JP6450292B2 - 再圧縮蒸気の利用方法及びプラント - Google Patents
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Description
本発明は、蒸気の発生を伴うプロセスにおいて、この蒸気を断熱圧縮することにより得られる再圧縮蒸気を、熱源として効率良く利用する方法及びこの方法を利用したプラントに関する。
化学物質の反応や混合物の分離などの操作により、蒸気の発生を伴う化学プロセスにおいて、発生するプロセス蒸気が目的物(例えば、常温常圧下で液状の化合物など)である場合、又はプロセス蒸気が大気中への排出が適切ではない物質を含む場合には、通常、プロセス蒸気を冷却して凝縮し、回収される工程が導入される。
このような化学プロセスにおいて、発生するプロセス蒸気が有する熱量を、熱源として有効活用し、プロセス全体で掛かるエネルギー量又はランニングコストを低減する方法が提案されている。例えば、プロセス蒸気を断熱圧縮することで温度を上昇させ、その圧縮プロセス蒸気(再圧縮蒸気)の熱量を蒸発や蒸留、乾燥などの工程における熱源として利用する蒸気再圧縮(Vapor Re-Compression:VRC)方式などの方法が検討されている。
例えば、特許第3221695号公報(特許文献1)には、揮発性の溶媒と低濃度の不揮発性の溶質とを含む原液から、ヒートポンプ方式(蒸気再圧縮方式)により、溶媒及び溶質を回収する方法が開示されている。詳しくは、蒸留塔などで発生するプロセス蒸気を、塔頂ラインから蒸気圧縮機に導入して圧縮及び昇温し、この圧縮プロセス蒸気(再圧縮蒸気)を必要量だけリボイラーに供給することにより、塔底における熱源として利用している。また、再圧縮蒸気の余剰分は冷却され凝縮し、リボイラーで発生した凝縮液と合流して、一部は留出物として回収され、残部は還流ラインを経由して塔へと戻されている。このような方法では、ランニングコスト低減などのある程度の省エネルギー効果は得られるものの、圧縮機などの機器を保護する観点については検討されておらず、使用状態によっては機器が破損するおそれがある。
また、安全かつ簡便にプロセス蒸気を利用する方法として、国際公開第2015/033935号(特許文献2)には、VRC方式において、圧縮機の下流に存在する未凝縮の再圧縮蒸気などのガス成分を、主工程に戻す循環工程を設けることにより、圧縮機などの機器の破損を防止しつつプロセス蒸気を利用する方法が開示されている。この方法では、循環工程により、圧縮機の下流における前記ガス成分の滞留などを抑制できるため、安全かつ簡便にプロセス蒸気を利用できる。しかし、この方法では、圧縮機の下流側の圧力制御が容易ではなく、円滑に再圧縮できない場合があり、省エネルギー効果の向上にも、改善の余地が残されていた。また、各ユニットやそのレイアウトなどのプロセス設計における自由度も制限されていた。
従って、本発明の目的は、断熱圧縮により昇温させたプロセス蒸気(再圧縮蒸気)を熱源として効率的に利用する方法、及びこの方法を用いたプラントを提供することにある。
本発明の他の目的は、プロセス蒸気を円滑に再圧縮できる方法、及びこの方法を用いたプラントを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記再圧縮蒸気の全量(凝縮性ガス成分の全量)を凝縮しても、VRC方式を備えたプラントを円滑に運転できる方法、及びこの方法を用いたプラントを提供することにある。
本発明の別の目的は、VRC方式において、プロセス設計の柔軟性に優れたプロセス蒸気の利用方法、及びこの方法を用いたプラントを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、前記再圧縮蒸気を熱源として安全かつ簡便に利用する方法、及びこの方法を用いたプラントを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生し、かつ発生したプロセス蒸気の凝縮性ガス成分(又は凝縮性成分)を凝縮液として回収する主工程と、前記プロセス蒸気の少なくとも一部を圧縮機で断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得る再圧縮工程と、再圧縮蒸気を熱源として利用する熱交換工程と、熱交換工程に供された再圧縮蒸気のうち、凝縮しなかったガス成分を主工程に戻す循環工程とを含む再圧縮蒸気の利用方法において、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入すると、背圧の低下を防止しつつ、より一層高い省エネルギー効果が得られるとともに、安定して運転できるプロセスを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の再圧縮蒸気の利用方法は、凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生し、かつ発生したプロセス蒸気の凝縮性ガス成分(又は凝縮性成分)を凝縮液として回収する主工程と、前記プロセス蒸気の少なくとも一部を圧縮機で断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得る再圧縮工程と、再圧縮蒸気を熱源として利用する熱交換工程と、熱交換工程に供された再圧縮蒸気のうち、凝縮しなかったガス成分を主工程に戻す循環工程とを含む再圧縮蒸気の利用方法であって、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入するガス導入工程を含む。非凝縮性ガスは、圧縮機の背圧側の温度及び圧力下において、気体状態を保持可能なガスを含んでいてもよく、例えば、窒素などの不活性ガスを含んでいてもよい。また、ガス導入工程における非凝縮性ガスの流量と、循環工程における主工程に戻すガス成分の流量とを調整することにより、上記再圧縮工程での圧縮比を制御してもよい。非凝縮性ガスは、循環工程において導入してもよい。さらに、非凝縮性ガスの導入流量は、主工程で発生するプロセス蒸気の流量に対して、0.01〜3体積%であってもよい。また、本発明の再圧縮蒸気の利用方法は、熱交換工程を経たプロセス流体を気液分離するための気液分離工程をさらに含んでもよい。
また、本発明には、凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生する蒸気生成器、及び発生したプロセス蒸気の一部を冷却して凝縮させるためのコンデンサーを有する主ユニットと、前記プロセス蒸気の残部を断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得るための蒸気再圧縮ユニットと、再圧縮蒸気を熱源として利用するための熱交換ユニットと、熱交換ユニットに供された再圧縮蒸気のうち、凝縮されなかったガス成分を主ユニットに戻すための循環ラインとを備えた再圧縮蒸気の利用プラントであって、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入するためのガス導入ユニットを備えた再圧縮蒸気の利用プラントも包含する。非凝縮性ガスは、前述の通り、圧縮機の背圧側の温度及び圧力下において、気体状態を保持可能なガスを含んでいてもよく、例えば、窒素などの不活性ガスを含んでいてもよい。また、ガス導入ユニット及び循環ラインにおいて、非凝縮性ガスの導入流量と、主ユニットに戻るガス成分の流量とを調整可能な流量制御ユニットがそれぞれに配設されていてもよい。ガス導入ユニットは、循環ラインの流量制御ユニットよりも上流に接続されていてもよい。ガス導入ユニットにおいて、非凝縮性ガスの導入流量が、主工程で発生するプロセス蒸気の流量に対して、0.01〜3体積%となるように調整可能な流量制御ユニットが配設されていてもよい。
なお、本明細書中、「プロセス蒸気」とは、気液の相変化を伴う単位操作が組み込まれた製造プロセス(工程)中で発生する蒸気を意味し、「再圧縮蒸気」とは、蒸気再圧縮方式(VRC方式)において、熱源として利用するために温度上昇させたプロセス蒸気を意味し、「非凝縮性ガス」とは、圧縮機の背圧空間における温度及び圧力下において、気体状態を保持可能なガスを意味する。
本発明の方法は、VRC方式において、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入するため、VRC方式を有効に機能(又は作動)させるために必要な圧力(背圧)を維持することが可能になる。従って、多量の再圧縮蒸気(例えば、再圧縮蒸気全量)を有効に凝縮できるため、VRC方式により得られる省エネルギー効果を著しく向上できる。また、非凝縮性ガスの導入により、圧縮機の下流(背圧空間)における圧力を容易に制御できるため、VRC方式を備えたプラントの運転を円滑にできる。そのため、処理量や運転条件の変動が大きなプラントにも対応でき、プロセス設計の柔軟性にも優れたプロセス蒸気の利用方法を提供できる。なお、熱交換などにより凝縮しなかったガス成分を主工程(主プロセス)に戻す循環工程も含むため、機器を破損することなく、安全かつ簡便に再圧縮蒸気を利用できる。
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1の例では、再圧縮蒸気の利用プラントは、凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を排出するプロセス蒸気生成器としての蒸留塔1を備えており、この蒸留塔1からプロセス蒸気を排出するための排出ラインは、分岐点4で分岐している。分岐した一方のラインには、蒸留塔1から排出したプロセス蒸気の一部を冷却して凝縮するための第1のコンデンサー2及び第2のコンデンサー3が配設され、前記プロセス蒸気中の凝縮性ガス成分(凝縮性成分)をコンデンサー2及び3で冷却して凝縮液として回収する。主ユニットは前記蒸留塔1と第1のコンデンサー2及び第2のコンデンサー3とを含む。
また、分岐した他方のラインでは、流量制御ユニットとしての流量制御弁(バルブ)15及び17が配設されたラインを経由して、前記プロセス蒸気の残部を断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得るための蒸気再圧縮ユニットとしてのターボ型圧縮機5と、再圧縮蒸気を熱源として利用するための熱交換ユニットとしての熱交換器7と、熱交換器7を経たプロセス流体を気液分離し、分離されたガス成分を主ユニットに戻すための気液分離ユニットとしての気液分離器8とが配設されている。この気液分離器8では、熱交換器7を経たプロセス流体を、さらにガス成分と、液体成分(凝縮液)とに分離し、分離された凝縮液は、流量制御ユニットとしての流量制御弁13を備えたライン(凝縮液排出ライン)から回収される。一方、気液分離器8で分離されたガス成分は、気液分離器8のエアリングライン(又は均圧管)9bを経由して、熱交換器7のエアリングライン(又は均圧管)9aからのガスと合流し、第1の循環ライン9により主ユニットに戻される。この第1の循環ライン9は、第1のコンデンサー2と第2のコンデンサー3との間のラインに接続部(又は配管接続部)10を介して接続されており、第1のコンデンサー2を通過したプロセス流体(プロセス蒸気)と合流されて、第2のコンデンサー3で冷却して凝縮されて回収される。さらに、前記ターボ型圧縮機5には、圧縮機の入口側のラインと出口側のラインとを連結する第2の循環ライン6、および流量制御ユニットとしての流量制御弁12が配設されていてもよい。また、第2の循環ライン6は、圧縮機の入口側のラインにおいて、流量制御弁15及び17の間のラインに接続されていてもよい。
なお、本発明の利用方法又はプラントは、蒸留塔1並びに第1のコンデンサー2、及び必要に応じて第2のコンデンサー3を含み、凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生し、冷却して凝縮させる主工程(主プロセス)と、ターボ型圧縮機5、熱交換器7及び気液分離器8を含み、プロセス蒸気を圧縮機で断熱圧縮して温度を上昇させた再圧縮蒸気を生成して熱源として利用するVRC工程(VRCプロセス)とに区分される。また、本明細書及び図2及び3においても、図1と同一の構成要素については、同一の番号を付している。
このような構成を有するプラント(装置)において、VRC工程の起動前は、主工程のみで運転されている。すなわち、流量制御弁15は閉じられており、蒸留塔1から排出されたプロセス蒸気は、第1のコンデンサー2及び第2のコンデンサー3で凝縮性ガス成分(凝縮性成分)の全量が冷却凝縮され、凝縮液として回収されている。次に、流量制御弁11、12及び17を全開にし、流量制御弁13を閉の状態で流量制御弁15を徐々に開き、所定の開度に調整する。このとき、蒸留塔1から排出されるプロセス蒸気の一部は、主工程の排出ラインの分岐点4を経て、VRC工程におけるラインのシールガスと置換され、VRC工程の系内もこのプロセス蒸気により昇温されていく。その後、流量制御弁17を所定の開度に調整して(ターボ型圧縮機5の吐出圧が低くなりすぎる場合には、必要に応じて流量制御弁11及び/又は12の開度を流量を減らす方向に調整して)圧縮機に導入されるプロセス蒸気量を調整した後、ターボ型圧縮機5を起動させ、定格回転数で安定させる。この時点では、ターボ型圧縮機5を通過するプロセス蒸気には吐出圧は殆ど負荷されていないが、圧縮機の軸動力×機械効率×(1−断熱効率)の熱が圧縮機内を通過するプロセス蒸気に伝熱することで温度上昇が生じる。流量制御弁12が開の状態である場合は閉じることで、VRC工程を流れるプロセス蒸気は、基本的に圧縮機内を1回通過するだけの状態となる。そのため、温度上昇は圧縮機からの伝熱のみであり温度上昇幅は小さい。ターボ型圧縮機5を通過したプロセス蒸気と、熱交換器7の内部プロセスの沸点との温度差も十分でないため、伝熱も不十分で凝縮もあまり生じていない。従って、殆どのプロセス蒸気(プロセス蒸気中の凝縮性ガス成分)は、未凝縮のまま第1の循環ライン9により主工程の配管接続部10へと戻され、冷却凝縮により回収される。本発明では、このようにVRC工程での第1の循環ラインにより、未凝縮の蒸気を主工程に戻すことができるため、熱交換ユニットでの伝熱不良などによるプロセス蒸気の滞留などを抑制でき、圧縮機内のガス流通の停滞などによる圧縮機の破損を防止できる。なお、ターボ型圧縮機を備えたプラントでは、第2の循環ライン6は、プロセス蒸気の循環方法の制御に加えて、緊急時のサージング回避のため、循環流量を確保するために利用してもよい。また、流量制御弁13は、気液分離器8に凝縮液の液面を確認後、適切な開度または頻度で開き、後工程に凝縮液を送ることができる。
次に、流量制御弁11を徐々に閉め、ターボ型圧縮機5の吐出圧を徐々に増大させると、圧縮されたプロセス蒸気(再圧縮蒸気)の温度は上昇する。所定の圧力(又は圧縮機下流側の背圧)及び温度を維持するために、流量制御弁11の開度調整でターボ型圧縮機5における圧縮比を制御する。しかし、このような流量制御弁11の開度調整による制御のみでは、VRC方式の効果を有効に発揮するには、未だ十分ではなかった。例えば、VRC工程においては、熱交換工程などにおける再圧縮蒸気の凝縮性ガス成分の凝縮、及び圧縮機の軸受けなどからプロセス内に漏れ込むシールガスなどの非凝縮性ガスのプロセス凝縮液(凝縮性ガス成分の凝縮液)への溶解などに起因して、圧力(又は圧縮機下流側の背圧)の低下(又は圧力上昇の停滞)と、それに伴う温度の低下(又は温度上昇の停滞)が起こる。このような事態に対して、流量制御弁11の開度調整のみで対処しても、所定の圧力を保持(又は維持)できない場合があり、所定の圧力を保持するためには、熱交換工程における凝縮性ガス成分の凝縮量(又は熱交換器(VRC蒸発器)での原料仕込み量)を制限するなどして対応せざるを得ない。そのため、圧縮機の下流側の圧力制御も容易ではなく、省エネルギー効果も低下する。また、前記圧力の低下(又は圧力上昇の停滞)、すなわち、圧縮機が空回りしている状態(圧縮せずに、単に送風している状態)のため、VRC方式を備えたプラント(又は再圧縮ユニット(又は工程))の円滑な運転ができず、本来有する省エネプラントとしての機能(又は動作)が停止する場合もある。そのため、流量制御弁11の開度調整に加えて、流量制御弁18の開度を調整してガス導入ライン19から非凝縮性ガスを導入することにより、圧力(又は圧縮機下流側の背圧)の低下を防止して、所定の圧力を維持している。本発明では、このようなガス導入工程(又はユニット)を含むため、熱交換工程において、再圧縮蒸気を多量に凝縮(例えば、凝縮性ガス成分を全凝縮)しても、VRC方式が有効に機能するプロセス(又はプラント)設計が可能(又は容易)となり、省エネルギー効果をより一層向上できる。また、このガス導入工程(又はユニット)により、圧縮機の下流側(背圧空間)での圧力を容易に制御でき、VRC方式を備えたプラント(又は再圧縮ユニット(又は工程))を円滑(又は容易)に運転(又は作動、稼働)できる。そのため、処理量や運転条件の変動が大きなプラントに対しても適用し易く、プロセス設計の柔軟性にも優れている。本明細書において、「背圧空間」とは、VRCプロセスにおいて、圧縮機の吐出圧が及ぶ(又は伝達する)全ての空間及びライン(エアリングラインを含む)を意味する。すなわち、「背圧空間」は、圧縮機下流から流量制御ユニットに至るまでの空間及びライン、例えば、圧縮機下流から、熱交換ユニット、気液分離ユニットなどを経由して、第1の循環ライン及び凝縮液排出ラインのそれぞれに配設される流量制御ユニットに至るまでの空間及びラインと、圧縮機下流から第2の循環ラインに配設される流量制御ユニットに至るまでの空間及びラインとを含むことを意味する。
なお、ガス導入ライン19から導入した非凝縮性ガス、熱交換器7で凝縮しなかった再圧縮蒸気(非凝縮蒸気)、プロセス凝縮液に溶解しなかったシールガスなどの非凝縮性ガスは、ガス成分として気液分離器8で分離され、気液分離器8のエアリングライン9bを経由及び/又は熱交換器7のエアリングライン9aを経由して、第1の循環ライン9を介して主工程に戻される。接続部10に戻った蒸気中に含まれる凝縮性ガス成分(前記非凝縮蒸気中の凝縮性ガス成分)は、通常、接続部10の下流側の第2のコンデンサー3で冷却凝縮されるが、何らかの理由で圧縮機側(上流側)に流入しても、第1のコンデンサー2で冷却凝縮される。そのため、蒸留塔1から排出されるプロセス蒸気と合流しても、主プロセスの凝縮工程及びVRCプロセスの蒸気再圧縮工程以降の工程に対してガス流量が過大となることはない。
主工程(主ユニット)において、プロセス蒸気生成器は、プロセス蒸気を発生する限り、蒸留塔に限定されず、例えば、熱源により加熱蒸発した後、冷却して循環することにより温度制御される装置であってもよく、具体的には、反応器、蒸発器、晶析器、乾燥機などであってもよい。これらのうち、VRC工程を主工程の熱源に組み込み易い点から、蒸留塔が好ましい。蒸留塔は、塔頂からプロセス蒸気が排出され、このプロセス蒸気を冷却凝縮するコンデンサーと、塔底には、原料をガス仕込みするためのリボイラーとを備えており、VRC工程の熱交換器(VRC蒸発器)を熱源として、前記塔底のリボイラーと併用してもよい。
プロセス蒸気は、少なくとも凝縮性ガス成分を含んでいればよく、後述する非凝縮性ガス成分を含んでいてもよいが、熱源として寄与し難く、経済的に不利であるなどの観点から、実質的に非凝縮性ガス成分を含まない(又は非凝縮性ガス成分が極めて少量である)のが好ましい。通常、凝縮性ガス成分としては、水及び/又は有機溶媒を含んでいる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アルデヒド類(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなど)、カルボン酸類(酢酸、プロピオン酸など)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、炭化水素類(ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルムなど)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機溶媒のうち、エステル類(特に酢酸エステル)、炭化水素類(特に芳香族炭化水素類)が汎用され、エステル類と炭化水素類とを、例えば、エステル類/炭化水素=99/1〜10/90、好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは80/20〜50/50程度の重量割合で混合してもよい。
有機溶媒の沸点は、有機溶媒の種類により決定されるが、特に限定されるものではなく、例えば、30〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃程度である。
有機溶媒の蒸気圧(25℃)は、有機溶媒の種類により決定されるが、特に限定されるものではなく、例えば、1〜30kPa、好ましくは5〜20kPa、さらに好ましくは10〜15kPa程度である。
有機溶媒の割合は、有機溶媒の種類に応じて選択でき、特に限定されないが、プロセス蒸気全体に対して、10重量%以上であってもよく、例えば、30〜99重量%、好ましくは50〜98重量%、さらに好ましくは80〜95重量%(特に85〜93重量%)程度であってもよい。
プロセス蒸気の温度は、凝縮性ガスの種類に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば、20〜200℃、好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは50〜100℃程度である。プロセス蒸気の圧力は、常圧の蒸気であってもよく、加圧された蒸気であってもよい。プロセス蒸気の流量(プロセス蒸気生成器からの排出流量)は、例えば、0.1〜100m3/sec、好ましくは1〜50m3/sec、さらに好ましくは3〜10m3/sec程度である。
主工程におけるコンデンサーは、単独であってもよいが、プロセス蒸気中の凝縮性ガス成分を効率良く凝縮できるとともに、VRC工程に未凝縮の蒸気が循環されることを抑制できる点から、複数のコンデンサーを直列に配設するのが好ましく、例えば、2つのコンデンサーを直列に配設してもよい。コンデンサーの能力は、特に限定されず、通常、VRC工程を稼働させない主工程の単独運転でプロセス蒸気中の凝縮性ガス成分を凝縮可能な能力が選択される。単独でコンデンサーを配設する場合、第1の循環ラインはコンデンサーの上流側に接続される。複数のコンデンサーを配設する場合、複数のコンデンサーを直列に配設し、最初のコンデンサーよりも上流側に第1の循環ラインを接続してもよいが、最初のコンデンサーよりも下流側であり、かつ最後のコンデンサーよりも上流側のライン(隣接するコンデンサー間のラインであり、2つのコンデンサーが直列に配設されている場合、第1のコンデンサーと第2のコンデンサーとの間のライン)に第1の循環ラインを接続することにより、第1の循環ラインからの未凝縮の再圧縮蒸気中の凝縮性ガス成分がVRC工程に循環(逆流)することを抑制できる。複数のコンデンサーは、異なるコンデンサーであってもよく、同一のコンデンサーであってもよいが、通常、最初のコンデンサーとして、最初(上流側)のコンデンサーのみで定常運転時のプロセス蒸気中の凝縮性ガス成分の全量を凝縮できるだけの能力を有するコンデンサーが使用される。
主工程は、さらにリボイラーなどの熱交換器を備えていてもよい。熱交換器は、例えば、プロセス蒸気生成器の原料をガス状で仕込むための主プロセス蒸発器であってもよい。特に、蒸留塔の場合、前述のように、主プロセス蒸発器は、塔底リボイラーであってもよく、VRC工程の熱交換器をこの塔底リボイラーとして利用してもよい。
主工程におけるプロセス蒸気の排出ラインは、前記コンデンサーによりプロセス蒸気を冷却凝縮する主ラインと、VRC工程に供給されるVRCラインとに分岐しており、VRC工程に供給されるVRCラインにおいて、流量制御ユニットは必須ではないが、プラントの安定した運転のために、上流に、VRC工程へのプロセス蒸気の流量を制御するための流量制御ユニットを配設するのが好ましい。この流量制御ユニットは、通常、運転開始時には閉じた状態から徐々に開度を大きくし、VRC工程が安定した定常運転時には一定の開度(例えば、全開)に調整される。主ラインとVRCラインとに分配されるプロセス蒸気の割合は、圧縮機の能力に応じて適宜選択でき、省エネルギーの点からは、VRCラインに供給される割合が多い方が好ましく、例えば、定常運転時において、全量のプロセス蒸気をVRCラインに分配してもよいが、通常、一部のプロセス蒸気が主ラインに供給され、残部がVRCラインに供給される。
VRC工程において、蒸気再圧縮ユニットの形式は、特に限定されず、慣用の形式、例えば、スクリュー型、ターボ型、レシプロ型などの各種タイプの圧縮機を使用できる。これらのうち、安全性や簡便性の向上効果が大きい点から、スクリュー型、ターボ型が好ましい。なお、前述の通り、図1のターボ型圧縮機を備えたプラントにより、再圧縮蒸気の利用方法を説明したが、スクリュー型圧縮機を備えたプラントでは、圧縮機の昇圧開始前(凝縮開始前)におけるVRCプロセスでのプロセス蒸気の循環方法が若干異なる。具体的には、スクリュー型圧縮機を備えたプラントでは、プラントを構成する装置として、圧縮機の種類が異なることに加えて、圧縮機上流側に隣接する流量制御ユニット(図1における流量制御弁17)を配設しない点で、ターボ型圧縮機を備えたプラントと異なっている。プロセス蒸気の循環操作としては、スクリュー型圧縮機を備えたプラントでは、スクリュー型圧縮機を起動し、定格回転数で安定するのを確認してから、第2の循環ラインに配設される流量制御ユニット(図1における流量制御弁12)を閉じる点において、ターボ型圧縮機を備えたプラントと相違する。詳しくは、スクリュー型圧縮機を通過したプロセス蒸気には吐出圧は殆ど負荷されていないものの、前述のとおり、圧縮機の軸動力×機械効率×(1−断熱効率)の熱が圧縮機内を通過するプロセス蒸気に伝熱することで若干の温度上昇が生じる。そして、若干昇温されたプロセス蒸気の一部は、第2の循環ラインを通して圧縮機の吸入側に循環しており、循環が続くと圧縮機の上限を上回る高温となるおそれがあるため、圧縮機の運転状況が安定した後、第2の循環ラインに配設される流量制御ユニットを閉じる。第2の循環ラインに配設される流量制御ユニットを閉じても、第1の循環ラインにより、VRC工程を循環する未凝縮の再圧縮蒸気は主工程へと戻れるため、従来のVRC方式とは異なり、第2の循環ラインを循環することにより圧縮機が上限温度以上に加熱される前に、第2の循環ラインでの循環を停止できる。そのため、第2の循環ラインの循環により昇温した圧縮機を冷却するための設備も不要である。このように圧縮機の種類により凝縮開始前の循環方法は異なるものの、いずれの圧縮機においても、再圧縮蒸気を熱源として安全かつ簡便に再利用できる。
蒸気再圧縮ユニットの吐出圧は、プロセス蒸気の種類に応じて選択できるが、定常時の圧力が、例えば、30kPaG(ゲージ圧)以上、好ましくは40〜200kPaG、さらに好ましくは50〜100kPaG程度である。
本発明では、ガス導入ユニットから送られる非凝縮性ガスの導入流量と、第1の循環ライン(循環工程)から主ユニットに戻す流量とを調整し、蒸気再圧縮ユニットによるプロセス蒸気の圧縮比(吐出圧/吸入圧)(絶対圧)を制御することにより、再圧縮蒸気の温度を目的の温度に調整する。本発明では、流量制御ユニットにより、ガス導入ユニットから送られる非凝縮性ガスを増加又は第1の循環ラインから主ユニットに戻す流量を抑えれば圧縮比は上昇し、圧縮比の上昇により温度が上昇することにより熱交換効率を向上できる。前記圧縮比は、再圧縮蒸気の目的の温度に応じて適宜選択できるが、例えば、2.0〜4.5(例えば、2.5〜4.0)、好ましくは3.0〜3.5、さらに好ましくは3.2〜3.3程度に調整してもよい。
蒸気再圧縮ユニットの吐出温度は、プロセス蒸気の種類に応じて選択できるが、例えば、蒸気再圧縮ユニットに供給される前のプロセス蒸気の温度に対して、例えば、5℃以上高い吐出温度に設定してもよく、例えば、5〜100℃、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは15〜50℃程度高い吐出温度に設定してもよい。
蒸気再圧縮ユニットにおいて、第2の循環ライン(圧縮機の戻し配管)は必須ではないが、安定してVRC工程を稼働できる点から、流量制御ユニットが配設された第2の循環ラインを備えてもよい。ターボ型圧縮機では、圧縮機に導入されるVRCラインは、第2の循環ラインと合流後のラインにおいて、さらに流動制御ユニットを備えていてもよい。ターボ型圧縮機を備えたプラントでは、圧縮機の起動前及びプロセスの安定稼働中においても、この流量制御ユニットの開度を調整することにより、圧縮機に導入されるプロセス蒸気の流量を調整してもよい。さらに、スクリュー型圧縮機を備えたプラントにおける第2の循環ラインでは、VRC工程稼働初期(コールドスタート)において、流量制御ユニットを開いて、プロセス蒸気を第2の循環ラインに循環させ、圧縮機の運転開始時に回転部が安定した回転数に至るまでの短期間に限って使用してもよい。圧縮機には、その機構内に第2の循環ラインの機能を有するタイプも市販されている。
なお、本明細書では、再圧縮蒸気について、前述の定義に加えて、蒸気再圧縮ユニット(工程)を通過したプロセス蒸気であれば、コールドスタート時のプロセス蒸気(圧縮の程度及び温度上昇が小さい蒸気)も、再圧縮蒸気と称する場合がある。
熱交換ユニットは、慣用の熱交換器を利用でき、前述のように、主工程の主プロセス蒸発器として利用すると、熱交換ユニットを主工程の熱源として利用できるため、プラントを省資源省エネルギー型の設備とすることができる。熱交換ユニットを主プロセス蒸発器として利用した場合、VRC工程の定常運転時において、VRC蒸発器の仕込量は、全仕込量(VRC蒸発器の仕込量と主プロセス蒸発器の仕込量との合計量)の50%以上であってもよく、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%程度であってもよい。本発明の方法では、熱交換ユニットでの蒸発量の増加に伴い、主プロセス蒸発器での仕込量を適宜減少させて運転される。
熱交換ユニットは、第1の循環ラインと接続されており、熱交換ユニットにおける凝縮しなかったガス成分は、熱交換ユニット及び/又は気液分離ユニットのエアリングラインを経由して、第1の循環ラインにより主工程に戻される。熱交換ユニット(熱交換工程又は凝縮工程)において、蒸気再圧縮ユニットが安定するまでの運転初期では、再圧縮蒸気の温度上昇が低いため、殆どのプロセス流体がガス状のまま第1の循環ラインにより主工程に戻される。一方、蒸気再圧縮ユニットが安定した状態では、再圧縮蒸気の一部が凝縮されるようプロセス設計してもよいが、再圧縮蒸気中の凝縮性ガス成分の全部が凝縮(全凝縮)されるように熱交換ユニットにおける熱交換工程(効率)をプロセス設計するのが好ましい。このように設計された熱交換工程では、再圧縮蒸気中の凝縮性ガス成分の殆どが凝縮されるため、第1の循環ラインに供給される未凝縮の蒸気(凝縮性ガス成分)は殆どない。なお、本発明の効果を害しない範囲であれば、全凝縮せずに、再圧縮蒸気の一部を背圧保持のため、第1の循環ラインに流して利用してもよい。
気液分離ユニット(気液分離工程)は、必須ではないが、分離されたガス成分を主ユニットに戻すことにより、プラントのエネルギー効率を向上できる点から、熱交換ユニットを経たプロセス流体を気液分離するための気液分離器を備えるのが好ましい。気液分離器としては、ガス成分と、凝縮液とを分離できれば、特に限定されず、慣用の分離ドラムなどが利用できる。
気液分離ユニットでは、熱交換ユニットにおいて凝縮しきれなかった蒸気に加え、ガス導入ユニットから導入された非凝縮性ガス、及び圧縮機の軸受けなどからプロセス内に漏れ込んだシーリングガス(窒素ガスなど)などのうちプロセス凝縮液に溶け切れなかった分もガス成分として分離され、気液分離ユニットのエアリングラインを経由して、第1の循環ラインにより主工程に戻され処理される。一方、凝縮液は排出ライン(又は凝縮液排出ライン)から回収される。
排出ライン(又は凝縮液排出ライン)は、流量制御ユニットを備えていなくてもよいが、安定してVRC工程を稼働できる点から、流量制御ユニットを備えるのが好ましい。
本発明では、前述の通り、ガス導入ユニット(又は工程)から送られる非凝縮性ガスの導入流量と、第1の循環ラインから主ユニットに戻す流量とを調整し、蒸気再圧縮ユニットによるプロセス蒸気の圧縮比(吐出圧/吸入圧)(絶対圧)を制御することにより、VRCプロセス空間(又は背圧空間)の圧力を調整して、再圧縮蒸気の温度を目的の温度に調整する。ガス導入ユニットは、少なくとも背圧空間の圧力を制御可能な位置(例えば、圧縮機の下流側から、第1の循環ラインの流量制御ユニットの上流側の間など)に接続されていればよいが、特に、熱交換ユニット及び気液分離ユニットのそれぞれのエアリングラインの合流部と、第1の循環ラインの流量制御ユニットの上流側との間のラインに接続されていることが好ましい。すなわち、熱交換工程及び/又は気液分離工程の下流の循環工程において、非凝縮性ガスを導入するのが好ましい。循環工程において、非凝縮性ガスを導入することにより、再圧縮蒸気と熱交換ユニットとの熱交換のための接触頻度を低下させる非凝縮性ガスが、熱交換ユニットを通過する量が少なくなり、効率的に熱交換できるため、設備(又は熱交換ユニット)のサイズを小さくできる。また、導入する非凝縮性ガスとプロセス凝縮液との接触頻度も低減できるため、非凝縮性ガスのプロセス凝縮液への溶解も抑制できる。なお、本発明の効果を害しない限り、ガス導入ユニットは、圧縮機や、主ユニット(例えば、主ユニットと再圧縮ユニットとをつなぐラインなど)に接続されていてもよい。圧縮機にガス導入ユニットを接続する場合、導入する非凝縮性ガスを圧縮機のシールガス(又は軸封ガス)などとして利用してもよく、さらに、圧縮機のシール部分から漏出するシールガス(非凝縮性ガス)を背圧保持に利用してもよい。
ガス導入ユニットから導入される非凝縮性ガスとしては、背圧空間において所定の圧力を確保する観点から、蒸気再圧縮ユニット(圧縮機)の背圧空間における温度及び圧力下において、気体状態を保持可能なガスであるのが好ましく、背圧空間の温度が、例えば、25〜300℃、好ましくは40〜230℃、さらに好ましくは65〜150℃程度であり、かつ圧力が、例えば、30〜300kPaG、好ましくは40〜200kPaG、さらに好ましくは50〜100kPaG程度である環境下において、気体状態を保持できるガスであってもよい。また、同様に背圧空間において所定の圧力を確保する観点から、非凝縮性ガスは、プロセス凝縮液(凝縮性ガス成分の凝縮液)に対して溶解し難いガス(不溶性又は難溶性を示すガス)であるのが好ましい。代表的な非凝縮性ガスとしては、例えば、プロセス蒸気などと反応しない不活性ガス(例えば、窒素、空気、二酸化炭素、一酸化炭素、希ガス(例えば、アルゴン、ヘリウムなど)など)などが挙げられる。なお、「不活性ガス」とは、VRCプロセスの条件下(例えば、前記背圧空間における温度及び圧力下など)において、プロセス蒸気や、設備(又は非凝縮性ガスが接触する設備内面)の材質などと反応しないガスである限り、特に限定されず、VRCプロセスの条件以外の条件下ではプロセス蒸気などと反応性を有するガスや、プロセス蒸気や設備を構成する材料以外の材料に対して反応性を有するガスを含む意味に用いる。
これらの非凝縮性ガスは、単独で又は2種以上組み合わせて混合ガスとして使用することもできる。これらの非凝縮性ガスのうち、導入(又は供給)の容易性の観点から、窒素が好ましい。また、非凝縮性ガスは、ガスボンベ(又は圧縮ガス容器)やガス発生器などから供給してもよく、プロセス由来のガス[例えば、プラントの主工程又は他の工程(又は他の反応工程)において発生(又は副生)する非凝縮性ガスなど、好ましくは主工程から発生するプロセス蒸気に微量に含まれる空気、軸受け部などのシール部を有する機器(圧縮機など)から漏出するシールガスなど]を利用して、非凝縮性ガスとして供給してもよい。簡便性などの点から、プロセス外から導入されるガスであるのが好ましい。
非凝縮性ガスの導入流量は、プロセス設計(例えば、背圧空間の気相部分の体積、プラントの運転開始初期における第1の循環ラインから主工程への循環流量など)に応じて適宜選択(又は調整)できるが、主工程で発生するプロセス蒸気の流量に対して、例えば、0.01〜3体積%、好ましくは0.03〜1体積%、さらに好ましくは0.05〜0.5体積%程度であってもよい。なお、この非凝縮性ガスの導入割合は、主工程で発生するプロセス蒸気の温度及び圧力下での体積割合である。本発明では、非凝縮性ガスの導入流量が少量であっても、背圧空間の圧力を容易に制御でき、熱交換工程における再圧縮蒸気中の凝縮性ガス成分を有効に凝縮(例えば、全凝縮)することが可能となるため、省エネルギー効果をより一層向上できる。例えば、再圧縮蒸気の全量を凝縮(全凝縮)する場合、エネルギー効率(例えば、定常運転時に対する単位時間当たり熱源スチーム低減量など)は、従来の背圧を維持し難いVRC方式と比較して、例えば、30〜100%、好ましくは40〜80%(例えば、50%)程度も向上できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
図2にプロセスフロー図を示す。主プロセス(主工程)は、蒸留塔1を備えており、仕込み液は主プロセス蒸発器(第1の熱交換器)14で蒸発され、ガスの状態で蒸留塔1に仕込まれる。主プロセスのみで安定的に運転がなされているとき、蒸留塔1の塔頂から排出されるプロセス蒸気は常圧(大気圧)で温度は約80℃、その組成は酢酸エチル60重量%、ベンゼン30重量%、水10重量%で、流量は4m3/secである。VRCプロセスの圧縮機としては、ターボ型圧縮機((株)IHI製「f44C2」)を用いた。
図2にプロセスフロー図を示す。主プロセス(主工程)は、蒸留塔1を備えており、仕込み液は主プロセス蒸発器(第1の熱交換器)14で蒸発され、ガスの状態で蒸留塔1に仕込まれる。主プロセスのみで安定的に運転がなされているとき、蒸留塔1の塔頂から排出されるプロセス蒸気は常圧(大気圧)で温度は約80℃、その組成は酢酸エチル60重量%、ベンゼン30重量%、水10重量%で、流量は4m3/secである。VRCプロセスの圧縮機としては、ターボ型圧縮機((株)IHI製「f44C2」)を用いた。
1.VRCプロセスラインのプロセス蒸気置換〜圧縮機の起動〜圧縮機の昇圧開始(凝縮開始前)
(1)バルブ11、12、13、15及び17が全閉であることを確認した。
(1)バルブ11、12、13、15及び17が全閉であることを確認した。
(2)第1の循環ラインのバルブ11、第2の循環ラインのバルブ12、及び圧縮機吸入側のバルブ17を全開にした。
(3)蒸留塔1の塔頂からVRCプロセス側へのラインのバルブ15を徐々に開にして、VRCプロセスのラインをプロセス蒸気で置換し、10分間ほどかけて系内を温度上昇させた。バルブ12を全閉にし、バルブ11及び17を所定の開度にした。
(4)圧縮機5を起動し、インペラが定格回転数に到達後(10〜20秒程度後)、定常連続運転状態で圧縮機の吐出圧力上昇が50kPaG未満に納まっていること、圧縮機に異常(異音、振動など)がないことを確認した。このときの圧縮機5の軸動力は250kWで、吸込みガス流量は3m3/secで圧縮機の吐出ガス温度が入口温度よりも20℃上昇していた。
(5)第1の循環ラインのバルブ11を徐々に閉めていった。このとき、圧縮機5の吐出圧力が115kPaGまで上昇した。温度は約105℃であった。
2.圧縮機の昇圧(凝縮開始後)〜既設蒸発器の負荷低減
(1)圧縮機5の吐出圧力と凝縮とのバランスを見ながら、第1の循環ラインのバルブ11を徐々に閉め、さらに、ガス導入ライン19のバルブ18を徐々に開いて窒素を導入した。吐出温度を110℃とし、VRC蒸発器(第2の熱交換器)7で熱交換を行った。ここで、第1の循環ラインから主工程に戻されるガスは、導入した窒素が主成分であり、未凝縮の再圧縮蒸気は含まれていなかった。そのため、再圧縮蒸気は、VRC蒸発器7で全凝縮されていた。
(1)圧縮機5の吐出圧力と凝縮とのバランスを見ながら、第1の循環ラインのバルブ11を徐々に閉め、さらに、ガス導入ライン19のバルブ18を徐々に開いて窒素を導入した。吐出温度を110℃とし、VRC蒸発器(第2の熱交換器)7で熱交換を行った。ここで、第1の循環ラインから主工程に戻されるガスは、導入した窒素が主成分であり、未凝縮の再圧縮蒸気は含まれていなかった。そのため、再圧縮蒸気は、VRC蒸発器7で全凝縮されていた。
(2)VRC蒸発器7での蒸発量の増加に伴い、VRC蒸発器からの仕込量が徐々に増加した。VRC蒸発器からの仕込量が最大値の70%を超えたら、主プロセス蒸発器14の最低負荷を保った状態で、主プロセス蒸発器への熱源スチーム16の流量を減らす方向で調節して、バルブ17の開度を徐々に上げ、圧縮機の吸込み量を上げていき、主プロセス蒸発器からの仕込量を調整した。
(3)運転が安定したところで、バルブ11及び18を微量の開度で断続的に開閉させることで、圧縮機の吐出圧を安定させた。窒素の導入量は、10Nm3/hr(発生するプロセス蒸気の流量に対して約0.09体積%)で安定した。
運転が安定したところの、主プロセス蒸発器の熱源スチーム負荷は、VRCプロセスを稼働させない定常運転時に比べ、6トン/hrの低減となった。
(比較例1)
図3にプロセスフロー図を示す。図3で示されるプラントは、図2で示されるプラントにおいて、循環ライン9へのガス導入ライン19及び流量調整バルブ18を備えていない、従来のVRCプロセスを備えたプラントである。なお、実施例1と同様に、主プロセスのみで安定的に運転がなされているとき、蒸留塔1の塔頂から排出されるプロセス蒸気は常圧(大気圧)で温度は約80℃、その組成は酢酸エチル60重量%、ベンゼン30重量%、水10重量%で、流量は4m3/secである。また、VRCプロセスの圧縮機も実施例1と同様に、ターボ型圧縮機((株)IHI製「f44C2」)を用いた。圧縮機吐出側の背圧空間の気相を構成する成分としての非凝縮性ガスの追加導入設備を備えていない従来のVRCプロセスにおいて、以下のように、実施例1と同じように運転を開始した。
図3にプロセスフロー図を示す。図3で示されるプラントは、図2で示されるプラントにおいて、循環ライン9へのガス導入ライン19及び流量調整バルブ18を備えていない、従来のVRCプロセスを備えたプラントである。なお、実施例1と同様に、主プロセスのみで安定的に運転がなされているとき、蒸留塔1の塔頂から排出されるプロセス蒸気は常圧(大気圧)で温度は約80℃、その組成は酢酸エチル60重量%、ベンゼン30重量%、水10重量%で、流量は4m3/secである。また、VRCプロセスの圧縮機も実施例1と同様に、ターボ型圧縮機((株)IHI製「f44C2」)を用いた。圧縮機吐出側の背圧空間の気相を構成する成分としての非凝縮性ガスの追加導入設備を備えていない従来のVRCプロセスにおいて、以下のように、実施例1と同じように運転を開始した。
1.VRCプロセスラインのプロセス蒸気置換〜圧縮機の起動〜圧縮機の昇圧開始(凝縮開始前)
実施例1記載の1.(1)〜(5)と同様の操作により、VRCプロセスラインへプロセス蒸気を導入し、圧縮機の起動及び昇圧を開始した。これらの操作後における圧縮機5の吐出圧力及び温度も実施例1と同様であった。
実施例1記載の1.(1)〜(5)と同様の操作により、VRCプロセスラインへプロセス蒸気を導入し、圧縮機の起動及び昇圧を開始した。これらの操作後における圧縮機5の吐出圧力及び温度も実施例1と同様であった。
2.圧縮機の昇圧(凝縮開始後)〜既設蒸発器の負荷低減
(1)圧縮機5の吐出圧力と凝縮とのバランスを見ながら、第1の循環ラインのバルブ11を徐々に閉めていき、吐出温度を110℃とし、VRC蒸発器(第2の熱交換器)7で熱交換を行った。再圧縮蒸気は、VRC蒸発器(第2の熱交換器)では全凝縮には至らず、再圧縮蒸気の一部は、未凝縮ガス成分として、第1の循環ラインを介して主プロセスに戻っていた。
(1)圧縮機5の吐出圧力と凝縮とのバランスを見ながら、第1の循環ラインのバルブ11を徐々に閉めていき、吐出温度を110℃とし、VRC蒸発器(第2の熱交換器)7で熱交換を行った。再圧縮蒸気は、VRC蒸発器(第2の熱交換器)では全凝縮には至らず、再圧縮蒸気の一部は、未凝縮ガス成分として、第1の循環ラインを介して主プロセスに戻っていた。
(2)VRC蒸発器7での蒸発量に伴い、主プロセス蒸発器への熱源スチーム16の流量を減らす方向で調整して、主プロセス蒸発器からの仕込量を調整した。
(3)運転が安定したところで、バルブ11を微量の開度で断続的に開閉させることで、圧縮機の吐出圧を安定させた。
安定して運転した状態において、主プロセス蒸発器の熱源スチーム負荷は、VRCプロセスを稼働させない定常運転時に比べ、4トン/hrの低減となった。
本発明の再圧縮蒸気の利用方法は、プロセス蒸気を発生する各種のプラント、例えば、蒸留プラントなどに利用できる。
1…蒸留器
2、3…コンデンサー
4…配管分岐点
5…圧縮機
6、9…循環ライン
7、14…熱交換器(蒸発器)
8…気液分離器
9a、9b…エアリングライン
19…ガス導入ライン
2、3…コンデンサー
4…配管分岐点
5…圧縮機
6、9…循環ライン
7、14…熱交換器(蒸発器)
8…気液分離器
9a、9b…エアリングライン
19…ガス導入ライン
Claims (12)
- 凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生し、かつ発生したプロセス蒸気の凝縮性ガス成分を凝縮液として回収する主工程と、前記プロセス蒸気の少なくとも一部を圧縮機で断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得る再圧縮工程と、再圧縮蒸気を熱源として利用する熱交換工程と、熱交換工程に供された再圧縮蒸気のうち、凝縮しなかったガス成分を主工程に戻す循環工程とを含む再圧縮蒸気の利用方法であって、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入するガス導入工程を含む再圧縮蒸気の利用方法。
- 非凝縮性ガスが、圧縮機の背圧側の温度及び圧力下において、気体状態を保持可能なガスを含む請求項1記載の方法。
- 非凝縮性ガスが、不活性ガスを含む請求項1又は2記載の方法。
- 非凝縮性ガスが、窒素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- ガス導入工程における非凝縮性ガスの流量と、循環工程における主工程に戻すガス成分の流量とを調整することにより、再圧縮工程での圧縮比を制御する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 循環工程において、非凝縮性ガスを導入する請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 非凝縮性ガスの導入流量が、主工程で発生するプロセス蒸気の流量に対して、0.01〜3体積%である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 凝縮性ガス成分を含むプロセス蒸気を発生する蒸気生成器、及び発生したプロセス蒸気の一部を冷却して凝縮させるためのコンデンサーを有する主ユニットと、前記プロセス蒸気の残部を断熱圧縮して温度を上昇させて再圧縮蒸気を得るための蒸気再圧縮ユニットと、再圧縮蒸気を熱源として利用するための熱交換ユニットと、熱交換ユニットに供された再圧縮蒸気のうち、凝縮されなかったガス成分を主ユニットに戻すための循環ラインとを備えた再圧縮蒸気の利用プラントであって、圧縮機の下流に、非凝縮性ガスを導入するためのガス導入ユニットを備えた再圧縮蒸気の利用プラント。
- 非凝縮性ガスが、請求項2〜4のいずれかに記載のガスである請求項8記載のプラント。
- ガス導入ユニット及び循環ラインにおいて、非凝縮性ガスの導入流量と、主ユニットに戻るガス成分の流量とを調整可能な流量制御ユニットがそれぞれに配設されている請求項8又は9記載のプラント。
- ガス導入ユニットが、循環ラインの流量制御ユニットよりも上流に接続されている請求項10記載のプラント。
- ガス導入ユニットにおいて、非凝縮性ガスの導入流量が、主工程で発生するプロセス蒸気の流量に対して、0.01〜3体積%となるように調整可能な流量制御ユニットが配設されている請求項8〜11のいずれかに記載のプラント。
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