JP6467931B2 - 蒸着パターン形成方法、有機半導体素子の製造方法、及び蒸着装置 - Google Patents

蒸着パターン形成方法、有機半導体素子の製造方法、及び蒸着装置 Download PDF

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本発明は、蒸着パターン形成方法、有機半導体素子の製造方法、及び蒸着装置に関する。
有機EL素子を用いた製品の大型化或いは基板サイズの大型化にともない、蒸着マスクに対しても大型化の要請が高まりつつある。そして、金属から構成される蒸着マスクの製造に用いられる金属板も大型化している。しかしながら、現在の金属加工技術では、大型の金属板に開口部を精度よく形成することは困難であり、開口部の高精細化への対応はできない。また、金属のみからなる蒸着マスクとした場合には、大型化に伴いその質量も増大し、フレームを含めた総質量も増大することから取り扱いに支障をきたすこととなる。
このような状況下、特許文献1には、スリットが設けられた金属マスクと、金属マスクの表面に位置し蒸着作製するパターンに対応した開口部が縦横に複数列配置された樹脂マスクとが積層されてなる蒸着マスクや、この蒸着マスクを用いた有機半導体素子の製造方法が提案されている。特許文献1に提案がされている蒸着マスクや、有機半導体素子の製造方法によれば、大型化した場合でも高精細化と軽量化の双方を満たすことができ、また、有機半導体素子を精度よく製造することができるとされている。
特許第5288073公報
本発明は、上記特許文献1に提案がされているような蒸着マスクを用いて、より高精細な蒸着パターンを形成することができる蒸着パターン形成方法、より高精細な有機半導体素子を製造することができる有機半導体素子の製造方法、及び蒸着パターン形成や、有機半導体素子の製造に好適に用いることができる蒸着装置を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着パターン形成方法であって、蒸着作製するパターンに対応する開口部が設けられた樹脂マスクの一方の面上に、前記開口部と重なり、且つその開口面積が前記開口部の開口面積よりも大きいスリットが設けられた金属マスクが積層されてなる蒸着マスクを加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記蒸着マスクと前記蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、前記樹脂マスクに設けられた開口部を通して前記蒸着対象物の被蒸着面に付着させ、前記蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着工程と、を含み、前記樹脂マスクがポリイミド樹脂を含有していることを特徴とする。
また、一実施形態の蒸着マスクは、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着パターン形成方法であって、蒸着作製するパターンに対応する開口部が設けられた樹脂マスクの一方の面上に、前記開口部と重なるスリットが設けられた金属マスクが積層されてなる蒸着マスクを加熱する加熱工程と、前記加熱工程後に、前記蒸着マスクと前記蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、前記樹脂マスクに設けられた開口部を通して前記蒸着対象物の被蒸着面に付着させ、前記蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着工程を含むことを特徴とする。
また、上記の加熱工程を減圧環境下で行ってもよく、前記蒸着対象物と重ね合わせる前記蒸着マスクが、フレームに固定されたフレーム付き蒸着マスクであってもよい。
また、上記課題を解決するための本発明は、有機半導体素子の製造方法であって、有機半導体素子を製造する工程において、上記の蒸着パターン形成方法が用いられることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明は、蒸着装置であって、蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせる重ね合わせ手段と、蒸着マスクを加熱する加熱室と、前記重ね合わせ手段により蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせたものに対し、蒸着源から放出された蒸着材を、前記蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで前記蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着室とを備えることを特徴とする。
また、上記加熱室が、当該加熱室内を減圧環境とするための減圧手段を備えていてもよい。
本発明の蒸着パターン形成方法によれば、蒸着対象物の被蒸着面に従来よりも高精細な蒸着パターンを形成することができる。また、本発明の有機半導体素子の製造方法によれば、従来よりも高精細な有機半導体素子を製造することができる。また、本発明の蒸着装置によれば、蒸着対象物の被蒸着面に従来よりも高精細な蒸着パターンを形成でき、また、従来よりも高精細な有機半導体素子を製造することができる。
一実施形態の蒸着パターン形成方法のフローチャートである。 一実施形態の蒸着マスクの形成方法に用いられる蒸着マスクであり、(a)は、金属マスク側から平面視したときの正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。 加熱温度(℃)と伸び率(%)との関係を示す図である。 実施形態(A)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 実施形態(A)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 実施形態(A)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 実施形態(A)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 実施形態(B)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 実施形態(B)の蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。 フレーム付き蒸着マスクの一例を示す正面図である。 フレーム付き蒸着マスクの一例を示す正面図である。 フレームの一例を示す正面図である。 蒸着装置の一例を示す概略図である。 蒸着装置の一例を示す概略図である。
<<蒸着パターン形成方法>>
以下、本発明の一実施形態の蒸着パターン形成方法(以下、一実施形態の蒸着パターン形成方法と言う)について具体的に説明する。図1、図2に示すように、一実施形態の蒸着パターン形成方法は、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成するための方法であって、蒸着作製するパターンに対応する開口部25が設けられた樹脂マスク20の一方の面上に、開口部20と重なるスリット15が設けられた金属マスク10が積層されてなる蒸着マスク100(図2参照)を加熱する加熱工程(S1)と、加熱工程後に、蒸着マスク100と蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、樹脂マスク20に設けられた開口部を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させて、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着工程(S2)を含むことを特徴とする。
図1は、一実施形態の蒸着パターン形成方法を示すフローチャートであり、図2(a)は、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着マスクを金属マスク側から平面視した平面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
一実施形態の蒸着パターン形成方法では、蒸着マスク100の樹脂マスク20と、蒸着対象物の被蒸着面とが接するように重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、樹脂マスク20の開口部25を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンが形成される。一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、蒸着対象物の被蒸着面に形成される蒸着パターンは、蒸着マスクの樹脂マスクに設けられている開口部の形状に対応するパターンとなることから、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成するためには、(i)樹脂マスクに設けられている開口部の寸法精度が高いこと(以下、課題(i)と言う場合がある)が重要である。
また、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成するためには、蒸着前後において、樹脂マスクに設けられている開口部の寸法や開口部の形成位置に変動が生じにくいこと(以下、課題(ii)と言う場合がある)も重要である。さらに、蒸着パターンの形成は、1つの蒸着マスクを繰り返し使用して行われることが一般的であり、繰り返し蒸着を行う都度、蒸着対象物に形成される蒸着パターンの寸法等に変動が生じないこと(以下、課題(iii)と言う場合がある)も重要である。例えば、蒸着マスクを用いた最初の蒸着時に蒸着対象物の被蒸着面に形成される蒸着パターンの寸法と、当該蒸着マスクを用いた次の蒸着時に蒸着対象物の被蒸着面に形成される蒸着パターンの寸法とで、寸法に違いが生じている場合には、最初の蒸着時、或いはこれ以降の蒸着時において、蒸着対象物の被蒸着面に形成された蒸着パターンは不良扱いとなり、歩留まり低下を引き起こすこととなる。
また、蒸着マスクの樹脂マスクにアライメントマーク等を形成し、当該アライメントマークを用いて蒸着マスクと蒸着対象物との位置合わせを行う場合には、蒸着前後や、繰り返しの蒸着時において、樹脂マスクに形成されているアライメントマークの寸法や形成位置に変動が生じていないことも重要である。
一実施形態の蒸着パターン形成方法で用いられる蒸着方法としては、例えば、反応性スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着法等の物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition)、熱CVD、プラズマCVD、光CVD法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposi
tion)等を挙げることができる。
上記一般的な蒸着方法では、蒸着マスクに一定の熱がかけられた状態で、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンの形成が行われる。また、通常、蒸着パターンの形成は、複数の蒸着対象物に対し、1つの蒸着マスクを用いて繰り返し行われる。したがって、上記課題(ii)、(iii)を満たすためには、蒸着前後において、樹脂マスクの温度に対する伸び率の変動量が小さいこと、また、繰り返し蒸着を行う際に、蒸着の都度、樹脂マスクの温度に対する伸び率に変動が生じない、或いは変動が小さいことが必要である。具体的には、最初の蒸着時から、最後の蒸着時まで、樹脂マスクの温度に対する伸び率が一定、或いは略一定となっていることが必要である。換言すれば、蒸着の都度、樹脂マスクの温度に対する伸び率にばらつきが生じないことが必要である。これは、蒸着を行う都度、樹脂マスクの温度に対する伸び率が変動していった場合には、繰り返しの蒸着時において、蒸着の都度、樹脂マスクに設けられている開口部やアライメントマーク等に寸法変動や位置ずれが生じてしまうことによる。
なお、一実施形態の蒸着パターン形成方法では、レーザー加工等によって精度よいパターン形成が可能な樹脂板に開口部25が形成されてなる樹脂マスク20を備える蒸着マスク100が用いられることから、上記課題(i)を解決できている。
図3は、ポリイミド樹脂製の樹脂板(厚み6μm)を、熱機械分析装置(TMA)を用いて引っ張り測定したときの、「温度(℃)」と、「伸び率(%)」との関係を示す図である。測定条件は、温度範囲:20℃〜300℃、昇温速度:約10℃/minとした。伸び率(%)は、ΔL/L×100(%)により算出した値である(Lは基準長さ、ΔLは伸び量を示す)。同図における「1サイクル目」は、上記測定条件における1回目(最初)の測定結果であり、「2サイクル目」は、「1サイクル目」の測定が終了した樹脂板を、再び、上記測定条件にて測定したときの2回目の測定結果である。「3サイクル目」は、「2サイクル目」の測定が終了した樹脂板を、再び、上記測定条件にて測定したときの3回目(最後)の測定結果である。
図3の結果をみると、樹脂板の温度に対する伸び率(%)(以下、線膨張率(ppm/℃)と言う)の変動量は、「1サイクル目」が極めて高く、「2サイクル目」以降は、樹脂板の線膨張率に変動がほとんど生じていないことがわかる。また、「2サイクル目」以降は、樹脂板の線膨張率の変動量が小さくなっていることがわかる。
図3の結果に照らすと、蒸着時における蒸着マスクの樹脂マスクが、上記「1サイクル目」の樹脂板に相当する場合、つまりは、当該蒸着マスクの樹脂マスクに、予め熱が加えられていない場合には、蒸着時において、蒸着マスクに所定の熱が加えられたときの樹脂マスクの線膨張率の変動量は大きくなり、これに伴い、樹脂マスクに設けられている開口部には、周囲の温度変化に伴い樹脂マスクの線膨張率の変動量の大きさに応じた寸法変動や位置ずれ等が生ずる。そして、蒸着時において、当該樹脂マスクに設けられている開口部に寸法変動や位置ずれ等が大きく生じた場合には、蒸着対象物に高精細な蒸着パターンを形成することが困難となる。
また、図3の結果に照らすと、蒸着マスクの樹脂マスクに、予め熱が加えられていない場合には、最初の蒸着時における蒸着マスクの樹脂マスクが、上記「1サイクル目」の樹脂板に相当し、次の蒸着時における蒸着マスクの樹脂マスクが、上記「2サイクル目」の樹脂板に相当することとなる。そうすると、最初の蒸着時と、次の蒸着時は、樹脂マスクの線膨張率の変動量が異なった状態で行われることとなり、最初の蒸着時において蒸着対象物に形成される蒸着パターンと、次の蒸着時において蒸着対象物に形成される蒸着パターンとでは寸法や位置に変動が生ずることとなる。
<加熱工程(S1)>
そこで、一実施形態の蒸着パターン形成方法では、蒸着マスク100と蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、樹脂マスク20に設けられた開口部を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させ、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前の段階で、蒸着作製するパターンに対応する開口部25が設けられた樹脂マスク20の一方の面上に、開口部20と重なるスリット15が設けられた金属マスク10が積層されてなる蒸着マスク100を加熱する加熱工程(S1)を含んでいる点を特徴としている。蒸着マスクを、予め加熱する加熱工程を含む一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する段階における蒸着マスク100の樹脂マスク20は、図3に示す「2サイクル目」以降の樹脂板に相当することとなり、蒸着時に、蒸着マスクに所定の熱が加えられたときの樹脂マスクの線膨張率の変動量を小さくすることができ、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成することができる。
また、図3に示すように、「2サイクル目」以降は、樹脂板の線膨張率の変動量はほぼ一定となることから、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前の段階で、蒸着マスク100を加熱する加熱工程を含む一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、複数の蒸着対象物に対し、繰り返しの蒸着を行う場合において、最初の蒸着時から最後の蒸着時まで、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンをばらつきなく形成することができる。
表1に、ポリイミド樹脂製の樹脂板(厚み6μm)の線膨張係数(以下、CTEと言う)の乖離率(%)を示す。CTEの測定は、以下のサンプル1〜6を準備し、各サンプルについて、算出温度範囲:20℃−300℃の条件で実施し、下式(1)により、CTEの乖離率を測定した。また、CTEの測定は大気中で行った。なお、CTEの乖離率の「絶対値」が小さいほど、温度依存による樹脂板の線膨張率の変動量は小さくなる。
サンプル1:予備加熱なし
サンプル2:予備加熱あり(最高温度50℃)
サンプル3:予備加熱あり(最高温度100℃)
サンプル4:予備加熱あり(最高温度150℃)
サンプル5:予備加熱あり(最高温度200℃)
サンプル6:予備加熱あり(最高温度300℃)
サンプル2〜6の予備加熱は、昇温速度10℃/minで最高温度まで昇温させ、最高温度で5分保持し、その後20℃まで戻した。CTEの測定には、TMA EXSTAR6000(セイコーインスツル(株)製)を用いた。
CTEの乖離率=(昇温時のCTE−降温時のCTE)/(降温時のCTE)×100(%)・・・式(1)
昇温時のCTEは昇温時(20℃→300℃)で算出し、降温時のCTEは降温時(300℃→20℃)で算出した。
Figure 0006467931
表1の結果より、樹脂板に対し、予備加熱を行ったサンプル(サンプル2〜6)は、予備加熱を行わないサンプル(サンプル1)と比較して、CTEの乖離率の「絶対値」が小さくなっていることがわかる。特に、予備加熱の最高温度を100℃以上としたサンプル(サンプル3〜6)では、サンプル2と比較して、大幅にCTEの乖離率の「絶対値」が小さくなっていることがわかる。
予備加熱を行うことで、当該予備加熱された樹脂板のCTEの乖離率の「絶対値」が小さくなるメカニズムは現在のところ必ずしも明らかではないが、CTEの乖離率の「絶対値」は、樹脂板が含有している水分量、換言すれば、樹脂板の含水率と密接的な関係を有しているものと推察され、具体的には、樹脂板が含有している水分量が少ないほど、CTEの乖離率の「絶対値」は小さくなるものと推察される。さらには、予備加熱温度を高くすることで、樹脂板が含有している水分の除去率を高めることができ、予備加熱温度が高いほど、CTEの乖離率の「絶対値」は小さくなるものと推察される。
例えば、予備加熱後のサンプル2の樹脂板が含有している水分量と、予備加熱を行っていないサンプル1の樹脂板が含有している水分量とを比較すると、予備加熱を行っているサンプル2の樹脂板の方が、サンプル1の樹脂板よりも、樹脂板が含有している水分量は少なくなる。これにより、サンプル2の樹脂板は、サンプル1の樹脂板と比較して、CTEの乖離率の「絶対値」は小さくなっているものと推察される。
また、予備加熱後のサンプル2の樹脂板が含有している水分量と、予備加熱後のサンプル3の樹脂板が含有している水分量とを比較すると、予備加熱温度が高いサンプル3の方が、樹脂板が含有している水分の除去率は高く、結果、樹脂板が含有している水分量は少なくなる。これにより、サンプル3の樹脂板は、サンプル2の樹脂板と比較して、CTEの乖離率の「絶対値」は小さくなっているものと推察される。
特に、水の沸点である100℃以上の温度で樹脂板の予備加熱を行っているサンプル3〜サンプル6においては、水分の除去率を極めて高くすることができ、その結果、CTEの乖離率の「絶対値」が大幅に小さくなっているものと推察される。
なお、上記メカニズムによらないとしても、加熱工程において、蒸着マスクを予め加熱しておくことにより、最初の蒸着時における樹脂マスクの線膨張率の変動量を小さくでき、また、最初の蒸着時から最後の蒸着時に至るまで、樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制できることは、図3、及び表1の結果からも明らかとなっている。
なお、上記の結果を考慮すると、加熱工程における蒸着マスク100の加熱温度は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。特に、100℃以上の温度で蒸着マスク100を加熱することで、短時間で樹脂マスクが含有している水分の除去を十分に行うことができる。換言すれば、加熱温度を100℃以上とすることで蒸着マスクの樹脂マスクが含有している水分の除去率を向上させることができる。つまり、加熱温度を100℃以上とした場合には、短時間で、CTEの乖離率を極めて小さくすることができ、蒸着時において、樹脂マスク20に設けられている開口部25に生じ得る寸法変動や位置ずれをより効果的に抑制することができる。また、短時間で、蒸着マスクを用いた最初の蒸着時から最後の蒸着時に至るまで、樹脂マスク20の線膨張率の変動量のばらつきを十分に抑制することができる。
なお、このことは、加熱工程における蒸着マスクの加熱温度を限定するものではなく、蒸着マスクの加熱温度にかかわらず、蒸着マスクを予め加熱する加熱工程を含む一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、蒸着マスクの樹脂マスクが含有している水分量を少なくすることができ、蒸着マスクを予め加熱しない場合と比較して、最初の蒸着時における樹脂マスクの線膨張率の変動量を小さくすることができ、また、樹脂マスク20の線膨張率の変動量のばらつきを小さくすることができる。
また、加熱温度にかかわらず、例えば、100℃未満の加熱温度で加熱を行う場合であっても、加熱時間を適宜調整することで、蒸着マスクの樹脂マスクが含有している水分量を十分に少なくすることができる。加熱温度の下限値としては、一般的に常温と称される25℃である。
また、後述するように、加熱工程を減圧環境下で行うことで、100℃未満の温度であっても、比較的短時間の加熱で、蒸着マスクの樹脂マスクが含有している水分を十分に除去することができ、最初の蒸着時における樹脂マスクの線膨張率の変動量を十分に小さくでき、また、蒸着を行う都度、樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを十分に抑制することができる。
また、蒸着マスク100の樹脂マスク20は、後述するように樹脂材料から構成され、金属材料と比較して、その吸湿率は高い。つまり、蒸着前の段階において、蒸着マスク100の樹脂マスク20は多くの水分を含有している状態にある。樹脂マスク20が多くの水分を含有している状態で、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンの形成を行った場合には、蒸着時に蒸着マスク100にかかる熱によって、樹脂マスク20から水分が放出され、当該放出された水分が、蒸着対象物の被蒸着面に形成される蒸着パターンの特性劣化を引き起こす等の問題が生じやすくなる。
一実施形態の蒸着パターンの形成方法では、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前の段階で、当該蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクに対し、予め加熱を行うことで、蒸着マスク100の樹脂マスク20が含有している水分を除去している。したがって、加熱を行わない場合と比較して、蒸着時に、樹脂マスク20から水分が放出されることによる各種の問題の発生を抑制することができる。
上記好ましい形態では、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前の段階で、蒸着マスク100を50℃以上で加熱して、特に好ましくは100℃以上で加熱して、蒸着マスク100の樹脂マスク20が含有している水分を十分に除去しているが、この方法にかえて、減圧環境下で加熱工程を行い、蒸着マスク100の樹脂マスク20が含有している水分を十分に除去することもできる。具体的には、減圧環境下で蒸着マスク100を加熱することで、標準気圧(大気中)で加熱を行った場合と比較して、短い加熱時間でCTEの乖離率の「絶対値」を小さくすることができる。
なお、本願明細書で言う減圧環境について特に限定はなく、標準気圧(1atm(1.01325×105Pa))未満の環境を適宜選択すればよい。好ましい減圧環境は、100Pa以下であり、より好ましくは、1Pa以下である。
上記の加熱温度まで到達させるときの昇温速度についていかなる限定もされることはなく、一例としては、10℃/min程度である。また、加熱温度に到達したときの保持時間についても限定はなく、一例としては5min程度である。
加熱温度の上限値については、樹脂板30の材料の融点などを考慮して適宜設定すればよく特に限定はない。一例としての上限値は300℃である。
加熱工程は、蒸着装置を用いて、後述する蒸着工程とともにインラインで行ってもよく、蒸着装置外で、加熱工程を行った後に、蒸着装置を用いて蒸着工程を行ってもよい。蒸着装置については後述する。蒸着装置外で加熱工程を行う場合における加熱手段について特に限定はなく、たとえば、ホットプレート、オーブン、減圧オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等を挙げることができる。
蒸着マスク100を加熱する加熱工程は、蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせる前に行ってもよく、蒸着マスク100と蒸着対象物とを重ね合わせた後に行ってもよい。つまりは、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前であればいずれの段階で蒸着マスク100を加熱してもよい。
以下、一実施形態の蒸着パターン形成方法で用いられる蒸着マスクについて一例を挙げて説明する。
(一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着マスク)
図2に示すように、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着マスク100(以下、一実施形態の蒸着マスクと言う)は、蒸着作製するパターンに対応する開口部25が設けられた樹脂マスク20の一方の面上に、開口部20と重なるスリット15が設けられた金属マスク10が積層された構成をとる。
(樹脂マスク)
図2に示すように、樹脂マスク20には、複数の開口部25が設けられている。複数の開口部25は、金属マスク10と樹脂マスク20を積層したときに、金属マスク10のスリット15と重なる位置に設けられている。
樹脂マスク20の材料について限定はなく、例えば、レーザー加工等によって高精細な開口部25の形成が可能であり、熱や経時での寸法変化率や吸湿率が小さく、軽量な材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セロファン、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。上記に例示した材料の中でも、熱膨張係数が16ppm/℃以下である樹脂材料が好ましく、吸湿率が1.0%以下である樹脂材料が好ましく、この双方の条件を備える樹脂材料が特に好ましい。この樹脂材料を用いた樹脂マスクとすることで、開口部25の寸法精度を向上させることができ、かつ熱や経時での寸法変化率や吸湿率を小さくすることができる。上記に例示した樹脂マスクの材料の中で、特に好ましい材料はポリイミド樹脂である。
樹脂マスク20の厚みについても特に限定はないが、蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、シャドウの発生の抑制効果をさらに向上せしめる場合には、樹脂マスク20の厚みは、10μm未満であることが好ましい。下限値の好ましい範囲について特に限定はないが、樹脂マスク20の厚みが3μm未満である場合には、ピンホール等の欠陥が生じやすく、また変形等のリスクが高まる。特に、樹脂マスク20の厚みを、3μm以上10μm未満、より好ましくは4μm以上8μm以下とすることで、400ppiを超える高精細パターンを形成する際のシャドウの影響をより効果的に防止することができる。また、樹脂マスク20と後述する金属マスク10とは、直接的に接合されていてもよく、粘着剤層を介して接合されていてもよいが、粘着剤層を介して樹脂マスク20と金属マスク10とが接合される場合には、樹脂マスク20と粘着剤層との合計の厚みが上記好ましい厚みの範囲内であることが好ましい。なお、シャドウとは、蒸着源から放出された蒸着材の一部が、金属マスクのスリットや、樹脂マスクの開口部の内壁面に衝突して蒸着対象物へ到達しないことにより、目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる未蒸着部分が生ずる現象のことをいう。
また、各図に示す形態では、開口部25を平面視したときの開口形状は、矩形状を呈しているが、開口形状について特に限定はなく、開口部25の開口形状は、台形状、円形状等いかなる形状であってもよい。金属マスク20のスリット15を平面視したときの形状についても同様である。
開口部25を形成する樹脂マスクの向かいあう端面同士が略平行であってもよいが、図2(b)に示すように開口部25はその断面形状が、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。換言すれば、樹脂マスク20の面において、金属マスク10と接しない側の面から、金属マスク10と接する側の面に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。具体的には、樹脂マスクの開口部における下底先端と、同じく樹脂マスクの開口部における上底先端を結んだ直線と蒸着マスクの底面とのなす角度、換言すれば、樹脂マスク20の開口部25を構成する内壁面の厚み方向断面において、開口部25の内壁面と、樹脂マスク20の金属マスク10と接しない側の面(図示する形態では、樹脂マスクの下面)とのなす角度は、5°〜85°の範囲内であることが好ましく、15°〜80°の範囲内であることがより好ましく、25°〜65°の範囲内であることがさらに好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着装置の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。また、図示する形態では、開口部25を形成する端面は直線形状を呈しているが、これに限定されることはなく、外に凸の湾曲形状となっている、つまり開口部25の全体の形状がお椀形状となっていてもよい。
(金属マスク)
図2に示すように、樹脂マスク20の一方の面上には、金属マスク10が積層されている。金属マスク10は、金属から構成され、縦方向或いは横方向に延びるスリット15が配置されている。スリット15は開口と同義である。スリットの配置例について特に限定はなく、縦方向、及び横方向に延びるスリットが、縦方向、及び横方向に複数列配置されていてもよく、縦方向に延びるスリットが、横方向に複数列配置されていてもよく、横方向に延びるスリットが縦方向に複数列配置されていてもよい。また、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されていてもよい。なお、本願明細書で言う「縦方向」、「横方向」とは、図面の上下方向、左右方向をさし、蒸着マスク、樹脂マスク、金属マスクの長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。例えば、蒸着マスク、樹脂マスク、金属マスクの長手方向を「縦方向」としてもよく、幅方向を「縦方向」としてもよい。また、本願明細書では、蒸着マスクを平面視したときの形状が矩形状である場合を例に挙げて説明しているが、これ以外の形状、例えば、円形状、ひし形形状等としてもよい。この場合、対角線の長手方向や、径方向、或いは、任意の方向を「長手方向」とし、この「長手方向」に直交する方向を、「幅方向(短手方向と言う場合もある)」とすればよい。
金属マスク10の材料について特に限定はなく、蒸着マスクの分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、アルミニウム合金などの金属材料を挙げることができる。中でも、鉄ニッケル合金であるインバー材は熱による変形が少ないので好適に用いることができる。
また、一実施形態の蒸着マスク100を用いて、蒸着対象物の被蒸着面へ蒸着を行うにあたり、蒸着対象物の後方に磁石等を配置して、蒸着対象物の前方の蒸着マスク100を磁力によって引きつけることが必要な場合には、金属マスク10を磁性体で形成することが好ましい。磁性体の金属マスク10としては、鉄ニッケル合金、純鉄、炭素鋼、タングステン(W)鋼、クロム(Cr)鋼、コバルト(Co)鋼、コバルト・タングステン・クロム・炭素を含む鉄の合金であるKS鋼、鉄・ニッケル・アルミニウムを主成分とするMK鋼、MK鋼にコバルト・チタンを加えたNKS鋼、Cu−Ni−Co鋼、アルミニウム(Al)−鉄(Fe)合金等を挙げることができる。また、金属マスク10を形成する材料そのものが磁性体でない場合には、当該材料に上記磁性体の粉末を分散させることにより金属マスク10に磁性を付与してもよい。
金属マスク10の厚みについても特に限定はないが、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが特に好ましい。なお、5μmより薄くした場合、破断や変形のリスクが高まるとともにハンドリングが困難となる傾向にある。
また、図2(a)に示す形態では、スリット15の開口を平面視したときの形状は、矩形状を呈しているが、開口形状について特に限定はなく、スリット15の開口形状は、台形状、円形状等いかなる形状であってもよい。
金属マスク10に形成されるスリット15の断面形状についても特に限定されることはないが、図2(b)に示すように蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。換言すれば、金属マスクの面において、樹脂マスク20と接する側の面から、樹脂マスク20と接しない側の面に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。より具体的には、金属マスク10のスリット15における下底先端と、同じく金属マスク10のスリット15における上底先端とを結んだ直線と、金属マスク10の底面とのなす角度、換言すれば、金属マスク10のスリット15を構成する内壁面の厚み方向断面において、スリット15の内壁面と金属マスク10の樹脂マスク20と接する側の面(図示する形態では、金属マスクの下面)とのなす角度は、5°〜85°の範囲内であることが好ましく、15°〜80°の範囲内であることがより好ましく、25°〜65°の範囲内であることがさらに好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着装置の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。
樹脂マスク上に金属マスク10を積層する方法について特に限定はなく、樹脂マスク20と金属マスク10とを各種粘着剤を用いて貼り合わせてもよく、自己粘着性を有する樹脂マスクを用いてもよい。樹脂マスク20と金属マスク10の大きさは同一であってもよく、異なる大きさであってもよい。なお、この後に任意で行われるフレームへの固定を考慮して、樹脂マスク20の大きさを金属マスク10よりも小さくし、金属マスク10の外周部分が露出された状態としておくと、金属マスク10とフレームとの固定が容易となり好ましい。
また、樹脂マスクの表面に、蒸着対象物、或いは後述するフレームとのアライメントを行うためのアライメントマーク(図示しない)を設けてもよい。
以下、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる好ましい蒸着マスクについて実施形態(A)、及び実施形態(B)を例に挙げ説明する。なお、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着マスク100は、以下で説明する形態に限定されるものではなく、スリット15が形成された金属マスク10と当該スリット15と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応する開口部25が形成された樹脂マスク20とが積層されているとの条件を満たすものであれば、いかなる形態であってもよい。例えば、金属マスク10に形成されているスリット15は、ストライプ状(図示しない)であってもよい。また、1画面全体と重ならない位置に、金属マスク10のスリット15が設けられていてもよい。いずれの形態であっても、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する前の段階で、蒸着マスク100を加熱する加熱工程を含む一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、一実施形態の蒸着マスクを用いた最初の蒸着時において、蒸着マスク100の樹脂マスク20の線膨張率の変動量を小さくすることができ、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成することができる。また、一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、一実施形態の蒸着マスクを用いた繰り返しの蒸着時において、樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制することができ、最初の蒸着時から最後の蒸着時まで、蒸着対象物に蒸着パターンをばらつきなく形成することができる。
<実施形態(A)の蒸着マスク>
図4に示すように、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる実施形態(A)の蒸着マスク100は、複数画面分の蒸着パターンを同時に形成するための蒸着マスクであって、樹脂マスク20の一方の面上に、複数のスリット15が設けられた金属マスク10が積層されてなり、樹脂マスク20には、複数画面を構成するために必要な開口部25が設けられ、各スリット15が、少なくとも1画面全体と重なる位置に設けられていることを特徴とする。
実施形態(A)の蒸着マスク100は、複数画面分の蒸着パターンを同時に形成するために用いられる蒸着マスクであり、1つの蒸着マスク100で、複数の製品に対応する蒸着パターンを同時に形成することができる。実施形態(A)の蒸着マスクで言う「開口部」とは、実施形態(A)の蒸着マスク100を用いて作製しようとするパターンを意味し、例えば、当該蒸着マスクを有機ELディスプレイにおける有機層の形成に用いる場合には、開口部25の形状は当該有機層の形状となる。また、「1画面」とは、1つの製品に対応する開口部25の集合体からなり、当該1つの製品が有機ELディスプレイである場合には、1つの有機ELディスプレイを形成するのに必要な有機層の集合体、つまり、有機層となる開口部25の集合体が「1画面」となる。そして、実施形態(A)の蒸着マスク100は、複数画面分の蒸着パターンを同時に形成すべく、樹脂マスク20には、上記「1画面」が、所定の間隔をあけて複数画面分配置されている。すなわち、樹脂マスク20には、複数画面を構成するために必要な開口部25が設けられている。
実施形態(A)の蒸着マスクは、樹脂マスクの一方の面上に、複数のスリット15が設けられた金属マスク10が設けられ、各スリットは、それぞれ少なくとも1画面全体と重なる位置に設けられている点を特徴とする。換言すれば、1画面を構成するのに必要な開口部25間において、横方向に隣接する開口部25間に、スリット15の縦方向の長さと同じ長さであって、金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分や、縦方向に隣接する開口部間25に、スリット15の横方向の長さと同じ長さであって、金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分が存在していないことを特徴とする。以下、スリット15の縦方向の長さと同じ長さであって、金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分や、スリット15の横方向の長さと同じ長さであって、金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分のことを総称して、単に金属線部分と言う場合がある。
実施形態(A)の蒸着マスク100によれば、1画面を構成するのに必要な開口部25の大きさや、1画面を構成する開口部25間のピッチを狭くした場合、例えば、400ppiを超える画面の形成を行うべく、開口部25の大きさや、開口部25間のピッチを極めて微小とした場合であっても、金属線部分による干渉を防止することができ、高精細な画像の形成が可能となる。なお、1画面が、複数のスリットによって分割されている場合、換言すれば、1画面を構成する開口部25間に金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分が存在している場合には、1画面を構成する開口部25間のピッチが狭くなっていくことにともない、開口部25間に存在する金属線部分が蒸着対象物へ蒸着パターンを形成する際の支障となり高精細な蒸着パターンの形成が困難となる。換言すれば、1画面を構成する開口部25間に金属マスク10と同じ厚みを有する金属線部分が存在している場合には、フレーム付き蒸着マスクとしたときに当該金属線部分が、シャドウの発生を引き起こし高精細な画面の形成が困難となる。
次に、図4〜図7を参照して、1画面を構成する開口部25の一例について説明する。なお、図示する形態において破線で閉じられた領域が1画面となっている。図示する形態では、説明の便宜上少数の開口部25の集合体を1画面としているが、この形態に限定されるものではなく、例えば、1つの開口部25を1画素としたときに、1画面に数百万画素の開口部25が存在していてもよい。
図4に示す形態では、縦方向、横方向に複数の開口部25が設けられてなる開口部25の集合体によって1画面が構成されている。図5に示す形態では、横方向に複数の開口部25が設けられてなる開口部25の集合体によって1画面が構成されている。また、図6に示す形態では、縦方向に複数の開口部25が設けられてなる開口部25の集合体によって1画面が構成されている。そして、図4〜図6では、1画面全体と重なる位置にスリット15が設けられている。
上記で説明したように、スリット15は、1画面のみと重なる位置に設けられていてもよく、図7(a)、(b)に示すように、2以上の画面全体と重なる位置に設けられていてもよい。図7(a)では、図4に示す蒸着マスク100において、横方向に連続する2画面全体と重なる位置にスリット15が設けられている。図7(b)では、縦方向に連続する3画面全体と重なる位置にスリット15が設けられている。
次に、図4に示す形態を例に挙げて、1画面を構成する開口部25間のピッチ、画面間のピッチについて説明する。1画面を構成する開口部25間のピッチや、開口部25の大きさについて特に限定はなく、蒸着作製するパターンに応じて適宜設定することができる。例えば、400ppiの高精細な蒸着パターンの形成を行う場合には、1画面を構成する開口部25において隣接する開口部25の横方向のピッチ(P1)、縦方向のピッチ(P2)は60μm程度となる。また、開口部の大きさは、500μm2〜1000μm2程度となる。また、1つの開口部25は、1画素に対応していることに限定されることはなく、例えば、画素配列によっては、複数画素を纏めて1つの開口部25とすることもできる。
画面間の横方向ピッチ(P3)、縦方向ピッチ(P4)についても特に限定はないが、図4に示すように、1つのスリット15が、1画面全体と重なる位置に設けられる場合には、各画面間に金属線部分が存在することとなる。したがって、各画面間の縦方向ピッチ(P4)、横方向のピッチ(P3)が、1画面内に設けられている開口部25の縦方向ピッチ(P2)、横方向ピッチ(P1)よりも小さい場合、或いは略同等である場合には、各画面間に存在している金属線部分が断線しやすくなる。したがって、この点を考慮すると、画面間のピッチ(P3、P4)は、1画面を構成する開口部25間のピッチ(P1、P2)よりも広いことが好ましい。画面間のピッチ(P3、P4)の一例としては、1mm〜100mm程度である。なお、画面間のピッチとは、1の画面と、当該1の画面と隣接する他の画面とにおいて、隣接している開口部間のピッチを意味する。このことは、後述する実施形態(B)の蒸着マスクにおける開口部25のピッチ、画面間のピッチについても同様である。
なお、図7に示すように、1つのスリット15が、2つ以上の画面全体と重なる位置に設けられる場合には、1つのスリット15内に設けられている複数の画面間には、スリットの内壁面を構成する金属線部分が存在しないこととなる。したがって、この場合、1つのスリット15と重なる位置に設けられている2つ以上の画面間のピッチは、1画面を構成する開口部25間のピッチと略同等であってもよい。
<実施形態(B)の蒸着マスク>
次に、一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる実施形態(B)の蒸着マスクについて説明する。図8に示すように、実施形態(B)の蒸着マスクは、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が複数設けられた樹脂マスク20の一方の面上に、1つのスリット(1つの貫通孔16)が設けられた金属マスク10が積層されてなり、当該複数の開口部25の全てが、金属マスク10に設けられた1つの貫通孔と重なる位置に設けられている点を特徴とする。
実施形態(B)で言う開口部25とは、蒸着対象物に蒸着パターンを形成するために必要な開口部を意味し、蒸着対象物に蒸着パターンを形成するために必要ではない開口部は、1つの貫通孔16と重ならない位置に設けられていてもよい。なお、図8は、実施形態(B)の蒸着マスクの一例を示す蒸着マスクを金属マスク側から見た正面図である。
実施形態(B)の蒸着マスク100は、複数の開口部25を有する樹脂マスク20上に、1つの貫通孔16を有する金属マスク10が設けられており、かつ、複数の開口部25の全ては、当該1つの貫通孔16と重なる位置に設けられている。この構成を有する実施形態(B)の蒸着マスク100では、開口部25間に、金属マスクの厚みと同じ厚み、或いは、金属マスクの厚みより厚い金属線部分が存在していないことから、上記実施形態(A)の蒸着マスクで説明したように、金属線部分による干渉を受けることなく樹脂マスク20に設けられている開口部25の寸法通りに高精細な蒸着パターンを形成することが可能となる。
また、実施形態(B)の蒸着マスクによれば、金属マスク10の厚みを厚くしていった場合であっても、シャドウの影響を殆ど受けることがないことから、金属マスク10の厚みを、耐久性や、ハンドリング性を十分に満足させることができるまで厚くすることができ、高精細な蒸着パターンの形成を可能としつつも、耐久性や、ハンドリング性を向上させることができる。
実施形態(B)の蒸着マスクにおける樹脂マスク20は、樹脂から構成され、図8に示すように、1つの貫通孔16と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部25が複数設けられている。開口部25は、蒸着作製するパターンに対応しており、蒸着源から放出された蒸着材が開口部25を通過することで、蒸着対象物には、開口部25に対応する蒸着パターンが形成される。なお、図示する形態では、開口部が縦横に複数列配置された例を挙げて説明をしているが、縦方向、或いは横方向にのみ配置されていてもよい。
実施形態(B)の蒸着マスク100における「1画面」とは、1つの製品に対応する開口部25の集合体を意味し、当該1つの製品が有機ELディスプレイである場合には、1つの有機ELディスプレイを形成するのに必要な有機層の集合体、つまり、有機層となる開口部25の集合体が「1画面」となる。実施形態(B)の蒸着マスクは、「1画面」のみからなるものであってもよく、当該「1画面」が複数画面分配置されたものであってもよいが、「1画面」が複数画面分配置される場合には、画面単位毎に所定の間隔をあけて開口部25が設けられていることが好ましい(実施形態(A)の蒸着マスクの図7等参照)。「1画面」の形態について特に限定はなく、例えば、1つの開口部25を1画素としたときに、数百万個の開口部25によって1画面を構成することもできる。
実施形態(B)の蒸着マスク100における金属マスク10は、金属から構成され1つの貫通孔16を有している。そして、実施形態(B)の蒸着マスクでは、当該1つの貫通孔16は、金属マスク10の正面からみたときに、全ての開口部25と重なる位置、換言すれば、樹脂マスク20に配置された全ての開口部25がみえる位置に配置されている。
金属マスク10を構成する金属部分、すなわち貫通孔16以外の部分は、図8に示すように蒸着マスク100の外縁に沿って設けられていてもよく、図9に示すように金属マスク10の大きさを樹脂マスク20よりも小さくし、樹脂マスク20の外周部分を露出させてもよい。また、金属マスク10の大きさを樹脂マスク20よりも大きくして、金属部分の一部を、樹脂マスクの横方向外方、或いは縦方向外方に突出させてもよい。なお、いずれの場合であっても、貫通孔16の大きさは、樹脂マスク20の大きさよりも小さく構成されている。
図8に示される金属マスク10の貫通孔の壁面をなす金属部分の横方向の幅(W1)や、縦方向の幅(W2)について特に限定はないが、W1、W2の幅が狭くなっていくに従い、耐久性や、ハンドリング性が低下していく傾向にある。したがって、W1、W2は、耐久性や、ハンドリング性を十分に満足させることができる幅とすることが好ましい。金属マスク10の厚みに応じて適切な幅を適宜設定することができるが、好ましい幅の一例としては、実施形態(A)の金属マスクと同様、W1、W2ともに1mm〜100mm程度である。
また、上記で説明した各実施形態の蒸着マスクにおいて、樹脂マスク20には、開口部25が規則的に形成されているが、蒸着マスク100の金属マスク10側から見たときに、各開口部25を横方向、或いは縦方向に互い違いに配置してもよい(図示しない)。つまり、横方向に隣り合う開口部25を縦方向にずらして配置してもよい。このように配置することにより、樹脂マスク20が熱膨張した場合にあっても、各所において生じる膨張を開口部25によって吸収することができ、膨張が累積して大きな変形が生じることを防止することができる。
また、上記で説明した各実施形態の蒸着マスクにおいて、樹脂マスク20には、樹脂マスク20の縦方向、或いは横方向にのびる溝(図示しない)が形成されていてもよい。蒸着時に熱が加わった場合、樹脂マスク20が熱膨張し、これにより開口部25の寸法や位置に変化が生じる可能性があるが、溝を形成することで樹脂マスクの膨張を吸収することができ、樹脂マスクの各所で生じる熱膨張が累積することにより樹脂マスク20が全体として所定の方向に膨張して開口部25の寸法や位置が変化することを防止することができる。溝の形成位置について限定はなく、1画面を構成する開口部25間や、開口部25と重なる位置に設けられていてもよいが、画面間に設けられていることが好ましい。また、溝は、樹脂マスクの一方の面、例えば、金属マスクと接する側の面のみに設けられていてもよく、金属マスクと接しない側の面のみに設けられていてもよい。或いは、樹脂マスク20の両面に設けられていてもよい。
また、隣接する画面間に縦方向に延びる溝としてもよく、隣接する画面間に横方向に延びる溝を形成してもよい。さらには、これらを組み合わせた態様で溝を形成することも可能である。
溝の深さやその幅については特に限定はないが、溝の深さが深すぎる場合や、幅が広すぎる場合には、樹脂マスク20の剛性が低下する傾向にあることから、この点を考慮して設定することが必要である。また、溝の断面形状についても特に限定されることはなくU字形状やV字形状など、加工方法などを考慮して任意に選択すればよい。実施形態(B)の蒸着マスクについても同様である。
また、一実施形態の蒸着マスクとして、フレームに蒸着マスクが固定されてなるフレーム付き蒸着マスクを用いてもよい。フレーム付き蒸着マスクを用いることで、蒸着対象物に蒸着パターンを形成する際の、フレーム付き蒸着マスクと蒸着対象物とのアライメントや、蒸着装置内への蒸着マスクの取り付けを容易に行うことができる。
蒸着パターンを形成する工程で用いられるフレーム付き蒸着マスク200は、図10に示すように、フレーム60に、1つの蒸着マスク100が固定されたものであってもよく、図11に示すように、フレーム60に、複数の蒸着マスク100が固定されたものであってもよい。
フレーム60は、略矩形形状の枠部材であり、最終的に固定される蒸着マスク100の樹脂マスク20に設けられた開口部25を蒸着源側に露出させるための貫通孔を有する。フレームの材料について特に限定はないが、剛性が大きい金属材料、例えば、SUS、インバー材、セラミック材料などを用いることができる。中でも、金属フレームは、蒸着マスクの金属マスクとの溶接が容易であり、変形等の影響が小さい点で好ましい。
フレームの厚みについても特に限定はないが、剛性等の点から10mm〜30mm程度であることが好ましい。フレームの開口の内周端面と、フレームの外周端面間の幅は、当該フレームと、蒸着マスクの金属マスクとを固定することができる幅であれば特に限定はなく、例えば、10mm〜70mm程度の幅を例示することができる。
また、図12(a)〜(c)に示すように、蒸着マスク100を構成する樹脂マスク20の開口部25の露出を妨げない範囲で、貫通孔の領域に補強フレーム65等が設けられたフレーム60を用いてもよい。換言すれば、フレーム60が有する開口が、補強フレーム等によって分割された構成を有していてもよい。補強フレーム65を設けることで、当該補強フレーム65を利用して、フレーム60と蒸着マスク100とを固定することができる。具体的には、上記で説明した蒸着マスク100を縦方向、及び横方向に複数並べて固定するときに、当該補強フレームと蒸着マスクが重なる位置においても、フレーム60に蒸着マスク100を固定することができる。
フレームと樹脂板付き金属マスク35との固定は、例えば、レーザー光等により固定するスポット溶接、接着剤、ねじ止め、或いはこれ以外の方法を用いて固定することができる。
<蒸着工程(S2)>
蒸着工程は、上記加熱工程(S1)後に、蒸着マスク100と蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、樹脂マスク20に設けられた開口部25を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させ、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する工程である。
一実施形態の蒸着パターン形成方法で使用可能な蒸着方法については、上記で説明した各種の蒸着方法を適宜選択して用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。蒸着工程は、従来公知の真空蒸着装置などを用いて行うことができる。
蒸着工程を経ることで、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンが形成される。一実施形態の蒸着パターン形成方法では、蒸着工程の前の段階で、蒸着マスクを加熱する加熱工程が行われていることから、蒸着時における蒸着マスク100の樹脂マスクの線膨張率の変動量を小さくすることができ、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成することができる。また、一実施形態の蒸着マスクを用いた繰り返しの蒸着時においては、最初の蒸着時から、最後の蒸着時まで、蒸着マスク100の樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制することができる。換言すれば、蒸着の都度、樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制することができる。したがって、一実施形態の蒸着パターン形成方法によれば、繰り返しの蒸着時において、形成される蒸着パターンにばらつきが生ずることを抑制することができる。
<<蒸着装置>>
次に、図13、図14を参照して、本発明の一実施形態の蒸着装置(以下、一実施形態の蒸着装置と言う場合がある)、及び当該蒸着装置300を用いた蒸着パターン形成方法について説明する。一実施形態の蒸着装置は、上記で説明した一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着装置であって、蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせる重ね合わせ手段、図13、図14に示すように、蒸着マスクを加熱する加熱室310と、重ね合わせ手段により蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせたものに対し、換言すれば、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクに対し、蒸着源から放出された蒸着材を、蒸着マスクの樹脂マスクに設けられている開口部を通して、蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着室320を備えている。以下、蒸着装置の各構成について具体的な例を挙げて説明する。
本発明の一実施形態の蒸着パターン形成方法に用いられる蒸着装置は、蒸着マスクを用いて蒸着対象物に蒸着パターンを形成するための蒸着室を備える従来公知の蒸着装置において、さらに、蒸着マスクを加熱するための加熱室310を備えていることを特徴とし、蒸着装置の基本的な構成は、従来公知の蒸着装置の構成を適宜選択して用いることができる。以下、一実施形態の蒸着装置300について、具体的な例を挙げて説明する。
図13は、第1実施形態の蒸着装置300の概略図である。第1実施形態の蒸着装置300は、ロードロック室340、アライメント室330、加熱室310、蒸着室320を備えている。図示する形態の蒸着装置300において、ロードロック室340、加熱室310、蒸着室320、アライメント室330は、開閉可能なゲート(図示しない)等によって区画されている。
第1実施形態の蒸着装置では、加熱室310においてロードロック室340より搬送された蒸着マスクを加熱し、加熱後の蒸着マスクをアライメント室330に搬送し、アライメント室330において、加熱室310より搬送された蒸着マスクと、ロードロック室340より搬送された蒸着対象物とのアライメント、及び重ね合わせを行い、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクを蒸着室320に搬送し、蒸着室320において、蒸着源から放出された蒸着材を、蒸着マスクの樹脂マスクに設けられている開口部を通して、蒸着対象物の被蒸着面に付着させることにより、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンの形成が行われる。なお、第1実施形態の蒸着装置300は、アライメント室330が、アライメント手段、及び重ね合わせ手段を備えている。
図13に示す第1実施形態の蒸着装置では、アライメント室330が、アライメント手段、及び重ね合わせ手段を備えているが、アライメント室330を設けずに、蒸着室320において、蒸着マスクと蒸着対象物とのアライメント、及び重ね合わせを行ってもよい。
<ロードロック室>
ロードロック室340は、蒸着マスクや蒸着対象物を出し入れするチャンバーであり、加熱室310において加熱が行われる前の蒸着マスクは、ロードロック室340より、加熱室310に搬送され、蒸着パターンが形成される前の蒸着対象物は、ロードロック室340より、アライメント室330に搬送される。ロードロック室340は、加熱前の蒸着マスクや、蒸着パターン形成前の蒸着対象物をストックするストック手段、及びストック手段によりストックされている加熱前の蒸着マスクや、蒸着パターン形成前の蒸着対象物を、加熱室310、或いはアライメント室330に搬送するための搬送手段を備えている。搬送手段としては、モーター、エアシリンダ等を挙げることができる。以下の搬送手段についても同様である。ロードロック室340が備えるストック手段は、1つの蒸着マスクや、1つの蒸着対象物のみをストック可能な手段であってもよく、複数の蒸着マスクや、複数の蒸着対象物をストック可能な手段であってもよい。また、ロードロック室340は、後述する減圧手段を備えていることが好ましい。
<加熱室>
加熱室310は、ロードロック室340から搬送された上記一実施形態の蒸着マスクを加熱するための加熱手段、及び加熱後の蒸着マスクをアライメント室330に搬送するための搬送手段を備えている。加熱手段について特に限定はなく、ヒーター等を挙げることができる。
蒸着マスクを加熱するための加熱室310は、その内部環境を減圧環境下とするための減圧手段を備えていることが好ましい。上記で説明したように、減圧環境下において、一実施形態の蒸着マスク100を加熱することで、その加熱温度が100℃未満の範囲であっても、蒸着マスク100の樹脂マスク20が含有している水分を十分に放出させることができ、蒸着室320内において、特性が良好な蒸着パターンを形成することができる。また、加熱室310内において、蒸着マスク100の樹脂マスク20が含有している水分を十分に放出させることで、樹脂マスク20の線膨張率の変動量をより小さくすることができ、また、繰り返しの蒸着時において、蒸着の都度、樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制することにより、形成される蒸着パターンにばらつきが生ずることを十分に抑制することができる。
減圧手段としては、例えば、クライオポンプや、ロータリーポンプ、ドライ真空ポンプ、拡散ポンプ、揺動ピストン型ポンプ、蒸気エゼクターポンプ、水環ポンプ、ソープションポンプ、ターボ分子ポンプ、イオンポンプ、ゲッターポンプ、メカニカルブースターポンプ、ダイアフラムポンプ等を挙げることができる。
また、加熱室310は、樹脂マスク20から放出された水分を、外部に放出するための排気手段を備えていてもよい。排気手段としては、減圧手段をそのまま用いることができる。アライメント室330、蒸着室320についても同様である。
<アライメント室>
第1実施形態の一例としての蒸着装置300は、アライメント室330が、蒸着マスクと蒸着対象物との位置合わせを行うアライメント手段、及びアライメント手段による位置合わせ後、蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせる重ね合わせ手段を備えており、加熱室310内において加熱が行われた一実施形態の蒸着マスク100は、加熱室310からアライメント室330に搬送され、当該アライメント室330内において、ロードロック室340から搬送された蒸着対象物とのアライメント、及び蒸着対象物との重ね合わせが行われる。アライメント手段(アライメント機構)、及び重ね合わせ手段について特に限定はなく、アライメントマークを検出するカメラ機構、駆動機構等を挙げることができる。また、アライメント室330は、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクを、蒸着室320に搬送するための搬送手段を備えている。
上記加熱室310と同様に、アライメント室330も、減圧手段を備えていることが好ましい。加熱室310、及びアライメント室330をともに減圧環境とした状態で、加熱室310、アライメント室330を区画するゲート(シャッター)等を開け、加熱室310において加熱された蒸着マスクを、アライメント室330に搬送することで、加熱室310から搬送された蒸着マスク100の樹脂マスク20が、アライメント室330において吸湿してしまうことを抑制することができる。
<蒸着室>
蒸着室320は、蒸着手段を備えており、アライメント室330内において、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクは、蒸着室320へ搬送され、当該蒸着室320内において、蒸着源から放出された蒸着材を、蒸着マスク100の樹脂マスク20に設けられた開口部25を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンが形成される。
蒸着室320は、真空蒸着の分野で従来公知のものを適宜選択すればよく、蒸着方法に応じて適宜設定すればよい。例えば、物理的気相成長法等を用いた蒸着方法を用いる場合には、抵抗加熱や誘導加熱などの方法を用いて、蒸着源から蒸着材の蒸着速度を一定に保つように制御しながら、蒸着材を加熱し、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンが形成される。
好ましい形態の蒸着装置300は、加熱室310で加熱が行われた蒸着マスク100を繰り返し使用して、複数の蒸着対象物に対して蒸着パターンを形成する際に、加熱室310で加熱された蒸着マスク100が、大気環境に曝されることがないような構成をとる。換言すれば、加熱室310で加熱された蒸着マスク100の樹脂マスクが、吸湿することを抑制可能な構成をとる。好ましい形態の蒸着装置によれば、繰り返しの蒸着時において、蒸着マスク100の樹脂マスク20が吸湿してしまうことを抑制することができる。なお、樹脂マスク20の吸湿量が多くなっていった場合には、繰り返しの蒸着時において、樹脂マスクが吸湿している水分が放出され、放出された水分が、蒸着対象物に形成される蒸着パターンの特性の劣化等を引き起こしやすくなる。
例えば、加熱室310、アライメント室330、蒸着室320を減圧環境とした状態で、各室間の搬送を行うことで、蒸着マスクを用いた繰り返しの蒸着が終了するまで、当該蒸着マスク100が大気環境中に曝されることを防止することができる。
以下、上記第1実施形態の蒸着装置300を用いた好ましい蒸着パターン形成方法について一例を挙げて説明する。好ましい形態の蒸着パターン形成方法では、ロードロック室340、加熱室310、アライメント室330、蒸着室320、任意の処理室を減圧環境とした状態で、各室間を区画するゲートを開けて、蒸着マスク、及び蒸着対象物の搬送を行い、蒸着室320において、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンの形成を行っている。
具体的には、ロードロック室340とアライメント室330とを繋ぐゲートを閉じて、ロードロック室340を独立した状態とし、ロードロック室340の内部のみを大気圧とした状態で、蒸着マスクをロードロック室340に投入する。ロードロック室340に蒸着マスクを投入後、当該ロードロック室340を減圧環境とし、同じく減圧環境となっているアライメント室330とロードロック室340とを繋ぐゲートを開けて、蒸着マスクをアライメント室330に搬送し、ロードロック室340とアライメント室330とを繋ぐゲートを閉じる。次いで、ともに減圧環境となっているアライメント室330と加熱室310とを繋ぐゲートを開けて蒸着マスクを加熱室310に搬送し、アライメント室330と加熱室310とを繋ぐゲートを閉じる。
加熱室310では、搬送された蒸着マスクに対し、所定の温度で加熱を行う。好ましい形態の蒸着パターン形成方法では、加熱室310を減圧環境とした状態で、或いは、50℃以上、より好ましくは100℃以上で加熱を行っている。
加熱室310での加熱を行った後に、加熱室310とアライメント室330とを繋ぐゲートを開けて、加熱が行われた蒸着マスクをアライメント室330に搬送し、搬送後、加熱室310とアライメント室330とを繋ぐゲートを閉じる。また、蒸着マスクを加熱室に投入することに前後して、ロードロック340室を大気圧に戻し、蒸着対象物をロードロック室340に投入する。ロードロック室340には、1つの蒸着対象物のみを投入してもよく、複数の蒸着対象物を投入してもよい。複数の蒸着対象物をロードロック室340に投入する場合には、当該ロードロック室340は、複数の蒸着対象物をストックするストック室としての役割を果たす。
ロードロック室340に蒸着対象物を投入後、当該ロードロック室340を減圧環境とし、同じく減圧環境となっているアライメント室330とのゲートを開けて、ロードロック室340から、アライメント室330に1つの蒸着対象物を搬送し、搬送後、ロードロック室340とアライメント室330とを繋ぐゲートを閉じる。
アライメント室330では、ロードロック室340から搬送された蒸着対象物と、加熱室310から搬送された蒸着マスクとのアライメント、及び重ね合わせを行う。アライメント、及び重ね合わせを行った後に、アライメント室330と蒸着室320を繋ぐゲートを開けて、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクを、蒸着室320に搬送し、搬送後、アライメント室330と蒸着室320とを繋ぐゲートを閉じる。
蒸着室320では、蒸着対象物と重ね合わされた蒸着マスクに対し、蒸着源から放出された蒸着材を、蒸着マスクの樹脂マスクに設けられた開口部を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させて、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンの形成を行う。蒸着パターンの形成後、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物から蒸着マスクを取り外し、アライメント室330と蒸着室320を繋ぐゲートを開けて、取り外された蒸着マスクをアライメント室330に搬送し、搬送後、アライメント室330と蒸着室320とを繋ぐゲートを閉じる。また、取り外された蒸着マスクをアライメント室330に搬送することに前後して、蒸着室320と任意の処理室とを繋ぐゲートを開けて、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物を任意の処理室に搬送し、搬送後、蒸着室320と任意の処理室とを繋ぐゲートを閉じる。なお、任意の処理室に搬送することにかえて、蒸着パターンが形成された蒸着対象物を、ロードロック室340、或いは、別の取出口から取り出してもよい。また、繰り返しの蒸着を行わない場合などには、蒸着室320において、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物から蒸着マスクを取り外すことなく、蒸着パターンが形成され、蒸着マスクと重ね合わされた状態の蒸着対象物を、ロードロック室340、或いは別の取出口から取り出し、取出した後に、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物から蒸着マスクを取り外すこともできる。
第1実施形態の一例としての蒸着装置300は、蒸着室320の下流側に、減圧手段を備える任意の処理室を備えており、蒸着室320において蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物に対して、任意の処理を行うことができる。任意の処理としては、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物に対し、電子輸送層やカソード等の上層の蒸着を行う蒸着処理、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物をパッケージ等に封止する封止処理などを挙げることができる。任意の処理室を有する蒸着装置によれば、当該任意の処理室を減圧環境とした状態で、上記任意の処理などを行うことで、蒸着対象物に形成された蒸着パターンが水分などに曝され、その性能が劣化してしまうことを抑制しつつ、最終製品などを製造することができる。一実施形態の形成方法では、任意の処理室において、任意の処理を行った後に、当該任意の処理室を大気圧とし、ロードロック室340とは異なる取出口より、各種の処理が行われた蒸着対象物の取出しを行う。任意の処理室において行われる任意の処理、例えば、上層の蒸着パターンの形成は、蒸着室320において蒸着パターンを形成するために用いられる蒸着マスクとは異なる別の蒸着マスクを用いて行う。この別の蒸着マスクは、加熱室310において加熱を行った後に、蒸着室320において蒸着パターンを形成するために用いられる蒸着マスクとともに、加熱室310内にストックされており、必要なタイミングで、任意の処理室に搬送される。なお、加熱室310内にストックすることなく、別の蒸着マスクをロードロック室340から別途投入してもよい。別の蒸着マスクを、ロードロック室340から別途投入する場合には、投入された別の蒸着マスクを加熱室310に搬送し、当該加熱室310において加熱を行う。
取出口から、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物を取出した後に、ロードロック室340にストックがされている別の蒸着対象物を、上記と同様の方法で、アライメント室330に搬送し、アライメント室330において、別の蒸着対象物と、蒸着室320からアライメント室330に搬送された蒸着マスクとのアライメント、及び重ね合わせを行い、蒸着室320において、当該別の蒸着対象物に蒸着パターンの形成を行う。ロードロック室340にストックがされている蒸着対象物に対する蒸着パターンの形成が終了するまで、或いは、1つの蒸着マスクを用いた蒸着パターンの形成が規定の回数に達するまで、これらの処理を繰り返し行い、複数の蒸着対象物に対し、蒸着パターンの形成を行う。
1つの蒸着マスクを用いて、ロードロック室340に保管されている複数の蒸着対象物に対して繰り返しの蒸着を行う場合には、蒸着マスクを用いた最初の蒸着パターンの形成を行う前の段階で、つまりは、1つ目の蒸着対象物に対して蒸着パターンの形成を行う前の段階で、加熱室310において蒸着マスク100の加熱を行えばよく、繰り返しの蒸着時、つまりは、2つ目以降の蒸着対象物に対する蒸着パターンの形成を行う前の段階においては蒸着マスク100に対して加熱を行うことを要しない。要約すれば、加熱室310における蒸着マスクの加熱は、最初の蒸着パターンの形成時において1回行えばよい。これは、最初の蒸着を行う前の段階で、蒸着マスク100を加熱をしておくことで、当該蒸着マスク100の樹脂マスク20は、図3の「2サイクル目」の樹脂板に相当することとなり、同図に示すように「2サイクル目」以降は、樹脂板の線膨張率の変動量が一定となることによる。つまりは、2つ目以降の蒸着対象物に蒸着パターンを形成するときには、樹脂マスクの線膨張率の変動量にばらつきが生じないことによる。
また、複数の蒸着対象物に対し、1つの蒸着マスクを用いて、繰り返しの蒸着を行う場合には、規定回数の蒸着パターンの形成を行った後に、ロードロック室340より、規定回数の蒸着パターンの形成を行った蒸着マスクを取出し、新たな蒸着マスクと交換し、当該新たな蒸着マスクを用いて引き続き蒸着パターンの形成を行うこともできる。この場合、新たな蒸着マスクを用いた最初の蒸着パターンの形成を行う前の段階で、加熱室310において、当該新たな蒸着マスクを加熱する。また、新たな蒸着マスクは、規定回数の蒸着パターンの形成が終了した蒸着マスクをロードロック室340から取り出す際に、ロードロック室340に投入してもよく、予め、加熱室310にストックしておいてもよい。
上記では、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物を、ロードロック室340と別の取出口より取り出す例を挙げて説明を行ったが、ロードロック室340より、蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物を取り出すこともできる。
上記では、蒸着装置300の好ましい形態として、加熱室310、蒸着室320、アライメント室330を備える蒸着装置を例に挙げて説明を行ったが、蒸着対象物に蒸着パターンを形成する前の段階で、蒸着マスクを加熱可能な加熱室310を備えているとの条件を満たすものであれば、この形態に限定されるものではない。
図14は、第2実施形態の蒸着装置300の概略図である。第2実施形態の蒸着装置300は、蒸着対象物に多元蒸着が可能な、所謂クラスター型の蒸着装置300であって、加熱室310、複数の蒸着室320(320A,320B,320C)を備えている。また、第2実施形態の蒸着装置300は、加熱が行われた蒸着マスク100を加熱室310から取り出し、また、蒸着対象物、及び蒸着マスクを、各蒸着室に搬送するためのロボットアーム350を備えている。ロボットアーム350を備える空間は、減圧手段を備えており、通常、減圧環境となっている。
第2実施形態の蒸着装置300における加熱室310は、多元蒸着に用いられる複数の蒸着マスクを保管する保管手段と、保管されている蒸着マスクを加熱するための加熱手段を備えている。
第2実施形態の蒸着装置300における複数の蒸着室320(320A,320B,320C)は、それぞれ、アライメント手段、及び重ね合わせ手段を備えており、それぞれの蒸着室320(320A,320B,320C)では、蒸着マスクと蒸着対象物とのアライメント、及び重ね合わせが行われ、蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせたものに対し、蒸着源から放出された蒸着材を、蒸着マスク100の樹脂マスク20に設けられた開口部を通して蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで、蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンが形成される。図示する形態の蒸着装置300は、3つの蒸着室320を備えているが、1つの蒸着室のみを備えていてもよく、2つ、或いは4つ以上の蒸着室320を備えていてもよい。
以下、第2実施形態の蒸着装置300による蒸着パターンの形成の一例について説明する。加熱室310には、多元蒸着に用いられる複数の蒸着マスクが保管されている。図示する形態の蒸着装置300においては、加熱室310には、3つの蒸着マスクが保管されており、加熱室310では、これら3つの蒸着マスクに対し、同時に、或いは個別に加熱が行われる。加熱室310において加熱が行われた各蒸着マスクは、ロボットアーム350により対応する蒸着室320に搬送される。図示する形態の蒸着装置においては、1元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクは、加熱室310において加熱が行われた後に、ロボットアーム350により蒸着室320Aに搬送され、2元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクは、加熱室310において加熱が行われた後に、ロボットアーム350により蒸着室320Bに搬送され、3元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクは、加熱室310において加熱が行われた後に、ロボットアーム350により蒸着室320Cに搬送される。
蒸着装置300内に搬送された蒸着対象物は、ロボットアーム350により1元目の蒸着パターンの形成が行われる蒸着室320Aに搬送される。蒸着室320Aでは、蒸着対象物と、加熱室310において加熱が行われ、既に蒸着室320Aに搬送されている1元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクとのアライメント、及び重ね合わせが行われ、重ね合わせ後、蒸着対象物に対し、1元目の蒸着パターンの形成が行われる。
1元目の蒸着パターンの形成が終了後、当該1元目の蒸着パターンの形成に用いられた蒸着マスクから、蒸着対象物が取り外され、1元目の蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物は、ロボットアーム350により2元目の蒸着パターンの形成が行われる蒸着室320Bに搬送される。蒸着室320Bでは、1元目の蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物と、加熱室310において加熱が行われ、予め蒸着室320Bに搬送されている2元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクとのアライメント、及び重ね合わせが行われ、重ね合わせ後、蒸着対象物に対し、2元目の蒸着パターンの形成が行われる。
2元目の蒸着パターンの形成が終了後、当該2元目の蒸着パターンの形成に用いられた蒸着マスクから、蒸着対象物が取り外され、2元目の蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物は、ロボットアーム350により3元目の蒸着パターンの形成が行われる蒸着室320Cに搬送される。蒸着室320Cでは、2元目の蒸着パターンの形成が行われた蒸着対象物と、加熱室310において加熱が行われ、予め蒸着室320Cに搬送されている3元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスクとのアライメント、及び重ね合わせが行われ、重ね合わせ後、蒸着対象物に対し、3元目の蒸着パターンの形成が行われる。
3元目の蒸着が終了後、3元目の蒸着パターンの形成に用いられた蒸着マスクから、蒸着対象物が取り外されることで、1元目、2元目、3元目の蒸着パターンが形成された蒸着対象物が製造される。製造された蒸着対象物に対しては、その後、電子輸送層やカソード等の上層の蒸着、封止工程などの任意の工程等を行ってもよい。これら任意の工程は、蒸着装置300が備える機構によりインラインで行うこともできる。
なお、上記第1実施形態の蒸着装置を用いた蒸着パターンの形成を行う場合と同様に、複数の蒸着対象物を用いて繰り返しの蒸着を行う場合には、1つ目の蒸着対象物に対する蒸着時においてのみ、加熱室310で、各蒸着マスク(1元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスク、2元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスク、3元目の蒸着パターンの形成に用いられる蒸着マスク)の加熱を行えばよく、2つ目以降の蒸着対象物に対し、蒸着パターンを形成するときには、これらの蒸着マスク100に対して加熱を行うことを要しない。
以上説明した蒸着装置によれば、蒸着時における樹脂マスクの線膨張率の変動量を小さくすることができ、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成することができる。また、繰り返しの蒸着時において、形成される蒸着パターンにばらつきが生ずることを抑制することで、繰り返しの蒸着時においても、蒸着対象物の被蒸着面に高精細な蒸着パターンを形成することができる。上記で説明した蒸着装置300によって蒸着パターンの形成が行われる蒸着対象物の用途、つまりは、蒸着装置300の使用用途についていかなる限定もされることはないが、特に、高精細な蒸着パターンの形成が望まれている、有機半導体素子等を製造する際に、好適に用いることができる。
<<有機半導体素子の製造方法>>
次に、本発明の一実施形態の有機半導体素子の製造方法(以下、一実施形態の有機半導体素子の製造方法と言う。)について説明する。一実施形態の有機半導体素子の製造方法は、蒸着マスクを用いて蒸着対象物に蒸着パターンを形成する工程を含み、有機半導体素子を製造する工程において、上記で説明した一実施形態の蒸着パターン形成方法が用いられることを特徴としている。
蒸着マスクを用いた蒸着法により蒸着パターンを形成する工程について特に限定はなく、基板上に電極を形成する電極形成工程、有機層形成工程、対向電極形成工程、封止層形成工程等を有し、各任意の工程において、上記で説明した一実施形態の蒸着パターン形成方法を用いて、蒸着パターンが形成される。例えば、有機ELデバイスのR,G,B各色の発光層形成工程に、上記で説明した一実施形態の蒸着パターン形成方法をそれぞれ適用する場合には、基板上に各色発光層の蒸着パターンが形成される。なお、一実施形態の有機半導体素子の製造方法は、これらの工程に限定されるものではなく、従来公知の有機半導体素子の製造における任意の工程に適用可能である。
一実施形態の有機半導体素子の製造方法に用いられる蒸着マスクとしては、上記一実施形態の蒸着マスクを適宜選択して用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。また、一実施形態の有機半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置としては、上記一実施形態の蒸着装置をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
以上説明した一実施形態の有機半導体素子の製造方法によれば、有機半導体素子を形成する蒸着時において、蒸着マスク100の樹脂マスク20の線膨張率の変動量を小さくすることができ、高精細な有機半導体素子を製造することができる。また、有機半導体素子を繰り返し製造する場合において、最初の製造時から最後の製造時まで、蒸着マスク100の樹脂マスク20の線膨張率の変動量にばらつきが生ずることを抑制することができ、製造段階において、形成される蒸着パターンにばらつきが生ずることを抑制することができる。一実施形態の有機半導体素子の製造方法で製造される有機半導体素子としては、例えば、有機EL素子の有機層、発光層や、カソード電極等を挙げることができる。特に、一実施形態の有機半導体素子の製造方法は、高精細なパターン精度が要求される有機EL素子のR、G、B発光層の製造に好適に用いることができる。
100…蒸着マスク
10…金属マスク
15…スリット
16…貫通孔
20…樹脂マスク
25…開口部
60…フレーム
200…フレーム付き蒸着マスク
300…蒸着装置
310…加熱室
320…蒸着室
330…アライメント室
340…ロードロック室

Claims (6)

  1. 蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着パターン形成方法であって、
    蒸着作製するパターンに対応する開口部が設けられた樹脂マスクの一方の面上に、前記開口部と重なり、且つその開口面積が前記開口部の開口面積よりも大きいスリットが設けられた金属マスクが積層されてなる蒸着マスクを加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程後に、前記蒸着マスクと前記蒸着対象物とを重ね合わせ、蒸着源から放出された蒸着材を、前記樹脂マスクに設けられた開口部を通して前記蒸着対象物の被蒸着面に付着させ、前記蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着工程と、
    を含み、
    前記樹脂マスクがポリイミド樹脂を含有していることを特徴とする蒸着パターン形成方法。
  2. 前記加熱工程を減圧環境下で行うことを特徴とする請求項1に記載の蒸着パターン形成方法。
  3. 前記蒸着対象物と重ね合わせる前記蒸着マスクが、フレームに固定されたフレーム付き蒸着マスクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着パターン形成方法。
  4. 有機半導体素子の製造方法であって、
    有機半導体素子を製造する工程において、請求項1乃至3の何れか1項に記載の蒸着パターン形成方法が用いられることを特徴とする有機半導体素子の製造方法。
  5. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の蒸着パターン形成方法に用いる蒸着装置であって、
    前記蒸着マスクと前記蒸着対象物とを重ね合わせる重ね合わせ手段と、
    前記蒸着マスクを加熱する加熱室と、
    前記重ね合わせ手段により蒸着マスクと蒸着対象物とを重ね合わせたものに対し、蒸着源から放出された蒸着材を、前記蒸着対象物の被蒸着面に付着させることで前記蒸着対象物の被蒸着面に蒸着パターンを形成する蒸着室と、
    を備えることを特徴とする蒸着装置。
  6. 前記加熱室が、当該加熱室内を減圧環境とするための減圧手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の蒸着装置。
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