JP6468024B2 - 掘削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、取付孔部を備えた工具本体と、この取付孔部に挿入される取付軸部を備えて工具本体に着脱可能に装着される取付部材とを有する掘削工具に関するものである。
このような掘削工具としては、軸線回りに回転される工具本体(デバイス)先端部の上記軸線から偏心した位置に取付孔部が開口するとともに、この取付孔部に取付軸部が挿入されて工具本体に着脱可能に装着された取付部材(ビットヘッド)の先端には、硬質チップが配設された掘削部が設けられた、いわゆる拡径ビットあるいはアンダーリーミングビットと称されるものが知られている。このような拡径ビットでは、工具本体の回転に伴い取付部材が取付軸部の中心線回りに回転して掘削部の上記軸線からの半径が拡縮径し、拡径した状態で大径の掘削孔を形成するとともに、この掘削孔に挿入したケーシングパイプ内を縮径した状態で引き抜いて回収することができる。
このように取付軸部を取付孔部に挿入して取付部材を工具本体に着脱可能に、しかも取付軸部の中心線回りに回転可能に取り付けるのに、例えば特許文献1に記載された掘削工具では、取付軸部の外周面に取付軸部の延在方向に交差する凹溝を形成するとともに、工具本体には取付孔部の延在方向に交差する方向に延びて一部が取付孔部を貫通するピン孔を形成し、このピン孔に取付軸部の凹溝に係合する係止ピンを挿入している。凹溝は取付軸部の回転軸方向に見てL字状に形成されていて、取付部材は、凹溝がなすL字の範囲で係止ピンと係合して回転自在とされるとともに抜け止めされ、また係止ピンをピン孔から抜き出すことで工具本体から取り外し可能となる。
また、この特許文献1には、取付部材の取り外し時以外に係止ピンをピン孔に固定しておく手段として、ピン孔の開口部に、剛性体からなり、係止ピンの端面に当接して係止ピンを固定する円板状の固定部材と、この固定部材をピン孔の延在方向に係止して固定する係止部を設けることが提案されている。さらに、この特許文献1には、合成ゴム等の弾性体よりなり、これら固定部材と係止部との係止状態を維持するやはり円板状の補助部材を工具本体に配設することも提案されている。
ここで、工具本体には固定部材がスライド移動されるスライド溝が工具本体の軸線方向に延びるように形成され、このスライド溝の一端に、上記ピン孔が開口するとともに、上記係止部が形成されている。また、スライド溝の他端には固定部材の装入部が設けられていて、この装入部から装入された固定部材がスライド溝の一端にスライド移動されて係止部に係止された後、補助部材が装入部に取り付けられて固定部材を押圧することにより、固定部材の移動が防止されて固定部材と係止部との係止状態が維持される。
特許第4957440号公報
ところで、上述した拡径ビットのような掘削工具によって掘削孔を形成する際には、工具本体を軸線回りに回転させる回転力とともに、この軸線方向の先端側に向けた推力と、そして同じく軸線方向先端側に向けた打撃力が工具本体に与えられ、先端部に取り付けられた取付部材の硬質チップにより岩盤等を破砕する。この打撃力による衝撃により、固定部材は工具本体の軸線方向に延びるスライド溝内を先端側と後端側とに激しくスライド移動しようとするが、この固定部材の移動も、上述のように上記補助部材が固定部材を押圧することにより防いでいる。
しかしながら、特許文献1に記載された掘削工具では、上述のように固定部材が円板状であるとともに、補助部材も同じく円板状であって、補助部材は点接触で固定部材を押圧することになる。このため、上述のように固定部材がスライド溝内を移動しようとしたときに補助部材が受ける押し付け力が1点に集中してしまい、軟質な弾性体よりなる補助部材がこの1点から摩耗を生じるおそれがある。
そして、一旦このような摩耗が生じて固定部材と補助部材の間に隙間があくと、固定部材がこの隙間の中で激しくスライド移動することにより摩耗の進行が速まって隙間が一気に広がり、場合によっては補助部材が装入部から外れて固定部材と係止部との係止状態を維持することができなくなってしまう。また、円板状の補助部材と固定部材の側面同士が点接触する特許文献1に記載された掘削工具では、この点接触した部分以外の側面間に大きな隙間があくことになり、このような隙間に細かい砂等が入り込んでしまうことも補助部材の摩耗の一因となるおそれがあった。さらに、特許文献1に記載された掘削工具では、上述のように固定部材が円板状であるので、掘削時の振動や上記衝撃によりピン孔開口部のスライド溝内で回転してしまい、これによっても補助部材の摩耗が促進されるおそれがあった。
本発明は、このような背景の下になされたもので、このような固定部材による押し付け力が補助部材の1点に集中したり、固定部材と補助部材の側面にあいた間隔部分に砂等が入り込んだりするのを防いで補助部材の摩耗を抑制し、長期の掘削作業でも固定部材と係止部との係止状態を維持して安定した掘削が可能な掘削工具を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、取付孔部を備えた工具本体と、上記取付孔部に挿入される取付軸部を備えて上記工具本体に着脱可能に装着される取付部材とを有する掘削工具であって、上記取付軸部の外周面には、該取付軸部の中心線に直交する仮想平面に沿って凹溝が形成されるとともに、上記工具本体には、上記取付孔部に挿入された上記取付軸部の上記仮想平面に沿って該工具本体の外面から延びて部分的に上記取付孔部の内周面に開口するピン孔が形成され、このピン孔には係止ピンが挿入されて、上記取付孔部に挿入された上記取付軸部の上記凹溝に係止させられており、上記工具本体の外面における上記ピン孔の開口部には、上記係止ピンに当接して該係止ピンを抜け止めする固定部材が取り付けられるとともに、この固定部材を上記ピン孔の中心線方向に係止する係止部が形成され、上記固定部材は、平面視の基本形状が2つの半円を長方形で繋いだ長円形の板状に形成されており、上記ピン孔の中心線回りの回転が拘束されて該ピン孔の開口部に取り付けられ、上記ピン孔の開口部に隣接する上記工具本体の外面には、該ピン孔の開口部に連通する凹所が形成されていて、この凹所には、上記固定部材の該凹所に臨む側面に接触可能な側面を有して該固定部材と上記係止部との係止状態を維持する補助部材が配設され、上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士が、上記ピン孔の中心線方向に見て線接触していることを特徴とする。
このように構成された掘削工具においては、特許文献1に記載された掘削工具のように固定部材と補助部材とが1点で点接触することなく、固定部材と係止部との係止状態を維持する補助部材と該固定部材との互いに接触する側面同士が、ピン孔の中心線方向に見て線接触しており、掘削時に固定部材から補助部材が受ける押し付け力を線接触した側面で分散して受け止めることができる。このため、固定部材からの押し付け力によって補助部材が摩耗が生じるのを抑えることができる。
従って、一旦摩耗が生じることによって固定部材と補助部材との間にあいた隙間が一気に広がるのを防ぐことができ、長期に亙って固定部材と係止部との係止状態を維持して安定した掘削を行うことが可能となる。また、このように補助部材と該固定部材との側面同士が線接触することにより、円板状の補助部材と固定部材の側面同士が点接触する特許文献1に記載された掘削工具のように側面間にあく隙間も小さくすることができ、このような隙間に細かい砂等が入り込んで摩耗の一因となるのも防ぐことができる。しかも、本発明の掘削工具においては、上記固定部材は、平面視の基本形状が2つの半円を長方形で繋いだ長円形の板状に形成されており、上記ピン孔の中心線回りの回転が拘束されて該ピン孔の開口部に取り付けられているので、固定部材の回転による補助部材の摩耗も防止することができる。
ここで、上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士は、上記ピン孔の中心線方向に見て直線状に線接触していてもよいが、これらの側面同士をピン孔の中心線方向に見て互いに補完し合う凹凸形状に形成し、すなわちこれらの側面同士の一方が凸形状であって他方がこの凸形状に合致して接触する凹形状に形成することにより、ピン孔の中心線方向に見た上記側面同士の接触長さを長くすることができ、掘削時に固定部材から補助部材が受ける押し付け力を単位接触長さ当たりでより小さく分散して、補助部材に摩耗が生じるのをより確実に抑えることができる。
また、上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士を、上記ピン孔の中心線方向に見て相互に補完し合う凹凸円弧形状に形成することにより、固定部材から補助部材が受ける押し付け力を、この凹凸円弧の周方向に均一に分散させることができる。このため、凹凸形状の中でも部分的に押し付け力が集中する箇所が生じるのを防いで、一層確実に補助部材の摩耗を抑制することができる。
一方、特許文献1に記載された掘削工具では、装入部の内周面にリング状溝が形成されるとともに、補助部材にはフランジ状の爪部が形成され、この爪部をリング状溝に係合させるように弾性体よりなる補助部材を圧入することにより装入部に抜け止めして固定しているが、リング状溝が形成されることのない固定部材の側面と対向する部分では、補助部材は抜け止めされることはない。そこで、上記構成の掘削工具においては、上記固定部材の上記凹所に臨む側面に、上記補助部材を上記ピン孔の中心線方向に係止する、例えば上記リング状溝を延長した溝部のような固定部材側係止部を形成することにより、補助部材の抜け外れを確実に防止することができる。
従って、これらの構成は、上記工具本体が、軸線回りに回転されるデバイスであって、先端部の上記軸線から偏心した位置に上記取付孔部が開口するとともに、上記ピン孔は上記工具本体の外周面に開口しており、上記取付部材は、硬質チップが配設された掘削部が上記取付軸部の先端に設けられたビットヘッドであって、上記工具本体の回転に伴い上記掘削部の上記軸線からの半径が拡縮径するように上記取付軸部の中心線回りに回転する、上述した拡径ビットのような掘削工具に適用して、軸線方向先端側への打撃力による衝撃に起因して補助部材が摩耗するのを防ぐことができるので、より好適である。
以上説明したように、本発明によれば、長期の掘削作業でも補助部材の摩耗を抑えることができて固定部材と係止部との係止状態を維持することができ、安定した掘削を行うことが可能となる。
本発明の一実施形態を示す断面図である。 図1に示す実施形態を先端側から見た正面図である(ただし、ケーシングパイプおよびケーシングトップは図示が略されている。)。 図1におけるXX断面図である(ただし、ケーシングパイプおよびケーシングトップは図示が略されている。)。 図3におけるYY断面図である。 (a)図4におけるZ方向視の拡大平面図、(b)図4におけるピン孔の開口部周辺の拡大図である。 図1に示す実施形態における固定部材の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。 図1に示す実施形態における補助部材の(a)平面図、(b)側面図である。
図1ないし図7は、本発明の一実施形態を示すものであって、この実施形態は本発明を上述した拡径ビットに適用した場合のものである。本実施形態において、工具本体1は、このような拡径ビットのデバイスであって、軸線Oを中心とした外形略多段の円柱状をなしており、その後端部(図1における右側部分)は最も小径のシャンク部1Aとされている。
このような掘削工具は、上記シャンク部1Aに連結されたダウンザホールハンマHによって工具本体1に軸線O方向先端側への打撃力が与えられるとともに、このダウンザホールハンマHに図示されない掘削ロッドを介して連結された同じく図示されない掘削装置から工具回転方向Tへの軸線O回りの回転力と軸線O方向先端側への推力が与えられ、地盤(岩盤)等を掘削して掘削孔を形成する。
工具本体1のシャンク部1Aの先端側(図1において左側)には最も大径の段部1Bが形成されるとともに、この段部1Bよりも先端側で工具本体1は一定外径の円柱状に形成されている。また、工具本体1の外周には、段部1Bよりも僅かに大きな内径を有するケーシングパイプPが配設されるとともに、このケーシングパイプPの先端には、段部1Bより先端側の工具本体1の外径よりも僅かに大きな内径のケーシングトップQが取り付けられており、このケーシングトップQの後端に段部1Bが当接して軸線O方向先端側への推力と打撃力が伝えられることにより、掘削工具によって形成された掘削孔にケーシングパイプPが挿入されてゆく。
工具本体1の先端部には、上述のようにケーシングトップQの後端に段部1Bが当接した状態で、このケーシングトップQよりも先端側に位置するように、該工具本体1の先端面と外周面とに開口する凹部2が形成されている。凹部2は、工具本体1の先端側を向く軸線Oに垂直な底面2Aと、この底面2Aから工具本体1の先端面にかけて軸線Oに平行に延びる工具回転方向Tを向く平坦な壁面2Bと工具本体1の外周側を向く平坦な壁面2Cとを有し、これらの壁面2B、2Cが交差する隅角部2Dは、軸線Oに平行な中心線を有する凹円筒面状に形成されている。本実施形態では、このような凹部2が軸線Oに関して180°回転対称に2つ形成されている。
さらに、これらの凹部2の底面2Aから後端側に向けては、本実施形態における取付孔部3が形成されている。取付孔部3は、軸線Oに平行で軸線Oから外周側に偏心した孔部中心線L1を中心とした一定内径の断面円形に形成されており、この孔部中心線L1は、凹部2の上記隅角部2Dがなす凹円筒面の中心線と同軸に配置されるとともに、取付孔部3の内径(直径)は、この隅角部2Dがなす凹円筒面の直径よりも僅かに小さい。
このような取付孔部3に取付軸部4が挿入されて工具本体1に着脱可能に装着される取付部材5は、本実施形態では拡径ビットのビットヘッドであり、上記取付軸部4の先端に掘削部6が一体に形成されて構成されている。この掘削部6の先端面と、工具本体1の凹部2の間の先端面には、鋼材等からなる工具本体1や取付部材5よりも高硬度の超硬合金等からなる硬質チップ7が埋め込まれて多数配設されており、これらの硬質チップ7により地盤が破砕されて掘削が行われる。
取付軸部4は、軸部中心線L2を中心とした円柱軸状であって、その外径が取付孔部3の内径よりも僅かに小さくなるように形成されるとともに、その長さは取付孔部3の深さと略等しくなるように形成されている。従って、この取付軸部4は取付孔部3に摺動可能に嵌め込まれて軸部中心線L2が孔部中心線L1と同軸に挿入され、その後端面が取付孔部3の底面に当接したところで、掘削部6の後端面が凹部2の底面2Aに当接することになり、こうして取付軸部4を取付孔部3に挿入した挿入状態で取付部材5は孔部中心線L1回りに回転自在とされる。
また、掘削部6は、図2に示すように先端視において、凹部2の壁面2B、2Cがなす角度よりも小さな角度で取付軸部4側に向かうに従い互いに近づく2つの平坦な側面と、これらの側面の間に取付軸部4側と取付軸部4の反対側で延びる2つの凸円筒面状の側面とを備えており、これらの側面は軸部中心線L2と平行、すなわち上記挿入状態において孔部中心線L1および工具本体1の軸線Oと平行となるように形成されている。このうち取付軸部4側の凸円筒面状の側面は軸部中心線L2を中心とした円筒面とされ、その半径は凹部2の隅角部2Dがなす凹円筒面の半径よりも僅かに小さく、上記挿入状態で隅角部2Dに摺接可能とされている。
従って、この挿入状態において掘削時に工具本体1が工具回転方向Tに回転したときには、地盤からの抵抗によって取付部材5は孔部中心線L1回りに工具回転方向Tの反対側に回転して軸線Oからの半径が拡径し、図2に示したようにこの工具回転方向Tの反対側に向けられた掘削部6の平坦な側面が凹部2の工具回転方向Tを向く壁面2Bに当接したところで位置決めされる。このとき、掘削部6の取付軸部4とは反対側の凸円筒面状の側面は、工具本体1の軸線Oを中心としたケーシングパイプPよりも外径の大きい円筒面上に位置し、その先端側に配設された硬質チップ7によってケーシングパイプPを挿入可能な掘削孔を形成する。
また、掘削終了後に工具本体1を掘削時の工具回転方向Tの反対側に回転させると、やはり地盤からの抵抗によって取付部材5は孔部中心線L1回りに工具回転方向T側に回転して軸線Oからの半径が縮径し、工具本体1の内周側に向けられた掘削部6の平坦な側面が凹部2の工具本体1外周側を向く壁面2Cに当接したところで位置決めされる。このとき、掘削部6は、工具本体1の段部1Bよりも先端側の部分がなす円柱の外径と等しい外径の円筒面内に納められ、上記ダウンザホールハンマHおよび掘削ロッドとともに取付部材5ごと工具本体1を軸線O方向後端側に後退させてケーシングパイプP内から引き抜くことが可能となる。
さらに、このような取付部材5の取付軸部4の外周面には、この軸部中心線L2に直交する仮想平面、すなわち上記挿入状態における孔部中心線L1に直交する仮想平面Aに沿って凹溝4Aが形成されている。この凹溝4Aは、軸部中心線L2方向から見て掘削部6の取付軸部4側の凸円筒面状の側面側に形成されて、本実施形態では図3に示すように仮想平面Aに沿った断面がL字状に形成されており、ただしこのL字の折れ曲がる部分は、その両側の直線状に延びる部分に接する軸部中心線L2を中心とした凸円弧状に形成されている。また、凹溝4Aは、軸部中心線L2に沿った断面では、図1に示したように該軸部中心線L2方向に延びる半割長円状に形成されている。
一方、工具本体1には、同じく上記挿入状態における孔部中心線L1に直交する仮想平面Aに沿ってピン孔8が形成されている。このピン孔8は、本実施形態では断面円形のものであって、180°回転対称形成された2つの取付孔部3の内周面に工具回転方向Tの反対側から接して軸線Oに直交する接線をピン孔中心線Cとし、工具本体1の外面である外周面の両側に開口するように該工具本体1を貫通している。従って、このピン孔8は、ピン孔中心線Cが取付孔部3の内周面に接する部分で、この取付孔部3の内周面に部分的に開口することになる。
また、ピン孔8の半径は、2つの取付孔部3の内周面に接する部分では、取付軸部4の外周面から凹溝4Aの溝底までの深さと略等しくされている。ただし、このピン孔8の工具本体1外周面への一方の開口部(図3における左下側の開口部。図4においては下側の開口部)では半径が一段小径とされるとともに、他方の開口部(図3における右上側の開口部。図4においては上側の開口部)は後述する係止部を除いてそのままの半径で工具本体1の外周面に開口している。そして、このピン孔8には、ピン孔8の他方の開口部の内径よりも僅かに小さな外径の円柱軸状の係止ピン9が挿入されて、取付孔部3に挿入された取付部材5の取付軸部4の凹溝4Aに係止されるとともに、一段小径とされた上記一方の開口部側に形成される段部に一方の端面が当接させられている。
さらに、ピン孔8の一段大径とされた他方の開口部には、係止ピン9の他方の端面に当接して一方の開口部との間で該係止ピン9をピン孔中心線C方向に係止する固定部材10が取り付けられるとともに、この固定部材10自体をピン孔中心線C方向に係止する係止部11が形成されている。さらにまた、このピン孔8の他方の開口部に隣接する工具本体1の外周面には、該ピン孔8の他方の開口部に連通する凹所12が形成されており、この凹所12には、固定部材10と係止部11との係止状態を維持する補助部材13が配設されている。
ここで、凹所12は、本実施形態では図1に示したようにピン孔8の他方の開口部の軸線O方向後端側に連通するように形成されており、この他方の開口部がなす円の直径と等しい幅で後端側に延びる延出部12Aと、この延出部12Aの後端側においてピン孔中心線Cから軸線O方向後端側に延びる直線上に中心を有するピン孔8よりも大径の円形部12Bとを備えている。この円形部12Bの中心とピン孔中心線Cとの間隔は、円形部12Bの半径とピン孔8の半径との和よりも僅かに大きく設定されている。
また、これらピン孔8と凹所12の内周部には、工具本体1の外周面との間に僅かな間隔をあけて溝が形成されており、このうちピン孔8の内周部に形成された溝が本実施形態における上記係止部11とされている。さらに、凹所12のうち円形部12Bの内周に形成された溝は本実施形態では凹所側係止部12Cとされるとともに、延出部12Aに形成された溝は本実施形態におけるスライド溝12Dとされる。
これら係止部11、凹所側係止部12C、およびスライド溝12Dは、ピン孔中心線Cに直交する1つの仮想平面に沿うように形成されていて、すなわちピン孔中心線C方向を向いて互いに対向する2つの溝壁面は、それぞれ係止部11、凹所側係止部12C、およびスライド溝12D同士で面一に形成されている。また、これら2つの溝壁面はピン孔中心線Cに垂直に形成されるとともに、これらの溝壁面の間のピン孔8と凹所12の内側を向く溝底面は、溝壁面に垂直すなわちピン孔中心線Cに平行に形成されていて、係止部11、凹所側係止部12C、およびスライド溝12Dはピン孔中心線Cに沿った断面が矩形状に形成されている。
なお、これら係止部11、凹所側係止部12C、およびスライド溝12Dがなす溝の溝深さ、すなわちピン孔8と凹所12の延出部12Aおよび円形部12Bの内周から上記溝底面までの深さは、係止部11とスライド溝12Dとで互いに等しい一定の深さとなるように形成されているのに対し、凹所側係止部12Cでは、これら係止部11とスライド溝12Dの溝深さよりも浅い一定の溝深さとなるように形成されている。
このうち、係止部11に係止される上記固定部材10は、工具本体1等と同じく鋼材等の剛性体により、図6に示すように平面視に概略長円形の板状に形成されており、ただしこの長円形の2つの半円のうち一方の半円の突端部は凹円弧状に切り欠かれている。すなわち、固定部材10は、平面視の基本形状が2つの半円の直線部分を長方形で繋いだ形状に形成されており、ただしこのうち一方の半円(図6(a)における右側の半円)の突端部(2つの半円の中心を結ぶ長円の長軸が一方の半円の円周に交差する部分)が凹円弧状に凹んだ形状に形成されている。
また、固定部材10には、その側面の底面(図6(b)における左側の面。図6(c)においては下側の面)側に、フランジ部10Aが形成されている。このフランジ部10Aは、その固定部材10の上記底面からの厚さが係止部11およびスライド溝12Dがなす溝の上記2つの溝壁面の間の溝幅よりも僅かに小さく、上記側面から係止部11とスライド溝12Dの上記溝深さと等しい一定の突出量の断面矩形状に形成されており、固定部材10が平面視になす長円形の2つの半円のうち他方の半円(図6(a)における左側の半円)の全周から上記長方形で繋いだ部分に亙って延び、上記一方の半円に達するところまでに形成されている。
さらに、このフランジ部10Aよりも上面(図6(b)における右側の面。図6(c)においては上側の面)側において固定部材10は、上記他方の半円の半径がピン孔8の半径よりも僅かに小さくなるように形成されるとともに、上記一方の半円の半径は凹所12の円形部12Bの半径よりも僅かに小さくなるように形成され、この一方の半円を切り欠く上記凹円弧の半径は円形部12Bの半径と等しく形成されている。また、フランジ部10Aを含めた固定部材が10がなす上記長軸方向の長さは凹所12の円形部12Bの直径よりも僅かに小さく設定されている。
さらにまた、固定部材10の上記一方の半円の凹円弧状に切り欠かれた部分の底面側には、固定部材側係止部10Bが形成されている。この固定部材側係止部10Bは、固定部材10の上記凹円弧状に切り欠かれた部分を、この凹円弧に沿うように固定部材10の底面から断面L字状に切り欠いた凹溝であり、固定部材10の底面からの幅と固定部材10のは上記凹円弧状に切り欠かれた部分からの溝深さは、凹所側係止部12Cの幅と溝深さに等しくなるように形成されている。
従って、このように形成された固定部材10は、その底面を工具本体1の内周側に向けるとともに上記他方の半円をピン孔8側に向けて凹所12に挿入することができ、フランジ部10Aがピン孔中心線C方向に係止部11およびスライド溝12Dと一致したところで、スライド溝12Dに沿って軸線O方向先端側にスライドさせることにより、フランジ部10Aを係止部11およびスライド溝12Dとピン孔中心線C方向に係止させてピン孔8の開口部に取り付けることができる。そして、このとき固定部材10の一方の半円を切り欠いた凹円弧部分および固定部材側係止部10Bは凹所12側に臨むように向けられ、凹所12の円形部12Bおよび凹所側係止部12Cと同軸に配置される。
このように形成された凹所12に配設される補助部材13は、本実施形態においてもウレタンゴム等の合成ゴムのような弾性体により、図7に示すように円板状に形成されている。補助部材13の底面側(図7(b)において下側)には、上面側(図7(b)において上側)よりも直径が僅かに大きなフランジ部13Aが形成されていて、このフランジ部13Aの直径は上面側で凹所側係止部12Cの内径と略等しく、底面側に向かうに従い漸次小さくなるように形成されるとともに、このフランジ部13Aよりも上面側の補助部材13の側面の直径は凹所12の円形部12Bの内径と略等しくされており、従ってこの補助部材13の側面およびフランジ部13Aと固定部材10の凹円弧状に切り欠かれた側面および固定部材側係止部10Bとは、ピン孔中心線C方向に見て相互に補完し合う凹凸形状で線接触しており、特に本実施形態では相互に補完し合う凹凸円弧形状で線接触するように形成される。
なお、工具本体1の段部1Bから先端側の外周部には、掘削時に発生する掘削屑を排出するための2つの排出溝14が、2つの凹部2の底面2Aにおいて取付孔部3の工具回転方向T側に開口するように形成されており、その開口部において底面2Aは図1に示すように外周側に向かうに従い軸線O方向後端側に向かうように傾斜している。また、工具本体1内には、上記掘削機械側から送られる圧縮空気等の流体を供給する供給孔15が図1に示すように軸線Oに沿って延びており、この供給孔15は工具本体1の先端部で分岐して凹部2の底面2Aの傾斜した部分に開口するとともに、取付孔部3の底面にも開口している。
このような掘削工具では、ビットヘッドである取付部材5の取付軸部4をデバイスである工具本体1の取付孔部3に挿入して掘削部6を凹部2に収容し、ピン孔8に係止ピン9を挿入して取付軸部4の凹溝4Aに係止することにより、取付部材5が抜け止めされる。さらに、上述のように凹所12に挿入した固定部材10をスライドさせてピン孔8の開口部の係止部11に係止した後、凹所12に弾性体である補助部材13を弾性変形させつつ押し込むことにより、フランジ部13Aが凹所側係止部12Cと固定部材側係止部10Bに入り込んだところで広がって密着するとともに、フランジ部13Aよりも上面側の補助部材13の側面が凹所12の内周と固定部材10の凹円弧状部分に接触して固定部材10が抜け止めされる。
こうして構成された掘削工具は、取付部材5の掘削部6が縮径した状態でケーシングパイプP内に挿入され、工具本体1の段部1BがケーシングトップQに当接した状態で、上述のように軸線O回りの回転力が与えられることにより掘削部6が拡径し、さらに軸線O方向先端側への推力および打撃力が与えられることにより掘削孔を形成するとともに、この掘削孔にケーシングパイプPを挿入してゆく。また、所定の深さまで掘削孔が形成されてケーシングパイプPが挿入されたなら、上述のように工具本体1を工具回転方向Tの反対側に回転させることにより掘削部を縮径し、ケーシングパイプPから引き抜いて回収することができる。
そして、上記構成の掘削工具では、補助部材13と固定部材10の円弧状に切り欠かれた部分との互いに接触する側面同士が、上述のようにピン孔中心線C方向に見て線接触しているので、掘削時の打撃力等による衝撃によって固定部材10がスライド溝12D内を後端側に移動しようとしたときに補助部材13が受ける押し付け力を、これらの線接触する側面で分散させることができる。従って、このような押し付け力によって弾性体よりなる軟質な補助部材13が摩耗するのを抑制することができる。
このため、補助部材13の摩耗によって固定部材10との間に隙間が生じるのを長期に亙って抑えることができ、このような隙間が固定部材10の移動によって一気に広がるのを防いで固定部材10の係止部11への係止状態を確実に維持し、安定した掘削を行うことが可能となる。また、固定部材10と補助部材13との接触した側面以外の部分の隙間を小さくすることもできるので、このような隙間に細かい砂等が入り込んで補助部材13に摩耗が生じるのも抑制することができる。
さらに、本実施形態では、こうして接触する固定部材10と補助部材13の側面が、ピン孔中心線C方向に見て相互に補完し合う凹凸形状に形成されているので、これらの側面同士が接触する接触長さを長くすることができて、単位接触長さ当たりの押し付け力をより小さく分散し、確実に補助部材13の摩耗を抑制することができる。しかも、本実施形態では、この凹凸形状が凹凸円弧形状に形成されているので、例えばこれらの側面が角部を有して接触している場合などに比べ、固定部材10による補助部材13への上記押し付け力を凹凸円弧の周方向に亙って均一に分散させることができ、こうして接触した凹凸形状においても押し付け力が部分的に集中するのを防いで、一層確実に補助部材13の摩耗を抑えることが可能となる。
また、本実施形態では、凹所12の内周部に溝状の凹所側係止部12Cが形成されるとともに、固定部材10の補助部材13と接触する凹円弧状に切り欠かれた側面には、固定部材10を係止部11に係止した状態で凹所側係止部12Cと同軸となる溝状の固定部材側係止部10Bが形成されている。そして、補助部材13は、凹所12に押し込まれることによりフランジ部13Aがこれら凹所側係止部12Cと固定部材側係止部10Bに入り込んで係止されるので、補助部材13の抜け外れを確実に防いで凹所12に保持することが可能となる。
さらに、本実施形態では、固定部材10が長円形の板状に形成されていて、この長円の2つの半円を繋ぐ長方形状部分が、固定部材10を係止部11に係止したときに、ピン孔8の他方の開口部から延びる凹所12の延出部12Aに配設されることにより、固定部材10はピン孔中心線C回りの回転が拘束されて上記開口部に取り付けられる。このため、掘削時の衝撃や振動などにより固定部材10がピン孔中心線C回りに回転してしまって補助部材13を摩耗させるような事態も防ぐことができるので、本実施形態によれば一層長期に亙って安定した掘削を行うことが可能となる。
従って、本実施形態の上記構成は、このように掘削時に工具本体1に打撃力が与えられて衝撃が生じる、工具本体1が軸線O回りに回転されるデバイスであって、その先端部の軸線Oから偏心した位置に上記取付孔部3が開口するとともに、ピン孔8は工具本体1の外周面に開口しており、上記取付部材5は、硬質チップ7が配設された掘削部6が取付軸部4の先端に設けられたビットヘッドであって、工具本体1の回転に伴い掘削部6の軸線Oからの半径が拡縮径するように軸部中心線L2回りに回転する拡径ビットのような掘削工具に適用して効果的である。
なお、本実施形態では、固定部材10の側面に凹形状(凹円弧形状)となる部分が形成されるとともに、補助部材13の側面にはこの凹形状に合致する凸形状(凸円弧形状)となる部分が形成されているが、凹凸は逆であってもよい。ただし、弾性体よりなる補助部材13の大きさを確保することを考慮すると、本実施形態のように補助部材13側を凸形状とするのが望ましい。また、補助部材13と固定部材10との互いに接触する側面同士はピン孔中心線C方向に見て線接触していればよく、例えば上記実施形態においてピン孔中心線C方向に見た固定部材10の側面が凹形状となる部分の両端を結んだ一直線で補助部材13と固定部材10とが線接触していてもよい。
1 工具本体
2 凹部
3 取付孔部
4 取付軸部
4A 凹溝
5 取付部材
6 掘削部
7 硬質チップ
8 ピン孔
9 係止ピン
10 固定部材
10A 固定部材10のフランジ部
10B 固定部材側係止部
11 係止部
12 凹所
12C 凹所側係止部
13 補助部材
13A 補助部材13のフランジ部
O 工具本体1の軸線
T 工具回転方向
A 凹溝4Aおよびピン孔8が形成される仮想平面
L1 孔部中心線(取付孔部3の中心線)
L2 軸部中心線(取付軸部4の中心線)
C ピン孔中心線(ピン孔8の中心線)

Claims (5)

  1. 取付孔部を備えた工具本体と、上記取付孔部に挿入される取付軸部を備えて上記工具本体に着脱可能に装着される取付部材とを有する掘削工具であって、
    上記取付軸部の外周面には、該取付軸部の中心線に直交する仮想平面に沿って凹溝が形成されるとともに、
    上記工具本体には、上記取付孔部に挿入された上記取付軸部の上記仮想平面に沿って該工具本体の外面から延びて部分的に上記取付孔部の内周面に開口するピン孔が形成され、
    このピン孔には係止ピンが挿入されて、上記取付孔部に挿入された上記取付軸部の上記凹溝に係止させられており、
    上記工具本体の外面における上記ピン孔の開口部には、上記係止ピンに当接して該係止ピンを抜け止めする固定部材が取り付けられるとともに、この固定部材を上記ピン孔の中心線方向に係止する係止部が形成され、
    上記固定部材は、平面視の基本形状が2つの半円を長方形で繋いだ長円形の板状に形成されており、上記ピン孔の中心線回りの回転が拘束されて該ピン孔の開口部に取り付けられ、
    上記ピン孔の開口部に隣接する上記工具本体の外面には、該ピン孔の開口部に連通する凹所が形成されていて、
    この凹所には、上記固定部材の該凹所に臨む側面に接触可能な側面を有して該固定部材と上記係止部との係止状態を維持する補助部材が配設され、
    上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士が、上記ピン孔の中心線方向に見て線接触していることを特徴とする掘削工具。
  2. 上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士が、上記ピン孔の中心線方向に見て相互に補完し合う凹凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
  3. 上記補助部材と上記固定部材との互いに接触する側面同士が、上記ピン孔の中心線方向に見て相互に補完し合う凹凸円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の掘削工具。
  4. 上記固定部材の上記凹所に臨む側面には、上記補助部材を上記ピン孔の中心線方向に係止する固定部材側係止部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の掘削工具。
  5. 上記工具本体は、軸線回りに回転されるデバイスであって、先端部の上記軸線から偏心した位置に上記取付孔部が開口するとともに、上記ピン孔は上記工具本体の外周面に開口しており、
    上記取付部材は、硬質チップが配設された掘削部が上記取付軸部の先端に設けられたビットヘッドであって、上記工具本体の回転に伴い上記掘削部の上記軸線からの半径が拡縮径するように上記取付軸部の中心線回りに回転することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の掘削工具。
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