JP6486116B2 - 光学部材および光学部材を有する画像表示装置 - Google Patents

光学部材および光学部材を有する画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、光学部材および光学部材を有する画像表示装置に関する。
コレステリック構造を有する液晶材料は、波長選択反射性を有し、その特性を生かして様々な光学部材の構成材料として使用されている。例えば、特許文献1には、透明基板上に、赤外線を選択反射するコレステリック構造を有する液晶材料を含有する透明インキからなるパターンを印刷した透明シートが開示されている。本透明シートはディスプレイ装置に装着し、赤外線照射部およびパターンにより反射された赤外線パターンを検知する赤外線センサーを備えている電子ペンと組み合わせて用い、直接手書きしてデータ入力することができるシートとして開示されている。
特開2008−165385号公報
コレステリック構造を有する液晶材料において、波長選択反射性はコレステリック螺旋軸方向で最大となるため、螺旋軸方向の揃った材料において、螺旋軸に対して斜め方向から光を入射させ、かつ同方向から光を検出または観察する態様で用いる場合においては、高い反射性を得ることは困難であった。特許文献1では、螺旋軸方向と透明基板の表面の法線とがなす傾き角を少なくとも0〜45°の範囲内で分布させることにより、広い読取角度を有する赤外線反射パターン印刷透明シートが形成できるとされている。しかし、上記のように傾き角を分布させた構造は単に光を拡散させるだけであるため、各方向への反射光の強度を十分に高くすることはできない。
本発明の課題は、コレステリック構造を有する液晶材料を用いた光学部材において、斜め方向を含むいずれの方向から光を入射して同方向から検出または観察した場合でも、上記液晶材料からの反射光の感度のよい光学部材を提供することである。すなわち、本発明の課題は、コレステリック構造を有する液晶材料を用いた光学部材において、上記液晶材料が多方向において高い再帰反射性を示す光学部材を提供することである。本発明はさらに、ディスプレイに装着して、データ入力することができるシートとして用いることのできる上記光学部材、および上記光学部材を有する画像表示装置を提供することを課題とする
本発明者らは、コレステリック構造を有する液晶材料を用いた反射部材について、さらに検討を重ね、コレステリック構造の螺旋軸方向が効率的に分布した構造を実現し、多方向からの再帰反射性の高い光学部材を得て、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記の[1]〜[12]を提供するものである。
[1]光学部材であって、
基板と、上記基板の表面に接するドットとを有し、
上記ドットは波長選択反射性を有し、
上記ドットは、コレステリック構造を有する液晶材料からなり、上記コレステリック構造は走査型電子顕微鏡にて観測される上記ドットの断面図において明部と暗部との縞模様を与え、
上記ドットは、上記ドットの端部から中心に向かう方向で最大高さまで連続的に増加する高さを有する部位を含み、
上記部位において、上記ドットの表面から1本目の上記暗部がなす線の法線と上記表面とのなす角度は70°〜90°の範囲であり、
上記液晶材料は界面活性剤を含む、
光学部材。
[2]上記基板の表面に上記ドットの複数をパターン状に有する[1]に記載の光学部材。
[3]上記ドットの直径が20〜200μmである[1]または[2]に記載の光学部材。
[4]上記ドットの直径が30〜120μmである[1]または[2]に記載の光学部材。
[5]上記最大高さを上記ドットの直径で割った値が0.13〜0.30である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学部材。
[6]上記ドットの端部において、上記ドットの表面と上記基板とのなす角度が27°〜62°である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学部材。
[7]上記界面活性剤がフッ素系界面活性剤である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学部材。
[8]上記液晶材料が液晶化合物、キラル剤および上記界面活性剤を含む液晶組成物を硬化して得られる材料である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学部材。
[9]上記ドットが赤外光領域に中心波長を有する波長選択反射性を有する[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学部材。
[10]上記ドットが波長800〜950nmに中心波長を有する波長選択反射性を有する[9]に記載の光学部材。
[11]可視光領域において透明である[1]〜[10]のいずれか一項に記載の光学部材。
[12][11]に記載の光学部材を有する画像表示装置。
本発明により、新規な光学部材が提供される。本発明の光学部材は、例えばディスプレイに貼り付けて、ディスプレイ装置に直接ペンなどにより手書きしてデータ入力するための光学部材として使用することができる。
本発明の光学部材の一例の断面図を模式的に示す図である。 実施例で作製した光学部材のドットの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した画像を示す図である。 図3は、本発明の光学部材を、画像表示装置(画像表示可能なディスプレイ装置)の表面または前方に装着されるシートとして用いたシステムの概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
本明細書において、各数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同一」、等の表現)については、本技術分野で一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。特に、本明細書において、「全部」、「いずれも」または「全面」などというとき、100%である場合のほか、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合を含むものとする。
可視光は電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380nm〜780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域または780nmを超える波長域の光である。
赤外光のうち、近赤外光は780nm〜2500nmの波長域の電磁波である。紫外光は波長10〜380nmの範囲の光である。
本明細書において再帰反射は入射した光が入射方向に反射される反射を意味する。
本明細書において、「極角」は基板の法線に対する角度を意味する。
本明細書において、ドットの表面というときは、基板と反対側のドットの表面または界面を意味し、基板と接していない面を意味する。なお、ドットの端部でドットの表面が基板と接することを妨げるものではない。
本明細書において透明というとき、具体的には波長380〜780nmの非偏光透過率(全方位透過率)が50%以上であればよく、70%以上であればよく、85%以上であることが好ましい。
本明細書において、「ヘイズ」は、日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH−2000を用いて測定される値を意味する。
理論上は、ヘイズは、以下式で表される値を意味する。
(380〜780nmの自然光の散乱透過率)/(380〜780nmの自然光の散乱透過率+自然光の直透過率)×100%
散乱透過率は分光光度計と積分球ユニットを用いて、得られる全方位透過率から直透過率を差し引いて算出することができる値である。直透過率は、積分球ユニットを用いて測定した値に基づく場合、0°での透過率である。
<光学部材>
光学部材は基板、およびその表面に形成されたドット、すなわち、基板表面に接するドットを含む。基板表面に接しているドットとは、基板表面に直接接するドットである。
光学部材の形状は特に限定されず、例えば、フィルム状、シート状、または板状であればよい。図1に本発明の光学部材の例の断面図を模式的に示す。図1(1)に示す例では、支持体3からなる基板2の表面にドット1が接している。図1(2)に示す例では、さらにドット1を覆うように基板のドット形成面側にオーバーコート層5が設けられている。図1(3)に示す例では、支持体3および下地層4からなる基板2の下地層側の表面にドット1が接している。図1(4)に示す例では、さらにドット1を覆うように基板のドット形成面側にオーバーコート層5が設けられている。
本発明の光学部材は、用途に応じて、可視光領域において、透明であっても透明でなくてもよいが、透明であることが好ましい。
本発明の光学部材のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。
[基板]
本発明の光学部材に含まれる基板は、表面にドットを形成するための基材として機能する。
基板は、ドットが光を反射する波長において、光の反射率が低いことが好ましく、ドットが光を反射する波長において光を反射する材料を含んでいないことが好ましい。
また、基板は可視光領域において、透明であることが好ましい。また、基板は、着色していてもよいが、着色していないか、着色が少ないことが好ましい。さらに基板は屈折率が1.2〜2.0程度であることが好ましく、1.4〜1.8程度であることがより好ましい。いずれも、例えば、光学部材がディスプレイの前面で用いられる用途の光学部材などにおいて、ディスプレイに表示される画像の視認性を低下させないようにするためである。
基板の厚みは用途に応じて選択すればよく、特に限定されないが、5μm〜1000μm程度であればよく、好ましくは10μm〜250μmであり、より好ましくは15μm〜150μmである。
基板は単層であっても、多層であってもよい。単層である場合の基板の例としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリオレフィン等が挙げられる。多層である場合の基板の例としては、上記の単層である場合の基板の例のいずれかなどを支持体として含み、上記支持体の表面に他の層を設けたものなどが挙げられる。
他の層の例としては、支持体とドットの間に設けられる下地層が挙げられる。下地層は樹脂層であることが好ましく、透明樹脂層であることが特に好ましい。下地層の例としては、ドットを形成する際の表面形状を調整するための層、ドットとの接着特性を改善するための層、ドット形成の際の重合性液晶化合物の配向を調整するための配向層などが挙げられる。また、下地層は、ドットが光を反射する波長において、光の反射率が低いことが好ましく、ドットが光を反射する波長において光を反射する材料を含んでいないことが好ましい。また、下地層は透明であることが好ましい。さらに下地層は屈折率が1.2〜2.0程度であることが好ましく、1.4〜1.8程度であることがより好ましい。下地層は支持体表面に直接塗布された重合性化合物を含む組成物の硬化により得られた熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂であることも好ましい。重合性化合物の例としては、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタンモノマーなどの非液晶性の化合物が挙げられる。
下地層の厚みは、特に限定されないが、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜20μmであることがさらに好ましい。
基板(支持体または下地層)の表面は、ドット形成前に表面加工されていてもよい。例えば、所望の形状のドットの形成または所望のドットパターンの形成のために、プラズマ処理または親水性処理や、凸凹形状の形成などがなされていてもよい。
特に、基板としてガラスを用いて、ガラス表面にドット形成する場合においては、ガラス表面をプラズマ処理することが好ましい。プラズマ処理条件は特に限定されない。例えば、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン等)、少なくともO、N、FまたはClを含む反応性ガス(O2、CF4、C24、N2、CO2、SF6、CHF3等)を用いたプラズマ処理を行うことができる。特に、フッ素を含む反応性ガスでプラズマ処理することが、好ましい。複数条件でのプラズマ処理を行ってもよい。
[ドット]
本発明の光学部材は基板表面に接するドットを含む。ドットが形成される基板表面は基板の両面であっても片面であってもよいが、片面であることが好ましい。
ドットは基板表面に1つまたは2つ以上形成されていればよい。2つ以上のドットは基板表面で互いに近接して多数形成されて、ドットの総表面積が基板のドット形成側表面の面積の50%以上、60%以上、70%以上等となっていてもよい。この場合などにおいて、ドットの選択反射性などの光学特性は、実質的に光学部材全体、特にドット形成表面全面の光学特性となっていてもよい。一方、2つ以上のドットは基板表面で互いに離れて多数形成されて、ドットの総表面積が基板のドット形成側表面の面積の50%未満、30%以下、10%以下等となっていてもよい。この場合などにおいて、光学部材のドット形成表面側の光学特性は、基板の光学特性とドットの光学特性とのコントラストとして確認できるものであってもよい。
複数のドットは、パターン状に形成され、情報を提示する機能を有していてもよい。例えばシート状に形成された光学部材における位置情報を提供できるように形成されることにより、光学部材はディスプレイに装着して、データ入力することができるシートとして用いることができる。
ドットがパターン状に形成されているときであって、例えば、直径が20〜200μmのドットが複数形成される場合、基板面の2mm四方の正方形当たり、平均10個〜100個、好ましくは15〜50個、さらに好ましくは20〜40個のドットが含まれていればよい。
基板表面にドットが複数ある場合、ドットの直径、形状はすべて同一であってもよく、互いに異なるものが含まれていてもよいが、各ドットから均一な反射光を得るためには、同一であることが好ましい。例えば、同一の直径および形状のドット形成を意図して、同条件で形成されたドットであることが好ましい。
本明細書において、ドットについて説明されるとき、その説明は、本発明の光学部材中のすべてのドットについて適用できるが、説明されるドットを含む本発明の光学部材が、本技術分野で許容される誤差やエラーなどにより同説明に該当しないドットを含むことを許容するものとする、
(ドットの形状)
ドットは、基板法線方向から見たとき円形であればよい。円形は正円でなくてもよく、略円形であればよい。ドットについて中心というときは、この円形の中心または重心を意味する。ドットの形状は同じであっても異なっていてもよいが、同じであるか、少なくとも似通っていることが好ましい。基板表面にドットが複数ある場合、ドットの平均的形状が円形であればよく、一部に円形に該当しない形状のドットが含まれていてもよい。
ドットは直径が20〜200μmであることが好ましく、30〜120μmであることがより好ましい。ドットの直径はドットが円形でないときは、円形に近似して、測定または算出したものとする。
ドットの直径は、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの顕微鏡で得られる画像において、端部(ドットのへりまたは境界部)から端部までの直線であってドットの中心を通る直線の長さを測定することにより得ることができる。なお、ドットの数、ドット間距離もレーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などの顕微鏡画像で確認できる。
ドットは、ドットの端部から中心に向かう方向で最大高さまで連続的に増加する高さを有する部位を含む。すなわち、ドットは、ドットの端部から中心に向かって高さが増加する傾斜部または曲面部等を含む。本明細書において、上記部位を傾斜部または曲面部ということがある。傾斜部または曲面部は、断面図におけるドット表面の、連続的に増加し始める点から最大高さを示す点までのドット表面の部位と、それらの点と基板とを最短距離で結ぶ直線と、基板と、で囲まれる部位を示す。
なお、本明細書において、ドットについて、「高さ」というときは、「ドットの表面の点から基板のドット形成側表面までの最短距離」を意味する。このとき、ドットの表面は他の層との界面であってもよい。また、基板に凹凸がある場合は、ドットの端部における基板面の延長を上記ドット形成側表面とする。最大高さは、上記高さの最大値であり、例えば、ドットの頂点から基板のドット形成側表面までの最短距離である。ドットの高さは、レーザー顕微鏡による焦点位置スキャン、またはSEMもしくはTEMなどの顕微鏡を用いて得られるドットの断面図から確認することができる。
上記傾斜部または曲面部は、トッドの中心からみて一部の方向の端部にあってもよく、全部にあってもよい。例えばドットが円形であるとき、端部は円周に対応するが、円周の一部(例えば円周の30%以上、50%以上、70%以上であって、90%以下の長さに対応する部分)の方向の端部にあってもよく、円周の全部(円周の90%以上、95%以上または、99%以上)の方向の端部にあってもよい。ドットの端部は、全部であることが好ましい。すなわち、ドットの中心から円周に向かう方向の高さの変化はいずれの方向でも同一であることが好ましい。また後述の再帰反射性などの光学的性質、断面図で説明される性質も中心から円周に向かういずれの方向においても同一であることが好ましい。
傾斜部または曲面部は、ドットの端部(円周のヘリまたは境界部)から始まって中心までは到達しない一定距離にあってもよく、ドットの端部から始まって中心までにあってもよく、ドットの円周部のヘリ(境界部)から一定距離の部位から始まって中心までは到達しない一定距離にあってもよく、ドットの端部から一定距離の部位から始まって中心までにあってもよい。
上記の傾斜部または曲面部を含む構造は、例えば、基板側を平面とした半球形状、この半球形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状(球台形状)、基板側を底面とした円錐形状、この円錐形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状(円錐台形形状)および、これらいずれかに近似できる形状などが挙げられる。これらのうち、基板側を平面とした半球形状、この半球形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状、基板側を底面とした円錐形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状および、これらいずれかに近似できる形状が好ましい。なお、上記半球形状は球の中心を含む面を平面とする半球の形状のみでなく、球を任意に2つに切断して得られる球欠形状のいずれか(好ましくは球の中心を含まない球欠形状)を含むものとする。
ドットの最大高さを与えるドット表面の点は、半球形状または円錐形状の頂点にあるか、上記のように基板と略平行に切断し平坦化した面にあればよい。平坦化した面状の点全部がドットの最大高さを与えていることも好ましい。ドットの中心が最大高さを与えていることも好ましい。
ドットは、最大高さをドットの直径で割った値(最大高さ/直径)が0.13〜0.30であることが好ましい。特に基板側を平面とした半球形状、この半球形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状、基板側を底面とした円錐形状の上部を基板と略平行に切断し平坦化した形状など、ドットの高さがドットの端部から連続的に増加して、最大高さになっており、かつ、中心が最大高さを示す形状において、上記を満たすことが好ましい。最大高さ/直径は0.16〜0.28であることがより好ましい。
また、ドットの表面と上記基板(基板のドット形成側表面)とのなす角度(例えば平均値)は27°〜62°であることが好ましく、29°〜60°であることがより好ましい。このような角度であることにより、後述の光学部材の用途に適した光の入射角で高い再帰反射性を示すドットとすることができる。
上記角度はレーザー顕微鏡による焦点位置スキャン、または、SEMもしくはTEMなどの顕微鏡を用いて得られるドットの断面図から確認することができるが、本明細書においては、ドットの中心を含み基板に垂直な面での断面図のSEM画像で基板とドット表面との接触部分の角度を測定したものとする。
(ドットの光学的性質)
ドットは波長選択反射性を有する。ドットが選択反射性を示す光は特に限定されず、例えば、赤外光、可視光、紫外光などいずれであってもよい。例えば、光学部材をディスプレイに貼り付けて、ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力するための光学部材として使用する場合などにおいて、ドットが選択反射性を示す光の波長は、ディスプレイ画像に影響がないように、非可視光域の波長であることが好ましく、赤外光域の波長であることがより好ましく、近赤外光域の波長であることが特に好ましい。例えば、ドットからの反射スペクトルにおいて、750〜2000nmの範囲、好ましくは800〜1500nmの範囲に中心波長を有する反射波長帯域が確認できることが好ましい。上記反射波長は、組み合わせて用いられる光源から照射される光の波長や撮像素子(センサー)が感知する光の波長に従って選択されていることも好ましい。
ドットは、コレステリック構造を有する液晶材料からなる。ドットが選択反射性を示す光の波長は上記のようにドットを形成する液晶材料のコレステリック構造における螺旋ピッチを調整することにより行うことができる。また、本発明の光学部材におけるドットを形成する液晶材料は、後述のようにコレステリック構造の螺旋軸方向が制御されており、そのため、様々な方向から入射する光に対する再帰反射性が高い。
ドットは可視光領域で透明であることが好ましい。また、ドットは着色していてもよいが、着色していないか、着色が少ないことが好ましい。いずれも、例えば、光学部材がディスプレイの前面で用いられる場合に、ディスプレイに表示される画像の視認性を低下させないようにするためである。
(コレステリック構造)
コレステリック構造は特定の波長において、選択反射性を示すことが知られている。選択反射の中心波長λは、コレステリック構造における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射波長を調節することができる。コレステリック構造のピッチは、ドットの形成の際、重合性液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調整することによって所望のピッチを得ることができる。なお、ピッチの調製については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60−63に詳細な記載がある。螺旋のセンスやピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。なお、反射ピークの波長は、選択反射の中心波長と近似し、選択反射の中心波長と同様に変化するため、反射ピークの波長も、螺旋構造のピッチを調節することによって、調節することができる。
コレステリック構造は走査型電子顕微鏡(SEM)にて観測される上記ドットの断面図において明部と暗部との縞模様を与える。この明部と暗部の繰り返し2回分(明部2つおよび暗部2つ)が螺旋1ピッチ分に相当する。このことからピッチは、SEM断面図から測定することができる。上記縞模様の各線の法線が螺旋軸方向となる。
なお、コレステリック構造の反射光は円偏光である。すなわち、本発明の光学部材におけるドットの反射光は円偏光となる。本発明の光学部材は、この円偏光選択反射性を考慮して、用途を選択することができる。反射光が右円偏光であるか、または左円偏光であるかコレステリック構造は螺旋の捩れ方向による。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
また選択反射を示す選択反射帯(円偏光反射帯)の半値幅Δλ(nm)は、Δλが液晶化合物の複屈折Δnと上記ピッチPに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯の幅の制御は、Δnを調整して行うことができる。Δnの調整は重合性液晶化合物の種類やその混合比率を調整したり、配向固定時の温度を制御したりすることで行うことができる。反射波長帯域の半値幅は本発明の光学部材の用途に応じて調整され、例えば50〜500nmであればよく、好ましくは100〜300nmであればよい。
(ドット中のコレステリック構造)
ドットは上記の傾斜部または曲面部を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観測される断面図で確認した際、ドットの表面から1本目の暗部がなす線の法線と上記表面とのなす角度は70°〜90°の範囲である。このとき、上記の傾斜部または曲面部の全部の点において、ドットの表面から1本目の暗部がなす線の法線方向と上記表面とのなす角度が70°〜90°の範囲であればよい。すなわち、傾斜部または曲面部の一部において上記角度を満たすもの、例えば、傾斜部または曲面部の一部において断続的に上記角度を満たすものでなく、連続的に上記角度を満たすものであればよい。なお、断面図において表面が曲線であるときは、表面とのなす角度は表面の接線からの角度を意味する。また、上記角度は鋭角で示されており、法線と上記表面とのなす角度を0°〜180°の角度で表すときの、70°〜110°の範囲を意味する。断面図においては、ドットの表面から2本目までの暗部がなす線がいずれもその法線と上記表面とのなす角度が70°〜90°の範囲であることが好ましく、ドットの表面から3〜4本目までの暗部がなす線がいずれもその法線と上記表面とのなす角度が70°〜90°の範囲であることがより好ましく、ドットの表面から5〜12本目以上の暗部がなす線がいずれもその法線と上記表面とのなす角度が70°〜90°の範囲であることがさらに好ましい。
上記角度は80°〜90°の範囲であることが好ましく、85°〜90°の範囲であることが好ましい。
上記SEMが与える断面図は、上記の傾斜部または曲面部のドットの表面において、コレステリック構造の螺旋軸が表面と70°〜90°の範囲の角度をなすことを示している。このような構造により、ドットに入射する光は基板の法線方向から角度をなす方向から入射する光を、上記傾斜部または曲面部において、コレステリック構造の螺旋軸方向と平行に近い角度で入射させることができる。そのため、ドットは基板の法線方向に対して角度をなす様々な方向で入射する光に対して高い再帰反射性を示すことができる。例えば、ドットの形状に従い、極角が60°〜0°の範囲でドットに入射する光に対して高い再帰反射性を示すことができる。特に45°〜0°の範囲の極角でドットに入射する光に対して高い再帰反射性を示すことができることが好ましい。
上記の傾斜部または曲面部のドットの表面において、コレステリック構造の螺旋軸が表面と70°〜90°の範囲の角度をなすことにより、表面から1本目の暗部がなす線の法線方向と基板の法線方向とのなす角度は、上記高さが連続的に増加するにしたがって連続的に減少していることが好ましい。
なお、断面図は、ドットの端部から中心に向かう方向で最大高さまで連続的に増加する高さを有する部位を含む任意の方向の断面図であり、典型的にはドットの中心を含み基板に垂直な任意の面の断面図であればよい。
(コレステリック構造の作製方法)
コレステリック構造は、コレステリック液晶相を固定して得ることができる。コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造であればよい。なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
コレステリック構造の形成に用いる材料としては、液晶化合物を含む液晶組成物などが挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であることが好ましい。
重合性液晶化合物を含む液晶組成物はさらに界面活性剤を含む。液晶組成物は、さらにキラル剤、重合開始剤を含んでいてもよい。
−−重合性液晶化合物−−
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよいが、棒状液晶化合物であることが好ましい。
コレステリック液晶層を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報、特開2014−198815号公報、特開2014−198814号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
重合性液晶化合物の具体例としては、下記式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。
[化合物(11)において、X1は2〜5(整数)である。]
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57−165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖及び側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9−133810号公報に開示されているような液晶性高分子、特開平11−293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75〜99.9質量%であることが好ましく、80〜99質量%であることがより好ましく、85〜90質量%であることが特に好ましい。
−−界面活性剤−−
本発明者らは、ドットを形成する際に用いる液晶組成物に界面活性剤を加えることにより、ドット形成時に重合性液晶化合物が空気界面側で水平に配向し、螺旋軸方向が上述のように制御されたドットが得られることを見出した。一般的に、ドットの形成のためには、印刷の際の液滴形状を保つため、表面張力を低下させない必要がある。そのため界面活性剤を加えてもドットの形成が可能であり、かつ、多方向からの再帰反射性の高いドットが得られたことは驚くべきことであった。後述の実施例において、界面活性剤を用いた本発明の光学部材では、ドット端部でドット表面と基板とがなす角度が27°〜62°であるドットが形成されていることが示されている。すなわち、本発明の光学部材においては、電子ペンなどの入力手段と組み合わせて用いる入力媒体としての用途などで必要となりうる光の入射角で高い再帰反射性を示すことのできるドット形状が得られることがわかる。 界面活性剤は、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック構造とするために寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ−ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の具体例としては、特開2014−119605の[0082]〜[0090]に記載の化合物、特開2012−203237号公報の段落〔0031〕〜〔0034〕に記載の化合物、特開2005−99248号公報の[0092]及び[0093]中に例示されている化合物、特開2002−129162号公報の[0076]〜[0078]及び[0082]〜[0085]中に例示されている化合物、特開2007−272185号公報の段落〔0018〕〜〔0043〕等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤としては1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014−119605の[0082]〜[0090]に記載の下記一般式(I)で表される化合物が特に好ましい。
一般式(I)において、L11、L12、L13、L14、L15、L16はおのおの独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−、−CONR−(一般式(I)中におけるRは水素原子または炭素数が1〜6のアルキル基を表す)を表し、−NRCO−、−CONR−は溶解性を減ずる効果があり、ドット作製時にヘイズが上昇する傾向があることからより好ましくは−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−であり、化合物の安定性の観点からさらに好ましくは−O−、−CO−、−COO−、−OCO−である。上記のRがとりうるアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。炭素数は1〜3であることがより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基を例示することができる。
Sp11、Sp12、Sp13、Sp14はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜10のアルキレン基を表し、より好ましくは単結合または炭素数1〜7のアルキレン基であり、さらに好ましくは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基である。但し、アルキレン基の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。アルキレン基には、分枝があっても無くてもよいが、好ましいのは分枝がない直鎖のアルキレン基である。合成上の観点からは、Sp11とSp14が同一であり、かつ、Sp12とSp13が同一であることが好ましい。
11、A12は1〜4価の芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基の炭素数は6〜22であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましく、6であることがさらにより好ましい。A11、A12で表される芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例として、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を挙げることができる。これらの基の説明と好ましい範囲については、下記のTの対応する記載を参照することができる。A11、A12で表される芳香族炭化水素基に対する置換基としては、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、臭素原子、塩素原子、シアノ基などを挙げることができる。パーフルオロアルキル部分を分子内に多く有する分子は、少ない添加量で液晶を配向させることができ、ヘイズ低下につながることから、分子内にパーフルオロアルキル基を多く有するようにA11、A12は4価であることが好ましい。合成上の観点からは、A11とA12は同一であることが好ましい。
11
で表される二価の基または二価の芳香族複素環基を表す(上記T11中に含まれるXは炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはエステル基を表し、Ya、Yb、Yc、Ydはおのおの独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)ことが好ましく、より好ましくは、
であり、さらに好ましくは
であり、よりさらに好ましくは、
である。
上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の炭素数は1〜8であり、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状であることが好ましい。好ましいアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができ、その中でもメチル基が好ましい。上記T11中に含まれるXがとりうるアルコキシ基のアルキル部分については、上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。上記T11中に含まれるXがとりうるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子が好ましい。上記T11中に含まれるXがとりうるエステル基としては、R’COO−で表される基を例示することができる。R’としては炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。R’がとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲については、上記T11中に含まれるXがとりうるアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。エステルの具体例として、CH3COO−、C25COO−を挙げることができる。Ya、Yb、Yc、Ydがとりうる炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。
二価の芳香族複素環基は、5員、6員または7員の複素環を有することが好ましい。5員環または6員環がさらに好ましく、6員環が最も好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましい。複素環は、芳香族性複素環であることが好ましい。芳香族性複素環は、一般に不飽和複素環である。最多二重結合を有する不飽和複素環がさらに好ましい。複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環が含まれる。二価の複素環基は置換基を有していてもよい。そのような置換基の例の説明と好ましい範囲については、上記のA1とA2の1〜4価の芳香族炭化水素が取り得る置換基に関する説明と記載を参照することができる。
Hb11は炭素数2〜30のパーフルオロアルキル基を表し、より好ましくは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは3〜10のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状または分枝状であるものが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
m11、n11はそれぞれ独立に0から3であり、かつm11+n11≧1である。このとき複数存在する括弧内の構造は互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。一般式(I)のm11、n11は、A11、A12の価数によって定まり、好ましい範囲もA11、A12の価数の好ましい範囲によって定まる。
11中に含まれるoおよびpはそれぞれ独立に0以上の整数であり、oおよびpが2以上であるとき複数のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。T11中に含まれるoは1または2であることが好ましい。T11中に含まれるpは1〜4のいずれかの整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、分子構造が対称性を有するものであってもよいし、対称性を有しないものであってもよい。なお、ここでいう対称性とは、点対称、線対称、回転対称のいずれかひとつに少なくとも該当するものを意味し、非対称とは点対称、線対称、回転対称のいずれにも該当しないものを意味する。
一般式(I)で表される化合物は、以上述べたパーフルオロアルキル基(Hb11)、連結基−(−Sp11−L11−Sp12−L12m11−A11−L13−および−L14−A12−(L15−Sp13−L16−Sp14−)n11−、ならびに好ましくは排除体積効果を持つ2価の基であるTを組み合わせた化合物である。分子内に2つ存在するパーフルオロアルキル基(Hb11)は互いに同一であることが好ましく、分子内に存在する連結基−(−Sp11−L11−Sp12−L12m11−A11−L13−および−L14−A12−(L15−Sp13−L16−Sp14−)n11−も互いに同一であることが好ましい。末端のHb11−Sp11−L11−Sp12−および−Sp13−L16−Sp14−Hb11は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。

(Ca2a+1)−(Cb2b)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−
上式において、aは2〜30であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。bは0〜20であることが好ましく、0〜10であることがより好ましく、0〜5であることがさらに好ましい。a+bは3〜30である。rは1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
また、一般式(I)の末端のHb11−Sp11−L11−Sp12−L12−および−L15−Sp13−L16−Sp14−Hb11は、以下のいずれかの一般式で表される基であることが好ましい。

(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−O−(Cr2r)−O−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−COO−(Cr2r)−COO−
(Ca2a+1)−(Cb2b)−OCO−(Cr2r)−COO−
上式におけるa、bおよびrの定義は直上の定義と同じである。
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、重合性液晶化合物の全質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。
−−キラル剤(光学活性化合物)−−
キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、イソマンニド誘導体を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ、アゾキシ、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002−80478号公報、特開2002−80851号公報、特開2002−179668号公報、特開2002−179669号公報、特開2002−179670号公報、特開2002−179681号公報、特開2002−179682号公報、特開2002−338575号公報、特開2002−338668号公報、特開2003−313189号公報、特開2003−313292号公報に記載の化合物を用いることができる。
キラル剤の具体例としては以下の式(12)で表される化合物が挙げられる。
式中、Xは2〜5(整数)である。
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、重合性液晶性化合物量の0.01モル%〜200モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましい。
−−重合開始剤−−
液晶組成物に重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜12質量%であることがさらに好ましい。
−−架橋剤−−
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、3質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、3質量%未満であると、架橋密度向上の効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、コレステリック液晶層の安定性を低下させてしまうことがある。
−−その他の添加剤−−
ドット形成方法として、後述のインクジェット法を用いる場合には、一般的に求められるインク物性を得るために、単官能重合性モノマーを使用してもよい。単官能重合性モノマーとしては、2−メトキシエチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート等が挙げられる。
また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
液晶組成物は、ドット形成の際は、液体として用いられることが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。上述の単官能重合性モノマーなどの上述の成分が溶媒として機能していてもよい。
液晶組成物は、基板上に適用されて、その後硬化されドットを形成する。基板上への液晶組成物の適用は、好ましくは打滴により行われる。複数(通常多数)のドットを基板上に適用する際には、液晶組成物をインクとした印刷を行えばよい。印刷法としては特に限定されず、インクジェット法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法などを用いることができるが、インクジェット法が特に好ましい。ドットのパターン形成も、公知の印刷技術を応用して形成することができる。
基板上に適用後の液晶組成物は必要に応じて乾燥または加熱され、その後硬化される。乾燥または加熱の工程で液晶組成物中の重合性液晶化合物が配向していればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
配向させた液晶化合物は、更に重合させればよい。重合は、熱重合、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2が好ましく、100mJ/cm2〜1,500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は250nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いことが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
重合反応率は、重合性の官能基の消費割合を、IR吸収スペクトルを用いて決定することができる。
[オーバーコート層]
光学部材はオーバーコート層を含んでいてもよい。オーバーコート層は基板のドットが形成された面、すなわち、ドットが接する面側に設けられていればよく、光学部材の表面を平坦化していることが好ましい。
オーバーコート層は特に限定されないが、屈折率が1.4〜1.8程度の樹脂層であることが好ましい。光学部材を画像表示装置などのディスプレイ表面で入力シートなどの入力媒体として用いる場合の、画像表示装置からの画像光の散乱を防止するため、オーバーコート層と液晶材料からなるドットの屈折率との差異は0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。液晶材料からなるドットの屈折率は1.6程度であるが、この値に近い屈折率(例えば、1.4〜1.8程度の屈折率)を有するオーバーコート層を用いることによって、ドットに実際に入射する光の極角を小さくすることができる。例えば、屈折率が1.6のオーバーコート層を用い、極角45°で光学部材に光を入射させたとき、ドットに実際に入射する極角は27°程度とすることができる。そのため、オーバーコート層を用いることによっては光学部材が再帰反射性を示す光の極角を広げることが可能であり、ドットの表面と基板とのなす角度が小さいドットにおいても、より広い範囲で、高い再帰反射性を得ることができる。また、オーバーコート層は、反射防止層、粘着剤層、接着剤層、ハードコート層としての機能を有していてもよい。
オーバーコート層の例としては、モノマーを含む組成物を基板のドットが接する面側に塗布され、その後塗布膜を硬化して得られる樹脂層などが挙げられる。樹脂は、特に限定されず、基板やドットを形成すする液晶材料への密着性などを考慮して選択すればよい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。耐久性、耐溶剤性等の点からは、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、特に、短時間での硬化が可能である紫外線硬化性樹脂が好ましい。オーバーコート層の形成に用いることができるモノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
オーバーコート層の厚みは、特に限定されず、ドットの最大高さを考慮して決定すればよく、5μm〜100μm程度であればよく、好ましくは10μm〜50μmであり、より好ましくは20μm〜40μmである。厚みは、ドットが無い部分の基板のドット形成表面から対向する面にあるオーバーコート層表面までの距離である。
<光学部材の用途>
本発明の光学部材の用途としては特に限定されず、各種反射部材として用いることができる。
例えば、ドットが基板表面で互いに近接して多数形成された形態の光学部材は、特定波長の円偏光のみを反射する再帰反射体として用いることができる。
特に、パターン状にドットを有する光学部材は、例えば、パターンを位置情報を与えるコード化されたドットパターンとして形成することにより、手書き情報をデジタル化して情報処理装置に入力する電子ペンなどの入力手段と組み合わせて用いる入力媒体とすることができる。使用の際は入力手段から照射される光の波長がドットが反射を示す波長となるように、ドットを形成する液晶材料を調製して用いられる。具体的にはコレステリック構造の螺旋ピッチを上述の方法で調整すればよい。
本発明の光学部材は、液晶ディスプレイなどのディスプレイ表面で入力シートなどの入力媒体として用いることもできる。このとき、光学部材は透明であることが好ましい。光学部材はディスプレイ表面に直接、または他のフィルム等を介して接着され、ディスプレイと一体化されていてもよく、例えばディスプレイ表面に脱着可能に装着されてもよい。このとき、本発明の光学部材におけるドットが選択反射を示す光の波長域はディスプレイが発する光の波長域とは異なっていることが好ましい。すなわち、ドットは非可視光領域で選択反射性を有し、かつディスプレイは、検出装置で誤検知がないように、非可視光を発していないことが好ましい。
手書き情報をデジタル化して情報処理装置に入力する手書き入力システムについては、特開2014−67398号公報、特開2014‐98943号公報、特開2008−165385号公報、特開2008−108236号公報の[0021]〜[0032]、または特開2008−077451号公報等を参照できる。
本発明の光学部材を、画像表示可能なディスプレイ装置の表面または前方に装着されるシートとして用いる場合の好ましい態様としては、特許第4725417号公報の[0024]〜[0031]に記載の態様を挙げることができる。
本発明の光学部材を、画像表示可能なディスプレイ装置の表面または前方に装着されるシートとして用いたシステムの概略図を図3に示す。
図3において、赤外線iを発し、前述のパターンの反射光rを検知できるものであれば特に限定されず公知のセンサーを用いればよく、例えば、ペン型の入力端末106が読取データ処理装置107も具備する例として、特開2003−256137号公報に開示されている、インキや黒鉛等を備えないペン先、赤外線照射部を備えたCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラ、プロセッサ、メモリ、Bluetooth(登録商標)技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等を内蔵しているものなどが挙げられる。
ペン型の入力端末106の動作としては、例えば、ペン先を本発明の光学部材100の前面に接触させてなぞるように描画すると、ペン型の入力端末106がペン先に加わった筆圧を検知し、CMOSカメラが作動して、ペン先近傍の所定範囲を赤外線照射部から発する所定波長の赤外線で照射するとともに、パターンを撮像する(パターンの撮像は、例えば、1秒間に数10から100回程度行われる)。ペン型の入力端末106が読取データ処理装置107を具備する場合には、撮像したパターンをプロセッサで解析することにより手書き時のペン先の移動に伴う入力軌跡を数値化・データ化して入力軌跡データを生成し、その入力軌跡データを情報処理装置へ送信する。
なお、プロセッサ、メモリ、Bluetooth(登録商標)技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等の部材は、図3に示すように、読取データ処理装置107として、ペン型の入力端末106の外部にあってもよい。この場合には、ペン型の入力端末106は読取データ処理装置107にコード108で接続されていても、電波、赤外線等を用い無線で読取データを送信してもよい。
この他、入力端末106は、特開2001−243006号公報に記載された読取器のようなものであってもよい。
本発明において適用できる読取データ処理装置107は、入力端末106で読み取った連続的な撮像データから位置情報を算出し、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供する機能を有するものであれば特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリ等の部材を具備していればよい。
また、読取データ処理装置107は、特開2003−256137号公報に記載のように入力端末106に内蔵されていてもよく、また、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に内蔵されていてもよい。また、読取データ処理装置107は、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に無線で位置情報を送信してもよく、コード等で接続された有線接続で送信してもよい。
ディスプレイ装置105に接続された情報処理装置は、読取データ処理装置107から送信されてきた軌跡情報に基づき、ディスプレイ装置105に表示する画像を順次更新することによって、入力端末106で手書き入力した軌跡を、紙の上にペンで書いたかのようにディスプレイ装置上に表示することができる。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学部材を有する。
例えば、表示装置の最前面や保護用の前面板と表示用パネルとの間に本発明の光学剤を配置するなど、画像表示装置の画像表示面の前方に本発明の光学部材が装着された画像表示装置であることが好ましい。画像表示装置の好ましい態様は、上記の光学部材の用途の項目に記載した。
なお、画像表示装置の画像表示面または画像表示面の前方に本発明の光学部材が装着された画像表示装置を含むシステムも、本明細書に開示された発明に含まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(下地層の作製)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、下地層溶液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
下地層溶液(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 67.8
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA) 5.0
メガファックRS−90(DIC株式会社製) 26.7
IRGACURE 819(BASF社製) 0.5
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記で調製した下地層溶液を、100μm厚の透明なPET(ポリエチレンテレフタレート、東洋紡株式会社製、コスモシャインA4100)基板に、バーコーターを用いて3mL/m2の塗布量で塗布した。その後、膜面温度が90℃になるように加熱し、120秒間乾燥した後に、酸素濃度100ppm以下の窒素パージ下で、紫外線照射装置により、700mJ/cm2の紫外線を照射し、架橋反応を進行させ、下地層を作製した。
(コレステリック液晶ドットの形成)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、コレステリック液晶インク液(液晶組成物)を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コレステリック液晶インク液(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メトキシエチルアクリレート 145.0
下記の棒状液晶化合物の混合物 100.0
IRGACURE 819(BASF社製) 10.0
下記構造のキラル剤 3.8
下記構造の界面活性剤 0.08
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
数値は質量%である。また、Rで表される基は右下に示す部分構造であり、この部分構造の酸素原子の箇所で結合している。
上記で調製したコレステリック液晶インク液を、上記で作製したPET上の下地層上に、インクジェットプリンター(DMP−2831、FUJIFILM Dimatix社製)にて、ドット中心間距離300μm、ドット径50μmで、50×50mm領域全面に打滴し、95℃、30秒間乾燥した後に、紫外線照射装置により、500mJ/cm2の紫外線を照射して、光学部材を得た。
(ドット形状、コレステリック構造評価)
上記で得られた光学部材のドットのうち、無作為に10個を選択しドットの形状をレーザー顕微鏡(キーエンス社製)にて観察したところ、ドットは平均直径50μm、平均最大高さ8μm、ドット端部のドット表面と下地層表面とが両者の接触部でなす角度は平均36度であり、ドット端部から中心に向かう方向で、連続的に高さが増加していた。
上記で得られた光学部材の中央に位置する1つのドットについてドット中心を含む面で、PET基板に垂直に切削し、断面を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、ドット内部に明部と暗部の縞模様が確認され、図2に示すような断面図が得られた。(なお、図2は後述の実施例3の光学部材の断面図であり、断面図の右側の半円上形状の外側にある部位は、切削の際に出たバリである。)
断面図から、ドットの空気界面側の表面から1本目の暗線がなす線の法線方向と、空気界面側の表面のなす角度を測定したところ、ドット端部、ドット端部と中央の間、ドット中央の順に90度、89度、90度であった。さらに、暗線がなす線の法線方向と、PET基板の法線方向がなす角度は、ドット端部、ドット端部と中央の間、ドット中央の順に、35度、18度、0度と、連続的に減少していた。
(オーバーコート層の形成)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、オーバーコート用塗布液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
オーバーコート用塗布液(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アセトン 100.0
KAYARAD DPCA−30(日本化薬株式会社製) 100.0
IRGACURE 819(BASF社製) 3.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記で調製したオーバーコート用塗布液を、コレステリック液晶ドットを形成した下地層上に、バーコーターを用いて40mL/m2の塗布量で塗布した。その後、膜面温度が50℃になるように加熱し、60秒間乾燥した後に、紫外線照射装置により、500mJ/cm2の紫外線を照射し、架橋反応を進行させ、オーバーコート層を作製した。
(ドット性能評価)
上記にて作製したオーバーコート層付き光学部材の透過率、ヘイズをヘイズメーター(日本電色工業株式会社製)で測定したところ、透過率は89.0%、ヘイズは0.4%であった。
また、オーシャンオプティクス社製の可視−近赤外照射用光源(HL−2000)、超高分解能ファイバマルチチャンネル分光器(HR4000)、2分岐光ファイバを用いて直径2mm視野、無作為に5箇所を計測したところ、いずれの箇所の視野でも反射ピーク波長は850nmであり、光学部材の法線を0度として、極角0〜50度の範囲で確認したとき常に、全てのドットから再帰反射が確認された。
[実施例2〜16]
下地層溶液のDPHA量、コレステリック液晶インク液のキラル剤量、インクジェットのドット径、オーバーコート有無を下表のように変えたこと以外は、実施例1と同様にオーバーコート層付き光学部材を作製した。
実施例1と同様に、ドット直径、最大高さ/直径、および各角度を、測定、計算した結果を表3に示す。
[実施例17]
キラル剤の添加量を5.8質量部にしたこと、インクジェットのドット中心間距離を53μmにしたこと以外は、実施例1と同様にオーバーコート層付き光学部材を作製した。このオーバーコート層付き光学部材をオーシャンオプティクス社製の可視−近赤外照射用光源(HL−2000)、超高分解能ファイバマルチチャンネル分光器(HR4000)、2分岐光ファイバを用いて直径2mm視野、無作為に5箇所を計測したところ、いずれの箇所の視野でも反射ピーク波長は550nmであり、光学部材の法線を0度として、極角0〜70度、方位角0〜360度の範囲で確認したとき常に、全てのドットから再帰反射が確認された。
[実施例18]
(ガラス基板の作製)
10cm四方ガラス基板(商品名;EagleXG コーニング社製)を、純水で超音波をかけながら30分間洗浄した後、下記のプラズマ処理条件により、酸素中でのプラズマ処理後に、フッ素ガス中でのプラズマ処理を行い、コレステリック液晶インク打滴用ガラス基板を得た。
<プラズマ処理条件>
装置:ダイレクト型大気圧プラズマ表面処理装置(エア・ウォーター株式会社製)
1)ガス:O2、圧力:25Pa、RFパワー:100W、処理時間:2分
2)ガス:CF4、圧力:80Pa、RFパワー:300W、処理時間:10分
以上に示す方法で準備した10cm四方ガラス基板上に、実施例10で用いたコレステリック液晶インクを用い、インクジェットプリンター(DMP−2831、FUJIFILM Dimatix社製)にて、実施例10と同様にドット中心間距離等の打滴条件を揃えて打滴し、実施例10と同様の条件で乾燥、紫外線照射し、実施例10と同じドット径を有する光学部材を得た。
さらに、実施例10と同様にオーバーコート層の形成を行い、ドット性能評価を行った結果、実施例10と同様に極角0〜50度の範囲で良好な再帰反射が確認された。
[比較例1]
(下地層の作製)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、下地層溶液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
下地層溶液(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メチルエチルケトン 220
ペンタエリスリトールトリアクリレート 100
レベリング剤(ビックケミー社製 BYK361) 0.03
ルシリンTPO(BASF社製) 4
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記で調製した下地層溶液を、100μm厚の透明なPET(ポリエチレンテレフタレート、東洋紡株式会社製、コスモシャインA4100)基板に、バーコーターを用いて3mL/m2の塗布量で塗布した。その後、膜面温度が80℃になるように加熱し、120秒間乾燥し、下地層を作製した。
(コレステリック液晶ドットの形成)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、コレステリック液晶インク液を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コレステリック液晶インク液(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メチルイソブチルケトン 250.0
下記構造の棒状液晶化合物 100.0
ルシリンTPO(BASF社製) 4.0
下記構造のキラル剤 3.3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記で調製したコレステリック液晶インク液を、上記で作製したPET上の下地層上に、グラビア印刷法により、ドット間距離300μm、ドット径100μm、50×50mm領域全面に打滴し、加熱乾燥、紫外線照射により、架橋させて光学部材を作製した。
[比較例2〜4]
下地層溶液において、DPHA量を表2に示すように変更し、かつコレステリック液晶インク液に界面活性剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様に比較例2〜4のオーバーコート層付き光学部材を作製した。ここで、比較例3においては、下地層溶液に、さらに比較例1の下地層で用いたレベリング剤を0.1質量部加えた。
比較例1〜4について、実施例1と同様に、ドット直径、最大高さ/直径、各角度を、測定、計算した結果を表3に示す。
1 ドット
2 基板
3 支持体
4 下地層
5 オーバーコート層
100 光学部材
105 ディスプレイ装置
106 ペン型の入力端末
107 読取データ処理装置
108 コード

Claims (12)

  1. 光学部材であって、
    基板と、前記基板の表面に接するドットとを有し、
    前記ドットは波長選択反射性を有し、
    前記ドットは、コレステリック構造を有する液晶材料からなり、前記コレステリック構造は走査型電子顕微鏡にて観測される前記ドットの断面図において明部と暗部との縞模様を与え、
    前記ドットは、前記ドットの端部から中心に向かう方向で最大高さまで連続的に増加する高さを有する部位を含み、
    前記部位の全部の点において、前記ドットの表面から1本目の前記暗部がなす線の法線と前記ドットの表面とのなす角度は70°〜90°の範囲であり、
    前記液晶材料は界面活性剤を含む、
    光学部材。
  2. 前記基板の表面に前記ドットの複数をパターン状に有する請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記ドットの直径が20〜200μmである請求項1または2に記載の光学部材。
  4. 前記ドットの直径が30〜120μmである請求項1または2に記載の光学部材。
  5. 前記最大高さを前記ドットの直径で割った値が0.13〜0.30である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学部材。
  6. 前記ドットの端部において、前記ドットの表面と前記基板とのなす角度が27°〜62°である請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学部材。
  7. 前記界面活性剤がフッ素系界面活性剤である請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学部材。
  8. 前記液晶材料が液晶化合物、キラル剤および前記界面活性剤を含む液晶組成物を硬化して得られる材料である請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学部材。
  9. 前記ドットが赤外光領域に中心波長を有する波長選択反射性を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学部材。
  10. 前記ドットが波長800〜950nmに中心波長を有する波長選択反射性を有する請求項9に記載の光学部材。
  11. 可視光領域において透明である請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学部材。
  12. 請求項11に記載の光学部材を有する画像表示装置。
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