<ロングタームエボリューション(LTE)>
WCDMA(登録商標)無線アクセス技術をベースとする第3世代の移動通信システム(3G)は、世界中で広範な規模で配備されつつある。この技術を機能強化または発展・進化させるうえでの最初のステップとして、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)と、エンハンストアップリンク(高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)とも称する)とが導入され、これにより、極めて競争力の高い無線アクセス技術が提供されている。
ユーザからのますます増大する需要に対応し、新しい無線アクセス技術に対する競争力を確保する目的で、3GPPは、ロングタームエボリューション(LTE)と称される新しい移動通信システムを導入した。LTEは、今後10年間にわたり、データおよびメディアの高速伝送ならびに大容量の音声サポートのためのキャリア需要を満たすように設計されている。高いビットレートを提供する能力は、LTEにおける重要な方策である。
LTE(ロングタームエボリューション)に関する作業項目(WI)の仕様は、E−UTRA(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access(UTRA):進化したUMTS地上無線アクセス)およびE−UTRAN(Evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network(UTRAN):進化したUMTS地上無線アクセスネットワーク)と称され、最終的にリリース8(LTEリリース8)として公開される。LTEシステムは、パケットベースの効率的な無線アクセスおよび無線アクセスネットワークであり、IPベースの全機能を低遅延かつ低コストで提供する。詳細なシステム要件は、[3]に記載されている。LTEでは、与えられたスペクトルを用いてフレキシブルなシステム配備を達成するために、スケーラブルな複数の送信帯域幅(例えば、1.4MHz、3.0MHz、5.0MHz、10.0MHz、15.0MHz、および20.0MHz)が指定されている。ダウンリンクには、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、かかる無線アクセスは、低いシンボルレートのため本質的にマルチパス干渉(MPI)を受けにくく、また、サイクリックプレフィックス(CP)を使用しており、さらに、さまざまな送信帯域幅の構成に対応可能だからである。アップリンクには、SC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access:シングルキャリア周波数分割多元接続)をベースとする無線アクセスが採用されている。なぜなら、ユーザ機器(UE)の送信出力が限られていることを考えれば、ピークデータレートを向上させるよりも広いカバレッジエリアを提供することが優先されるからである。リリース8のLTEでは、数多くの主要なパケット無線アクセス技術(例えば、MIMO(多入力多出力)チャネル伝送技術)が採用され、高効率の制御シグナリング構造が達成されている。
<LTEおよびE−UTRANのアーキテクチャ>
図1は、LTEの全体的なアーキテクチャを示しており、図2は、E−UTRANのアーキテクチャをより詳細に示している。
図1から理解できるように、LTEアーキテクチャでは、UTRANやGERAN(GSM EDGE無線アクセスネットワーク)など複数の異なる無線アクセスネットワーク(RAN)を相互接続することがサポートされ、これらのRANは、サービングGPRSサポートノード(SGSN)を介してEPCに接続される。3GPP移動通信ネットワークでは、移動端末110(ユーザ機器、UE、またはデバイスとも呼ばれる)は、UTRAN内のNodeB(NB)およびE−UTRANアクセス内の進化型NodeB(eNB)を介してアクセスネットワークにアタッチされる。エンティティNBおよびeNB 120は、他の移動通信ネットワークでは基地局として知られている。ユーザ機器のモビリティ(移動性)をサポートするため、2基のデータパケットゲートウェイ(サービングゲートウェイ(SGW)130およびパケットデータネットワークゲートウェイ160(PDN−GWまたは簡潔にPGW))が、EPS内に配置されている。E−UTRANアクセスを想定すると、エンティティeNB 120は、S1−Uインタフェース(「U」は「ユーザプレーン」を表す)を介して1つまたは複数のSGWに有線回線を通じて接続され、また、S1−MMMEインタフェースを介してモビリティ管理エンティティ140(MME)に有線回線を通じて接続される。SGSN 150およびMME 140は、サービングコアネットワーク(CN)ノードとも呼ばれる。
図2に示したように、E−UTRANは、進化型NodeB(eNB)120から構成され、eNB 120は、ユーザ機器(UE)に向かうE−UTRAのユーザプレーンプロトコル(PDCP/RLC/MAC/PHY)および制御プレーンプロトコル(RRC)を終端させる。eNB 120は、物理(PHY)層、媒体アクセス制御(MAC)層、無線リンク制御(RLC)層、およびパケットデータ制御プロトコル(PDCP)層(これらの層はユーザプレーンのヘッダ圧縮および暗号化の機能を含む)をホストする。さらに、eNB 120は、制御プレーンに対応する無線リソース制御(RRC)機能を提供する。eNB 120は、無線リソース管理、アドミッション制御、スケジューリング、交渉によるアップリンクQoS(サービス品質)の実施、セル情報のブロードキャスト、ユーザプレーンデータおよび制御プレーンデータの暗号化/復号化、ダウンリンク/アップリンクのユーザプレーンパケットヘッダの圧縮/復元など、多くの機能を実行する。
複数のeNBは、X2インタフェースによって互いに接続されている。さらにeNBは、S1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core:進化型パケットコア)にも接続されており、より具体的には、S1−MMEによってMME(Mobility Management Entity:移動管理エンティティ)に接続されており、S1−Uによってサービングゲートウェイ(S−GW:Serving Gateway)に接続されている。S1インタフェースは、MME/サービングゲートウェイとeNBとの間の多対多関係をサポートする。SGWは、ユーザデータパケットをルーティングして転送する一方で、eNodeB間のハンドオーバー時におけるユーザプレーンのモビリティアンカーとして機能し、さらに、LTEと別の3GPP技術との間のモビリティのためのアンカー(S4インタフェースを終端させ、2G/3GシステムとPDN GWとの間でトラフィックを中継する)として機能する。SGWは、アイドル状態のユーザ機器に対しては、ダウンリンクデータ経路を終端させ、そのユーザ機器へのダウンリンクデータが到着したときにページングをトリガーする。SGWは、ユーザ機器のコンテキスト(例えばIPベアラサービスのパラメータ、ネットワーク内部ルーティング情報)を管理および格納する。さらに、SGWは、合法傍受(lawful interception)の場合にユーザトラフィックの複製を実行する。
MME 140は、LTEのアクセスネットワークの主要な制御ノードである。MMEは、アイドルモードのユーザ機器の追跡およびページング手順(再送信を含む)の役割を担う。MMEは、ベアラのアクティブ化/非アクティブ化プロセスに関与し、さらには、最初のアタッチ時と、コアネットワーク(CN)ノードの再配置を伴うLTE内ハンドオーバー時とに、ユーザ機器のSGWを選択する役割も担う。MMEは、(HSSと対話することによって)ユーザを認証する役割を担う。非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングはMMEにおいて終端され、MMEは、一時的なIDを生成してユーザ機器に割り当てる役割も担う。MMEは、サービスプロバイダの公衆陸上移動網(PLMN:Public Land Mobile Network)に入るためのユーザ機器の認証をチェックし、ユーザ機器のローミング制約を実施する。MMEは、NASシグナリングの暗号化/完全性保護においてネットワーク内の終端点であり、セキュリティキーの管理を行う。シグナリングの合法傍受も、MMEによってサポートされる。さらに、MMEは、LTEのアクセスネットワークと2G/3Gのアクセスネットワークとの間のモビリティのための制御プレーン機能を提供し、SGSNからのS3インタフェースを終端させる。さらに、MMEは、ローミングするユーザ機器のためのホームHSSに向かうS6aインタフェースを終端させる。
<LTEにおけるコンポーネントキャリア構造>
図3および図4は、LTEにおけるコンポーネントキャリアの構造を示している。3GPP LTEシステムのダウンリンクコンポーネントキャリアは、いわゆるサブフレームにおける時間−周波数領域でさらに分割される。3GPP LTEで、各サブフレームは、図3に示すように2つのダウンリンクスロットに分割され、そこにおいて、第1のダウンリンクスロットは、第1のOFDMシンボル内の制御チャネル領域(PDCCH領域)を備える。各サブフレームは、時間領域内の所与の数のOFDMシンボルで構成され(3GPP LTE(リリース8)では12個または14個のOFDMシンボル)、各OFDMシンボルはコンポーネントキャリアの帯域幅全体に広がる。したがって、OFDMシンボルは、各々、図4にも示すように、NDL RB×NRB sc個のそれぞれのサブキャリアで送信されるいくつかの変調シンボルで構成される。
例えば3GPPロングタームエボリューション(LTE)において使用されるような、例えばOFDMを使用する、マルチキャリア通信システムを想定すると、スケジューラによって割り当てることができるリソースの最小単位は、1つの「リソースブロック」である。物理リソースブロックは、図4に例示したように、時間領域におけるNDL symb個の連続するOFDMシンボルおよび周波数領域におけるNRB sc個の連続するサブキャリアとして定義される。したがって3GPP LTE(リリース8)では、物理リソースブロックは、時間領域における1つのスロットおよび周波数領域における180kHzに対応する、NDL symb×NRB sc個のリソースエレメントからなる(ダウンリンクのリソースグリッドについてのさらなる詳細は、例えば非特許文献1の6.2節に記載されており、この文献は3GPPのウェブサイトで入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれている)。
リソースブロックまたはリソースブロックペアがスケジューリングされていても、その中の一部のリソースエレメントが使用されないことが起こりうるが、使用する術語表現を簡潔にする目的で、リソースブロックまたはリソースブロックペアの全体が割り当てられるものとする。スケジューラによって実際に割り当てられないリソースエレメントの例として、基準信号、ブロードキャスト信号、同期信号、さまざまな制御信号、またはチャネル送信に使用されるリソースエレメントが挙げられる。
ダウンリンクにおける物理リソースブロックの数は、セル内で設定されているダウンリンク送信の帯域幅によって決まり、現在LTEでは6〜110個の(物理)リソースブロックであるものと定義されている。LTEでは、帯域幅をHz単位(例:10MHz)またはリソースブロック単位で表すのが慣習的であり、例えばダウンリンクの場合、セルの帯域幅を例えば10MHzと表すことができる。
チャネルリソースは、図4に例示的に示したように「リソースブロック」として定義することができ、図4では、例えば3GPPのLTE作業項目において検討されているようにOFDMを採用するマルチキャリア通信システムを想定する。より一般的には、リソースブロックは、スケジューラによって割り当てることのできる、モバイル通信の無線インタフェースにおける最小リソース単位を表すものと想定することができる。リソースブロックの次元は、時間(例えば、時間分割多重方式(TDM)の場合のタイムスロット、サブフレーム、フレームなど)、周波数(例えば、周波数分割多重方式(FDM)の場合のサブバンド、キャリア周波数など)、符号(例えば、符号分割多重方式(CDM)の場合の拡散符号)、アンテナ(例えば、多入力多出力(MIMO))、その他の任意の組合せとすることができ、モバイル通信システムで用いられるアクセス方式に依存する。
データは、仮想リソースブロックの対によって、物理リソースブロックにマッピングされる。一対の仮想リソースブロックは、一対の物理リソースブロックにマッピングされる。LTEのダウンリンクにおける物理リソースブロックへのマッピング方式に従って、2つのタイプの仮想リソースブロックが定義されており、すなわち局所仮想リソースブロック(LVRB)と分散仮想リソースブロック(DVRB)である。局所VRBを使用する局所送信モードにおいては、eNBは、どのリソースブロックをどれくらい使用するかについて完全に制御し、通常では、結果としてスペクトル効率が高くなるリソースブロックを選択するときにこの制御を使用する。ほとんどの移動通信システムでは、この結果、隣接する物理リソースブロックまたは隣接する物理リソースブロックの複数個のまとまりが単一のユーザ機器への送信に使用されることになり、なぜなら無線チャネルは周波数領域においてコヒーレントであるためであり、すなわち、1つの物理リソースブロックで高いスペクトル効率が得られる場合、それに隣接する物理リソースブロックでも同様に高いスペクトル効率が得られる可能性が高い。分散VRBを使用する分散送信モードにおいては、充分に高いスペクトル効率をもたらす少なくともいくつかの物理リソースブロックが使用されることで周波数ダイバーシチが得られるように、同じユーザ機器へのデータを伝える物理リソースブロックを周波数帯にわたり分散させる。
3GPP LTEリリース8においては、ダウンリンク制御シグナリングは、基本的に次の3つの物理チャネルによって伝えられる。
サブフレーム内の制御シグナリングに使用されるOFDMシンボルの数(すなわち制御チャネル領域の大きさ)を示す物理制御フォーマットインジケータチャネル(PCFICH)
アップリンクデータ送信に関連付けられるダウンリンクACK/NACKを伝える物理ハイブリッドARQインジケータチャネル(PHICH)
ダウンリンクスケジューリング割当ておよびアップリンクスケジューリング割当てを伝える物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)
PCFICHは、ダウンリンクサブフレームの制御シグナリング領域内の既知の位置から、事前に定義される既知の変調・符号化方式を使用して送信される。ユーザ機器は、サブフレーム内の制御シグナリング領域の大きさに関する情報(例えばOFDMシンボルの数)を得る目的で、PCFICHを復号する。ユーザ機器(UE)がPCFICHを復号することができない、または誤ったPCFICH値を得た場合、制御シグナリング領域に含まれるL1/L2制御シグナリング(PDCCH)を正しく復号することができず、結果として、PDCCHに含まれるすべてのリソース割当てが失われうる。
PDCCHは、制御情報(例えば、ダウンリンクデータ送信またはアップリンクデータ送信のためのリソースを割り当てるスケジューリンググラントなど)を伝える。ユーザ機器へのPDCCHは、サブフレーム内のPCFICHに従って、最初の1個、2個、または3個のOFDMシンボルで送信される。
物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)は、ユーザデータを伝えるために使用される。PDSCHは、1つのサブフレーム内のPDCCHに続く残りのOFDMシンボルにマッピングされる。1基のユーザ機器に割り当てられるPDSCHリソースは、各サブフレームのリソースブロックを単位とする。
物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)は、ユーザデータを伝える。物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)は、アップリンク方向のシグナリング(例えば、スケジューリング要求、PDSCH上のデータパケットに応えてのHARQ肯定応答(ACK)および否定応答(NACK)、チャネル状態情報(CSI)など)を伝える。
「コンポーネントキャリア」という用語は、いくつかのリソースブロックの組合せを示す。LTEの将来のリリースでは、「コンポーネントキャリア」という用語はもはや使用されず、その代わりに、その専門用語はダウンリンクおよびオプションでアップリンクリソースの組合せを示す「セル」に変更される。ダウンリンクリソースのキャリア周波数とアップリンクリソースのキャリア周波数との間のリンク付けは、ダウンリンクリソースで送信されるシステム情報において指示される。
<LTEのさらなる発展(LTE−A)>
世界無線通信会議2007(WRC−07)において、IMT−Advancedの周波数スペクトルが決定された。IMT−Advancedのための全体的な周波数スペクトルは決定されたが、実際に利用可能な周波数帯域幅は、地域や国によって異なる。しかしながら、利用可能な周波数スペクトルのアウトラインの決定に続いて、3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)において無線インタフェースの標準化が開始された。3GPPでは、3GPP TSG RAN #39会合において、「Further Advancements for E-UTRA (LTE-Advanced)」に関する検討項目の記述が承認された。この検討項目は、E−UTRAを進化・発展させるうえで(例えば、IMT−Advancedの要求条件を満たすために)考慮すべき技術要素をカバーしている。以下では、LTE−Aを対象として現在検討されている2つの重要な技術要素について説明する。
<より広い帯域幅をサポートするためのLTE−Aにおけるキャリアアグリゲーション>
LTEアドバンストシステムがサポートすることができる帯域幅は100MHzであり、一方、LTEシステムは20MHzのみをサポートすることができる。今日、無線スペクトルの欠如がワイヤレスネットワークの開発のボトルネックになり、結果として、LTEアドバンストシステムのために十分広いスペクトル帯域を見つけることは困難である。したがって、より広い無線スペクトル帯域を獲得するための方法を見つけることは急務であり、ここにおいて、可能性のある答えは、キャリアアグリゲーション機能である。
キャリアアグリゲーションでは、最大で100MHzの広い送信帯域幅をサポートする目的で、2つ以上のコンポーネントキャリア(CC)がアグリゲートされる。LTE−Advancedシステムでは、LTEシステムにおけるいくつかのセルが、より広い1つのチャネルにアグリゲートされ、このチャネルは、たとえLTEにおけるこれらのセルが異なる周波数帯域である場合でも100MHzに対して十分に広い。ユーザ機器は、次のように自身の能力に応じて1つまたは複数のコンポーネントキャリア(CC)を同時に受信または送信することができる。
− キャリアアグリゲーション(CA)のための受信能力もしくは送信能力またはその両方を備えた、リリース10のユーザ機器は、複数のサービングセルに対応する複数のコンポーネントキャリア(CC)上で同時に受信する、もしくは送信する、またはその両方を行うことができる。
− LTEリリース8/9のユーザ機器は、1つのみのサービングセルに対応する1つのコンポーネントキャリア(CC)上で受信し、1つのコンポーネントキャリア(CC)上で送信することができる。
キャリアアグリゲーション(CA)は、連続するコンポーネントキャリアおよび不連続なコンポーネントキャリアの両方についてサポートされ、各コンポーネントキャリアは、リリース8/9の計算方式(numerology)を使用するとき周波数領域における最大110個のリソースブロックに制限される。
同じeNodeB(基地局)から送信される、場合によってはアップリンクとダウンリンクとで異なる帯域幅の異なる数のコンポーネントキャリアがアグリゲート(結合)されるように、ユーザ機器を設定することが可能である。設定することのできるダウンリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のダウンリンクのアグリゲーション能力に依存する。逆に、設定することのできるアップリンクコンポーネントキャリアの数は、ユーザ機器のアップリンクのアグリゲーション能力に依存する。ダウンリンクコンポーネントキャリアよりもアップリンクコンポーネントキャリアが多くなるように移動端末を構成することはできない。
一般的なTDD配備では、コンポーネントキャリアの数および各コンポーネントキャリアの帯域幅は、アップリンクとダウンリンクとで同じである。同じeNodeBから送信されるコンポーネントキャリアは、必ずしも同じカバレッジを提供する必要はない。
コンポーネントキャリアは、LTEリリース8/9互換である。しかしながら、リリース8/9のユーザ機器がコンポーネントキャリアにキャンプオンすることを回避するため、既存のメカニズム(例:バーリング)を使用することができる。
連続的にアグリゲートされるコンポーネントキャリアの中心周波数の間隔は、300kHzの倍数である。これは、3GPP LTE(リリース8/9)の100kHzの周波数ラスターとの互換性を保つと同時に、15kHz間隔のサブキャリアの直交性を維持するためである。アグリゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネントキャリアの間に少数の使用されないサブキャリアを挿入することによって、n×300kHzの間隔あけを容易にすることができる。
複数のキャリアをアグリゲートする影響は、MAC層に及ぶのみである。MAC層には、アップリンクおよびダウンリンクの両方において、アグリゲートされるコンポーネントキャリアごとに1つのHARQエンティティが要求される。コンポーネントキャリアあたりのトランスポートブロックは最大1個である(アップリンクにおけるSU−MIMOを使用しない場合)。トランスポートブロックおよびそのHARQ再送信(発生時)は、同じコンポーネントキャリアにマッピングする必要がある。
図5および図6は、それぞれ、ダウンリンクおよびアップリンクにおける、キャリアアグリゲーションが設定された第2層構造を示している。MACと第1層との間にトランスポートチャネルが存在し、MACとRLCとの間に論理チャネルが存在する。
キャリアアグリゲーション(CA)が設定されているとき、ユーザ機器はネットワークとの1つのRRC接続を有するのみである。RRC接続の確立/再確立/ハンドオーバー時、1つのサービングセルが、非アクセス層モビリティ情報(例:トラッキングエリア識別子(TAI))を提供し、RRC接続の再確立/ハンドオーバー時、1つのサービングセルがセキュリティ入力を提供する。このセルは、プライマリセル(PCell)と称される。PCellに対応するキャリアは、ダウンリンクではダウンリンクプライマリコンポーネントキャリア(DL PCC)であり、アップリンクではアップリンクプライマリコンポーネントキャリア(UL PCC)である。
ユーザ機器の能力に応じて、セカンダリセル(SCell)を、PCellとの組合せにおいてサービングセルのセットを形成するように設定することができる。SCellに対応するキャリアは、ダウンリンクではダウンリンクセカンダリコンポーネントキャリア(DL SCC)であり、アップリンクではアップリンクセカンダリコンポーネントキャリア(UL SCC)である。
したがって、ユーザ機器に対して設定されるサービングセルのセットは、つねに、1つのPCellと1つまたは複数のSCellとからなる。
− 各SCellごとに、ダウンリンクリソースに加えてアップリンクリソースのユーザ機器による使用を設定することができる。したがって、設定されるDL SCCの数はUL SCCの数よりもつねに大きいかまたは等しく、アップリンクリソースのみを使用するようにSCellを設定することはできない。
− ユーザ機器の観点からは、各アップリンクリソースは1つのサービングセルにのみ属する。
− 設定することができるサービングセルの数は、UEのアグリゲーション能力によって決まる。
− PCellは、ハンドオーバー手順(すなわちセキュリティキー変更およびRACH手順)によってのみ変更することができる。
− PCellは、PUCCHの送信に使用される。
− PCellは、SCellとは異なり非アクティブ化することができない。
− PCellにおいてレイリーフェージング(RLF)が発生すると再確立がトリガーされるが、SCellにレイリーフェージング(RLF)が発生しても再確立はトリガーされない。
− 非アクセス層(NAS)情報はダウンリンクPCellから取得される。
コンポーネントキャリアの設定および再設定は、RRCによって行うことができる。アクティブ化および非アクティブ化は、MAC制御要素を介して行われる。LTE内ハンドオーバー時、RRCによって、ターゲットセルで使用するためのSCellを追加、削除、または再設定することもできる。SCellの再設定、追加、および削除は、RRCによって実行することができる。LTE内ハンドオーバー時、さらに、移動先セルにおけるPCellと一緒に使用するSCellの追加、削除、または再設定を、RRCによって実行することができる。新しいSCellを追加するときには、そのSCellの必要なすべてのシステム情報を送るために専用のRRCシグナリングが使用され(接続モード時)、ユーザ機器は、ブロードキャストされるシステム情報をSCellから直接取得する必要がない。
キャリアアグリゲーションを使用するようにユーザ機器が構成されているとき、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアの一対がつねにアクティブである。この対のうちのダウンリンクコンポーネントキャリアは、「ダウンリンクアンカーキャリア」と称されることもある。同じことはアップリンクについてもあてはまる。
キャリアアグリゲーションが設定されているとき、同時に複数のコンポーネントキャリアについてユーザ機器をスケジューリングすることができるが、一度に行うことのできるランダムアクセス手順は最大で1つである。クロスキャリアスケジューリング(cross-carrier scheduling)では、コンポーネントキャリアのPDCCHによって別のコンポーネントキャリアのリソースをスケジューリングすることができる。この目的のため、それぞれのDCIフォーマットにコンポーネントキャリア識別フィールド(「CIF」と称する)が導入されている。
クロスキャリアスケジューリングが行われていないときには、アップリンクコンポーネントキャリアとダウンリンクコンポーネントキャリアとをリンクすることによって、グラントが適用されるアップリンクコンポーネントキャリアを識別することができる。アップリンクコンポーネントキャリアへのダウンリンクコンポーネントキャリアのリンクは、必ずしも1対1である必要はない。言い換えれば、同じアップリンクコンポーネントキャリアに複数のダウンリンクコンポーネントキャリアをリンクすることができる。一方で、1つのダウンリンクコンポーネントキャリアは、1つのアップリンクコンポーネントキャリアのみにリンクすることができる。
<LTEにおけるRRC状態>
以下では、LTEにおける2つの主たる状態である「RRC_IDLE」および「RRC_CONNECTED」を中心に説明する。
RRC_IDLEモードでは、無線は有効ではないが、ネットワークによってIDが割り当てられて追跡されている。より具体的には、RRC_IDLEモードの移動端末は、セルの選択および再選択を実行する(言い換えれば、キャンプオンするセルを決定する)。セルの(再)選択プロセスでは、適用可能な無線アクセス技術(RAT)それぞれの適用可能な各周波数の優先順位、無線リンクの品質、およびセルのステータス(すなわちセルが禁止または予約されているか)が考慮される。RRC_IDLEモードの移動端末は、ページングチャネルを監視して着呼を検出し、さらにシステム情報を取得する。システム情報は、主として、ネットワーク(E−UTRAN)がセルの(再)選択プロセスを制御することのできるパラメータからなる。RRCは、RRC_IDLEモードの移動端末に適用される制御シグナリング、すなわちページングおよびシステム情報を指定する。RRC_IDLEモードにおける移動端末の挙動については、非特許文献2(参照によって本明細書に組み込まれている)の例えば8.4.2節に規定されている。
RRC_CONNECTED状態では、移動端末は、eNodeBとのアクティブな無線動作を有する。E−UTRANでは、共有データチャネルを介して(ユニキャスト)データを伝送することができるように、移動端末に無線リソースが割り当てられる。この動作をサポートするため、移動端末は、時間および周波数の共有送信リソースの動的な割当てを示すために使用される対応する制御チャネルを監視する。移動端末は、E−UTRANが移動端末にとって最適なセルを選択できるように、自身のバッファ状態およびダウンリンクチャネル品質の報告と、隣接セルの測定情報とを、ネットワークに提供する。これらの測定報告には、別の周波数や無線アクセス技術(RAT)を使用するセルが含まれる。さらに、ユーザ機器は、送信チャネルを使用するために要求される情報から主として構成されるシステム情報を受信する。RRC_CONNECTED状態のユーザ機器は、自身のバッテリの寿命を延ばすため、不連続受信(DRX)サイクルを使用するように構成することができる。RRCとは、RRC_CONNECTED状態のユーザ機器の挙動をE−UTRANが制御するためのプロトコルである。
<LTEにおけるアップリンクのアクセス方式>
アップリンク送信では、カバレッジを最大にするため、ユーザ端末による電力効率の高い送信が必要である。E−UTRAのアップリンク送信方式としては、シングルキャリア伝送と、動的な帯域幅割当てのFDMAとを組み合わせた方式が選択されている。シングルキャリア伝送が選択された主たる理由は、マルチキャリア信号(OFDMA)と比較して、ピーク対平均電力比(PAPR)が低く、これに対応して電力増幅器の効率が改善され、カバレッジの向上が見込まれるためである(与えられる端末ピーク電力に対してデータレートが高い)。各時間間隔において、NodeBは、ユーザデータを送信するための固有の時間/周波数リソースをユーザに割り当て、これによってセル内の直交性が確保される。アップリンクにおける直交多元接続によって、セル内干渉が排除されることでスペクトル効率が高まる。マルチパス伝搬に起因する干渉については、送信信号にサイクリックプレフィックスを挿入することにより基地局(NodeB)において対処する。
データを送信するために使用される基本的な物理リソースは、1つの時間間隔(例えば0.5msのサブフレーム)にわたるサイズBWgrantの周波数リソースから構成される(符号化された情報ビットはこのリソースにマッピングされる)。なお、サブフレーム(送信時間間隔(TTI)とも称する)は、ユーザデータを送信するための最小の時間間隔である。しかしながら、サブフレームを連結することにより、1TTIよりも長い時間にわたる周波数リソースBWgrantをユーザに割り当てることも可能である。
<LTEにおけるアップリンクのスケジューリング方式>
アップリンクの方式として、スケジューリング制御式の(すなわちeNBによって制御される)アクセスと、コンテンション(競合)ベースのアクセスの両方を使用することができる。
スケジューリング制御式アクセスの場合、アップリンクデータを送信するための特定の時間長の特定の周波数リソース(すなわち時間/周波数リソース)が、ユーザ機器に割り当てられる。しかしながら、コンテンションベースのアクセス用に、いくらかの時間/周波数リソースを割り当てることができる。コンテンションベースの時間/周波数リソースの範囲内では、ユーザ機器は、最初にスケジューリングされることなく送信することができる。ユーザ機器がコンテンションベースのアクセスを行う1つのシナリオは、例えばランダムアクセスであり、すなわち、ユーザ機器があるセルへの最初のアクセスを行うとき、またはアップリンクリソースを要求するために最初のアクセスを行うときである。
スケジューリング制御式アクセスの場合、NodeBのスケジューラが、アップリンクデータ送信のための固有の周波数/時間リソースをユーザに割り当てる。より具体的には、スケジューラは以下を決定する。
− 送信を許可する(1つまたは複数の)ユーザ機器
− 物理チャネルリソース(周波数)
− 移動端末が送信に使用するべきトランスポートフォーマット(変調・符号化方式(MCS))
割当て情報は、第1層/第2層制御チャネルで送られるスケジューリンググラントを介してユーザ機器にシグナリングされる。以下では、説明を簡潔にするため、このチャネルをアップリンクグラントチャネルと称する。スケジューリンググラントメッセージには、周波数帯域のうちユーザ機器による使用を許可する部分と、グラントの有効期間と、これから行うアップリンク送信においてユーザ機器が使用しなければならないトランスポートフォーマットの情報が、少なくとも含まれる。最も短い有効期間は1サブフレームである。グラントメッセージには、選択される方式に応じて追加の情報も含めることができる。アップリンク共有チャネル(UL−SCH)で送信する権利を許可するグラントとしては、「各ユーザ機器に対する」グラントのみが使用される(すなわち、「各ユーザ機器における各無線ベアラに対する」グラントは存在しない)。したがってユーザ機器は、割り当てられたリソースを何らかの規則に従って無線ベアラの間で配分する必要がある(以降の節の1つにおいて詳しく説明する)。トランスポートフォーマットは、HSUPAの場合とは異なり、ユーザ機器側では選択しない。eNBが、何らかの情報(例えば、報告されたスケジューリング情報およびQoS情報)に基づいてトランスポートフォーマットを決定し、ユーザ機器は、選択されたトランスポートフォーマットに従わなければならない。
<アップリンクスケジューリングにおけるバッファ状態報告/スケジューリング要求の手順>
スケジューリングの通常のモードは、動的なスケジューリングであり、ダウンリンク送信リソースを割り当てるダウンリンク割当てメッセージと、アップリンク送信リソースを割り当てるアップリンクグラントメッセージとによる。これらのメッセージが有効であるのは、通常では特定の1つのサブフレームの間である。これらのメッセージは、すでに前述したように、ユーザ機器のC−RNTIを使用してPDCCHで送信される。動的なスケジューリングは、トラフィックがバースト性であり速度が動的であるサービスタイプ(TCPなど)において効率的である。
動的なスケジューリングに加えて、パーシステントスケジューリング(persistent scheduling)が定義されており、このスケジューリング方式では、無線リソースを半静的に設定して、1サブフレームより長い期間にわたりユーザ機器に割り当てることができるため、各サブフレームごとにPDCCHを通じた特定のダウンリンク割当てメッセージやアップリンクグラントメッセージの必要性が回避される。パーシステントスケジューリングは、データパケットが小さく周期的でありサイズがほぼ一定であるVoIPなどのサービスに有用である。動的なスケジューリングの場合と比較してPDCCHのオーバーヘッドが大幅に減少する。
eNodeBがアップリンクリソースを割り当てること(すなわち[2]に詳細に説明されているアップリンクスケジューリング)を支援する目的で、ユーザ機器からeNBへのバッファ状態報告(BSR)が使用される。eNBのスケジューラは、ダウンリンクの場合、各ユーザ機器に配信されるデータの量を当然ながら認識している。しかしながらアップリンク方向の場合、スケジューリングの決定はeNBにおいて行われるが、データのバッファはユーザ機器内にあるため、UL−SCHを通じて送信する必要のあるデータ量を示す目的で、ユーザ機器からeNBにバッファ状態報告(BSR)を送らなければならない。
LTEにおいては、基本的に2種類のバッファ状態報告(BSR)が定義されており、ロングBSRとショートBSRである。ユーザ機器がどちらのバッファ状態報告(BSR)を送信するかは、トランスポートブロックにおける利用可能な送信リソースと、空ではないバッファを有する論理チャネルのグループの数と、ユーザ機器において特定のイベントがトリガーされるかによって決まる。ロングBSRは、4つの論理チャネルグループのデータ量を報告するのに対して、ショートBSRは、最高位の論理チャネルグループのみについて、バッファに格納されているデータ量を示す。論理チャネルグループのコンセプトを導入する理由は、ユーザ機器に5つ以上の論理チャネルが設定されている場合、個々の論理チャネルそれぞれのバッファ状態を報告するとシグナリングオーバーヘッドが大きくなりすぎるためである。したがってeNBは、各論理チャネルを論理チャネルグループに割り当てる。好ましくは、QoS要件が同じかまたは類似する論理チャネルが同じ論理チャネルグループに割り当てられるべきである。
ユーザ機器によってショートBSRまたはロングBSRのどちらが送信されるかは、トランスポートブロックにおける利用可能な送信リソースと、空ではないバッファを有する論理チャネルのグループの数と、ユーザ機器において特定のイベントがトリガーされるかによって決まる。ロングBSRは、4つの論理チャネルグループのデータ量を報告するのに対して、ショートBSRは、最高位の論理チャネルグループのみについて、バッファに格納されているデータ量を示す。
論理チャネルグループのコンセプトを導入する理由は、ユーザ機器に5つ以上の論理チャネルが設定されている場合、個々の論理チャネルそれぞれのバッファ状態を報告するとシグナリングオーバーヘッドが大きくなりすぎるためである。したがってeNBは、各論理チャネルを論理チャネルグループに割り当てる。好ましくは、QoS要件が同じかまたは類似する論理チャネルが同じ論理チャネルグループに割り当てられるべきである。
バッファ状態報告(BSR)は、例えば次のイベントの場合にトリガーすることができる。
− バッファが空ではない論理チャネルよりも高い優先順位を有する論理チャネルのデータが到着するとき
− いずれかの論理チャネルにおいて、それまでは送信するデータが存在しなかった状態から、データが利用可能となるとき
− 再送信BSRタイマーが切れるとき
− 周期的なBSR報告のタイミングになるとき(すなわちperiodicBSRタイマーが切れるとき)
− BSRを格納できる余分なスペースがトランスポートブロック内に存在するとき
送信の失敗に対する堅牢性を高める目的で、LTEにはバッファ状態報告(BSR)の再送信メカニズムが定義されている。アップリンクグラントが受信されるとき、再送信BSRタイマーが起動または再起動される。このタイマーが切れる前にアップリンクグラントが受信されない場合、ユーザ機器はもう一度バッファ状態報告をトリガーする。
バッファ状態報告(BSR)がトリガーされたとき、バッファ状態報告をトランスポートブロック(TB)に含めるためのアップリンクリソースがユーザ機器に割り当てられていない場合、ユーザ機器は、PUCCH(物理アップリンク制御チャネル)(設定されている場合)でスケジューリング要求(SR)を送る。設定されているPUCCHに専用スケジューリング要求(D−SR)リソースが存在しない場合、ユーザ機器は、バッファ状態報告(BSR)情報をeNBに送信するためのUL−SCHリソースを要求する目的でランダムアクセス手順(RACH手順)を開始する。ただし周期的なバッファ状態報告(BSR)を送信する場合、ユーザ機器はスケジューリング要求(SR)の送信をトリガーしないことに留意されたい。
さらには、特定のスケジューリングモードにおいてスケジューリング要求(SR)送信の機能強化が導入されており、送信グラントのための第1層/第2層制御シグナリングのオーバーヘッドを節約する目的で、リソースが所定の周期で永続的に(パーシステントに)割り当てられる(セミパーシステントスケジューリング(SPS)と称される)。セミパーシステントスケジューリングの対象として主として考慮されるサービスの一例はVoIPである。トークスパート(talk-spurt)の間、コーデックにおいて20msごとにVoIPパケットが生成される。したがって、eNodeBは、アップリンクリソースまたはダウンリンクリソースを20msごとに永続的に(パーシステントに)割り当てることができ、これらのリソースを使用してVoIPパケットを送信することができる。一般的なセミパーシステントスケジューリング(SPS)は、トラフィック挙動を予想できる(すなわちビットレートが一定であり、パケットの到着タイミングが周期的である)サービスにおいて恩恵がある。アップリンク方向にセミパーシステントスケジューリング(SPS)が設定される場合、eNodeBは、設定されている特定の論理チャネルについてスケジューリング要求(SR)のトリガリング/送信をオフにすることができ、すなわち、これら特定の設定されている論理チャネルにデータが到着することによってBSRがトリガーされても、スケジューリング要求(SR)がトリガーされない。この種類の機能強化の理由として、セミパーシステントに(半永続的に)割り当てられたリソースを使用する論理チャネル(VoIPパケットを伝える論理チャネル)のためのスケジューリング要求(SR)を送ることは、eNBのスケジューリングにおいて意味がなく、したがって回避すべきである。
バッファ状態報告(BSR)手順(特にバッファ状態報告手順のトリガー)に関するさらなる詳細については、非特許文献3(参照によって本明細書に組み込まれている)の5.4.5章に説明されている。
<論理チャネルの優先順位付け>
ユーザ機器は、複数の無線ベアラ間でのアップリンクリソースの共有を管理するアップリンク伝送速度制御機能を有する。以下では、このアップリンク伝送速度制御機能を論理チャネル優先順位付け手順とも称する。論理チャネル優先順位付け(LCP)手順は、新しい送信が行われるとき、すなわちトランスポートブロックを生成する必要があるときに、適用される。容量を割り当てるための提案されている1つの方式では、各ベアラが、それぞれの最小限のデータレートに相当する割当てを受け取るまで、優先順位の順序で各ベアラにリソースを割り当て、さらなる容量があれば、それを例えば優先順位の順序でベアラに割り当てる。
論理チャネル優先順位付け(LCP)手順についての後からの説明から明らかになるように、ユーザ機器に属する論理チャネル優先順位付け(LCP)手順は、IPの世界で周知であるトークンバケットモデルに基づいて実施される。トークンバケットモデルの基本的な機能は以下のとおりである。ある量のデータを送信する権利を表すトークンが、周期的に特定の速度でバケットに追加される。ユーザ機器にリソースが割り当てられると、バケットの中のトークンの数によって表される量までデータを送信することが許可される。ユーザ機器は、データを送信するとき、送信されるデータ量に相当する数のトークンを削除する。バケットが満杯である場合、それ以上のトークンは破棄される。トークンの追加に関して、このプロセスの反復周期はTTI毎であるものと想定できるが、トークンが1秒ごとに追加されるように、この周期を長くすることも容易である。基本的には、1msごとにトークンをバケットに追加する代わりに、1秒ごとに1000個のトークンを追加することもできる。以下では、リリース8において使用されている論理チャネル優先順位付け(LCP)手順について説明する。論理チャネル優先順位付け(LCP)手順のさらなる詳細については、非特許文献4(参照によって本明細書に組み込まれている)の5.4.3.1章に説明されている。
RRCは、アップリンクデータのスケジューリングを、各論理チャネルごとのシグナリングによって制御する。このシグナリングにおいて、priority(優先順位)は、値が大きいほど、低い優先順位レベルを示す。prioritisedBitRateは、優先ビットレート(PBR:Prioritized Bit Rate)を設定する。bucketSizeDurationは、バケットサイズ期間(BSD:Bucket Size Duration)を設定する。優先ビットレートの背後にある発想は、リソース不足の発生を回避する目的で、(ビットレートが保証されない(非GBR)低優先順位のベアラを含めて)ベアラそれぞれに最小限のビットレートをサポートすることである。各ベアラは、少なくとも、優先ビットレート(PBR)を達成するための十分なリソースを取得する必要がある。
ユーザ機器は、論理チャネルjごとに変数Bjを維持する。Bjは、関連する論理チャネルが確立されるときに0に初期化され、TTIごとに積PBR×TTI時間長だけインクリメントされていく(PBRは論理チャネルjの優先ビットレート)。ただし、Bjの値はバケットサイズを超えることはできず、Bjの値が論理チャネルjのバケットサイズより大きくなると、Bjの値はバケットサイズに設定される。論理チャネルのバケットサイズは、優先ビットレート(PBR)×バケットサイズ期間(BSD)に等しく、優先ビットレート(PBR)およびバケットサイズ期間(BSD)は上位層によって設定される。
ユーザ機器は、新しい送信を実行するとき、以下の論理チャネル優先順位付け手順を実行する。
− ユーザ機器は、以下のステップで論理チャネルにリソースを割り当てる。
・ ステップ1: Bj>0である論理チャネルすべてに、優先順位の順序の大きい順にリソースを割り当てる。無線ベアラの優先ビットレート(PBR)が「無限大」に設定されている場合、ユーザ機器は、その無線ベアラで送信可能な状態のデータすべてに対してリソースを割り当てた後、より低い優先順位の(1つまたは複数の)無線ベアラの優先ビットレート(PBR)を満たす。
・ ステップ2: ユーザ機器は、ステップ1において論理チャネルjに使われたMAC SDUの合計サイズだけBjを減らす。
なおこの時点で、Bjの値が負にもなりうることに留意されたい。
・ ステップ3: リソースが残っている場合、すべての論理チャネルに、(Bjの値には無関係に)優先順位の順序の厳密な降順でリソースを割り当て、その論理チャネルのデータがなくなる、またはアップリンクグラントが使い果たされる、のいずれかの状態になるまで、続ける。同じ優先順位に設定されている論理チャネルは、同等に割り当てるものとする。
− さらにユーザ機器は、上のスケジューリング手順時に以下の規則にも従う。
・ RLC SDU(または一部分が送信されるSDUあるいは再送信されるRLC PDU)全体が、残っているリソースに収まる場合、ユーザ機器は、そのRLC SDU(または一部分が送信されるSDUあるいは再送信されるRLC PDU)を分割しないべきである。
・ ユーザ機器は、論理チャネルからのRLC SDUを分割する場合、グラントができる限り使用されるようにセグメントのサイズを最大にする。
・ ユーザ機器は、データの送信を最大限に行うべきである。
論理チャネル優先順位付け手順では、ユーザ機器は次の相対的な優先順位を降順に考慮する。
− C−RNTIのMAC制御要素またはUL−CCCHからのデータ
− バッファ状態報告(BSR)のMAC制御要素(パディングのために含まれるBSRを除く)
− 電力ヘッドルーム報告(PHR)のMAC制御要素
− 論理チャネルからのデータ(UL−CCCHからのデータを除く)
− パディングのために含まれるバッファ状態報告(BSR)のMAC制御要素
キャリアアグリゲーション(前のセクションで説明した)の場合、ユーザ機器が1TTI中に複数のMAC PDUを送信するように要求されたときには、ステップ1〜3および関連する規則を、各グラントに独立して適用する、またはグラントの容量の合計に適用することができる。さらに、グラントを処理する順序も、ユーザ機器の実装に委ねられる。ユーザ機器が1TTI中に複数のMAC PDUを送信するように要求されたときに、どのMAC PDUにMAC制御要素を含めるかの決定は、ユーザ機器の実装に委ねられる。
<アップリンク電力制御>
移動通信システムにおけるアップリンク送信電力制御は、重要な目的を持つ。アップリンク送信電力制御は、要求されるサービス品質(QoS)が達成されるようにビットあたり十分なエネルギを送信する必要性と、システムの別のユーザとの干渉を最小限にし、かつ移動端末のバッテリ寿命を最大にする必要性との間で、バランスをとる。この目的を達成する中で、電力制御(PC)の役割は、要求される信号対干渉雑音比(SINR)を提供すると同時に、隣接セルに引き起こされる干渉を制御するうえで極めて重要となる。アップリンクにおける古典的な電力制御方式の発想では、すべてのユーザが同じ信号対干渉雑音比(SINR)で受信する(完全な補償(full compensation)として知られている)。3GPPでは、これに代えて、LTEにおいて部分電力制御(FPC:Fractional Power Control)の使用を採用した。この新しい機能では、経路損失の大きいユーザは低い信号対干渉雑音比(SINR)要件で動作し、したがって多くの場合、隣接セルに引き起こされる干渉が小さい。
LTEでは、物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)、およびサウンディング基準信号(SRS)について、詳細な電力制御式が指定されている(非特許文献5の5.1節)。これらのアップリンク信号それぞれの電力制御式は、同じ基本原理に従う。いずれの場合も、電力制御式は、2つの主項、すなわちeNodeBによってシグナリングされる静的パラメータまたは半静的パラメータから導かれる、開ループの基本動作点と、サブフレームごとに更新される動的オフセット(補正)、の合計と考えることができる。
リソースブロックあたりの送信電力を決めるための、開ループの基本動作点は、セル間干渉やセル負荷など複数の要因に依存する。開ループの基本動作点は、さらに2つの成分として、半静的な基本レベルP0(セル内のすべてのユーザ機器の共通電力レベル(測定単位:dBm)とユーザ機器に固有なオフセットとからなる)と、開ループの経路損失補償の成分とに、分解することができる。リソースブロックあたりの電力の動的オフセットの部分は、さらに2つの成分として、使用される変調・符号化方式(MCS)に依存する成分と、明示的な送信電力制御(TPC:Transmitter Power Control)コマンドとに、分解することができる。
変調・符号化方式(MCS)に依存する成分(LTE仕様ではΔTFと称し、TFは「トランスポートフォーマット」を表す)は、リソースブロック(RB)あたりの送信電力を、送信される情報のデータレートに従って適合させることができる。
動的オフセットのもう1つの成分は、ユーザ機器に固有な送信電力制御(TPC)コマンドである。このコマンドは、2種類のモード、すなわち、累積TPC(accumulative TPC)コマンド(PUSCH、PUCCH、およびSRSに対して利用できる)と、絶対TPCコマンド(PUSCHに対してのみ利用できる)とにおいて、動作することができる。PUSCHに対するこれら2つのモードの間の切替えは、ユーザ機器ごとにRRCシグナリングによって半静的に設定される(すなわちモードを動的に変更することはできない)。累積TPCコマンドの場合、各TPCコマンドは、前のレベルを基準としたときの電力ステップをシグナリングする。
<タイミングアドバンス>
LTEのアップリンク送信方式としては、アップリンクで送信する複数の異なるユーザ機器の間で時間および周波数における直交多元接続が達成されるように、シングルキャリア周波数分割多元接続(SC−FDMA)が選択されている。
アップリンクの直交性は、セル内の複数の異なるユーザ機器からの送信がeNBの受信機において時間的に一致する(time-aligned)ようにすることで、維持される。これにより、連続するサブフレームにおいて送信するように割り当てられているユーザ機器の間と、隣り合うサブキャリア上で送信するユーザ機器の間の両方について、セル内干渉の発生が回避される。アップリンク送信の時間的な一致は、ユーザ機器の送信機において、ダウンリンクの受信タイミングを基準とするタイミングアドバンスを適用することによって達成される。タイミングアドバンスの主たる役割は、複数の異なるユーザ機器の間で異なる伝搬遅延を打ち消すことである。
<タイミングアドバンスの手順>
ユーザ機器が、eNBから受信されるダウンリンク送信に同期しているとき、初期タイミングアドバンスは、ランダムアクセス手順によって設定される。ランダムアクセス手順では、ユーザ機器がランダムアクセスプリアンブルを送信し、eNodeBは、このプリアンブルからアップリンクのタイミングを推定することができ、ランダムアクセス応答(RAR:Random Access Response)メッセージの中に含まれる11ビットの初期タイミングアドバンスコマンドによって応答する。この方式ではeNodeBは、0msから最大0.67msの範囲内で0.52μsの粒度でタイミングアドバンスを設定することができる。
各ユーザ機器に対するタイミングアドバンスが最初に設定された後は、eNodeBにおけるアップリンク信号の到着時刻の変化を打ち消すため、タイミングアドバンスがときどき更新される。eNodeBは、タイミングアドバンス更新コマンドを導くとき、そのために有用な何らかのアップリンク信号を測定することができる。eNodeBにおけるアップリンクタイミングの測定の詳細については規定されておらず、eNodeBの実装に委ねられている。
タイミングアドバンス更新コマンドは、eNodeBのMAC(媒体アクセス制御)層で生成されてMAC制御要素としてユーザ機器に送信され、このMAC制御要素は、物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)上にデータと一緒に多重化することができる。更新コマンドの粒度は、ランダムアクセスチャネル(RACH)プリアンブルに対する応答の中の初期タイミングアドバンスコマンドと同様に、0.52μsである。更新コマンドのレンジは±16μsであり、拡張されたサイクリックプレフィックスの長さに等しい間隔でアップリンクタイミングを変化させることができる。更新コマンドは、一般には約2秒毎より高い頻度で送られることはない。実際に、たとえ500km/hで移動しているユーザ機器でも、ラウンドトリップ経路長の変化は278m/s以下であり、対応するラウンドトリップタイムの変化は0.93μs/sであるため、高い頻度で更新する必要はない。
ユーザ機器は、タイミングアドバンスコマンドを受信すると、プライマリセルのPUCCH/PUSCH/SRSにおける自身のアップリンク送信のタイミングを調整する。タイミングアドバンスコマンドは、現在のアップリンクタイミングを基準としたときのアップリンクタイミングの変更を16Tsの倍数として示す。セカンダリセルのPUSCH/SRSにおけるアップリンク送信タイミングは、プライマリセルと同じである。
ランダムアクセス応答の場合、11ビットのタイミングアドバンスコマンドTAは、TA=0,1,2,...,1282のインデックス値によってNTA値を示し、このときタイミングの調整量は、NTA=TA×16によって与えられる。NTAは[3]に定義されている。
別の場合には、6ビットのタイミングアドバンスコマンドTAは、現在のNTA値(NTA,old)から新しいNTA値(NTA,new)への調整を、TA=0,1,2,...,63のインデックス値によって示し、このとき、NTA,new=NTA,old+(TA−31)×16である。この場合、NTA値を正の量または負の量だけ調整することは、それぞれ、与えられた量だけアップリンク送信タイミングを進める、または遅らせることを示す。
サブフレームnにおいてタイミングアドバンスコマンドが受信された場合、タイミングの対応する調整は、サブフレームn+6の先頭から適用する。サブフレームnおよびサブフレームn+1におけるユーザ機器のアップリンクPUCCH/PUSCH/SRS送信が、タイミング調整に起因して重なるときには、ユーザ機器は、サブフレームn全体を送信し、サブフレームn+1の重なっている部分を送信しない。
ダウンリンクの受信タイミングが変化し、それが補正されない、または非特許文献6に規定されているようにタイミングアドバンスコマンドなしでアップリンクタイミング調整によって部分的に補正されるのみである場合、ユーザ機器は、それに応じてNTAを変更する。
eNodeBは、ユーザ機器が自身の送信バッファにデータが到着したときに迅速に送信する能力が維持される範囲内で、セル内のすべてのユーザ機器に定期的なタイミング更新コマンドを送る。したがってeNodeBが各ユーザ機器のタイマーを設定し、ユーザ機器は、タイミングアドバンス更新を受信するたびにこのタイマーを再起動させる。このタイマーは、タイミングアドバンスタイマー(TAT)とも称する。タイマーが切れるまでにユーザ機器が新しいタイミングアドバンス更新を受信しなかった場合、そのユーザ機器のアップリンク同期が失われたものと考えなければならない(非特許文献7(3GPPのウェブサイトで入手可能であり参照によって本明細書に組み込まれている)の5.2節も参照)。
このような場合、別のユーザ機器からのアップリンク送信との干渉が発生する危険性を回避する目的で、そのユーザ機器は、いかなる種類の別のアップリンク送信も行うことが許可されない。
タイミングアドバンス手順のさらなる特性については、参照によって本明細書に組み込まれている非特許文献3および非特許文献6(7.1節)に記載されている。
<LTEの装置間(D2D)近傍サービス>
近傍性に基づくアプリケーションおよびサービスは、ソーシャル技術の新しいトレンドである。識別される分野としては、事業者およびユーザにとって関心のある商用サービスおよび公共安全に関連するサービスが挙げられる。LTEに近傍サービス(ProSe)機能を導入することにより、3GPP業界は、この成長の見込まれる市場にサービスを提供することができると同時に、連係してLTEを使用するいくつかの公共安全コミュニティの緊急なニーズに応えることができる。
装置間(D2D)通信は、LTEリリース12における技術要素である。装置間(D2D)通信技術によって、セルラーネットワークに対するアンダーレイ(下層)としてのD2Dにおいてスペクトル効率を高めることができる。例えば、セルラーネットワークがLTEである場合、データを伝えるすべての物理チャネルは、D2DシグナリングにおいてSC−FDMAを使用する。D2D通信では、ユーザ機器(UE)は、基地局を経由せずに、セルラーリソースを使用する直接的なリンクを通じて互いにデータ信号を送信する。図7は、D2D互換の通信システムにおける1つの可能なシナリオを示している。
<LTEにおけるD2D通信>
「LTEにおけるD2D通信」は、発見および通信という2つの分野に焦点をあてているが、本発明は、ほとんどが発見部分に関連する。
装置間(D2D)通信は、LTE−Aにおける技術要素である。D2D通信では、ユーザ機器は、基地局(BS)を経由せずに、セルラーリソースを使用して直接的なリンクを通じて互いにデータ信号を送信する。D2Dのユーザは、直接通信するが、基地局の制御下のままである(少なくともeNBのカバレッジ内であるとき)。したがってD2Dでは、セルラーリソースを再利用することによってシステムの性能を改善することができる。
D2Dは、アップリンクLTEスペクトル(FDDの場合)において動作する、またはカバレッジを提供しているセルのアップリンクサブフレーム(TDDの場合、ただしカバレッジ外のときを除く)において動作するものと想定する。さらに、D2D送信/受信では、与えられたキャリアにおける全二重を使用しない。個々のユーザ機器の観点からは、与えられたキャリアにおいて、D2D信号受信とLTEアップリンク送信とによる全二重を使用しない(すなわちD2D信号受信およびLTEアップリンク送信を同時に行うことはできない)。
D2D通信では、ユーザ機器1が送信の役割であるとき(送信側ユーザ機器または送信側端末)、ユーザ機器1がデータを送り、ユーザ機器2(受信側ユーザ機器)がそれを受信する。ユーザ機器1およびユーザ機器2は、送信の役割と受信の役割を変えることができる。ユーザ機器1からの送信は、1基または複数基のユーザ機器(ユーザ機器2など)によって受信することができる。
ユーザプレーンのプロトコルに関して、D2D通信に関連する合意内容(非特許文献8(参照によって本明細書に組み込まれている)の9.2節)を以下に示す。
− PDCP:
・ 1:M D2Dブロードキャスト通信データ(すなわちIPパケット)は、通常のユーザプレーンデータとして扱うべきである。
・ 1:M D2Dブロードキャスト通信データには、PDCPにおけるヘッダ圧縮/圧縮解除を適用することができる。
■ 公共安全に関連するD2Dブロードキャスト動作では、PDCPにおけるヘッダ圧縮にUモードを使用する。
− RLC:
・ 1:M D2Dブロードキャスト通信にはRLC UMを使用する。
・ セグメント化および再構築はRLC UMによって第2層においてサポートされる。
・ 受信側ユーザ機器は、送信側のピアユーザ機器あたり少なくとも1つのRLC UMエンティティを維持する必要がある。
・ 最初のRLC UMデータユニットを受信する前に受信機のRLC UMエンティティを設定する必要はない。
・ 現時点では、ユーザプレーンデータを送信するD2D通信においてRLC AMまたはRLC TMの必要性は認識されていない。
− MAC:
・ 1:M D2Dブロードキャスト通信ではHARQフィードバックを想定しない。
・ 受信側ユーザ機器は、受信機のRLC UMエンティティを識別する目的で送信元IDを認識する必要がある。
・ MACヘッダには、MAC層におけるパケットフィルタリングを可能にする第2層(L2)送信先IDが含まれる。
・ 第2層(L2)送信先IDは、ブロードキャストアドレス、グループキャストアドレス、またはユニキャストアドレスとすることができる。
■ 第2層(L2)グループキャスト/ユニキャスト: MACヘッダにおいて伝えられる第2層(L2)送信先IDによって、受信されたRLC UM PDUを、たとえそれを受信機のRLCエンティティに渡す前であっても破棄することが可能となる。
■ 第2層(L2)ブロードキャスト: 受信側ユーザ機器は、すべての送信機からの受信されたすべてのRLC PDUを処理し、再構築してIPパケットを上位層に渡す。
・ MACサブヘッダには、(複数の論理チャネルを区別するための)論理チャネルID(LCID)が含まれる。
・ D2Dでは、少なくとも多重化/逆多重化、優先順位の処理、およびパディングが有用である。
<リソース割当て>
<無線リソースのスケジューリング割当て>
図9は、D2D通信におけるリソース割当てに関する挙動を示している。D2D通信におけるリソース割当てについては現在検討が進められており、非特許文献8(参照によって本明細書に組み込まれている)の9.2.3節に、現時点での形式が記載されている。
送信側ユーザ機器の観点からは、近傍サービスに対応するユーザ機器(ProSe対応UE)は、リソース割当ての次の2つのモードで動作することができる。
− モード1(eNBがリソース割当てをスケジューリングする): ユーザ機器が直接通信のデータおよび直接通信の制御情報を送信するために使用する正確なリソースを、eNodeBまたはリリース10の中継ノードがスケジューリングする。ユーザ機器は、データを送信するためにはRRC_CONNECTED状態にある必要がある。さらにユーザ機器は、eNBからの送信リソースを要求し、eNBは、スケジューリング割当ておよびデータを送信するための送信リソースをスケジューリングする。ユーザ機器は、スケジューリング要求(専用スケジューリング要求(D−SR)またはランダムアクセス)をeNBに送り、次いでバッファ状態報告(BSR)を送る。eNBは、バッファ状態報告(BSR)に基づいて、ユーザ機器がProSe直接通信によって送信するデータを有するものと判定し、送信に必要なリソースを推定することができる。
− モード2(ユーザ機器が自律的にリソースを選択する): 直接通信のデータおよび直接通信の制御情報を送信するためのリソースを、ユーザ機器自身がリソースプールから選択する。
ユーザ機器がD2Dデータ通信用にどちらのリソース割当てモードを使用するかは、基本的に、RRC状態(すなわちRRC_IDLEまたはRRC_CONNECTED)と、ユーザ機器のカバレッジ状態(すなわちカバレッジ内またはカバレッジ外)とによって決まる。ユーザ機器がサービングセルを有する(すなわちユーザ機器がRRC_CONNECTED状態である、またはRRC_IDLE状態において特定のセルにキャンプオンしている)場合、そのユーザ機器はカバレッジ内であるとみなされる。
具体的には、(非特許文献9によると)リソース割当てモードに関する次の規則がユーザ機器に適用される。
− ユーザ機器がカバレッジ外である場合、そのユーザ機器はモード2のみを使用することができる。
− ユーザ機器がカバレッジ内である場合、ユーザ機器がモード1を使用できるようにeNBによって設定されているならば、そのユーザ機器はモード1を使用することができる。
− ユーザ機器がカバレッジ内である場合、ユーザ機器がモード2を使用できるようにeNBによって設定されているならば、そのユーザ機器はモード2を使用することができる。
− 例外条件が存在しないときには、モードを変更するようにユーザ機器がeNBによって設定される場合にのみ、ユーザ機器はモード1からモード2に、またはモード2からモード1に変更する。ユーザ機器がカバレッジ内である場合、次の例外的なケースの一方が発生しない限り、ユーザ機器はeNBの設定によって示されるモードのみを使用する。
− T311またはT301が実行中である間、ユーザ機器は、自身を例外条件下にあるものとみなす。
− 例外的なケースが発生するとき、ユーザ機器は、たとえモード1を使用するように設定されていても一時的にモード2を使用することが許可される。
ユーザ機器は、E−UTRAセルのカバレッジ領域内にある間、そのセルによって割り当てられるリソースのみにおけるアップリンクキャリアでProSe直接通信の送信を実行するのみである(たとえそのキャリアのリソースが例えばUICCにおいて事前に設定されている場合でも)。
RRC_IDLE状態のユーザ機器に対しては、eNBは次のオプションの一方を選択することができる。
− eNBは、モード2の送信リソースプールをシステム情報ブロードキャスト(SIB)において提供する。ProSe直接通信が許可されているユーザ機器は、RRC_IDLE状態においてこれらのリソースを使用してProSe直接通信を行う。
− eNBは、自身がD2DをサポートしているがProSe直接通信用のリソースを提供しないことをSIBにおいて示す。ユーザ機器は、ProSe直接通信の送信を実行するためにはRRC_CONNECTED状態に入る必要がある。
RRC_CONNECTED状態のユーザ機器に対しては、次のようにすることができる。
− ProSe直接通信の送信を実行することが許可されているRRC_CONNECTED状態にあるユーザ機器は、ProSe直接通信の送信を実行する必要があるとき、ProSe直接通信の送信を実行したいことをeNBに示す。
− eNBは、RRC_CONNECTED状態にあるそのユーザ機器がProSe直接通信の送信を許可されるかを、MMEから受信されるUEコンテキストを使用して確認する。
− eNBは、RRC_CONNECTED状態にあるユーザ機器に対して、そのユーザ機器がRRC_CONNECTED状態である間は制約なしで使用することのできるモード2のリソース割当て送信リソースプールを、専用シグナリングによって設定することができる。これに代えて、eNBは、RRC_CONNECTED状態にあるユーザ機器に対して、例外的なケースにおいてのみそのユーザ機器が使用することができるモード2のリソース割当て送信リソースプールを、専用シグナリングによって設定することができ、例外的なケースでない場合、ユーザ機器はモード1に従う。
モード1では、ユーザ機器はeNodeBからの送信リソースを要求する。eNodeBは、スケジューリング割当ておよびデータを送信するための送信リソースをスケジューリングする。
− ユーザ機器は、スケジューリング要求(専用スケジューリング要求(D−SR)またはRACH手順)をeNodeBに送った後にバッファ状態報告(BSR)を送り、eNodeBは、ユーザ機器がD2D送信を実行しようとしていることと、必要なリソース量とを、そのバッファ状態報告(BSR)に基づいて求めることができる。
− モード1では、ユーザ機器は、D2D通信を送信するためにRRC接続されている必要がある。
モード2の場合、ユーザ機器にリソースプール(時間/周波数)が提供され、ユーザ機器は、D2D通信を送信するためのリソースをリソースプールから選択する。
図8は、オーバーレイ(LTE)およびアンダーレイ(D2D)における送信リソースおよび受信リソースを概略的に示している。ユーザ機器がモード1送信を適用するかモード2送信を適用するかは、eNodeBが制御する。ユーザ機器は、D2D通信を送信(または受信)することのできるリソースを認識すると、対応するリソースを、対応する送信/受信にのみ使用する。図8の例においては、D2Dサブフレームは、D2D信号を受信または送信する目的にのみ使用される。D2D装置としてのユーザ機器は、半二重モードで動作するため、任意の時点においてD2D信号の受信または送信のいずれかを行うことができる。同様に、同じ図8において、D2Dサブフレーム以外のサブフレームはLTE(オーバーレイ)の送信もしくは受信またはその両方に使用することができる。
D2D発見は、自身に関心のある、近傍における他のD2D対応装置を識別する手順/プロセスである。この目的のため、発見されることを望むD2D装置は、何らかの発見信号を(特定のネットワークリソースで)送り、その発見信号に関心のある受信側ユーザ機器が、このような送信側D2D装置を認識する。非特許文献8の8節には、D2D発見メカニズムに関する現時点における詳細が記載されている。
<D2D通信における送信手順>
図10は、D2D通信における送信手順を概略的に示している。D2Dデータ送信手順は、リソース割当てモードに応じて異なる。上述したように、モード1の場合には、スケジューリング割当ておよびD2Dデータ通信のためのリソースをeNBが明示的にスケジューリングする。以下では、モード1のリソース割当ての場合の要求/許可手順の一連のステップを示す。
− ステップ1 ユーザ機器がSR(スケジューリング要求)をPUCCHを介してeNBに送る。
− ステップ2 eNBが、(ユーザ機器がバッファ状態報告(BSR)を送るための)アップリンクリソースを、C−RNTIによってスクランブルされたPDCCHを介して許可する。
− ステップ3 ユーザ機器が、バッファの状態を示すD2D BSRをPUSCHを介して送る。
− ステップ4 eNBが、(ユーザ機器がデータを送るための)D2Dリソースを、D2D−RNTIによってスクランブルされたPDCCHを介して許可する。
− ステップ5 D2D送信側ユーザ機器が、ステップ4で受信したグラントに従って、スケジューリング割当て(SA)/D2Dデータを送信する。
スケジューリング割当て(SA)は、制御情報(例えば対応するD2Dデータ送信用の時間−周波数リソースを指すポインタ)を含むコンパクトな(低ペイロードの)メッセージである。スケジューリング割当て(SA)の内容は、基本的には上のステップ4において受信されるグラントである。D2Dグラントおよびスケジューリング割当て(SA)の内容の詳細は、現時点では決定されていない。
<D2D発見>
ProSe(近傍サービス)直接発見(ProSe Direct Discovery)は、ProSe対応ユーザ機器が、近傍の別の(1基または複数基の)ProSe対応ユーザ機器を、PC5インタフェースを介してE−UTRA直接無線信号を使用して発見するために使用される手順と定義されている。図11は、非特許文献10(参照によって本明細書に組み込まれている)の5.1.1.4節に記載されている、装置間の直接発見のためのPC5インタフェースを概略的に示している。
上位層は、発見情報のアナウンスおよび監視の許可を処理する。この目的のため、ユーザ機器は、事前に定義された信号(発見信号と称する)を交換しなければならない。ユーザ機器は、必要なときに通信リンクを確立する目的で、発見信号を周期的にチェックすることによって、近傍のユーザ機器のリストを維持する。発見信号は、たとえ信号対雑音比(SNR)が低い環境においても高い信頼性で検出される必要がある。発見信号を周期的に送信することができるように、発見信号用のリソースを割り当てる必要がある。
ProSe直接発見には2つのタイプがあり、すなわちオープン型(open)と制限型(restricted)である。オープン型は、発見されるユーザ機器からの明示的な許可が必要ない場合であり、制限型の発見は、発見されるユーザ機器からの明示的な許可があるときにのみ行われる。
ProSe直接発見は、発見する側のユーザ機器におけるスタンドアロンのサービスイネーブラ(service enabler)とすることができ、このサービスイネーブラは、特定のアプリケーションにおいて、発見する側のユーザ機器が発見される側のユーザ機器からの情報を使用することを可能にする。ProSe直接発見において送信される情報は、一例として、「近くでタクシーを見つけて」、「コーヒーショップを見つけて」、「最寄りの警察署を見つけて」などとすることができる。発見する側のユーザ機器は、ProSe直接発見を通じて、必要な情報を取得することができる。さらに、得られる情報に応じて、ProSe直接発見を使用して遠隔通信システムにおける以降の動作(例えばProSe直接通信を開始するなど)を行うことができる。
<ProSe直接発見のモデル>
ProSe直接発見は、いくつかの発見モデルに基づく。ProSe直接発見のモデルは、非特許文献10(参照によって本明細書に組み込まれている)の5.3.1.2節に以下のように定義されている。
・モデルA(「私はここです」)
モデルAは、「私はここです」とも表され、なぜなら、アナウンスする側のユーザ機器が自身に関する情報(自身のProSeアプリケーションの識別情報やProSe UEの識別情報など)を発見メッセージの中でブロードキャストし、これにより自身の身元を明らかにし、自身が利用可能であることを通信システムの他の装置に伝えるためである。
モデルAによると、ProSe直接発見に関与しているProSe対応ユーザ機器の2つの役割が定義されている。ProSe対応ユーザ機器は、アナウンスする側のユーザ機器と監視する側のユーザ機器の機能を有することができる。アナウンスする側のユーザ機器は、発見の許可を有する近傍のユーザ機器が使用することのできる特定の情報をアナウンスする。監視する側のユーザ機器は、アナウンスする側のユーザ機器の近傍において、関心のある特定の情報を監視する。
このモデルでは、アナウンスする側のユーザ機器が、事前に定義される発見間隔で発見メッセージをブロードキャストし、これらのメッセージに関心のある監視する側のユーザ機器が、メッセージを読み取って処理する。
・モデルB(「そこにいるのは誰ですか?」/「あなたはそこにいますか?」)
このモデルは、ProSe直接発見に関与するProSe対応ユーザ機器の次の2つの役割を定義する。
− 発見する側のユーザ機器: このユーザ機器は、自身が発見したい対象に関する特定の情報を含む要求を送信する。
− 発見される側のユーザ機器: 要求メッセージを受信するユーザ機器は、発見する側のユーザ機器の要求に関連する何らかの情報で応答することができる。
モデルBは、「そこにいるのは誰ですか?/あなたはそこにいますか?」と同等であり、なぜなら、発見する側のユーザ機器が、応答を受け取りたい対象の別のユーザ機器に関する情報を送信するためである。送信される情報は、例えば、グループに対応するProSeアプリケーションIDに関する情報とすることができる。グループのメンバーは、この送信された情報に応答することができる。
このモデルによると、ProSe直接発見に関与しているProSe対応ユーザ機器の2つの役割が定義されており、すなわち発見する側のユーザ機器と発見される側のユーザ機器である。発見する側のユーザ機器は、自身が発見したい対象に関する特定の情報を含む要求を送信する。一方で、この要求メッセージを受信した発見される側のユーザ機器は、発見する側のユーザ機器の要求に関連する何らかの情報によって応答することができる。
発見情報の内容は、アクセス層(AS)に透過的であり、アクセス層(AS)は発見情報の内容を認識していない。したがってアクセス層では、ProSe直接発見のさまざまなモデルが区別されず、またProSe直接発見のタイプも区別されない。ProSeプロトコルは、アナウンスする有効な発見情報のみをアクセス層(AS)に渡す。
ユーザ機器は、eNBの設定によるRRC_IDLE状態およびRRC_CONNECTED状態の両方において、発見情報のアナウンスおよび監視に関与することができる。ユーザ機器は、半二重の制約を受ける発見情報をアナウンスおよび監視する。
<発見のタイプ>
図12は、D2D通信において発見用リソースを受信するときのIDLEモードおよびCONNECTEDモードを示した図である。
D2D通信は、ネットワークによって制御する(この場合には直接送信(D2D)と従来のセルラーリンクとの間の切り替えを通信事業者が管理する)、または、通信事業者の制御なしで直接リンクを装置によって管理することができる。D2Dでは、インフラストラクチャモードとアドホック通信を組み合わせることができる。
一般的には、装置の発見は周期的に必要である。さらにD2D装置は、発見メッセージのシグナリングプロトコルを利用して装置の発見を実行する。例えば、D2D対応ユーザ機器が、自身の発見メッセージを送信することができ、別のD2D対応ユーザ機器がこの発見メッセージを受信し、この情報を使用して通信リンクを確立することができる。ハイブリッドネットワークの利点として、D2D装置がネットワークインフラストラクチャの通信範囲内でもある場合、eNBなどのネットワークエンティティが発見メッセージの送信や設定を追加的に支援することができる。発見メッセージの送信や設定をeNBによって調整/制御することは、D2Dのメッセージングと、そのeNBによって制御されているセルラートラフィックとの干渉が発生しないようにするうえでも重要である。さらには、たとえ装置のいくつかがネットワークカバレッジの範囲外である場合でも、カバレッジ内の装置がアドホック発見プロトコルを支援することができる。
説明においてさらに使用される専門用語を定義する目的で、少なくとも以下の2つのタイプの発見手順が定義されている。
− タイプ1: 発見情報をアナウンスするためのリソースが特定のユーザ機器を対象とせずに割り当てられ、さらに以下を特徴とするリソース割当て手順。
・ 発見情報のアナウンスに使用されるリソースプールの設定をeNBがユーザ機器に提供する。設定はシステム情報ブロードキャスト(SIB)においてシグナリングすることができる。
・ ユーザ機器は、示されたリソースプールから(1つまたは複数の)無線リソースを自律的に選択し、発見情報をアナウンスする。
・ ユーザ機器は、各発見期間中、ランダムに選択される発見用リソースで発見情報をアナウンスすることができる。
− タイプ2: 発見情報をアナウンスするためのリソースが特定のユーザ機器を対象として割り当てられ、さらに以下を特徴とするリソース割当て手順。
・ RRC_CONNECTEDモードにあるユーザ機器は、発見情報をアナウンスするためのeNBからのリソースをRRCを介して要求することができる。eNBはRRCを介してリソースを割り当てる。
・ リソースは、監視するユーザ機器に設定されるリソースプール内に割り当てられる。
タイプ2の手順によると、リソースは例えば発見信号の送信用にセミパーシステントに割り当てられる。
ユーザ機器がRRC_IDLEモードにある場合、eNBは以下のオプションの1つを選択することができる。
− eNBは、発見情報をアナウンスするためのタイプ1のリソースプールをシステム情報ブロードキャスト(SIB)において提供することができる。ProSe直接発見を許可されているユーザ機器は、RRC_IDLEモードにおいてこれらのリソースを使用して発見情報をアナウンスする。
− eNBは、自身がD2Dをサポートしているが、発見情報をアナウンスするためのリソースを提供しないことを、システム情報ブロードキャスト(SIB)において示すことができる。ユーザ機器は、発見情報をアナウンスするためのD2Dリソースを要求するためには、RRC_CONNECTEDモードに入る必要がある。
RRC_CONNECTED状態にあるユーザ機器については、ProSe直接発見のアナウンスを実行することが許可されているユーザ機器は、D2D発見のアナウンスの実行を望むことをeNBに知らせる。するとeNBは、そのユーザ機器がProSe直接発見のアナウンスを許可されているかを、MMEから受信したUEコンテキストを使用して確認する。eNBは、発見情報のアナウンス用にタイプ1のリソースプールまたはタイプ2の専用リソースを使用するように、専用のRRCシグナリングを介してユーザ機器を設定することができる(またはリソースなし)。eNBによって割り当てられたリソースは、a)eNBがそのリソースをRRCシグナリングによって設定解除する(de-configure)まで、またはb)ユーザ機器がIDLEモードに入るまで、有効である。
RRC_IDLEモードおよびRRC_CONNECTEDモードにある受信側ユーザ機器は、許可されるタイプ1およびタイプ2の発見用リソースプールの両方を監視する。eNBは、発見情報を監視するために使用されるリソースプールの設定を、システム情報ブロードキャスト(SIB)において提供する。システム情報ブロードキャスト(SIB)は、隣接セルにおいてアナウンスするために使用される発見用リソースも含むことができる。
<無線プロトコルのアーキテクチャ>
図13は、ProSe直接発見のための無線プロトコルスタック(アクセス層(AS))を概略的に示している。
アクセス層(AS)は、上位層(ProSeプロトコル)とのインタフェースとして機能する。したがって、MAC層は上位層(ProSeプロトコル)から発見情報を受け取る。この場合、発見情報を送信するのにIP層は使用されない。さらに、アクセス層(AS)はスケジューリング機能を有し、すなわちMAC層は、上位層から受け取った発見情報をアナウンスするために使用するべき無線リソースを決定する。これに加えてアクセス層(AS)は、発見PDUを生成する機能を有し、すなわちMAC層は、発見情報を伝えるMAC PDUを構築し、そのMAC PDUを、決定した無線リソースにおいて送信できるように物理層に渡す。MACヘッダは追加されない。
ユーザ機器において、RRCプロトコルは、発見用リソースプールをMAC層に知らせる。さらにRRCは、送信用に割り当てられたタイプ2のリソースをMAC層に知らせる。MACヘッダの必要はない。発見に関するMACヘッダには、第2層においてフィルタリングを実行するときに基づくフィールドが含まれない。MACレベルにおいて発見メッセージをフィルタリングしても、上位層においてProSe UE IDやProSeアプリケーションIDに基づいてフィルタリングを実行することと比較して、処理量や電力が節約されるとは考えられない。受信側MAC層は、受け取った発見メッセージすべてを上位層に渡す。このときMAC層は、正しく受信されたメッセージのみを上位層に渡す。
以下では、発見メッセージが正しく受信されたかを第1層がMAC層に示すものと想定する。さらに、上位層は必ず有効な発見情報のみをアクセス層に渡すものと想定する。
D2Dシステムにおいて発見用リソースを割り当てる従来の解決策では、要求されたD2Dサービスに好適な方法でリソースを割り当てるのに適するリソースパターンまたはリソース設定を決定することができない。具体的には、D2D対応装置によって一般的なシグナリング手順に従って送信された情報に基づいて基地局がリソースを割り当てる場合、ユーザ機器が発見情報を完全にブロードキャストするには、送信リソースの期間が短すぎることがある。結果として、送信側ユーザ機器は再びリソースを要求する必要があり、これによりLTEシステムにおけるシグナリングオーバーヘッドが増大する。
さらに、例えば発見情報の内容に関する情報は、アクセス層(AS)に透過的である。したがってアクセス層では、ProSe直接発見のさまざまなモデルが区別されず、またProSe直接発見のタイプも区別されず、基地局では、発見送信のモデルと、発見用リソースを割り当てるための好ましい手順のタイプを決定するうえで有用な何らの情報も受信されない。
<D2Dの同期>
同期の主たる役割は、受信機が時間および周波数の基準を取得できるようにすることである。このような基準は、少なくとも次の2つの目的に利用することができる。1)D2Dチャネルを検出するときに受信機のウィンドウとの周波数の補正を合わせる、2)D2Dチャネルを送信するときに送信機のタイミングおよびパラメータを合わせる。3GPPでは、現在のところ同期を目的として以下のチャネルが定義されている。
− D2DSS D2D同期信号
− PD2DSCH 物理D2D同期チャネル
− PD2DSS プライマリD2D同期信号
− SD2DSS セカンダリD2D同期信号
さらに3GPPでは、同期に関する以下の専門用語が合意されている。
D2D同期源: 少なくともD2D同期信号を送信するノード。
D2D同期信号: ユーザ機器がそこからタイミングおよび周波数の同期を取得することのできる信号。
D2D同期源は、基本的にはeNBまたはD2Dユーザ機器とすることができる。
D2Dの同期は、LTEのセルサーチに類似する手順とみなすことができる。部分的カバレッジ内シナリオおよびカバレッジ外シナリオにおいてネットワーク制御および効率的な同期の両方を可能にする目的で、現在3GPP内で次の手順が検討されている。
<受信機の同期>
ProSe対応ユーザ機器は、LTEセル(LTEのモビリティ手順に従う)と、SS(同期源)ユーザ機器によって送信されるD2DSS/PD2DSCHとを、定期的に探索する。
適切なセルが見つかると、ユーザ機器はそのセルにキャンプオンし、セル同期(LTEのレガシー手順による)に従う。
SS(同期源)ユーザ機器によって送信される適切なD2DSS/PD2DSCHが見つかると、ユーザ機器は、入ってくるすべてのD2DSS/PD2DSCH(ユーザ機器の能力による)に自身の受信機を同期させ、入ってくる接続(スケジューリング割当て)がないかそれらを監視する。なお、eNodeBであるD2D同期源によって送信されるD2DSSは、リリース8のPSS/SSSであることに留意されたい。eNodeBであるD2D同期源は、ユーザ機器であるD2D同期源よりも高い優先順位を有する。
<送信機の同期>
ProSe対応ユーザ機器は、LTEセル(LTEのモビリティ手順に従う)と、SS(同期源)ユーザ機器によって送信されるD2DSS/PD2DSCHとを、定期的に探索する。
適切なセルが見つかると、ユーザ機器はそのセルにキャンプオンし、D2D信号を送信できるようにセル同期に従い、ネットワークは、セル同期に従ってD2DSS/PD2DSCHを送信するようにユーザ機器を設定することができる。
適切なセルが見つからない場合、ユーザ機器は、入ってくるD2DSS/PD2DSCHのいずれかをさらに中継できる(すなわち最大ホップカウントに達していない)かを確認し、(a)さらに中継できる入ってくるD2DSS/PD2DSCHが見つかった場合、ユーザ機器は自身の送信機の同期をその信号に合わせ、それに応じてD2DSS/PD2DSCHを送信する、または、(b)さらに中継できる入ってくるD2DSS/PD2DSCHが見つからない場合、ユーザ機器は独立した同期源として動作し、任意の内部同期基準に従ってD2DSS/PD2DSCHを送信する。
D2Dにおける同期手順のさらなる詳細は、非特許文献8に記載されている。
D2D通信システムにおける1つの問題点は、RRCアイドル状態にあるD2D対応のユーザ機器または送信側端末が、直接リンク通信を通じてD2D対応の受信側ユーザ機器にデータを送信しようとするときに発生する。送信側端末は、D2D通信を確立するためには、送信タイミングを制御することと、送信タイミング情報を受信側UEに伝えることとが必要である。これによって基地局は、入ってくるすべての信号(例えばD2D送信データと、LTE/WANアップリンクで送信されるデータ)を、自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することができ、これによりICI(キャリア間干渉)が防止される。アップリンクチャネルでのeNodeBとの通信では、送信タイミングは、eNBから受信されるタイミングコマンドまたはタイミングアドバンス(TA)コマンドに基づいてUEにおいて決定される。
しかしながら、送信側UEがRRCアイドルモードにある場合、送信側UEはネットワークまたはeNodeBからタイミングアドバンスコマンドを受信しない。結果として、D2D送信側UEは、受信側UEへのデータ送信の送信タイミングを制御するための直接リンク送信タイミング値として、受信する基地局またはeNodeBにおいて、入ってくるすべての信号(D2DおよびLTE/WANアップリンク)を自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することのできない直接リンク送信タイミング値、を使用することがあり、これによってセル内のユーザ機器とeNodeBとの間のアップリンク通信との干渉が発生する。さらには、eNodeBは、RRCアイドル状態にあるカバレッジ内UEに関する情報を保持しない、またはこのようなUEを制御しない。したがって、送信側UEがアイドルモードにあるため、直接リンクを通じてデータを送信するための電力をUEごとに適切に制御することができない。これにより、eNodeBがアップリンクLTEチャネルでデータを受信するときにWAN干渉およびキャリア間干渉(ICI)が発生する。発生する干渉は、復号性能にも悪影響を及ぼし、これに起因して信号対雑音比(SNR)が下がる。
キャリア間干渉(ICI)の回避を目的とする、この問題に対する公知の解決策は、基地局においてキャリア間干渉(ICI)緩和技術を実施することである。このような技術には、例えば、LTEリソースとD2Dリソースとの間のガードバンドを実施することが含まれる。ガードバンドの量は、WANに対する干渉量に依存する。しかしながらこの解決策では、eNodeBにおいて大量のリソースが使用される。
以下の段落では、さまざまな例示的な実施形態について説明する。例示のみを目的として、ほとんどの実施形態は、上の背景技術のセクションにおいて一部を説明した3GPP LTE(リリース8/9)およびLTE−A(リリース10/11/12)の移動通信システムによる無線アクセス方式に関連して概説してある。これらの例示的な実施形態は、例えば、上の背景技術のセクションにおいて説明した3GPP LTE−A(リリース10/11/12)の通信システムなどの移動通信システムにおいて有利に使用することができるが、これらの例示的な実施形態は、この特定の例示的な通信ネットワークにおける使用に限定されないことに留意されたい。
請求項および本明細書において使用されている「直接リンク」という用語は、ネットワークが関与することなくデータを直接交換することを可能にする、2基のD2Dユーザ機器の間の通信リンク(通信チャネル)として理解されたい。言い換えれば、通信チャネルは、データを直接交換するのに十分に近い、通信システム内の2基のユーザ機器の間に、eNodeB(基地局)をバイパスして確立される。この用語は、eNodeBによって管理されるユーザ機器間のデータトラフィックを意味する「LTEリンク」または「LTE(アップリンク)トラフィック」と対照される語として使用されている。
請求項および本明細書において使用されている「送信側ユーザ機器」または「送信側端末」という用語は、データを送信および受信することのできるモバイルデバイスとして理解されたい。形容詞である「送信側」は、一時的な動作を明確に示すことを目的としているにすぎない。以下の説明において発見送信を目的とする送信側ユーザ機器は、アナウンスする側のユーザ機器または発見する側のユーザ機器(発見者)とすることができる。この用語は、データを受信する動作を一時的に実行するモバイルデバイスを意味する「受信側ユーザ機器」または「受信側端末」と対照される語として使用されている。以下の説明において発見送信を目的とする受信側ユーザ機器は、監視する側のユーザ機器または発見される側のユーザ機器(被発見者)とすることができる。
以下では、いくつかの例について詳しく説明する。以下の説明は、本発明を制限するものではなく、本発明を深く理解するための単なる例示的な実施形態として理解されたい。当業者には、請求項に記載されている一般的な原理を、さまざまなシナリオに、本明細書に明示的に説明されていない方法で適用できることが認識されるであろう。したがって、さまざまな実施形態を説明する目的で想定される以下のシナリオは、本発明をそのようなシナリオに制限するものではない。
本発明は、D2D通信システムにおいて、RRCアイドル状態にあるユーザ機器または送信側端末がデータを直接リンク通信を通じてD2D対応の受信側UEに送信することがあるという認識に基づいている。送信側端末は、D2D通信を確立するためには、送信タイミングを制御することと、受信側UEがFFT受信ウィンドウを位置決めすることができるように送信タイミング情報を受信側UEに伝えることとが必要である。しかしながら、送信側UEがRRCアイドルモードにあるため、送信側UEはネットワークまたはeNodeBから何らのタイミングアドバンスコマンドも受信せず、本来ならこのタイミングアドバンスに基づいて、直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを決定するための正確な直接リンク送信タイミング値を推定することができる。結果として、D2D送信側UEは、直接リンク送信タイミング値として、基地局/eNodeBにおいて入ってくるすべての信号(D2DおよびLTE/WANアップリンク)を自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することのできない直接リンク送信タイミング値を、受信側UEに送信することがあり、これによりアップリンクWAN通信(すなわちセル内のユーザ機器とeNodeBとの間の通信)において干渉が発生する。さらには、eNodeBは、RRCアイドル状態にあるカバレッジ内UEに関する情報を保持しない、またはこのようなUEを制御しない。したがって、送信側UEがアイドルモードにあるため、直接リンクを通じてデータを送信するための電力を適切に制御することができない。これにより、eNodeBがアップリンクLTEチャネルでデータを受信するときにWAN干渉が発生する。
上述した問題に対する1つの解決策について、図14を参照しながら説明する。この解決策によると、アイドルモードの送信側UEは、直接リンク送信タイミングを制御するための基準としてダウンリンクのタイミングを使用することができる。
図14は、アイドルモードの送信側UE(右側)および接続モードの送信側UE(左側)によって送信タイミングを制御するための可能な方式を示している。
図14の左側は、RRC接続状態にある送信側UE(以下では簡潔に「接続されているUE」とも称する)によるD2Dデータ送信に関する。この方法形態によると、接続されているUEは、eNodeBからダウンリンクチャネルにおいて、特定の伝搬遅延を伴ってデータを受信する。前半のセクションで説明したように、UEは、eNBから受信されるダウンリンク送信と同期する目的でランダムアクセスプリアンブルを送信し、eNodeBはこのプリアンプルからアップリンクのタイミングを推定し、11ビットの初期タイミングアドバンスコマンドによって応答することができる。接続されているUE側では、アップリンクチャネルでのeNBへのデータ送信のタイミングを、このタイミングアドバンスコマンドを使用して制御する。
図14の左側における方法形態によると、接続されているUEは、自身が基地局へのアップリンクデータ送信に使用するタイミング(LTEアップリンクタイミング)と同じアップリンクタイミングを使用する。これを目的として、接続されているUEは、例えば、内部のタイミングアドバンス値を11ビットの値(NTA値と称する)に調整することができる。接続されているUEは、この生成されたNTA値(すなわちLTEアップリンクタイミング)を、D2Dデータ送信にも使用する。具体的には、接続されているUEは、基地局にデータを送信するための送信タイミングを調整する目的と、直接リンクを通じてデータを送信するための送信タイミングを調整する目的と、D2D受信側UEのFFTウィンドウを同期させるための基準として、NTA値を使用する。
接続されている送信側UEは、11ビットのNTA値を使用して、ダウンリンクの受信タイミングを基準とするタイミングアドバンスを決定する。図示した例においては、接続されている送信側UEにおいてタイミングアドバンスは、伝搬遅延の2倍に設定される。次いで、接続されているUEは、D2Dデータの送信タイミングを制御する目的に同じ11ビットのNTA値を使用することができ、さらに、このNTA値を制御メッセージ(スケジューリング割当て(SA)メッセージとも称する)の11ビットのフィールドに格納することによって、タイミングアドバンス値として受信側UEに送ることができる。
実線の四角は、接続されている送信側UEから直接リンクを通じて受信側UEへのデータ送信のタイミングを示している。送信側UEは、アップリンクデータ送信用に計算されたタイミングアドバンス値を、D2Dデータの送信タイミングを制御する目的にも使用するため、基地局またはeNodeBは、入ってくるすべての信号(例えばD2Dデータと、LTE/WANアップリンクで送信されるデータ)を自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することができる。
結論として、送信側UEがRRC接続状態にある場合、上述した解決策によって、eNodeBがアップリンクLTEチャネルでデータを受信するときのキャリア間干渉を低減することができ、なぜなら、直接リンク通信用かつレガシーLTEアップリンク通信用の同じタイミングアドバンスを使用して、D2Dデータが送信されるためである。
代替の方法形態においては、NTA値に専用の、スケジューリング割当て(SA)メッセージ内のフィールドを、6ビットのみとすることができる。この場合、接続されているUEは、アップリンク送信用の11ビットのNTA値を、スケジューリング割当て(SA)メッセージの中で受信側UE2に送信する前に6ビットにダウンサンプリングすることができる。ダウンサンプリングの一例として、UE1は、アップリンク用のNTA値の6個の最上位ビットのみをUE2に送信することができる。
この代替の方法形態の発想は、次の例によって説明することができる。いま、基地局へのLTEアップリンクデータ送信のための11ビットのNTA値が、NTA_UPLINK=11011011001であるならば、6個の最上位ビットを考慮することによって計算されるダウンサンプリングされた直接リンクタイミング情報は、110110である。接続されている送信側UEによって実行される情報のダウンサンプリングにおいて、いくつかの下位ビットが失われ、接続されている送信側UEにおいて生成される直接リンク送信タイミング値は、NTA_D2D=11011000000によって与えられる。同様に、受信側UEは、スケジューリング割当て(SA)メッセージによって、値110110を伝える直接リンクタイミング情報を受信する。受信側UEは、この情報に基づき、受信された値の先頭に一連の0を付加することによって、直接リンク受信タイミング値を生成することができる。直接リンク受信タイミング値は、NTA_D2D=11011000000である。
上記は、本発明の一般的なコンセプトを具体的な実装において適用する方法を説明するための一例にすぎない。しかしながら当然ながら、本発明はこの例に限定されない。例えば、アップリンク送信タイミング値は、11ビットより短い、または11ビットより長くてよい。同様に、直接リンクタイミング情報を、ダウンサンプリング以外の手順によって生成することができる。6ビットを有する直接リンクタイミング情報について説明したが、直接リンクタイミング情報をこれより長くすることができる。同じことは、直接リンク送信タイミング値にもあてはまる。
図14の右側は、RRCアイドル状態にある送信側UE(以下では簡潔に「アイドルUE」とも称する)によるD2Dデータ送信に関する。この場合、アイドル送信側UEは、eNodeBからタイミングアドバンスコマンド(これに基づいて有効なタイミングアドバンス値NTAを計算することができる)を受信しない。結果として、アイドルUEは、有効なNTA値(受信側UEにおいてFFT受信ウィンドウを同期させるための基準として使用することができる)として受信側UEに送信することのできる何らの基準送信タイミングも有さない。したがってアイドルUEは、ダウンリンクの受信タイミングを基準点として使用し、このダウンリンクの受信タイミングに基づいて直接リンク送信タイミング値(NTA値など)を生成することによって、受信側UEへの直接リンクデータ送信のタイミングを制御する。したがって、アイドル送信側UEは、タイミングアドバンス値NTAを0に設定する。これに加えて、アイドルUEは、直接リンクタイミング情報(NTA値に一致する、または例えば上述したようにダウンサンプリングされたNTA値とすることができる)を生成し、この直接リンクタイミング情報をスケジューリング割当て(SA)メッセージに格納し、このSAメッセージを受信側UEに送信する。受信側UEは、送信された、0に設定されているタイミングアドバンス値を使用して、直接リンクチャネルを通じての送信のタイミングを制御し、さらに、受信されたこのタイミングアドバンス値に基づいてFFT受信ウィンドウを設定する。これと同時に、アイドル送信側UEは、D2Dデータの送信タイミングを制御する目的に、前に0に設定したNTA値を使用する。D2Dデータのこの送信タイミングは、アイドルUEがもしeNBからタイミングアドバンスコマンドを受信したならば決定していたであろう送信タイミングと異なるため、D2Dデータは、eNBによって設定される受信ウィンドウの中で送信されない。
接続されているUEに関連して説明したように、NTA値は、スケジューリング割当て(SA)メッセージの中の11ビットのフィールドまたは6ビットのフィールド(直接リンクタイミング情報とすることができる)に含めることができる。
上述した解決策は、現時点では問題が生じることがあり、なぜなら現在の技術に基づいたとき、同じ(アップリンク)周波数で受信するeNodeBは、入ってくるすべての信号(D2DデータおよびLTE/WANアップリンク)を自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することができず、これによりキャリア間干渉(ICI)につながりうるためである。これにより干渉が発生し、復号性能が低下し、信号対雑音比(SNR)が下がる。しかしながら今後の進歩により、受信側UEにおいて直接リンクを通じてのデータ送信に使用されるタイミングアドバンスが0に設定される場合にも、良好な結果を得ることができるものと予測される。
結論として、図14の右側を参照しながら説明した解決策によって、アイドル送信側UEは、直接リンクを通じての送信のタイミングを制御することができる。しかしながら現時点では、アイドルモードのUEによって送信されたデータは、eNodeBにおいてそのFFT受信ウィンドウの内側で受信されず、これにより、eNodeBがアップリンクLTEチャネルでデータを受信するときにWAN干渉およびキャリア間干渉(ICI)が発生する。したがってこのような方式では、キャリア間干渉(ICI)緩和技術(ガードバンドなど)が要求される。
図15は、基地局510と、複数のD2D対応ユーザ機器UE1〜UE3(以下では一般的な表現である隣接するUEまたは隣接する端末と称する)と、D2D対応の送信側ユーザ機器500と、D2D対応の受信側ユーザ機器501と、を含むD2D通信システムを概略的に示している。
説明を目的として、送信側UEが現在アイドルモードにあるものと想定する。当然ながら、このような状態は一時的なものにすぎず、送信側UE 500はRRCアイドルモードからRRC接続モードに切り替わりうることを理解されたい。隣接するユーザ機器UE1〜UE3は、この例においては、D2D発見もしくはD2D通信またはその両方を目的として、送信側ユーザ機器500とスケジューリング割当てメッセージを交換する。しかしながら、このスケジューリング割当てメッセージは、送信側UE 500を対象としていなくてもよく、対応するデータ通信に関心のあるいくつかの別のUEを対象としていてもよいことに留意されたい。隣接するユーザ機器の少なくとも何基かと、場合によっては受信側端末は、この例においてはRRC接続状態にあるものと想定する。したがって、図14の左側を参照しながら上述したように、接続されている隣接するUEは、基地局へのアップリンクデータ送信のタイミング(LTEアップリンクタイミング)を制御するために使用されるNTA値を生成するためのタイミングアドバンスコマンドを、eNBから受信する。接続されている隣接するUEは、eNodeBから受信された、アップリンク送信用のタイミングアドバンスコマンドに基づいて、直接リンクタイミング情報を生成し、生成した直接リンクタイミング情報をスケジューリング割当てメッセージに含め、自身の近傍範囲内の関心のあるD2D対応ユーザ機器によって受信されるように意図されたこのSAメッセージを送信する。直接リンクタイミング情報は、接続されているUEがアップリンクデータ送信のタイミングを制御する目的に使用する11ビットのNTA値とすることができる。これに代えて、直接リンクタイミング情報を、LTEアップリンクタイミング用に使用する11ビットのNTA値をダウンサンプリングすることによって得られる6ビットの値とすることができる。ただし当然ながら、直接リンクタイミング情報の別の実施形態も、本発明の解決策の発想から逸脱することなく可能である。
アイドルモードの送信側UE 500は、少なくとも1つの直接リンク制御情報メッセージまたはスケジューリング割当てメッセージを、受信ユニット540において受信する。受信されたスケジューリング割当てメッセージの中の直接リンクタイミング情報は、制御ユニットまたは生成ユニット570において、アイドルタイミングアドバンス値(idle timing advance value)NTAを生成するために使用される。以下では、アイドル送信側UEによってD2D通信に使用されるこのアイドルタイミングアドバンス値を、導出タイミングアドバンス値または導出直接リンク送信タイミング値という表現によっても示す。導出直接リンク送信タイミング値は、eNBからタイミングアドバンスコマンドを受信したと想定したときのアイドルUEにおいて生成されるタイミングアドバンス値ではなく、別のUEによって生成されてブロードキャストまたは送信される(1つまたは複数の)タイミングアドバンス値に基づいて決定または導出されるタイミングアドバンス値である。
一実施形態によると、アイドル送信側UE 500は、隣接するユーザ機器のうちの1基から受信されたタイミングアドバンス値をそのまま使用することができる。ここで重要な点として、アイドル送信側UE 500は、自身がタイミングアドバンス値を受信する送信元のユーザ機器がRRC接続されているか否かを認識していることもあれば認識していないこともある。受信されたタイミングアドバンス値がスケジューリング割当て(SA)メッセージの6ビットのフィールドに格納されている場合、送信側ユーザ機器500は、接続されているUEから受信されたスケジューリング割当てメッセージから、6ビットのタイミングアドバンス値を取り出すことができる。次いで送信側UE 500は、受信した6ビットのタイミングアドバンス値に基づいて、11ビットのタイミングアドバンス値を生成する。生成された11ビットのタイミングアドバンス値は、送信ユニット560を通じて受信側UE 501に送信される。
有利な一実施形態によると、アイドル送信側UE 500は、選択基準に基づいて、タイミングアドバンス値を選択することができる。例えばアイドルUEは、候補のタイミングアドバンス値として、送信電力が事前定義されたしきい値より高い(例えば事前定義された特定のdBmより高い)隣接するUEから受信されたタイミングアドバンス値を選択することができる。これに代えて、またはこれに加えて、アイドルUEは、接続状態にある隣接するUEから受信されたタイミングアドバンス値のみを使用することができる。これを目的として、スケジューリング割当てメッセージが、そのスケジューリング割当てを送信する隣接するUEがRRC接続モードにあるか否かの明示的または暗黙的な情報を含むことができる。隣接するUEがRRC接続モードにないケースは、そのスケジューリング割当てを送信した隣接するUE自身がタイミングアドバンス値を導出したときに起こることがあり、この場合、そのような導出タイミングアドバンス値は、RRC接続状態にあるUEから受信されるタイミングアドバンス値と比較して低い優先順位を有する。さらなる代替形態によると、アイドルUEは、セル内に存在する隣接するUEのうち、他の隣接UEよりも送信側UEに近い隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値のみを使用することができる。
要約すると、アイドルUE 500から直接リンクを通じて受信側UE 501へのデータ送信のタイミングを決定するための導出タイミングアドバンス値または導出直接リンク送信タイミング値は、そのアイドルUE 500の近傍におけるユーザ機器から受信されるタイミングアドバンス値に基づいて生成される。アイドルUEは、自身の近傍における接続されている隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値を選択することが有利である。接続されているユーザ機器は、アイドル送信側UE 500とのD2Dメッセージングを実行することができるためには、この送信側UEの近傍に存在していなければならない。したがって、接続されているUEから受信されるタイミングアドバンス値は、アイドル送信側UEにおいて、直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを決定してeNBのFFT受信ウィンドウ内でD2Dデータを送信するための直接リンク送信タイミング値を生成するうえで、極めて良好な近似値である。
本明細書に記載されている送信側端末および方法の有利な代替実施形態によると、生成ユニットにおいて生成される導出直接リンクタイミング情報は、少なくとも1基の隣接する端末から受信される直接リンクタイミング情報の少なくとも一部の単純平均または加重平均とすることができる。
アイドル送信側UEは、何基かの隣接するユーザ機器UE1〜UE3から、それぞれのタイミングアドバンス値TA1〜TA3を受信ユニット540において受信することができる。この場合、受信されるタイミングアドバンス値は、前述したようにスケジューリング割当て(SA)メッセージから取り出され、制御ユニット590または生成ユニット570に入力される。次いで生成ユニット570は、受信されたTA値TA1〜TA3を平均して、導出タイミングアドバンス値を生成することができる。次いで、このように生成された、導出タイミングアドバンス値が、受信側ユーザ機器501に送信される。
これに代えて、アイドル送信側UEは、隣接するUEから受信されたタイミングアドバンス値または直接リンクタイミング情報の加重平均を計算することができる。例えば、アイドル送信側UE 500により近い、もしくはRRC接続状態にある、またはその両方である隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値には、RRCアイドル状態にある、もしくはアイドル送信側UEから遠い、またはその両方である隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値よりも大きい重みを与えることができる。同様に、高い送信電力を有する隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値にも、より大きい重みを与えることができる。
本明細書に記載されている送信側端末および方法のさらなる発展形態によると、送信側端末の近傍に、隣接する端末が存在しない場合に、導出直接リンクタイミング情報を0に設定するように、生成ユニット570を構成することができる。別のさらなる発展形態によると、生成ユニット570は、送信側端末がカバレッジ外である場合にも、導出直接リンクタイミング情報を0に設定することができる。
本明細書に記載されている送信側端末および方法のさらなる実施形態によると、本発明による送信側端末は制御ユニット590をさらに含むことができ、制御ユニット590は、受信された直接リンクタイミング情報のうち、事前定義された選択基準に基づいて、複数の候補の直接リンクタイミング情報を選択するようにされている。次いで、選択された候補の直接リンクタイミング情報を使用して、導出直接リンクタイミング情報を生成することができる。
本発明の説明されている送信側端末および方法による送信側端末においては、候補の直接リンクタイミング情報を、それぞれの隣接する端末の送信電力に基づいて、または、基地局に対する送信側端末の位置情報に基づいて、選択することができる。
これに加えて、または代えて、本明細書に記載されている送信側端末および方法の発展形態によると、制御ユニット590は、候補の直接リンクタイミング情報として、送信電力が所定のしきい値より高い、もしくは、送信側端末により近い、またはその両方である隣接する端末、から受信される直接リンクタイミング情報を選択することができる。
さらに本発明は、通信システムにおいて送信側端末によって直接リンクデータ送信の送信タイミングを制御する通信方法、に関する。本方法は、少なくとも1基の隣接する端末から、これら隣接する端末において直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを決定するための直接リンクタイミング情報、を受信ユニットにおいて受信するステップ、を含む。生成ユニットにおいて、少なくとも1基の隣接する端末からの直接リンク送信に使用される受信された直接リンクタイミング情報に基づいて、導出直接リンクタイミング情報を生成する。導出直接リンクタイミング情報は、直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを決定するための導出直接リンク送信タイミング値を生成する目的に使用することができる。さらに、本方法は、導出直接リンクタイミング情報を受信側端末に送信するステップであって、導出直接リンクタイミング情報が、受信側端末において、送信側端末から直接リンクを通じて受信されるデータの受信タイミングを決定するための直接リンク受信タイミング値を生成する目的に使用することができる、ステップ、を含む。送信ユニットにおいて、生成された導出直接リンク送信タイミング値を使用して、データを直接リンクを通じて受信側端末に送信する。
本発明の一実施形態による方法の追加のステップおよび代替のオプションステップについては、図16を参照しながら説明する。
図16は、アイドル送信側UE 500の送信タイミングの制御方法を記述した流れ図である。
ステップS00において、送信側UEがRRCアイドル状態にあるかを判定する。そうでない場合、送信側UEはRRC接続状態にあり、したがって、アップリンク送信タイミング値を調整するためのタイミングアドバンスコマンドを含む制御情報メッセージを基地局から受信することができる。この場合、送信側UEは、アップリンク送信タイミング値を使用して、直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを決定するための直接リンク送信タイミング値を生成し、本プロセスはステップS06に飛ぶ。上記の手順は、図14の左側に示した状況を参照しながらも説明してある。
ステップS00において、D2D送信側UEがRRCアイドル状態にあることが判定された場合、ステップS01において、送信側UEは、自身の近傍に別のユーザ機器(隣接するUE)が利用可能であるかを確認する。オプションとして、アイドル送信側UE 500は、自身の近傍に別の接続されているUEが存在するかを判定することができる。これはオプションのステップであり、隣接するデバイスからのスケジューリング割当てメッセージに、そのスケジューリング割当てメッセージを送信したUEのRRC状態に関する暗黙的または明示的な情報が含まれる場合に、オプションとして実行することができる。アイドル送信側UEの近傍に隣接するUEが存在しない場合、アイドル送信側UEは直接リンク送信タイミング値を0に設定し、本方法はステップS06に飛ぶ(このステップについては後から説明する)。ステップS02において、アイドルUEがネットワークカバレッジの外側であるかを確認する。アイドルUEがネットワークカバレッジの外側である場合、アイドルUEは直接リンク送信タイミング値を0に設定し(ステップS09)、本方法はステップS06に飛ぶ(このステップについては後から説明する)。
アイドル送信側UEの近傍に別の隣接するUEが存在する場合において、アイドル送信側UEは、ステップS03において、自身の近傍における1基または複数基の隣接するUEからスケジューリング割当て(SA)メッセージまたは制御情報メッセージを受信する。制御情報メッセージには、直接リンクを通じての送信のタイミングを制御するためにそれら隣接するUEによって使用されるタイミングアドバンス値が含まれる。ステップS04において、ステップS03で隣接するUEから2つ以上のタイミングアドバンス値が受信されたかを判定する。受信ユニット540において1つのタイミングアドバンス値のみが受信された場合、その唯一の受信されたタイミングアドバンス値または直接リンクタイミング情報を使用して、送信側UE 500から直接リンクを通じて受信側UE 501へのデータ送信のタイミングを決定するために使用される導出直接リンク送信タイミング値を生成し(S10)、本方法はステップS06に飛ぶ。この場合、隣接するUEから受信されたタイミングアドバンス値NTAは、直接リンクを通じての送信タイミングを制御する目的に何らの修正なしに使用することができ、受信側UEにそのまま送信することができる。
アイドル送信側UEの近傍に2基以上の隣接するUEが存在する場合、生成ユニット570は、ステップS05において、それら隣接するUEから受信ユニットにおいて受信される少なくとも複数の直接リンクタイミング情報に基づいて、導出直接リンクタイミング情報および導出直接リンク送信タイミング値を生成することができる。ステップS06において、送信側UEは、生成された導出直接リンクタイミング情報を受信側UEに送信する。生成された導出直接リンクタイミング情報は、例えば、D2Dスケジューリング割当てメッセージに含まれる6ビットまたは11ビットのフィールドにおいて送信することができる。
上の説明においては、隣接するUEについて言及している。これらの隣接するUEは、接続されているUE、またはRRCアイドル状態にあるUEである。接続されているUEの場合、直接リンクタイミング情報は、それぞれの隣接するUEによって基地局から受信されたタイミングアドバンスコマンドに基づいて生成された直接リンクタイミング情報である。これに対して、隣接するUEがRRCアイドル状態にある場合、アイドルUE 500において受信される直接リンクタイミング情報は、その隣接するUEにおいて、上述した方法および手順に従って計算された導出直接リンクタイミング情報である。
本発明の有利な一実施形態においては、カバレッジ内にあるアイドルモードのD2Dユーザ機器は、複数基の隣接するUEから複数のタイミングアドバンス値を受信した場合、受信したタイミングアドバンス値すべての単純平均をとることによって、直接リンクタイミング情報を生成することができる。
これに代えて、アイドルモードの送信側UEは、隣接するUEから受信された直接リンクタイミング情報のうち、1つまたは複数の候補のタイミングアドバンス値を選択することができる。候補のタイミングアドバンス値の選択は、所定の選択基準に基づくことができる。一例として、アイドル送信側UEは、事前定義されたエネルギ挙動を満たす接続されているUEから受信されたタイミングアドバンス値のみを選択することができる。したがって、アイドル送信側UEは、候補のタイミングアドバンス値として、送信電力が事前定義されたしきい値より高い隣接するUEによって送信された直接リンクタイミング情報からのみ選択することができる。選択基準に使用される送信電力は、対応する送信機からの事前定義された特定のチャネル(D2DSSなど)または任意の別の所定のチャネルにおいて測定することが有利である。
代替の発展形態(上述した実施形態において実施することもできる)においては、アイドル送信側UEは、タイミングアドバンス値を位置情報に基づいて選択することができる。位置情報は、対応する隣接するUEによって直接リンクタイミング情報と一緒に送信することができる。送信される位置情報は、基地局に対する隣接するUEの位置に関する情報を含むことができ、または、例えば絶対的なGPS位置とすることができる。位置情報によってアイドルUEは、自身により近い隣接するUEによって送信されたタイミングアドバンス値を選択することができる。実際に、アイドルUEのより近くに位置する隣接するUEのタイミングアドバンス値は、そのアイドルUEにおける正確なタイミングアドバンス値のための極めて良好な近似値である。これに加えて、またはこれに代えて、アイドルUEは、候補のタイミングアドバンス値を、基地局からのアイドルUEの距離に基づいて選択することもできる。位置情報および距離は、例えば、GPSデータに基づいて計算する、あるいは経路損失や信号強度などに基づいて計算することができる。
これに代えて、またはこれに加えて、一実施形態による送信側端末またはアイドルUEおよび方法において、受信される直接リンクタイミング情報は、受信される直接リンクタイミング情報または受信されるタイミングアドバンス値が有効であることを示す有効性情報、を含むことができる。有利な一実施形態によると、受信された直接リンクタイミング情報は、隣接する端末から基地局へのアップリンク送信に使用されるアップリンク送信タイミング情報値がその情報に含まれている場合には、有効であるものとして受理される。したがって制御ユニット590は、候補の直接リンクタイミング情報を、この有効性情報に基づいて選択することができる。有効性情報は、隣接するUEから受信される直接リンクタイミング情報に含まれるフィールドとすることができ、その隣接する端末がRRC接続状態にあることを示す情報を含むことができる。アイドルUEは、受信された直接リンクタイミング情報のうち、有効性情報に基づいて有効であると判定される情報のみを選択することができる。アイドルUEにおいて受信されたタイミングアドバンス値は、RRC接続状態にある隣接するUEによって送られた場合には、有効であるとみなすことができる。このような代替形態は、タイミングアドバンスのタイプを示す有効性情報を、スケジューリング割当てメッセージに含めることによって実施することができる。具体的には、タイプの情報は、スケジューリング割当てメッセージに含まれる1ビットのフラグとすることができ、このフラグは、タイミングアドバンス値が、接続モードのUEによって取得/維持されている値0を含む有効なタイミングアドバンス値であるか、別のアイドルモードのUEによって計算された、値0を含む導出タイミングアドバンス値であるかを示す。
上述したように、カバレッジ内にあるアイドルモードのユーザ機器は、複数の接続されている隣接するUEから複数のタイミングアドバンス値を受信した場合、上述した基準に従って選択される、受信されたタイミングアドバンス値の単純平均をとることによって、導出直接リンクタイミング情報を生成することができる。具体的には、アイドルUEは、事前定義されるしきい値より高い送信電力を使用して送信している隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値のみを平均することによって、導出直接リンクタイミング情報を生成することができる。これに代えて、アイドルUEは、上述したように有効なタイミングアドバンス値として示されるタイミングアドバンス値のみを平均することによって、導出直接リンクタイミング情報を生成することができる。
これに代えて、アイドル送信側UEは、上述したように、隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値または直接リンクタイミング情報の加重平均を計算することができる。例えば、アイドル送信側UE 500により近い、もしくはRRC接続状態にある、またはその両方である隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値には、RRCアイドル状態にある、もしくはアイドル送信側UEから遠い、またはその両方である隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値よりも、大きい重みを与えることができる。同様に、高い送信電力を有する隣接するUEから受信されるタイミングアドバンス値にも、より大きい重みを与えることができる。
アイドルUEがネットワークカバレッジの外側である場合、接続モードのUEから、有効なタイミングアドバンス値を含むスケジューリング割当て(SA)メッセージを受信することができないことがある。この場合、アイドルUEは、導出タイミングアドバンス値を0に設定することができる。アイドルUEがネットワークカバレッジの外側である場合、受信側UEは、スケジューリング割当て(SA)メッセージの受信タイミングを格納しておき、アイドル送信側UEから直接リンクを通じて送信されるデータの受信タイミングを、その値を使用して制御することができる。
図17は、アイドル送信側UEの場合に本発明の方法に従って決定されるFFT受信ウィンドウの位置決め(右側)を、接続されているUEによって有効なNTA値を使用して決定されるFFT受信ウィンドウの位置決めと比較して、概略的に示している。アイドルモードのユーザ機器が接続されておらず、したがってアップリンク送信タイミング値を調整するためのタイミングアドバンスコマンドをeNodeBから受信しない場合でも、アイドルUEは、カバレッジ内の別のUEによって受信される利用可能なタイミングコマンドを使用する。この方法では、アイドルUEは、直接リンクを通じてのデータ送信のタイミングを制御する目的に使用できるタイミングアドバンス値(導出タイミングアドバンス値とも称する)を生成することができ、このタイミングアドバンス値を受信側端末に送信することができる。これにより受信側端末は、送信側端末から直接リンクを通じて受信されるデータの受信タイミングを、良好な近似値を使用して決定することができる。これによりeNodeBまたは基地局は、入ってくるすべての信号(D2DおよびLTE/WANアップリンク)を自身の受信FFTウィンドウの内側で受信することができ、このことはキャリア間干渉(ICI)の低減につながりうる。
本発明の別の態様は、上述したさまざまな実施形態および態様を、ハードウェアおよびソフトウェアを使用して実施することに関する。これに関連して、本発明は、ユーザ機器(移動端末)およびeNodeB(基地局)を提供する。ユーザ機器は、本明細書に記載されている方法を実行するようにされている。さらに、eNodeBは、各ユーザ機器のIPMI設定品質(IPMI set quality)を、ユーザ機器から受信されたIPMI設定品質から評価し、自身のスケジューラが異なるユーザ機器をスケジューリングするとき、それら異なるユーザ機器のIPMI設定品質を考慮することを可能にする手段、を備えている。
本発明のさまざまな実施形態は、コンピューティングデバイス(プロセッサ)を使用して実施または実行され得るものとさらに認識される。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または、その他プログラマブルロジックデバイスなどである。本発明のさまざまな実施形態は、これらのデバイスの組合せによっても実行または具体化され得る。
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、ソフトウェアモジュールによっても実施され得る。これらのソフトウェアモジュールは、プロセッサによって実行され、または、ハードウェアにおいて直接実行される。また、ソフトウェアモジュールとハードウェア実装の組合せも可能である。ソフトウェアモジュールは、任意の種類のコンピュータ可読記憶媒体、例えば、RAMやEPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、レジスタ、ハードディスク、CD−ROM、DVDなどに格納され得る。
さらには、本発明の複数の異なる実施形態の個々の特徴は、個々に、または任意の組合せにおいて、別の発明の主題とすることができることに留意されたい。
具体的な実施形態において示した本発明には、広義に記載されている本発明の概念または範囲から逸脱することなく膨大なバリエーションもしくは変更形態を創案できることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点において例示を目的としており、本発明を制限するものではない。