JP6478919B2 - 無段変速トランスミッションの駆動ベルト用のリングセット - Google Patents

無段変速トランスミッションの駆動ベルト用のリングセット Download PDF

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Description

本明細書は、通常自動車に適用される公知のプーリ型無段変速トランスミッション又はCVTで用いるための駆動ベルトに関する。ヨーロッパ特許出願公開第1403551号明細書に詳細に記載されている、駆動ベルトの1つの公知のタイプは、当該技術分野ではプッシュベルトとも呼ばれる。この公知の駆動ベルトは、多数の鋼セグメントを含み、これらの鋼セグメントには少なくとも1つ、但し典型的には2つの凹所が設けられており、各凹所には、駆動ベルトのリングセットが収容されており、これらのリングセットはそれぞれ、互いに同心的に重ねられた多数のフレキシブルな鋼リングから成っている。当該技術分野において、鋼セグメントは横断部材とも呼ばれ、鋼リングは帯材、ループ又はエンドレスベルトとも呼ばれ、リングセットはエンドレス引張り手段又はキャリアとも呼ばれる。このタイプの駆動ベルトでは、横断部材はリングセットに結合されているのではなく、むしろCVTの作動中は、リングセットの周面に沿って摺動するようになっている。また、リングセットの個々のリングも、作動中は互いに相対的に摺動する。
この駆動ベルトの用途に関して、リングはマルエージング鋼から製造されており、このタイプの鋼がとりわけ、大きな引張り強度及び(曲げ)疲労強度の機械的な特徴と、鋼をシート形状の基本材料から所望の形状に処理する比較的良好な処理性と、最終製品であるリングの材料特性とを組み合わせるものである。これらの所望の材料特性には、大きな引張り強度と、十分な弾性及び延性の特徴とを組み合わせて鋼リングの長手方向に曲げられるようにするための、リングコア材料の適正な硬度と、鋼リングに耐摩耗性を与えるための、はるかに硬い外側表面層とが含まれる。更に、金属疲労に対する高い耐性を供与するために、かなりの圧縮残留応力が、鋼リングの外側表面層に加えられる。この後者の特徴は、特に重要である。それというのも、鋼リングはトランスミッション内の駆動ベルトの耐用年数の間に、多数の負荷及び曲げサイクルを被るからである。
このような駆動ベルトの製造方法(駆動ベルトの鋼リングコンポーネントの熱処理を含む)は全体的に、当該技術分野において公知である。全体的な製造方法の1つの重要な部分が、鋼リングの熱処理であり、この熱処理には、析出硬化の処理ステップと、窒化処理の処理ステップとが含まれる。
析出硬化は、時効としても知られており、摂氏400度(℃)を上回る温度に鋼リングを加熱することによって実現される。この温度で微細な金属間化合物の析出物が培養されて、リング材料の複数の任意の箇所で成長する。析出物が成長するにつれて、リング材料の硬度は、一般に最大硬度値に到達するまで増大し、その後、リング材料の硬度は一般に再び減少し始める(いわゆる「過時効」)。鋼リングの外側表面の(深刻な)酸化を防ぐために、析出硬化は通常、窒素ガス、又は若干の水素ガスが混入された窒素ガスといった、不活性の、又は減少された処理雰囲気内で実施される。
窒化処理は、付加的に硬化され、しかも圧縮(予)荷重の加えられた表面層を、鋼リングに施与する。窒化処理、少なくとも一般的に適用される、窒化処理の変化態様であるガス軟窒化処理では、鋼リングは、アンモニアガス(NH3)を含む処理雰囲気中で、やはり400℃を上回る温度に保持される。このような温度では、アンモニア分子が鋼リングの外側表面で解離して、水素ガスと窒素原子を形成し、窒素原子がリング材料の結晶格子に侵入する。窒化処理が続くにつれて、窒素原子は拡散されることにより、外側表面から離脱してリング材料内へ侵入するので、鋼リングには、増大された厚さの窒化表面層が施与されることになる。
注目すべきは、表面圧縮残留応力が、鋼リングの駆動ベルトへの適用における重要な特徴であると考えられる点である。なぜならば、表面圧縮残留応力は、鋼リングに張力をかけて、曲げたり引っ張ったりした結果生じる引張り応力を、全体的又は部分的に相殺するからである。この引張り応力は、リングの表面層内に集中する。特に、圧縮残留応力により、即ち窒化物層を施与することにより、圧痕又は顕微鏡的亀裂といった、表面欠陥から始まり且つ/成長する疲労破壊のタイプは、有効に抑制されて、鋼リングの疲労強度は大幅に向上される。これに関して、表面圧縮残留応力が高いほど、疲労強度は高くなる、という一般的な知識によれば、駆動ベルトの作動中、結果的に鋼リングのコアに生じる引張り応力が、リング材料の弾性限界を超過することはない。
出願人は、特に鋼リングの最大疲労強度の観点から、鋼リングの熱処理に影響を及ぼす多くのパラメータのいくつかの作用について、詳細且つ徹底した調査を行った。これらの調査の目的は、特に大量生産における窒化処理の安定性及び費用対効果に関して、窒化処理(即ち窒化の温度、継続時間及び処理雰囲気組成)の最適な設定を見出すことにある。これらの調査により得られた豊富な実験データは、出願人を驚くべき発見へと導いた。特に出願人はこのようなデータから、上述した一般的な知識は、実際には更なる検討無しで少なくとも直接的には、駆動ベルトの鋼リングコンポーネントに適用することはできない、という論理を構築することができた。
出願人が驚いたことには、熱処理された鋼リングが、駆動ベルトへの適用において鋼リングの(予想された)性能を評価するために一般に行われる、より複雑なプル−プル疲労試験の代わりに、共通の場所で比較的簡単な引張り強度試験を受けると、破面は脆性破壊の特徴を有する領域を示した。破面全体のうちの、これらの脆性破壊部分は、窒化物層で始まって、鋼リングの各外側表面に向かって延在している。更に啓発的だったのは、脆性破壊部分の延在長さ、即ち層厚さが、窒化物層の厚さに直接に関連付けられる、ということを見出した点である。本明細書は、これらの発見から得られた2つの新規な見識を示すものである。
第1に、本明細書は、熱処理された鋼リングの窒化物層の厚さを決定する新規な方法に関する。注目したのは、熱処理された鋼リングの窒化物層の厚さは、駆動ベルトの製造方法全体の一部として定期的にチェックされるという点である。このことは従来、所定の製造量又は製造期間の中から1つの鋼リングを任意に選択し、且つ光学的又は化学的手段により窒化物層の厚さを直接に測定することによって行われ、その測定法は、ヨーロッパ特許出願公開第1869434号明細書に記載されている。しかしながら、本明細書では、窒化物層の厚さは間接的に、鋼リングにおいて、引張り強度試験といった破壊強度試験を行うステップ(i)と、破壊強度試験の結果生じた脆性破壊層の厚さを測定するステップ(ii)と、測定された脆性破壊層厚さに対応する窒化物層厚さを、これら2つのパラメータを互いに関連付けるルックアップテーブルや方程式といった、リング材料の所定の基準から決定するステップ(iii)とを適用することにより、測定される。
第2に、単に脆性破壊のみの発生は、出願人に、鋼リングの材料の延性が、少なくとも現在の駆動ベルトに適用するには最適未満である可能性を示唆した。特に、出願人は実験に基づき、脆性破壊層が10ミクロンの厚さを超過すると、少なくとも150〜200ミクロン、典型的には約185ミクロンの厚さを有する工業規格の鋼リングの場合、鋼リングの疲労強度は実質的に低下する、ということを確定した。脆性破壊層の厚さが10ミクロン未満に減少されると、疲労強度は向上し続けることが分かったにもかかわらず、この向上は、疲労強度の前記低下よりもはるかに小さいということが分かった。それでもなお、本明細書による鋼リングの好適な構成では、鋼リングが750HV0.1未満の表面硬度で製造された場合に生じることが分かった脆性破壊(層)は、全く存在していない。
付加的に前記調査は、鋼リングそれ自体の疲労強度は必ずしも、表面圧縮残留応力が低下したときに低下はしない、ということを明らかにした。実際に実験に基づき出願人が確定したのは、350MPa〜650MPaの圧縮残留応力(即ちマイナス(“−”)350MPa〜マイナス650MPaの残留応力)が、熱処理により鋼リングの表面に生じると、その結果生じる鋼リングの疲労強度は、少なくとも駆動ベルトに鋼リングを適用するには十分申し分ないものとなる、という点である。明らかに、従来適用された800MPaを上回る、最大1400MPaまでの圧縮残留応力レベルは、鋼リングの所要疲労強度を得るために、必ずしも必要ではない。
今、従来の高い圧縮残留応力は、耐摩耗性を供与するためといった、別の目的のために有用である、という仮説が立てられる。しかしながらこのことは、半径方向内側の表面が横断部材と直接に接触する、リングセットの最も内側の鋼リングにしか関連しない。リングセットの最も外側の鋼リングも、高い圧縮残留応力からの恩恵を受ける可能性はある。なぜならば、このリングの半径方向外側の表面もやはり、より少ない範囲ではあるが、横断部材と接触しているからである。よって本明細書は、リングセットの最も内側のリングと最も外側のリングとの間に位置する複数の鋼リングに、650MPa未満、好適には600MPa未満の圧縮残留応力が供与されているリングセットに関する。
これらの圧縮残留応力レベルは、10〜18ミクロンの鋼リングの窒化物層厚さに関して、最も容易に達成されることが分かった。このようにして、概ね鋼リングの(半径方向の)厚さ全体の5%〜10%になる窒化物層厚さを目標とする。
付加的に、リングセットの少なくとも半径方向に見て最も内側の鋼リングの、半径方向内側の表面に、但し好適にはリングセットの半径方向に見て最も外側の鋼リングの、半径方向外側の表面にも、750MPaを上回る圧縮残留応力が加えられる。
窒化物層厚さは、処理雰囲気中のアンモニア濃度及び水素濃度、並びに窒化処理の温度及び継続時間といった窒化処理パラメータにより決定され、延いては制御可能である、ということは公知である。これに関して好適な製造方法には、
10〜18ミクロンの厚さの窒化物層を有し且つリング表面における圧縮残留応力が350〜650MPaの鋼リングを供与する同一の処理パラメータを適用することにより、全ての鋼リングを窒化処理し、
少なくとも半径方向に見て最も内側のリングの半径方向内側の表面に、1つの付加的な処理ステップを施して、750MPaを上回るレベルに圧縮残留応力を増大させることが含まれる。このためには例えば、公知のショットピーニング処理が適用され得る。
前記見識の背景及び本明細書に基づく駆動ベルトの鋼リングコンポーネントの構成については、以下で添付図面を参照して説明する。
駆動ベルトが設けられた、公知の無段変速トランスミッションの一例を概略的に示した図である。 駆動ベルトの断面を示す斜視図である。 駆動ベルトの鋼リングコンポーネントの公知の製造方法の、本発明に関連する部分を示した図である。 引張り強度試験を受けた後の鋼リングの破面を写真で示した図である。 鋼リングの窒化物層の厚さと、引張り強度試験で得られた脆性破壊層の厚さとの間の依存関係を示すグラフである。 鋼リングの外側表面における所定の位置に関して測定された、鋼リングの材料の硬度を示すグラフである。 鋼リングの疲労強度と、引張り強度試験で得られた脆性破壊層の厚さとの間の関係を示すグラフである。 鋼リングの窒化物層の厚さと、鋼リングの外側表面付近の残留応力レベルとの間の依存関係を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
図1には、一般に自動車のエンジンと駆動輪との間の、自動車のドライブラインに適用される、公知の無段変速トランスミッション又はCVTの中心部分が示されている。このトランスミッションは2つのプーリ1,2を有しており、各プーリ1,2にはそれぞれ、2つの円錐形のプーリディスク4,5が設けられており、これらのプーリディスク4,5間には所定のV字溝が画定されており、一方のディスク4は、それぞれプーリ軸6,7上に配置されていて、これらのプーリ軸6,7に沿って軸方向に可動である。一方のプーリ1,2から他方のプーリ2,1へ、回転運動ωと付随するトルクTとを伝達するために、プーリ1,2には駆動ベルト3が巻き掛けられている。トランスミッションは一般に、作動手段も有しており、この作動手段は、少なくとも前記一方のディスク4に、軸方向に向けられた締付け力Faxを、それぞれ他方のプーリディスク5に向かって加え、これによりプーリディスク4,5間でベルト3が締め付けられることになる。またこれにより、被駆動プーリ2の回転速度と、駆動プーリ1の回転速度との間の(速度)伝達比も決定される。
公知の駆動ベルト3の一例が、図2に断面図で詳細に示されている。このベルト3には、2つのリングセット31が組み込まれており、各リングセット31は、それぞれ(本実施形態では)6つの薄く平らな、即ち帯状のフレキシブルなベルトリング32から成っている。ベルト3は更に、多数の板状の鋼横断部材33を有しており、これらの鋼横断部材33は、それぞれ横断部材33の各凹所内に配置されたリングセット31によって一緒に保持されている。横断部材33は、入力トルクTinがいわゆる駆動プーリ1に働くと前記締付け力Faxを受け取り、これによりディスク4,5とベルト3との間に生ぜしめられた摩擦が駆動プーリ1を回転させ、この回転は、同様に回転する駆動ベルト3を介して、いわゆる被駆動プーリ2に伝達される。
運転中、CVTでは駆動ベルト3と、特にその鋼リング32とに、周期的に変化する引張応力及び曲げ応力、即ち疲労荷重が加えられる。よって典型的には、リング32の金属疲労に対する耐性、即ち疲労強度が、与えられた、駆動ベルト3によって伝達されるべきトルクTにおける、駆動ベルト3の機能的な耐用年数を決定する。そのため、駆動ベルト製造方法の開発においては、最小限の複合材料と処理コストで、要求されるリング疲労強度を実現することが、長年の課題であった。
図3には、公知の駆動ベルト3を製造する方法、即ち駆動ベルト3の鋼リング32を製造する方法全体の、本発明に関連する部分が図示されており、この場合、個々の処理ステップは、ローマ数字で表されている。
第1の処理ステップIでは、典型的には0.4mm〜0.5mmの範囲の厚さを有する基本材料の薄いシート又は薄板11を円筒形状に曲げ、第2の処理ステップIIにおいて、突き合わされた薄板端部12を互いに溶接して、開放した中空の円筒又は管13を形成する。第3の処理ステップIIIでは、管13を焼なましする。次いで、第4の処理ステップIVにおいて、管13を複数の環状帯材14に切断する。次いで第5の処理ステップVではこれらの環状帯材14を圧延して、その厚さを0.150〜0.200mmの値にまで、典型的には約185ミクロンにまで減少させる一方で、長さを引き延ばす。圧延後の帯材14は通常、鋼リング32と呼ばれる。次いで鋼リング32を更に第6の処理ステップVIにおいて焼きなまし、摂氏600度を大幅に上回る、例えば約摂氏800度の温度でのリング材料の回復及び再結晶により、前の圧延処理(即ち第5のステップV)の加工硬化作用を取り除く。次いで第7の処理ステップVIIにおいて、鋼リング32を較正する、即ち、鋼リング32を2つの回転ローラの周りに取り付けて、これらのローラを離間させることにより、所定の周長まで延伸させる。この第7の処理ステップVIIでは、鋼リング32における内部応力の分散も行われる。
次いで、鋼リング32を2つの処理ステップにおいて熱処理する。つまり、第8の処理ステップVIIIの析出硬化又は時効と、第9の処理ステップIXのガス軟窒化処理である。特に、このような両熱処理には、典型的には時効用の窒素及び例えば約5体積%の若干の水素、並びにガス軟窒化処理用の窒素、水素及びアンモニアから成る管理されたガス雰囲気を有する工業炉内で、鋼リング32を加熱することが含まれる。両熱処理は、通常摂氏400度〜摂氏500度の温度範囲内で行われ、鋼リング32の基本材料(即ち、マルエージング鋼の合金組成)、及び鋼リング32に関して所望される機械的特性に応じて、それぞれ約45〜120分以上継続され得る。後者の機械的特性に関して注目されるのは、通常、520HV1.0以上のコア硬度値、875HV0.1以上の表面硬度値、及び19〜37μmの範囲の窒化された表面層若しくは窒素拡散領域の厚さが目標とされることである。
最後に、図3の終わりに示したように第11の処理ステップXIにおいて、処理された複数の鋼リング32を半径方向にスタック、即ち重ねて、リングセット31を形成する。このために、リングセット31の鋼リング32を適切に寸法決めせねばならないこと、例えば互いの周面に適合するように、鋼リング32の周長を僅かに相違させねばならないことは自明である。この目的を達成するために、後で形成されるリングセット31の鋼リング32は通常、前の、即ち第10の処理ステップXにおいて、異なる、しかし既知の周長の鋼リング32の在庫品から適宜に選択される。
このように処理された鋼リング32を引張り強度試験により個別に試験すると、破面は、延性破壊部分DPと、窒化物層NL内からリング32の側面に向かって延びる2つの脆性破壊部分BPの両方を示す。図4の、鋼リング32の破面を表す写真例は、延性破壊部分DPと、2つの脆性破壊部分BPとの異なる組織、及び窒化物層NLの延在長さ(但しこの図4ではほとんど認識不能である)を示している。脆性破壊部分BPの延在長さ又は層厚さは、少なくとも鋼リングのリング基本材料の所定の組成を与えられた窒化物層NLの延在長さ又は厚さに、直接に対応している。このような対応の例が、測定された脆性破壊層厚さBPを、窒化物層厚さNLの単一の値に関連付ける、図5のグラフに示されている。図5のグラフは好適には、鋼リング32の大量生産において簡単な引張り強度試験により窒化物層の(任意の)試料の窒化物層厚さNLをチェックするための、所定の基準グラフ(又は一次方程式)に基づくものであってよい。
図6のグラフは、鋼リング32の別の材料特性、つまり試験力100グラム([HV0.1])のビッカース硬さで測定された鋼リング32の硬度Hに関するものであり、この特性は、2つの異なる基本材料MAT1,MAT2に関して鋼リングの外側表面からの距離x(ミクロン)に関連して示されている。いずれの場合も、即ちMAT1とMAT2の両方に関して、鋼リング32には、外側表面から28ミクロン内側に向かって延在する窒化物層NLが施与されている。これらの2つの基本材料MAT1,MAT2から成る鋼リング32が引張り強度試験を受けた結果として、第1の基本材料MAT1に関しては20ミクロンの脆性破壊層厚さBP1が生じ、第2の基本材料MAT2に関しては16ミクロンの脆性破壊層厚さBP2が生じた。完全を期すために述べておくと、図5のグラフは、図6に関連して上述した第1の基本材料MAT1から成る鋼リング32を用いて得られたものである。
図6から分かるように、両基本材料MAT1,MAT2に関して脆性破壊BPの延在長さは、750HV0.1以上の、鋼リング32の硬度Hに関連付けられる。鋼リング32の硬度Hがこのような、750HV0.1の限界値を下回ったままの場合には、引張り強度試験の結果生じる鋼リング32の破面が、脆性破壊部分BPを示すことは全くない。この観察に基づき本発明において考慮されたのは、750HV0.1未満の表面硬度Hを有する鋼リング32を提供することにより、鋼リング32の延性を、個々の鋼リング32の疲労強度に関して最適化する、という点である。それでもなお、鋼リング32を駆動ベルト3のリングセット31の一部として実際に使用するには、脆性破壊部分BPの延在長さが最大約10ミクロンになる可能性はある。なぜならば、図7に示したように、この値を下回ると、鋼リング32の疲労強度における如何なる改善も、比較的小さなものとなるからである。脆性破壊部分BPの厚さに関する、この10ミクロンの境界値を、図5のグラフの入力値として適用した場合、窒化物層NLの厚さに関して約18ミクロンの境界値が得られる。窒化物層NLに関する、この18ミクロンの境界値は、圧縮残留応力の所定のレベルに関連付けることができる。これに関して、図8のグラフには、鋼リング32の窒化物層NLの厚さに応じた、鋼リング32の外側表面層内で測定された残留応力RSが示されている。
図8から分かるように、約マイナス(即ち圧縮)650MPaの鋼リング32の表面における残留応力RSの境界値を、前記18ミクロンの、窒化物層厚さNLの境界値に適用することができる。更に、上述した、より低い好適な−600MPaの残留応力の限界値は、16ミクロンの窒化物層厚さNLに対応する。最後に述べておくと、より低い、10ミクロンの窒化物層厚さNLの限界値は、約−350MPaの残留応力RSに対応する。
上述の説明全体と、添付した詳細な図面とに加え、本明細書は、請求の範囲に記載した特徴全てに関するものであり、これを包含する。請求の範囲における括弧内の符号は、請求の範囲を限定するものではなく、単にそれぞれの特徴の非拘束的な例として記載されたに過ぎない。請求の範囲に記載の特徴は、場合によっては所与の製品又は処理に個別に適用され得るが、これらの特徴のうちの2つ又は3つ以上を組み合わせて適用することも可能である。
本明細書に記載された発明は、明細書に詳細に記載した実施形態及び/又は実施例に限定されるものではなく、特に関連技術分野の当業者が想到する範囲内での修正、変更、及び実際の適用をも包含している。

Claims (2)

  1. 無段変速トランスミッションの駆動ベルト(3)用のリングセット(31)であって、前記駆動ベルト(3)において、前記リングセット(31)は、前記駆動ベルト(3)の横断部材(33)の凹所内に配置されていて、前記駆動ベルト(3)の周方向で、前記駆動ベルト(3)の前記横断部材(33)を案内するために役立つものであり、前記リングセット(31)は、各々が150〜200マイクロメートルの範囲内の厚さを有し、かつ、各々が窒化物の外側表面層(NL)を有する、互いに同心的に重ねられた複数の鋼リング(32)から成っており、
    前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)と最も外側の鋼リング(32)との間に配置された前記リングセット(31)の前記鋼リング(32)には、その各外側表面の近傍において圧縮内部残留応力(RS)がかけられており、
    少なくとも、前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)の半径方向内側と、前記リングセット(31)の最も外側の鋼リング(32)の半径方向外側とには、前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)と最も外側の鋼リング(32)との間に配置された前記リングセット(31)の前記鋼リング(32)にかけられた前記圧縮内部残留応力(RS)の値を超える圧縮内部残留応力(RS)がかけられている、無段変速トランスミッションの駆動ベルト(3)用のリングセット(31)において、
    前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)と最も外側の鋼リング(32)との間に配置された前記リングセット(31)の前記鋼リング(32)の各外側表面の近傍においてかけられている前記圧縮内部残留応力(RS)は、350MPa〜650MPaの範囲内の値を有する、又は、
    少なくとも、前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)と、前記リングセット(31)の最も外側の鋼リング(32)との間に配置された前記リングセット(31)の前記鋼リング(32)には、10〜18マイクロメートルの厚さの窒化物の層(NL)が設けられている、
    ことを特徴とする、駆動ベルト(3)用のリングセット(31)。
  2. 前記リングセット(31)の最も内側の鋼リング(32)の半径方向内側と、前記リングセット(31)の最も外側の鋼リング(32)の半径方向外側とにかけられた前記圧縮内部残留応力(RS)は、750MPaを超える値を有することを特徴とする、請求項記載のリングセット(31)。
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