナチュラルキラー細胞(以下NK細胞)数と負の相関関係を認めたという報告がある(下記非特許文献1参照)。この報告は、日中の太陽光などの連続光が免疫調節に有用である可能性を示唆している。光の生体内における反応については、鳥類、爬虫類、魚類では視覚経路以外にも頭蓋骨を通過して松果体の光感受性を有する細胞に直接反応しているといわれているが、ヒトについては視覚経路以外のこのような反応は知られていない。
また、自然界の光以外の光を含めてその医学的効用に着目してみると、現在までに、中波長(UVB)あるいは長波長(UVA)紫外線は乾癬、白斑、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に、高照度光療法は季節性感情障害(SAD;seasonal affective disorder)やうつ病などの治療に、それぞれ応用されている。また、近赤色線は疼痛や皮膚潰瘍等への治療に応用されており、光の特に臨床医学における幅広い応用がすでに行われつつある。光源にダイオード光を用いた医学的報告については、近赤色発光ダイオード光にて創傷治癒効果の促進を認めたという基礎研究が今までにみられており、侵襲性が少ない光源についてもその医学的有用性が研究されつつある。
可視光が視覚経路、すなわち神経系を介して免疫応答に及ぼす影響についての研究報告は、既にいくつかみられる。また、発明者らは、健常者に光駆動を行うことによりみられる前頭部のα波の賦活化が、末梢血中の細胞性免疫の活性化と相関することを以前に報告した。
しかしながら、光駆動による眼を介する光刺激は、被験者にとっては一種の物理的ストレスともなるため、この免疫系の増強を妨げる作用をもたらすものと考えられた。
また、両眼を光から完全に遮蔽した状態にて、前頭部の前方より光を照射し、非侵襲的に脳及び免疫機構の活性化を図る技術も発明者により提案されている(特許文献1及び2参照)。
特許文献1に記載の照射用具は、前頭部に接する光源部と、当該光源部を使用者の頭部に装着(固定)するバンド部とを備えている。光源部の内側(使用者の前頭部側)には、多数のLEDが配置されている。光源部の下縁部及び側縁部には、遮光部が設けられている。
特開2001−231871号公報 特開平9−84888号公報
S. Kasper, N.E. Rosenthal, S. Barberi, A. Williams, Tamarkin L., S.L.B.Rogers and S.R. Pillemer: Immunological correlates of seasonal fluctuations in mood and behavior and their relationship to phototherapy, Psychiatry Res., 36, pp.253-264 (1991)M. Terman, J.S. Terman, F.M. Quitkin, P.J. McGrath, J.W. Stewart and B.Rafferty: Light therapy for seasonal affective disorder: a review of efficacy, Neuropsychopharmacol., 2, pp.1-22 (1989)
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、頭部に画一的な光を照射するものであり、その効果に個人差が大きいという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決し、個々人に適した光刺激技術を提供することを目的とする。
本発明の一観点によれば、θ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域の波形を整形する波形生成部と、前記波形生成部において生成された波形の振幅に基づいてパルス波形のデューティを調整したパルス波形を生成するパルス変調部と、を有し、前記パルス変調部の出力に基づいて、頭部への赤色パルス光の照射を行う光照射部とを有することを特徴とする光刺激装置が提供される。
前記波形生成部は、自己脳波に基づいてθ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域の波形を整形することを特徴とする。
頭部、例えば前頭前野(前頭連合野)を中心に、各人固有のα波のリズム(ゆらぎ)の周波数及び振幅に基づいて、自動的に調整された頭部へのパルス光照射により、自然発生中のα波とθ波の振幅を増強させ、これにより、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強及び細胞性免疫の活性化を図ることができる。
パルス変調部によるパルス駆動電圧で赤色パルス光を生成するため、消費電力を抑制し、さらに、出力電圧のリップル成分を小さくできることと、負荷変動に対する応答性能を高められる。従って、熱による頭部の損傷等を防止できる。
前記光照射部により赤色パルス光が照射された際の自己脳波の変化を、前記光照射部の駆動パルス電圧に反映させるフィードバック機能を有することを特徴とする。フィードバック機能により、周波数スイープ処理を不要とすることができる。前記フィードバック機能は、自己脳波の周波数帯域と振幅に応じて光照射用データを更新することを特徴とする。
前記周波数帯域は、7Hzから13Hzまでの間の連続した周波数帯域であることを特徴とする。
前頭前野(前頭連合野)を中心に、各人固有の脳波のリズムに基づいて、自動的に調整された頭部へのパルス光照射により、自然発生中のα波とθ波の振幅を増強させ、これにより、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化による生体としての活性化、及び細胞性免疫の活性化が可能となる。
前記波形生成部は、入力した自己脳波の振幅の強弱を抑制する機能を有することを特徴とする。
これにより、適切な強度(デューティー)の照射光を照射することができる。
自己脳波又は前記整形した波形を記憶するメモリを有し、前記メモリから読みだした波形に基づいて波形処理を行うことを特徴とする。脳波を常に取得していなくても良いため、処理が簡単になる。
前記周波数帯域を調整する中心周波数調整部(BPF部)を有することを特徴とする。所望の周波数帯域に絞ることで、効果をより有効にすることができる。
また、本発明は、センサにより取得した自己脳波をA/D変換するとともに、必要に応じて増幅する脳波アンプと、前記脳波アンプからの出力信号に基づいて、LEDの駆動を制御する制御信号を生成する制御信号生成回路と、前記制御信号生成回路からの出力をPWM変調するPWM変調部と、前記PWM変調部からの出力信号に基づいて駆動されるLEDを備えた光照射部と、を備えることを特徴とする光刺激装置である。
前記制御信号生成回路は、θ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域を通過させる第1のバンドパスフィルタ(BPF1)と、個人に依存する振幅の変動が抑制するAGCリミッタを有することを特徴とする。
前記制御信号生成回路は、さらに、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)と、前記第2のバンドパスフィルタ(BPF2)からの出力を、前記AGCリミッタにフィードバックするフィードバック機能を有することを特徴とする。前記フィードバック機能を構成する回路として、入力の絶対値をとる絶対値回路と、入力の振幅を抑制させるBEF回路(帯域除去濾波器)と、その出力のフィルタリングを行うLPF回路と、を有していることを特徴とする。
本発明は、上記のいずれか1に記載の光刺激装置からの前記赤色パルス光を被験者の頭部に照射するための光刺激装置用の器具であって、前記光照射部は、赤色LEDが多数配置された帽子状の部材と、前記帽子状の部材に摺動可能に設けられた目保護板と、を有し、に光を照射する際には、前記目保護板を眼を覆う位置までスライドさせて目を保護し、前記目保護板を眼の方向からスライドさせることで、前記照射部と被照射領域との間に位置するように構成されている光刺激装置用の器具であっても良い。
また、本発明は、上記のいずれか1に記載の光刺激装置からの前記赤色パルス光を被験者の頭部に照射するための光刺激装置用の器具であって、前記光刺激装置において、装置のハウジングの内部の光の一部を動作モニタ光として被験者の目に導く導光路を設けることを特徴とする光刺激装置用の器具である。
脳を刺激する光の動作をモニタするために使用者に動作モニタ光を投射することができる。
前記動作モニタ光を、調光または遮蔽できるように調整スイッチを設けたことを特徴とする。
屋外、室内等で外部環境の明るさが変化した場合に眩しすぎたり暗すぎたりしないように調整または遮光可能な動作確認窓を頭部に装着する光パルス装置において、目で見えるところに機器の動作確認表示があり、内部の光刺激信号の一部を確認できる窓があり、導光路上に減光するための調整窓があり、明るさを変えたい場合に調整窓を操作して明るさを調整できる動作確認窓を設ける。
調整窓は、透過率の異なる色素でもよいし、導光路上の遮蔽物でもよい。動作確認窓で確認灯の明るさを調整することができ、内部の光学的な状態を検知する検出窓(孔)により、明るさ、動作を確認する表示が可能である。
システム側の起動および停止を容易にモニタ可能とすることも可能である。
本発明の他の観点によれば、自己脳波のうち、θ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域の波形を整形する波形生成ステップと、前記波形生成ステップにおいて生成された波形の振幅に基づいてパルス波形のデューティを調整したパルス波形を生成するパルス変調ステップと、を有し、前記パルス変調ステップの出力に基づいて、頭部への赤色パルス光の照射を行う光照射ステップと、を有することを特徴とする光刺激方法が提供される。
前記光照射ステップにより赤色パルス光が照射された際の自己脳波の変化を、前記光照射ステップにおける駆動パルス電圧に反映させるフィードバック処理ステップを有することを特徴とする。
前記波形生成ステップは、自己脳波に基づいてθ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域の波形を整形することを特徴とする。前記光照射ステップにより赤色パルス光が照射された際の自己脳波の変化を、前記光照射ステップにおける駆動パルス電圧に反映させるフィードバック処理ステップを有することを特徴とする。
本発明は、コンピュータに、上記に記載の光刺激方法を実行させるためのプログラムであっても良く、当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体でもよい。
パルス変調された駆動波形に基づいて駆動されるLEDを頭部に照射するため、個人の特性を考慮しつつ、熱の発生を抑制した状態で、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化による生体としての活性化、及び細胞性免疫の活性化を図ることができる。
本発明によれば、個々人に適した光刺激技術を提供することができる。
本発明の第1の実施の形態による光刺激装置の一構成例を示す機能ブロック図である。 本発明の第2の実施の形態による光刺激装置の一構成例を示す機能ブロック図である。 BPF、AGC制御ノッチ、LPFの特性例を示す図である。 本実施の形態で利用する脳波の周波数帯域の一例を示す図である。 図1Aに示すゆらぎ波形生成部の入出力波形の一例を示す図である。 図1Bに示す回路における波形の遷移例を示す図である。 パルス変調部の入力波形(a)と出力波形(b)を示す図である。 図1Bに示すフィードバック回路における波形の遷移例を示す図である。 波形処理の流れの一例を示すフローチャート図である。 頭部への光照射処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施の形態による光照射装置の構成例を示す図である。 本発明の第6の実施の形態による光刺激装置の構成例を示す図であり、第1〜第5までの各実施の形態による処理を行って得た赤色線パルス光を、被験者の頭部に照射するための器具の他の例を示す図である。
以下では、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中で説明番号が同じものは、特に断わりがない限り同一部材を示していることとする。
西洋医学には、「個体差」、「体質」という概念がない。発明者は、個体差、体質も考慮することで、退化した機能を効果的に蘇生させる技術を研究している。
特に、前頭前野(前頭連合野)を中心に、各人固有の脳波のリズムに基づいて、自動的に調整された頭部へのパルス光照射により、自然発生中のα波とθ波の振幅を増強させ、これにより、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化による生体としての活性化、及び細胞性免疫の活性化を図ることを思いついた。
上記の発想に基づいて、以下に、本発明の各実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態による光刺激装置について説明する。尚、本明細書において、頭部とは、前頭前野(前頭連合野)を含み、後頭部を除く頭部を意味する。
図1Aは、本発明の第1の実施の形態による光刺激装置の一構成例を示す機能ブロック図である。当該機能は、ハードウェア構成又はソフトウェア構成あるいはそれらの組み合わせにより実現可能である。以下、同様である。
図2は、本実施の形態で利用される脳波の周波数帯域について説明する図である。θ波は5〜8Hz、α波は8〜13Hz、β波は13〜30Hzの帯域をもつ。
図1Aに示すように、本実施の形態による光刺激装置は、例えばセンサ11により取得した被験者の脳波(脳波センサ11、脳波アンプ13:自己脳波とも称する。)に基づいて、脳波のうちのθ波の一部とα波の一部、例えば、図2に示す7〜13Hzの周波数帯域の脳波を利用する。この周波数帯域の脳波に基づいて、本実施の形態による光刺激装置は、自己脳波に基づく適切な波形を生成する波形生成部1aと、その出力をパルス変調(PWM変調)するパルス変調部3と、パルス変調された駆動波形に基づいて駆動される例えば赤色発光ダイオード(例えば発光波長660nm、LED)などの光照射部4と、を有している。光照射部4における、赤色光の光源波長は、610〜750nmの範囲が好ましい。光照射部4から照射された赤色パルス光は、被験者の頭部などの被照射領域5に照射される。上記では、波形生成部1aは、自己脳波に基づいて適切な波形を生成するものとしたが、波形生成対象は、自己脳波に限らない。例えば、近親者や、同じような病気の患者などの脳波を利用することも可能である。
尚、波形生成部1aは、振幅の個人差を抑制する例えばAGC部1a−1、α波、θ波の所定周波数帯域の波形のみを抽出する例えばBPF部1a−2を有していても良い。これらの詳細な構成については、第2の実施の形態において詳細に説明する。
図3Aは、波形生成部1aへの脳波の入力信号(原脳波(a))と波形生成部1aからの出力信号(b)の一例であり、縦軸は振幅、横軸は時間(s)である。いずれも100Hzでサンプリングを行っている。L1、L2は、それぞれの波形の包絡線(エンベロープ)である。
図3A及び図3Bに示すように、基本的には、個人的なゆらぎを保持しつつ、エンベロープL1、L2を比較すればわかるように、個人の特異点を吸収(除去)するような波形の変形処理を行う。
以上のように、本実施の形態による光刺激装置によれば、個人の脳波に基づく周波数ゆらぎを有する波形を作成し、この波形をパルス変調して生成した駆動波形に基づいて駆動される赤色LEDを頭部に照射するため、個人の特性を考慮しつつ個人の特異点を除去し、さらに、パルス変調により熱の発生を抑制した状態で、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化による生体としての活性化、及び細胞性免疫の活性化を図ることができる。
尚、LEDは、赤色LEDに限定されるものではなく、周波数帯も7から13Hzに限定されるものではない。光源もLEDを用いたものに限定されない。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について詳細に説明する。図1Bは、本実施の形態による光刺激装置の一構成例を示す機能ブロック図であり、図1Aに対応する図である。
自己脳波に基づいてパルス光の駆動電圧を生成する場合に、光刺激が強すぎると身体に与える刺激が強すぎ、一方、光刺激が弱すぎると、効果が少なくなりすぎる。
図1Bに示すように、本実施の形態による光刺激装置は、センサ11により取得した被験者の脳波をA/D変換するとともに、必要に応じて増幅する脳波アンプ13と、脳波アンプ13からの出力信号に基づいて、LEDの駆動を制御する制御信号を生成する制御信号生成回路1bと、制御信号生成回路1bからの出力をPWM変調するPWM変調部3と、PWM変調部3からの出力信号に基づいて駆動される赤色LEDを備えた光照射部4と、を備えている。光照射部4からの光は、被験者の被照射領域5、例えば頭部にパルス光として照射される。PWM変調部3は、周波数を変化させずに、可変のパルスの幅および正負により、波形を表す。これにより、出力電圧のリップル成分を小さくできることと、負荷変動に対する応答性能を高められる。PWM変調に代えてPFM変調を用いても良い。
制御信号生成回路1bは、例えば、第1のバンドパスフィルタ(BPF1)1−1と、AGCリミッタ1−2と、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3と、を有している。
さらに、制御信号生成回路1bは、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3からの出力を、AGCリミッタ1−2にフィードバックするフィードバック機能として、絶対値回路1−4、例えば入力の2倍の周波数にするBEF回路1−5と、その出力のフィルタリングを行うLPF回路(fc、クオリティファクタQ=0.7)1−6と、を有している。中心周波数を5から15Hzの間で任意に設定変更する中心周波数変更部1−1−1として機能させることができる。BEF回路1−5は、帯域除去濾波器であり、ある周波数だけを取り除き他の帯域は通すフィルタである。
さらに、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3の出力を記憶するメモリ1−7を有していても良い。
図1Cは、BPFの周波数特性L1と、AGCリミッタ1−2のAGC制御用ノッチL2と、LPF1−6の周波数特性L3とを例示する図である。この特性例は、中心周波数fc=9.0Hz,Q=5の例である。
これらの特性により、制御信号生成回路1bにより、符号P1で示した周波数範囲の脳波に基づく処理後信号をPWM変調部3に出力することができる。
図3Bは、図1Bの回路による波形処理例を、周波数と振幅との関係により示す図である。
(a)の波形1)は、第1のバンドパスフィルタ(BPF1)1−1への入力波形例を示す図であり、縦軸は振幅、横軸はサンプリング時間である。波形1)は、例えば、個人の脳波(自己脳波)を増幅した第1の波形である。
(b)の波形2)は、第1のバンドパスフィルタ(BPF1)1−1からの出力波形例を示す図であり、第1の波形1)のうち、例えば、図2に示すような7〜13Hzの波長のみを抽出する。
(c)の波形3)は、波形2)を入力としたAGCリミッタ1−2の出力波形であり、個人に依存する振幅の変動が抑制されている。
(d)の波形4)は、波形3)を入力とした第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3の出力波形例を示す図であり、BPF2(1−3)は任意に設けられ、波形成形処理が行われる。
これにより、波形の個人差を残しつつ個人差を抑制するとともに、パルス信号に変形しやすい波形を得ることができる。
尚、波形3)、4)は、後述するフィードバック機能を働かせた場合の波形例である。
図3Cは、波形4)を入力としたPWM回路3の入出力波形であり、横軸のスケールを変更している。図3C(a)に示す図3B(d)の波形4)の周期(周波数)と振幅とに応じて、図3C(b)に示すように、パルス波形のデューティが調整された波形である。このように、PWM回路3において、波形4)に応じて、パルス波形を得ることができる。このパルス波形をLED4の駆動電圧として用いることで、発熱を抑制することができる。
図3Dは、図1Bのうちフィードバック回路による波形処理の例を示す図である。
波形11)は、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3の出力波形である。
波形12)は、波形11)を、絶対値回路1−4により、絶対値とした例である。これにより、波形の振幅を計算しやすくなる。
波形13)は、波形12)を、BEF回路1−5により図1Cに示す制御ノッチの特性により、振幅を抑制させている例である。
波形14)は、波形13)を、LPF1−6によりベースラインを振幅0とし、振幅を例えば0.7倍にした例である。
波形14)をAGCリミッタ1−2の制御端子に入力させることで、個人差に依存する振幅をAGCリミッタ回路1−2にフィードバックし、個人の特徴を保持しつつ変動を抑制することができる。
(変形例)
例えば、第2のバンドパスフィルタ(BPF2)1−3の出力を記憶するメモリ1−7により、その個人に対して効果のある波形を記憶させておくことで、それ以降は、メモリからの波形によりパルス信号を生成するようにしても良い。あるいは、脳波をメモリに記憶させておいても良い。その他、メモリに記憶させる信号として、図1Bに示す回路のいずれかの出力を記憶するようにして、処理を簡単にしても良い。
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態として、第1、第2の実施の形態による上記の処理をソフトウェアによる処理とした際の、処理の流れを示すフローチャート図である。図4に示すように、まず、処理を開始すると(Start)、ステップS2において、脳波を取得する。次いで、ステップS3において、BPF1の処理を行い、ステップS4において、AGCリミッタ処理を行う。次いで、ステップS5において絶対値処理を、ステップS6においてBEF処理を、ステップS7においてLPF処理を行った結果をステップS4に戻し、次いで、ステップS8でBPF2処理を、ステップS9でPWM変調処理を行い、ステップS10でLEDに駆動パルス電圧を印加して、処理を終了する(ステップS11)。
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態として、上記の第1〜第3までの各実施の形態におけるLED駆動パルス信号に基づいて駆動されるLEDによる被験者の頭部への光照射処理の流れを示すフローチャート図である。
ステップS21において光パルスの照射処理を開始し(Start)、ステップS22において、実際の光照射を開始する。ここで、ステップS23のように、3分間程度の周波数のスイープ処理を行っても良い。周波数のスイープ処理は、例えば、13Hzから7Hzまで、周波数を0.1Hz刻みに等間隔(約3.5秒)で照射する。
次いで、ステップS24において、パルス光を頭部に照射する。照射時間は、例えば、12分程度であり、ステップS25でタイムカウンタなどにより12分が経過するまでは、ステップS26で、光照射用データを更新してステップS22に戻る。光照射データの更新処理は、図4に示すような処理であり、光パルスの照射により変化した脳波に基づく図4の処理結果をLEDの駆動パルス電圧に反映させるフィードバック処理である。照射時間は、例えば、12分(スイープあり)から15分(スイープなし)までが好ましい。
例えば、自己脳波における周波数領域に、基づいて、次の更新データは、自己脳波として検出された周波数領域のみについて光パルスを照射する。また、振幅についても、自己脳波として検出された振幅に応じて、振幅の大小を、振幅が大きければ大きく、振幅が小さければ小さくなるように更新する。このフィードバック処理により、周波数スイープ処理を不要とすることができる。
(第5の実施の形態)
図6は、本発明の第5の実施の形態による光刺激装置の構成例を示す図であり、第1〜第5までの各実施の形態による処理を行って得た赤色パルス光を、被験者の頭部に照射するための器具の一例を示す図である。図6(c)に示すように、出射穴57aの位置に図示しないLED4が多数配置された支持板57が裏面(頭部側の被照射領域)に設けられた帽子状の部材51を被る。
波形生成部1aとパルス変調部3(図1A)等により生成したパルス駆動電圧に基づいて、頭部に赤色光が照射される。ここで、帽子状の部材51の照射部51aを被照射領域と合わせておく。そして、実際に光を照射する際には、帽子状の部材51に摺動可能に設けられた目保護部53を眼の位置までスライドさせて目を保護する(図6(a))。
図6(b)に示すように、目保護部53を眼の位置からスライドさせると、照射部51aと被照射領域との間に位置するように構成されており、照射部51aからの光を遮蔽することで目を保護することができる。
以上のように、本実施の形態では、光照射と目の保護とを有効に行うことができる。
(第6の実施の形態)
図7は、本発明の第6の実施の形態による光刺激装置の構成例を示す図であり、第1〜第5までの各実施の形態による処理を行って得た赤色線パルス光を、被験者の頭部に照射するための器具の他の例を示す図である。
図7(a)、(b)に示す頭部の装着する光パルス装置151において、装置のハウジング153の内部には、発光部155の他に、例えば信号処理部157、電源(電池等)161が配置されている。信号処理部157、電源(電池等)161は、ハウジング153の外側に配置されていても良い。
この構成において、脳を刺激する光の動作(起動、停止)を容易にモニタするために、図7(b)、(c)に示すように、ハウジング153の内部の光の一部を使用者の目に入る場所に導き、使用者に動作モニタ光を投射する機能を配置している。
このように、頭部に装着する光パルス装置151において、目で見える位置に、機器の動作確認のための、内部の光刺激信号の一部を確認できる窓163が設けられている。そして、その光の眼の方向への導光路上に、減光するための調整窓があり、明るさを変えたい場合に調整窓を操作して明るさを調整することができる。
この調整窓163による光の調整性は、透過率の異なる色素により行っても良いし、導光路上の遮蔽物でもよく、動作確認窓で確認灯の明るさを調整する装置であれば良い。
例えば、図7(c)、(d)に示すように、この機能は、例えば、動作確認窓163を含み、動作モニタ光を、調光、または遮蔽できるように調整スイッチ機能を設ける。
調整スイッチ機能は、例えば、図7(c)、(d)に示すように、動作確認窓163を望む位置にスリット165とスリット165の開口範囲を調整可能に配置された遮光板164とを設けている。遮光板164をスライドさせることによりスリット165の開口範囲を調整することで、屋外、室内等で外部環境の明るさが変化した場合に、眩しすぎたり暗すぎたりしないように調整または遮光可能となっている。
以上のように、本実施の形態によれば、内部の光学的な状態を検知する検出窓(孔)であり、明るさ、動作を確認する表示を行い、システム側の起動および停止を容易にするためのモニタが可能である。
処理および制御は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によるソフトウェア処理、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によるハードウェア処理によって実現することができる。
本発明の装置を使用することによりヒト脳における退化した機能の蘇生が可能になる。具体的には、本発明によれば前頭前野(前頭連合野)を中心に、各人固有の脳波のリズムに基づいて、自動的に調整された頭部へのパルス光照射により、自然発生中のα波とθ波の振幅を増強させ、これにより、無侵襲に大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化によるリラクゼーション及び細胞性免疫の活性化を図ることができる。
ヒトの進化の過程においては、非常に重要なパーツを(特に生活に関係する物理的要因から)守るために(骨格を含む)器官の変化(進化)が起きる。(このように、環境に応じて進化した種や亜種が自然選択され今日存在していると考えられている。)その進化のために(進化と引き換えに)、本来もちあわせていた生理学的な賦活化や調節に関する機能が徐々に退化することが少なからずある。本発明は、このようにして退化せざるをえなくなった生理学的及び免疫学的機能を蘇らせる技術の典型例と言える。
本発明の装置は、ヒト頭部、とりわけ前頭前野(前頭連合野)を中心に特定波長域の赤色パルス光で刺激することによって、生理現象のリズム(ゆらぎ)の範囲を超えた生体内の歪みから生じるα波の周波数や振幅の乱れを、各人固有のθ波の一部帯域〜α波一部帯域の間の周波数及び振幅に同調及び増幅させることにより改善しさらに予防することを可能にする。この頭部の光刺激は、脳表面(主として大脳皮質)の退化した光感受性機能の蘇生を起こし、大脳皮質での神経細胞の興奮促進をもたらして神経インパルスの増強が起こり(内分泌系の変化による精神的ストレスの改善などをもたらすとともに)自然免疫系(細胞性免疫)の活性化を起こす。これが免疫監視能の増強となり、ウイルス感染細胞や(健常者でも1日に3千〜5千個も発生していると言われる)ガン細胞に対する攻撃・防御をもたらすものと推定されている。
免疫系には、獲得免疫系と自然免疫系(細胞性免疫)がある。獲得免疫系では、体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入したとき樹状細胞などの抗原提示細胞がヘルパーT細胞に抗原を提示し異物の情報を伝えることによってヘルパーT細胞はB細胞に指令して抗原に対する抗体を作らせ、この抗体が異物を攻撃し破壊する。一方、自然免疫系(細胞性免疫)は、獲得免疫系が作用する前に上記の異物に対し即効的に攻撃できるようにパトロールしているNK細胞、マクロファージ(貪食細胞)及び顆粒球(好中球)による初期防御のための免疫系である。本発明の装置による頭部の光刺激ではNK細胞の活性化が生じるという特徴がある。尚、NK細胞数の増加は、末梢血中のNK細胞の細胞表面抗原であるCD57及びCD16(ここでCDは「Cluster of Differentiation」の略である。)についてCD57CD16及びCD57CD16の細胞の存在量をフローサイトメトリー法などにより測定して確認することができる。
ヒト脳のα波を制御することによって免疫力を高めることは知られていたが、特に0.5〜13Hzの周波数のパルス光の光刺激によるNK細胞の活性化やリラクセーション効果は本発明者らにより特開平9−84888号公報や特開2001−231871号などにも記載されている。しかしこの技術は、前述のとおり、個人差(もしくは個体差)及び体質を考慮したものでなく頭部に画一的な光を照射するものであり、その効果に個人差が大きいという問題があった。ヒト脳波のうち安静閉眼時にα波(周波数13〜8Hz)、浅い睡眠時にθ波(周波数7〜4Hz)が出現する。覚醒時にはβ波(周波数30〜14Hz)が主になり緊張やストレスの影響を受ける。本発明の装置は、各人の脳波を測定し各人固有のα波のリズムの周波数及び振幅に自動的に合わせた赤色パルス光(610〜750nmの任意の波長域使用)を、頭部、例えば前頭前野(前頭連合野)を中心に照射することにより自然発生中のθ波の一部帯域〜α波の一部帯域(通常7〜13Hz、好ましくは7〜12Hz、より好ましくは7〜10Hz)の脳波の振幅を増強することを可能にする。実際、健常者、ガン患者、高齢者などに対する本発明における赤色パルス光照射の実施により、例えば1日1〜6回(1日4〜6回の場合は、例えば午前中1・2回目を15分間以上の“休憩時間(interval)をおいて実施、午後にもこの2回分のセットを1〜2回行うという方法をとる。)、各回約15分間、約2〜3週間もしくはそれ以上の期間実施することにより、大脳皮質の神経インパルスの増強(大脳皮質機能の賦活化)、内分泌系の変化による生体としての活性化(例えば血中ノルエピネフリン [ノルアドレナリン]レベルの低下によるイライラ感の低下や精神的ストレスの軽減など)、自然免疫系(細胞性免疫)の活性化(例えばNK細胞活性の上昇)がもたらされることを確認した。
本発明のような技術を用いることによって、脳表面(発生学的に終脳と呼ばれる部位)に元来存在していた光感受性をよみがえらせることにより、現代人の脳においては退化しつつある上記生理学的機能の一部(例えば、大脳皮質の神経インパルスの増強、内分泌系の変化による生体としての活性化、及び細胞性免疫の活性化など)を蘇生させることが可能になる。本発明者らの一連の医工連携による研究を通して、この大脳皮質の光感受性を蘇生させ自然治癒力を蘇らせることが可能になった。
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
本発明は、頭部への光パルス照射装置に利用可能である。
1a…波形生成部、3…(PWM)パルス変調部、4…光照射部(LED)、11…脳波センサ、13…脳波アンプ、51…帽子状の部材、51a…照射部、51b…遮断部、53…目保護部、57…支持板、57a…出射穴。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (1)

  1. センサにより取得した自己脳波をA/D変換するとともに、増幅する脳波アンプと、前記脳波アンプからの出力信号に基づいて、LEDの駆動を制御する制御信号を生成する制御信号生成回路と、前記制御信号生成回路からの出力に基づいて駆動され、頭部に照射するLEDを備えた光照射部と、を備え、
    前記制御信号生成回路は、θ波の一部帯域とα波の一部帯域とを含む周波数帯域を通過させる第1のバンドパスフィルタ(BPF1)と、個人に依存する前記自己脳波における振幅の変動を抑制するAGCリミッタと、を有し、
    さらに前記AGCリミッタの出力を、前記AGCリミッタにフィードバックするフィードバック機能を有することを特徴とする頭部光刺激装置。
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