JP6486043B2 - 加熱型誘導結合プラズマトーチ - Google Patents

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Description

本発明は、誘導結合プラズマ発光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法等による分析に用いられ、溶液試料をネブライザー又はインクジェット等を用いて微細液滴とした後、微細液滴をプラズマに導入する前に加熱して溶媒を気化させる、又は、ガスクロマトグラフ、熱分解炉などの高温源から発せられた気体試料を加熱して、その温度を低下させずにプラズマに導入する加熱型誘導結合プラズマトーチに関する。
溶液試料を誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量分析法によって分析するためには、先ず、溶液試料を同軸型ネブライザー、バビントン型ネブライザー等のニューマティックネブライザー、又は超音波ネブライザー、或いはインクジェット等によって微細液滴とする。これらの微細液滴をプラズマに導入すると、脱溶媒、分析対象元素の塩・酸化物生成、分解・気化、原子化、励起、イオン化等の過程が進行し、発光分析又は質量分析が可能となる。
このとき、液滴の粒径が大きいと脱溶媒過程の進行が遅くなって分析感度が低下し、また、粒径のバラツキが大きいと分析精度が悪くなる。更に、溶媒である水分子が分解されて生成する酸素原子と分析対象原子が結合した酸化物の割合が増加し、スペクトル干渉や感度低下などの問題を引き起こす。
そのため、これらの問題を解決する手段として、試料がプラズマに導入される前に、脱溶媒することが行われてきた。
従来、この目的に用いられた脱溶媒装置は、脱溶媒を行う箇所に応じて3つのタイプに分類される。即ち、(1)脱溶媒をスプレーチャンバー内で行うタイプ、(2)脱溶媒をスプレーチャンバーとプラズマトーチの間で行うタイプ、(3)脱溶媒をプラズマトーチ内で行うタイプである。
前記(1)のタイプとしては、スプレーチャンバーを冷却して溶媒の蒸気圧を低下させるものが市販されている(例えば、Glass Expansion社製IsoMist)。
また、前記(2)のタイプとしては、超音波ネブライザーを用いた場合によく用いられる。これは、超音波ネブライザーでは、ニューマティックネブライザーに比べて多量の微細液滴が発生するため、一旦、スプレーチャンバーで大きな液滴を除いた後、その後段に設置した加熱管(溶媒が水の場合は約140℃)を通過させて液滴から溶媒を蒸発させた後、更に冷却管(溶媒が水の場合は約0℃)を通過させて溶媒蒸気を凝縮除去する必要があるためである(特許文献1参照)。また、冷却管を用いる代わりに溶媒蒸気の透過膜を用いて脱溶媒する装置も市販されている(例えば、CETAC社製U−6000AT)。
また、前記(3)のタイプとしては、プラズマトーチの中心管の一部又は全部を溶媒蒸気透過材で構成することによって、キャリアガスが中心管を通過する間に試料液滴から蒸発した溶媒蒸気を選択的に透過させて除去するものがある(特許文献2参照)。
一方、ガスクロマトグラフ又は熱分解炉などの高温源から排出された気体試料を誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量分析法によって分析するためには、気体試料の温度を低下させずにプラズマに導入しなければならない。これは温度が低下すると、分析対象成分の凝縮や吸着によって損失が起こるためである。これを防ぐためには、従来、ニクロム線などのヒーター線を内蔵したステンレス鋼製管を中心管とするもの(特許文献3参照)、又は該ステンレス鋼製管の中心管を石英ガラス製のガイド管内に挿入し、更に該ステンレス鋼製管の内部に気体試料を流す細管を設置したもの(特許文献4参照)がある。
一般的に、ニューマティックネブライザーで霧化された溶液試料の95%以上は、スプレーチャンバーの壁面に衝突して液膜となりドレインから排出され、プラズマトーチに運ばれるのは溶液試料の5%以下といわれている。このため、前記(1)のタイプでは、プラズマトーチに運ばれた液滴を脱溶媒する方法に比べて、扱う試料量が多くなるため、装置が大型化し、脱溶媒に必要なエネルギーも多くなるという問題があった。
また、前記(2)のタイプでは、脱溶媒後、液滴粒子がプラズマトーチに運ばれるまでの間の流路内壁に付着し、感度の低下やメモリー効果(以前の試料に含まれていた成分が、次の試料の分析において出現し妨害となることをいう)の増大が問題となっていた。また、脱溶媒装置のデッドボリュームが大きいため試料の希釈が起こり、分析信号の立ち上がりやバックグラウンドレベルへの戻りが遅くなるという問題があった。
また、前記(1)及び前記(2)のタイプの脱溶媒装置では、キャリアガスが乱流となるため、インクジェット等によって生成された単一液滴は流路壁と衝突し、プラズマトーチまで適切に運搬することはできないという問題があった。
前記(3)のタイプでは、上記の問題点を克服できるが、液滴がプラズマトーチの中心管内に滞在する時間が短く、脱溶媒能力が不足するという問題があった。脱溶媒能力を上げるためには中心管を加熱したもの、例えば、特許文献3に基づく製品を用いることが考えられるが、耐酸性、耐アルカリ性がなく、且つ、細管が液滴に含まれる塩類で詰まるといったことが容易に予想されるため、これまで実用性があるものはないと考えられてきた。
こうしたことから、前記(3)のタイプでは、脱溶媒装置の小型化と脱溶媒能力の向上とは、トレードオフの関係とされ、両者を満足させるものが存在しなかった。
一方、高温源から排出された気体試料を、その温度を低下させずにプラズマに導入する方法としては、特許文献3及び特許文献4に基づく製品を用いることが考えられるが、特許文献3及び4に基づく製品では、気体試料と接触する中心管がステンレス鋼管とされるため、高温源から排出される気体試料中に塩酸などの酸性ガスが含まれると、中心管が腐食により劣化して長期間使用することができない問題がある。また、いずれの製品も、中心管の加熱運転の限界温度が400℃程度であるため、400℃を超える高温源、例えば、熱分解炉を400℃を超える温度で運転した際に発生する分析対象成分が、中心管の内壁に凝縮、吸着されて、分析できないという問題がある。
これらの問題をより詳細に説明するため、特許文献3及び特許文献4に基づく製品における中心管の代表的な構成例について、図1(a)〜(c)を参照しつつ説明をする。なお、図1(a)は、中心管を加熱するフレキシブルヒータの概要を示す説明図であり、図1(b)は、図1(a)のb−b線切断面を示す拡大断面図であり、図1(c)は、フレキシブルヒータを配した中心管の内部構造を説明するための部分断面図である。
図1(a)に示すように、フレキシブルヒータ101は、極細のステンレス鋼管で形成されるシース102と、アダプタ103と、リード線104a,bと、圧着端子105a,bとを有する。シース102には、図1(b)に示すように、ニクロム線やカンタル線で構成される細線状の発熱体106a,bと、これら発熱体106a,bをシース102内に挿通させた状態が固く保持されるようにシース102内に充填される高純度酸化マグネシウムのMgO充填部107とが内蔵されている。このように構成されるフレキシブルヒータ101では、圧着端子105a,bを介して接続される温度制御部(不図示)からの出力により発熱体106a,bが発熱して、シース102が加熱される。中心管は、こうしたフレキシブルヒータ101を有して構成される。
図1(c)に示すように、中心管100は、ステンレス鋼で形成された中空のステンレス鋼管110と、ステンレス鋼管110の内部に通挿されるフレキシブルヒータ101と、シース102を覆うようにステンレス鋼管110の内部に配され、シース102の熱を外側のステンレス鋼管110に伝える金属線等の伝熱部材111とを有して構成される。なお、ステンレス鋼管110の内径φは、1mm前後とされる。
こうした中心管100の構成では、前述のように、試料と接触するステンレス鋼管110が酸などにより劣化するという問題がある。また、寸法の制約から発熱体106a,bとして使用できるニクロム線やカンタル線が細く、400℃を超える高温で運転を行うと、ニクロム線やカンタル線が切れる等の損傷が生じ、高温での運転を行うことができない問題がある。なお、この問題は、脱溶媒能力を向上させるため、前記(3)のタイプで中心管を高温で加熱する場合にも共通して生ずる問題である。
特開昭62−11131号公報 特許4982900号 特開2002−350402号公報 特許4232951号
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、小型で脱溶媒能力に優れるとともに、酸、アルカリを含むか否かを問わず、微細液滴試料、高温気体試料のいずれの分析対象に対しても安定してプラズマに導入することができ、かつ、高感度の分析を実現可能な加熱型誘導結合プラズマトーチを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも、管内に霧状又は気体状の試料及び前記試料を運ぶキャリアガスが流送される中心管と、前記中心管との間に間隔を空け補助ガス流路が形成される状態で外挿される中間管と、前記中間管との間に間隔を空けプラズマガス流路が形成される状態で外挿される外側管との三重管構造を有するトーチ本体部が配され、前記中心管は、発熱体がセラミックス管体中に埋設された状態で焼結される管状セラミックスヒータで構成され、かつ、前記管状セラミックスヒータの全部又は一部が電気伝導性部材で被覆されることを特徴とする加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<2> セラミックス管体の形成材料が、酸化アルミニウム及び窒化珪素の少なくともいずれかを含む前記<1>に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<3> 更に、発熱体の温度制御部と、中心管と前記温度制御部との間に架設され前記中心管の温度を前記温度制御部に入力させる熱電対とが配される前記<1>または<2>に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<4> 中心管は、試料及びキャリアガスが排出される先端部に対し、基端部からこれらを導入する部を管胴部としたとき、前記管胴部の内径が小さくとも1.6mmとされる前記<1>から<3>のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<5> 発熱体が、セラミックス管体から外部に引き出されたリード線がロウ付けされた状態で出力源の電極端子と接続される抵抗加熱部材とされ、前記ロウ付けされた部分が補助ガス流路内又は前記補助ガス流路から分岐された分岐流路内に配される前記<1>から<4>のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<6> 更に、試料及びキャリアガスが導入されるトランスファー管と、メークアップガスが導入されるメークアップガス導入管と、前記トランスファー管が内部に通挿されるとともに前記メークアップガス導入管と中心管とを接続するコネクタ部と、前記トランスファー管、前記メークアップガス導入管及び前記コネクタ部の各部と接触ないし近接する状態で配される1つのヒータ部とを有するトーチ基底部が配される前記<1>から<5>のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
<7> ヒータ部が、一端側からトンランスファー管が管内に通挿されるとともに、管外にメークアップガス導入管が周設され、他端側がコネクタ部と接触ないし近接する状態で配される管状部材として構成される前記<6>に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
本発明によれば、小型で脱溶媒能力に優れるとともに、酸、アルカリを含むか否かを問わず、微細液滴試料、高温気体試料のいずれの分析対象に対しても安定してプラズマに導入することができ、かつ、高感度の分析を実現可能な加熱型誘導結合プラズマトーチを提供することができる。
中心管を加熱するフレキシブルヒータの概要を示す説明図である。 図1(a)のb−b線切断面を示す拡大断面図である。 図1(c)は、フレキシブルヒータを配した中心管の内部構造を説明するための部分断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。 図2のa−a線切断面を示す拡大断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。 図4におけるトーチ基底部を説明するための部分拡大図である。 図4における電極端子への補助ガスの流路を示す部分拡大図である。 本発明の第2の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。 先端にノズル部を配した状態の中心管を示す説明図である。 図8(a)におけるノズル部の構成を示す説明図である。 電気伝導性部材を配して分析を行った場合のノイズ特性を示す図である。 電気伝導性部材を配さないで分析を行った場合のノイズ特性を示す図である。 ヒ素を分析したときのシグナルを示す図である。 水銀とメチル水銀とを分別して分析したときのシグナルを示す図である。
(第1の実施形態)
本発明の加熱型誘導結合プラズマトーチについて図面を参照しつつ、より詳細に説明をする。図2は、本発明の第1の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。
図2に示すように、加熱型誘導結合プラズマトーチ1は、トーチ本体部2と、トーチ基底部3とで構成される。
トーチ本体部2は、主として、中心管4と、中間管5と、外側管6との三重管構造を有して構成される。
また、トーチ基底部3は、電極端子12a,bと、温度制御部13と、トーチ結合用ボールジョイント14と、結合部15と、スプレーチャンバー結合用ボールジョイント16とを有して構成される。
中心管4は、発熱体4bがセラミックス管体4a中に埋設された状態で焼結される管状セラミックスヒータとして構成され、基端側がトーチ結合用ボールジョイント14に通挿された状態で結合部15に嵌合されて支持される。中心管4の管構成を図3を参照しつつ説明をする。図3は、図2のa−a線切断面を示す拡大断面図である。
図3に示すように、中心管4を構成するセラミックス管体4aには、発熱体4bが外気から遮蔽された状態で管体内に埋設される。セラミックス管体4aを形成するセラミックス材料としては、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素等が挙げられるが、中でも、優れた耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性を有する酸化アルミニウム、窒化珪素が好ましい。また、セラミックス管体4aを酸化アルミニウム、窒化珪素で形成する場合、高い機械的強度が得られることから、内径を広くとるように形成することができる。
発熱体4bとしては、特に制限はなく、公知の抵抗加熱部材を用いることができ、その形成材料としては、タングステン、モリブデン等の金属材料が挙げられる。こうした発熱体4bを管状に成型されたセラミックス材料中に埋設させた状態で焼結し、これらを一体形成することで発熱体4bを外気から遮蔽可能とされる。そのため、発熱体4bが外気に触れて劣化することが抑制可能とされる。例えば、タングステン、モリブデンは、高い融点を有するものの、酸化され易い材料であり、このように発熱体4bをセラミックス管体4a中に配することで、外気に触れて劣化することが抑制可能とされる。
なお、このように形成される管状セラミックスヒータは、耐熱性に優れ、高温での使用が可能とされる。本明細書において、前記管状セラミックスヒータの耐熱性とは、400℃を超える温度で加熱使用が可能であることを示す。この加熱使用温度としては、更に、500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、例えば、酸化アルミニウムを用いる場合、連続使用時で800℃、一時的な使用で最高1,000℃とすることができ、窒化珪素を用いる場合、連続使用時で1,300℃、一時的な使用で最高1,400℃とすることができる。
また、本明細書において、耐酸性及び耐アルカリ性とは、酸、アルカリを含む液体及び気体に対する耐食性がステンレス鋼(例えば、SUS304)よりも高いことを示す。
本発明の加熱型誘導結合プラズマトーチでは、従来のステンレス鋼管等の金属管に代えて、中心管4をセラミックス材料で形成することとしているため、発熱体4bに電流を流すと誘導結合プラズマに意図しない電磁誘導影響が生じ、分析結果にノイズが生ずることがある。そのため、発熱体4bに通電した際に生じる前記誘導結合プラズマへの電磁誘導影響を低減させるため、前記管状セラミックスヒータとしては、全部又は一部が電気伝導性部材で被覆されることが好ましい。
前記電気伝導性部材としては、特に制限はなく、電気伝導性を有するものとして代表的である各種金属材料により構成される部材が挙げられる。このような部材の前記管状セラミックスヒータに対する被覆方法としては、特に制限なく、例えば、前記金属材料を公知の物理蒸着法、化学蒸着法により蒸着させる方法、前記管状セラミックスヒータの外周に装脱着可能な前記金属材料製の管体を装着させる方法、断面がCの字状に曲げ加工された前記金属材料製の管状曲げ板部材を前記管状セラミックスヒータの外周に装脱着可能に装着させる方法等が挙げられる。なお、ここでは、セラミックス管体4aの外周に管状の電気伝導性部材4cを嵌着させて構成している。
中間管5は、中心管4との間に間隔を空け補助ガス流路が形成される状態で外挿され、基端側がトーチ結合用ボールジョイント14に嵌着されて支持される(図2,3参照)。また、基端側には、補助ガス導入管9が接続され、前記補助ガス流路に補助ガスが導入可能とされる。この中間管5の形成材料としては、特に制限はなく、例えば、石英等が挙げられる。
また、外側管6は、中間管5との間に間隔を空けプラズマガス流路が形成される状態で外挿され、基端側がトーチ結合用ボールジョイント14に嵌着されて支持される(図2,3参照)。先端側は、中心管4及び中間管5よりも長く延在し、中心管4及び中間管5の前方で前記誘導結合プラズマが生じるように構成される。また、基端側には、プラズマガス導入管10が接続され、前記プラズマガス流路にプラズマガスが導入可能とされる。この外側管6の形成材料としては、特に制限はなく、例えば、石英、アルミナ等が挙げられる。
なお、これら中間管5及び外側管6は、中心管4に対して同心円状に配される。
図2に示すように、結合部15には、トーチ結合用ボールジョイント14及びスプレーチャンバー結合用ボールジョイント16が取り付けられ、トーチ結合用ボールジョイント14に通挿された中心管4の基端側が結合部15内に挿入されるとともに、スプレーチャンバー結合用ボールジョイント16でスプレーチャンバー21の排出管の一部と結合される。スプレーチャンバー21の排出管と中心管4とは、スプレーチャンバー結合用ボールジョイント16を介して結合部15内で接続され、スプレーチャンバー21から排出される霧状の試料及びキャリアガスが中心管4内に導入可能とされる。なお、結合部15としては、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の耐熱性樹脂、石英、ステンレス鋼などで形成することができ、トーチ結合用ボールジョイント14及びスプレーチャンバー結合用ボールジョイント16としては、例えば、石英製のもの等を用いることができる。
また、結合部15には、温度制御部13の電極端子12a,12bが埋設される。この電極端子12a,12bは、例えば、発熱体4bの形成材料をニッケル等でめっきしたものを用いることができ、中心管4から外方に引き出された発熱体4bのニッケル製等のリード線(不図示)と接続され、温度制御部13の操作により、発熱体4bを加熱させることが可能とされる。なお、温度制御部13としては、市販の温度制御装置を用いることができる。
前記試料は、キャリアガス導入管18から導入される前記キャリアガスとともにネブライザー20からスプレーチャンバー21内に導入され、霧状化された微細液滴として前記キャリアガスとともにスプレーチャンバー21の排出管から排出される。なお、ネブライザー20及びスプレーチャンバー21としては、特に制限はなく、市販のものを適宜用いることができる。なお、前記キャリアガスとしては、アルゴンガス等を用いることができる。
このように構成される加熱型誘導結合プラズマトーチ1の作用について説明する。スプレーチャンバー21の排出管から排出された前記試料及び前記キャリアガスは、中心管4の基端側(トーチ基底部3側)から導入され、先端側から排出される。
この際、中心管4では、温度制御部13の操作により発熱体4bを加熱させることで前記試料中の溶媒を気化させ、前記試料中の分析対象元素と前記溶媒とを空間的に分離させることで脱溶媒可能とされる。
ここで、従来の脱溶媒装置では、誘導結合プラズマトーチから離れた箇所で、多量の液滴が存在する状態で脱溶媒を行っていたため、脱溶媒装置サイズが大きく、消費エネルギーも高く、また、脱溶媒操作に伴って、比較的大きい液滴が脱溶媒装置内壁、及びこれに接続するチューブ内壁に付着しやすく、そのため信号の応答速度の低下、分析感度の低下、メモリー効果の増大といった問題がみられたが、加熱型誘導結合プラズマトーチ1では、中心管4で運ばれてきた微細液滴を脱溶媒するため、これらの問題が殆ど生じない。
また、中心管4は、400℃を超える温度で高温加熱することができ、前記試料から短時間で効率的に脱溶媒させることができる。
また、中心管4を構成するセラミックス管体4aは、耐酸性、耐アルカリ性を有することから、酸やアルカリを含む試料を分析対象とすることができる。
中心管4から排出された前記分析対象元素及び前記キャリアガスは、補助ガス導入管9から中間管5の前記補助ガス流路を経て中間管5から排出される前記補助ガスとともにプラズマ中に導入される。なお、前記補助ガスは、前記プラズマを浮かせて中心管4、中間管5を保護する役割で導入され、例えば、アルゴンガスを用いることができる。なお、前記試料によっては、前記役割が求められず、この場合、前記補助ガスを用いる必要はない。
前記プラズマは、プラズマガス導入管10から外側管6の前記プラズマガス流路を経て外側管6から排出された前記プラズマガスを、図示しない高周波誘導コイル等の電磁誘導によりプラズマ化させることで、中心管4、中間管5の先端外方に形成される。なお、前記プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスを用いることができる。
前記分析対象元素が前記プラズマ中に導入されると、前記分析対象元素の分解、原子化、イオン化等の過程が進行し、誘導結合プラズマ発光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法による発光分析又は質量分析が可能となる。
ここで、中心管4での加熱により、脱溶媒されて粒径が小さくなった液滴、或いは完全に脱溶媒されて固形微粒子となったものは、前記プラズマ中で効率よく分解、原子化、イオン化が起こること、また、脱溶媒により粒径のバラツキが小さくなることで前記プラズマ中の同一深さ位置でイオン化が起こることから、加熱型誘導結合プラズマトーチ1では、分析感度の向上をもたらすことができる。
また、中心管4を構成する前記管状セラミックスヒータが電気伝導性部材4cで被覆されるため、発熱体4bに通電した際に生じる前記誘導結合プラズマへの電磁誘導影響を低減させることができる。
また、前記プラズマ中に導入される溶媒量の絶対量は同じでも、前記溶媒が蒸気として前記キャリアガス中に均一に拡散された状態で導入された場合と、前記分析対象元素を含む液滴として導入された場合とでは、前記プラズマ中で前記分析対象元素が存在する近傍の微小領域中の溶媒分子(水溶液の場合は水分子)の数は、前者のほうが少なくなる。即ち、前記分析対象元素を含む大きな液滴が前記プラズマ中に導入されると、前記分析対象元素のミクロな雰囲気中の水分子密度は大きいが、事前に前記分析対象元素と前記水分子を空間的に分離しておけば、前記分析対象元素のミクロな雰囲気中の前記水分子密度、延いては酸素原子密度が小さくなり、その結果、前記分析対象原子と前記酸素原子の衝突によって生成される酸化物イオン、或いは液滴に含まれる共存物質原子と酸素原子から生成される酸化物イオンの割合が低下する。共存物質の酸化物イオンは、例えば、Caが存在すると40Ca16Oを生成し、56Feを分析する際の干渉となる。また、軽希土類元素中の重希土類元素を分析する際にも、軽希土類元素酸化物の前記重希土類元素への干渉が生じるなど、誘導結合プラズマ質量分析法において重大な妨害成分となる。前記酸化物イオンの割合を低減し、妨害の少ない分析を可能とするためには、中心管4の加熱に基づき、前記分析対象元素と凝縮溶媒との空間的分離を促進させることが非常に効果的となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の前記加熱型誘導結合プラズマトーチの第2の実施形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。
図4に示すように、加熱型誘導結合プラズマトーチ50は、試料を高温源36から発せられた気体試料として導入するタイプの装置に係り、トーチ本体部2’とトーチ基底部30とで構成される。この加熱型誘導結合プラズマトーチ50のトーチ本体部2’は、加熱型誘導結合プラズマトーチ1のトーチ本体部2と基本的に同じ構造を有するため、同じ構造部分については共通した説明を省略することとする。
トーチ基底部30は、前記試料が導入されるトランスファー管31と、メークアップガスが導入されるメークアップガス導入管32と、コネクタ部33と、ヒータ部34と、保温部35とを有する。この様子を図5に示す。なお、図5は、図4におけるトーチ基底部を説明するための部分拡大図である。
トランスファー管31及びメークアップガス導入管32の構成材料としては、ステンレス鋼等が挙げられる。
コネクタ部33は、トランスファー管31が内部に通挿されるとともに、トランスファー管31が通挿される領域を含む空間を流路としてメークアップガス導入管32から導入される前記メークアップガスを中心管4に排出するようにメークアップガス導入管32と中心管4とを接続して構成され、その構成材料としては、ステンレス鋼等が挙げられる。
ヒータ部34は、トランスファー管31、メークアップガス導入管32、及びコネクタ部33の各部と接触ないし近接する状態で配される。具体的には、一端側からトンランスファー管31が管内に通挿されるとともに、管外にメークアップガス導入管32が掛け回されるように周設され、他端側がコネクタ部33と接触ないし近接する状態で配される管状部材として構成される。即ち、ヒータ部34は、トランスファー管31、メークアップガス導入管32、及びコネクタ部33の3つの部材を1つの部材で加熱する働きを有する。
なお、トランスファー管31は、一端が高温源36に接続され、ヒータ部34、コネクタ部33内に通挿されて、他端側が発熱体4bによる加熱領域に至るように中心管4内に通挿される(図4参照)。
保温部35としては、トランスファー管31、メークアップガス導入管32、コネクタ部33、及びヒータ部34の各部を収容する部材として構成され、その構成材料としては、耐火断熱レンガ、セラミックスファイバー、珪酸カルシウム等が挙げられる。
図4に示すように、加熱型誘導結合プラズマトーチ50では、中心管4と温度制御部13との間に架設され、中心管4の温度を温度制御部13に入力させる熱電対40が配されている。この熱電対40としては、温度計測用に用いられる公知の熱電対により構成することができ、例えば、クロメルーアルメル熱電対等を用いることができる。なお、この構成は、加熱型誘導結合プラズマトーチ1に採用することもできる。
また、加熱型誘導結合プラズマトーチ50では、発熱体4bが抵抗加熱部材として、セラミックス管体4aから外部に引き出されたニッケル製等のリード線(不図示)がロウ付けされた状態で温度制御部13の電極端子12a,bと接続され、前記ロウ付けされた部分が前記補助ガス流路から分岐された分岐流路内に配されている。この様子を図6に示す。なお、図6は、図4における電極端子への補助ガスの流路を示す部分拡大図である。
即ち、前記分岐流路は、セラミックス管体4aから外部に引き出された前記リード線を電極端子12a,bに差し込む穴の穴径を前記リード線の外径よりも大きくさせるとともに、該穴を補助ガス導入管9と連結させて構成される。したがって、加熱運転時に補助ガス導入管9を開放すると、前記補助ガスは、中間管5の前記補助ガス流路に導入されるとともに、この流れと分岐して一部が前記分岐流路内に流れ込む(図6中の矢印参照)。
加熱型誘導結合プラズマトーチ50では、中心管4を加熱して使用するが、中心管4を長時間加熱使用すると、前記リード線を電極端子12a,bに固定するための前記ロウ付けされた部分が酸化され、耐久性が低下する。そのため、加熱使用時に前記ロウ付けされた部分に前記補助ガスを導入して空気中の酸素による酸化を防ぐように前記分岐流路が構成されている。
なお、本例では、効率的な装置構成とするため、前記分岐流路を補助ガス導入管9と連結させて前記誘導結合プラズマに用いられる前記補助ガスを利用する構成としているが、補助ガス導入管9から前記補助ガスを供給せず、別途、前記ロウ付け部分に対するガス供給ラインを形成してもよい。また、この場合、前記補助ガスに限らず、前記ロウ付け部分の酸化を防止するガス、例えば、窒素ガス等の不活性ガスを用いてもよい。また、これらの構成は、加熱型誘導結合プラズマトーチ1に採用することもできる。
なお、トランスファー管31に前記気体試料及び前記キャリアガスを導入する高温源36としては、特に制限はなく、公知のガスクロマトグラフ、熱分解炉、電気炉、高周波加熱炉等の高温源から適宜選択して適用することができる。
このように構成される加熱型誘導結合プラズマトーチ50の作用について説明をする。
図4に示すように、高温源36で発生させた高温の前記気体試料は、キャリアガス導入管38から導入される前記キャリアガスとともにトランスファー管31に導入され、中心管4内に排出される。
また、メークアップガス導入管32に導入される前記メークアップガスは、コネクタ部33を介して中心管4内に排出される。ここで、前記メークアップガスは、トランスファー管31から中心管4内に導入される前記キャリアガスの流量が不足する場合等において、前記誘導結合プラズマへの前記気体試料の安定的な導入を目的として導入され、例えば、アルゴンガス等を用いることができる。
ここで、トランスファー管31から中心管4内に導入される前記気体試料及び前記キャリアガスは、移動中にトランスファー管31のヒータ部34に通挿される領域及びヒータ部34に接触するように配されたコネクタ部33において加熱されることにより、高温源36で加熱された前記気体試料を温度の低下が抑制された状態で中心管4内に導入させることができる。
また、中心管4では、加熱型誘導結合プラズマトーチ1について説明した通り、高温での加熱が可能であり、前記気体試料を温度の低下が抑制された状態で前記誘導結合プラズマ中に導入することができる。また、本例では、中心管4の温度制御に熱電対40を用いるため、中心管4の温度変化に応じた適切な温度コントロールを行うことができる。
したがって、従来の加熱誘導プラズマトーチでは、加熱温度が最高でも400℃程度であるため、400℃を超える高温源で気化した前記分析対象元素、例えば、熱分解炉を100℃から900℃まで昇温し、400℃を超える温度で気化した前記分析対象元素は、プラズマトーチ壁面やトーチに到るまでの流路壁面に凝縮、吸着されて分析できないという問題があったが、加熱型誘導結合プラズマトーチ50では、高温で気化する元素も分析対象とすることができる。
また、補助ガス導入管9から導入される前記補助ガスは、中間管5の前記補助ガス流路を介して前記誘導結合プラズマ中に導入されるとともに、セラミックス管体4aから引き出された発熱体4bの前記リード線をロウ付けした部分に導入される。
したがって、中心管4を長時間加熱使用しても、前記ロウ付けされた部分の耐久性の低下が抑制され、前記気体試料を中心管4の加熱により安定した状態で、前記誘導結合プラズマ中に導入することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の前記加熱型誘導結合プラズマトーチの第3の実施形態について説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを説明するための説明図である。
この加熱型誘導結合プラズマトーチ60は、加熱型誘導結合プラズマトーチ50において、セラミックス管体4aから引き出された発熱体4bの前記リード線と電極端子12a,bとの接続状態を変更した変更例に係る。なお、この変更部分以外の部分については、加熱型誘導結合プラズマトーチ50の構造と基本的に同じ構造を有するため、同じ構造部分については共通した説明を省略することとする。
加熱型誘導結合プラズマトーチ60のトーチ基底部70では、前記リード線をロウ付けする代わりに、耐熱性の絶縁体71a,bで外周を絶縁した電力供給用の金属ピン72a,bをバネ73a,bで電極端子12a,bに物理的に押し付ける構成としている。
このような構成においても、前記ロウ付け部分の耐久性低下を避けることができることから、中心管4を長時間加熱使用しても、前記気体試料を中心管4の加熱により安定した状態で、前記誘導結合プラズマ中に導入することができる。なお、この絶縁体71a,b
で絶縁した金属ピン72a,bをバネ73a,bで電極端子12a,bに物理的に押し付ける構成は、加熱型誘導結合プラズマトーチ1に対しても適用することができる。
なお、図7中、符号75は、トランスファー管を示し、符号76は、メークアップガス導入管を示している。
次に、加熱型誘導結合プラズマトーチ1,50,60において適用可能な中心管4の好適な構成例について、図8(a)、(b)を参照しつつ、更に説明をする。なお、図8(a)は、先端にノズル部を配した状態の中心管を示す説明図であり、図8(b)は、図8(a)におけるノズル部の構成を示す説明図である。
図8(a)に示すように、中心管4は、前記試料及び前記キャリアガスが排出される先端部に噴出ノズル80が取り付け可能とされる。
また、前記先端部に対し、基端部から前記試料及び前記キャリアガスを導入する部を管胴部としたとき、前記管胴部の内径φは、小さくとも1.6mmとされ、より好適には小さくとも2.0mmとされる。なお、内径φの上限としては、5mm程度である。
内径φがこのような大きさであると、中心管4内の壁面に前記試料の凝縮物、吸着物が生じることを抑制でき、また、僅かに生じたとしても、これらが発生し易い中心管4の基端側を含む前記管胴部で、詰まりが生じることを抑制することができる。
図8(b)に示すように、噴出ノズル80は、前記試料及び前記キャリアガスが導入される側と反対側の排出側に向けて内径を狭めた形状を有し、前記試料及び前記キャリアガスを噴出するノズル部81と、中心管4の先端に嵌着されるとともにノズル部81と固定可能なノズル固定部82とを有する。
分析の際、中心管4から排出される前記試料及び前記キャリアガスを前記誘導結合プラズマに対して所定の深さ位置まで押し込む必要があり、こうしたことから、中心管4先端の内径を前記管胴部の内径φよりも絞り、前記試料及び前記キャリアガスを付勢した状態で中心管4の先端から噴出させる必要がある。
しかしながら、中心管4は、セラミックス管体4aを管材とするため、こうした先端を絞り込む加工が難しい。
そのため、中心管4の内径φよりも内径を絞った噴出ノズル80を中心管4に取り付けることで、安定して前記試料及び前記キャリアガスを前記誘導結合プラズマ中に導入させることが好ましい。
(実施例1)
図2に示す加熱型誘導結合プラズマトーチ1の構成に準じて、実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを作製した。
ここで、中間管5、外側管6は、石英製とし、また、これらの寸法は、通常の誘導結合プラズマトーチに用いられるものと同様とし、具体的には、中間管5について、全長90mm、トーチに近い22mm分を内径14mm、外径16mmとし、その他は内径10mm、外径12mmとし、外側管6について、全長91mm、内径18mm、外径20mmとした。
また、中心管4は、全長130mm、内径2mm、外径5mmの寸法とされ、酸化アルミニウム製のセラミックス管体4aに発熱体4bを埋設した状態で同時焼結することにより一体化した管状セラミックスヒータを用いた。発熱体4bとしては、全長80mmのタングステン金属を用いた。また、電気伝導性部材4cとして全長85mm、内径5mmのステンレス鋼製チューブを用いて、前記管状セラミックスヒータの外周を覆う構成とした。
なお、結合部15は、耐熱性のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂製とし、トーチ結合用ボールジョイント14及びスプレーチャンバー結合用ボールジョイント16は、石英製のものを用いた。
(参考例)
実施例1において、中心管4に電気伝導性部材4cを配さない構成としたこと以外、実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチと同様にして、参考例に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを作製した。
(ノイズ特性試験)
実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチと、参考例に係る加熱型誘導結合プラズマトーチとを用いてノイズ特性試験を次のように実施した。
具体的には、先ず、混合標準溶液(3種混合)組成:Li,Y,Tl(各10μg/L,2質量% HNO溶液)をネブライザー20によって霧状化し、これをスプレーチャンバー21を介して中心管4に導入させ、温度制御部13により中心管4を400℃で加熱する条件で実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを運転させた。
次いで、実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチから発生させたプラズマ中の各元素を誘導結合プラズマ質量分析装置(アジレント社製、Agilent7500 a)を用いて分析した。
測定結果を図9(a)、(b)に示す。これら図9(a)、(b)では、経過時間における各元素の信号強度の測定結果を示している。なお、図9(a)が電気伝導性部材を配して分析を行った場合の信号強度を示す図であり、図9(b)が電気伝導性部材を配さないで分析を行った場合の信号強度を示す図である。
図9(a)に示す信号強度においては、図9(b)に示す信号強度で周期的に発生するピークが現れず、ピーク形状が扁平様となることから、測定値のばらつきが少ないことが分かる。
また、この測定結果から算出される信号強度の相対標準偏差(RSD,relative standard deviation)から、測定値のばらつきを評価した。この相対標準偏差の値が小さい程、測定値のばらつきが少なく、ノイズが少ないと評価することができる。図9(a)、(b)に示す、Li,89Y,205Tlの各信号強度のRSDは、電気伝導性部材4cを配さない参考例に係る加熱型誘導結合プラズマトーチでは、それぞれ6.2%,7.5%,4.2%であったが、電気伝導性部材4cを配した実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチでは、それぞれ2.5%,4.5%,3.7%となったことから、実施例1に係る加熱誘導結合プラズマトーチの方が、発熱体4bに通電した際に生じる前記誘導結合プラズマへの電磁誘導影響を低減させることができ、電気伝導性部材4cを配さない参考例に係る加熱型誘導結合プラズマトーチのよりもノイズの発生を低く抑えることができたといえる。
(実施例2)
図4に示す加熱型誘導結合プラズマトーチ50の構成に準じて、実施例2に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを作製した。
ここで、高温源36としては、950℃まで加熱できる熱分解炉(フロンティア・ラボ社製)を使用した。
また、トランスファー管31としては、内径1.0mm、外径1.58mm、長さ約100mmの寸法を有し、内面を不活性化処理したステンレス鋼製の管材を使用した。また、メークアップガス導入管32としては、ステンレス鋼製の管材を加工して使用した。また、コネクタ33としては、三方コネクタ(ケイテス社製)を使用し、ヒータ部34を一方のねじ口に固定させて用いた。また、ヒータ部34としては、管状ヒータ(坂口電熱社製、ファイヤーロッドカートリッジヒータ)を使用した。また、保温部としては、石英ウールを用いた。
また、電熱体40としては、線径0.5mmのクロメル−アルメル熱電対を使用した。
なお、中心管4、中間管5、外側管6としては、実施例1に係る加熱型誘導結合プラズマトーチと同様に構成した。
(試料分析試験)
実施例2に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを用いてヒ素の分析試験を行った。
具体的には、前記熱分解炉の試料容器に塩化ナトリウム0.02gを入れ、これに亜ヒ酸濃度1ppmの試料2μLを滴下し、水分を飛ばした後、500℃で加熱してヒ素を塩化ヒ素として気化させ、これをトランスファー管31を介して中心管4に導入させて行った。ここで、ヒータ部34では、250℃で加熱を行い、また、発熱体4bでも250℃で加熱を行って実施例2に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを運転させた。
次いで、発生させたプラズマ中のヒ素を誘導結合プラズマ質量分析装置(アジレント社製、Agilent7500 a)を用いて分析した。
分析結果を図10に示す。なお、図10は、ヒ素を分析したときのシグナルを示す図である。
該図10に示す、シグナルとノイズの比から、ヒ素の環境基準0.01ppm以下の検出限界が得られることが確認された。
なお、このように元素を塩化物として気化させ、誘導結合プラズマトーチに導入して分析する塩化物発生法は、本例のヒ素に限らず、アンチモン、カドミウム、鉛、クロムなど多くの金属に適用できるものであり、本発明の前記加熱型誘導結合プラズマトーチによって初めて実現可能となったものである。
また、実施例2に係る加熱型誘導結合プラズマトーチを用いて水銀とメチル水銀を分別して分析する分析試験を行った。生物試料中の水銀は、無機の水銀と、メチル水銀である有機水銀とが存在するが、後者の毒性が大きいため、分別して定量可能であることが求められる。
具体的には、無機水銀とメチル水銀をフェニル誘導体化して、各々ジフェニル水銀とメチルフェニル水銀に変換し、これを前記熱分解炉に入れて、70℃から400℃まで徐々に昇温し、両者の気化温度の違いによって分別して分析を行った。なお、ヒータ部34、発熱体4bの加熱は、前記熱分解炉の温度に応じて、適宜設定して行った。
また、プラズマ中のジフェニル水銀及びメチルフェニル水銀の分析には、前記誘導結合プラズマ質量分析装置を使用した。
分析結果を図11に示す。なお、図11は、水銀とメチル水銀とを分別して分析したときのシグナルを示す図である。
該図11に示すように、両者の気化温度の違いを利用することで分別して分析可能であることが確認された。
従来、これらを分別するためには、ガスクロマトグラフを用いなければならなかったが、熱分解炉と本発明の前記加熱型誘導結合プラズマトーチを用いることにより、ガスクロマトグラフを用いなくても分析することが可能となった。
誘導結合プラズマ発光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法は、鉄鋼、非鉄金属、半導体、石油、ナノ材料等の工業分析、食品分析、ライフサイエンス分野における生体分析、および環境科学分野における環境分析等において広範に使用されており、本発明に係る前記加熱型誘導結合プラズマトーチは、これらの分析を行う分野において、広く利用することができる。また、分析試料加熱時における、微量元素の挙動や反応性を調べるための解析装置として、更には、高温気化反応を利用した分析装置として利用することも可能である。
1,50,60 加熱型誘導結合プラズマトーチ
2,2’ トーチ本体部
3,30,70 トーチ基底部
4,100 中心管
4a セラミックス管体
4b 発熱体
4c 電気伝導性部材
5 中間管
6 外側管
9 補助ガス導入管
10 プラズマガス導入管
12a,b 電極端子
13 温度制御部
14 トーチ結合用ボールジョイント
15 結合部
16 スプレーチャンバー結合用ジョイント
18,38 キャリアガス導入管
20 ネブライザー
21 スプレーチャンバー
31,75 トランスファー管
32,76 メークアップガス導入管
33 コネクタ部
35 保温部
36 高温部
40 熱電対
71a,b 絶縁体
72a,b 金属ピン
73a,b バネ
80 噴出ノズル
81 ノズル部
82 ノズル固定部
101 フレキシブルヒータ
102 シース
103 アダプタ
104a,b リード線
105a,b 圧着端子
106a,b 発熱体
107 MgO充填部
110 ステンレス鋼管
111 伝熱部材

Claims (7)

  1. 少なくとも、管内に霧状又は気体状の試料及び前記試料を運ぶキャリアガスが流送される中心管と、前記中心管との間に間隔を空け補助ガス流路が形成される状態で外挿される中間管と、前記中間管との間に間隔を空けプラズマガス流路が形成される状態で外挿される外側管との三重管構造を有するトーチ本体部が配され、
    前記中心管は、発熱体がセラミックス管体中に埋設された状態で焼結される管状セラミックスヒータで構成され、かつ、前記管状セラミックスヒータの全部又は一部が電気伝導性部材で被覆されることを特徴とする加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  2. セラミックス管体の形成材料が、酸化アルミニウム及び窒化珪素の少なくともいずれかを含む請求項1に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  3. 更に、発熱体の温度制御部と、中心管と前記温度制御部との間に架設され前記中心管の温度を前記温度制御部に入力させる熱電対とが配される請求項1または2に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  4. 中心管は、試料及びキャリアガスが排出される先端部に対し、基端部からこれらを導入する部を管胴部としたとき、前記管胴部の内径が小さくとも1.6mmとされる請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  5. 発熱体が、セラミックス管体から外部に引き出されたリード線がロウ付けされた状態で出力源の電極端子と接続される抵抗加熱部材とされ、前記ロウ付けされた部分が補助ガス流路内又は前記補助ガス流路から分岐された分岐流路内に配される請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  6. 更に、試料及びキャリアガスが導入されるトランスファー管と、メークアップガスが導入されるメークアップガス導入管と、前記トランスファー管が内部に通挿されるとともに前記メークアップガス導入管と中心管とを接続するコネクタ部と、前記トランスファー管、前記メークアップガス導入管及び前記コネクタ部の各部と接触ないし近接する状態で配される1つのヒータ部とを有するトーチ基底部が配される請求項1から5のいずれか1項に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
  7. ヒータ部が、一端側からトンランスファー管が管内に通挿されるとともに、管外にメークアップガス導入管が周設され、他端側がコネクタ部と接触ないし近接する状態で配される管状部材として構成される請求項6に記載の加熱型誘導結合プラズマトーチ。
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