A 切断とスクライビング
光学的に透明な材料の切断は、しばしば機械的な方法で行われる。薄い平板材料の加工のための通常の方法は、多分機械的なダイシング・ソー(さいころ化鋸)を使用する。これは、シリコン・ウエハーのマイクロエレクトロニクス産業で標準的な方法である。しかしながら、この方法は、粒子汚染を避けるために管理されなければならない重要なデブリを発生し、プロセスの全体コストの増加をもたらす。さらに、先進のマイクロプロセッサ・デザインに使用される薄いウエハは、ダイイシング・ソーで切断するとき、粉々になりやすい。
これらの問題を処理するために、“スクライブと割断”といった材料切断のための最新技術処理は、このスクライブに沿って材料を割る前に材料に表面溝をスクライブするため、様々なレーザを使用する。たとえば、シリコンと他の半導体材料を切断するのにサブ・ピコ秒レーザパルスが使用された(H. Sawada, “Substrate cutting method,” U.S Patent No. 6,770,544)。また、集光された非点収差レーザビームが、材料切断のための単一表面溝を作製するために使用された(J.P. Sercel, “System and method for cutting using a variable astigmatic focal beam spot,” U.S. Patent Application No. 20040228004)。これは、非点収差集光形状寸法を最適化して処理速度の増加が達成されることを請求している。
正確で高品質の割断(へき開)を達成するためには、溝は、一定の最小深さでなければならず、その値は、応用によって変化する(たとえば、100μmの厚さのサファイアは、満足な割断のためには約15μm深さの溝を必要とする)。溝の深さは、走査速度が増すと減るので、最小深さは、最大走査速度、したがって全スループットを制限する。材料切断の代替技術は、透明なターゲット材料のバルク内に単一レーザ修飾ライン造形(feature)を形成するために多光子吸収を使用する(F. Fukuyo et al., “Laser processing method and laser processing apparatus,” U.S. Patent Application No. 20050173387)。表面溝の場合、正確で高品質な材料割断を引き起こすのに必要であるサブ表面の最小寸法造作が存在するので、このサブ表面の造作は、材料切断の処理速度に対する限界に等しい。
“スクライブと割断”という材料切断の注目すべき応用は、個々のエレクトロニクス及び/或いは光エレクトロニクス・デバイスの分離のためのウエハ・ダイシングである。たとえば、サファイア・ウエハ・ダイシングは、青色発光ダイオードの単一化に使用される。ウエハの単一化は、裏面のレーザ・アブレーションで行われ、ウヘハの表面のデバイスの汚染が最小化される(T.P. Glenn et al., “Method of singulation using laser cutting,” U.S. Patent No. 6,399,463)。また、アシスト・ガスが、基板をダイスするレーザビームを補助するために使用される(K. Imoto et al., “Method and apparatus for dicing a substrate, ” U.S. Patent No. 5,916,460)。さらに、ウエハは、レーザを最初使用してダイスされて、表面溝をスクライブし、次に機械的な鋸刃を使って切断を完全にする(N.C. Peng et al., “Wafer dicing device and method,” U.S. Patent 6,737,606)。そのような応用は、大きなボリュームの中で実施され、したがって、処理速度が特に重要である。
一つのプロセスが、二つの異なるタイプのレーザを使用し、一つは材料をスクライブし、他方は材料を割る(J.J. Xuan et al., “Combined laser-scribing and laser-breaking for shaping of brittle substrates,” U.S. Patent No. 6,744,009)。類似のプロセスは、表面にスクライブ線を引くために第一レーザビームを使用し、非金属材料を別々の小片に割るために第二レーザビームを使用する(D. Choo et al., “Method and apparatus for cutting a non-metallic substrate using a laser beam, ” U.S. Patent No. 6,653,210)。また、スクライビングとクラッキングのための二つの異なるレーザビームが、ガラス板の切断に使用された(K. You, “Apparatus for cutting glass plate, ” International Patent Application No. WO 2004083133)。最後に、レーザビームを材料の表面近くに集光し、集光されたレーザビームとターゲット材料の間に相対的な横方向運動を与えながら、その集光点を底面近くに材料中を下降させる(J.J. Xuan et al., “Method for laser-scribing brittle substrates and apparatus therefore, ” U.S. Patent No. 6,787,732)。
B 材料接合
ガラスとプラスチックスのような、二つ又はそれ以上の光学的に透明な材料の接合は、様々な産業での応用に有益である。光学的な透明性が機能を可能にするか又は追加する、或いはその逆で付加価値(たとえば、美的な)をもたらす任意のタイプのデバイスの製造は、そのような接合処理から恩恵を被る。一例は、目視検査が必要である(たとえば、通信とバイオ・メディカル産業)構成要素のハーメチック・封止である。
いくつかの応用において、従来の接合処理(たとえば、接着剤、機械的接合)は、不十分である。たとえば、多くの接着剤は、バイオ・メディカル・インプラント・デバイスで、非バイオ・コンパチを証明した。他のデバイスの場合、特殊な用途(たとえば、高圧シール)に対して接着力が全然強くない。そのような要求に対して、レーザ溶接は理想的な解を与える。
マイクロ・フルイディック(微細流体)・システムにおいては、全デバイスをカバーするキャップ片での互いに近接する個々のパスの封止が、要求される。異なるマイクロ・フルイディック・パス間の小さな接触領域により、他の方法で強くてしっかりした封止接合することは困難である。レーザ溶接は、それらのマイクロ・フルイディック・パス間の接合領域を正確に位置決めすることができ、漏らない封止をもたらす。
透明材料のレーザ溶接のための最近の技術は、
(1) 多くの光学的に透明な材料で線形吸収される波長(〜10μm)のCO2レーザの使用、或いは
(2) レーザ放射を吸収するように特別にデザインされ、それによって材料の加熱、溶融を起こす透明材料の境界面への添加材の導入、
を含む。
これら両方の方法は、それらの機能及び或いはそれらの実施コストで限定される。
パイレックス(登録商標)をパイレックス(登録商標)に溶接するため、及び、ポリイミドとポリウレタンをチタンとステンレス・スチールに接合するため、パルスCO2スラブ・レーザが、使用された(H.J. Herfurth et al., “Joining Challenges in the Packaging of BioMEMS, ” Proceedings of ICALEO 2004)。また、溶融石英と他の溶解しにくい材料とが10.6μmのCO2レーザで溶接された(M.S. Piltch et al., “Laser welding of fused quartz,” U.S. Patent No. 6,576,863)。レーザ放射が境界面に達する前に吸収されるので、そのようなCO2レーザの使用は、厚いトップ層材料を通して集光することでの溶接を可能にしない。付加的な不利益性は、大きな波長がビームを小さいスポットに集光することを可能にしないので、小さな溶接痕をミクロン・スケールの上に形成する有益性を制限するということである。
代わりに、人間の目には透明であるポリイミドやアクリルのような吸収層が、溶接される二つの材料の間に配置される(V.A. Kagan et al., “Advantages of Clearweld Technology for Polyamides, ” Proceedings ICALEO 2002)。ライン集光をもつダイオード・レーザが、溶接のために使用される(T. Klotzbuecher et al., "Microclear “A Novel Method for Diode Laser Welding of Transparent Micro Structured Polymer Chips, ” Proceedings of ICALEO 2004)。色素レーザが、そのレーザの波長を吸収するように特別にデザインされる(R.A. Sallavanti et al., “Visibly transparent dyes for through-transmission laser welding, ” U.S. Patent No. 6,656, 315)。
ガラスをガラス又は金属に接合するための一溶接プロセスは、溶接すべきその表面間のガラス半田を溶融するためにレーザビームを用いる(M. Klockhaus et al., “Method for welding the surfaces of materials, ” U.S. Patent No. 6,501,044)。また、レーザ波長に対して線形吸収体である中間層を使って二つのファイバが一緒に溶接される(M.K. Golldstein , “Photon welding optical fiber with ultra violet(UV) and visible source, ” U.S. Patent No. 6,663,297)。同様に、プラスチック・ジャケットをもつファイバが、吸収中間層を挿入することで、プラスチック・フェルールにレーザ溶接される(K.M. Pregitzer, “Method of attaching a fiber optic connector, ” U.S. Patent No. 6,804,439)。
吸収材料の付加的な層の使用は、大きな欠点を有する。その最も明確なことは、そのプロセスに対して適当な材料を作る或いは購入するコストである。潜在的なコスト上の問題点は、製造プロセスに追加の材料を組み入れることに関する処理時間の増大である。バイオメディカル移植デバイスでの場合、必要な溶接領域がますます小さくなるので、そのようなコストは、劇的に上昇することが予想される。中間の光吸収層を用いる別の不利益は、この層が封止される領域に汚染をもたらすということである。マイクロ・フルイディック・システムの場合、光吸収層がチャネルを通して流体と直接接触する。
透明材料を吸収材料に溶接するための一つの方法は、透過通過(through-transmission)溶接と呼ばれる。この方法では、レーザビームが透過材料を通して吸収材料に集光され、その結果二つの材料を溶接する(W.P. Barnes, “Low expansion laser welding arrangement, ” U.S. Patent No. 4,424,435)。この方法は、多色放射を上部透明層を通して向かわせて下部吸収層に集光することでプラスチックを溶接するために使用された(R.A. Grimm, “Plastic joining method, ” U.S. Patent No. 5,840,147; R.A. Grimm, “Joining method, ” U.S. Patent No. 5,843,265)。この方法の別の例では、レーザ波長に対して透明なブラック・モールド材料が、隣接材料に溶接されるか、或いはレーザ波長を吸収するアシスト材料の追加溶接を経て、溶接される(F. Reil, “Thermoplastic molding composition and its use for laser welding, ” U.S. Patent No. 6,759,458)。同様に、別の方法は、少なくとも一方がレーザ波長の吸収体である二つの材料を溶接するために、投影マスクと共に少なくとも二つのダイオード・レーザを使用する(J. Chen et al., “Method and a device for heating at least two elements by means of laser beams of high energy density, ” U.S. Patent No. 6,417,481)。
別のレーザ溶接法は、溶融と溶接が起こるまで材料を繰り返し加熱するため、二つの材料の界面をレーザビームで連続走査する(J. Korte, “Method and apparatus for welding, ” U.S. Patent No. 6,444,946)。この特許では、一方の材料が透明で、他方の材料がレーザ波長に対して不透明である。最後に、一つの方法は、二つの材料片を溶かすために、紫外線、レーザ、X-線及びシンクロトロン放射を使用し、その後、溶接するためにそれらを接触させる(A. Neyer et al., “Method for linking two plastic work pieces without using foreign matter, ” U.S. Patent No. 6,838,156)。
二つの基板の間に少なくとも一層の有機材料がある有機光放射ダイオードのハーメチック・シールのためのレーザ溶接が開示されている(“Method of fabrication of hermitically sealed glass package ”, U.S. Patent Application Publication 20050199599)。“Welding of Transparent Materials Using Femtosecond Laser Pulses, ” Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 44, No. 22, 2005の中で、玉木らは、透明材料の接合に1kHz、130-fsレーザパルスを使用することを論じている。しかしながら、低繰り返し率(kHz)超短パルスと材料の相互作用は、電子-フォノン結合時間定数と蓄積効果とにより、高繰り返し率超短パルス(MHz)と比べ明確に異なることが知られている。
C サブ表面マーキング
サブ表面マークのガラスへのパターニングは、2−Dポートレートと3−D彫刻作品を作るために芸術家によって改造された。これらのマークは、外部照明を必要としない広い範囲の条件でよく見えるようにデザインされる。
光学的に透明な材料の表面より下にぴったり集光するエネルギーは、目に見える放射状に伝播するマイクロ・クラックを生成する。通常、これらのマークを作るのに長パルスレーザが使用される。幾つかの特許は、次のパターンの可視度(見えやすさ)を制御するために、これらの放射状クラックのサイズと密度の変更を論じている(U.S. Patent Nos. 6,333,486, 6,734,389, 6,509,548, 7,060,933)。
マークの可視度は、マークのサイズよりはむしろ、中心のレーザスポットの周りのクラック密度で制御される(U.S. Patent No. 6,417,485, “Method and laser system controlling breakdown proves development and space structure of laser radiation for production of high quality laser-induced damage image”)。
米国特許No.6,426,480(“Method and laser system for production of high quality single-layer laser-induced damage portraits inside transparent material”)は、輝度(明るさ)がスポット密度で制御される滑らかなマークの単層を使用する。
書き込みレーザ光のパルス持続時間の増加は、マークの輝度を増加させる(U.S. Patent No. 6,720,521, “A method for generating an area of laser-induced damage inside a transparent material by controlling a special structure of a laser irradiation”)。
本発明の概要
超短レーザパルスは、非線形吸収を通して、バルク透明材料内の非常によく定められた領域にエネルギーを与えることができる。レーザの特性と処理条件の整合は、一連の造作(features)、光導波を可能にする屈折率の変化、内部界面の溶融とその後の接合、或いは光を散乱する光学キズの形成、をもたらすことができる。
レーザの高繰り返し率と、十分なパルスとパルスの重なりとは、前のレーザ照射で創出された材料修飾と同じ領域における次のパルスとの間に付加的な相互作用をもたらす。光は、前に現れる修飾の周りに回折し、構造的干渉を通して、前の修飾の“影”に通常“アラゴー(Arago)のスポット”或いは“ポアッソン(Poisson)・スポット”として知られる別のスポットを作る。そのスポットのサイズと強度とは、距離と入力レーザ強度に漸近的に近づく強度とで増加する。
この発明の一つの目的は、従来の技術に比べてより高速度で透明材料のきれいな割断を可能にすることである。これは、材料を横切るシングル・パス・ビームだけで、材料への表面溝と材料内への一つ以上のレーザ修飾領域と両方(或いは、多重サブ表面レーザ修飾造作のみ)を創るために、超短レーザパルスを使用して達成される。多重スクライブ造作は、同時に創られ、バルク材料の表面と内部の両方、或いはバルク材料の内部だけに位置するので、次の割断の成功は、表面溝の深さに依存する必要がない。
スクライブ材料の割断処理中に、割れ目は、表面スクライブ造作で始まり、材料の下方に伝搬する。表面溝が狭すぎると、低品質割断面と貧弱な割断処理精度をもたらす。しかしながら、バルク材料内に付加的なスクライブ造作があると、割れ目は、材料中を所定の方向に誘導され、狭い表面スクライブだけの場合に予測されるよりも高い割段精度と割断面品質とをもたらす。
バルク材料の十分な部分が、表面下に修飾されると、割れ目は、サブ表面修飾領域から始まり、表面スクライブ線の必要性なしに、バルク材料の隣接修飾領域に伝搬することができる。表面溝のサイズを小さくすること、或いは完全に無くすことは、処理環境を汚染する、或いはより広範囲のポスト処理清掃を必要とする処理によるデブリを減らす。
この発明の別の目的は、表面下に超短レーザパルスを集光して透明材料にサブ表面キズのパターンを形成することである。スクライブに関連する処理条件をわずかに変更することは、光を散乱する光学キズを表面下に作ることを可能にする。これらのキズの特性と配列を制御することで、これらのパターンは、側面から照明されたときはっきりと見えるようにされ、照明がないときは見ることが困難にされる。サブ表面マーキングのこの造作は、車のインジケータ・サイン又はライト、警告サイン又はライト、或いは、単純なガラスへの付加価値(たとえば、芸術的)、他に利用される。この技術は、材料に形成されたキズが常にはっきり見えるようにデザインされる既知のレーザ・マーキング技術と異なる。
この発明の一実施例においては、光学キズのパターンが、透明材料の異なる深さに形成される。異なる深さにマークを持つことは、照明光が次のマークを照らすことを一つのマークがブロックする“シャドー”効果を防止する。この構造は、直接的でない隣接照明光源からの散乱量を減らし、オン−オフ状態のコントラストを高める。これらのキズは、離間ポイント或いは延伸線である。
これらのキズの小さいサイズと滑らかなプロフィールとは、照明がないときそれらを見えなくする。また、基板は、特に薄い透明材料の場合、より強く、且つ熱或いは機械的応力によるクラック伝搬の影響を受けないであろう。また、小さいサイズは、単位厚さ当たり、より飛び飛びの書き込み位置を可能にし、与えられた厚さの透明材料の場合、パター
ン解像度を増大させる。
照明されたときのマークの可視度と照明されないときのマークの不可視度との間にはトレード・オフがある。このトレード・オフは、照明光の光源強度、マークのサイズと滑らかさ、及びマークの間隔を制御することで調整される。マークのサイズための制御パラメータは、レーザのパルス持続時間、フルーエンス、繰り返し率、及び波長と、材料内での集光ポイントの深さ及び移動速度とを含む。これらのパラメータは、異なる光学的、熱的、機械的特性を持つ透明材料のために調整される必要があるということが重要である。
所望のパターンは、各ピクセルが平行線の集まりであるとびとびのピクセルの集まりで作られる。ピクセルを利用することは、より大きなコントラストの可視度をもつ、より少ない線で全体の大きな像を創ることを可能にする。
サブ表面パターンは、適当に集光された光の光源で照明される。集光は、パターンを効率よく照明するために重要であり、漏れ光を最小にする。光源とパターンとの間の距離が相対的に短いなら、この照明光は、光源から直接供給される。距離が長いなら、透明材料の上面と下面との間の内部全反射が光のガイドのために使用される。
別の選択肢は、光を供給するための光導波路を透明材料に創ることである。光導波路供給の優位性は、光源とパターン間のパスが、真直ぐ及び或いは短い必要がないということである。光導波路の場合、導波路の出力端は、所定のパターンを照明するために適当にデザインされる。
同じ領域の二つのパターンは、別々にはっきりと区別され、二つの異なる光源で制御可能に照明される。各々のパターンに対する照明光源の軸は、パターンを構成するマークに直交する(垂直である)。このやり方において、個々の照明光源からの最大散乱(及び最大可視度)が、指示されたパターンのみのために選択される。
この発明の別の目的は、高繰り返し率フェムト秒パルスレーザを使って、補足接合剤なしで二つの透明材の接合を可能にすることである。二つの透明材料片の接触領域に高繰り返し率、超高速レーザビームを集光することは、局部的な加熱による接合を起こす。十分な熱の蓄積のために必要な繰り返し率は、パルスエネルギー、ビーム集光幾何学、及び溶接される個々の材料特性、を含む多くの異なるプロセス変数に依存する。フェムト秒レーザスポット接合プロセスに影響する条件の理論的な解析は、そのプロセスのための最適な集光条件の決定を強調する(M. Sarkar et al., “ Theoretical Analysis of Focusing and Intensity Mechanisms for a Spot Bonding Process Using Femtosecond Laser, ” IMECE2003-41906;2003 ASME International Mechanical Engineering Congress, November 2003, Washington, D. C., USA)。
レーザ放射の非線形吸収(超短パルス持続時間によって引き起こされる)と、材料内の熱のパルスからパルスへの蓄積(高繰り返し率で引き起こされる)と、により、透明材料の溶接が、単純性、柔軟性、及び存在する別の方法に並ぶものがない有効性をもって達成される。非線形吸収プロセスは、溶接界面近くに吸収エネルギーの集中をもたらし、損傷を最小化し、材料の残りの部分への光学的歪を最小化する。密度の高いチャンネルが分離される必要があるとき、精密な溶接ラインが可能である。
さらに、本発明の実施例は、接合される材料の界面近くに、高繰り返し率で超短パルスのビームの集光領域を向けることで、レーザ放射の波長に透明な二つの材料のレーザでの接合を可能にする。レーザパルスの繰り返し率は、約10kHzと50MHzの間であり、レーザパルス持続時間は、約50fsと500psの間である。レーザパルスエネルギーとビーム集光光学系とは、溶接される領域で約0.01J/cm2より大きいエネルギーフルーエンス(単位面積当たりのエネルギー)を生成するように選定される。
フルーエンスの最適な範囲は、溶接される個々の材料に依存する。透明な高分子材(ポリカーボネート、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)、他)の場合、必要なフルーエンスは、ガラスの場合より小さい。これは、材料の広く異なる物理特性による。たとえば、PMMAの溶融温度は、摂氏〜150度であり、溶融石英のそれは摂氏〜1585度である。したがって、溶融石英を溶かすためには十分大きなフルーエンスが必要である。他の重要な材料特性は、比熱と熱伝導率を含む。高分子材の溶接のためのフルーエンスの範囲は、約0.01と10.0J/cm2の間である。
一般に、溶接は、接合される二つの面がその間に垂直方向の隙間がないことが要求される。この発明の一つの目的は、盛り上がるリッジを溶接される二つの片の間の界面に形成することであり、そのリッジは、それらの間の任意の隙間をブリッジ(橋渡し)する。高繰り返し率fs秒パルスを表面の少し下に集光することで、加熱、溶融、及び圧力が、ガラス表面の局所盛り上がりをもたらすことができる。これらの隆起は、数10nmから数μmの高さである。照射されたエネルギーが、連結する片に接合するための盛り上がりリッジを起こすのに十分でない場合、わずかに高い集光位置でのレーザの二番目のパスが、その連結する片にリッジを溶接する。単一のリッジが隙間をブリッジするのに十分な高さでないなら、連結する面の上方に第二リッジが創られる。
さらに、変化する線形吸収をもつ材料の溶接がこの発明で達成される。この発明が、エネルギーを材料に結合するための第一手段として非線形吸収現象を使うとしても、放射レーザパルスの少量の線形吸収を示す材料もここに開示された方法を使って溶接される。線形吸収がこの発明に関係するので、線形吸収の重要な面は、高い線形吸収の場合、ビームが集光される材料の厚さが減少するということである。さらに、より高い線形吸収は、溶接造作の局在化の度合いを減少させる。
レーザフルーエンスの空間分布は、溶接品質に影響する。典型的なレーザ処理が、より小さなガウス型レーザビームを作るために、ガウス型レーザビームを集光することを含むとはいえ、理想的なビーム整形法が、特定の溶接処理の品質及び或いは効率を改善するために使用される。たとえば、典型的なガウス型フルーエンス分布の空間的に均一なフルーエンス分布(“フラット・トップ”或いは“トップ・ハット”強度分布として知られる)への変換は、より一層均一な溶接造作をもたらす。
パルスの超短特性は、レーザエネルギーの非線形吸収プロセスを通しての透明材料への結合を可能にするが、このプロセスは、一般的に材料の加熱をもたらさないので、これだけでレーザ溶接を可能にしない。それは、他の処理条件の特定の範囲と結合される高パルス繰り返し率の付加的な面である。高繰り返し率は、材料の溶融とその後冷却及び接合が行われるように材料内への熱の蓄積を可能にする。
補足接合剤の不要により、処理時間と費用が減らされ、余分の接合剤によるデバイス内の汚染が除去され、正確な寸法公差が維持される。接合ポイントとラインとは、任意の干渉を起こすことなく他の造作に非常に近づけられる。また、集光ボリュームでの集中されたフルーエンスと非線形吸収プロセスとにより、溶接領域に近接する材料の非常に限定された熱歪が可能である。
本発明は、添付図面と関連して以下の記述からより明確に理解されるであろう。
1.超短パルスレーザスクライビング
図1は、その後の割断のために透明材料をスクライビングする方法である本発明の一実施例を示す。この実施例は、超短レーザパルスのビーム(2)を生成するレーザ・システム(1)、必要なレーザビーム強度分布を生成する光学システム(6)、及びレーザパルスの波長に対して透明なスクライブされるターゲット材料(7)を用いる。さらに、Z軸ステージ(8)が、ビーム集光位置(深さ)制御のために使用され、自動X−Y軸ステージ・アセンブリ(9)が、試料片(7)を集光レーザビームに相対的に直交するように移動させるために必要とされる。代わりに、走査ミラー(3)、(4)、(5)を使用して静止ターゲット材料に対してレーザビーム(2)が相対的に移動される。
レーザビーム(2)が、所定の3次元強度分布を創るためにレーザビーム(2)を変換する光学システム(6)を通して向けられる。変換されたレーザビームの個々の領域は、非線形吸収を通してターゲット材料のアブレーション及び或いは修飾を起こす。材料のアブレーションは、一般的に強いレーザ照射による材料の蒸発を意味する。材料の修飾は、照射された材料の物理的及び或いは化学的構造の変化を広く意味し、材料中のクラックの伝搬に影響を与える。レーザ修飾は、特定の材料の場合、一般的にレーザ・アブレーションより低い光強度を必要とする。
変換されたビームは、材料(7)の中及び或いは表面の多重決定位置の材料(7)のアブレーション/修飾を起こすためにターゲット透明材料(7)に向けられる。アブレーションした及び/或いは修飾された領域は、一般的に光学伝搬軸に沿って材料(7)の中に位置し、材料(7)内で所定の距離で分離される。変換されたビームとターゲット材料(7)とは、互いに相対的に移動され、材料(7)中に多重レーザスクライブ造作の同時生成をもたらす。多重スクライブ造作は、適当な力を加えることで材料の割断を可能にする(図1(b)参照)。
図2は、本発明の別の実施例を示し、ガウス型空間強度分布を持つレーザビーム(10
)が、非線形吸収とその後のターゲット材料(7)のアブレーション或いは修飾とのための十分な強度を創るために集光される。強い集光領域は、材料の表面の下バルク材料内の選定された位置に配置される。さらに、適当な集光光学系とレーザパルスエネルギーとを用いることで、材料のアブレーションを起こすのに十分な強度の領域が、材料(11)の表面或いは表面近くに同時に生成される。
重要な面は、バルク材料(集光されたビームウエストが位置する)の中だけでなくビームウエスト(12)より前の光学伝搬軸の別のポイントにも(バルク内と材料の表面と両方に)アブレーション或いは修飾を同時に起こすための十分な強度があるように、パルスエネルギーと集光幾何学とが、選ばれるということである。レーザパルスがターゲット材料(11)に出会うと、それらの高強度領域(放射状ガウス型強度分布の中心近くの)は、材料で非線形吸収されアブレーション或いは修飾が起きる。しかしながら、レーザビームの外側の特定領域は、材料で吸収されるには強度が低すぎ、バルク材料内のもっと先に
位置するビームウエストへの伝搬を続ける。ビームウエスト位置でのビーム径は、バルク材料内に非線形吸収とその後のレーザ修飾とを起こすのに十分な強度を再度生成するだけ、十分に小さい。
表面アブレーションの直ぐ下の領域は、初期の表面造作が創られた(アラゴのスポット)後、引き続くパルスの回折と構造的干渉で修飾される。相対的に高い繰り返し率のレーザ光源は、ほど良い移動速度でこのプロセスをなお一層可能にする。
これらの集光とパルスエネルギーとの条件の下での、レーザビーム(10)に対する材料(11)の相対移動は、一緒になって材料の高精度の割断を可能にする多重レーザ修飾領域(すなわち、表面溝(13)と一つ以上のバルク修飾領域(14)、或いは二つ以上のバルク修飾領域)の生成をもたらす。
図3は、本発明の別の実施例を示し、アキシコン(円錐形状)レンズ(20)が、多重内部スクライブライン(21)を生成するために使われる。レーザビーム(22)で照明されると、アキシコンレンズ(20)は、〇次ベッセルビームとして知られるビームを生成する。伝搬軸と直交する面での光学強度分布の数学的記述が、ビーム中心から径方向の位置が独立変数である〇次のベッセル関数で規定されるという事実からこの名前が来ている。通常の集光方法で生成される類似サイズのスポットの場合よりも、より一層大きな(すなわち、通常の集光ビームのレーリー・レンジより一層大きい)距離に対して、同じ小さいサイズで伝搬できる高強度中心ビームスポットを有するという稀な特性を、このビームは持っている。中心強度場は、強度が増加する半径と共に減少する複数の同心円状の光リングで囲まれている。伝搬ベクトルの内向き径方向成分により、これらの光のリングは、ベッセルビームが伝搬するにつれて、小さい中心ビームスポット(25)を継続して再現する。したがって、小さな高強度中心ビームスポット(23)が生成され、その小さい径は、ターゲット材料(24)の全厚さにわたって小さな直径を維持する。広い範囲に渡るしっかりしたビーム集光のため、ベッセルビームは、通常、非回折ビームとも呼ばれる。
外側のリングが強い中心スポット(23)を再現するので、中心スポット(23)が材料表面(26)でアブレーションを起こすのに十分な強度であると、リング(アブレーションした領域より大きな直径を持つ)は、短い距離の後でビームの中心に集中し、アブレーション或いは材料修飾が再び起きることができる強い中心スポットを再現する。適当な光学システムのデザインと十分なパルスエネルギーとで、このアブレーションとその後のビーム再現のプロセスは、透明材料(24)の全バルクを通して繰り返すことができる。分布屈折率レンズと回折光学素子のような他の光学要素もベッセルビーム生成のために使用される。
本発明の追加実施例において、本技術の当業者に良く知られた代替ビーム強度変換技術が、ターゲット材料内に多重スクライブラインを生成するようにビーム強度を合わせるため、本発明の光学システムに採用される。一つのそのような方法は、所定の距離離れた二つの異なる高い光強度領域を創るために、非点収差ビーム集光を利用する。図4は、集光された非点収差ガウス型ビームの強度分布プロットを示し、図中のXとY軸の焦平面は、20μm離れている。二つの異なる高強度領域(一定強度等高線で区別される)の存在に注意して欲しい。ターゲット材料に向けられると、これらの二つの領域は、多重スクライブ造作を創るために使用される。
多重スクライブ造作を透明材料に生成するための別の方法は、ビーム伝搬軸に沿っての異なる位置に高い光強度の多重領域を生成するためにデザインされた回折光学素子(DOE)を採用する。図5は、そのようなDOEがどのように機能できるか示している。これらの多重高強度領域がターゲット材料に向けられると、材料の割断のための多重スクライブ造作を生成する。
多重スクライブアブレーション造作を生成するために使用される様々なビーム集光及び/或いは強度マッピング法の場合、付加的な光学要素が、全体のビーム形状に対して楕円成分を生成するために導入される。長軸がビーム走査方向に平行するように楕円ビームの向きを合わせることで、より高い走査速度が達成される。楕円ビーム形状が、滑らかで連続したスクライブ造作(反対側では空間的に離れたパルスが材料をアブレーションすることによってもたらされるドットスクライブ造作)の加工のための十分なパルスとパルスの重なりを可能にするので、高い走査速度が達成される。増加するパルスの重なりと高い走査速度とは、大きな円形ビームスポットで達成されるが、これは同時にしばしば望ましくない広いスクライブ造作をもたらす。
2.超短パルスレーザ溶接
本発明の別の実施例は、透明材料のレーザ溶接のためのプロセスに関する。図6に示すように、本実施例は、高繰り返し率の超短レーザパルス(51)ビームを生成するレーザシステム(50)の使用、十分な集光パワーの集光素子(55)(たとえば、レンズ、顕微鏡対物レンズ)、及び一緒に接合される少なくとも二つの材料(56)と(57)、を必要とする。二つの材料の少なくとも一方は、レーザの波長に対して透明である。さらに、ビーム集光位置決めステージ(58)が、レーザビーム(51)の集光位置の調節のために使用され、自動ステージアセンブリ(59)が、試料片(56)と(57)を集光レーザビームに対して相対的に動かすために通常必要とされる。
本実施例において、レーザ溶接される二つの材料“トップ片”(56)と“ボトム片”(57))が、それらの面の間に僅かな隙間或いは全く隙間なしの界面を創るために、互いに接触して配置される。レンズ(55)が、高強度レーザ放射の集光領域を創るためにレーザビームのパスの中に配置される。二つの透明材料(56)と(57)とは、ビーム集光領域がトップ片(56)とボトム片(57)の界面に及ぶように、集光されたレーザビームに対して相対的に位置決めされる。十分なレーザ強度により、材料界面の溶接が起きる。ビーム集光領域に関して透明材料(56)と(57)を移動させ、同時に材料(56)と(57)の界面をビーム集光領域に極めて接近させ続けることで、レーザ溶接の所定の長さが得られる。この実施例の極めて特異な応用においては、集光されたレーザビームがトップ(透明)片(56)の中を移動し、集光領域をトップ片(56)とボトム片(57)の界面近くに形成されるように、材料(56)と(57)が配置され、その結果二つの材料が溶接される。
他の溶接プロセスと異なり、本発明のプロセスは最初線形吸収よりむしろ非線形吸収を使用して溶接する。このため、この溶接プロセスには特異な特性がある。プロセスがレーザビームの焦点に限定されるように、非線形吸収は非常に強度依存である。したがって、吸収が、透明材料の深い位置での焦点の周囲のみで起きるようにされ得る。超短パルスでの典型的な非線形吸収は、プラズマ形成と(たとえあるしても)非常に僅かの熱蓄積をもたらすので、超高速レーザでのアブレーションは、非常に小さな熱影響ゾーン(HAZ)をもたらす。しかしながら、強度を非線形吸収が起きるには十分高いがアブレーションが起きないように十分低くすることで、多少の熱が蓄積される。レーザの繰り返し率が十分に増加されると、熱が材料中に十分蓄積され溶融をもたらす。
レーザシステム(50)は、100kHzと5MHzの間のパルス繰り返し率で約200−500fsの範囲のパルス持続時間と約1045nmの波長をもつパルスのほぼ平行化されたレーザビーム(51)を放出する。最初のビーム偏向ミラー(52)は、レーザ
ビームをパワー調整アセンブリ(53)に向ける。このアセンブリは、溶接プロセスに使用されるパルスエネルギーを調整するために使用される。そのような減衰を行うための特定の方法は、この技術の当業者に良く知られている。二番目のビーム偏向ミラー(54)は、ビームをビーム集光対物レンズ(55)に向ける。ビーム集光対物レンズ(55)は、ビーム集光対物レンズ(55)から大凡の距離(F)で最大値をもつ、処理のための適当なフルーエンス(エネルギー/単位面積)を達成するために、レーザパルスを集光する。ビーム集光位置決めステージ(58)は、この最大フルーエンス領域がターゲット材料(56)と(57)の界面に位置するようにビーム集光対物レンズ(55)を移動させる。XYステージアッセンブリ(59)は、ターゲット材料(56)と(57)の界面に直線の溶接造作又は円形溶接造作のアレーを生成できるために集光ビームを供給するように集光ビームに対してターゲット材料(56)と(57)を移動させる。
図7は、小さな隙間(60)で隔てられた二つの片の間で溶接が必要とされる本発明の別の実施例を示す。最初、レーザビーム(51)は、ボトム片(57)の表面の下に集光される。パルスエネルギーと集光条件の適当な制御で、サンプルがビーム焦点に呼応して移されるので(或いはビームがターゲットに呼応して動くので)、盛り上がりリッジ(61)が形成される。この盛り上がりリッジ(61)は、トップとボトムターゲット間の隙間をブリッジする。そのビーム焦点をもつレーザの二番目のパスが、盛り上がりリッジ(61)のトップとトップ片(56)の間の界面近くの高さに上がり、溶接(62)を形成する。
3.可視/不可視レーザマーク
図1aに示す同じシステムが、透明材料にサブ表面マークを形成するために使用され、そこでは、適用されるレーザビームが透明材料基板の表面の下に集光される。図8は、ガラスのような透明材料(64)に描かれた矢印パターン(63)の上面視模式図である。光源(65)は、パターンを照明するために矢印マークに光を供給する光導波路(66)に光を注入する。光導波路の出力開口数は、所定のソースを十分に照明するべく適当にデザインされるべきである。多重光導波路が、パターンの異なる領域を照明するために使用される。異なる照明光源のタイミングを制御することは、異なる装飾、合図効果を作ることができる。代わりに、光導波路を使用するよりむしろ、パターンが適当に集光された光源で直接照明される。
図9(a)は、全てが照明光に直交する平行線で作られた矢印マーク(63)の拡大上面視模式図を示す。これらの平行線は、材料修飾の領域を創るためにターゲット基板内にレーザ光をしっかりと集光することで生成される。図9(b)は、矢印マーク(63)の側面視模式図を示す。矢印は、異なる深さのマークのグループからなる。これらのマークは、光導波路(66)で供給される光を観察者(67)の方に散乱する。輝度は、照明光の強度、個々のマークのサイズ、及びマークの密度で制御される。
図10は、パターンが“ピクセル”(68)からなるコンセプトの模式図を示し、ここで、各ピクセルは、基板材料を修飾するためにレーザ光をしっかり集光することで形成される、異なる深さの平行線のグループ(69)からなる。
実験的実施結果
1.超短パルスレーザスクライビング
図11に示すように、20X非球面集光対物レンズ(焦点距離8mm)を使って、100μm厚さのサファイアウエハに一対のスクライブ線(表面溝(70)とサブ表面スクライ造作(71))がレーザビームのシングルパスで同時に加工された。割段面は、良好な品質を示している。走査速度は40mm/s(非最適化)であった。
同じレーザパルスエネルギーと繰り返し率を使って、同一の処理条件(周囲の大気環境、他)のもとでの表面スクライブ線のみの場合、材料の良好な割段をもたらす最大スクライブ速度は、〜20mm/sであった。
2.超短パルスレーザ溶接
多数のレーザパルスが溶接されるための材料の個々の領域で吸収されると、加熱、溶融及び材料の混合が起こり、冷却すると個々の材料は一緒に融着される。材料を一緒に溶接するのに必要なパルス数は、プロセス変数(レーザエネルギー、パルス繰り返し率、他、集光幾何学、他)と同様に材料の物理特性に依存する。例えば、高熱伝導率と高融点の組み合わせをもつ材料は、溶接が起きるために照射領域に十分な熱の蓄積を行うために、より高いパルス繰り返し率とより低い移動速度を必要とする。
A.ポリカーボネートの溶接
200kHzのパルス繰り返し率で動作し、1045nmの波長をもつ高繰り返し率、フェムト秒パルスレーザでの実験は、二つの光学的に透明な材料のレーザ接合をもたらした。特に、〜2μJのレーザパルスが、焦点距離100mmのレンズで、1/4インチ厚さの透明ポリカーボネートのトップ面を通して、同じサイズの透明ポリカーボネートのトップ面とのボトム面界面に集光された。ポリカーボネート片は、ビーム集光領域の位置を材料の界面近くに維持しながら、レーザ伝搬方向に直交する面内で直線移動された。二つの片は、レーザ照射界面で一緒に融着され、それらを一方から引き離すには十分な力が必要であった。
B.溶融石英の溶接
厚さ200μmの溶融石英板が、40Xの非球面レンズと5MHzのレーザ繰り返し率を使って、厚さ1mmの溶融石英板に溶接された。レーザの1/e2ビーム径は、〜3.6mmで、非球面レンズの焦点距離は4.5mmであり、動作NA(開口数)0.37をもたらす。図12は、溶融石英の溶接造作を示し、画像は、二つの石英板を分割する前と後の両方で撮られた。最初の画像(a)は、滑らかに溶けたガラスの領域を示すそのままの溶接造作を示し、次の画像(b)と(c)は、溶接がはがされた後の二つのガラス面を示す、はがされたガラス面を示している。
5mm/s以上の速度が可能であるが、溶接速度は0.1から1.0mm/sであり、最大速度はパルス繰り返し率の増加と共に増加する。このプロセスの名目上のフルーエンスの範囲は、5−15J/cm2であり、名目上のパルス持続時間の範囲は、10−100fsである。これらのフルーエンスとパルス持続時間の範囲において、名目上のパルス繰り返し率の範囲は1−50MHzである。厳しいプロセスの最適化にとって、フルーエンス、パルス持続時間、及び繰り返し率に対してのこれらの範囲は、1−100J/cm2、1fs−500ps、及び100kHz−100MHzにそれぞれ広げられる。高繰り返し率は、溶融石英の溶け出しを始めるための十分な熱の蓄積のために必要である。
同じ繰り返し率で、より高いエネルギーのパルスが利用できる場合、ゆるい集光が所要のフルーエンスをもつ大きな集光体積を作ることができる。この溶接集光体積のサイズと形状は、溶接される領域に基づいて適合される。
3.可視/不可視レーザマーク
図13は、側面からのグリーン光源で照明された矢印マークをもつガラスサンプルを示す。ほら、矢印パターンがはっきりと見える。図8と9の模式図は、矢印パターンの詳細を示し、ここで、照明光源に直交し、深さが異なる線は、ぴったり集光するレーザ光で生成された。
図14は、照明光源オフでの同じガラスサンプルを示す。明らかに、矢印パターンが見えない。
図15は、図13の矢印マークの輪郭を明瞭に示すために使用される個々のピクセレルの顕微鏡写真を示す。図16(a)は、ガラス内部の装飾パターンの写真を示し、図16(b)は、個々のマークの顕微鏡画像を示す。
図16(b)のマークは、約200μmのサイズで非常に粗く、中心から放射するはっきりしたクラックを有する。図15のピクセルは、一連の平行線で作られ、各線は、大凡10μmの幅と250μmの長さである。線間隔は、50μmである。図15と16(b)の間のサイズの差と滑らかさの差は、図13と14の矢印が見えるためには側面照明を必要とするが、図16の彫刻が最良の照明条件ではっきり見える理由を示している。生成される造作のサイズと滑らかさは、レーザのパルスエネルギー、パルス持続時間及び波長とターゲット中のビームの移動速度とで制御される。最適なパラメータは、個々のターゲット材料に依存する。図15のピクセルの可視度は、ピクセル中の各線の幅と長さ、滑らかさはもちろん、ピクセル内の線密度、を制御することで制御される。
したがって、記述したように前記レーザのパラメータを制御することで、その線の粗さを制御するが、透明材料の表面下にレーザ修飾造作の可視パターンを生成する一つの方法は、きっちり集光した超高速パルスレーザを使って材料内の異なる深さに複数の線を最初に形成することで始まる。その線は、その線に伝搬する或いは一般的に直交するように向けられる光を使って照明される。この方法で形成されたパターンは、直交する方向から照明されると肉眼ではっきり見え、照明がないと、すなわち図14に示すように通常の取り巻く光の条件では、肉眼には全然見えない。照明は、線上に、集光された光源を向ける或いはパターンを十分に照明するために選定された出力開口数をもつ光導波路を通して線に光を向けることで、ガイドされる。
前記線と異なる一つ、例えば異なるピクセルの線が、他方に関して輪郭を明瞭に示す角度にあり、多重光源を配置して、それらが前記線のサブセットに光をおおよそ直交する方向に向けるように、別々に或いは同時に照明される。
したがって、本発明は、レーザ、例えば超高速パルスレーザで形成されたサブ表面のパターンをもつ透明材料を提供し、ここで、マーキングは、材料内の異なる深さの線で形成され、その線は、線に直交する方向に向けられた光源で照明されるとき肉眼で十分見える。