本発明の1つの目的は、上述の問題を解決することであり、特に、リソグラフィ像に対する狭い範囲の放射線誘起変化の効果、特に短期効果を抑制することである。
本発明の第1の態様により、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するための投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる方法を提供する。結像中に、電磁放射線は、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす。本発明の第1の態様による方法は、結像されるマスク上の物体構造のレイアウトを与え、物体構造をそれらの構造タイプに従って分類する段階と、物体構造の分類に基づいて、結像工程中にもたらされる投影対物系の光学特性の変化を計算する段階と、物体構造を像平面内に結像するために投影露光ツールを使用し、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、投影露光ツールの結像挙動が、光学特性の計算された変化に基づいて調節される段階とを含む。
更に、本発明の第1の態様により、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための制御装置を提供する。制御装置は、結像されるマスク上の物体構造のレイアウトを受け取るための入力デバイスと、物体構造を物体構造の構造タイプに従って分類し、結像工程中にもたらされる投影対物系の光学特性の変化を物体構造の分類に基づいて計算するように構成された処理デバイスとを含む。更に、制御装置は、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、投影露光ツールの結像挙動を光学特性の計算された変化に基づいて調節するように構成された調節デバイスを含む。本発明により、上述の制御装置を含む投影露光ツールが更に提供される。
本発明による方法及び制御装置は、投影対物系の光学特性の変化が、投影対物系の単一光学要素の屈折率及び面において局所変化をもたらす上述のレンズ加熱効果によってもたらされる場合に特に有効である。上述したように、光学特性の変化は、寿命効果によってもたらされる可能性もある。マスク上の物体構造のレイアウトは、例えば、それぞれのマスクレイアウトの設計データから直接得ることができる。
マスク上の物体構造をそれらの構造タイプに従って分類することにより、放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化をこの分類に基づいて計算することができる。上述の変化の厳密な計算と比較すると、この計算は、それ程正確ではなく、従って、近似と呼ぶことができる。本発明による計算は、分類された構造タイプの各々に対して、投影対物系に入射する放射線の角度分布を計算し、結果を組み合わせることによって行うことができる。投影対物系に入射する放射線の角度分布が同じくもたらされるいわゆる「フルチップ」シミュレーションを行うためにマスク区域全体のレイアウトが使用される厳密でより高度な手法と比較すると、本発明の解決法は、有意に少ない計算リソースしか必要としない。従って、露光される新しいマスクにおける角度分布は、適度の計算リソースを用いて、投影露光ツールの作動を大きく中断させることのない十分に短い期間で計算することができる。
本発明の解決法による光学特性の変化の計算は、露光に使用される個々のマスクにカスタマイズされた投影露光ツールの結像挙動の補償を可能にする。従って、補償を高精度に行うことができ、リソグラフィ像においてレンズ加熱効果によってもたらされる収差を狭い範囲に抑制することができる。
本発明の実施形態により、マスクは、結像工程中に、マスクを照明する電磁放射線の角度分布を定める特定の照明モードにある放射線を用いて照明され、光学特性の変化の計算は、更に、照明モードに基づいて行われる。多くの場合に、照明モードを所定のマスクを露光するように選択される照明設定とも呼ぶ。従って、この実施形態により、結像工程中にもたらされる投影対物系の光学特性の変化は、照明モードと物体構造の分類とに基づいて計算される。この実施形態により、処理デバイスは、所定の照明モードに対して、結像工程中にもたらされる投影対物系の光学特性の変化を物体構造の分類に基づいて計算するように構成される。
本発明の更に別の実施形態により、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の熱固有モードが、投影対物系と共に与えられ、光学特性の変化の計算は、熱固有モードに基づいて行われる。例えば、熱固有モードは、顧客への納品の前に決定され、次いで、関係する投影対物系と共に顧客に提供される。顧客側では、以下により詳細に説明するように、光学特性の変化を計算するのに、提供された熱固有モードを使用することができる。
本発明の実施形態により、投影対物系の光学特性の変化の計算は、分類された構造タイプの各々に関する投影対物系に入射する電磁放射線の角度分布の計算を含む。投影対物系に入射する放射線の角度分布は、物体構造において回折される放射線の回折角度分布に対応する。この分布の計算は、マスク構造のレイアウトのフーリエ変換と照明分布との畳み込みを計算する段階を含むことができる。
本発明の更に別の実施形態により、マスクは、結像工程中に、いくつかの照明モードのうちの1つにある電磁放射線を用いて照明され、投影対物系に入射する電磁放射線の角度分布は、分類された構造タイプの各々に対して、結像工程中に使用される照明モードを考慮して計算される。照明モードは、マスクを照射する放射光線の角度分布を定め、照明モードを照明設定とも呼ぶ。
1つの変形では、様々な照明モード及び/又は様々なマスクを用いた投影露光ツールのいくつかの連続する作動段階の履歴が、作動段階の継続時間に依存する重み付き二乗平均を用いて、投影露光ツールの結像挙動の調節に含められる。それによって先行する結像段階において発生した上記に「寿命効果」として言及した光学要素に対する不可逆的損傷、例えば、レンズ内のコンパクションが、投影対物系の光学特性を決定するのに考慮される。
本発明の更に別の実施形態により、物体構造の分類は、マスク上で異なる構造タイプによって覆われるそれぞれの区域のサイズの決定を含む。投影対物系の光学特性の変化の計算は、投影対物系に入射する電磁放射線の全体角度分布の近似の決定を含み、全体角度分布は、分類された個別の構造タイプに対して、角度分布の重み付き和から計算され、角度分布は、それぞれの構造タイプによって覆われるマスク区域の決定されたサイズによってそれぞれ重み付けされる。後により詳細に説明するように、投影対物系の光学特性の変化の計算は、投影対物系に入射する電磁放射線の全体角度分布の近似から投影対物系の個別レンズ上の熱分布を計算し、これらの熱分布によって導入されるレンズ加熱効果からそれぞれのレンズの光学特性の変化を決定することによって行うことができる。
本発明の更に別の実施形態により、物体構造の分類は、少なくとも2つのタイプの領域へのマスクの分割を含み、第1のタイプの領域は、第2のタイプの領域に対して密に配列された物体構造を含み、第2のタイプの領域は、第1のタイプの領域の配列密度に対して疎に配列された物体構造を含む。密に配列された物体構造の領域は、例えば、チップ設計のセル区域とすることができる。チップ設計の周辺区域は、疎に配列された物体構造の領域と見なすことができる。変形により、投影対物系の光学特性の変化の計算において、第2のタイプの領域は、物体構造を含まない領域によって近似される。この場合、入射放射線は、第2のタイプの領域と関係するマスク部分に対する照明放射線の0次の回折次数を用いて計算することができる。
本発明による更に別の実施形態において、結像工程中に投影対物系の光学特性において計算される変化は、それぞれのレンズを照射する電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の少なくとも1つの単一レンズ要素のレンズ加熱に起因する。
本発明の更に別の実施形態により、光学特性の変化に起因する像平面内の波面の偏位が計算され、計算された波面偏位を補償するために、投影露光ツールの結像挙動が調節される。1つの変形により、投影露光ツールの結像挙動は、少なくとも1つの光学要素、特に投影対物系の光学要素の位置又は形状をアクチュエータを用いて操作することによって調節される。この目的のために、例えば、1つ又はそれよりも多くの光学要素の位置は、平行移動又は回転移動によって変更することができる。結像挙動の調節は、光学要素の形状の修正又は光学要素の交換を含むことができる。投影対物系の結像挙動を調節する段階に加えて、投影露光ツールの結像挙動は、マスクの照明の角度分布を適宜変更することによって調節することができる。
本発明の更に別の実施形態により、結像挙動の調節は、リソグラフィ像の波面偏位のゼルニケ多項式の係数を最適化することによって実施され、ゼルニケ多項式の係数のうちの少なくとも1つは、最適化問題の目的関数において、他の係数と比較して異なって重み付けされる。このようにして、特定の物体構造に対するゼルニケ係数の重要度を最適化の中に重み付けすることができる。
本発明の更に別の実施形態により、結像挙動の調節は、リソグラフィ像の波面偏位のゼルニケ多項式の係数を最適化することによって実施され、像平面内の少なくとも1つの場所は、対応する最適化問題の目的関数において、像平面内の他の場所における係数と比較して異なって重み付けされる。
本発明の更に別の実施形態により、結像挙動の調節は、投影対物系を選択された瞳区画内で通過する放射線成分だけに対して像平面内の波面変形を低減することによって実施される。下記ではこの調節を「関与領域(region of interest)」補正と呼ぶ。
本発明の更に別の実施形態により、投影露光ツールの結像挙動を調節するのに第1のアクチュエータと第2のアクチュエータが使用され、これらのアクチュエータの各々は、第1の結像誤差を修正することを可能にし、第1のアクチュエータは、更に、第2の結像誤差を修正することも可能にし、第1のアクチュエータの所定の操作に対して、第2の結像誤差の反応は、第1の結像誤差の反応よりも小さく、アクチュエータは、第1のアクチュエータの所定の操作に対する第2の結像誤差の反応が所定の閾値よりも大きい場合にのみ第2の結像誤差を最小にするように操作される。この閾値は、例えば、第1のアクチュエータの所定の操作に対する第1の結像誤差の反応の1/100、特に1/10とすることができる。
本発明の更に別の実施形態により、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定され、投影対物系の結像挙動が、電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を補正するために、少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、リソグラフィ結像誤差のこの低減は、リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度を有する。この実施形態に対しては、本発明の第3の態様に関して以下に更に例示する。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第1の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
本発明の変形により、投影露光ツールの結像挙動は、物体構造の結像を行う前に調節され、及び/又は結像工程中に動的に調節される。従って、例えば、結像挙動は、単一ウェーハ又はウェーハ群の各露光の前に調節することができる。代替的又は追加的に、露光中にレンズ加熱効果を動的に補正しながら継続的に調節を行うことができる。
本発明の更に別の実施形態により、電磁放射線は、結像中に投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こし、結像工程中に電磁放射線によって光学要素内に誘起される熱分布が決定され、光学要素内に生じる温度分布が、決定された誘起熱分布から温度分布関数を用いて計算される。熱分布は、光学要素による電磁放射線の一部分の吸収によってもたらされる。温度分布関数は、熱分布の解析関数であり、光学要素の熱固有モードを含む。更に、物体構造が像平面内に結像され、投影露光ツールの結像挙動が、計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて調節される。熱分布は、好ましくは、時間依存のものである。この実施形態に対しては、本発明の第2の態様を参照して以下に更に例示する。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第1の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
本発明の第2の態様により、マイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる更に別の方法を提供する。投影露光ツールは、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有する。第2の態様による方法は、結像工程中に電磁放射線によって光学要素内に誘起される熱分布を決定する段階と、決定された誘起熱分布から、温度分布関数を用いて、光学要素内に生じる温度分布を計算する段階とを含む。温度分布関数は、熱分布の解析関数であり、光学要素の熱固有モードを含む。更に、方法は、物体構造を像平面内に結像し、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる光学要素の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、投影露光ツールの結像挙動が、計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて調節される段階を含む。ここで言及した光学要素は、特に、例えば、レンズ要素又は反射要素のような波形成形要素とすることができる。
更に、本発明の第2の態様により、マイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための更に別の制御装置を提供する。投影露光ツールは、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を含む。第2の態様による制御装置は、結像工程中に電磁放射線によって単一光学要素内に誘起される熱分布からこの光学要素内に生じる温度分布を計算し、生じる温度分布が、熱分布の解析関数であって光学要素の熱固有モードを含む単一光学要素の温度分布関数を用いて計算されるように構成された処理デバイスを含む。更に、制御装置は、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる光学要素の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動を調節するように構成された調節デバイスを含む。本発明により、上述の制御装置を含む投影露光ツールが更に提供される。
熱固有モードを含む温度分布解析関数を使用することにより、特定の光学要素に対して、単純に誘起熱分布を温度分布関数の中に挿入することにより、光学要素内に生じる温度分布を計算することができる。このようにして温度分布を例えば有限要素(FE)計算に基づく従来の計算によって可能なものよりもかなり少ない計算労力しか伴わずに、かなり高速に得ることができる。温度分布関数は、全ての関連光学要素の各々に対してそれぞれ一度、全ての関連熱固有モードの温度分布を事前計算することによって計算される。使用されるマスクと照明設定とに基づいて、温度分布は、マスクレイアウトと照明設定との特定の組合せに対して誘起熱分布を決定し、この誘起熱分布を所定の温度分布関数の中に挿入することによって容易に計算することができる。
従って、本発明の第2の態様による方法は、高い時間分解能により、すなわち、非常に短い期間によって隔てられた時点における温度分布の計算を可能にする。従って、光学要素内での熱伝達の計算をより正確にシミュレートすることができる。特に、得られる投影露光ツールの結像挙動の調節も、高い時間分解能によって行うことができる。更に、結像工程中に温度伝達を実時間で計算することさえ可能である。このようにして、リソグラフィ像に対する放射線誘起変化の効果を特に良好に抑制することができる。本発明の実施形態により、光学要素の温度分布関数は、時間の関数として与えられる。
本発明の実施形態により、光学要素の温度分布関数は、時間の関数として与えられる、すなわち、温度分布関数は時間依存のものである。更に、光学要素にもたらされる決定される熱分布も、有利に時間依存のものである。
本発明の更に別の実施形態により、温度分布関数は、固有値及び固有モードの解析を用いて光学要素の熱輸送方程式を解くことによって与えられる。上述したように、温度分布関数は、投影対物系の各関連光学要素に対して、光学要素の全ての関連熱固有モードの温度分布を事前計算することによって一度計算するだけでよい。有利な態様では、光学要素の熱固有モードは、投影対物系と共に与えられる。1つの変形により、光学要素の熱輸送方程式では、光学要素の光軸の方向に温度が一定であると見なされ、すなわち、温度は、z方向に延びる光軸においてzに依存しないと見なされる。
本発明の更に別の実施形態により、マスク上の物体構造のレイアウト、特に、結像工程中にマスクを照明する放射線の角度分布を定める照明モードが提供され、光学要素内に誘起される熱分布が、物体構造のレイアウト、特に、照明モードから決定される。この熱分布の決定は、例えば、本発明の第1の態様に関して説明した方法に従って投影対物系に入射する電磁放射線の角度分布を計算することによって行うことができる。投影対物系に入射する放射線の角度分布から、関連光学要素のそれぞれの光学面における強度分布を計算することができる。これらの強度分布から、それぞれの誘起熱分布を決定することができる。
更に別の変形により、物体構造のレイアウトは、物体構造を物体構造の構造タイプとマスク上の物体構造の場所とに従って分類するのに使用され、光学要素内に誘起される熱分布は、物体構造の分類に基づいて計算される。
本発明の更に別の実施形態により、結像されるマスク上の物体構造のレイアウト、特に照明モードが与えられ、物体構造が、その構造タイプに従って分類され、物体構造のこの分類に基づいて、結像工程中の投影対物系の光学特性の変化が計算され、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、光学特性の計算された変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動が調節される。この実施形態に対しては、本発明の第1の態様に関して上記に例示した。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第2の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
本発明の更に別の実施形態により、投影対物系の一部又は全ての光学要素に対してそれぞれの温度分布が計算され、計算された温度分布から導出されるそれぞれの光学要素の光学特性の変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動が調節される。
本発明の更に別の実施形態により、結像されるマスク上の物体構造のレイアウトが与えられ、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定され、投影対物系の結像挙動が、電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を補正するために、少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、投影対物系の結像挙動の調節は、リソグラフィ結像誤差の低減がリソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成されるように実施される。変形により、結像工程に使用される照明モードが与えられ、この照明モードに基づいて、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定される。この実施形態に対しては、本発明の第3の態様を参照して以下に更に例示する。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第2の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
本発明の第3の態様により、マイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる更に別の方法を提供する。投影露光ツールは、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を含む。本発明の第3の態様による方法は、結像されるマスク上の物体構造のレイアウトを与え、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差を決定する段階を含む。更に、本方法は、物体構造を像平面内に結像し、投影対物系の結像挙動が、電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を補正するために、少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、投影対物系の結像挙動の調節が、リソグラフィ結像誤差の低減がリソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成されるように実施される段階を含む。本発明の第3の態様による実施形態において、マスクは、結像工程中に、マスクを照明する電磁放射線の角度分布を定める特定の照明モードにある放射線を用いて照明され、少なくとも1つのリソグラフィ誤差は、照明設定を考慮して決定される。
更に、本発明の第3の態様により、マイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための更に別の制御装置を提供する。投影露光ツールは、電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を含む。制御装置は、結像されるマスク上の物体構造のレイアウトを受け取るための入力デバイスと、与えられたレイアウトにおけるリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差を決定し、かつ電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されように補正するための調節設定値を計算するように構成され、リソグラフィ結像誤差のこの低減が、リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成される処理デバイスとを含む。更に、制御装置は、計算された調節設定値に従って投影対物系の結像挙動を調節するように構成された調節デバイスを含む。本発明により、上述の制御装置を含む投影露光ツールが更に提供される。
言い換えれば、本発明の第3の態様により、露光されるマスクのレイアウトが解析され、所定のリソグラフィ結像誤差によってリソグラフィ像の品質が劣化を受けるという点でマスクのリソグラフィ像に関する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定される。ここでのリソグラフィ結像誤差は、マスクのリソグラフィ像内で観察可能な誤差である。そのようなリソグラフィ結像誤差は、例えば、マスクレイアウトが、非点誤差による影響を受ける直交する向きを有する構造を含む場合は非点誤差とすることができる。この誤差の結果として、直交する向きを有する構造の平面は、この誤差によってシフトされる。リソグラフィ結像誤差の別の例は、像平面内でマスク構造の互いに対するシフトをもたらすコマ誤差である。リソグラフィ結像誤差は、特に、「最良焦点範囲」及び「オーバーレイ」のようなリソグラフィパラメータによって記述することができる。従って、リソグラフィ結像誤差は、例えば、干渉計による以外は測定することができない高次の波面収差、又は所定のマスクレイアウトの結像に影響を及ぼさない波面誤差との比較で定められる。
本発明の第3の態様により、所定のマスクレイアウトにおいて決定される少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差を低減又は最小にするために投影対物系の結像挙動が調節される。この調節は、リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成される。従って、調節の結果は、全体波面偏位が、絶対偏位及び/又は偏位勾配に関して、決定されたリソグラフィ結像誤差の低減が所定の優先度のものではなかった場合に可能になる程には滑らかにはならないというものである場合がある。波面偏位は、調節がなかった場合のものよりも滑らかではなくなる可能性さえある。その結果、リソグラフィ像に対して影響を有する他のリソグラフィ結像誤差、特に、与えられたレイアウトに対しては殆ど影響を持たないリソグラフィ結像誤差も、結果的に拡大される場合がある。
従って、本発明の第3の態様により、放射線誘起効果に起因する投影対物系の結像挙動の補正に関して、意図的な優先度が設定される。このようにして、露光される所定のマスクのレイアウトにカスタマイズされたリソグラフィ像のスマートな最適化を提供する。このようにして、リソグラフィ像に対する放射線誘起変化の効果は、狭い範囲に保たれる。
本発明の更に別の実施形態により、少なくとも1つの結像誤差は、与えられたレイアウトにおけるリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つの他の結像誤差が、調節の結果として拡大されることに関わらず、選択的に低減される。更に別の変形により、低減される結像誤差は、与えられたレイアウトにおけるリソグラフィ像に対して、調節の結果として拡大されるリソグラフィ結像誤差よりも大きい影響を有する。
本発明の更に別の実施形態により、物体構造の与えられたレイアウトに関して、与えられたレイアウトにおけるリソグラフィ像に対して最も大きい影響を有するという点で最も関連のあるリソグラフィ結像誤差を含むリソグラフィ結像誤差サブグループが決定され、電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を補正するために、リソグラフィ結像誤差サブグループの少なくとも1つの結像誤差が、サブグループ内に含まれない結像誤差が調節の結果として拡大されることに関わらず選択的に低減されるように投影対物系の結像挙動が調節される。この関連におけるサブグループの少なくとも1つの結像誤差の選択的な調節は、特に、サブグループ内に含まれない少なくとも別の結像誤差が調節されないままに残ることを意味する。
本発明の更に別の実施形態により、投影対物系の結像挙動は、得られる結像誤差の低減の範囲が、物体構造の像が結像誤差によって影響を受けるという点で結像誤差が関連性を有するこれらの物体構造のピッチとは基本的に独立であるように調節される。
本発明の更に別の実施形態により、低減される結像誤差は、直交する向きを有する物体構造を異なる平均焦点面内に集束させる。そのような結像誤差を非点収差又はH−V焦点差とも呼ぶ。
本発明の更に別の実施形態により、投影対物系の結像挙動は、得られる直交する向きを有する物体構造の平均焦点面の間の距離が最小にされるように、リソグラフィ像の波面偏位におけるゼルニケ多項式Z5及び/又はZ6の係数を調節することによって調節される。特に、ゼルニケ多項式Z5(及び/又はZ6)の係数は、いくつかのピッチに関する水平構造と垂直構造との間(及び/又は45°回転構造と135°回転構造の間)の平均焦点差が最小にされるように調節される。代替的又は追加的に、ゼルニケ多項式Z17の係数を調節することができる。このようにして、H−V(及び/又は45°−135°)焦点差を構造のピッチとは基本的に独立して操作することができる。構造のピッチは、当業者に一般に知られているように、構造の特徴的周期性である。
本発明の更に別の実施形態により、低減される結像誤差は、投影対物系の線形倍率誤差及び/又は3次の歪曲誤差を含む。
本発明の更に別の実施形態により、低減される結像誤差は、直交する向きを有する物体構造の像を像平面内で異なってシフトさせる。このシフトは、異なる方向のシフト及び/又は同じ方向の異なる程度のシフトを意味することができる。
本発明の更に別の実施形態により、投影対物系の結像挙動は、構造のピッチ平均倍率、3次の歪曲、及び/又は一定の横方向シフトが最小にされるように、リソグラフィ像の波面偏位におけるゼルニケ多項式Z2及び/又はZ3の係数を調節することによって調節される。このようにして、像平面内のパターンシフトを構造のピッチとは基本的に独立して操作することができる。
本発明の更に別の実施形態により、物体構造が、その構造タイプに従って分類され、物体構造のこの分類に基づいて、結像工程中の投影対物系の光学特性の変化が計算され、結像工程中に電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、光学特性の計算された変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動が調節される。この実施形態に対しては、本発明の第1の態様に関して上記に例示した。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第3の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
本発明の更に別の実施形態により、電磁放射線は、結像工程中に、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こす。この実施形態により、単一光学要素の温度分布関数が与えられ、温度分布関数は、光学要素によって吸収される流入熱分布の解析関数であり、かつ光学要素の熱固有モードを含み、結像工程中に電磁放射線によって光学要素内に誘起される熱分布が決定され、光学要素内に生じる温度分布が、決定された誘起熱分布から温度分布関数を用いて計算され、物体構造が像平面内に結像され、計算された温度分布から導出された光学要素の光学特性の変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動が調節される。この実施形態に対しては、本発明の第2の態様に関して更に以下に例示する。ここに言及した全ての実施形態及び変形は、本発明の第3の態様による方法及び制御装置に適用することができる。
上記に詳述した本発明の態様のうちのいずれか1つによる方法に関して上記に特定された特徴は、本発明による制御装置及び投影露光ツールに対応して移し替えることができる。この移し替えによってもたらされる本発明による制御装置及び投影露光ツールの有利な実施形態は、本発明の開示によってカバーされるべきである。
本発明の上述した並びに他の有利な特徴は、以下の模式的な図面への参照を有する以下に続く本発明の例示的な実施形態の詳細説明から明らかになるであろう。
以下に説明する本発明の実施形態において、機能及び構造において類似の構成要素を可能な限り同じか又は類似の参照番号で表している。従って、特定の実施形態の個々の構成要素の特徴を理解するには、他の実施形態の説明又は本発明の概要を参照されたい。
図1は、マイクロリソグラフィのための投影露光ツール10の非常に簡単なブロック図を示している。投影露光ツール10は、例えば、248nm又は193nmを含むUV領域内の波長、又は極紫外波長領域(EUV)内の特に100nmよりも小さい、例えば、13.4nmの波長を有する電磁放射線13を生成する放射線源12を含む。この例示的な実施形態において、放射線源12を以下に説明する投影露光ツールの構成要素によって定められる光軸14上に示している。
放射線源12によって生成された放射線は、例えば、レンズ及び/又はミラーの形態にある複数の光学要素18を有する照明系16にもたらされ、これらの光学要素18のうちの1つのみを象徴的に示している。照明系16は、ビーム経路内で照明系16の後に配置されたマスク20を照明するように機能し、このマスク20をレチクルとも呼び、マスク20は、物体平面22内に置かれる。照明系16は、特に、マスク20を照射する放射線13の照明モードと呼ぶ角度分布を使用されるマスク20に適応させることができるように構成することができる。
マスク20は、ウェーハの形態にある基板24上に結像される物体構造を保持する。この結像目的で、マスク20上の物体構造は、マスク20の後に配置された投影対物系26を用いて、投影対物系26に続く像平面28内に投影される。照明系16と同様に、投影対物系26も、例えば、レンズ又はミラーの形態にある複数の光学要素30を含み、これらの光学要素30のうちの1つのみを象徴的に示している。光学要素18及び/又は30がレンズとして構成される場合には、これらの光学要素を例えば石英ガラス(溶融シリカ)又はフッ化カルシウムで構成することができる。
基板24は、投影対物系26の像平面28に配置され、投影露光ツール10を用いて露光される感光層を含む。それによってマスク20上の物体構造は、結像工程において基板24上に転写される。基板24の露光の後に、基板24は、露光によって感光層内に作成された構造に基づいて処理を受ける。その後に、更に別の露光及びそれに基づく更に別の処理を続けることができる。この手順は、基板24が全ての望ましい構造を有するのに必要な回数だけ繰り返される。
短い露光時間を得るために、露光において非常に高い強度の放射線が使用される。それによって投影対物系26の光学要素30が、放射線による非常に強い照射を受けるという結果がもたらされる。更に、重大なことに、光学要素30の少なくとも一部における放射線露光は、これらの光学要素の使用可能面にわたって均一に分散されず、時に使用可能面よりもかなり小さい部分領域内に集中する。従って、非常に高い強度が局所的に発生することができ、それによって光学要素30の特性において放射線誘起変化がもたらされる場合がある。既に上記に詳述したように、例えば、光学要素、例えば、レンズ又はミラー内に吸収される放射線は、光学要素内に局所的な温度変化の効果を有することができ、それによって光学要素内に局所的な屈折率及び面の変化がもたらされる場合がある。この効果は可逆性の短期の効果であり、「レンズ加熱」として公知である。更に、放射線は、「寿命効果」として公知の不可逆的な長期の効果をレンズ内にもたらされる場合がある。そのような効果は、レンズのコンパクション(密度増大)又はレアファクション(密度低下)を含む。
説明した光学要素30の光学特性における放射線誘起変化、及び場合によって他の変化は、不均一な強度、変動する偏光状態、収差などをもたらす場合がある。
長い照射時間による光学要素30の光学特性における放射線誘起変化は、投影対物系26がもはや所定の仕様を満たさず、従って、投影露光ツール10が、定められた目的に対してもはや使用可能ではないという結果をもたらす場合がある。投影露光ツール10のどのような使用状態の下で、仕様からの許容不能なずれが発生することになるかは、結像工程中の単一光学要素30内の放射線の分布に大幅に依存することになる。
光学要素30内の放射線の分布は、投影対物系26に入射する放射線13bの角度分布である、マスク20によって発生する放射線13bの回折角度分布から推定することができる。回折角度分布は、既に上述したように、照明系16によって使用される照明モードによって定められる、マスク20を照射する照明放射線13aの角度分布に依存する。照明設定とも呼ぶそのような照明モードの例は、二重極照明、輪帯照明、及び四重極照明等である。更に、放射線13bの回折角度分布は、マスク20のレイアウトに依存する。回折角度分布の厳密な計算は、最初にマスクレイアウトのフーリエ変換を計算し、次に、マスクレイアウトのフーリエ変換と、照明放射線13aの角度分布との畳み込みを計算することによって行うことができる。この計算には、それぞれのマスク20上に含まれる全ての物体構造を含めなければならない。従って、この計算には、一般的に多大な計算リソースが必要である。
放射線13bの回折角度分布をより少ない計算リソースのみを用いて、より短い時間で計算することを可能にするために、本発明により、最初に、マスク20上に含まれる物体構造の分類が実施される。図2に、マスク20上に書き込まれたフルチップレイアウトの例の形態に示すように、マスク20上の物体構造のレイアウトが解析され、物体構造は、これらの構造タイプに従って分類される。それによってマスク区域は、いくつかのタイプの領域、例えば、密に配列された物体構造を含むいわゆるセル区域32と、セル区域32内の構造の配列密度と比較して疎に配列された物体構造を含むいわゆる周辺部34とに分割される。構造の分類基準は、例えば、物体構造の向き及び形状タイプを更に含むことができる。更に、分類された領域の相対的な面積又はサイズが決定される。図2に示す例では、各々がフルチップ31の面積のうちの30%を覆う2つのセル区域が存在し、一方、残りの40%の区域が周辺部34によって覆われる。従って、「セル区域」タイプの物体構造に60%の面積が割り当てられ、「周辺部」タイプの物体構造に40%の面積が割り当てられる。
この分類は、図1に示す制御装置40において行われる。制御装置40は、入力デバイス42と、処理デバイス44と、調節デバイス46とを含み、投影露光ツール10内に完全に統合することができる。代替的に、入力デバイス42及び処理デバイス44は、投影露光ツール10から分離することができる。入力デバイス42は、露光されるそれぞれのマスク20上の物体構造のレイアウトを受け取るように構成される。処理デバイス44は、上述の物体構造の分類を行う。
その後に、処理デバイス44は、物体構造の分類に基づいて投影対物系26の光学特性の変化を計算する。上述の変化の厳密な計算と比較すると、この計算はあまり正確ではなく、従って、近似と呼ぶことができる。上述の目的で、放射線13bの回折角度分布が、分類において決定された各個別の物体構造タイプに対して計算される。この計算は、フルマスクレイアウトから回折角度分布を計算する段階に関して上述した手法と同じく行われる。本発明により、最初に、それぞれの物体構造のレイアウトのフーリエ変換が計算され、次に、物体構造のフーリエ変換と、照明放射線13aの角度分布との畳み込みが計算される。結果は、分類において決定された物体構造タイプの各々に関する仮想有効瞳である。
図3は、図2の物体構造タイプに対して計算された放射線13bの回折角度分布の例である。図3の左上のグラフは、二重極照明モードで照明されている密に配列された「セル区域」タイプの物体構造に対して計算された回折角度分布を示している。図3の右上のグラフは、疎に配列された「周辺部」タイプの物体構造に対して計算された回折角度分布を示している。「周辺部」タイプの物体構造は、空きフレームとも呼ぶ、構造を全く含まない領域によって模擬したものである。従って、右のグラフには、二重極照明の角度分布のみを示している。
次に、放射線13bの全体角度分布近似が、分類された個別の物体構造タイプに関する角度分布の重み付きの和から計算される。それによって個々の角度分布が、それぞれの構造タイプによって覆われるマスク区域の決定された相対サイズ及びこれらの区域の透過率によってそれぞれ重み付けされる。図2及び図3に示す例では、セル区域32に関する仮想角度分布又は仮想瞳は60%だけ重み付けされており、周辺部34に関する仮想角度分布又は仮想瞳は40%だけ重み付けされている。図3の下のグラフに例示的に示す重み付きの和は、マスク20上のフルチップ31の角度分布又は瞳の近似である。一般的に1つのマスク20は、いくつかの同一のチップ31を含む。この場合、フルチップ31の決定された瞳は、全体のマスク31の瞳に対応する。
次に、処理デバイス44は、結像工程中にもたらされる投影対物系26の光学特性の変化を投影対物系26に入射する放射線13bの決定された全体角度分布から計算する。この計算は、投影対物系26の単一光学要素30内に誘起される熱分布を放射線13bの決定された全体角度分布から計算することによって行うことができる。そのために、単一光学要素30のそれぞれの面上、及び容積域内の放射線13bの分散が決定され、レンズの形態にあるとすることができる光学要素30内で放射線13bから生成される熱の伝達が計算され、それぞれの光学要素内の時間的に分解された熱分布が得られる。本発明による熱伝達の方法の例を以下に詳細に示している。
計算された光学要素30の時間分解の熱分布から、それぞれの光学要素30の光学特性の変化、例えば、屈折率変化及び面変形が決定される。光学要素30の光学特性におけるこの変化から、処理デバイス46は、光学特性におけるこの変化を補償するのに必要な投影露光ツール10に対する調節を計算し、そのような調節を行うように調節デバイス46を制御する。投影露光ツール10に対する調節は、光学特性が変化した光学要素30又は他の光学要素30に対して加えることができる。これらの調節により、特に投影対物系26の結像挙動が調節される。代替的又は追加的に、例えば、照明系16の光学要素18を操作することにより、全体的な投影露光ツール10の結像挙動を調節することを有利とすることができる。一般的にこの調節は、異なるタイプのものとすることができるマニピュレータを用いて実施される。以下に続く本文の様々な箇所において、いくつかのマニピュレータに言及する。
図10及び図11は、本発明による投影露光ツールを作動させる方法の実施形態を示す流れ図を含む。本方法は、段階番号への明示的な参照なしに、上記に詳細に説明した段階S1からS11を含む。本発明による方法の他の実施形態は、本発明の説明において開示する段階S1からS11のうちの一部のみを含む。
本発明の一実施形態により、光学要素30の光学特性の変化を補償するのに必要な光学要素30に対する調節の計算は、最初に、計算された光学特性の変化からもたらされる像平面28内の波面偏位を計算することによって実施される。この波面偏位から、この計算された波面偏位を補償するのに必要な調節が計算される。1つの変形では、調節の目標は、可能な限り滑らかな波面を得ることとすることができる。更に、以下に詳細に例示する別の変形では、あるリソグラフィ結像誤差の低減を優先することができる。
図1の調節デバイス46は、それぞれの光学要素30に配置されたマニピュレータを含む。例示のために、図2の調節デバイス46を光軸14に沿って光学要素を移動するための移動マニピュレータとして示している。光軸14に関して光学要素を回転させるか、又は特にミラーの形態にある光学要素20を変形するように追加的又は代替的なマニピュレータを構成することができる。代替的又は追加的に、露光ツールの他のパラメータ、照明系内の類似の光学要素を結像挙動を適宜調節するために操作することができる。適切なマニピュレータの例が、例えば、US 2004/0155915 A1に示されており、この文献は、引用によって本明細書に含まれている。下記では、他の例についても述べられる。
例えば、投影対物系26の単一光学要素30を操作することによる投影露光ツール10の結像挙動の調節は、基板24の露光の前に行うことができる。代替的に、この調節は、入射する放射線に起因して露光工程において発生する誤差を絶えず補正することにより、結像工程中に動的に行うことができる。
上述したように、投影露光ツールの結像挙動の調節は、例えば、投影対物系26内の適切なレンズ要素の位置又は形状のアクチュエータを用いた操作によって行うことができる。投影対物系26の設計に基づいて、全てのレンズ要素のうちのサブグループのみ、又は更に時に1つのレンズ要素のみを操作することにより、投影対物系26全体の波面偏位を補正することを可能にすることができる。いくつかの設計では、投影対物系26の瞳平面内又はその近くにあるレンズ要素とすることができるいわゆる等価レンズ要素によって波面偏位を近似的に補正することができる。
以下では、投影対物系26のレンズ要素の形態にある単一光学要素30内の熱伝達を計算するための本発明による方法の実施形態を詳細に例示する。この計算は、レンズ要素内に誘起される熱分布から生じるレンズ要素内の温度分布を計算することによって行われる。上述したように、レンズ要素内に誘起される熱分布は、投影対物系26に入射する放射線13bの角度分布から導出される。本発明のこの実施形態による方法は、有限要素法(FEM)の使用なしに、レンズ加熱の計算を可能にする。FEMの使用と比較すると、この実施形態による方法は、レンズ加熱効果をより高速に計算することを可能にする。
石英、フッ化カルシウム、又は他のガラスに基づくレンズ要素内のレンズ加熱のモデル化では、所定の境界状態を用いて熱方程式が解かれる。レンズ内部の加熱プロセスは、例えば、ガラスで作成されたレンズのバルク材料及びその上に付加されたコーティング内に電磁放射線を吸収する結果である。
以下では、本発明による投影対物系のレンズの形態にある光学要素30内の熱輸送を計算するためのモデルを図4に示すレンズ要素50を参照して例示する。レンズ要素50をz座標軸がレンズ要素50の光軸52に対応する円柱座標系を用いて説明する。座標ρは、z軸からの距離を指し、φは、角座標又は方位角を指す。本発明による以下のモデルでは、環境内の対流又は気流を考慮しない。更に、レンズ内部におけるz依存性を考慮しない。これは、レンズ加熱のフットプリントが、レンズの一方の側から他方の側に大幅には変化しないことを結果が示すことで正当化される。
このモデルは、光学要素の固有モードを含む温度分布解析関数を用いた誘起熱分布から生じるレンズ要素50内の温度分布の計算を可能にする。
最初の部分では、数値的に解くべき形態にあるレンズ要素50の熱方程式をもたらす本発明のモデル化の解析部分を示している。
式(1)は、本出願では誘起熱分布又は入射熱分布とも呼ぶ熱源W(t,ρ,φ)に関する時間依存の熱方程式である。
ここで、θは温度であり、tは時間である。パラメータσは次式のように定められる。
ここでλは熱伝導率であり、ρ’は密度であり、crは、レンズ要素50のバルク材料の比熱容量である。既に上述したように、温度θは、zに依存しないと見なされる。
この仮定を用いて、式(1)を次式のように書くことができる。
式(4)が、解くべき微分方程式である。レンズ要素50の3次元幾何学構成を考慮することを可能にする数学的手法が選択される。熱は、レンズ要素内でレンズの装着部に向けて半径方向(ρ)にしか流れないと仮定することにより、レンズ面54を通る熱流は考慮されない。熱流は、放熱、従って、レンズ要素50の装着部の外側境界までの最短路を辿る。
図4を参照すると、熱伝導率λは、次式のようにレンズ半径ρの関数として表すことができる。
ここでλ0は、レンズ要素50の中心における熱伝導率であり、d0は中心厚である。
熱方程式(4)は、時間と空間との分離によって解かれる。
上述の仮定を用いて、W(t,ρ,φ)≡0である同次熱方程式を次式のように書くことができる。
ここで以下の項は一定であり、Γと呼ぶ。
ここでW(t,ρ,φ)≡0である同次熱方程式を2つの別個の微分方程式、すなわち、以下の時間依存の微分方程式(9)とρ及びφの微分方程式(10)とで書くことができることに注意されたい。
ここでΓ≡定数である。
この式(9)の解は公知であり、後に紹介する。式(10)は、以下の項によって更に分離することができる。
φの式(10)は、次式のように書くことができる。
ここでm2は一定であり、次式のように定められる。
式(12)は、以下の項によって解くことができる。
これは、(14)の2次微分を次式(15)のように書くことができ、式(12)を与えるからである。
従って、変数mは、解の方位角依存性を表している。
ρの式(10)は、次式のように書くことができる。
又は、
ここで、
である。
以下では、この式を固有モードソルバを用いた数値的手法によって解く。
式(16)は、半径方向離散化手法によって数値的に解くことができる。一様な関数と離散関数との間で区別を付けるために、離散関数はハット符号を有するように書かれる。
に対するN×Nの微分演算子Dが、次式の通りに定められる。
ここでNは、半径(ρ)方向の離散化点の個数であり、hは離散化距離である。
以下の離散化手法が使用される。
離散化手法は、点「o」と「x」とにおいて2つの離散システムを含む。点「o」において温度θ及びその2次微分d2θ/d2ρが定められる。点「x」では1次微分dθ/dρが定められる。左側では、温度の1次導関数はゼロにならなければならない(ノイマン境界条件)ことに注意されたい。右側では、装着部の境界条件は、θ=0(ディリクレ境界条件)である放熱を表している。
変数ρ及びσ(ρ)は、ガラスと気層の間のノードにおける熱伝導率が、これらの両方の算術平均値と見なされる対角行列として書くことができる。ガラスと装着部の間のそのような気層を有することで、モデル内に装着部に対する不完全な熱接触が含まれる。気層の厚みは、当業者に公知の有限要素計算を用いてレンズ内の温度分布を計算するための従来の手法におけるレンズ要素50と装着部の間の距離に等しい。本発明によるモデルと有限要素計算の間の相関性を求めるために、気層の有効熱伝導率は、0.0255mW/mm/Kに設定される。この値は、N2の熱伝導率よりも若干高いことに注意されたい。
式(16)の演算子Qを演算子行列
によって離散形式で書くことができ、異なる離散化手法を考慮すべきである。
変数
は列ベクトルであり、
は対角行列である。行列
は、
に対する転置行列である。この演算子
を使用すると、式(16b)は、解が当業者に公知の数値的固有値問題になる。
この場合、Γiは固有値であり、
は、
の固有ベクトルであり、非自明解において、以下の行列式はゼロにならなければならない。
を固有値Γ1,...,Γnを有する対角行列とする。
この場合行列
を次式のように書くことができる。
行列
は、
の固有ベクトル
を含むことに注意されたい。
である非同次熱方程式(4)の場合の離散温度分布は、同次熱方程式のこれらの解に展開することができる。
ここで列ベクトル
は、固有ベクトルの展開係数を表している。上述の式を用いて、非同次熱方程式(1)を次式のように書くことができる。
(22)の下の
の定義を用いて、式(24)を次式のように書き直すことができる。
この式から、以下の行列式を得ることができる。
式(26)の解は次式の通りである。
パラメータAは、t=0における境界条件を考慮することによって見出される。
従って、解(27)を次式のように書くことができる。
関数
は、次式を用いて元の基底系に変換すべきであることに注意されたい。
従って、時間依存の熱方程式(1)の解を次式のように書くことができる。
この式では、
は、温度値を含む列ベクトルであり、
は、流入熱の値を含む列ベクトルであり、各々は、ρ及びφそれぞれの離散化値に対するものである。
既に上述したように、
は、解の固有モード又は熱モードとも呼ぶ固有ベクトルを含む。図5は、例示的なレンズにおける固有値問題(19)を解くことによって得られた固有モード1から25を示している。この図では、基本モードとも呼ぶ固有モード1番が、最大値を中心に有する回転対称分布を示すことに注意されたい。全ての固有モードを境界のソース/シンクによって励起することができるわけではない。図5に示す例では、固有モード2番、3番、4番、5番、7番、8番、9番、10番、13番、14番、18番、19番、22番、及び23番のみを境界から励起することができる。一部の実施形態により、投影対物系26のそれぞれの光学要素30の固有モードは、工場において決定され、投影対物系26と一著に納品時に顧客に提供される。
図6は、図5に示すそれぞれの固有モードに対する対角行列
内に含まれる定数τを示している。投影対物系内の所定のレンズに対して
及び
を決定した後に、式(32)から
を計算することにより、レンズ内の温度分布の時間挙動を容易に得ることができる。この計算のためには、レンズ要素50内にもたらされる流入熱分布のベクトル
を与えるだけでよい。式(32)は、結像工程に使用される投影対物系の単一のレンズ要素の温度分布解析関数を構成する。温度分布関数は、熱固有モード
を含む。流入熱分布
は、例えば、使用される各マスクに対して、個々のマスクのレイアウトから、及び上述したようにマスクを露光するのに使用される照明モードから別個に計算することができる。
投影対物系26の設計と、その内部に含まれる個別レンズ要素のレンズ加熱に対する感度とに基づいて、これらのレンズ要素の一部又は全ての温度分布を上述の方法を用いて計算することができる。従って、上記に詳述したように、
をそれぞれの流入熱分布
の関数として式(32)から得るためには、
及び
をそれぞれのレンズ要素に対して決定されなければならない。特定のマスクを露光する前に、計算に含まれるレンズ要素の各々に対して、流入熱分布
が決定される。マスクの露光中には、上述したように計算されたレンズ要素内の温度分布
から導出されるレンズ要素の光学特性の変化に基づいて、投影露光ツールの結像挙動が調節される。
この調節のために、上述したように、例えば、計算された温度分布
から、結像工程中にそれぞれのレンズ要素における面変形及び/又は屈折率変化に起因してもたらされる波面偏位又は特定のリソグラフィ結像誤差が計算され、投影露光ツール10の結像挙動に対する必要な調節が決定される。本発明による投影露光ツール10の結像挙動を操作する更に別の変形では、レンズの光学特性に影響を及ぼすために、1つ又はいくつかのレンズの装着部が、加熱及び/又は冷却される。この目的のために、上記に例示した数学ツールを用いて、光学特性における必要な変化を発生させるのに適する、レンズ装着部の温度分布が計算される。
波面偏位は、それぞれのゼルニケ係数を決定することによって計算することができる。この場合、各ゼルニケ係数は、異なる熱固有モードの関数である。一般的に低次の固有モードが大半を占める。その後に、計算された波面偏位又はそれぞれのリソグラフィ結像誤差を相殺するのに必要とされる投影露光ツール10の結像挙動の調節が決定される。
本出願で言及するゼルニケ係数は、多項式基底としてゼルニケ多項式が使用されるゼルニケによる多項式展開に関する。ゼルニケによる多項式展開は、当業者には、例えば、John Wiley & Sons,Inc.から出版され、Daniel Malacaraによって編集された教科書「光学工場試験(Optical shop testing)」、第2版(1992年)の第13章2.3から公知である。本出願では、波面偏位Φ(ρ,φ)のゼルニケによる多項式展開を次式のように定める。
ここで、ρ,φは、投影対物系26の瞳平面内の極座標であり、Zjは、いわゆるフリンジ分類におけるゼルニケ多項式であり、cjは、それぞれのゼルニケ多項式に関するゼルニケ係数である。ゼルニケ多項式のフリンジ分類は、例えば、H.Grossによって編集された「光学系のハンドブック(Handbook of Optical Systems)」、2005年、「Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA」、ヴァインハイム、ドイツの215ページの表20−2に例示されている。
上述したように、調節の目標は、可能な限り滑らかな波面を得ることとすることができる。それによって絶対波面誤差及び/又はその勾配が最小にされることになる。一般的に、この最小化は、いわゆるゼルニケ最適化を行うことによって実施される。ゼルニケ最適化では、決定された波面偏位の全てのゼルニケ係数を均等に最小にすることが目標である。本発明による実施形態において、ゼルニケ係数は、最適化問題の目的関数において、リソグラフィ用途に対するこれらの係数の重要度に依存して異なって重み付けされる。例えば、瞳にわたって一定である係数Z1は、像に対して無意味なものとすることができ、従って、最適化問題では0%で重み付けすることができる。
本発明による別の実施形態において、この調節は、最適化問題の目的関数において、視野点とも呼ぶ像平面内の少なくとも1つの場所を他の視野点と比較して異なって重み付けすることによって決定される。一般的に、この最適化では、像視野内の全ての点の「ゼルニケ分解」の形態にある波面収差が考えられている。
本発明のこの実施形態により、最適化問題の目的関数において、視野点が、その重要度に従って重み付けされる。ステップアンドスキャンシステムの形態にある投影露光ツール10の場合には、露光ツールの走査方向にある投影対物系26の像点の線全体が、マスク20上の1つの点の結像において寄与する。それによって対物系26の像点のそれぞれの寄与は、マスク20の非一定の照明分布に起因して大きさが異なる。
この場合、補正において対物系26の像点の重み付けのいくつかの変形が可能である。1つの変形により、対物系26の全ての像点が均等に重み付けされる(従来のフル視野補正)。別の変形により、対物系26の像点は、これらの像点の像への寄与に従って重み付けされる(重み付きフル視野補正)。更に別の変形により、マスク20上の1つの点の結像に寄与する波面の重み付き平均化が実施される。この重み付けは、像へのこれらの波面の寄与に従って実施される。次に、対物系26のスキャナ平均の1次元像視野が最適化される(スキャナ積分補正)。
本発明の更に別の実施形態により、投影露光ツール10の結像挙動を調節するのに第1のアクチュエータと第2のアクチュエータが使用され、これらのアクチュエータの各々は、第1の結像誤差を修正することを可能にし、第1のアクチュエータは、第2の結像誤差を修正することも可能にする。しかし、第1のアクチュエータの所定の操作に対して、第2の結像誤差の反応は、第1の結像誤差の反応よりも小さい。これらのアクチュエータは、第1のアクチュエータの所定の操作に対する第2の結像誤差の反応が所定の閾値よりも大きい場合に、第2の結像誤差を最小にするためにのみ操作される。
このようにして、最適化から1つの自由度が除外される。本方法を使用すると、いくつかの有利な効果を得ることができる。1つの有利な効果は、波面の小幅な改善に大きい移動が必要とされないことが保証されるので、アクチュエータの移動が経済的に使用されることである。更に、理論的に、大きい効果の小さい差によって達成することができる小幅な改善は、アクチュエータの厳密な調節に過度に依存することになるので、これらの改善が試みられないことが保証される。
結像挙動の調節は、マスクの露光の前に行うことができる。この場合、結像工程中に調節パラメータは一定に保たれる。温度分布
は時間の関数であることが既知であるので、結像工程中の各時点におけるレンズ要素の光学特性の変化が把握される。従って、この調節は、結像工程中に動的に行うことができる。一般的にレンズの加熱及び冷却の時定数は、数分から数十分程度である。従って、動的調節が、対応する時間枠にわたって、すなわち、特にウェーハ上のいくつかの視野の露光、いくつかのウェーハの露光、又は更に場合によって異なるマスクを使用するいくつかのロットのウェーハの露光に必要とされる時間範囲にわたって実施される場合は有利である。
上述したように、これらの調節は、可能な限り滑らかな波面を得るために行うことができる。以下に例示する別の実施形態により、調節の優先度を1つ又はいくつかの特定のリソグラフィ結像誤差の低減とすることができる。
この実施形態により、露光されるマスク20のレイアウトが入力デバイス42によって受け取られ、次に、処理デバイス44によって解析される。それによってマスク20のリソグラフィ像に関する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定される。そのようなリソグラフィ結像誤差の例は、マスク上で直交する向きを有する物体構造を異なる焦点面内に集束させる非点誤差とすることができる。そのようなリソグラフィ結像誤差の別の例は、所定のマスクレイアウトのリソグラフィ像に関する線形倍率誤差又は3次の歪曲誤差とすることができる。
所定のマスクレイアウトに対して1つ又はいくつかの関連するリソグラフィ結像誤差が識別された後に、識別された結像誤差を最小にするために、調節デバイス46を用いて投影対物系26の結像挙動が調節される。それによってこれらの誤差の最小化に、他の結像誤差の可能な低減、特に像平面28内で最適に滑らかな全体波面を得るという目標よりも大きい優先度が与えられる。波面偏位は、この調節がない場合のものよりも滑らかではなくなる可能性もある。その結果、リソグラフィ像に対して影響を有する他のリソグラフィ結像誤差、特に与えられたレイアウトに対して殆ど影響を持たないリソグラフィ結像誤差も、結果的に拡大される場合がある。
以下では、最小にされるリソグラフィ結像誤差が、マスク上で直交する向きを有する物体構造を異なる焦点面内に集束させる結像誤差である本発明による実施形態を示している。多くの場合に、マスク20上の物体構造の主な向きは、投影対物系26の通常は矩形である像視野の縁部と平行である(H構造及びV構造)。多くの場合に、特に小さいピッチを有するいわゆるコア構造の向きが第1の方向(1次構造方向又はコアとも呼ぶ)に定められ、それに対して、大きいピッチを有するいわゆる周辺構造の向きが垂直に定められる(2次構造方向又は周辺部とも呼ぶ)。二重極照明の場合には、極の向きは、コア構造の向きに関連付けられる。垂直のコア構造及び水平の周辺構造では、x二重極が使用され、それに対して水平のコア構造及び垂直の周辺構造では、y二重極が使用される。
各構造方向に対して、平均焦点面は、使用される全てのピッチ及び像平面28内の全ての視野点にわたる最小焦点面と最大焦点面との算術平均として定めることができる。照明設定、例えば、二重極の向きが特に良好に調節される最臨界物体構造の大きい焦点深度に起因して、最臨界物体構造のピッチ付近のピッチ区域を無視することができる。
全ての構造が焦点深度内にあることを保証するためには、全ての視野点、ピッチ、及び向きに対して最良焦点面が、像平面28付近の狭い範囲になければならない。従って、最適化される1つの重要なメトリックは、水平構造と垂直構造の間の平均焦点面の差、いわゆるH−V差である。別の重要なメトリックは、全てのピッチ及び視野点にわたる基板平面からのコア構造の焦点面の最大偏位であるコア構造の最良焦点シフトである。コア構造+周辺構造の最良焦点シフトは、全てのピッチ及び視野点にわたるコア構造及び周辺構造の焦点面の基板平面からの最大偏位である。
ゼルニケベースの補正の場合には、最適化の目標は、像平面内で可能な限り滑らかな波面を得ることである。従って、そのような最適化では、Z12、Z21、Z32(2葉)、又はZ17、Z28(4葉)のような一般的に高次の収差であるH−V差を誘起する波面収差を全て補正することができるわけではないので、一般的にH−V差はゼロではない。それとは対照的に、ここに解説する実施形態により、最適化の目標は、H−V差を最小にすることである。
本発明による1つの変形では、H−V焦点差は、リソグラフィ像の波面偏位において、上記に定めたゼルニケ多項式Z5の係数を操作することによって最小にされる。一般的に、水平構造の焦点位置は、垂直構造の焦点位置に対して、例えば、Z5、Z9、Z12、Z16、Z17のような偶数の方位角方向波形と水平方向及び垂直方向の鏡面対称性とを有するゼルニケ多項式の係数を操作することによってシフトさせることができる。しかし、Z5が、H−V焦点差を基本的に構造のピッチとは独立して操作することを可能にすることが見出されている。図7は、二重極照明の場合に所定の振幅を有するZ5波面偏位によってもたらされる焦点シフトのシミュレーションを示している。このシミュレーションは、垂直構造と水平構造の両方において、焦点シフトの構造のピッチに関連付けられた有意な変化がないことを示している。状況は、Z17においても同様である。従って、Z5に対して代替的又は追加的に、Z17を調節することができる。
視野にわたってZ5の係数を操作するために、調節デバイス46には、例えば、アルバレスマニピュレータが有利に装備される。アルバレスマニピュレータは、投影対物系26の瞳の近くに使用するべき適切な強度の非球面又は2次元マニピュレータを有する光学要素を横方向にシフトさせることによって波面収差を補正するように構成された光学要素である。更に、投影対物系26には、変形可能レンズを装備することができる。視野にわたって一定のZ5を調節するためには、投影対物系の瞳の近くに2葉変形可能レンズ要素が必要である。
以下では、最小にされるリソグラフィ結像誤差が、直交する向きを有する物体構造の像を像平面内で異なってシフトさせる誤差である本発明による実施形態を示している。そのような横方向パターンシフトの大きさは、一般的に構造のピッチ及び視野点に依存する。一般的にそのようなシフトは、例えば、Z2、Z3、Z7、Z8、Z10、Z11のようなx軸及びy軸に対して鏡面対称ではない奇数のゼルニケ多項式の係数による影響を受ける。しかし、Z2及びZ3が、垂直物体構造及び水平物体構造の横方向像シフトを構造のピッチとは独立して操作することを可能にすることが見出されている。図8及び図9は、それぞれにZ2及びZ3おける波面偏位によってもたらされるパターンシフトのシミュレーションを示している。このシミュレーションは、垂直構造と水平構造の両方において、生じるパターンシフトの構造のピッチに関連付けられた変化がないことを示している。
ある構造方向に対して、平均パターンシフトは、全てのピッチ及び視野点にわたる最大パターンシフトと最小パターンシフトの間の算術平均として定めることができる。全てのピッチ及び視野点にわたるパターンシフトの平均パターンシフトからの最大偏位として、オーバーレイ誤差を定めることができる。平均パターンシフトは、基板の横方向変位によって水平構造及び垂直構造とは独立して補償することができる。従って、この平均値からの偏位、すなわち、オーバーレイ誤差のみが、リソグラフィ像に関する。マスク上にある全ての使用サイズの全ての場所における物体構造が、基板上のこれらの構造の目標位置に結像されることを保証するためには、オーバーレイ誤差は、可能な限り小さくなければならない。
平均パターンシフトの補正の後に、ピッチ及び視野点への依存性が残る。この視野依存性は、1つの視野点における水平構造及び垂直構造に関する平均パターンシフト、<dy>pitch及び<dx>pitchそれぞれを構造の所定の向き及び所定の視野点における全ての使用ピッチにわたる最大パターンシフトと最小パターンシフトの間の算術平均として定めることによって部分的に補償することができ、視野点の座標x,yへのこれらのパラメータの依存性は、線形スケール誤差「MAG」及び3次の歪曲「D3」によって部分的に記述することができる。
上述したように、パターンシフトは、波面内のZ2部分及びZ3部分によってピッチとは独立して補償することができる。次式が適用される。
視野点依存形式にすると、(33)は次式になる。
ここで、NAは、投影対物系26の開口数である。
Z2部分及びZ3部分の対応する視野特性を用いて、倍率誤差(mag)及び3次の歪曲(d3)を調節又は補償することができる。
Z2/Z3の係数は、上述したようにNAを通じてdx/dyに関連付けられる。Z2/Z3のそれぞれの視野特性は、半径方向に対称な効果を有するマニピュレータ(例えば、電磁放射線13の波長を操作する)の線形組合せを用いて、又は基板24、マスク20、又は光学要素の光軸14の方向のシフトを用いて良好に補正することができる。
説明したツールを使用すると、視野にわたる波面偏位の定数部分と、倍率誤差及び3次の歪曲を排除することができる。ゼルニケベースの補正は、通常この目的には十分ではない。なぜならば、ゼルニケベースの補正では、ゼルニケ部分が互いに独立して低減され、従って、高次の奇数ゼルニケ誤差に起因するピッチ依存性の補正をZ2及びZ3を用いて達成することはできないからである。従って、例えば、MAG及びD3の測定の後の付加的な補正段階又はモデル予想に基づく付加的な補正段階として、MAG及びD3補正が実施されると有利である。
投影露光ツール10が、スキャナとも呼ぶステップアンドスキャン露光ツールとして構成される場合には、走査によって平均化されるパターンシフトを補正すべきである。走査がy方向に実施される場合には、倍率項(下式ではMAG)と3次の歪曲項(下式ではD3)とで構成される以下の項がもたらされる。
水平線は、スキャナスロット内の放射線分布にわたる平均を表している。歪曲の半径方向に対称な部分の隣には、像平面28の近くにあるマニピュレータ(例えば、変形可能レンズ又はアルバレスマニピュレータ)によって部分的に補正することができ、方位角方向の2つのうねりを有するアナモフィック項も現れる。
マスク20上にはある構造サイズ及び構造の向きしか存在しないので、マスクを像平面28に結像するときには、通常、投影対物系26の瞳の全ての区画が使用されるわけではない。ここでの「使用瞳区画」という用語は、所定のマスク20の露光中に照射される投影対物系26の開口とも呼ぶ瞳平面内の全ての点に関する放射光線を指す。従って、「使用瞳区画」は、以下では「関与領域(region of interest)」とも呼ぶ投影対物系26内で結像工程中に放射線13による通過を受ける部分を示している。本発明による補正方式では、瞳の実際に使用される部分に関する波面変形のみを最小にし、平滑化することが目標である。以下では、この方式を「関与領域」補正とも呼ぶ。
関与領域補正を行うために、最初に「関与領域」、すなわち、瞳内の放射線分布が決定される。「関与領域」は、例えば、マスクの全ての詳細内容、特にマスクレイアウトが把握されている場合に、マスクの回折スペクトルの計算によって決定することができる。使用されるマスクが十分に正確に把握されていない場合には、「関与領域」は、測定によって決定される。この目的のために、例えば、関連マスクが露光ツール10内に挿入された状態で、一度に1つの視野点に対して、像平面28内に到着する放射線の角度分布を決定することができる。「関与領域」は、少なくとも1つの視野点において散乱光によってもたらされるあるレベルよりも高い放射線を測定することができる瞳内のそういった点(又は、像平面28内の照射角度)によって定められる。
本発明は、本明細書の一部を形成し、かつ特許請求の範囲ではない以下に続く項の態様を含む。
第1項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる方法であって、結像される上記マスク上の上記物体構造のレイアウトを与え、物体構造をそれらの構造タイプに従って分類する段階と、上記物体構造の上記分類に基づいて、上記結像工程中にもたらされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を計算する段階と、上記物体構造を上記像平面内に結像するために上記投影露光ツールを使用し、上記結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を少なくとも部分的に補償するために、投影露光ツールの結像挙動が、光学特性の上記計算された変化に基づいて調節される段階とを含む。
第2項:上記マスクは、上記結像工程中に、マスクを照明する上記電磁放射線の角度分布を定める特定の照明モードにある放射線を用いて照明され、上記光学特性の上記変化の上記計算は、更に照明モードに基づいて行われる第1項に記載の方法。
第3項:上記投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の熱固有モードが、投影対物系と共に与えられ、上記光学特性の上記変化の上記計算は、熱固有モードに基づいて行われる第1項又は第2項に記載の方法。
第4項:上記投影対物系の上記光学特性の上記変化の上記計算は、上記分類された構造タイプの各々に関する投影対物系に入射する上記電磁放射線の角度分布の計算を含む第1項から第3項のいずれか1項に記載の方法。
第5項:上記マスクは、上記結像工程中に、いくつかの照明モードのうちの1つにある上記電磁放射線を用いて照明され、上記投影対物系に入射する該電磁放射線の上記角度分布は、上記分類された構造タイプの各々に対して、結像工程中に使用される照明モードを考慮して計算される第1項から第4項のいずれか1項に記載の方法。
第6項:上記物体構造の上記分類は、上記マスク上で異なる上記構造タイプによって覆われるそれぞれの区域のサイズの決定を含む第1項から第5項のいずれか1項に記載の方法。
第7項:上記投影対物系の上記光学特性の上記変化の上記計算は、投影対物系に入射する上記電磁放射線の全体角度分布の近似の決定を含み、全体角度分布は、上記分類された個々の構造タイプに対して、上記角度分布の重み付き和から計算され、角度分布は、それぞれの構造タイプによって覆われる上記マスク区域の上記決定されたサイズによってそれぞれ重み付けされる第6項に記載の方法。
第8項:上記物体構造の上記分類は、少なくとも2つのタイプの領域への上記マスクの分割を含み、第1のタイプの領域は、第2のタイプの領域に対して密に配列された物体構造を含み、第2のタイプの領域は、第1のタイプの領域に対して疎に配列された物体構造を含む第1項から第7項のいずれか1項に記載の方法。
第9項:上記投影対物系の上記光学特性の上記変化の上記計算において、上記第2のタイプの領域は、物体構造を含まない領域によって近似される第8項に記載の方法。
第10項:上記結像工程中の上記投影対物系の光学特性における上記計算される変化は、それぞれのレンズを照射する上記電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の加熱に起因する第1項から第9項のいずれか1項に記載の方法。
第11項:上記光学特性の上記変化に起因する上記像平面内の波面の偏位が計算され、計算された波面偏位を補償するために、上記投影露光ツールの上記結像挙動が調節される第1項から第10項のいずれか1項に記載の方法。
第12項:上記投影露光ツールの上記結像挙動は、少なくとも1つの光学要素の位置又は形状をアクチュエータを用いて操作することによって調節される第1項から第11項のいずれか1項に記載の方法。
第13項:上記結像挙動の上記調節は、リソグラフィ像の波面偏位のゼルニケ多項式の係数を最適化することによって実施され、ゼルニケ多項式の係数のうちの少なくとも1つは、最適化問題の目的関数において、他の係数と比較して異なって重み付けされる第12項に記載の方法。
第14項:上記結像挙動の上記調節は、上記リソグラフィ像の上記波面偏位の上記ゼルニケ多項式の上記係数を最適化することによって実施され、上記像平面内の少なくとも1つの場所は、上記最適化問題の上記目的関数において、像平面内の他の場所における係数と比較して異なって重み付けされる第12項又は第13項に記載の方法。
第15項:上記結像挙動の上記調節は、上記投影対物系を選択された瞳区画内で通過する放射線成分だけに対して上記像平面内の上記波面変形を低減することによって実施される第12項から第14項のいずれか1項に記載の方法。
第16項:上記投影露光ツールの上記結像挙動を調節するのに第1のアクチュエータと第2のアクチュエータが使用され、アクチュエータの各々は、第1の結像誤差を修正することを可能にし、第1のアクチュエータは、更に、第2の結像誤差を修正することも可能にし、第1のアクチュエータの所定の操作に対して、第2の結像誤差の反応は、第1の結像誤差の反応よりも小さく、アクチュエータは、第1のアクチュエータの所定の操作に対する第2の結像誤差の反応が所定の閾値よりも大きい場合にのみ第2の結像誤差を最小にするように操作される第12項から第15項のいずれか1項に記載の方法。
第17項:与えられたレイアウトにおける上記リソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定され、投影対物系の上記結像挙動が、上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を補正するために、少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、リソグラフィ結像誤差の低減が、リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度を有する第1項から第16項のいずれか1項に記載の方法。
第18項:上記投影露光ツールの上記結像挙動は、上記物体構造の上記結像を行う前に調節され、及び/又は上記結像工程中に動的に調節される第1項から第17項のいずれか1項に記載の方法。
第19項:上記結像中に、上記電磁放射線は、上記投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こし、結像工程中に電磁放射線によって光学要素内に誘起される熱分布が決定され、決定された誘起熱分布から、熱分布の解析関数であって光学要素の熱固有モードを含む温度分布関数を用いて、光学要素内に生じる温度分布が計算され、物体構造が上記像平面内に結像され、上記投影露光ツールの上記結像挙動が、計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて調節される第1項から第18項のいずれか1項に記載の方法。
第20項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる方法であって、上記結像工程中に上記電磁放射線によって上記光学要素内に誘起される熱分布を決定する段階と、上記決定された誘起熱分布から、熱分布の解析関数であって上記光学要素の熱固有モードを含む温度分布関数を用いて、光学要素内に生じる温度分布を計算する段階と、上記物体構造を上記像平面内に結像し、結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる上記光学要素の上記光学特性の上記変化を少なくとも部分的に補償するために、上記計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて、上記投影露光ツールの結像挙動が調節される段階とを含む。
第21項:上記光学要素の上記温度分布関数は、時間の関数として与えられる第20項に記載の方法。
第22項:上記温度分布関数は、固有値及び固有モードの解析を用いて上記光学要素の熱輸送方程式を解くことによって与えられる第20項又は第21項に記載の方法。
第23項:上記光学要素の上記熱輸送方程式では、上記光学要素の光軸の方向に温度が一定であると見なされる第22項に記載の方法。
第24項:上記マスク上の上記物体構造のレイアウト、及び特に上記結像工程中にマスクを照明する上記放射線の角度分布を定める照明モードが与えられ、物体構造のレイアウト、及び特に該照明モードから上記光学要素内に誘起される熱分布が決定される第20項から第23項のいずれか1項に記載の方法。
第25項:上記物体構造の上記レイアウトは、物体構造を物体構造の構造タイプと上記マスク上の物体構造の場所とに従って分類するのに使用され、上記光学要素内にもたらされる上記熱分布は、物体構造の分類に基づいて計算される第24項に記載の方法。
第26項:結像される上記マスク上の上記物体構造の上記レイアウト、及び特に上記照明モードが与えられ、物体構造が、物体構造の構造タイプに従って分類され、物体構造の分類に基づいて、上記結像工程中の上記投影対物系の上記光学特性の上記変化が計算され、結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、光学特性の計算された変化に基づいて、上記投影露光ツールの上記結像挙動が調節される第20項から第25項のいずれか1項に記載の方法。
第27項:上記投影対物系のいくつかの光学要素に対してそれぞれの温度分布が計算され、計算された温度分布から導出されるそれぞれの光学要素の上記光学特性の変化に基づいて、上記投影露光ツールの上記結像挙動が調節される第20項から第26項のいずれか1項に記載の方法。
第28項:結像される上記マスク上の上記物体構造のレイアウトが与えられ、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が決定され、投影対物系の上記結像挙動が、上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を補正するために、少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、投影対物系の結像挙動の調節は、リソグラフィ結像誤差の低減がリソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成されるように実施される第20項から第27項のいずれか1項に記載の方法。
第29項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させる方法であって、結像される上記マスク上の上記物体構造のレイアウトを与え、与えられたレイアウトに関するリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差を決定する段階と、上記物体構造を上記像平面内に結像し、投影対物系の結像挙動が、上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を補正するために、上記少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように調節され、投影対物系の結像挙動の調節が、リソグラフィ結像誤差の低減が上記リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成されるように実施される段階とを含む。
第30項:上記少なくとも1つの結像誤差は、上記与えられたレイアウトにおける上記リソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つの他の結像誤差が、上記調節の結果として拡大されることに関わらず、選択的に低減される第29項に記載の方法。
第31項:低減されるリソグラフィ結像誤差は、上記与えられたレイアウトにおける上記リソグラフィ像に対して、上記調節の結果として拡大される上記リソグラフィ結像誤差よりも大きい影響を有する第30項に記載の方法。
第32項:上記物体構造の上記与えられたレイアウトに関して、与えられたレイアウトにおける上記リソグラフィ像に対して最も大きい影響を有するという点で最も関連のあるリソグラフィ結像誤差を含むリソグラフィ結像誤差サブグループが決定され、上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を補正するために、リソグラフィ結像誤差サブグループの少なくとも1つの結像誤差が、サブグループ内に含まれない結像誤差が結果として拡大されることに関わらず選択的に低減されるように、投影対物系の上記結像挙動が調節される第29項から第31項のいずれか1項に記載の方法。
第33項:上記投影対物系の上記結像挙動は、得られる上記結像誤差の上記低減の範囲が、物体構造の像が影響を受けるという点で結像誤差が関連性を有する物体構造のピッチとは基本的に独立であるように調節される第29項から第32項のいずれか1項に記載の方法。
第34項:低減される結像誤差は、直交する向きを有する物体構造を異なる平均焦点面にフォーカスさせる第29項から第33項のいずれか1項に記載の方法。
第35項:上記投影対物系の上記結像挙動は、得られる直交する向きを有する物体構造の平均焦点面の間の距離が最小にされるように、上記リソグラフィ像の上記波面偏位におけるゼルニケ多項式Z5及び/又はZ6の係数を調節することによって調節される第34項に記載の方法。
第36項:低減される結像誤差は、上記投影対物系の線形倍率誤差及び/又は3次の歪曲誤差を含む第29項から第35項のいずれか1項に記載の方法。
第37項:最小化される結像誤差は、直交する向きを有する物体構造の像を上記像平面内で異なってシフトさせる第29項から第36項のいずれか1項に記載の方法。
第38項:上記投影対物系の上記結像挙動は、構造のピッチ平均倍率、3次の歪曲、及び/又は一定の横方向シフトが最小にされるように、上記リソグラフィ像の上記波面偏位における上記ゼルニケ多項式Z2及び/又はZ3の係数を調節することによって調節される第37項に記載の方法。
第39項:上記物体構造が、物体構造の構造タイプに従って分類され、物体構造の分類に基づいて、上記結像工程中の上記投影対物系の上記光学特性の上記変化が近似的に計算され、結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる投影対物系の光学特性の変化を少なくとも部分的に補償するために、光学特性の計算された変化に基づいて、上記投影露光ツールの上記結像挙動が調節される第29項から第38項のいずれか1項に記載の方法。
第40項:上記結像中に、上記電磁放射線は、上記投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こし、光学要素によって吸収される流入熱分布の解析関数であって光学要素の熱固有モードを含む単一光学要素の温度分布関数が与えられ、上記結像工程中に電磁放射線によって光学要素内に誘起される熱分布が決定され、光学要素内に生じる温度分布が、決定された誘起熱分布から温度分布関数を用いて計算され、上記物体構造が上記像平面内に結像され、計算された温度分布から導出された光学要素の光学特性の変化に基づいて、上記投影露光ツールの上記結像挙動が調節される第29項から第39項のいずれか1項に記載の方法。
第41項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための制御装置であって、制御装置は、結像される上記マスク上の上記物体構造のレイアウトを受け取るための入力デバイスと、上記物体構造をそれらの構造タイプに従って分類し、上記結像工程中にもたらされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を該物体構造の分類に基づいて近似的に計算するように構成された処理デバイスと、上記結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を少なくとも部分的に補償するために、上記投影露光ツールの結像挙動を光学特性の上記計算された変化に基づいて調節するように構成された調節デバイスとを含む。
第42項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の少なくとも1つの単一光学要素の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための制御装置であって、制御装置は、上記結像工程中に上記電磁放射線によって上記単一光学要素内に誘起される熱分布から光学要素内に生じる温度分布を計算し、生じる温度分布が、熱分布の解析関数であって光学要素の熱固有モードを含む単一光学要素の温度分布関数を用いて計算されるように構成された処理デバイスと、上記結像工程中に上記電磁放射線によって引き起こされる上記光学要素の上記光学特性の上記変化を少なくとも部分的に補償するために、上記計算された温度分布から導出される光学要素の光学特性の変化に基づいて、上記投影露光ツールの上記結像挙動を調節するように構成された調節デバイスとを含む。
第43項:電磁放射線を用いてマスク上の物体構造を像平面内に結像するために、結像中に、電磁放射線が、投影対物系の光学特性の変化を引き起こす投影対物系を有するマイクロリソグラフィのための投影露光ツールを作動させるための制御装置であって、制御装置は、結像される上記マスク上の上記物体構造のレイアウトを受け取るための入力デバイスと、上記与えられたレイアウトにおけるリソグラフィ像に対して影響を有する少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差を決定し、かつ上記電磁放射線によって引き起こされる上記投影対物系の上記光学特性の上記変化を少なくとも1つのリソグラフィ結像誤差が低減されるように補正するための調節設定値を計算するように構成され、リソグラフィ結像誤差の低減が、リソグラフィ像の全体波面偏位の平滑化よりも高い優先度で達成される処理デバイスと、上記計算された調節設定値に従って上記投影対物系の上記結像挙動を調節するように構成された調節デバイスとを含む。
第44項:第1項から第40項のいずれか1項に記載の方法を行うように構成された第41項から第43項のいずれか1項に記載の制御装置。
第45項:第41項から第44項のいずれか1項に記載の制御装置を含むマイクロリソグラフィのための投影露光ツール。
本発明を本発明を限定しない例示的な実施形態を用いて説明した。当業者は、特許請求の範囲に具陳する本発明及びその均等物の範囲から逸脱することなく変形及び修正を想起されるであろう。