以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算を説明するための説明図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、対象物であるシート状物品として、図1(a)に示すように、断面円弧状のシート状物品1を用い、シート状物品1に荷重を与えて、図1(b)に示すように、シート状物品1が2つに折り畳まれる折り畳み形状を計算した。
シート状物品の折り畳み形状の計算では、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段として(Livermore Software Technology Corporation社による)LS−DYNA(登録商標)を用いて折り畳み形状を計算した。なお、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する他の解析手段を用いることも可能である。
ここで、動的陽解法を用いた有限要素法とは、連立方程式を解く手順を踏まずにオイラー法に基づいて求めた要素節点の座標成分ごとに独立したスカラー方程式を用いて、物品の運動を逐次解析し、時間増分ステップごとの変形、ひずみ、応力を求めるものである。
動的陽解法を用いた有限要素法の定式化は、物品を有限要素に分割し、有限要素節点での変位、速度などによって物品の無限自由度の変位、速度の場を離散化表示し、離散化表示した変位−ひずみの関係(適合条件式)および材料構成式をエネルギー原理式に代入して、最終的に有限自由度の運動方程式を得ることにより行われる。
また、動的陽解法を用いた有限要素法の計算実行は、第1工程として、CADなどを利用して形状及び接触条件などの幾何学境界条件を設定すると共に荷重などの力学条件を設定し、第2工程として、運動方程式を、時間方向数値積分によって解き、有限要素節点の変位、速度などを求め、第3工程として、時間増分ステップでの変位、速度によって、各有限要素内のひずみ、応力を変位−ひずみの関係式および材料構成式を用いて求め、そして、第2工程と第3工程の増分計算プロセスを繰り返すことで全変形過程を解析することにより行われる(社団法人日本塑性加工学会編、「3.3 動的陽解法」、非線形有限要素法−線形弾性解析から塑性加工解析まで、コロナ社、P105〜P126、参照)。
図2は、シート状物品の折り畳み形状の計算に用いる荷重ツールを説明するための説明図であり、図2(a)は、シート状物品上に設定された荷重ツールを示し、図2(b)は、図2(a)におけるY2b方向から見た荷重ツールを示している。
シート状物品1に荷重を与えて折り畳み形状を計算する際には、図2(a)に示すように、シート状物品1に荷重を与えるための荷重ツール10が用いられる。荷重ツール10は、初期形状のシート状物品1上にユーザによって所定の形状に設定され、本実施形態では、シート状物品1の一方の側端部2から他方の側端部3に延びるように設定される。荷重ツール10にはまた、図2(b)の矢印で示す方向に所定の荷重がユーザによって設定されて与えられる。
前述したように、シート状物品1上に設定された荷重ツール10に荷重を与え、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品1に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段によって、シート状物品1を変形させて折り畳み形状の計算が行われるが、その際に後述する種々の条件が設定される。
荷重ツール10は、図2(b)に示すように、両端の節点P11、P12、P13を有する複数のビーム要素E11、E12が連結されて構成されている。荷重ツール10は、例えば、節点P11、P12を有するビーム要素E11と節点P12、P13を有するビーム要素E12とが節点P12において連結されている。
図3は、荷重ツールのビーム要素の連結を説明するための説明図である。図3に示すように、荷重ツール10は、折り畳み形状を計算する際、複数のビーム要素E11、E12が各節点P11、P12、P13において自由に曲がることができるように連結されている。
また、図2(b)に示すように、荷重ツール10に荷重が与えられ、複数のビーム要素E11、E12の節点P11、P12、P13にはそれぞれ、所定の荷重が設定され、節点P11、P12、P13についてそれぞれ荷重の大きさ及び方向が設定される。
荷重ツール10にはまた、シート状物品1と荷重ツール10とが接触する接触定義が設定される。図4は、シート状物品と荷重ツールとの接触定義を説明するための説明図である。荷重ツール10とシート状物品1との接触定義として、図4(a)に示すように、荷重ツールが符号10で示す状態から符号10´で示す状態へ移動するときに、荷重ツール10のビーム要素の節点がシート状物品1上から離れないことが規定される。
しかし、シート状物品1と荷重ツール10との接触定義として、図4(b)に示すように、荷重ツールが符号10で示す状態から符号10´で示す状態へ移動するときに、荷重ツール10のビーム要素の節点がシート状物品1の端部からは離れることができることが規定される。
また、シート状物品1と荷重ツール10との接触定義として、図4(a)及び図4(b)に示すように、荷重ツールが符号10で示す状態から符号10´で示す状態へ移動するときに、荷重ツール10のビーム要素の節点がシート状物品1上を摩擦なく移動することが規定される。
図5は、シート状物品の折り畳み形状の計算に用いる拘束ラインを説明するための説明図である。荷重ツール10はまた、該荷重ツール10のビーム要素の特定の節点の移動経路がユーザによって設定された所定の拘束ライン20に拘束される。本実施形態では、拘束ライン20は、図5に示すように、シート状物品1の上端部4から下端部5に延びるように設定され、荷重ツール10のビーム要素の特定の節点P1nの移動経路が拘束ライン20に拘束される。
拘束ライン20は、シート状物品1が有限要素分割された要素の節点を接続するように設定され、該拘束ライン20に拘束される荷重ツール10のビーム要素の特定の1つの節点は、好ましくは拘束ライン20上に位置する節点が設定される。
図6は、拘束ラインに拘束される荷重ツールの節点の補正を説明するための説明図であり、図6(a)には、シート状物品1が有限要素分割された複数の節点P1、P2、P3を有する解析モデル上に、荷重ツール10と拘束ライン20とが示されている。
荷重ツール10のビーム要素の特定の1つの節点は、好ましくは拘束ライン20上に位置する節点が設定されるが、図6(a)に示すように、拘束ライン20上に位置する節点が存在しない場合、図6(b)に示すように、拘束ライン20近傍の節点P1mが拘束ライン20上に移動されてP1m´と補正されると共に、節点P1mにおいて連結されるビーム要素E1(m−1)、E1mがビーム要素E1(m−1)´、E1m´と補正され、荷重ツール10が補正される。
図7は、シート状物品の折り畳み形状の計算におけるシート状物品の一部の強制変位を説明するための説明図である。本実施形態では、シート状物品1の一部については所定の最終状態になるように強制変位され、シート状物品1の上端部4と下端部5とは最終状態で重ね合わせられるように強制的に変位される。
図7(a)に示す初期状態にあるシート状物品1の上端部4と下端部5とは、図7(c)に示す最終状態で重ね合わせられる所定位置になるように強制変位され、図7(b)に示す中間状態では、初期状態から最終状態まで解析時刻と共に線形移動されて強制的に変位される。
本実施形態では、前述した条件の下で、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段を用いて、シート状物品1に荷重を与えたときのシート状物品1の折り畳み形状を算出する。
図8は、シート状物品の折り畳み形状の計算におけるシート状物品及び荷重ツールの変形を説明するための説明図である。なお、図8では、分かり易くするために、シート状物品1と該シート状物品1上に設定される荷重ツール10とを平行に少しずらして示している。
シート状物品の折り畳み形状の計算では、図8(a)に示すように、シート状物品1上に設定された荷重ツール10のビーム要素の節点Pにシート状物品1と所定角度θで荷重Fが与えられる場合、荷重ツール10のビーム要素の節点Pは、シート状物品1上を摩擦なしに移動するので接線方向の成分Ftによってシート状物品1を変形させることなくシート状物品1上を移動し、法線方向の成分Fnによってシート状物品1を変形させながら移動し、図8(b)に示す節点P´の位置に移動し、図8(b)に示すように、シート状物品1及び荷重ツール10が変形される。
このようにして、本実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、シート状物品の初期形状データと、複数のビーム要素が節点で自由に曲がることができるように連結された荷重ツールの初期形状データと、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データと、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品上から離れないこととシート状物品上を摩擦なく移動することとを含むシート状物品と荷重ツールとの接触定義データと、荷重ツールのビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインのデータとを取得し、取得したデータを用い、動的陽解法を用いた有限要素法に基づきシート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状を算出する。
次に、本発明の第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算システムについて説明する。
図9は、本発明の第1実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。図9に示すように、本発明の第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算システムは、コンピュータを中心として構成され、コンピュータ30は、中央処理装置31と、折り畳み形状の計算に必要なデータなどを入力するキーボードなどの入力装置32と、DVDなどの記録媒体40から対象物であるシート状物品の形状データなどのCADデータを読込むためのCADデータ読込み装置33と、折り畳み形状の計算に必要なプログラムやデータを記録するプログラム記録部34a及びデータ記録部34bを有するメモリなどの記録装置34と、入力画面や解析結果などを表示するためのディスプレイなどの表示装置35と、折り畳み形状の計算結果などを出力するプリンタなどの印刷装置36とを有している。
中央処理装置31は、入力装置32、表示装置35及び印刷装置36を制御するとともに、CADデータ読込み装置33及び記録装置34にアクセス可能に構成され、入力装置32やCADデータ読込み装置33を介して入力された情報と、記録装置34に記録されているプログラム及びデータを用いて、折り畳み形状の計算をすることができるように構成されている。
図10は、図9に示すプログラム記録部の構成を示す図である。図10に示すように、プログラム記録部34aには、シート状物品の折り畳み形状を計算するためのメインプログラム、シート状物品の初期形状のCADデータなどを有限要素分割して解析モデルを作成するための解析モデル作成プログラム、動的陽解法を用いた有限要素法に基づきシート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析するための有限要素解析プログラム、シート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させる場合に初期状態から最終状態への強制変位を算出するための強制変位算出プログラム、及び、入力画面や計算結果などを表示するための表示プログラムなどが記録されている。
メインプログラムは、対象物であるシート状物品の初期形状データと、荷重ツールの初期形状データと、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データと、シート状物品と荷重ツールとの接触定義データと、荷重ツールのビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインのデータなどを用い、動的陽解法を用いた有限要素法に基づきシート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状を算出することができるようになっている。
有限要素解析プログラムは、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析することができるようになっている。
強制変位算出プログラムは、対象物であるシート状物品の一部について所定の最終状態になるように強制変位される場合、シート状物品の一部について初期状態から最終状態まで線形移動される解析開始時から解析終了時までの位置を算出することができるようになっている。
図11は、図9に示すデータ記録部の構成を示す図である。図11に示すように、データ記録部34bには、対象物であるシート状物品の情報データが記録される対象物情報データファイルと、荷重ツールの情報データが記録される荷重ツール情報データファイルとが設けられている。
対象物情報データファイルには、対象物であるシート状物品の初期形状の形状データが記録される対象物形状データファイル、シート状物品の材料特性が記録される対象物材料特性データファイル、シート状物品の初期形状の形状データに基づいて有限要素分割されたシート状物品の要素データが記録される対象物要素データテーブル、及び、シート状物品の初期形状の形状データに基づいて有限要素分割されたシート状物品の要素の節点座標データが記録される対象物節点座標データテーブルが備えられている。
荷重ツール情報データファイルには、荷重ツールの初期形状のビーム要素データが記録される荷重ツールビーム要素データテーブル、荷重ツールの初期形状のビーム要素の節点座標データが記録される荷重ツール節点座標データテーブル、荷重ツールの材料特性が記録される荷重ツール材料特性データテーブル、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データが記録される荷重データテーブル、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重の時刻歴特性データが記録される荷重時刻歴特性データテーブルが備えられている。
データ記録部34bにはまた、シート状物品と荷重ツールとの接触条件データが記録される荷重ツール接触条件データテーブル、荷重ツールのビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインデータが記録される荷重ツール拘束ラインデータテーブル、荷重ツールの特定の節点を拘束ラインに拘束する拘束条件データが記録される荷重ツール拘束条件データテーブル、シート状物品の一部について強制変位される強制変位データが記録される対象物強制変位データテーブル、及び、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき算出されたシート状物品の折り畳み形状の解析結果データが記録される解析結果データファイルなどが設けられている。
図12は、シート状物品の初期形状の形状データを有限要素分割した解析モデルを示す図である。前記対象物形状データファイルに記録された対象物であるシート状物品の初期形状の形状データは、図12に示すように、解析モデル作成プログラムによって解析モデルに有限要素分割され、シート状物品の解析モデル200は、複数のシェル要素201、202を有し、各シェル要素201、202は、複数の節点2000、2001、2002、2003を有している。
図13は、対象物要素データテーブルを示す図であり、図14は、対象物節点座標データテーブルを示す図である。図13に示すように、対象物要素データテーブルに、シート状物品の解析モデルについて、要素と該要素を構成する節点とがそれぞれ記録され、図14に示すように、対象物節点座標データテーブルに、シート状物品の解析モデルの節点の座標がXYZ座標系で記録される。
図15は、対象物材料特性データテーブルを示す図である。図15に示すように、対象物材料特性データテーブルには、ユーザによって設定されたシート状物品の材料特性データが記録され、質量密度、板厚、ヤング率及びポアソン比が記録される。
図16は、シート状物品上に設定される荷重ツールを示す図である。図16に示すように、シート状物品上に荷重ツール100がユーザによって設定され、荷重ツール100は、複数のビーム要素101、102、103が節点1002、1003において自由に曲がることができるように連結される。
図17は、荷重ツールビーム要素データテーブルを示す図であり、図18は、荷重ツール節点座標データテーブルを示す図である。図17に示すように、荷重ツールビーム要素データテーブルに、荷重ツールのビーム要素と該ビーム要素を構成する第1節点及び第2節点とがそれぞれ記録され、図18に示すように、荷重ツール節点座標データテーブルに、荷重ツールのビーム要素の節点の座標がXYZ座標系で記録される。
図19は、荷重ツール材料特性データテーブルを示す図である。図19に示すように、荷重ツール材料特性データテーブルには、ユーザによって設定された荷重ツールの材料特性データが記録され、具体的には荷重ツールのビーム要素の質量密度と断面積が記録される。荷重ツールのビーム要素の断面積は、例えばシート状物品の板厚と等しい直径を有する円形の断面積に設定される。
図20は、荷重データテーブルを示す図である。図20に示すように、荷重データテーブルには、ユーザによって設定された荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データが記録され、荷重ツールの各節点について、荷重の大きさの時刻歴特性と荷重の方向が設定されて記録される。荷重の方向は、XYZ座標系においてX方向成分、Y方向成分及びZ方向成分の割合が記録される。
図21は、荷重時刻歴特性を示すグラフであり、図22は、荷重時刻歴特性データテーブルを示す図である。荷重ツールの各節点に与えられる荷重の大きさの時刻歴特性については、図21に示すように、解析開始時の時刻ゼロから解析時刻と共に荷重の大きさがユーザによって設定される。図22に示すように、荷重時刻歴特性データテーブルには、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重の大きさの時刻歴特性が記録される。
図23は、荷重ツール接触条件データテーブルを示す図である。図23に示すように、荷重ツール接触条件データテーブルには、ユーザによって設定されたシート状物品と荷重ツールとの接触条件データが記録され、シート状物品と荷重ツールとの接触定義が記録される。
本実施形態では、荷重ツール接触条件データテーブルにおける接触定義「*1」として、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品上から離れないことと、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品の端部から離れることができること、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品上を摩擦なく移動することと、が設定されて記録される。
図24は、荷重ツール拘束ラインデータテーブルを示す図である。図24に示すように、荷重ツール拘束ラインデータテーブルには、ユーザによって設定された荷重ツールの特定の節点を拘束する拘束ラインデータが記録され、荷重ツールと拘束ラインを構成するシート状物品の節点とが記録される。
図25は、荷重ツール拘束条件データテーブルを示す図である。図25に示すように、荷重ツール拘束条件データテーブルには、ユーザによって設定された荷重ツールの特定の節点を拘束ラインに拘束する拘束条件データが記録され、拘束ラインと荷重ツールの特定の節点が設定されて記録される。
拘束ラインに拘束する荷重ツールの特定の節点は、好ましくは拘束ライン上に位置する節点が設定されるが、拘束ライン上に位置する節点が存在しない場合、前述したように、拘束ライン近傍の節点が拘束ライン上に移動されて補正されると共に、該節点において連結されるビーム要素が補正され、荷重ツールが補正される。そして、補正された荷重ツールによって、シート状物品の折り畳み形状の計算が行われる。
図26は、対象物強制変位データテーブルを示す図である。図26に示すように、対象物強制変位データテーブルには、シート状物品の一部について強制変位される場合、ユーザによって設定されたシート状物品の一部における最終状態の位置が記録される。
本実施形態では、シート状物品の上端部と下端部とは最終状態で重ね合わせられるように強制的に変位され、シート状物品の上端部及び下端部に対応する節点についてそれぞれ最終状態の位置がXYZ座標系で記録される。
図27は、本発明の第1実施形態に係るシステムにおいてシート状物品の折り畳み形状を計算する動作を示すフローチャートである。折り畳み形状を計算する前に、コンピュータ30には先ず、ユーザによって入力装置32を介して対象物であるシート状物品の初期形状の形状データ及び材料特性データ、並びに荷重ツールの初期形状の形状データ、材料特性データ及び荷重データが登録され、データ記録部34bに記録される。
また、ユーザによって入力装置32を介してシート状物品と荷重ツールとの接触条件データ、荷重ツール拘束ラインデータ、荷重ツール拘束条件データ、及び対象物強制変位データが登録され、データ記録部34bに記録される。また、ユーザによって折り畳み形状の計算の終了時刻が設定されて登録される。これら各種データが登録された状態で、図27に示すように、シート状物品の折り畳み形状の計算が行われる。
シート状物品の折り畳み形状を計算する際には先ず、シート状物品の折り畳み形状を計算するための各種データが読み込まれる。具体的には、対象物であるシート状物品の初期形状の形状データ及び材料特性データが読み込まれ(ステップS1)、荷重ツールの初期形状の形状データ、材料特性データ及び荷重データが読み込まれ(ステップS2)、荷重ツールの接触条件データであるシート状物品と荷重ツールとの接触条件データが読み込まれ(ステップS3)、荷重ツール拘束ラインデータが読み込まれ(ステップS4)、荷重ツール拘束条件データが読み込まれ(ステップS5)、対象物であるシート状物品の一部の強制変位データが読み込まれる(ステップS6)。
次に、解析時刻Tがゼロに設定され(ステップS7)、ステップS6において読み込まれた対象物であるシート状物品の一部の強制変位データから、シート状物品の一部について初期状態から最終状態まで解析時刻と共に線形移動するように強制変位される場合について、解析時刻におけるシート状物品の一部における強制変位データが算出される(ステップS8)。
次いで、ステップS1〜S6において読み込まれた各種データ及びステップS8において算出されたシート状物品の強制変位データを用いて、解析時刻Tがゼロであるとき、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段を用いて折り畳み計算が行われる(ステップS9)。ステップS9における折り畳み計算では、シート状物品及び荷重ツールの形状が計算される。
そして、ステップS9におけるシート状物品の折り畳み形状の計算が終了すると、解析時刻がΔtを加えた新たな解析時刻T+Δtに更新され(ステップS10)、解析時刻T+Δtにおけるシート状物品の形状データがステップS9において計算されたシート状物品の形状データに更新され(ステップS11)、解析時刻T+Δtにおける荷重ツールの形状データがステップS9において計算された荷重ツールの形状データに更新される(ステップS12)。
ステップS10〜S12において、解析時刻、シート状物品の形状データ及び荷重ツールの形状データが更新されると、解析時刻がユーザによって設定された終了時刻を超えているか否かが判定され(ステップS13)、ステップS13での判定結果がノー(NO)の場合、すなわち解析時刻が終了時刻以下である場合はステップS8〜S13が繰り返される。
ステップS8〜S13が繰り返されるとき、ステップS8では、ステップ10において更新された解析時刻T+Δtにおけるシート状物品の一部における強制変位データが算出され、ステップS9では、ステップS11及びS12においてそれぞれ更新されたシート状物品の形状データ及び荷重ツールの形状データ、ステップ10において更新された解析時刻T+Δtであるときの荷重データ、及びステップS8において算出されたシート状物品の強制変位データが用いられ、シート状物品及び荷重ツールの形状が計算される。
図28は、解析時刻Tにおける対象物節点座標計算結果データテーブル及び荷重ツール節点座標計算結果データテーブルを示す図であり、図29は、解析時刻T+Δtにおける対象物節点座標計算結果データテーブル及び荷重ツール節点座標計算結果データテーブルを示す図である。対象物節点座標計算結果データテーブル及び荷重ツール節点座標計算結果データテーブルは、データ記録部34bの解析結果データファイルに備えられている。
例えば、図28に示す解析時刻Tにおける対象物であるシート状物品の各節点の座標データ及び荷重ツールの各節点の座標データは、ステップS9における折り畳み計算によって、図29に示すように、解析時刻T+Δtにおけるシート状物品の各節点の座標データ及び荷重ツールの各節点の座標データに更新される。
そして、ステップS13での判定結果がイエス(YES)になると、すなわち解析時刻が終了時刻を超えると、シート状物品の折り畳み形状の計算が終了され、ステップS9における折り畳み計算によって計算されたシート状物品の折り畳み形状が出力される(ステップS14)。
図30は、終了時刻における対象物節点座標計算結果データテーブルを示す図である。シート状物品の折り畳み形状の計算が終了すると、シート状物品の折り畳み形状が出力されると共に、図30に示すように、終了時刻におけるシート状物品の各節点の座標データが解析結果データファイルに記録される。
図31は、シート状物品の折り畳み形状の計算結果を示す図である。シート状物品1上に荷重ツール10を設定してシート状物品1に荷重を与えてシート状物品1の折り畳み形状を計算すると、本実施形態では、図31(a)に示す初期状態から、図31(b)に示す中間状態を経て、図31(c)に示す最終状態へ、シート状物品1の形状が変形し、シート状物品1の折り畳み形状が得られた。
本実施形態では、ユーザによって設定される終了時刻は、好ましくは終了時刻において折り畳み形状が最終状態となるように十分に長く設定されるが、ユーザによって設定した終了時刻においてもシート状物品の全部分が最終状態になっていない場合、新たな終了時刻を設定して前回の終了時刻から折り畳み形状の計算を継続して行うことが可能である。かかる場合、ステップS8では、前回の終了時刻におけるシート状物品の強制変位データがそのまま用いられて折り畳み計算の計算が継続される。
また、本実施形態では、対象物であるシート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させる強制変位データを用いてシート状物品の折り畳み形状の計算を行っているが、強制変位データを用いることなくシート状物品の折り畳み形状の計算を行うようにすることも可能である。
このように、本実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、シート状物品の初期形状データと、複数のビーム要素が節点において自由に曲がることができるように連結されてなる荷重ツールの初期形状データと、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データと、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品上から離れないこととシート状物品上を摩擦なく移動することとを含むシート状物品と荷重ツールとの接触定義データと、荷重ツールのビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインデータとが取得される。そして、取得されたデータを用い、動的陽解法を用いた有限要素法に基づきシート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状が算出される。
これにより、シート状物品に荷重を与えたときの折り畳み形状を計算する際に、荷重を与えて折り込むラインに対応する荷重ツールがシート状物品上を変形しながら移動することができるので、一定形状の荷重ツールを用いてシート状物品の折り畳み形状を計算する場合に比して、試行回数を低減してしわの発生が少なくコンパクトに折り畳まれたシート状物品の折り畳み形状を計算することができる。複雑な形状を有するシート状物品を折り畳む場合にも適用することができ、前記効果を有効に得ることができる。
また、シート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させる強制変位データが取得され、取得された強制変位データをさらに用い、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状が算出されることにより、シート状物品の一部について所定の最終状態が要求される場合においても、シート状物品の一部について所定の最終状態を満たしたシート状物品の折り畳み形状を計算することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算について説明する。なお、第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算において、第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算と同様の部分については説明を省略する。
図32は、本発明の第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算を説明するための説明図である。図32に示すように、本発明の第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、対象物であるシート状物品として、図32(a)に示すように、略三角柱状の袋状に形成されたシート状物品51を用い、シート状物品51に荷重を与えて、図32(b)に示すように、シート状物品52が平らに折り畳まれる折り畳み形状を計算した。なお、図32(a)に示すシート状物品51は、一点鎖線で示す中心線に対して対称に形成されている。
シート状物品の折り畳み形状の計算では、第1実施形態と同様に、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段としてLS−DYNAを用いて折り畳み形状を計算した。
図33は、シート状物品の折り畳み形状の計算に用いる剛体板ツールを説明するための説明図である。シート状物品51に荷重を与えて折り畳み形状を計算する際に、シート状物品51に荷重を与えるための荷重ツール61、62が用いられると共に、シート状物品51の変形を規制するプレート状の変形規制ツールとして剛体板ツール81、82、83が用いられる。
第1実施形態では、シート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させて折り畳み形状の計算が行われるが、第2実施形態では、シート状物品51の変形を規制する剛体板ツールを用いてシート状物品51を変形させながら折り畳み形状の計算が行われる。
図33(a)に示すように、初期状態にあるシート状物品51に対して所定の初期形状を有する複数の剛体板ツール81、82、83がユーザによって設定されて所定位置に配置される。本実施形態では、第1剛体板ツール81と第2剛体板ツール82とがシート状物品51の2つの側面に沿って配置され、第3剛体板ツール83がシート状物品51のもう1つの側面の略中央部に水平方向に配置され、図示しない第4剛体板ツールがシート状物品51の内部に第3剛体板ツール83と平行に配置される。
そして、図33(c)に示すように、最終状態で重ね合わせられた所定位置になるように第1剛体板ツール81と第2剛体板ツール82とが移動され、図33(b)に示す中間状態では、初期状態から最終状態まで解析時刻と共に線形移動される。第3剛体板ツール83及び第4剛体板ツールについても初期状態から最終状態の所定位置まで解析時刻と共に線形移動される。なお、剛体板ツールを移動しないように設定することも可能である。
図34は、シート状物品の折り畳み形状の計算に用いる荷重ツールを説明するための説明図である。図34に示すように、シート状物品51に荷重を与えるために用いられる荷重ツール61、62は、初期形状のシート状物品51上にユーザによって所定の形状に設定される。
本実施形態では、シート状物品51の前面52の上方側で略水平方向に延びる第1荷重ツール61とシート状物品51の前面52の下方側で略水平方向に延びる第2荷重ツール62とが設定されると共に、シート状物品51の後面53の上方側で略水平方向に延びる第3荷重ツールとシート状物品51の後面53の下方側に略水平方向に延びる第4荷重ツールとが設定される。第1、第2、第3及び第4荷重ツール61、62はそれぞれ、両端の節点を有する複数のビーム要素が節点において自由に曲がることができるように連結されている。
第1荷重ツール61及び第2荷重ツール62にはそれぞれ、図34の矢印で示す方向に所定の荷重がユーザによって設定されて与えられる。第3荷重ツール及び第4荷重ツールについてもそれぞれ所定の方向に所定の大きさを有する荷重が設定されて与えられる。
本実施形態においても、シート状物品51上に設定された荷重ツール61、62に荷重を与え、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品51に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段によって、シート状物品51を変形させて折り畳み形状の計算が行われるが、その際に種々の条件が設定される。
荷重ツール61、62にはそれぞれ、シート状物品51と荷重ツール61、62とが接触する接触定義が設定され、シート状物品51と荷重ツール61、62との接触定義として、荷重ツール61、62のビーム要素の節点がシート状物品51上から離れないことと、荷重ツール61、62のビーム要素の節点がシート状物品51の端部から離れることができることと、荷重ツール61、62のビーム要素の節点がシート状物品51上を摩擦なく移動することとが規定される。
図35は、シート状物品の折り畳み形状の計算に用いる拘束ラインを説明するための説明図である。荷重ツール61、62はまたそれぞれ、該荷重ツール61、62のビーム要素の特定の節点の移動経路がユーザによって設定された所定の拘束ラインに拘束される。
図35では、第1荷重ツール61と該第1荷重ツール61用の拘束ライン71が示されているが、図35に示すように、第1荷重ツール61用の拘束ライン71は、シート状物品51の前面52における上端部から下端部に延びるように設定され、第1荷重ツール61のビーム要素の特定の節点Pnの移動経路が拘束ライン71に拘束される。第2、第3及び第4荷重ツール62についてもそれぞれ荷重ツール62のビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインが設定される。
図36は、剛体板ツールを示す図である。本実施形態では、図36に示すように、シート状物品51の変形を規制する第1、第2、第3、第4剛体板ツール81、82、83、84が用いられ、剛体板ツール81、82、83、84を移動させてシート状物品51を変形させながら荷重ツールに荷重を与えてシート状物品51の折り畳み形状が計算される。
図37は、剛体板ツールの移動を説明するための説明図である。図37では、図36におけるY37−Y37線に沿ったシート状物品及び剛体板ツールを断面図で示し、図37(a)及び図37(b)はそれぞれ、図33(a)に示す初期状態及び図33(b)に示す中間状態に対応する。
剛体板ツール81、82、83、84は、初期状態から最終状態まで解析時刻と共に線形移動され、図37(a)及び図37(b)に示すように、第1剛体板ツール81と第2剛体板ツール82とがシート状物品51を挟み込むように移動され、第3剛体板ツール83と第4剛体板ツール84とが離間するように移動される。
剛体板ツール81、82、83、84にはまた、シート状物品51と剛体板ツール81、82、83、84とが接触する接触定義が設定される。シート状物品51と剛体板ツール81、82、83、84との接触定義として、シート状物品51は剛体板ツール81、82、83、84と摩擦なく接触することができることと、剛体板ツール81、82、83、84の移動に伴ってシート状物品51と接触することによりシート状物品51を変形させることとが規定される。
このように、本実施形態では、シート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させることに代えて、シート状物品51の変形を規制する剛体板ツール81、82、83、84を用い、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段を用いて、シート状物品51に荷重を与えたときのシート状物品51の折り畳み形状を算出する。
本発明の第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算システムについては、第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算システムと略同様に構成されているが、プログラム記録部34aにおいて、前記強制変位算出プログラムに代えて、剛体板ツールの初期状態から最終状態への変位を算出するための剛体板ツール変位算出プログラムが記録されている。
剛体板ツール変位算出プログラムは、剛体板ツールの移動に関する移動データ、具体的には最終状態の位置に基づいて、剛体板ツールが初期状態から最終状態まで線形移動される解析開始時から解析終了時までの変位を算出することができるようになっている。
また、データ記録部34bにおいて、前記対象物強制変位データテーブルに代えて、剛体板ツールの情報データが記録される剛体板ツール情報データファイル、シート状物品と剛体板ツールとの接触条件データが記録される剛体板ツール接触条件データテーブル、及び、剛体板ツールの移動に関する移動データが記録される剛体板ツール移動データテーブルが設けられている。
剛体板ツール情報データファイルには、剛体板ツールの初期形状の形状データが記録される剛体板ツール形状データファイル、剛体板ツールの材料特性が記録される剛体板ツール材料特性データファイル、剛体板ツールの初期形状の形状データに基づいて有限要素分割された剛体板ツールの要素データが記録される剛体板ツール要素データテーブル、及び、剛体板ツールの初期形状の形状データに基づいて有限要素分割された剛体板ツールの要素の節点座標データが記録される剛体板ツール節点座標データテーブルが備えられている。
図38は、剛体板ツール要素データテーブルを示す図であり、図39は、剛体板ツール節点座標データテーブルを示す図である。前記剛体板ツール形状データファイルに記録された剛体板ツールの初期形状の形状データは、解析モデル作成プログラムによって解析モデルに有限要素分割され、図38に示すように、剛体板ツール要素データテーブルに、剛体板ツールの解析モデルについて、要素と該要素を構成する節点とがそれぞれ記録され、図39に示すように、剛体板ツール節点座標データテーブルに、剛体板ツールの解析モデルの節点の座標がXYZ座標系で記録される。
図40は、剛体板ツール材料特性データテーブルを示す図である。図40に示すように、剛体板ツール材料特性データテーブルには、ユーザによって設定された剛体板ツールの材料特性データが記録され、質量密度、板厚、ヤング率及びポアソン比が記録される。
図41は、剛体板ツール移動データテーブルを示す図である。図41に示すように、剛体板ツール移動データテーブルには、ユーザによって設定された剛体板ツールの移動に関するデータ、具体的には剛体板ツールの節点の最終状態における座標位置がXYZ座標系で記録される。
図42は、剛体板ツール接触条件データテーブルを示す図である。図42に示すように、剛体板ツール接触条件データテーブルには、ユーザによって設定されたシート状物品と剛体板ツールとの接触条件データが記録され、シート状物品と剛体板ツールとの接触定義が記録される。なお、図42では、対象物であるシート状物品51のIDを500として示し、第1、第2、第3及び第4剛体板ツール81、82、83、84のIDをそれぞれ400、410、420、430として示している。
本実施形態では、剛体板ツール接触条件データテーブルにおける接触定義「*11」として、シート状物品は剛体板ツールと摩擦なく接触することができることと、剛体板ツールの移動に伴ってシート状物品と接触することによりシート状物品を変形させることと、が設定されて記録される。
図43は、本発明の第2実施形態に係るシステムにおいてシート状物品の折り畳み形状を計算する動作を示すフローチャートである。本実施形態においても、折り畳み形状を計算する前に、コンピュータ30には先ず、ユーザによって入力装置32を介して各種データが登録され、データ記録部34bに記録される。
本実施形態では、前記対象物強制変位データに代えて、剛体板ツールの初期形状の形状データ及び材料特性データ、シート状物品と剛体板ツールとの接触条件データ、及び、剛体板ツールの移動に関する移動データが登録され、データ記録部34bに記録される。そして、各種データが登録された状態で、図43に示すように、シート状物品の折り畳み形状の計算が行われる。
シート状物品の折り畳み形状を計算する際には先ず、シート状物品の折り畳み形状を計算するための各種データが読み込まれ、対象物であるシート状物品の初期形状の形状データ及び材料特性データが読み込まれ(ステップS1)、荷重ツールの初期形状の形状データ、材料特性データ及び荷重データが読み込まれ(ステップS2)、荷重ツールの接触条件データであるシート状物品と荷重ツールとの接触条件データが読み込まれ(ステップS3)、荷重ツール拘束ラインデータが読み込まれ(ステップS4)、荷重ツール拘束条件データが読み込まれる(ステップS5)。
また、剛体板ツールの初期形状の形状データ及び材料特性データが読み込まれ(ステップS26)、剛体板ツールの移動に関する移動データが読み込まれ(ステップS27)、剛体板ツールの接触条件データであるシート状物品と剛体板ツールとの接触条件データが読み込まれる(ステップS28)。
次に、解析時刻Tがゼロに設定され(ステップS7)、ステップS27において読み込まれた剛体板ツールの移動に関する移動データ、具体的には最終状態の座標位置から、剛体板ツールについて初期状態から最終状態まで解析時刻と共に線形移動する場合について、解析時刻における剛体板ツールの位置データである変位データが算出される(ステップS29)。
次いで、ステップS1〜S5、S26〜S28、S7において読み込まれた各種データ及びステップS29において算出された剛体板ツールの変位データを用いて、解析時刻Tがゼロであるとき、動的陽解法を用いた有限要素法に基づき、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の変形を解析する既知の解析手段を用いて折り畳み計算が行われる(ステップS9)。ステップS9における折り畳み計算では、シート状物品及び荷重ツールの形状が計算される。
そして、ステップS9におけるシート状物品の折り畳み形状の計算が終了すると、解析時刻がΔtを加えた新たな解析時刻T+Δtに更新され(ステップS10)、解析時刻T+Δtにおけるシート状物品の形状データがステップS9において計算されたシート状物品の形状データに更新され(ステップS11)、解析時刻T+Δtにおける荷重ツールの形状データがステップS9において計算された荷重ツールの形状データに更新される(ステップS12)。
ステップS10〜S12において、解析時刻、シート状物品の形状データ及び荷重ツールの形状データが更新されると、解析時刻がユーザによって設定された終了時刻を超えているか否かが判定され(ステップS13)、ステップS13での判定結果がノー(NO)の場合、すなわち解析時刻が終了時刻以下である場合はステップS29、S9〜S13が繰り返される。
ステップS29、S9〜S13が繰り返されるとき、ステップS29では、ステップ10において更新された解析時刻T+Δtにおける剛体板ツールの変位データが算出され、ステップS9では、ステップS11及びS12においてそれぞれ更新されたシート状物品の形状データ及び荷重ツールの形状データ、ステップ10において更新された解析時刻T+Δtであるときの荷重データ、及びステップS29において算出された剛体板ツールの変位データが用いられ、シート状物品及び荷重ツールの形状が計算される。
そして、ステップS13での判定結果がイエス(YES)になると、すなわち解析時刻が終了時刻を超えると、シート状物品の折り畳み形状の計算が終了され、ステップS9における折り畳み計算によって計算されたシート状物品の折り畳み形状が出力される(ステップS14)。
このように、本実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算においても、シート状物品の初期形状データと、複数のビーム要素が節点において自由に曲がることができるように連結されてなる荷重ツールの初期形状データと、荷重ツールのビーム要素の節点に与えられる荷重データと、荷重ツールのビーム要素の節点がシート状物品上から離れないこととシート状物品上を摩擦なく移動することとを含むシート状物品と荷重ツールとの接触定義データと、荷重ツールのビーム要素の特定の節点の移動経路を拘束する拘束ラインデータとが取得される。そして、取得されたデータを用い、動的陽解法を用いた有限要素法に基づきシート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状が算出される。
これにより、シート状物品に荷重を与えたときの折り畳み形状を計算する際に、荷重を与えて折り込むラインに対応する荷重ツールがシート状物品上を変形しながら移動することができるので、一定形状の荷重ツールを用いてシート状物品の折り畳み形状を計算する場合に比して、試行回数を低減してしわの発生が少なくコンパクトに折り畳まれたシート状物品の折り畳み形状を計算することができる。複雑な形状を有するシート状物品を折り畳む場合にも適用することができ、前記効果を有効に得ることができる。
また、シート状物品の変形を規制するプレート状の変形規制ツールの初期状態データ及び移動データが取得され、取得された変形規制ツールの初期状態データ及び移動データをさらに用い、シート状物品に荷重を与えたときのシート状物品の折り畳み形状が算出されることにより、変形規制ツールを用いてシート状物品の変形を一部規制する場合においても、シート状物品の折り畳み形状を計算することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
第1実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、シート状物品の一部について所定の最終状態に強制変位させる強制変位データを用い、第2実施形態に係るシート状物品の折り畳み形状の計算では、シート状物品の変形を規制するプレート状の変形規制ツールの移動データを用いているが、これらを組み合わせて用いるようにすることも可能である。
本実施形態では、シート状物品として断面円弧状に形成されたシート状物品及び略三角柱状に形成されたシート状物品について折り畳み形状を計算しているが、その他の形状を有するシート状物品についても同様に適用することが可能である。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。