JP6456023B2 - チューブリン重合阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体 - Google Patents

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本発明は、チューブリン重合阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体に関する。
チューブリンは微小管や中心体の形成に重要な役割を担っており、細胞増殖や分化、細胞内物質輸送など多岐に渡る機能を有する極めて重要なタンパク質である。臨床では抗がん剤として、チューブリンと結合することで微小管の解離を促進するコルヒチン、逆にチューブリンとの結合で微小管を安定させて細胞分裂を阻害するタキソールが使用されている。しかし、チューブリン重合阻害剤として用いられている抗がん剤は骨髄抑制、粘膜障害、脱毛、神経毒性など重篤な副作用が懸念されている。そのような性質から、副作用が出現すれば投与を中断もしくは中止せざるを得ないのが現状であり、抗がん剤治療の大きな障壁となっている。
現在、臨床ではチューブリン阻害剤として、ビンカアルカロイド系のビンブラスチン、ハリコンドリンB類縁体であるエリブリンなどが使用されている。また、新たなチューブリン阻害剤の研究開発が行われている(特許文献1,2)。
特開2012−207044号公報 特表2008−543838号公報 特開2006−241141号公報
J. Folkman : N. Engl. J. Med., 285., 285, 1182-1186(1971) M. J. Crodd, J. Dixelius, T. Matsumoto, L. Claesson-Welsh : Trends Biochem. Sci., 28, 488-494(2003) J. M. Schlaeppi, J. M. Wodds : Cance Metastasis Rv., 18, 473-481(1999) H. Kanda et al: Int. J. Cancer., 122, 444-451 (2008) Sci Rep. 2012;2:905. doi: 10.1038/srep00905. Epub 2012 Nov 30., Target proteins of ganoderic acid DM provides clues to various pharmacological mechanisms., Liu J, Shimizu K, Tanaka A, Shinobu W, Ohnuki K, Nakamura T, Kondo R.
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規かつ副作用の少ないチューブリン重合阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体を提供することである。
本発明者らは、交感神経α1受容体のアンタゴニストであり、前立腺肥大症に対して排尿障害を改善する効果のあるナフトピジルが、前立腺ガンに対しては細胞増殖抑制効果があることを見いだし、発表した(非特許文献4)。ところが、更なる研究の結果、ナフトピジルを構成する骨格であるフェニルピペラジン誘導体には、チューブリン重合阻害活性があることを見い出し、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、上記課題を解決するための発明に係るチューブリン重合阻害剤は、フェニルピペラジン誘導体を含有することを特徴とする。フェニルピペラジン誘導体とは、図1(A)に示すように、フェニルピペラジン骨格を有し、R1、R2の二つの置換基を備えたものを意味する。そのようなフェニルピペラジン誘導体としては、例えばナフトピジル(Naftopidil)、RS100329、KN-62などがあるが、これらに限定されない。なお、フェニルピペラジン誘導体としては、1-(2-メトキシフェニル)ピペラジン骨格を備えたものを用いることもできる。
フェニルピペラジン誘導体の投与量としては、特に限定されないが、1日当たり25mg/day/50kg体重〜750mg/day/50kg体重の範囲(体重1kg当たりで言うと、0.5mg/day/kg〜15mg/day/kg)、好ましくは25mg/day/50kg体重〜75mg/day/50kg体重の範囲(体重1kg当たりで言うと、0.5mg/day/kg〜1.5mg/day/kg)で含むことが好ましい。
本発明のチューブリン重合阻害剤は、主として腫瘍治療剤として使用できる。その他にも、本発明のチューブリン重合阻害剤は、血管内皮細胞の増殖、遊走、又は血管の新生に起因する疾患の予防又は治療用に用いることができる。このとき、血管内皮細胞の増殖、遊走、又は血管の新生に起因する疾患が糖尿病性網膜症、動脈硬化症、歯周病、強皮症、乾癬、加齢黄斑変性症、皮膚疾患、緑内障又は炎症の予防又は治療用であることが好ましい。
本発明のチューブリン重合阻害剤は、医薬品として使用する以外に、適当な健康食品・一般の食品などに含有して、チューブリン重合阻害用組成物とすることもできる。
本発明のチューブリン重合阻害剤の投与方法としては、特に限定されないが、経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉投与、皮膚病巣に対する直接的な塗布などが例示される。
フェニルピペラジン誘導体は、従来にも薬物として用いられていることから、比較的安全性が高いことが知られている(特に、ナフトピジルは、長年に渡って前立腺肥大症の治療薬として使用されており、副作用も非常に少ない)。このため、安全性の高いチューブリン重合阻害剤となる。
本発明によれば、フェニルピペラジン誘導体は、副作用が少なく、かつ有効なチューブリン重合阻害作用を示すので、安全性の高いチューブリン重合阻害剤として提供できる。このチューブリン重合阻害剤は、各種のがん細胞株に対抗するので、例えば癌、網膜疾患(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症)、皮膚疾患(乾癬)、炎症性疾患(変形性関節炎、関節リウマチ)などに効果的である。
本発明及び本実施形態に係る化合物の構造を示す図である。(A)フェニルピペラジン誘導体を示す。図中、R1、R2は、それぞれ置換基を意味する。(B)ナフトピジル(Naftopidil)の構造式、(C)RS100329の構造式、(D)KN-62の構造式である。 実施例1の結果を示すグラフである。 実施例2の結果を示すグラフである。(A)〜(C)は、それぞれナフトピジルを加えなかったもの、ナフトピジル10, 20μMにて処理した結果である。 実施例3の結果を示すウェスタンブロッティング検出の写真図である。 実施例4の結果を示すグラフである。グラフ中、「C」はコントロール群を、「N」はナフトピジル投与群を、「R」はRS100329投与群を示す。また、各ドットは、生データ(6匹/群)を示す。 実施例7の結果を示すグラフである。
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶ。
<実施例1:in vitro での血管新生抑制効果確認試験>
1.試験方法
ヒト血管内皮細胞HUVECを96穴プレートの各ウエルに対して2000個/wellにて播種し、翌日にナフトピジルの濃度を変化させて処理した。その3日後に細胞数を計数し、コントロール群と比較した。
2.試験結果
結果を図2に示した。ナフトピジルを添加しないウエルの細胞数を1とするとナフトピジルを添加したウエルでは、添加濃度を40μMまで上昇させるに従って、図2のごとく増殖細胞割合が減少した。このことから、ナフトピジルは、濃度依存的に血管内皮細胞の増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。
<実施例2:in vitro での血管新生抑制効果確認試験>
1.試験方法
ヒト血管内皮細胞HUVECを90mmシャーレに対して、4×105個/dishにて播種し、翌日にナフトピジルの濃度を0, 10, 20μMとして変化させて処理した。その3日後に細胞周期を調べた。
2.試験結果
結果を表1及び図3に示した。ナフトピジル投与群では、濃度依存的にG0/G1期の細胞割合が多くなり、G1 cell cycle arrestがナフトピジルにより引き起こされたことが分かった。こうして、ナフトピジルはG1 cell cycle arrestを血管内皮細胞に生じさせ、血管内皮細胞増殖抑制による血管新生抑制効果があると証明された。
<実施例3:in vitro での血管新生抑制効果確認試験>
1.試験方法
ヒト血管内皮細胞HUVECを90mmシャーレに対して、4×105個/dishにて播種し、翌日にナフトピジルの濃度を0, 10, 20μMとして処理した。その3日後にタンパク質を回収し、細胞周期についてナフトピジルと関係するタンパク質を調べた。
2.試験結果
ウェスタンブロッティング検出の結果を図4に示した。ナフトピジル投与群では、投与量の増加に伴って、p21の発現量が増加していた。p21が細胞周期をG1期で抑制し、G1 cell cycle arrestが起きるものと考えられた。
<実施例4:in vivo での血管新生抑制効果確認試験>
1.試験方法
BDマトリゲル基底膜マトリックス(以下、「BDMM」と称する。BD Biosciences, USA)は、細胞外マトリックスタンパク質を豊富に含むEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫から抽出した可溶性基底膜調製品であり、主成分は、ラミニン、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン/ニドジェン1,2である。BDMMは、TGF-β、上皮細胞増殖因子、インシュリン様成長因子、線維芽細胞増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子など、EHS腫瘍に自然に産生される他の増殖因子も含有しており、小動物を対象とした血管新生定量法に使用できることが知られている。
実験方法は、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社によって開発された方法(http://www.bdj.co.jp/pdf/matrigel/65-131-00_Matrigel-application-note.pdf)「BDマトリゲルTMマトリックスを用いた in vivo / ex vivo 血管新生定量法」の記載に従った。簡単に説明すると、次の通りであった。
マウス皮下にBDMMを500μl/個(両肩に1個づつ1匹あたり合計2個)移植し、8週間後屠殺した。マウスは麻酔後、エバンスブルーを静脈より注射しマトリジェルプラグを摘出した。摘出したマトリジェルプラグをホルムアミドに浸し、ホルムアミドに溶出したエバンスブルーの濃度を吸光度計を用いて測定した。ナフトピジル(Naftopidil)を内服させた群(10mg/kg/day)、RS100329を内服させた群(10mg/kg/day),内服させない群の三群について6匹ずつ使用し結果を比較した。
2.試験結果
結果を図5に示した。全群間でTukey-Kramerの検定を行ったところ、p値はcontrol群(C)と比較して、p < 0.01(対Naftopidil群(N))及びp < 0.01(RS群(R))であった。これらの結果より、ナフトピジル群(N)とRS100329投与群(R)は、コントロール群(C)に比較して血管新生抑制効果が認められることが判明した。
<実施例5:各種ヒトがん細胞に対する効果確認試験>
1.試験方法
前立腺がん細胞(LNCap, E9, AIDL, PC-3)、膀胱がん細胞(T24)、大腸がん細胞(HT29, HCT116, SW480)、膵臓がん細胞(BxPC-3, MIApaca2, PANC1, PSN1)及びストロマ細胞(PrSC, PrSMC, PCaSC-8:但し、がん細胞ではない)を用いた。12ウェルもしくは96ウェル・プレートの使用し、各細胞を播き、5%CO2含有気体中において、37℃で培養した。各ウェルについて、約1.0〜2.0 x104個/ウェル(12穴ウェル)もしくは約0.5〜1.0 x104 個/ウェル(96穴ウェル)を播種し、翌日からNaftopidil, Tamsulosin, Silodosin, Doxazosin, RS100329, BMY7378及びKN-62を10μMとなるように添加し、3日間培養した後、細胞の生存率(Cell viability)を調べた。
2.試験結果
結果を表2に示した。全群間でStudent's t-testの検定を行ったところ、p値はcontrolと比較して、p < 0.05(*)及びp < 0.01(**)として示した。これらの結果より、フェニルピペラジン誘導体、特にナフトピジルはほぼ全ての細胞に対して増殖抑制効果を有することが判明した。
<実施例6:ナノ磁性微粒子を用いた標的タンパク質の精製と同定>
次に、ナフトピジルの標的となるHT29細胞内結合タンパク質を精製した。タンパク質の精製には、ナノ磁性微粒子を用いた。方法の詳細は、非特許文献5に開示されている。概要を説明すると、次の通りであった。
ナフトピジルにアミノ基を導入して誘導体を合成し、この誘導体をナノ磁性微粒子に結合させ、固定化した。ナフトピジル誘導体を固定化したナノ磁性微粒子0.5mgに、ヒト大腸がん細胞株HT29細胞から抽出したタンパク質混合液200μL(緩衝液A(20mM HEPES-NaOH(pH7.9), 50mM KCl, 0.1% NP-40)中に溶解)を添加して、ナフトピジルとタンパク質とを結合反応させた。その後、磁石を用いてナノ磁性微粒子を分離し、分離されたナノ磁性微粒子を緩衝液Aで洗浄した後、ナノ磁性微粒子に結合したタンパク質を溶出・単離した。
単離されたタンパク質をナフトピジル添加・未添加の条件にて、競合阻害反応を行い、電気泳動した後、ゲルを染色した。その結果、複数のタンパク質が候補バンドとして検出された。
タンパク質バンドをそれぞれ質量分析機によって分析したところ、チューブリンが同定された。
<実施例7:フェニルピペラジン誘導体によるチューブリン重合阻害作用の確認試験>
フェニルピペラジン誘導体(Naftopidil, KN-62, RS 100329, BMY7378)15μMとチューブリン・タンパク質1.5mg/mLと0℃にて混合し、37℃でインキュベートした。インキュベート開始から60分間までの蛍光強度(460nm)を経時的に測定し、チューブリンの重合反応の進行度合いを求めた。なお、重合促進剤として、3μMのPacを使用し、重合阻害剤として、500μMのCaCl2を用いた。
結果を図6に示した。15μMのフェニルピペラジン誘導体を添加した場合には、チューブリン重合反応が阻害されることが分かった。
<考察>
本試験の結果から、フェニルピペラジン誘導体がチューブリン重合反応を阻害すること、及び血管内皮細胞にG1 cell cycle arrestを起こすことにより、その遊走・増殖を選択的に阻害し、血管新生抑制効果を示すことにより、ヒト由来のがん細胞株(前立腺がん、膀胱がん、大腸がん、膵臓がん)だけでなく、線維芽細胞や血管内皮細胞の細胞周期を停止させることが分かった。
また、ナフトピジル結合タンパク質の同定を試みた結果、チューブリンが同定された。市販のチューブリン重合アッセイを用いた検討により、ナフトピジルと同じフェニルピペラジン誘導体であるRS100329, KN-62, BMY7378は、全てチューブリン重合を阻害することを確認した。
今回、我々が見出したチューブリン重合阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体のうち、ナフトピジルは長年に渡り前立腺肥大症治療薬として使用されており、その副作用も少なく、非常に安全な薬剤であることは実証されている。よって、ナフトピジルの化学構造を参考にすることで、フェニルピペラジン誘導体をリード化合物とした、副作用がなく作用が強い新規チューブリン重合阻害剤の開発(ドラッグデザイン)を可能とする。また、ナフトピジルの事例のように、既存医薬品の中からチューブリン重合阻害剤となる薬剤を見つけ出し、抗がん治療に目的外利用できる可能性を見出した。
近年、新薬開発が停滞していることが問題視されている。その中には、新規化合物の安全性は確認されているが臨床応用の段階で副作用等の発見によって医薬品の承認が取得できない例が多く見られる。この場合、多額の研究開発費を費やしてきたものも多くあり、製薬開発の大きな課題となっている。一方、既存薬や安全性が確保されている新規化合物を対象とし、最新の研究手法を用いて網羅的に薬理作用を解析評価することで、別の疾患への治療薬として開発研究を行うドラッグ・リポジショニングが注目を集めている。現在のところ、総数としては10件未満となっているが、ドラッグ・リポジショニング研究の有利な点は、(i)既存薬の新たな薬理作用を発見し、その既存薬を別の疾患治療薬として開発(適応拡大)すること、(ii)既存薬の作用・副作用の発症メカニズムを解明し、より作用の強い薬、副作用の少ない薬を開発することである。今後、多くの製薬企業が取り入れると考えられる。
今回の研究によって見い出されたナフトピジルは、一般的に前立腺肥大症における臨床薬として使用され、安全性が実証されているのみではなく、市場シェアは22%しかないものの47%を占めるタムスロシン(ハルナール)とも遜色ない症状緩和作用を持っている。さらに、ナフトピジルは、がん細胞の増殖を抑制するので、「がん化学予防」という観点からも患者にとって有益である事が言える。
ナフトピジルについては、「(i)オフターゲットな作用を引き出す作用点を見出すことで、ナフトピジルの効果が現れるがん細胞を特徴付けられる」、「(ii)ナフトピジルをリード化合物として、がん細胞に優先的に作用すると考えられる」細胞周期阻害剤を新たに開発すれば、がん化学予防という点で社会へ還元できる、と考えられる。ナフトピジルは現在、国内企業が特許を持ち製造販売している。しかし特許は数年で切れ、後発品が多く出てくるものと考えられる。こういった状況で、企業にとっても新用途の開発は今後の大きな利益を産む可能性が高い。
また、一般に抗がん作用を示す薬剤のうち、血管新生阻害作用を示すものが知られている。血管新生とは、既に存在している血管から新たな血管が新生されることを意味しており、健常人が怪我から治癒する際に認められる正常な生理的現象や、特定の疾患において認められる新たな血管形成プロセスである。血管新生が不適切に行われると、身体に障害が発生したり、病気の原因と成り得る。血管新生を引き起こす原因疾患としては、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、歯周病、強皮症、緑内障、尋常性乾癬、加齢黄斑変性症、皮膚疾患などがあり、これらの疾患の治療に係る血管新生の制御に大きな関心が払われている。
血管新生と腫瘍の関りとして、腫瘍がある一定以上の大きさ(1〜2nm3)になるには、腫瘍に栄養成分や酸素を供給するため血管新生が必要であることが唱えられ、血管新生の抑制による制癌の可能性が始めて示された(非特許文献1、特許文献3)。その後、血管内皮細胞の培養系確立に伴い、血管新生研究が本格化し、種々の血管新生促進因子が次々に同定されてきた。腫瘍血管は、血管周皮細胞の欠如あるいは減少により、血管新生因子、特にVEGFの影響を受け易い状態にある。このため、未成熟な新生血管の形成が繰り返し行われている。腫瘍血管新生のメカニズムは、腫瘍などから分泌されたVEGFが内皮細胞膜上のVEGF受容体に結合し、チロシンキナーゼドメインの活性化、自己リン酸化、細胞内シグナル伝達を経て、内皮細胞の増殖・遊走・管腔形成につながると考えられている(非特許文献2)。従って、血管新生阻害の観点からVEGFは最も有望な治療ターゲットといえる(非特許文献3)。
このような背景のもとで開発されている血管新生阻害剤として特に注目を浴びている。例えば、組み換えヒト抗VEGF抗体であるアバスチン(米国ジェネンテック社製)やEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(アストラゼネカ社製)等が使用されてきてはいるが、細胞毒性が高く、副作用の発生が懸念されており、このような疾病の予防又は治療にあたっては、長期間に継続して行うことが必要なため、より効果的な血管新生の抑制と副作用の回避との両方を達成し得る血管新生阻害剤の開発が望まれている。
一方、前述の血管新生阻害剤として知られているアバスチンは、国内での臨床試験中において、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌:国内臨床試験における安全性評価対象例140例及び製造販売後の特定使用成績調査における安全性評価対象例2,696例の計2,814例中1,789例(63.6%)6,738件に副作用が認められた。
これに対し、フェニルピペラジン誘導体の一つであるナフトピジルは、長年に渡って前立腺肥大症に対する薬剤として用いられており、その副作用も少なく、非常に安全な薬剤である。例えば、ナフトピジル錠(普通錠)においては、総症例22,013例中、副作用は721例(3.28%)に認められており、その副作用もめまい・ふらつき・立ちくらみなど軽微なものである。
このため、本発明者によって見出されたフェニルピペラジン誘導体は、他に市販されている抗がん剤と比較し副作用が少なく、かつ有効にチューブリン重合反応を阻害するので、安全性の高い抗がん剤、及び/又は血管新生阻害剤として提供できることとなった。血管新生抑制剤としては、病的な血管新生に対抗するので、例えば癌、網膜疾患(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症)、皮膚疾患(乾癬)、炎症性疾患(変形性関節炎、関節リウマチ)などに効果的である。
このように、本発明者によれば、フェニルピペラジン誘導体は、抗がん剤、及び/または腫瘍や炎症細胞による血管新生を阻害する薬剤として使用できることがわかった。

Claims (2)

  1. ナフトピジルまたはRS100329のいずれか一つのチューブリン重合阻害剤を含むことを特徴とするストロマ細胞増殖抑制剤。
  2. ナフトピジルまたはRS100329のいずれか一つのチューブリン重合阻害剤を含むことを特徴とする血管新生阻害剤。
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