JP6458009B2 - 心不全処置 - Google Patents

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Description

本発明は、胎盤増殖因子2(以降、PlGF−2と呼ぶ)を用いて哺乳動物において心不全または1またはそれを超える個々の心不全表現型を処置および/または予防することに関する。
心臓血管疾患の予防および処置の著しい進歩にもかかわらず、世界的統計は心不全(HF)の発生率および有病率が増加し続けていることを示す。工業先進国の高齢化社会において、HFの有病率は50〜59歳の間で1%であるが、75歳を超えると10%である。さらに、心筋梗塞後の生存の増加ならびに心臓突然死の予防のための薬理学的およびデバイス治療の進歩は、慢性HFを発症するリスクがある患者のプールを著しく拡大した。
従来の研究により、急性心筋梗塞(AMI)のげっ歯類モデルにおいて胎盤増殖因子アイソフォーム2(PlGF−2)投与が、血管形成を誘導し、心筋の局所および全体の機能を改善することができることが示された(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。胎盤増殖因子アイソフォーム1(PlGF−1)の単回投与または所定の持続送達期間がヒト疾患を表す大型動物モデルにおいて心臓の全体機能を高めることができるかどうかは不明なままである(非特許文献4;非特許文献5)。最近、全身へのrhPlGF−1注入が、有害作用なく慢性虚血心筋の局所血流および収縮機能を著しく向上させることが実証された。しかし、局所収縮機能の部分的な改善を全体のLV機能のさらなる回復に移すことはできなかった(非特許文献6)。PlGF−2の作用に関する同様の知識は現在不足している。
特定のモデルにおけるPlGF1およびPlGF2のHFパラメータへの特定の効果を記載する一部の刊行物もあるが、これらはこれらのタンパク質の治療可能性を率直に示すことができていないし、さらにPlGF1およびPlGF2について得られたデータの比較ができない。実際に、ラットモデルはBinsalamah等、2011(非特許文献1)、Kolakowski等、2006(非特許文献4)およびIwasaki等、2011(非特許文献5)に使用されたが、Binsalamah等(2011)およびKolakowski等(2006)だけが、生理食塩水中のPlGF2−およびPlGF1−タンパク質をそれぞれ心筋内投与した。Binsalamah等(2011)はまた、ナノ粒子に捕捉されたPlGF2−タンパク質を心筋内投与した。Iwasaki等(2011)は、(プラスミドをコードするPlGF−1による)PlGF1の遺伝子治療的心筋内投与を使用した。Binsalamah等(2011)は、心エコー検査法を応用して左心室の駆出率(LVEF%)を求め、一方、Kolakowski等(2006)は、開胸技法を用いて左心室に挿入したコンダクタンスカテーテルを使用した。そのため、得られた結果からは、PlGF1とPlGF2の治療効果の最終的な差を求めることができない。Roncal等、2008(非特許文献2)およびTakeda等、2009(非特許文献3)は、両者ともにHFのマウスモデルに頼った。Roncal等(2008)は、遺伝子療法(アデノウイルスベクター)を応用してPlGF2を投与し、Takeda等(2009)は、組換え型PlGF1タンパク質を投与した。この場合もやはり、この差は得られた結果の信頼できる比較を阻害し、一方のPlGFアイソフォームと他方のPlGFアイソフォームを比較した最終的なより良い治療効果を捕らえることができない。
Binsalamah et al.2011 Int J Nanomed 6,2667 Roncal et al.2008 J Pathol 216,236 Takeda et al.2009 Circ J 73,1674 Kolakowski et al.2006 J Card Surg 21,559 Iwasaki et al.2011 PLos One 6,e24872 Liu et al.2013 Am J Physiol Heart Circ Physiol 304,H885
一態様では、本発明は、哺乳動物における心不全表現型の処置または予防(方法)で用いるための、胎盤増殖因子2タンパク質(PlGF−2)を含む組成物に関する。
心不全表現型は、心室機能不全、収縮末期容積の増加、駆出率の低下、心室リモデリング、または拡張末期容積の増加のいずれか1つまたはその組合せとして定義されることができる。特に、心室機能不全は、収縮末期容積の増加および/または駆出率の低下によって定義されることができる。あるいは、心室機能不全は、弛緩障害、心室充満圧の増加および保持された駆出率によって定義されることができる。特に、心室リモデリングは、拡張末期容積の増加によって定義されることができる。
処置または予防されるべき心不全表現型は、左心室および/または右心室で示され得る。特定の実施形態では、それは左心室で示される。本明細書上文に記載される組成物は、さらに哺乳動物における心不全表現型の処置または予防(方法)で用いるためのものであり、前記哺乳動物は、アテローム硬化性である。
本明細書上文に記載される組成物中のPlGF−2タンパク質は、組換え型PlGF−2タンパク質、例えば哺乳動物細胞培養から得たものであってよい。そのような哺乳動物細胞培養の一例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)培養または等しい効力を有する細胞培養である。そのような細胞培養は、一過性または恒常的な方法でPlGF−2タンパク質を発現する能力がありうる。本明細書上文に記載される組成物中のPlGF−2タンパク質は、一実施形態において、ヒトPlGF−2タンパク質、例えば配列番号1によって定義されるものなど、またはその多形変異体(多形体)である。
本明細書上文に記載される組成物を成すいずれのPlGF−2タンパク質も、特に全身投与による使用のためのものである。そのような全身投与は、血管内(例えば静脈内)投与または皮下投与であってよい。
rhPLGF2−処置が、局所心筋機能を改善することを示す図である。磁気共鳴画像法より得た、局所心筋機能の指標としての局所の壁肥厚は、対照と比較してrhPLGF2で処置されたブタにおいて、安静時およびドブタミンに誘発されたストレス中の虚血領域で、より良好に保たれた。グラフマーカー:黒色正方形(■)=虚血、対照(リン酸緩衝生理食塩水)、n=12;黒色三角形(▲)=虚血、rhPlGF2処置、n=12;黒色菱形(◆):偽の前壁、n=3。統計マーカー:遠隔および偽に対してp<0.05;†安静時に対してp<0.05;‡低用量ストレスに対してp<0.05;#対照に対してp<0.05。 rhPLGF2で処置された心臓の虚血領域および遠隔領域における、安静時およびアデノシンに誘発されたストレス中の心筋血流(MBF)を示す図である。rhPLGF2で処置された心臓の虚血領域における安静時およびアデノシンに誘発されたストレス中の心筋血流(MBF)は、対照または偽の心筋血流(左パネル)よりも高かった。MBFは、安静時よりもストレス状態の方で高く、灌流保存を示した。遠隔領域の処置群間に有意差はなかった(右パネル)。虚血領域(左パネル)のグラフマーカー:黒色正方形(■)=対照(リン酸緩衝生理食塩水)、n=11;黒色三角形(▲)=PlGF−2処置、n=11;黒色菱形(◆)=偽、n=2。遠隔領域(右パネル)のグラフマーカー:正方形(□)=対照(リン酸緩衝生理食塩水)、n=11;白色三角形(Δ)=PlGF−2処置、n=11;白色菱形(◇)=偽、n=2。統計マーカー:遠隔および偽に対してp<0.05;†安静時に対してp<0.05;‡対照に対してp<0.05。 アテローム硬化性バックグラウンドで再灌流を伴う心筋梗塞のネズミモデルに適用した実験設計を表すフローチャートを示す図である。LAD=左冠動脈前下行枝;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;PlGF=組換えヒトPlGF−2。 アテローム硬化性バックグラウンドで再灌流を伴う心筋梗塞のネズミモデルでの研究プロトコールのフローチャートを示す図である。LAD=左冠動脈前下行枝;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;PlGF=組換えヒトPlGF−2;xW=x週;ECHO=心エコー検査法;IHC=免疫組織化学。 0W=ベースライン(BL)、8週(心筋梗塞の誘導後4週および処置の開始に相当)、ならびに12週および20週の時点での、対照(PBS)処置群およびrhPLGF2処置群における左心室(LV)収縮末期容積および拡張末期容積を示す図である。体表面積に対して指標化されたLV拡張末期容積(パネルA)および体表面積に対して指標化されたLV収縮末期容積(パネルB)は、対照群においてMI後に著しく増加したが、rhPLGF2処置後には増加しなかった。ベースラインに対してp<0.05。 0=ベースライン(BL)、8週(心筋梗塞誘導後4週および処置の開始に相当)、ならびに12週および20週の時点での、対照(PBS)およびrhPLGF2処置群の左心室(LV)の全体的機能を示す図である。12週後および20週後、駆出率(EF)は、rhPLGF2処置の後に著しく高くなった。ベースラインに対してp<0.05;**8週のMIに対してp<0.05。 対照(PBS)およびrhPLGF2で処置したマウスにおける心臓の炎症を、遠隔の心臓領域(パネルA)および虚血領域(パネルB)のMAC3−陽性細胞の数を測定することによって評価したグラフを示す図である。MAC3−陽性細胞の数は、両方の処置群において12週と比較して20週後により高かった。12週に対してp<0.05。 ドップラーパルス波超音波を用いて測定された大動脈ピーク血液速度を示す図である。パネルA:5カ所の測定部位による大動脈の走査画像:1=大動脈根;2=上行大動脈;3=無名動脈に隣接する大動脈弓;4=頚動脈に隣接する大動脈弓;5=鎖骨下動脈に隣接する大動脈弓。パネルB:ベースライン(BL;0週=0W)、心筋梗塞後4週、PBSまたはrhPlGF−2投与の開始に相当(MI8W)ならびに12週および20週の大動脈弓ピーク血液速度(測定点3)。ピーク血液速度の一過性の類似した上昇が両方の群において12週に起こった。ベースラインに対してp<0.05。 対照(PBS)およびrhPLGF2で処置された動物における大動脈プラークの血管新生を測定し、プラーク面積に関連する毛細血管面積(パネルA)およびプラーク面積に関連する細動脈面積(パネルB)として表した図である。プラークの毛細血管および細動脈密度は、異なる時点の処置群間で類似していた。 プラーク面積に関連するMAC3陽性細胞面積として評価された、動脈硬化病変における炎症応答が、rhPLGF2処置群および対照(PBS)群間で同等であったことを示す図である。
左冠動脈前下行枝の永久結紮によって引き起こされた急性心筋梗塞の以前のげっ歯類モデルは、大量の心臓虚血および大規模な梗塞サイズを誘導した(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。本発明の基礎をなす実験で使用されるブタモデルは、進行した冠動脈疾患患者の狭くなった冠動脈パターンを模倣するために流れを減少させるステント技術を使用し、中程度の心筋梗塞に関連しているが、収縮末期容積(EDV)の増加および駆出率(EF)の低下によって示される、左心室の全体的機能の妨害をはじめとする、左心室の機能の著しい変化(虚血に誘導される収縮機能不全)を誘発する(非特許文献6)。拡張末期容積(EDV)は、増加しないか、または僅かだけ増加するので、このモデルは中程度の心室拡張だけを表す。ブタ(すなわち、サス・スクロファ(Sus scrofa)、ブタ)冠動脈流れ減少モデルは、中程度の心不全(HF)を伴う、臨床的に関連する虚血性心疾患の病態生理をより良好に表す。本明細書において使用される、アテローム硬化性バックグラウンド(進行したアテローム動脈硬化性プラーク蓄積を伴う再灌流された心筋梗塞)における虚血−再灌流のマウスモデルは、収縮機能不全(虚血誘発性;HF表現型:収縮末期容積の増加および駆出率の低下)、心室リモデリング(梗塞誘発性;HF表現型:拡張末期容積の増加)および病理学的血流パターン(主要大動脈でのアテローム動脈硬化性プラーク蓄積)をはじめとする、心臓および血管のリモデリングへの化合物の臨床効果を調べることを可能にする。
心室機能不全、心室リモデリング、ESVの増加、EDVの増加およびEFの低下は、本明細書においてさらに心不全(HF)表現型(の一部)と呼ばれる。ESVの増加およびEDVの増加は、健康な被験体の集団で測定され、それから導き出された正常な対応する容積と比較した場合の容積の増加として求められる。これらの容積は体重に依存するので、体表面積(BSA)への正規化が有用であり、しばしば指標化された値(EDVi、ESVi)が使用される。EFの低下は、健康な被験体の集団で測定され、それから導き出された正常な対応するEFと比較して求められる。EFは、一回拍出量(EDV−ESVとして求められる容積)をEDVで除算したものである。
例えば、Jorgensen等、2007(Chest 131:1050;同書中の表2参照)によって評価されたヒトの対照群において、左心室のEDViは84±15mL/mであり、左心室のESViは34±11mL/mであり、右心室のEDViは91±15mL/mであり、右心室のESViは42±11mL/mである。左心室のEFが60±8%、右心室のEFが54±7%と記すJorgensen等、2007(上記参照)に裏付けられるように、ヒトにおける正常なEFは、50%よりも大きいと考えられる(急性および慢性心不全の診断および処置のためのESCガイドライン 2012、Eur Heart J 33:1787)。本明細書において用いられるApoE−/−マウスでは、正常なベースラインEDVは、約25〜35uLであり、正常なベースラインESVは約12〜17uLである。これらの容積は体重に依存しているので、体表面積(BSA)に対して指標化することは有用である。マウスについては、次式を使用してBSAを計算することができる(BWはグラムで表される体重である):BSA(m)=(9×BW(2/3))/10000。平均ベースラインBW=17.4±1.8gを用いると、指標化されたベースラインEDVおよびベースラインESV値は、EDVi=6.4±1.5(mL/m)およびESVi=2.8±0.8(mL/m)である。マウスについて、正常な駆出率は55〜65%である。
ブタモデルでPlGF−1を用いる以前の研究は落胆するものであった。その理由は、左心室(LV)収縮末期容積(ESV)およびLV駆出率(EF)の改善が8週でも観察されなかったためである(非特許文献6)。本発明に至る研究(実施例1)では、以前にPlGF−1で用いたものと同じ条件下でPlGF−2を投与した場合に、8週でLVESVとLVEFの両方の著しい改善が観察された。PlGF−1とPlGF−2との間の高い配列類似性から考えて、この知見は非常に驚くべき予想外のものであり、PlGF−2を投与することによって処置可能であるという新しい適応症として心不全を加えるものである。本明細書において使用されるHFのアテローム硬化性マウスモデル(実施例2)は、(ブタモデルのように)PlGF−2の心室機能への有益な効果を確認する。その上、PlGF−2の心室リモデリングへの有益な効果が観察された。PlGF−2はさらに、心臓の損傷または心筋の炎症を誘発しなかった上に、新血管新生または炎症細胞浸潤に起因するプラーク不安定性を増加させなかったので、安全であることが分かった。PlGFは炎症誘発性であることが知られているため、さらにPlGFの喪失はアテローム動脈硬化病変の発達を遅らせるので、これらの知見は驚くべき予想外のものである(Roncal et al.2010,Cardiovasc Res 86:29)。
一態様では、本発明は、そのため、本明細書に記載される哺乳動物における心不全またはより特に1または複数の特定の心不全表現型の処置または予防(方法)で用いるための、胎盤増殖因子2タンパク質(PlGF−2)に関する。本発明は、哺乳動物における心不全表現型の処置または予防(方法)で用いるための、胎盤増殖因子2タンパク質(PlGF−2)を含む組成物を提供する。心不全表現型は、心室機能不全、収縮末期容積の増加、駆出率の低下、心室リモデリング、または拡張末期容積の増加のうちのいずれか1つ、またはその組合せとして定義されうる。特に、心室機能不全は、収縮末期容積の増加および/または駆出率の低下によって定義されることができる。あるいは、心室機能不全は、弛緩障害、心室充満圧の増加および保持された駆出率によって定義されることができる。特に、心室リモデリングは、拡張末期容積の増加によって定義されることができる。
あるいは、処方されると、本発明のこの態様は、哺乳動物において心不全を処置または予防する1または複数の方法に関し、前記方法は、心不全と診断された哺乳動物に治療上有効な量の胎盤増殖因子2(PlGF−2)を投与するステップを含み、この際、前記投与の結果として前記心不全が処置または予防される。あるいは、本発明は、心不全を処置または予防する(際に用いる)ためのPlGF−2に関する。前記心不全は、心室機能不全を伴うものであってもよい。それは、あるいは、または心室機能不全に加えて、低下した心室駆出率または保持された心室駆出率を伴うものであってよい。
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物心臓の心室駆出率を改善する1または複数の方法に関し、前記1または複数の方法は、心室駆出率の低下と診断された哺乳動物に治療上有効な量の胎盤増殖因子2を投与するステップを含み、この際、前記投与の結果として前記心室駆出率が改善される。あるいは、本発明は、哺乳動物心臓の心室駆出率を改善する(際に用いる)ためのPlGF−2に関する。前記心室駆出率の低下は、心不全を伴うものであってもよい。
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物心臓の心室機能不全を処置、予防または改善する1または複数の方法に関し、前記1または複数の方法は、心室機能不全と診断された哺乳動物に治療上有効な量の胎盤増殖因子2を投与するステップを含み、この際、前記投与の結果として前記心室機能不全が処置、予防または改善される。あるいは、本発明は、心室機能不全を処置、予防または改善する(際に用いる)ためのPlGF−2に関する。前記心室機能不全は、心不全を伴うものであってもよい。
本発明の別の態様には、哺乳動物心臓の心室リモデリング、より特に肥大性心室リモデリングを処置または予防する1または複数の方法が含まれ、前記1または複数の方法は、(肥大性)心室リモデリングと診断された哺乳動物に治療上有効な量の胎盤増殖因子2を投与するステップを含み、この際、前記投与の結果として前記(肥大性)心室リモデリングが処置または予防される。あるいは、本発明は、哺乳動物心臓の(肥大性)心室リモデリングを処置または予防する(際に用いる)ためのPlGF−2に関する。前記肥大性心室リモデリングは、心不全を伴うものであってもよい。
心不全では、左心室および/または右心室が罹患し得る。そのため、上記のいずれかにおいて、処置または予防される心不全または心不全表現型は、左および/または右心室で発現されるかまたは表示され得る。特定の実施形態では、それは、左心室で発現されるかまたは表示される。
心筋梗塞に至るかもしれない徴候の1つは、血管中で血流を制限するプラークの蓄積を特徴とする、アテローム性動脈硬化症である。本明細書中で実証されるように(実施例2参照)、本明細書上文に記載される組成物は、アテローム性動脈硬化症に罹患している哺乳動物(アテローム硬化性哺乳動物)における心不全表現型の処置または予防(方法)で用いるために、安全かつ効果的である。
本明細書上文に記載される組成物中のPlGF−2タンパク質は、組換え型 PlGF−2タンパク質、例えば哺乳動物細胞培養から得られるものなどであってよい。そのような哺乳動物細胞培養の一例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)培養または等しい効力を有する細胞培養である。そのような細胞培養は、一過性または恒常的な方法でPlGF−2タンパク質を発現する能力がありうる。本明細書上文に記載される組成物中のPlGF−2タンパク質は、一実施形態では、ヒトPlGF−2タンパク質、例えば配列番号1によって定義されるものなど、またはその多形変異体(多形体)である。
特定の実施形態では、PlGF−2タンパク質組成物は、PlGF−2タンパク質が唯一の活性成分であるという点でPlGF−2タンパク質から本質的になる組成物である。さらなる特定の実施形態では、PlGF−2タンパク質は、組成物中の唯一の血管新生因子である。
本明細書上文に記載される組成物を成すいずれのPlGF−2タンパク質はいずれも、特に全身投与による使用のためのものである。そのような全身投与は、血管内(例えば静脈内)投与または皮下投与であってよい。
「心不全(HF)」は、心臓が代謝組織の必要量に相応する速度で酸素を送達できなくなる心臓の構造および/または機能の異常として定義されることができる(急性および慢性心不全の診断および処置のためのESCガイドライン 2012、Eur Heart J 33:1787)。それは、心臓機能の異常から生じ、臨床成績(すなわち完全および心血管死、HFのための入院)および生活の質を制限する、臨床徴候(例えば、頸静脈圧の上昇、肺の断続性ラ音および置き換えられた心尖拍動)および症状(例えば、息切れ、くるぶし腫脹および疲労)の複合体として見える。心室機能不全に起因する心不全は、駆出率の低下した患者および駆出率の保持された患者を包含する。心筋梗塞を含む虚血事象は、心不全の根底にある原因であり得るが、その他の原因としては、高血圧症、弁膜症性心疾患、心筋症、喫煙、肥満、糖尿病などが挙げられる。本明細書で報告される知見を考えると、1または複数の虚血以外の原因による心不全は、心拍出量が身体および/または肺の必要を満たすには不十分である心不全の生理学的状態のサブグループとして具体的に含められる。本明細書において使用されるブタおよびマウスモデルにおいて求められるように(実施例1および2参照)、いくつかのHF表現型(上記参照)は、定量化されて測定可能なパラメータとして役立ち得る。
真性糖尿病、高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、腎不全、肥満をはじめとする重要な共存症を伴うまたは伴わない肥大性心室リモデリングの患者において観察される、EFが保持されたHFは、EFの低下を伴うHFとして同様に暗澹たる結果を有する。灌流と肥大のミスマッチは、HF表現型および心室機能不全の原因となる。この類似性に基づいて、本発明の範囲には、EFが保持されたHFと診断された患者が含まれる。現在、EFが保持されたHFの臨床成績を改善するための特異的療法はない。
別のHF表現型は、弛緩障害、心室充満圧の増加および保持されたEFによって定義される心室機能不全に関連する。このHF表現型では、EFはこのように保たれるが、心室は心臓拡張期中に適切に弛緩しない。心室弛緩がこのように損なわれたならば、内部の圧力は、次の心拍からの血液が入ろうと試みるにつれて増加する(充満圧の増加)。
ヒト胎盤増殖因子、hPlGFは、Maglione等、1991(Proc Natl Acad Sci USA 88、9267)によって最初に開示され、GenBank受託番号P49763で利用できる221アミノ酸ポリペプチドの3つのアイソフォーム変異体を言う。本発明の主題は、PlGFのアイソフォーム2、PlGF−2(PlGF2とも呼ばれる)であり、これはヘパリン結合部位を含むアイソフォームである。hPlGF−2の全長参照配列(すなわち、18−アミノ酸シグナル配列を欠く成熟タンパク質)が含まれる:
LPAVPPQQWALSAGNGSSEVEVVPFQEVWGRSYCRALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSCVSLLRCTGCCGDENLHCVPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRCECRPLREKMKPERRRPKGRGKRRREKQRPTDCHLCGDAVPRR(配列番号1)。
その他の種、特に哺乳動物種のPlGF−2タンパク質の配列は、例えば、GenBankで検索することによって、例えば、BLASTプログラムを配列番号1で実行することによって見出すことができる。用語「PlGF−2」は、通常、hPlGF2様ヘパリン結合ドメイン(HBD)を含有するどんな起源のPlGF分子でも包含する。そのようなhPlGF2様HBDは、hPlGF2のHBDと相同性が高くてもよく(例えば、95%同一またはそれを超える)、またはそれはhPlGF2のHBDと相同性が低くてもよい(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、または95%未満同一である)。hPlGF2のHBDは上記配列番号1で下線が引かれており、より特に、hPlGF1に対する21アミノ酸配列RRPKGRGKRRREKQRPTDCHL(配列番号2)の挿入をいう。タンパク質または化合物とヘパリンの結合は、ヘパリン結合アッセイを用いて、例えば、ヘパリンに結合する生体分子の酵素結合競合結合によって(例えば、BD Biosciencesの96ウェルヘパリン結合プレート中で)容易に決定できる。用語「PlGF−2」には、その属に存在する可能性のある、所定の属の基準PlGF2配列の多形変異体がさらに含まれる。
PlGF−2タンパク質の誘導体も、上記の本発明の態様のいずれかでの使用が意図され、この用語は少なくともPlGF−2タンパク質部分および野生型PlGF−2に存在する部分とは異なるさらなる部分を含有するハイブリッド分子をさす。PlGF−2誘導体の例としては、例えば、PlGF−2と非PLGF関連タンパク質を含む融合タンパク質(例えば、アルブミン、またはPlGF−2とは異なるタンパク質のさらなるヘパリン結合ドメイン)ならびにPlGF−2とPlGF−2の1または複数のヘパリン結合ドメインを含む融合タンパク質が挙げられる。PlGF−2の誘導体には、例えば、非タンパク質化合物のPlGF−2への付加、例えば、PlGF−2のペグ化がさらに含まれる。用語PlGF−2誘導体には、活性PlGF−2変異タンパク質がさらに含まれる。そのような変異タンパク質には、例として、国際公開第03/097688号に記載されるような別のアミノ酸に対するC末端システインの突然変異を挙げることができる。誘導の性質がどんなものであっても、結果として得られるPlGF−2タンパク質誘導体はその生物活性を保持するべきである;しかし、活性PlGF−2誘導体の用量は、同じ治療効果を得るために、野生型PlGF−2の用量と同じであることもあり、または野生型PlGF−2の用量よりも高いかまたは低いことが必要であり得ると想定される。PlGF−1は、受容体FLT−1(およびその可溶性変異体sFLT−1)だけに結合するが、PlGF−2は、その上にニューロピリン−1および−2と結合する。異なるシグナル伝達カスケードがPlGF−1およびPlGF−2により引き起こされる(Kendall et al.1993,Proc Natl Acad Sci USA 90:10705;Migdal et al.1998,J Biol Chem 273:22272;Persico et al.1999,Curr Top Microbiol Immunol 237:31)。異なる構造、受容体の結合パターンおよびシグナル伝達を考慮すると、PlGF−1は、この文脈において、PlGF−2の誘導体であるとみなされない。
本発明の様々な態様の全てにおいて、用語「哺乳動物」は、その一般的な意味で考えられ、それには、すなわちヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジおよび同類のものが挙げられる。
本明細書において使用される用語「治療上有効な量」は、好ましくは想定される1または複数の治療効果を実現することのできる量を意味する。それは、所定の送達方法および/または所定の送達治療計画で有益な治療効果を生じるために必要とされる活性成分(PlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体)の量をさす。有益な治療効果には、状態、生理状態または疾患のさらなる進行を少なくとも停止または抑制することが含まれる。それは、必ずしも完全な治癒を含むわけではないが、状態、生理状態または疾患のあらゆるレベルの改善、寛解、後退または縮小をさらに含むことができるが、含んではならない。治療上有効な量は送達方法および/または送達治療計画によって決まることになるが、それは処置される哺乳動物の体重1kgあたり約2〜2000マイクログラムの量に相当することがある。
活性成分(PlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体)は、哺乳動物またはヒト患者にタンパク質、例えば、組換え型タンパク質として全身に投与される。PlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体の組み換え発現は、原核生物の宿主(例えば、大腸菌(Escherichia coli))で行われてよいが、真核細胞(例えば、CHO、または昆虫細胞などの哺乳動物細胞株)での発現によるなどのグリコシル化されたタンパク質を産生することに利点がありうる。そのような細胞株は、一過性かまたは恒常的な方法のいずれかでPlGF−2またはPlGF−2誘導体を発現することが可能でありうる。
全身送達(例えば、皮下、または血管内、例えば、静脈内もしくは冠内)は、心筋内注射にまさる実際的な利点を有する。後者は手術中に実行されるかまたは精巧なカテーテルを経由して実行される。心筋内送達は、次のさらなる制限を有する:送達時間が特有であり、反復はさらなる介入を必要とし、局所浮腫を回避するために注入量を最小に保たなくてはならない。一方、全身送達によって治療薬の十分な投与量に達することは、(非器官特異的)副作用によって妨げられる可能性がある。これは、例えば、VEGF−AおよびFGF増殖因子の例に当てはまり、それらの最大静脈内もしくは冠内投与量は、低血圧症および浮腫を引き起こすそれらの傾向によって制限される。しかし、そのような副作用は、PlGFによってはもたらされない(Luttun et al.2002,Ann NY Acad Sci 979:80)。さらに、本明細書において実証される全身PLGF送達の効力および安全性は、以前に試験した血管新生治療薬、例えば、VEGF−AおよびFGFで直面した問題を緩和する(概説には、Kornowski et al.2000、Circulation 101:454参照)。上記のPlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体の全身投与は、任意の適した経路によって得ることができる(例えば、皮下、筋肉内、皮内、静脈内、動脈内、大動脈内、冠内または非経口投与、あるいは簡単なカテーテル法によって;さらなる投与様式は、浸透圧ポンプによるなどの連続送達である)。静脈内および/または皮下投与が全身投与の好ましい経路である。PlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体の全身投与を構成するために考慮されないものは、心筋内投与(投与された化合物の全身への拡散が限られることによる)および遺伝子療法による投与である。
上記のいずれにおいても、活性成分(PlGF−2タンパク質またはPlGF−2誘導体)は、製薬上許容され得る担体をさらに含む製剤に含められてよい。
用語「製薬上許容され得る担体」は、例として1または複数の活性成分を溶解、分散または拡散することによってその適用または伝播を促進し、かつ/またはその有効性を損なうことなくその貯蔵、輸送または取り扱いを容易にするために、該活性成分と共に処方される任意の材料または物質をさす。製薬上許容され得る担体は、固体であっても液体であってもよい、すなわち、本発明の組成物は、濃縮物、乳濁液、溶液、顆粒、ペレットまたは粉末として適切に使用または貯蔵されることができる。
本発明の組成物での使用に適した製薬担体は当業者に周知であり、本発明内でそれらの選択に特定の制限はない。それらには、添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶媒、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤(例えば糖または塩化ナトリウム)および同類のものなども、これらが薬務と一致している、すなわち担体および添加剤が哺乳動物に永久的な損害を与えないという条件で含まれてよい。本発明の医薬組成物は、公知の方法で、例えば、一段階または多段階手順で、選択された担体材料を用いて活性成分を均質混合、コーティングおよび/または磨砕することにより調製されてよく、適切な場合は、その他の添加剤、例えば表面活性剤も、微粒子化によって(例えば活性成分の制御放出または持続放出のためのミクロスフェアまたはナノ粒子の形態でそれらの添加剤を得ることを考えて)調製されてよい。
本発明の医薬組成物で使用されるために適した表面活性剤は、良好な乳化性、分散性および/または湿潤性を有する非イオン性、陽イオン性および/または陰イオン性材料であり、適した陰イオン性界面活性剤には、水溶性石鹸および水溶性合成表面活性剤の両方が含まれる。適した石鹸はアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、高級脂肪酸(C10−C22)の非置換もしくは置換アンモニウム塩、例えば、オレイン酸またはステアリン酸のナトリウムもしくはカリウム塩、あるいは、例えば、ココナッツ油または獣脂から得られる天然脂肪酸混合物のナトリウムもしくはカリウム塩である。合成界面活性剤としては、ポリアクリル酸のナトリウムもしくはカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩および硫酸塩;スルホン化ベンズイミダゾール誘導体およびアルキルアリールスルホン酸塩が挙げられる。脂肪スルホン酸塩または硫酸塩は、通常、アルカリもしくはアルカリ土類金属塩、非置換アンモニウム塩または8〜22個の炭素原子を有するアルキルもしくはアシルラジカルで置換されたアンモニウム塩、例えば、リグノスルホン酸またはドデシルスルホン酸または天然脂肪酸から得られる脂肪アルコールサルフェートの混合物のナトリウムもしくはカルシウム塩、硫酸またはスルホン酸エステル(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)および脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩の形態である。適したスルホン化ベンズイミダゾール誘導体は、好ましくは8〜22個の炭素原子を含有する。アルキルアリールスルホン酸塩の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸またはジブチル−ナフタレンスルホン酸またはナフタレン−スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウムまたはアルカノールアミン塩である。また、適しているのは、対応するリン酸塩、例えば、リン酸エステルの塩およびp−ノニルフェノールのエチレンおよび/または酸化プロピレンを伴う付加物、またはリン脂質である。この目的に適したリン脂質は、セファリンまたはレシチン型の天然(動物もしくは植物細胞に起源をもつ)または合成リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジル−コリン、ジパルミトイルホスファチジル(dipalmitoylphoshatidyl)コリンおよびそれらの混合物である。
適した非イオン性界面活性剤としては、アルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、分子中に少なくとも12個の炭素原子を含有する脂肪族アミンまたはアミド、アルキルアリールスルホン酸塩およびジアルキルスルホスクシネートのポリエトキシ化およびポリプロポキシ化誘導体、例えば、脂肪族および脂環式アルコール、飽和および不飽和脂肪酸ならびにアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体が挙げられ、前記誘導体は、好ましくは(脂肪族)炭化水素部分に3〜10個のグリコールエーテル基および8〜20個の炭素原子と、アルキルフェノールのアルキル部分に6〜18個の炭素原子を含有する。さらに適した非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1〜10個の炭素原子を含有するポリプロピレン(poylypropylene)グリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールを伴うポリエチレンオキシドの水溶性付加物であり、その付加物は、20〜250個のエチレングリコールエーテル基および/または10〜100個のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、通常、1プロピレングリコール単位当たり1〜5個のエチレングリコール単位を含有する。非イオン性界面活性剤の代表例は、ノニルフェノールポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコール酸エーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールおよびオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(例えばポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなど)、グリセロール、ソルビタン、スクロースおよびペンタエリトリトールの脂肪酸エステルも適した非イオン性界面活性剤である。
適した陽イオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩、好ましくは、ハロ−、フェニル−、置換フェニル−またはヒドロキシル−基で所望により置換されていてもよい4個の炭化水素ラジカルを有するハロゲン化物;例えばN−置換基として少なくとも1つのC8−C22アルキルラジカルを含有する第四級アンモニウム塩(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイルおよび同類のもの)および、さらなる置換基として、非置換もしくはハロゲン化低級アルキル、ベンジルおよび/またはヒドロキシ−低級アルキルラジカルを含有する第四級アンモニウム塩が挙げられる。この目的に適した表面活性剤のより詳細な記述は、例えば「McCutcheon’s Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.,Ridgewood,New Jersey,1981)、「Tensid−Taschenbuch」第2版(Hanser Verlag,Vienna,1981)および「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.、New York、1981)に見出すことができる。
本発明の医薬組成物中の活性成分の作用持続時間を制御するために、さらなる成分が活性成分の製剤に含められてよい。制御放出組成物は、従って、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミンおよび同類のものなどの適切なポリマー担体を選択することによって達成することができる。薬物放出速度および作用持続時間は、活性成分を、例えばヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸メチルおよびその他の上記ポリマーなどのポリマー物質の粒子、例えばマイクロカプセルの中に組み込むことによって制御することもできる。そのような方法としては、リポソーム、ミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセルなどのようなコロイド薬物送達系が挙げられる。投与経路に応じて、医薬組成物は保護コーティングを必要とすることもある。
注射用途に適した剤形としては、滅菌水溶液または分散液およびその即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。そのため、この目的のための典型的な担体としては、生体適合性水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび同類のものならびにそれらの混合物が挙げられる。
ブタモデルにおける心不全へのPlGF−2の効果
1.1 PlGF−2産生
rhPlGF−2(組換えヒトPlGF−2)を発現している組換え型チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を、hPlGF−2のcDNA配列を挿入したpEE144hP2構築物を用いて開発した。グリコシル化rhPlGF−2を、バイオリアクターで、超音波灌流された(sono−perfused)高細胞密度培養によって生成した。CHO細胞由来のグリコシル化rhPlGF−2を、異なるアフィニティークロマトグラフィー工程によって精製した。最初の工程では、細胞培養液を、PlGF−2(28kd)が膜を通過しないように3kdのカットオフで中空繊維で濃縮した。次に、2M硫酸アンモニウムを添加した後、濃縮物を疎水性Octyl Sepharoseカラムでさらに精製した。rhPlGF−2を10mMジエタノールアミン、pH8.5を用いて溶離し、または一部の例では水中40%エチレングリコールさえも必要とした。溶離した画分を脱塩し、Sephadex(商標)G−25(GE Healthcare)を用いて緩衝液をPBSに交換した。アフィニティークロマトグラフィーの最後の工程で、Heparin Sepharose(商標)6Fast Flowカラム(GE Healthcare)を用いて、ヘパリン結合ドメインを含有するrhPlGF−2を保持した。精製タンパク質は、PBS中1M NaClを用いるステップ溶離によって得た。種々の画分をプールした後、−20℃でSephadex(商標)G−25(GE Healthcare)でのさらなる脱塩の後に精製したrhPlGF−2をPBS中で貯蔵した。
1.2 研究群
この調査は、実験動物の管理および使用のためのベルギーの国立衛生研究所のガイドラインに従い、この二重盲検無作為化対照試験のプロトコールは、動物実験に関してその土地の倫理委員会に承認された(Ethische Commissie Dierproeven,KU Leuven,Leuven,Belgium)。
0日目、左冠動脈前下行枝(LAD)における流れ制限ステントの留置を用いて心筋虚血を誘導した(非特許文献6)。4週目に、偽群(Sham)と比較して慢性心筋虚血を確認した後、ブタを、盲検化されたrhPlGF−2(PlGF−2)またはPBS(対照)に10日間無作為に割り当てた。血行動態パラメータ、磁気共鳴画像法(MRI)、および着色ミクロスフェアを4週目および8週目に測定した。8週目に、プロポフォールおよび飽和塩化カリウムの過剰投与を用いてブタを安楽死させた。ステントに対して遠位の左心室(LV)を、ミクロスフェアおよび組織学的解析のために、底部から尖部まで心筋の長軸に対して垂直の5枚の薄片に切断した。
33頭の交雑した家畜のいずれかの性別のブタ(サス・スクロファ(Sus scrofa)、体重20〜25kg、Animalium K.U.Leuven、ルーヴェン、ベルギー)に、介入の1日前に、300mgアスピリン(Dispril、Reckitt Benckiser、ブリュッセル、ベルギー)および300mgクロピドグレル(Plavix、Sanofi、パリ、フランス)を予め投薬した。ブタをTelazol(チレタミン4mg/kgおよびゾラゼパム4mg/kg)(Zoletil100、Virbac Animal Health、カロ、フランス)およびキシラジン(2.5mg/kg)(Vexylan、CEVA Sante Animale、ブリュッセル、ベルギー)で鎮静させ、静脈内プロポフォール(3mg/kg)(Diprivan、AstraZeneca、ブリュッセル、ベルギー)と、それに続いて10mg/kg/時の持続注入プロポフォール(Diprivan)およびレミフェンタニル(18μg/kg/時)(Ultiva、GSK、Genval、ベルギー)を用いて麻酔を導入した。空気および酸素の混合物(1:1)による8〜10ml/kgの一回呼吸量の機械的人工呼吸を調節して、動脈血ガス値によって制御される炭酸正常状態および酸素正常状態を維持した。心拍(HR)、リズムおよびST部分を心電図検査法を用いて連続的にモニターした。0日目に、抗凝固処理(ヘパリン10000IU)および抗血小板処理(アセチルサリチル酸450mg)の後、流れ制限ステントを左冠動脈前下行枝(LAD)に埋め込んで、心室(ventrical)機能不全を誘導した。アスピリン(300mg)およびクロピドグレル(75mg)を追跡調査の間毎日継続した。
36頭のブタを登録した(3頭の偽群と33頭の研究群)。流れ制限ステントを研究群の33頭のブタに埋め込んだ、そのうち7頭のブタは急性合併症で死亡し;1頭のブタは9日目に死亡し、別の豚は11日目に大きな心筋梗塞(LV質量の25〜30%)によって死亡した。24頭のブタを4週目に評価し、処置に対して盲検的に無作為化して(12の対照および12のPlGF−2)、8週目に再評価した。
1.3 PlGF−2またはPBSによる無作為化された処置
MRIを用いて安静時およびストレス中の局所の心筋の低灌流および機能不全を確認した後、動物を、浸透圧ミニポンプによるrhPlGF−2またはPBSの10日間IV注入に対し無作為化した。循環PlGFレベルを、標準的なPlGFイムノアッセイ(Quantikine Elisa、R&D Systems,Inc)を用いて定量化した、それは95%アミノ酸同一性を共有するためヒトとブタの両方のPlGF−2アイソフォームを検出する。プレートを、PlGFを特異的に認識するモノクローナル抗体で一晩(4℃)コーティングし、1%BSAを用いて室温で1時間ブロッキングし、洗浄し、二次ビオチン化ポリクローナルヤギ抗ヒトPlGF抗体とともにインキュベートした。結合したrhPlGFを、ストレプトアビジン−HRP基質でインキュベーションの後に検出した。rhPlGF−2の標準的な希釈液を陽性対照試料として用いた。
1.4 10日間のIV注入後のPlGFレベル
偽群と比較して、血清PLGFレベルは、心筋虚血の誘導前の0日目および4週後で同様であった(それぞれ、10±4に対して7±0の偽、および14±9に対して10±2pg/mlの偽)(3の偽群および24の研究群)。対照的に、PlGF−2で処置されたブタは、ミニポンプ移植後1週および2週に対照および偽の63倍を上回る高い循環PlGFレベルを有した(5週:799±302に対して対照で11±5、偽で13±5pg/ml、p<0.05;6週:867±423に対して対照11±4および偽12±5pg/ml、p<0.05)。8週目、PlGFレベルはなお2倍を超えて増加していた(18±9に対して対照8±3および偽8±1pg/ml、p<0.05)(12のPlGF−2および12の対照)。
1.5 統計分析
統計分析は、BioStat2009統計ソフトウェア(バージョン5.8.3.0、AnalystSoft)を用いて実施した。データは平均値±SDとして表した。ANOVAおよびフィッシャー事後検定を用いて群間の差を分析した。スチューデントT検定を用いて処置前と処置後の差を比較した。データが正規分布に従わなかった場合は、クラスカル−ワリス(KW)ノンパラメトリック統計が報告され、マン−ホイットニーまたはウイルコクソン検定を用いて群間の差を確認した。
1.6 侵襲性の圧力−容積技法を用いて測定された、左心室の収縮性は、PlGF−2処置によって著しく改善された
心拍数も血圧も、4週目の偽群と比較してあまり異ならなかった。虚血群では、流れ制限ステントが収縮期機能(dP/dtmax)の低下、およびLV拡張末期容積の増加を誘導した。対照と比較して、駆出率EFおよび前負荷動員一回仕事量(PRSW:preload recruitable stroke work)の著しい増加は、PlGF−2で処置された動物におけるLV収縮末期容積(LVESV)の低下と関連した(表1)。
4週目に、左心室(LV)に配置した5−F Millar圧力−コンダクタンスカテーテル(Millar instruments、テキサス州ヒューストン、USA)で血行動態変数を測定した。心拍(HR)、LV収縮期および拡張末期圧、ならびに圧力上昇および低下の一次導関数(dP/dtmaxおよびdP/dtmin)を記録した。8週目に、即時的な、心室内圧およびコンダクタンス測定を実施した。LV前負荷は、下大静脈(IVC)に配置したバルーンカテーテルで変化させた。LV容積を補正および較正するために、肺の動脈に配置されたスワン−ガンツカテーテル(Edwards Lifesciences LLC、カリフォルニア州アーバイン)を用いて熱希釈方法によって心拍出量を求めた。血液抵抗は、抵抗キュベット(Rho−キュベット)および心室壁のコンダクタンスに起因し得る平行コンダクタンスで測定し、IVCへの10mlの30%高張生理食塩水注射を用いて結合組織を評価した。拡張末期容積(EDV)、収縮期末期容積(ESV)、駆出率(EF)、dP/dtmaxおよびdP/dtminを定常状態条件中に計算した。心室収縮性の頑強な負荷非依存性パラメータである、前負荷動員一回仕事量(PRSW)は、IVC閉塞による一過性の前負荷低下中に導いた。全ての変数は、PowerLab記録ユニットおよびLabChart ソフトウェア(ADInstruments、オックスフォードシャー、英国)を用いてデジタル化および処理した。
対照と比較して、EFおよびPRSWの著しい改善は、rhPlGF2で処置された動物でのLVESVの低下に関係した。対照群はLVESVが2倍増加し、EFおよびPRSWは偽群のブタよりも著しく低かった(表1)。
表1 圧力容積ループを用いる、ステント留置後8週および無作為化処置後4週の左心室の全体的な機能分析
値は平均値±SDである。EDV:拡張末期容積;ESV:収縮末期容積;EF:駆出率;PRSW:前負荷動員一回仕事量。対照に対してp<0.05;†偽に対してp<0.05;‡偽に対してp=0.05。
1.7 PLGF2−処置は、安静時およびドブタミン−ストレス中の全体および局所の心機能を改善する(心MRIから得たデータ)。
心MRIは、3Tシステム(TRIO−Tim、Siemens、エルランゲン)で4週および8週目に心電図トリガ、心臓専用の表面コイルを用いて、呼吸停止中に実施した。全体および局所の機能は、安静時およびドブタミンに誘発されるストレス中に、6−mm厚さのスライスを用いて、完全なLVを網羅する垂直および水平の長軸および短軸のシネMRIで評価した。ドブタミン(Dobutrex,Merck,Overijse、ベルギー)を5μg/kg/分で静注した後、ベースラインを上回る80%の目標心拍数に達するまで滴定した。安静時およびストレス中の局所灌流(アデノシン180μg/kg/分)を、デュアルボーラス初回通過イメージングを用いて評価した。心筋の生存力は、遅延造影(LE)MRIを用いて評価した。
MRIシーケンスの完全な説明は以前に報告されている(Wu et al.2011,Cardiovasc_Res 89:166)。調査者らに処置の割当てを知らせずに、専用ソフトウェアを用いて全てのMRI調査を分析した。心筋の局所灌流、機能およびLEを同一の解剖学的領域で評価した。これらのスライスで、LV心外膜と心内膜の境界の表示図を、6の等角セグメントに分割した。全体的なLV機能の評価のために、心内膜と心外膜の境界を、拡張末期容積および収縮末期容積の短軸スライスにおいて追跡した。本発明者らは、LV EDVおよびESV、心拍出量(SV)ならびにEFを、全体的な機能の指標として計算した。LV質量および全ての容積は、体表面積に対して指標化されて報告された(Schmidt−Nielsen 1984,「Scaling:Why is Animal Size so Important?」,New York:Cambridge University Press)。心筋壁肥厚は、遠隔および虚血領域の局所機能の指標として測定された。心筋血流(MBF)は、遠隔および虚血領域の局所灌流のパラメータとして計算された。充血性の灌流は慢性虚血における虚血領域を正確に明確化することができるので、4週目のストレス灌流中の偽群で得たセグメント閾値(平均−t0.95、n−1sdsqrt((n+1)/n))を用いて虚血領域を明確化した。心筋梗塞サイズの計算のため、心内膜と心外膜の境界およびLE領域の輪郭を描いた。心筋梗塞サイズ(IS)をLV心筋容積に正規化した全LE量として計算した。
PlGF−2注入後、EFはPBS処置と比較して4〜8週に著しく改善された。この改善は、拡張末期容積指標ESViの低下に関係している(表2A)。流れ制限ステントの留置は、4週目に制限された梗塞を誘導した(梗塞サイズIS 4±6%、0〜15%に及ぶ)。両群で梗塞サイズ(IS)は同等であった。特に、ISは4週から8週まで変化しなかった(表2A)。容易に比較するために、PlGF−2を評価するために本明細書において使用される同じモデルにおけるPlGF−1について報告された関連する最初のデータ(非特許文献6中の表4)を、本明細書下文の表2Bに含める。しかし、公開される値は平均値±標準誤差(SE)を反映するが、表2Bに示される値は平均値±標準偏差(SD)を反映することに注意しなければならない。PlGF−2の効果に反して、PlGF−1はEFを改善しないばかりか、ESViを低下させもしない。
表2A.MRIを用いる左心室の全体的な機能および構造分析;PlGF−2研究。
値は平均値±SDである。EDVi:拡張末期容積指数;ESVi:収縮末期容積指数;SVi:心拍出量指数;EF:駆出率;LVMi:左心室質量指数;IS:梗塞サイズ。容積測定パラメータは、体表面積に対して指標化された。偽、8週に対してp=0.01;†対照に対してp<0.001。
表2B.ステント留置後8週目の全体的なLV機能のMRI分析;PlGF−1研究。
値は平均値±SDとして表示される。容積測定パラメータは、次のようなMeehの式を用いて、体表面積に対して指標化された:BSA(単位m)=k×[体重(単位kg)]2/3×10−2、式中、k=9.0.BW:体重;EDVi:拡張末期容積指数;ESVi:収縮末期容積;LVMi:左心室質量指数;SVi:心拍出量指数;EF:駆出率。偽に対してp<0.05。
8週目、偽群の動物において、安静時の壁肥厚は、LAD灌流領域および遠隔領域(54±1%対55±1%)で同等であり、増加性のドブタミンストレスに対して同様の進行性応答を示した。虚血領域では、安静時のrhPlGF−2処置ブタの壁肥厚は、対照と比較して著しく選択的に増加した(37±15%対23±9%、p=0.02)が、PBSは効果がなかった。対照群のストレスへの二相応答に反して、rhPlGF−2処置後の壁肥厚は低用量ストレス中に増加し、虚血領域において定常期を示す高用量ストレス中にはさらなる増加はなかった。遠隔領域では、壁肥厚はrhPlGF−2群、対照群または偽群間で、安静時および全ての相のストレス中で同等であった(図1)。
虚血性ステント留置から4週間後、虚血領域における安静時と充血刺激後の両方での心筋血流(MBF)は、偽群と比較して著しく低下した(安静時:0.63±0.18対0.87±0.06ml/分/g、p=0.03、およびストレス時:0.94±0.33対1.74±0.01ml/分/g、p=0.0004)が、なお残りの灌流保留分が残っていた。8週目に、rhPlGF−2処置群において、MBFは、安静時(0.83±0.32対0.58±0.21ml/分/g、p=0.03)と充血性の灌流時(1.50±0.50対1.02±0.46ml/分/g、p=0.03)に著しく増加したが、対照群では増加しなかった。遠隔領域では、安静時および充血性の灌流後のMBFは、rhPlGF−2処理、対照および偽群動物間で同等であった(図2)。
1.8 ミクロスフェア測定
血行動態データを得た後、6−FピッグテールカテーテルをLVに挿入し、600万個の着色ミクロスフェア(直径15μm;Triton Technologies、Inc)を注入して局所心筋血流(MBF)を測定した。絶対血流は、異なる心筋の領域のミクロスフェア濃度を基準血液試料で測定した濃度と比較することにより定量化した。基準血液試料は、腹部大動脈から一定の速度で抜き取られ、ミクロスフェア注射の20秒前に開始された。2つの基準組織試料を、左右の腎臓から入手してミクロスフェア分布の均質性を試験した。虚血領域および遠隔領域(下壁)由来の心筋試料ならびに基準血液および腎臓試料を、発光分光光度計(Agilent 8453E 紫外可視分光システム)を用いて分析した。MRI測定値に一致して、着色されたミクロスフェアを用いて測定したMBFは、rhPlGF2処置動物において4週から8週まで著しく増加したが、対照では増加しなかった(表3)。
表3.虚血領域の局所心筋血流の絶対値。
値は平均値±SDである。4週目の局所心筋血流に対してp<0.05。
1.9 バイオマーカー分析、新血管新生測定
心臓壊死マーカー(Tnl、CK、CKMB、CKMB相対指標およびLDH)および肝臓機能(ASTおよびALT)試験を、ステント留置前の0日目、処置の4週前、5、6および8週の追跡調査期間に分析した。これらの値は、rhPlGF2群、対照群および偽群で同等であった。
1.10 PlGF−2は虚血心筋の新血管新生を誘導する
新血管新生を、虚血域および遠隔域の5−μmパラフィン包埋切片で評価した。全ての画像を各域から10の無作為に選択された高倍率視野(HPF)で分析した。レシチンおよび平滑筋細胞(SM−アクチン)マーカーを用いて、それぞれ毛細血管および小型の筋肉化した(muscularized)血管を標識した。毛細血管および筋肉化した細動脈の密度を、レクチン−およびSM−アクチン陽性血管の数をカウントすることによって評価し、組織面積と比較して表した。
rhPlGF2処置ブタにおいて、レクチン染色毛細血管および平滑筋細胞アクチンで検出可能な細動脈密度は、虚血領域で、対照よりも著しく高かった(1691±509対1101±445(対照)の毛細血管数/mm、p<0.05;69±29対39±13(対照)の筋肉化血管数/mm、p<0.05)。
1.11 10日注入後のPlGF−2の安全性分析
心臓壊死マーカーおよび肝機能試験は、3群間で同等であり、生理学的範囲内であった。
1.12 結論
駆出率(EF)の低下したHFの臨床的に代表的なモデル(すなわちSus scrofa)において、組換えヒトPlGF−2とプラセボの左心室機能不全に対する効果を比較した。侵襲性血行動態測定を用いて、EFの改善によって表される全体的な心機能が41±9%から52±11%に改善されることが実証された。その上、包括的な磁気共鳴画像法を用いて、PlGF−2に媒介される改善されたEFが、それぞれ44±11%から51±11%となったことが確認された。統合されたデータは、PlGF−2処置の後の心機能不全の予防は、経時的に収縮末期容積(ESV)のより少ない増加に起因していることを示す(ΔESV指数:PlGF−2群で−13±9mL/mに対して対照群で−1±11mL/m)。EFのこれらの観察される変化(ΔEF)は、PlGF−2処置動物での+5±6%に対して対照で−2±2%であった。ΔEFの大きさは、与えられた重要な死亡率の有益性とともにβ遮断薬およびACE−阻害剤を用いた以前の重要なHF調査の間に観察された変化と同様であった。これらの臨床研究の結果は、HFの標準治療処置プロトコールへの後者の薬剤の組み込みをもたらした。驚くことに、本明細書において実証されるPlGF−2のHFへの臨床効果(HF表現型ESVおよびEFの改善)は、同じ前臨床HFモデルで使用したPlGF−1の効果よりも優れている。
アテローム硬化性マウスモデルにおける心筋虚血のPlGF−2治療
2.1 緒論
前の実施例では、慢性心筋虚血をもつブタにおける組換えヒト胎盤増殖因子2(rhPlGF−2)の全身投与は、安静時およびストレス中の局所心筋血流および左心室の収縮機能を著しく向上させることが実証された。さらに、rhPlGF−2の持続送達はまた、有害作用なく全体的な心機能の顕著な回復ももたらした。しかし、本発明者らが調査した非アテローム硬化性ブタモデルは、血管新生増殖因子が内膜過形成および冠動脈アテローム硬化病変の進行を誘導することがあり得るアテローム性動脈硬化症をもつ患者への直接外挿を除外する(Celletti et al.2001,Nat Med 7:425)。以前のアテローム硬化性ウサギでの実験研究により、局所のアデノウイルスのPlGF−2送達が、首輪をつけた頸動脈における内膜肥厚およびマクロファージ蓄積を著しく増加させることが報告された。また、初期アテローム動脈硬化病変のサイズおよびマクロファージ含有量は、アポE欠損(Apo E−/−)マウスと比較してアポリポタンパク質(アポ)EとPlGFの両方が欠損したマウスで減少した(Khurana et al.2005,Circulation 111:2828)。別の研究では、抗PlGF抗体の5週間の送達の後、アテローム動脈硬化性プラークの炎症細胞浸潤およびプラークサイズは、軽度のアテローム性動脈硬化症の初期段階で減少した(Roncal et al.2010,Cardiovasc Res 86:29)。PlGFレベルの増加が心筋虚血の重症度を反映するかまたは病変の進行に寄与するかどうかは不明のままである。そのため、進行したアテローム性動脈硬化症および慢性心筋梗塞/虚血のネズミモデルでのPlGF−2注入の後の心筋および血管組織の炎症応答を調査した。PlGF−2の持続性全身投与の異なる以下のパラメータへの効果を評価した:5カ月後の心筋の新血管新生、心臓の灌流および機能、心臓のリモデリング、アテローム動脈硬化性プラークのサイズ、マクロファージ蓄積ならびにプラークの活性化。
2.2 材料および方法
2.2.1 研究デザイン
この調査は、実験動物の管理および使用のためのベルギーの国立衛生研究所のガイドラインに従い、この二重盲検無作為化対照試験のプロトコールは、動物実験に関してその土地の倫理委員会に承認された(Ethische Commissie Dierproeven,KU Leuven,Leuven,Belgium)。
Charles River Laboratoriesより購入した5週齢の雄Apo E−/−マウス(B6.129P2−APOE/J、n=50、体重17.4±1.8g)を研究で使用した。実験全体を通じて、全てのマウスは高コレステロール(1.25%)食(TD.88137、Teklad,Harlan Laboratory)を自由に摂食した。4週間後、大動脈のアテローム動脈硬化病変、心臓の形態、全体的および局所機能を、超音波イメージングを用いて評価した。その後、左冠動脈(前)下行枝(LAD)閉塞(60分)とそれに続く再灌流を実施して心筋梗塞(MI)を誘導した。8週目、慢性心筋梗塞/虚血および大動脈アテローム性動脈硬化症の評価の後、盲検化されたPlGF−2(450μg/kg/日)(CHO細胞由来の組換えヒトPlGF−2;カタログ番号6837−PL、R&D systems、英国)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の浸透圧ミニポンプ(Alzetモデル2004、Charles River Laboratories、フランス)を用いる28日間の処置にマウスを無作為に割り当てた。12週目、各々の群のマウスの半数に超音波イメージングおよび死後病理学的解析を受けさせた。残りのマウスは20週まで追跡調査し、同様の解析を繰り返した(実験のフローチャートを図3に示す)。総コレステロール、PlGFレベル、心臓壊死および炎症マーカーの定量のために血液試料を集めた。安楽死の後、心臓、大動脈、脾臓および脛骨を組織学的解析のために採取した。
2.2.2 心筋梗塞の誘導
ネンブタール(60mg/kg)による麻酔の後、マウスを、麻酔中の低体温を防ぐために温熱パッド(37℃)の上に仰臥位に置いた。機械的人工呼吸は、炭酸正常状態および酸素正常状態を維持するために、250μlの一回呼吸量および150/分の速度であった。
心臓を、第3肋骨と第4肋骨の間の肋間腔での開胸によって露出させた。7−0縫合糸を置いてLADを60分間結紮した。結紮を外すために、絹の係蹄を外し、目視検査で再灌流を確認した。次に、胸部を閉じた。手術後、マウスを麻酔から回復するまで置き、ひとたび自発呼吸が再開すると気管内チューブを取り外した。術後皮下ブプレノルフィン(0.05〜0.2mg/kg)無痛法を用いた。
2.2.3 PlGFまたはPBSによる無作為化処置
心筋梗塞の4週後、動物を、PlGF−2(CHO細胞由来の組換えヒトPlGF−2;カタログ番号6837−PL、R&D systems、英国)またはPBSの浸透圧ミニポンプによる28日皮下注入に無作為化した。循環PlGFレベルを、ヒトとネズミの両方のPlGF−2アイソフォームを検出する標準的なPlGFイムノアッセイ(Quantikine Elisa、R&D systems,Inc)を用いて定量化した。プレートを、PlGFを特異的に認識するモノクローナル抗体で一晩(4℃)コーティングし、1%BSAを用いて室温で1時間ブロッキングし、洗浄し、二次ビオチン化ポリクローナルヤギ抗ヒトPlGF抗体とともにインキュベートした。結合したPlGFを、ストレプトアビジン−HRP基質でインキュベーションの後に検出した。PlGF−2の標準的な希釈液を陽性対照試料として用いた。
2.2.4 超音波イメージング測定
経胸壁超音波イメージングを、軽い麻酔(酸素中1〜2%イソフルラン)下で実施した。動物を、継続的なECGおよび呼吸モニタリングを行いながら37℃の電気温熱パッドの上に仰臥位に置いた。心臓および血管の画像を、デジタル超音波システム(Vevo 2100 Imaging System、VisualSonics、トロント、カナダ)で、18〜38および32〜56MHz高周波リニアアレイトランスデューサ(それぞれ、MS400およびMS550S)で得た。
2D心エコー調査は、傍胸骨長軸で実施された(Bhan et al.2014,Am.J Physiol Heart Circ Physiol 306,H1371)。画質を最適化するために、画像深度、幅およびゲイン設定をそれに応じて適合させた。平均深度は14mmであり、全フレームレートは200フレーム/秒を上回った。画像は、300フレームからなるシネループにデジタル保存した。
上行大動脈および大動脈弓の血流速度は、パルス波ドップラー画像を用いて異なる解剖学的観点で特徴付けた。ドップラー速度測定は、標的位置の中央のドップラービームと想定血流方向の間の可能な限り小さい入射角で実施された。
全ての超音波イメージング調査は、調査者に処置割当てを知らせずにVevo 2100(1.5.0)ソフトウェアを用いて分析した。
左心室(LV)容積および機能は、スペックルトラッキング分析を用いて評価した。心内膜の境界の十分な視覚化および画像アーチファクトの不在に基づいて適したBモードループを選択した。3つの連続した心周期を、画質に基づく分析のために選択した。心内膜と心外膜の境界の半自動化されたトラッキングを実施し、3つ全ての心周期にわたって検証し、その後、各シネループの全体にわたって良質のトラッキングを達成するために必要に応じて補正した。その後、トラッキングした画像をフレームごとに処理した。LV収縮末期容積(LVESV)およびLV拡張末期容積(LVEDV)を、ディスクテクニックの方法を用いて追跡から計算した。LVEFおよびLV質量は、容積から誘導した。LV質量および全容積は、体表面積に対して指標化されて報告された(Schmidt−Nielsen 1984、前記参照)。ピーク収縮期の縦軸および半径方向のひずみ尺度は、局所スペックルトラッキング分析中に得た(Thibault et al.2011,Circ Cardiovasc Imaging 4:550;Bauer et al.2011,Circ Res 108:908)。LV心筋の各長軸断面を、心周期を通して6の標準的な解剖的部分に分割した。MIの1カ月後に記録された画像では、虚血領域は、中央前側、先端前側、および先端下壁部分で規定され、壁運動異常を考慮に入れた。基底下壁および中央下壁部分を、遠隔領域と名付けた。局所歪値は、それぞれ、梗塞部分および遠隔部分を横切るこれらの同じ測定値を平均することによって得た。
動脈の硬さの指標としての血流ピーク速度を抽出し、3連続心周期について平均した。
2.2.5 総コレステロール、C反応性タンパク質(CRP)および心臓トロポニンI(cTnI)測定
総コレステロールレベルは、処置後0週、1カ月および3カ月目に分析した。炎症の指標としての高感受性CRPは、0週および2エンドポイントで測定した。心臓TnIは、0週の虚血再灌流後3時間および2エンドポイントで分析した。
2.2.6 組織病理学的分析
心臓は、大静脈からの200μl過飽和KClの注射後の心臓拡張期に停止させた。組織をヘパリン処置した生理食塩水で灌流し、亜鉛ホルマリン固定液(Z2902、シグマ)で固定した。心臓、大動脈、脾臓および脛骨を採取した。心臓および脾臓の湿重量および脛骨の長さを測定した。心臓および大動脈弓を固定液中で一晩、その後70%エタノール中で保存し、標準的な手順を用いてパラフィンに包埋し、5μm厚のスライスに切開した。心臓をLVの心尖部からベース部分まで横に、そして大動脈弓を縦方向にスライスした。
心臓のスライスで、線維症、血管形成および炎症を評価した。線維症および梗塞サイズ(IS)を、シリウス・レッド染色したスライスで定量化した。梗塞サイズの信頼できる測定に必要な1心臓当たりの切片の最小数は、全20スライスの1/3である(Takagawa et al.2007,J Appl Physiol 102:2104)。本発明者らは、LV全体を網羅するために規則的な間隔の7つのスライスを分析した。赤色に染色したコラーゲンを閾値を用いて分割(単離)した。梗塞巣は、閾値面積から導き、LV面積は手作業で追跡した。ISは、全ての切片からの梗塞巣の合計を、全ての切片からLV面積の合計で除算し、100を乗じることによって計算した。新血管新生および炎症を、虚血域および遠隔域で評価した。全ての画像を各域から無作為に選択された8の高倍率視野(HPF)で分析した。毛細血管および細動脈密度は、組織面積に対するレクチンおよびSM−アクチン陽性血管の数によって評価した。炎症応答は、MAC3免疫組織化学染色を用いて評価した。炎症は、組織面積に対するMAC3陽性細胞の数として表した。
大動脈弓スライス上で、弓の小さいほうの湾曲にあるアテローム動脈硬化性プラークを、プラークサイズ、組成、血管新生および炎症について分析した。Verhoeff Van Giesonは、弾性薄膜だけを染色する。プラーク面積は、内腔面積と内部の弾性薄膜で区切られる面積との間の差として測定し、血管サイズに起因する変動をなくすために結果を総血管面積に正規化した。プラークコラーゲンおよびカルシウム沈着部位は、シリウス・レッドおよびアリザリン・レッドについて陽性に染色された。レクチンおよびSM−アクチンを用いてプラーク中の毛細血管および小型の筋肉化した血管を標識した。MAC3染色を用いて炎症応答を定量化した。画像を獲得し、閾値を用いて分析して、各方法について全陽性染色を求めた。次に、これらの結果を総血管面積に正規化した。
2.2.7 統計分析
統計分析は、GraphPad Prism 6ソフトウェアを用いて実施した。データは平均値±SDとして表した。ANOVAおよび事後検定を用いて、0週、8週〜1カ月および3カ月の対照ならびに0週、8週〜1カ月および3カ月の処置のモデルの進化を評価し、群間の差を分析した。スチューデントT検定を用いて処置前と処置後の差を比較した。データが正規分布に従わなかった場合は、クラスカル−ワリス(KW)ノンパラメトリック統計が報告され、マン−ホイットニーまたはウイルコクソン検定を用いて群間の差が確認された。
2.3 結果
2.3.1 研究群
50匹のApo E−/−雄マウスを登録し、高コレステロール食を自由に摂食させた。4週後、本発明者らは60分のLAD閉塞および再灌流を全てのマウスで実施し、そのうち10匹のマウスが急性虚血性合併症で死亡した。40匹のマウスを8週目に、盲検的に処置(PBS20匹およびPlGF20匹)に対し無作為化して評価した。それらのうちの半数(PBS10匹およびPlGF10匹)を12週目に再評価し、残りの半数を20週目に再評価した。PlGF群から2匹のマウスが(1匹は12週目に、もう1匹は20週目に)超音波検査中に死亡した。20週の追跡調査の後、19匹のマウスのうち4匹に上肢下垂足が見つかった(右側2匹および左側2匹、PBS群から3匹)。13匹のマウスに皮膚の問題があった(PBS群から8匹)。研究フローチャートは、図4に表される。
2.3.2 28日の皮下注入後のPlGFレベル
血漿PlGFレベルは、0週および、MIの誘導の1カ月後である8週で同様であった(0±0に対して8週では0.4±2.1pg/ml)。PBS群では、9週から20週までのPlGF値は、0週および8週と同等であった。対照的に、PlGFで処置されたマウスは、ミニポンプ移植後1、2および3週でPBSよりも循環PlGFレベルが1653倍、92倍、および23倍高かった(9週:5781±3710に対してPBS3.5±8.6pg/ml、p<0.0001;10週:168.8±547.1に対してPBS1.8±4.6pg/ml、p=0.0009;11週 :42.0±78.0に対してPBS1.8±5.4pg/ml、p=0.019)。12週および20週目に、PlGFレベルは0週および8週のレベルに戻った。
2.3.3 PlGF−2は心血管リスク因子に重要な影響を及ぼさない
PlGF2処理は、体重、総コレステロールレベル、高感受性CRPレベル、心臓重量および正規化心臓重量(体重に対する心臓重量および脛骨長に対する心臓重量)を含む心血管リスク因子をあまり変化させなかった。
2.3.4 PlGF−2は、心機能を向上させ、LVリモデリングを予防する:心エコー検査スペックルトラッキングイメージングを用いるLV容積、心臓の全体および局所の機能分析。
心拍は心筋梗塞後に著しく増加し、12週までさらに上昇し、20週まで高いままであった。LADの虚血再灌流は、EFの低下、ならびにLVEDViおよびLVESViの増加を誘導した。PBSと比較して、EFの著しい改善は、12週目のPlGF−2で処置された動物におけるLVEDViおよびLVESViの低下に関連していた。PlGF−2注入は、20週目でさらなるLVEDVi、LVESViの上昇およびEFの悪化を防いだ。このことは、全体的なLV構造(図5)および機能(図6)へのPlGF−2の有益な効果を確認する。
MIの4週間後、虚血領域における半径方向と縦軸の両方のひずみは、0週と比較して著しく減少した。PlGF−2処置の後、局所の半径方向および縦軸のひずみは12週目に一時的に改善された。
2.3.5 PlGF−2は、虚血心筋において新血管新生を誘導する
PlGF−2で処置されたマウスにおいて、レクチン染色した毛細血管密度は、1カ月後に虚血領域において対照よりも著しく高かった(2144±478に対して2813±212の毛細血管数/mm、対照に対してp<0.05)。SMアクチン−染色した細動脈密度は、3カ月目にPlGF−2で処置された群で著しく高くなった(125±18に対して77±13の対照における小型の筋肉化した血管の数/mm、p=0.0014)。
2.3.6 PlGF−2は、心臓の損傷および炎症を誘導しない
0週、12および20週と比較して、cTnIレベルは虚血再灌流の3時間後に著しく増加して、心筋梗塞が確認された。12週および20週の異なる処置群間で差異は見出されなかった。このことは、PlGF−2が心臓壊死を誘導しなかったことを証明する。
シリウス・レッド染色の分析に基づいて、ISは12週と20週の両方の群において同等であった(12週のPlGFは9.7±5.3に対して11.5±6.2%;20週のPlGFは9.6±7.5に対して12.1±5.1%)。12週および20週目に、MAC3+細胞密度は、虚血領域および遠隔領域の群間において同等であった。しかし、20週目にMAC3+細胞密度は領域(虚血または遠隔非虚血)および処置(PBSまたはPlGF−2)に関わらず、12週と比較して著しく増加した、図7参照。
2.3.7 PlGF−2は不安定なプラーク表現型を促進しなかった:
ドップラーパルス波超音波を用いる大動脈の硬さ測定。
大動脈の硬さの指標として、5の異なる位置:大動脈根、上行大動脈、無名動脈、頸動脈および鎖骨下動脈に隣接する大動脈弓の3カ所でピーク速度を測定した(図8)。ピーク速度は、心筋梗塞の1カ月後に大動脈根を除く全ての位置で著しく増加した。PBSと比較して、PlGF−2の適用は、12または20週でのピーク速度差を誘導しなかった。
組織染色を用いるプラーク分析における形態計測、線維症、カルシウム沈着、血管形成および炎症。
PlGF−2投与は、処置1カ月後および3カ月後にVerhoeff van Gieson染色で測定した、正規化されたプラーク面積を増加させなかった。しかし、プラーク面積は後期段階により大きくなり、これは継続的な高コレステロール食の摂食による可能性が最も高かった。PlGF−2注入は、12週および20週で、正規化されたプラーク線維症(シリウス・レッド染色)およびカルシウム沈着(アリザリン・レッド染色)の変化を誘導しなかった。12週目に、プラークカルシウム沈着が4匹のマウスで明らかになり(そのうちの2匹はPBS群からのマウス)、一方、20週目に、14匹のマウスで明らかになった(そのうちの7匹はPBS群からのマウス)。PlGF−2処置は、12週または20週でプラークの毛細血管面積および細動脈面積を増加させなかった(図9)。このことは、PlGF−2がプラーク脆弱性に寄与しなかったさらなる確証を表す。PBSと比較して、PlGF−2で処置されたマウスは、12週および20週でプラークにおいて同等の炎症応答、プラーク面積に対する同様のMAC3細胞面積(図10)を示した。
脾臓重量および体重に対する脾臓は、観察した時点で群間で異ならなかった。
2.3.8 結論
結論として、提示されるデータは、PlGF−2の全身投与がHFの進行を著しく制限することを実証する。より特に、PlGF−2が心筋の新血管新生能、収縮機能を改善すること、PlGF−2がアテローム動脈硬化性プラークのサイズを増加させることなく、マクロファージの蓄積を増加させることなく、プラークを不安定化することなく、心臓の構造を保存することが本明細書において実証される。
従って現在のデータは、心筋灌流および機能の改善を必要とする患者の処置において患者におけるPlGF−2タンパク質の注入の使用を支持する。現在のデータは、心臓のリモデリングの予防のために、そして虚血心筋症によって引き起こされる心不全の発生を防ぐために、PlGF−2の使用をさらに支持する。

Claims (17)

  1. 哺乳動物において心不全表現型を処置または予防する際に使用するための胎盤増殖因子2タンパク質(PlGF−2)を含む組成物であって、前記哺乳動物がアテローム硬化性である、組成物。
  2. 前記心不全表現型が、心室機能不全である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記心室機能不全が、収縮末期容積の増加によって定義される、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記心室機能不全が、駆出率の低下によって定義される、請求項2に記載の組成物。
  5. 前記心室機能不全が、収縮末期容積の増加および駆出率の低下によって定義される、請求項2に記載の組成物。
  6. 前記心不全表現型が、心室リモデリングである、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記心室リモデリングが、拡張末期容積の増加によって定義される、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記心室機能不全が、弛緩障害、心室充満圧の増加および保持された駆出率によって定義される、請求項2に記載の組成物。
  9. 前記心不全表現型が、左および/または右心室に示される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 前記PlGF−2タンパク質が、組換え型PlGF−2タンパク質である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 前記組換え型PlGF−2タンパク質が、哺乳動物細胞培養から得られる、請求項10に記載の組成物。
  12. 前記哺乳動物細胞培養が、一時的または恒常的にPlGF−2を発現することのできるチャイニーズハムスター卵巣細胞培養である、請求項11に記載の組成物。
  13. 前記PlGF−2タンパク質が、ヒトPlGF−2タンパク質である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
  14. 前記ヒトPlGF−2タンパク質が、配列番号2を含むものである、請求項13に記載の組成物。
  15. 全身投与による使用のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
  16. 前記全身投与が、血管内もしくは皮下投与である、請求項15に記載の組成物。
  17. 前記血管内投与が、静脈内投与である、請求項16に記載の組成物。
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